共有持分だけなら他の共有者の同意なしで売却できる
共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有しているときに、それぞれが持つ所有権の割合です。
たとえば、兄弟で実家を2分の1ずつ所有している場合、兄も弟も、実家全体に対して2分の1の権利を持っています。「兄が1階、弟が2階を所有している」という意味ではありません。
このうち、自分が持つ2分の1の権利だけを買主へ譲るのが、共有持分の売却です。
民法第206条は、所有者が法令の制限内で自分の所有物を使用・収益・処分できることを定めています。自分の共有持分を売却できることも、この所有権の原則に基づきます。
参考:e-Gov法令検索「民法第206条」
持分の売却と不動産全体の売却は、必要な同意が異なる
売却する範囲によって、誰の協力が必要かが変わります。
| 売却するもの |
通常の売買で必要となる同意 |
| 自分の共有持分だけ |
原則として他の共有者の同意は不要 |
| 売却を希望する複数人の持分 |
持分を売る本人それぞれの同意が必要。売らない共有者の同意は原則不要 |
| 土地・建物など不動産全体 |
原則として共有者全員の同意が必要 |
たとえば、3人が3分の1ずつ所有し、1人が全体売却に反対している場合でも、残る2人は自分たちの持分を売却できます。
ただし、合計で3分の2の持分を持っていても、反対する人の持分まで売れるわけではありません。「人数の多数決」「持分の過半数」で不動産全体を自由に売却できると考えないようにしましょう。
同意が不要でも、売却を知られないとは限らない
他の共有者への事前連絡は、持分売却の法的な要件ではありません。ただし、売却後は買主が新しい共有者になり、残る共有者へ連絡することがあります。登記を確認して売却を知る場合もあります。
そのため、「同意なしで売れる」と「最後まで内緒にできる」は別です。
連絡しても支障がなければ、事前に売却の意向を伝えることで、突然第三者が共有者になることへの不信感を抑えられる場合があります。一方、対立が深刻な場合は、無理に直接交渉せず、不動産会社や弁護士へ連絡方法を相談しましょう。
共有持分を売却する3つの方法と選び方
共有持分の売却では、他の共有者への売却と、専門の買取業者への売却が主な選択肢です。物件の条件によっては、仲介業者を通じて投資家を探す方法もあります。
「一番高く売れそうな方法」だけでなく、相手の購入意思、売却期限、共有者との関係を踏まえて選びましょう。
1.他の共有者に買い取ってもらう
他の共有者に買い取ってもらう方法は、すでに同じ不動産を所有している人へ、自分の持分を売る方法です。
買う側に「単独名義にできる」「持分を増やせる」といったメリットがあるため、第三者に売るより高値でまとまる可能性があります。
たとえば、兄弟2人で実家を2分の1ずつ所有している場合、兄が弟の持分をすべて買い取れば、実家を兄の単独名義にできます。共有状態が解消されれば、不動産全体の売却や活用を判断しやすくなります。
一方、次のいずれかに当てはまると、売買は進みません。
- 相手に買い取る意思がない
- 相手が購入資金を用意できない
- 価格や支払時期について合意できない
まずは、「買い取りを検討できるか」「いつまでに資金を用意できるか」を確認しましょう。
親族だからといって、相手の提示価格が妥当とは限りません。価格を決める前に、不動産全体の査定額と、自分の持分だけを第三者に売る場合の査定額を確認しておくと、交渉の根拠になります。
また、親族間でも売買契約書を作成しましょう。価格の査定や売買手続きは不動産会社、登記は司法書士、対立がある場合の交渉や複雑な契約条件は弁護士へ相談できます。
2.共有持分専門の買取業者に直接売却する
買取業者への直接売却では、不動産会社自身が買主になります。
購入希望者を探す必要がないため、価格や条件に合意できれば、売買契約や代金の受け取りへ進みやすい方法です。早く現金化したい場合や、他の共有者との交渉が難しい場合に選択肢となります。
共有持分は、買っても不動産全体を自由に使えるとは限りません。そのため、一般的な住宅購入者には売りにくく、通常の不動産会社では取り扱いを断られることもあります。
共有持分専門の買取業者は、購入後に残る共有者と話し合い、持分の買い増しや不動産全体の売却などを進めることを想定して査定します。
ただし、取得後の交渉費用や時間、共有状態を解消できないリスクなどを見込むため、買取価格は低くなりやすい点に注意が必要です。
また、専門業者でも、すべての共有持分を買い取れるわけではありません。対応地域、物件の種類、購入できる金額、共有者との調整方針は会社によって異なります。
相談時は、次の点を確認しましょう。
- 自社で直接買い取るのか、別の買主を探す仲介なのか
- 提示価格で買い取るために、どのような条件があるか
- 他の共有者への事前連絡や、売主による交渉協力が必要か
