共有持分の売却に関する押さえておくべき基本情報
共有持分の売却は、単独名義の不動産の売却とは異なる部分が存在します。とくに注意すべきは、「一般の人からの需要が非常に低い」という点です。
共有持分をスムーズに売却するためにも、以下で解説する「共有持分の売却に関する押さえておくべき基本情報」を確認しておきましょう。
共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有しているとき、その共有名義不動産の所有権割合を表すものです。共有持分を持つ者を共有者と呼びます。共有持分割合は購入時だと「不動産の出資割合」相続時だと「相続人の相続割合」で決まり、たとえば3人で3,000万円の不動産を1,000万円ずつ出し合ったときは、共有持分が1/3ずつになります。
自分の共有持分だけなら所有者単独の意思で売却できる
共有持分は、自分の共有持分割合の範囲なら所有者単独の意思で売却できます。たとえば共有持分を1/3有している場合、その1/3の共有持分部分は、他の共有者の同意に関係なく売却が可能です。
これは同じ不動産を共有している状態であっても、共有持分は自分だけの所有物という前提があるからです。自己の共有持分は、民法第206条に基づき自分の意思で売却や贈与、放棄などができます。
(所有権の内容)
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
e-Gov法令検索 民法第206条
ただし、自分の共有持分を売るときには、あらかじめ他の共有者への情報共有や相談をおこなうのが一般的です。
共有持分を第三者へ売却すると、他の共有者にとっては「自分たちの知らない人が、突然同じ不動産を共有する状態」になります。感情面で納得できないのもそうですが、その第三者が他の共有者に黙ったまま不動産へ入って共有者と揉めごとを起こす、他の共有持分を安く買叩こうとするなどの問題を起こすリスクもあります。
人間関係悪化やトラブルを避ける意味でも、売却のことは事前に共有者へ伝えておくことをおすすめします。
とはいえ、もし「他の共有者とこれ以上関わりを持ちたくない」「さっさと手放したい」という場合には、あえて連絡せずに進めるケースもあります。
一方、共有名義不動産全体をすべて売却する場合には、他の共有者全員の同意が必要です。不動産の売却は法律における「変更行為(共有物の範囲を超えてその性質を変える行為)」に該当し、民法第251条の規制を受けるからです。
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
e-Gov法令検索 民法第251条
共有名義不動産をすべて売却したいときは、他の共有者との話し合いが必須になります。
原則として「不動産価格×持分割合」よりも低めの売却価格になる
共有持分を売却する場合、「不動産価格×持分割合」よりも低めの売却価格になります。具体的に言うと、3,000万円の不動産において共有持分1,000万円分を売却しても、1,000万円で売れるわけではないということです。
共有持分の売却価格が低くなる理由は、主に次の通りです。
- 売却・増改築などには共有者全員の同意、3年以内の短期貸出・一般的なリフォームなどには共有持分価格の過半数が必要になり自由に使えないから
- 共有持分単体だと、家賃収入、賃貸借、事業といった収益化が難しいから
- 他の共有者とのトラブルを抱える可能性が高いから
ただし取引条件や売却方法によっては、共有持分でも「不動産価格×持分割合」に近い売却価格になる可能性があります。たとえば後述する「他の共有者へ売却」なら、他の共有者にとっても共有持分割合が増えるメリットがあるため、持分割合に沿った金額での取引になることもありえるでしょう。
また第三者が買い取る場合でも、その第三者が後述する「共有持分だけでも活用して収益を得られる人」なら一定の需要が見込め、売却価格が上がる可能性があります。
実際に弊社「株式会社クランピーリアルエステート」では、共有持分を数千万円単位の高額で買取した実績があります。具体的な実績については、クランピーリアルエステート共有持分買取の事例の見出しをご覧ください。
実際の共有持分の売却価格は、共有名義不動産全体の需要、他の共有者との関係性、売却先の予算、共有者数などのさまざまな要因で変化します。あくまで「共有持分の売却価格は安くなりやすい」とだけ認識しておくことが大切です。
共有持分の売却相場についての解説は、以下の記事にて詳細をまとめています。
共有持分を個人向けに売却するのは難しい
自分の共有持分だけなら所有者単独の意思で売却できるで解説した通り、共有持分は自由に活用するのが難しい不動産です。そのため共有持分を求める一般の人はほとんどおらず、共有持分を個人向けに売却することはないと考えておきましょう。