- いつ契約でき、いつ代金を受け取れるか
- 売却後、残る共有者へどのように連絡する予定か
なお、仲介業者を利用せずに買取業者へ直接売る場合、仲介手数料は発生しません。ただし、登記費用など別の負担がないかは確認が必要です。
3.共有持分を扱う仲介業者を通じて投資家に売却する
仲介とは、不動産会社が売主と買主の間に入り、買主探しや条件交渉、契約を支援する方法です。買取とは異なり、不動産会社自身が購入するとは限りません。
共有持分を扱う仲介業者であれば、投資家へ購入を打診できる場合があります。
たとえば、賃料収入が確認できるアパートや、将来の持分の買い増しによって利益を見込める物件などが検討対象になります。
物件の収益性や立地を評価する投資家が見つかれば、買取業者への直接売却より高い価格で売れる可能性があります。
一方、共有持分には利用や売却の制約があるため、投資家であれば誰でも購入するわけではありません。買主が見つかるまで時間がかかり、売却に至らない場合もあります。
仲介業者の「この価格で売り出せます」という説明は、その金額で買う人が決まっているという意味ではありません。
依頼前に、似た持分の成約実績、購入を打診できる相手、売却活動の進め方、仲介手数料を確認しましょう。売却期限がある場合は、いつまで買主を探すかも決めておくと判断しやすくなります。
ワンポイント解説
【迷ったら「話し合えるか」「期限があるか」で選ぶ】
- 他の共有者と話し合え、購入意思と資金がある:他の共有者への売却を検討する
- 他の共有者との交渉が難しい、または早く手放したい:専門の買取業者へ相談する
- 売却を急がず、収益性などの強みがある:仲介による投資家探しも検討する
他の共有者への打診は必須ではありません。関係が悪い場合は、最初から買取業者へ相談してかまいません。
どの方法を選ぶ場合も、価格・手取り額・入金時期をそろえて比較しましょう。
共有持分の売却相場はいくら?価格の考え方と計算例
共有持分の価格を考える出発点は、「不動産全体の市場価格×売却する持分割合」です。
ただし、この金額は持分割合で単純に分けた金額です。持分だけを第三者に売却する場合、そのままの金額で売れるとは限りません。
【不動産全体が3,000万円・自分の持分が2分の1の場合】
3,000万円×1/2=1,500万円
1,500万円は、不動産全体の価格を持分割合で分けた金額です。
共有持分だけの実際の売却価格は、売却先や共有者との関係、物件の利用状況などによって変わります。
ここでいう市場価格とは、不動産全体を通常の売買で売る場合に見込まれる価格です。固定資産税の通知書に記載された評価額や、購入時の価格とは異なります。
売却先によって価格が変わる
| 売却先 |
価格の考え方 |
| 他の共有者 |
「不動産全体の市場価格×持分割合」が交渉の基準になる。持分を取得するメリットや、相手の資金、交渉内容によって価格が決まる |
| 共有持分専門の買取業者 |
持分割合で計算した金額から、取得後の交渉・登記・保有などの費用やリスク、利益を見込んで査定する |
| 仲介業者を通じて探す投資家 |
賃料収入や将来の売却見込みなどから購入価格を判断する。買取業者より高くなるとは限らない |
専門業者への売却では、「不動産全体の市場価格×持分割合」の3分の1〜2分の1程度を目安とすることがあります。
先ほどの例に当てはめると、1,500万円の3分の1〜2分の1で、500万〜750万円です。
ただし、この割合は価格を考えるための参考目安であり、統計的な平均価格や、買取を保証する価格ではありません。物件の条件によって、この範囲より高くなることも、低くなることも、買い取りを断られることもあります。
投資家への売却も、「必ず何割で売れる」という共通の割合では判断できません。実際の購入希望額と、仲介手数料を差し引いた金額を確認する必要があります。
自分の共有持分の売却相場を知るには、物件と権利関係を伝えたうえで、複数社の査定を比較することが大切です。
共有持分だけだと安くなりやすい理由
買主が持分を取得しても、その人だけの判断で不動産全体を売ったり、建て替えたりできるわけではありません。
また、他の共有者が住んでいる場合は、使用方法や費用負担について調整が必要になることもあります。
買主は、主に次の負担を考えて購入価格を決めます。
- 他の共有者との話し合いにかかる時間や費用
- 固定資産税、管理費などの保有中の負担
- 残る持分を買い取る場合に必要な資金
- 話し合いがまとまらず、法的手続きが必要になる可能性
- 将来売却するときに買主が見つからない可能性
つまり、持分の価格には、不動産自体の価値だけでなく「購入後にどれくらい調整が必要か」も反映されます。
査定額を左右する主なポイント
持分が大きければ必ず高く売れる、共有者が住んでいれば必ず売れない、というわけではありません。複数の条件を組み合わせて判断されます。
ローン・相続・居住者などの問題がある共有持分も売却できる?