たとえば不動産仲介を利用した売却だと、一般の人向けに広告を出しても需要が見込めず、売却できる可能性は非常に低くなります。共有持分そのままでも需要があるのは、以下の売却先です。
投資家や不動産会社なら、共有持分の転売や他の共有持分買取による完全所有権獲得を目的に、共有持分を買い取る可能性があります。他の共有者なら、共有持分割合が増えることによるさまざまなメリットに魅力を感じ、共有持分購入の意思を持つことがあります。
共有持分の売却は「不動産買取」「他の共有者へ売却」「分筆」の3種類
共有持分を売却する方法は、「不動産買取」「他の共有者への売却」「分筆」の3種類です。それぞれで売却相場、特徴、方法が異なるため、あなたが求める取引条件や状況に応じた売却方法を選んでください。
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概要 |
売却相場
目安 |
メリット |
買取業者へ売却する |
不動産専門の買取業者へ売却する |
市場価格×持分割合×1/2~1/3 |
スピーディーに売却できる
適正な査定を期待できる |
他の共有者へ売却する |
同じ共有名義不動産の共有者へ売却する |
不動産価格×持分割合 |
共有持分のままでも高額売却しやすい
売却先の共有者にもメリットがある |
土地なら分筆して売却する |
共有持分に応じた面積で分筆してから売却する |
面積分の通常の土地価格 |
面積通りの価格で売却できる
賃貸や事業など他の方法での収益化もできる |
※売却方法をクリックすれば各見出しにジャンプします。
共有持分の売却でとくにおすすめなのは、買取業者への売却です。共有持分の大きなネックである売却相手が見つからないというデメリットが存在せず、売却トラブルも発生しづらいからです。
他の共有者が自分の共有持分を欲しがっているときは、他の共有者への売却もよいでしょう。双方の合意さえあれば、スムーズかつ高額売却できる可能性が高くなります。
共有名義不動産が土地の場合は、土地の分筆してからの売却も1つの方法です。分筆して共有持分割合に応じた完全所有権を得た後で売却できるので、土地の相場通りに売れたり売却以外の選択肢が取れたりなどで対応できます。
共有持分の売却方法1:自己持分を買取業者に売却する
不動産の買取業者とは、買い取った不動産を自社のノウハウを基にリフォーム・リノベーションを実施し、第三者への売却・賃貸などで収益を得る業者です。イメージとしては中古車買取や古本買取といった、リユースビジネスが近くなります。
不動産仲介との違いは、不動産会社が直接買い取ってくれる点でしょう。不動産仲介との違いは次の通りです。
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不動産買取 |
不動産仲介 |
売却先 |
不動産会社 |
不動産会社以外の第三者 |
売却価格 |
不動産会社の査定による |
不動産会社の査定や第三者との交渉による |
手数料の有無 |
原則として手数料は発生しない |
売買契約が成立すると仲介手数料が発生する |
共有持分の売却 |
すぐに買い取ってくれる
売却相場はそこまで高くない |
不動産会社によっては取り扱ってくれない
第三者への売却が難しい
取引相手によっては高額売却の可能性あり |
一般の人からの需要が低い共有持分でも、活用方法を熟知している買取業者からの需要は期待できます。とくに共有持分・相続不動産などの訳あり物件を積極的に取り扱う買取業者なら、スムーズかつ適正価格で買い取ってくれます。
以下では、共有持分を買取業者へ売却する際の詳細を見ていきましょう。
なかには最初は不動産会社の仲介で買主を探し、買主が一定期間見つからなければ不動産会社が買い取る「買取保証」という形式もあります。
共有持分を買取業者に売却するのに向いているケース
共有持分を買取業者へ売却するのに向いているケースは、以下の通りです。
- スピーディーに売却したい
- 他の共有者とのかかわりを最小限にして売却したい
- トラブルなく売却したい
買取業者への売却は自分と買取業者のみで成立するため、不動産仲介や分筆後の売却よりもシンプルに進められます。一般的な需要が低い共有持分の売却で、確実な取引成立・現金化を求めるなら買取業者の利用がおすすめです。
共有持分を買取業者へ売却するメリット
共有持分を買取業者へ売却する具体的なメリットは次の通りです。
- 売却までの時間が数週間~1か月と早い
- 不動産仲介のような仲介手数料が発生しない
- 契約不適合責任免責によって売却後のトラブルを避けやすい
詳細を見ていきましょう。
売却までの時間が数週間~1か月と早い
買取業者へ売却する場合、一般の不動産市場で買主を探す必要がなくなります。そのため、売却までの時間が数週間~1か月と非常にスピーディーです。買取業者のサービス内容やタイミングによっては、査定から売却まで3日以内で成立するケースもあります。