問題がある共有持分でも、売却できる場合はあります。ただし、売却する権利があることと、買主が購入できる条件が整っていることは別です。
自分の状況に当てはまる項目を確認しましょう。
住宅ローンや抵当権が残っている場合
抵当権とは、ローンなどを返済できなくなったときに、金融機関などが不動産を競売にかけて返済を受けるための権利です。
抵当権が付いた持分も法律上は売却できますが、買主には競売で権利を失うリスクがあるため、通常は抵当権を外す条件を調整します。
確認するのは、次の3点です。
- 抵当権が自分の持分だけに付いているか、不動産全体に付いているか
- ローンがいくら残っているか
- 売却する持分から抵当権を外すには、いくら返済する必要があるか
「持分が2分の1だから、ローンも半分返せば売れる」とは限りません。金融機関に具体的な条件を確認しましょう。
また、持分を売却しただけで、自分のローン返済義務や連帯保証人としての責任が自動的になくなるわけではありません。離婚に伴う売却でも、持分の移転と借入れの整理を分けて確認する必要があります。
相続した持分が亡くなった人の名義のままの場合
相続した共有持分を売却するには、買主への所有権移転登記に先立って、相続登記を行う必要があります。
査定や売却の相談は先にできますが、登記に必要な書類と手続きは早めに司法書士へ確認しましょう。
遺産分割が終わっていない場合は、自分が売れる権利の範囲や必要な登記を確認することが先です。「相続人だから実家の半分を自由に売れる」と自己判断しないようにしましょう。
また、不動産ごとの共有持分の売却と、相続財産全体に対する立場を譲る「相続分の譲渡」は別の手続きです。
他の共有者が住んでいる場合
他の共有者が住んでいても、自分の共有持分を売却できる場合があります。持分を売るために、必ずその共有者を退去させなければならないわけではありません。
ただし、買主は取得後の利用条件を確認するため、次の情報を求めることがあります。
- 誰が住んでいるか
- 住むことについて共有者間でどのように合意しているか
- 使用料や家賃を受け取っているか
- 固定資産税、管理費、修繕費を誰が負担しているか
把握している取り決めや支払記録を整理し、査定先へ伝えましょう。
なお、売却後に自分が住み続けたい場合も、別途使用条件の合意が必要です。持分を売っても当然に住み続けられるとは限りません。
共有者と連絡が取れない・関係が悪い場合
自分の持分だけを売る場合は、原則として他の共有者の同意は不要です。そのため、連絡が取れない、売却に反対されているという事情だけで、持分の売却ができなくなるわけではありません。
一方、買主にとって取得後の調整が難しくなるため、査定額や買取の可否に影響することがあります。
連絡できない共有者がいることや、訴訟・紛争の有無は、査定の段階で伝えましょう。不動産全体の売却を希望する場合は、裁判所の手続きが必要になることもあるため、弁護士への相談が適しています。
持分が小さい・老朽化している・滞納がある場合
持分が小さい物件や古い建物でも、立地、収益性、取得後の活用方法によって買い取りの対象になる場合があります。
固定資産税や管理費などを滞納している場合は、滞納額、差押えの有無、誰が負担するかを確認します。売買代金から精算できるかも、契約前に決める必要があります。
査定を高くするために滞納や不具合を隠すと、後から減額や契約上のトラブルにつながります。わからない点は「不明」と伝え、確認を進めましょう。
ワンポイント解説
【1社に断られても、別の業者が買い取る場合がある】
イエコンの買取実務に関わる事例では、千葉県千葉市にある持分3分の1の土地について、最初の買取業者が150万円程度と評価したものの、手間や費用に見合わないとして買い取りを見送ったケースがありました。
その土地は駐車場として使われ、収益がありました。別の買取業者が収益性や土地面積、共有者との調整などを踏まえて評価した結果、250万円での買取に至っています。
買取不可の理由を確認し、対応できる業者がないか検討することが大切です。ただし、この事例と同じ結果になることを保証するものではありません。
共有持分を売却する流れは6ステップ
共有持分の売却は、次の流れで進めます。他の共有者へ直接売る場合は、不動産会社への査定依頼や買主探しを省けることもあります。
- 登記と共有者の状況を確認する
- 希望条件を整理し、売却先を検討する
- 共有持分を扱う不動産会社へ査定を依頼する
- 価格・費用・入金時期・契約条件を比較する
- 買主と売買契約を結ぶ
- 代金を受け取り、持分の移転登記を行う
1.登記と共有者の状況を確認する
まずは登記事項証明書で、売却する持分の名義人、持分割合、抵当権や差押えの有無を確認します。
登記事項証明書は、不動産の権利関係などが記載された書類です。法務局の窓口のほか、オンラインや郵送でも請求できます。
土地と建物の両方を所有している場合は、それぞれ確認しましょう。土地は2分の1、建物は3分の1など、持分割合が異なる場合もあります。
登記上の住所・氏名が現在と異なる場合や、亡くなった人の名義が残っている場合は、移転登記に必要な準備を司法書士へ確認します。
あわせて、共有者の人数、連絡状況、居住者、賃貸借契約、費用の負担状況を、わかる範囲で整理しておきましょう。
2.希望条件を整理し、売却先を検討する
次に、自分が何を優先したいかを決めます。
- いつまでに売却代金を受け取りたいか
- 費用を引いた後、いくら残したいか
- 他の共有者と直接やり取りできるか
- 売却前に片付けや書類の取得へ対応できるか
他の共有者に買い取りを打診する場合は、購入意思だけでなく資金の見込みも確認しましょう。持分の購入や親族間売買では、利用できる融資が限られる場合があります。
「買うと言っている」だけで判断せず、支払方法と時期まで確認することが重要です。
話し合いが難しい場合や、希望する期限に間に合わない場合は、買取業者など別の売却先を検討します。
3.共有持分を扱う不動産会社へ査定を依頼する
査定では、不動産の所在地、持分割合、利用状況、他の共有者との関係などを伝えます。
最初は資料を基に概算を出す「机上査定」、売却を具体的に進める段階では現地を確認する「訪問査定・現地査定」が行われる場合があります。
| 査定方法 |
主な確認内容 |
使い方 |
| 机上査定 |
登記、周辺の取引情報、持分割合など |
おおよその価格や買取の可能性を確認する |
| 訪問査定・現地査定 |
建物の状態、接道、周辺環境、利用状況など |
具体的な価格や売却条件を詰める |
資料がすべてそろっていなくても、相談はできます。手元にある登記事項証明書、固定資産税の通知書、図面などを用意しましょう。
他の共有者が住んでいる家への立入りや室内確認は、無断で進めないようにします。室内を見られない場合の査定方法や、価格が変わる条件を不動産会社へ確認してください。
4.価格・費用・入金時期・契約条件を比較する
査定結果が出たら、同じ項目で比較します。
| 比較する項目 |
確認すること |
| 価格 |
概算か、調査を終えた最終提示額か。今後変更される条件はあるか |
| 売主が払う費用 |
仲介手数料、登記費用、片付け費用、その他の請求があるか |
| 入金時期 |
契約日と代金決済日をいつにできるか |
| 売主が行う対応 |
書類取得、残置物の撤去、他の共有者への連絡などが必要か |
| 売却後の責任 |
不具合などが見つかったとき、どこまで対応する契約か |
| 契約解除 |
どのような場合に解除でき、違約金はいくらか |
口頭で「費用はかからない」「すぐ入金できる」と説明されても、契約書や見積書に反映されているかを確認しましょう。
5.買主と売買契約を結ぶ
価格と条件に合意したら、売買契約を締結します。
契約書では、不動産の所在地だけでなく、売却する持分割合が正しいかを確認してください。土地・建物・私道など、売却対象の漏れにも注意が必要です。
- 売却する不動産と持分割合
- 売買代金と手付金
- 支払期限、決済日、所有権が移る時期
- 税金・管理費・賃料などの精算方法
- 契約を解除できる条件と違約金
- 契約不適合責任の範囲と期間
契約不適合責任とは、引き渡した権利や不動産が契約内容に合っていない場合に、売主が負う責任です。
買取では免責とすることもありますが、知っていた問題を伝えなかった場合などは、免責の合意があっても責任を負うことがあります。把握している不具合や紛争は、契約前に伝えましょう。
分割払いにする場合は、未払いのリスクがあります。支払期限や登記の時期だけでなく、支払いが止まったときの対応も弁護士などへ相談して決める必要があります。
6.代金を受け取り、持分の移転登記を行う
決済日に、買主から残りの売買代金を受け取り、持分を買主名義に変える所有権移転登記を申請します。
実務では司法書士へ依頼し、本人確認、必要書類、登記できる条件が整っていることを確認したうえで、入金と登記申請を進めるのが一般的です。
抵当権を外す場合は、ローン返済、抵当権抹消登記、所有権移転登記が連動するよう、金融機関と司法書士に調整してもらいます。
売却後の確定申告に備え、売買契約書、費用の領収書、購入時や相続時の資料も保管しましょう。
共有持分の売却に必要な書類
売却前にすべての書類を自力でそろえる必要はありません。まず手元の資料を確認し、不足するものを買取業者・仲介業者・司法書士に確認しましょう。
| 主な書類・準備物 |
使う目的・注意点 |
| 登記事項証明書 |
名義人、持分割合、抵当権などを確認する。不動産会社が取得する場合もある |
| 登記済証(権利証)または登記識別情報 |
所有権移転登記に使用する。紛失している場合は早めに司法書士へ相談する |