不動産仲介だと売却が成立するまで3~6か月、共有持分だとそもそも買主が見つからないことも珍しくありません。他の共有者への売却や分筆後の売却でも、「共有者同士で合意ができない」「分筆に反対されている」といったトラブルで売却が進まない事態も想定されます。
不動産仲介のような仲介手数料が発生しない
買取業者との売買契約締結には、他の共有人や仲介業者は関わってきません。そのため、不動産仲介を利用して売却したときに発生する仲介手数料はゼロ円になります。
仲介手数料の金額は法律で定められており、売却価格が高額になるほど仲介手数料も高くなります。金額によっては、数百万円の仲介手数料が発生する可能性もあるでしょう。買取業者への売却なら、仲介手数料を一切考えなくてよいメリットがあります。
仲介手数料については、不動産仲介を使うなら仲介手数料の見出しにて詳細を解説しています。
契約不適合責任免責によって売却後のトラブルを避けやすい
買取業者への売却の場合、売買契約時に「契約不適合責任免責」が付与されるのが一般的です。
契約不適合責任とは、引き渡した目的物の種類、品質、数量が契約内容と適合しないとき、買主(共有持分を購入した人など)が売主(共有持分を売却する人など)に対して、修補、代替物引き渡し、不足分の引き渡しなどを請求できることです。民法第562条にて定められています。
(買主の追完請求権)
第五百六十二条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
e-Gov法令検索 民法第562条
もし、買主側の請求を無視していると、買主側による「売買代金を安くする請求(民法第563条における代金減額請求)」、「損害賠償の請求(民法第564条などにおける損害賠償請求)」、「契約解除の要求(民法第564条などにおける解除権の行使)」がおこなわれる可能性が高いです。
買取業者との売買契約なら上記の契約不適合責任を免責となり、後から何かしらの瑕疵が見つかっても原則として責任を追求されません。瑕疵が見つかっても、買取業者側が補修・リフォームなどの対応をしてくれます。共有持分売却後のトラブルを回避するなら、買取業者への売却のメリットが大きいでしょう。
共有持分を買取業者へ売却するデメリット
共有持分を買取業者に売却するデメリットは、買取業者や共有者とトラブルになる可能性が出てくることです。
共有者・買取業者関係のトラブルでよくある事例は次の通りです。
- 第三者に売却したことで他の共有者からクレームがくる
- 買取業者が他の共有者へ売却を迫ったり賃料を請求したりする
- 買取業者が不動産へ出入りしたときに他の共有者とトラブルになる
- 自分や他の共有者の共有持分を相場より低い価格で買い取る
- 共有物分割請求のときに共有者と買取業者の間でうまく交渉が進まない
上記のトラブルが発生すると、他の共有者へ迷惑がかかることに加え、あなたと共有者の関係性が壊れるリスクがあります。
まず前提として、共有不動産において共有持分の所有者は、敷地内への立ち入りや正当な範囲での家賃請求・共有物分割請求などの法的措置は合法です。
しかし、他の共有者からすると「知らない第三者が自分たちの不動産を好き勝手に使おうとしている」と気分を害してしまうのも事実です。また、買取業者のなかには自社利益優先のところがあり、買取業者選びを間違えると大きなトラブルになるリスクがあります。
上記のトラブルを避けるには、共有者と買取業者を含めた事前の話し合い、優良な買取業者の選定などが大切になります。
買取業者への共有持分売却相場は「不動産価格×持分割合×1/2~1/3」
買取業者へ共有持分を売却した場合、売却相場は「共有名義不動産の市場価格×持分割合」の金額を、さらに1/2~1/3にした金額が相場と言われています。共有名義不動産の市場価格6,600万円・共有持分1/4だった場合の例は以下の通りです。
<計算例>
(6,600万円×1/4)×1/3~1/2=550万~825万円
上記はあくまでおおまかな相場であり、実際には需要や立地などさまざまな要素で金額が決まります。
とはいえ買取業者の共有持分買取は、最終的には他の共有者との交渉で共有持分を買い取り、単独所有を目指すケースが多いです。交渉の労力、共有物分割請求などの訴訟費用、リノベーション・リフォーム代などが反映される分、一般的な不動産よりも売却価格は低額だと思っておきましょう。
しかし共有名義不動産自体の価値が高ければ、共有持分でも数千万円以上で売却が可能です。実際に弊社「クランピーリアルエステート」でも、共有持分の数千万円レベルの買取実績があります。買取事例については、クランピーリアルエステート共有持分買取の事例をぜひご覧ください。
買取業者へ共有持分を売却する際のトラブルと解決策
共有持分を買取業者へ売却するデメリットでも解説した通り、買取業者へ売却した際には、通常の不動産とは異なるさまざまなトラブルが発生する可能性が出てきます。以下では、買取業者へ共有持分を売却した際に発生するトラブル事例や解決策を解説します。
他の共有者と買取業者との間でコミュニケーションがうまくいかないことがある
買取業者のビジネスモデル上、他の共有者の共有持分に関する買取交渉や共有者間の紛争仲裁をおこなうのは一般的な行為です。弊社でも共有持分について他の共有者様とお話させていただく機会が多いですが、強引な交渉ではなく「依頼者および共有者の問題を解消する」「複雑化した所有権問題について適切に対応する」といった、依頼者と共有者双方のメリットとなる提案を心がけております。
とはいえ、共有者と買取業者間のコミュニケーションが常に良好になるとは限りません。コミュニケーションの齟齬が発生すると、「勝手に敷地に入ってくる」「嫌がらせで追い出そうとしてくる」という印象を共有者が持つことになります。
また実際に共有者と買取業者とのトラブル事例には、「早朝・深夜に営業の連絡がくる」「アポなしで訪問営業をかけてくる」といった、買取業者の強引な営業が引き金になっているケースがあるのも事実です。
上記のトラブルを防ぐには、共有持分売却前に買取業者の評判・口コミ・実績をしっかり確認し、「信頼できる買取業者なのか」「自分に合う買取業者なのか」をしっかりと確認しましょう。また1社だけに査定を依頼するのではなく、複数の買取業者の査定を受け、金額や対応の印象などを比較検討することが大切です。
信頼できる買取業者なら売却前から真摯に相談を受け、なおかつ他の共有者との交渉や各種提案、売却後のアフターフォローまで具体的に事前共有したうえで対応してくれます。
相場価格よりもさらに低い金額を提示される
ただでさえ売却価格が低めになる共有持分を、相場価格よりもさらに低額で提示する業者も存在します。売却前には自分でもおおまかな相場を調べておき、相手の提示価格が相場と著しく離れていないか確認することが大切です。
ただし、悪質な業者の手口には「最初は高額で査定し、後から理由をつけて減額する」というものが存在します。具体例は次の通りです。
- 後から「瑕疵が見つかった」「そちらに落ち度がある」と難癖をつけて価格を下げる
- 測量費、修繕費、リフォーム代、コンサル代など予定になかった費用を追加請求してくる
信頼できる買取業者なら、発生費用や瑕疵などをすべて反映した査定額を最初から提示してくれます。相手からの値下げ交渉や費用請求が続くときは、その買取業者の利用は避けたほうが無難でしょう。他の買取業者への複数見積りをおこなえば、不当に低い価格で買い取ろうとする買取業者を見つけやすくなります。
なかには、他の買取業者への接触を妨害する「囲い込み」をおこなうところも存在します。可能であれば、複数会社への見積もりを同時に進めるのがよいでしょう。
買取業者へ共有持分を売却する流れ
買取業者へ共有持分を売却する流れは、主に次の通りです。
- 他の共有者へ売却することを通知する
- 必要書類を確認する
- 買取業者への無料相談や査定をお願いする
- 査定価格を確認して売買契約を締結する
- 代金が支払われた後に移転登記をおこなう
順番に見ていきましょう。
他の共有者へ売却することを通知する
買取業者への売却を進める場合、まずは売却の意思を他の共有者へ通知します。
このとき、他の共有者に購入の意思が見られたときは、その共有者への共有持分売却も併せて検討するのがよいでしょう。他の共有者への売却のほうが、高額で売却できる可能性が高いからです。
必要書類を確認する
共有持分をスムーズに売却するためにも、「登記済権利書」や「固定資産税納付通知書」などの売却時に必要な書類を揃えておきます。売却ギリギリになってから集めると手続きが滞ることがあるので、ある程度事前に集めておき、その後買取業者に足りない書類をが何かを共有してもらう形がよいでしょう。
必要書類については、共有持分売却時の必要書類の見出しにて詳しく解説しています。
買取業者への無料相談や査定をお願いする
一通りの準備を終えたら、実際に買取業者へ共有持分の査定をお願いします。悪質な買取業者を見抜くためにも、自己の共有持分がどのくらいで売却できるか、おおよその金額を調べておいてください。
買取業者によっては、無料で簡単な査定をしてくれるところがあります。査定をお願いしたからといってその買取業者を利用する必要はないので、複数の買取業者への見積もりも問題ありません。
たとえば「クランピーリアルエステート」では、以下の不動産査定フォームへ入力すればいつでも査定を申し込めるようになっています。
「まだ売却すべきか決まっていない」という場合は、無料相談を受け付けている買取業者にまずは話を聞いてもらうのもおすすめです。買取業者の査定にかかる時間は数日程度、早いところでは即日完了する場合があります。
→クランピーリアルエステートの無料査定フォームはこちら!