| 本人確認書類 |
運転免許証やマイナンバーカードなどで本人確認を行う |
| 実印・印鑑証明書 |
書面による移転登記では原則として必要。印鑑証明書は作成後3ヵ月以内のものを準備する |
| 固定資産税の通知書・課税明細書・評価証明書など |
評価額の確認や登録免許税の計算、契約上の税金の精算に使用する |
| 売買契約書 |
売却する持分、価格、支払条件、売却後の責任などを定める |
| 登記原因証明情報・委任状 |
登記申請に使用する。司法書士が作成することが多い |
状況に応じて、次の資料も必要になります。
| 状況 |
追加で確認・準備する資料 |
| 登記上の住所・氏名が違う |
住民票、戸籍の附票、戸籍証明書など |
| 相続登記が済んでいない |
戸籍証明書、遺言書、遺産分割協議書など、相続内容に応じた書類 |
| 抵当権を抹消する |
金融機関などが交付する抵当権抹消書類 |
| 賃貸中・駐車場として運用中 |
賃貸借契約書、賃料の入金記録、経費や分配の資料 |
| マンションの持分を売却する |
管理規約、管理費・修繕積立金の資料、滞納があればその明細 |
| 物件の調査で提出を求められた |
測量図、境界確認書、建築確認済証、検査済証、図面など |
権利証や図面が見つからなくても、直ちに売却できなくなるわけではありません。ただし、代替の本人確認や追加調査で時間・費用がかかることがあるため、早めに伝えましょう。
共有持分の売却にかかる費用・税金と手取り額
売却価格と、最終的に手元に残る金額は異なります。費用やローン返済、売却後の税金まで見込んで比較しましょう。
【手元に残る金額の考え方】
売却代金+買主から受け取る精算金
-売主が負担する諸費用
-売却時に返済するローン
-滞納分などの精算額
-売却に伴う所得税・住民税
※税金は決済時にまとめて差し引かれるとは限りません。売却後に納める金額も確保しておきましょう。
売却益にかかる譲渡所得税・住民税
共有持分を売却したときの所得税・住民税は、売却価格そのものではなく、取得費や売却費用などを差し引いた利益に対して計算します。
【基本の計算式】
課税譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用-特別控除
取得費:売った持分に対応する購入代金や購入手数料など。建物は減価償却費相当額を差し引く
譲渡費用:仲介手数料や売買契約書の印紙代など、売却に直接かかった費用
取得費は、売却した持分に対応する金額を使います。不動産全体の購入代金をそのまま差し引くわけではありません。
また、ローンの返済額は、譲渡所得の計算でそのまま差し引ける費用ではありません。「ローンを返して手元にお金が残らない」場合でも、税金が発生することがあります。
参考:国税庁「譲渡所得の計算のしかた」
税率は、売却した年の1月1日時点の所有期間で変わります。
| 所有期間 |
所得税・復興特別所得税・住民税の合計税率 |
| 5年以下 |
39.63% |
| 5年超 |
20.315% |
※上記は通常の税率です。一定の要件を満たす場合は、特例が適用されることがあります。
【所有期間5年超・特別控除なしの簡易計算例】
売却価格:1,000万円
売った持分に対応する取得費:600万円
譲渡費用:100万円
課税譲渡所得=1,000万円-600万円-100万円=300万円
税額の目安=300万円×20.315%=60万9,450円
参考:国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」/国税庁「短期譲渡所得の税額の計算」
相続した持分は、原則として亡くなった人の取得費と取得時期を引き継ぎます。取得費がわからない場合などは、売却価格の5%を概算取得費として計算することがあります。
相続税評価額が、そのまま売却時の取得費になるわけではありません。購入時の契約書や領収書が残っていないか確認しましょう。
参考:国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
マイホームの3,000万円特別控除は、売却先にも注意する
自分が住んでいた家など、一定の要件を満たす共有持分を売った場合は、譲渡所得から最高3,000万円を差し引く特例を利用できる可能性があります。
ただし、親子や夫婦、生計を一にする親族など、特別な関係がある相手への売却は対象外です。
「共有者に売れば高い」「マイホームだから税金はかからない」と別々に考えず、売却先による税金の違いも確認しましょう。
特例によって税額が0円になる場合でも、適用を受けるには確定申告が必要です。
参考:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
登記の登録免許税・司法書士報酬