査定価格を確認して売買契約を締結する
共有持分の査定価格を確認して納得ができれば、買取業者との売買契約を締結します。売買契約時にはさまざまな書類が必要になるので、あらかじめ準備しておきましょう。
売買契約を結ぶときは、売買契約書の内容を隅々までチェックしてください。悪質な買取業者だと、こちら側が不利になる契約内容を意図的にはぐらかして合意を迫るリスクがあります。売買契約の内容に不安があるときは、一度契約内容を持ち帰り、不動産に強い弁護士のリーガルチェックを受けることをおすすめします。
代金が支払われた後に移転登記をおこなう
買取業者へ売却する場合、登記関係の手続きは買取業者主体で対応してくれるため、こちら側の負担は少なめです。もし登記に関して協力を求められたときは、買取業者にしたがって手続きを進めてください。
ただし、買取業者が売却代金を振り込む前に登記をおこなうのは絶対に避けましょう。過去には「先に登記を進められた後、売却代金が支払われなかった」というケースが多数存在し、裁判になった事例もあります。売却代金振込後の登記は、第三者や他の共有者へ売るときも同じです。登記、引き渡し、代金支払いは同時履行が原則です。
クランピーリアルエステート共有持分買取の事例
共有持分や共有名義不動産などの訳あり物件を専門に買取をおこなう「クランピーリアルエステート」では、これまでさまざまな共有持分を買い取らせていただきました。以下では、クランピーリアルエステートの共有持分買取事例をいくつか紹介します。
東京都世田谷区の土地の共有持分を4,600万円で買取
項目 |
概要 |
共有持分割合 |
75/100(3/4) |
物件の所在地 |
東京都世田谷区 |
買取価格 |
4,600万円 |
共有者同士のトラブルで多いのが、「土地の活用方法について意見がまとまらない」というものです。なかには、他の共有者様の同意なく独断で活用を進められる事例も存在します。
実際にクランピーリアルエステートの過去の案件では、賃貸併用住宅の建て替えや全体売却の検討中、建物に居住している共有者様にリフォーム工事を強行されてしまったお客さまがおられました。
弊社はご依頼にあたり、共有者様同士の話し合いを取りまとめ、土地の75/100(3/4)の共有持分を4,600万円で買い取りいたしました。共有持分買取の実績が豊富かつ法律関係に強い弊社なら、共有者様同士でトラブルになっている共有名義不動産でも対応が可能です。
神奈川県相模原市のマンションの共有持分を1,500万円で買取
項目 |
概要 |
共有持分割合 |
1/2 |
物件の所在地 |
神奈川県相模原市 |
買取価格 |
1,500万円 |
共有持分の売却を検討するタイミングの1つに、夫婦の離婚が挙げられます。マイホームを夫婦で共同出資している場合、出資割合に応じて共有持分が発生しており、夫婦片方の意見だけで全体を売却するのは原則として認められません。そのため、離婚に際して自分の共有持分を売却する方もおられます。
本事例では、元夫の共有者様が居住中かつローン残債がある共有持分でしたが、好立地エリアということを考慮し、マンションの1/2の共有持分を1,500万円で買い取らせていただきました。クランピーリアルエステートでは、マイホームといった建物の共有持分でも適正価格で買取を実施しております。
埼玉県さいたま市の土地の共有持分を4,000万円で売却
項目 |
概要 |
共有持分割合 |
1/3 |
物件の所在地 |
埼玉県さいたま市 |
買取価格 |
4,000万円 |
共有名義不動産の全体を売却したくても、他の共有者様からの同意を得られず、自分の意思に反して共有持分の所有を続けることも珍しくありません。
お客さまのなかには、過去に自分自身が売却に反対した経緯があったことも響き、自分が売却を希望しても他の共有者様が反対しているケースがありました。さらに、その共有状態の土地はお客さまの同意なく駐車場として不動産業者へ賃貸されているという複雑な状況です。
クランピーリアルエステートでは、他の共有者様との協議をトラブルなく重ね、お客さまが所有する1/3の共有持分を4,000万円で買取いたしました。
ここまで紹介した以外にも、相続問題の最中にあるもの、他社で買取拒否されたものなど、さまざまなトラブルを抱える共有持分の買取実績があります。より詳しい買取事例は、以下の「【最短12時間査定】クランピーリアルエステートの共有持分・共有名義不動産の買取実績」をぜひご覧ください。
共有持分の売却方法2:自己持分を他の共有者に売却する
もし他の共有者があなたの共有持分の買取を希望している場合、その共有者へ売却するのもおすすめです。自己持分を他の共有者へ売却する場合、買取業者へ売却するよりも高額になる可能性があります。