持分を買主名義へ変える登記では、登録免許税と、司法書士へ依頼する場合の報酬がかかります。
一般的には、売買による所有権移転登記は買主、売主の相続登記や住所・氏名変更登記、抵当権抹消登記は売主が負担します。ただし、実際の負担は契約で確認してください。
| 登記手続き |
登録免許税の主な計算方法 |
| 売買による土地の持分移転 |
移転する持分に対応する固定資産税評価額×1.5%。軽減税率の期限は2029年3月31日 |
| 売買による建物の持分移転 |
移転する持分に対応する固定資産税評価額×原則2%。一定の住宅には軽減措置あり |
| 相続登記 |
相続する持分に対応する固定資産税評価額×原則0.4%。免税措置の対象となる場合あり |
| 住所・氏名変更登記 |
申請する場合、原則として不動産1個につき1,000円 |
| 抵当権抹消登記 |
原則として不動産1個につき1,000円 |
司法書士報酬は、手続きの種類、不動産の数、相続関係の複雑さなどで変わります。登録免許税と報酬、書類取得費などを分けた見積もりを確認しましょう。
参考:国税庁「登録免許税の税額表」
紙の売買契約書にかかる印紙税
紙で売買契約書を作る場合は、記載した契約金額に応じて印紙税がかかります。
2027年3月31日までに作成する、契約金額が10万円を超える不動産売買契約書には、軽減措置が設けられています。
| 契約書に記載する金額 |
軽減後の印紙税額 |
| 10万円超50万円以下 |
200円 |
| 50万円超100万円以下 |
500円 |
| 100万円超500万円以下 |
1,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 |
5,000円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 |
1万円 |
| 5,000万円超1億円以下 |
3万円 |
※上表は主な価格帯の抜粋です。1万円未満は非課税、1万円以上10万円以下は200円です。
売主用・買主用に紙の原本を1通ずつ作る場合は、それぞれが課税対象になります。電子契約のみで、課税対象となる紙の契約書を作成しない場合は、原則として印紙税はかかりません。
参考:国税庁「不動産の譲渡に関する契約書等の印紙税の軽減措置」
仲介を利用する場合の仲介手数料
仲介業者を通じて売買が成立した場合は、合意した仲介手数料が発生します。
売却価格が400万円を超える場合、通常の上限は次の速算式で計算できます。
【仲介手数料の上限・税込】
(売却価格〈税抜〉×3%+6万円)×1.1
売却価格が1,000万円の場合:
(1,000万円×3%+6万円)×1.1=39万6,000円
売却価格が400万円以下の場合の通常の上限は、200万円以下の部分に5.5%、200万円超400万円以下の部分に4.4%を掛けて合計します。
なお、価格800万円以下の宅地・建物には「低廉な空家等」の特例があり、適用される場合は依頼者一人につき最大33万円(税込)となります。空き家だけに限った制度ではありません。
共有持分の取引で特例を適用するか、手数料はいくらになるかを、媒介契約時に説明してもらい、事前に合意しましょう。
参考:国土交通省「宅地建物取引業者が受けることができる報酬の額」
このほか、証明書の発行手数料や郵送料、交通費、契約で売主負担とした費用などが発生します。費用名だけでなく、総額でいくらになるかを確認してください。
共有持分を少しでも高く売却する5つのコツ
高く売るためには、物件の強みを正確に伝え、売却先と売却範囲を比較することが重要です。費用をかければ必ず高く売れるとは限らないため、査定前に自己判断で大きな工事や持分の買い増しをする必要はありません。
1.共有持分の取扱実績がある複数社へ、同じ条件で査定を依頼する
買取業者によって、得意な地域、物件の種類、購入できる価格帯、取得後の活用方法が異なります。
そのため、1社の査定だけで価格を決めず、複数社へ相談しましょう。
比較しやすくするには、各社へ同じ資料を渡し、居住状況、共有者との関係、希望する決済時期などもそろえて伝えることが大切です。
査定額だけでなく、「この価格になった理由」と「この金額で契約するための条件」を確認してください。
ワンポイント解説
【高額な持分は、買主の資金も確認する】
東京都内にある共有持分2分の1について、2億1,000万円の査定額で売買が成立した事例があります。
相談者によると、先に相談した2社からは、買取資金の都合を理由に値下げを求められていました。
高い査定額が付いても、その会社が実際に決済できるかは別です。購入資金の準備や、融資・転売先の確保などを契約の条件としているかも確認しましょう。
2.他の共有者と交渉する前に、2種類の査定額を用意する
他の共有者へ売る場合は、次の2つの金額を確認します。
- 不動産全体を売却した場合の査定額