以下では、自己持分を他の共有者へ売却するケースのメリット・デメリット、売却相場などを解説します。
なお、共有者同士で売買契約を結ぶ場合は、間に不動産仲介業者を入れることをおすすめします。個人間だけの判断だと、トラブルが起きやすくなるからです。
共有持分を他の共有者へ売却するのに向いているケース
共有持分を他の共有者へ売却するのに向いているケースは、以下の通りです。
- 他の共有者が共有持分の売却に前向き
- 第三者に売却するよりも高額で買い取ってくれる
共有持分は、第三者よりも同じ共有名義不動産の共有者のほうが活用できる幅が広くなります。第三者への売却よりも好条件で成立する可能性が高いので、買取の意思を確認できたら交渉してみることをおすすめします。
共有持分を他の共有者へ売却するメリット
共有持分を他の共有者へ売却するメリットは、第三者への売却よりも高額になりやすい点です。他の共有者があなたの共有持分を取得することには、以下のメリットが存在します。
- 共有持分割合が増えて持分価格の過半数を取りやすくなったら、リフォームや軽微な変更などの管理行為が進めやすくなる
- あなた以外の共有者がいないと不動産の完全所有権を得られるので、不動産を自由に活用できるようになる
上記の理由から、自己持分の共有名義不動産は他の共有者からの需要が高く、買取業者や第三者への売却のように売却価格が低くなるケースは少なくなります。また、知らない人や業者よりも、すでに共有名義不動産の所有者に売却したほうが、売却前・売却後のトラブルも発生しづらくなるでしょう。
共有名義不動産における共有者は親族のケースが多いため、売却の交渉も進めやすいと言えます。
共有持分を他の共有者へ売却するデメリット
共有持分を他の共有者へ売却するデメリットは、他の共有者に共有持分の購入意思がなければそもそも売買契約が成立しない点です。売買契約は、双方の合意がなければ成立しません。他の共有者が「共有状態のままでよい」「買い取るお金がない」といった状況だと、売買契約を成立させるのは難しいでしょう。
一方で、「共有者が買取のメリットを知らない」「共有者が抱える問題を解消できる」といった場合なら、交渉によっては買い取ってもらえる可能性があります。たとえば買取のメリットを知らない人に「単独所有だったら後は好きに不動産を使える」と伝えれば、買取に前向きになってくれるかもしれません。
逆に、買取を強引に迫ると人間関係の悪化やその他のトラブルにつながるリスクがあります。交渉を持ちかけるときは、相手に圧力をかけたり無理やり話を進めたりなどは避けてください。
他の共有者へ売却する場合の相場は「不動産価格×持分割合」
他の共有者へ自分の共有持分を売却する場合、「不動産価格×持分割合」が売却価格の一般的な相場です。3,000万円で共有持分が1/3なら、1,000万円がおおまかな売却相場になります。
買取業者への売却はここから1/2~1/3に価格が下がるものの、他の共有者への売却なら、不動産価格と自分の所有分に応じた資産価値そのままで売却しやすいということです。
ここで注意しておきたいのが、売却する共有持分の価格を安くしすぎると、贈与税が発生する可能性がある点です。不動産の資産価値に対して著しく安い価格で売却すると、資産価値と売却価格の差額が実質的な贈与(みなし贈与)としてみなされ、差額分に贈与税が課せられるケースがあります。
たとえば「共有持分割合が40%なのに10%分の値段で自分の子どもに売却したが、差額の30%分に贈与税がかかってしまった」という事例が当てはまります。
他の共有者へ共有持分を売却する際のトラブルと解決策
他の共有者へ共有持分を売却する際のトラブルとして多いのは、売買契約の内容や売却価格で折り合いがつかずに揉めるケースです。
不動産の査定価格、売買に関する権利関係、その他の契約条項を決めるためには、不動産や民法などに関する専門知識が必要です。個人間だけで勝手に進めてしまうと、後々法的トラブルが発生するリスクがあります。たとえば契約不適合責任が生じたり、法的に無効な契約書となったりなどが考えられます。
他の共有者への売却に関するトラブルを避けるには、専門家にサポートを依頼するのが効果的です。
不動産鑑定士や不動産仲介会社が厳正に査定した金額なら、他の共有者も価格に納得してくれやすくなります。契約書の作成やリーガルチェックに弁護士や仲介業者の力を借りれば、売買契約に問題がないかの確認や、共有者同士の協議の取りまとめなどをサポートしてくれるでしょう。
他の共有者へ共有持分を売却する流れ
他の共有者へ共有持分を売却する流れは、主に次の通りです。