- 自分の持分だけを第三者へ売却した場合の査定額
不動産全体が3,000万円、自分の持分が2分の1なら、持分割合で計算した金額は1,500万円です。ただし、第三者へ持分だけを売る場合は、それより低い査定になることがあります。
買う側がすべての持分を取得できるなら、共有状態を解消できる価値もあります。この違いを説明したうえで、相手の資金や支払条件を含めて交渉しましょう。
親族からの提示額だから妥当と考えたり、第三者への売却を持ち出して強く迫ったりすると、交渉がこじれることがあります。価格の根拠を共有し、合意できる条件を探すことが大切です。
ワンポイント解説
【他の共有者への売却が、最も高値になるとは限らない】
姉妹で2分の1ずつ共有していた収益アパートについて、他方の共有者から500万円で買い取りたいと提案された事例があります。
別の売却先へ査定を依頼した結果、収益性や立地、築年数などが評価され、1,750万円で買取が成立しました。
他の共有者に売る場合も、外部の査定と比較してから判断しましょう。個別事例であり、同様の価格差が必ず生じるわけではありません。
3.全員が合意できるなら、不動産全体の売却も比較する
共有者全員が売却に同意し、契約や登記に協力できる場合は、不動産全体を売る方法も検討しましょう。
不動産全体なら一般の住宅購入者なども買主になるため、持分だけを売る場合より幅広い相手を探せます。
たとえば、全体を3,000万円で売り、持分が2分の1なら、売却代金の配分は単純計算で1,500万円です。そこから各自が負担する費用や税金などを差し引きます。
全体売却を提案するときは、持分だけを売った場合と比べて、各共有者にいくら残る見込みかを示すと判断してもらいやすくなります。
居住者がいる場合は、価格だけでなく、転居先や退去時期についての合意も必要です。
4.売りたい共有者が複数いるなら、同じ買主へまとめて売る
全員の同意が得られなくても、売りたい共有者が複数いるなら、それぞれの持分を同じ買主に売る方法があります。
3人が3分の1ずつ所有し、そのうち2人が同じ買主へ売れば、買主は3分の2を取得できます。
買主にとっては、取得後に交渉する共有者が減り、管理に関する判断もしやすくなるため、個別に売る場合より評価が上がる可能性があります。
ただし、過半数の持分を取得しても、不動産全体の売却や、居住者の退去を自由に決められるわけではありません。
高く売るために自分で他の持分を買い集めると、購入費用や売れ残りのリスクを負います。まずは、すでに売却を希望している共有者と一緒に査定を受けられないか検討しましょう。
5.賃料・費用・権利関係を資料で説明できるようにする
買主が収益や権利関係を確認できないと、安全を見込んで低めの価格を提示することがあります。
次のような資料があると、状況を判断してもらいやすくなります。
- 賃貸借契約書と賃料の入金記録
- 駐車場の契約数や収入・経費の記録
- 固定資産税、管理費、修繕費の支払記録
- 共有者間で決めた使用方法や費用負担の書面
- 境界や接道、建物の状態を確認できる資料
良い点だけでなく、問題点も含めて説明できることが、後からの減額や決済延期を防ぐことにつながります。
なお、査定を受ける前に高額な修繕や片付けをする必要があるとは限りません。費用を回収できるか、そもそも他の共有者の同意が必要な作業ではないかを先に確認しましょう。
共有持分の売却で起こりやすいトラブルと対策
共有持分を売った後も、親族関係や売却前の未精算事項が残ることがあります。「名義から外れればすべて解決する」と考えず、次の点を契約前に確認しましょう。
事前に知らされなかった共有者と関係が悪化する
共有持分を第三者へ売ると、残る共有者は面識のない相手と不動産を共有することになります。
また、既存の共有者に売る場合でも、他の共有者が売買を知らなければ、持分のバランスが変わることへの不満が生じる場合があります。
【相談事例:兄弟間の売買を進めたものの、取引を見送ったケース】
兄弟3人が東京都内の駐車場を3分の1ずつ共有していました。三男が長男へ持分を売る話を進めていたところ、契約直前に知った次男が反発しました。
長男の持分が3分の2になることで、管理方針を決められる場面が増えることへの不安がありました。次男の同意は法的に不要でしたが、兄弟関係の悪化を受け、長男と三男は取引を見送りました。
連絡しても支障がなければ、売却意向や予定する売却先を事前に伝えましょう。
一方、対立が深刻な場合は無理に連絡せず、専門家へ相談してください。買取業者にも、他の共有者へ連絡する時期と方法を確認しておくと、予想外の接触を避けやすくなります。
高い査定額を信じたのに、後から減額や費用請求がある
机上査定は概算であり、現地や権利関係の調査後に価格が変わることがあります。減額があったという事実だけで、不適切な対応とは限りません。
ただし、理由が説明されない、費用の内訳が示されない、契約を急かされる場合は、内容を確認する必要があります。
- 調査済みの項目と、未確認の項目を聞く
- 価格が変わる条件を確認する
- 手数料や追加費用を含む見積もりをもらう
- 説明と契約書が違う場合は、解消するまで署名しない
「査定額が一番高い会社」ではなく、条件を確認したうえで納得できる会社を選びましょう。
宅地建物取引業の免許情報、行政処分歴、似た物件の取扱実績も判断材料になります。ただし、免許があることだけで、契約内容や対応の質が保証されるわけではありません。
親族間で安く売りすぎて、買主に贈与税がかかる
個人から著しく低い価格で財産を取得した場合、時価との差額を贈与とみなされ、買主に贈与税税が課される可能性があります。
「親族間だから自由な金額でよい」「一定の割合以上なら必ず問題ない」とは判断できません。
査定書など価格を決めた根拠を残し、相場から大きく離れる価格で売買する場合は、契約前に税理士へ確認しましょう。
参考:国税庁「個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」
売却後、残る共有者から買主との交渉を求められる
売却後、買主から連絡を受けた共有者が、元の売主に「業者との話を何とかしてほしい」と苦情を伝える場合があります。
持分の移転が完了した後、今後の使用・管理や不動産全体の売却について話し合うのは、原則として現在の共有者同士です。
元の売主が、買主に代わって親族を説得したり、残る持分の売却を約束したりする必要は通常ありません。
買主には、残る共有者へどのように連絡し、どのような方針で話し合うのかを契約前に確認してください。売主に協力義務を求める条項がないかも確認しましょう。
なお、買主は取得後、共有状態を解消するために共有物分割請求などを検討する場合があります。「売った後も何も変わらない」「残る共有者に一切負担がない」と決めつけないことが大切です。
過去の税金・管理費・賃料の精算が残る
持分を売却しても、売却前に生じた借金や未払い金が自動的に消えるわけではありません。
たとえば、共有者が立て替えた修繕費、未払いの管理費、分配していない賃料などがあると、売却後に請求や確認を受ける場合があります。
売却前に次の内容を整理しましょう。
- 誰が、いつ、いくら支払ったか
- 共有者間で分担をどう決めていたか
- 未払い・未分配の金額はいくらか
- 売却時に精算するか、別途対応するか
契約書で買主との負担を決めても、それだけで自治体や管理組合などに対する義務がすべてなくなるとは限りません。請求元や専門家にも確認しましょう。
共有持分を売却する前のチェックリスト
売却を進める前に、以下を確認しましょう。わからない項目は空欄のままにせず、査定先や専門家へ確認する内容として整理すると役立ちます。
| 確認項目 |
確認する内容 |
| 売却する権利 |
土地・建物それぞれの名義人、持分割合、私道などの関連する権利 |
| 必要な登記 |
相続登記、住所・氏名変更登記などの準備が必要か |
| 借入れ・担保 |
ローン残高、抵当権を外す条件、返済義務・保証責任の扱い |
| 共有者・利用者 |
共有者の人数と連絡状況、居住者、賃貸借や使用の取り決め |
| 未精算のお金 |
固定資産税、管理費、修繕費、賃料などの未払い・未分配 |
| 売却範囲 |
自分の持分だけか、複数人のまとめ売りや全体売却もできるか |
| 価格と手取り |
最終提示額、費用、ローン返済、税金を踏まえていくら残るか |
| 期限 |
希望日までに書類がそろい、契約・決済を完了できるか |
| 売却後の対応 |
不具合への責任、共有者との交渉協力、精算の義務が残るか |
| 売却先の確認 |
直接買取か仲介か、業者の免許・実績、残る共有者への対応方針 |
持分の売却価格を知りたい場合は、物件の所在地、持分割合、利用状況の3点を整理するところから始めましょう。資料が不足している場合も、共有持分を扱う不動産会社へ相談できます。
まとめ|共有持分の売却は、価格・手取り額・実現できる条件を比べて決める
自分の共有持分だけなら、原則として他の共有者の同意なしで売却できます。
主な方法は、他の共有者への売却、専門の買取業者への直接売却、仲介業者を通じた投資家への売却の3つです。共有者と話し合えるか、いつまでに手放したいか、買主が購入できる条件が整っているかを踏まえて選びましょう。
売却価格を判断するときは、「不動産全体の価格×持分割合」と、持分だけを売る場合の査定額を区別することが大切です。複数社の提示額に加え、費用、税金、入金日、売却後の責任まで比較してください。
まずは、登記上の持分割合、ローンの有無、居住・賃貸の状況を確認しましょう。自分の持分がいくらで売れ、どの条件なら売却できるかを知ることが、納得できる売却への第一歩です。