- 買取の意思がある共有者と交渉する
- 不動産鑑定士や不動産仲介会社に不動産を査定してもらう
- 不動産仲介会社に依頼して他の共有者との売買契約を仲介してもらう
- 所有権移転登記をおこなう
買取業者を利用した売却と同じように、共有持分売却において必要になる書類は事前に準備しておきましょう。
買取の意思がある共有者と交渉する
他の共有者にあなたの共有持分を買い取る意思があるかを確認し、意思が確認できたら交渉をおこないます。「本当に売却するのか」「売却した後にやることや権利関係はどうなるのか」といったおおまかな内容を確認し、具体的に買い取ってもらえるかを確認します。
具体的な売却価格や契約内容などを決定するのは、専門家のサポートを受けてから進めるのがよいでしょう。
不動産鑑定士や不動産仲介会社に不動産を査定してもらう
売却価格を決定するために、共有名義不動産全体や共有持分について専門家に査定してもらいます。査定をお願いするなら、不動産鑑定士やその後の仲介を依頼予定の不動産仲介会社がおすすめです。
なお、双方の合意があれば専門家の査定結果に関係なく、あなたと共有者間で売却価格を自由に決められます。信頼できる相手かつ価格に納得できれば、査定なしで手続きを進めても問題ありません。
不動産仲介会社に依頼して他の共有者との売買契約を仲介してもらう
実際に売買を進める際は、不動産仲介会社にサポートを依頼します。話し合いの取りまとめ、売却価格の確認、売買契約の内容精査、売買契約書の作成などを不動産仲介会社にサポートしてもらい、売買契約締結が円滑に進むようにしましょう。ただし、不動産仲介会社に依頼すると仲介手数料がかかるので注意してください。
所有権移転登記をおこなう
相手から共有持分の売却価格が振り込まれたら、自分の共有持分の所有権を売却先の共有者へ移す所有権移転登記をおこないます。不動産の売買契約においては、所有権移転登記に対応するのは買主側です。とはいえ、他の共有者との関係性によっては手続きや費用負担について柔軟に決めるのがよいでしょう。
なお所有権移転登記を進めるときは、司法書士に登記を依頼することをおすすめします。
共有持分の売却方法3:共有名義不動産が土地の場合は分筆して売却する
共有名義不動産が土地の場合、土地を共有持分割合に応じて分筆してから売却する方法もあります。
分筆とは、1つの土地を複数に分割し登記し直す手続きです。分割後の土地にはそれぞれ名義人を設定できるので、「3人が共有する土地を3つに分割して、3人それぞれの単独名義にする」といった対応ができます。共有状態の土地1,200㎡で共有持分1/3ずつなら、3人がそれぞれ400㎡の土地の単独名義人になるイメージです。
分筆によって共有持分に応じた完全所有権を得ることで、共有持分のままで所有するよりも土地の売却・その他活用が格段にやりやすくなります。以下では、共有名義不動産の分筆後に売却するメリット・デメリットや売却相場を解説します。
共有名義不動産を分筆して売却するのに向いているケース
共有名義不動産を分筆して売却するのに向いているケースは、以下の通りです。
- 他の共有者も共有状態を解消したいと思っており、共有状態解消後にそれぞれが土地を活用したいと思っている
- 共有持分のままで売却するよりも高額で売りたい
正確に言えば共有名義不動産の分筆後の売却は、共有持分ではなく完全所有権の土地の売却です。そのため、通常の土地と同じように売却しやすくなります。
共有名義不動産を分筆して売却するメリット
共有名義不動産を分筆して売却するメリットは、共有持分の土地を、単独名義の土地として売却できる点です。
たとえば共有状態の土地1,000㎡のうち400㎡分の共有持分を持つ場合、その共有持分を売却すると400㎡分の不動産価格より1/2~1/3の価格相場に下がります。一方で分筆した場合は、ほかの共有者が存在しない「普通の400㎡の土地」として売却できます。分筆によって単独所有とするメリットは次の通りです。
- 単独所有の通常の土地と同じ扱いで売却できる
- 土地購入後も自由に活用できるので、一般の人からの需要にも期待できる
- 共有状態が解除されるので、共有名義不動産におけるトラブルが発生しなくなる
- 売却以外にも「建物を建てて賃貸にする」「借地契約を結ぶ」「駐車場にする」といった収益化ができる
分筆のためには条件のクリアや手続きが必要になる反面、土地の売却においてさまざまなメリットが存在します。共有状態から抜け出すのが目的なら、売却しなくても分筆して完全所有権を得るだけで問題を解決できます。
共有名義不動産を分筆して売却するデメリット
共有名義不動産を分筆して売却するデメリットは、分筆するためにさまざまな手続きが必要になる点です。
共有名義不動産の分筆は軽微な変更に該当するため、共有者の持分の過半数の同意がなければ分筆はできません。また同意が得られても、土地の事前調査、分筆案作成、役所との連携、隣接する土地の所有者の同意などが求められます。
また分筆手続き自体には測量費などの費用が必要になるため、他の売却方法よりも支出が多くなる可能性が高いです。ケースによっては、数百万円かかる可能性があります。
さらに、原則として建物の分筆はできません。同じ建物のなかで明確に所有権を区切って境界線を設定するのは現実的ではないからです。建物が立っている土地を分筆するときは、土地の境界線ができるだけ建物をまたがないように注意しましょう。
分筆後の土地が0.01㎡未満になるときは、その土地についての登記は実質的にできません。登記簿に表示される面積は0.01㎡未満が切り捨てとなっており、0.01㎡未満の土地を登記するすべが現状ないからです。また、市街化調整区域などにある土地は、自由に分筆できない可能性があります。
共有名義不動産を分筆したときの売却相場は面積分の通常の土地価格
共有名義不動産を分筆したときの売却相場は、分筆後の土地の面積分に応じた、通常の土地価格となります。ただし分筆する場合だと、分筆後の土地の形状・面積によって売却価格が変動します。たとえば以下に該当すると、土地の価格が安くなる可能性が高いです。
- 土地の面積が狭い
- 不整形地に該当するほど形状がいびつ
- 敷地内に急な傾斜が存在する
- 道路と土地の高低差が大きい
- 日当たりが悪くなっている
- 土地が道路と接しておらず、接道義務違反となっている
- 分筆で小規模住宅用地の適用外になり固定資産税が3倍または6倍になる
分筆する際は、分筆後の形や土地の境界などをしっかりと検証してから進めましょう。分筆後の形によっては、共有持分のまま売却したほうが高額になるかもしれません。
共有名義不動産を分筆して売却する際のトラブルと解決策
共有名義不動産の分筆で想定されるトラブルは、他の共有者や隣地の所有者の同意を求める際に揉めることです。共有者から分筆に反対されているときは、分筆によるメリットを基に交渉してみてください。
共有者との話し合いが進まないときは、共有物分割請求協議、共有物分割請求調停、共有物分割請求訴訟などにて現物分割(分筆で物理的に分割すること)を求めることになります。
隣地の所有者の協力を得られないときは、「境界確定訴訟で強制的に境界を決める」「筆界特定制度を利用する」といった方法が考えられるでしょう。しかしいずれの方法も半年から1年単位の時間と労力がかかるので、説得が難しいと判断したときは買取業者や他の共有者への共有持分売却を検討することをおすすめします。
土地の分筆から売却までの流れ
共有名義不動産の土地を分筆して売却するまでの流れは、主に次の通りです。
- 売却するうえで「本当に分筆するべきか」を確認する
- 分筆前に土地家屋調査士に分筆手続き・事前調査を依頼する
- 分筆案を作成する
- 役所の担当者に現地確認してもらう
- 隣地の所有者の同意や隣地の所有者立会いの下での分筆案確認をお願いする
- 境界標を現地に設置する
- 分筆登記や所有権移転登記をおこなう
- 分筆した土地の売却について不動産仲介会社へ相談する
それぞれについて見ていきましょう。なお分筆についても共有者の同意は、過半数を得られたものとして解説します。
売却するうえで「本当に分筆するべきか」を確認する
共有持分の売却に分筆を利用する場合、「本当に分筆して売却すべきなのか」を事前にしっかりと確認しておきましょう。
後述しますが、土地の分筆は「土地家屋調査士へ依頼する」「調査、測量、分筆案作成をおこなう」「役所の人や隣地の所有者に確認してもらう」「登記する」といった、さまざまな手続きを時間かけて進める必要があります。土地によっては費用が数百万円かかることもあり、一度進めれば途中で止めることも難しいでしょう。
また、分筆したからといって土地が高額で売れるとは限りません。分筆後の面積・形状などによっては、想像以上に安い値段しか付かないリスクもあります。
以上のことから、分筆して売却する際には事前検討を十分におこなうことをおすすめします。「分筆すべきなのか」「分筆後の売却金額の目安がわからない」といった疑問があるときは、不動産会社等へ前もって相談しておくのがよいでしょう。
分筆前に土地家屋調査士に分筆手続き・事前調査を依頼する
土地の分筆は、土地家屋調査士に依頼しましょう。
土地家屋調査士とは、不動産の表示に関する調査・測量・登記の専門家です。
土地家屋調査士なら、分筆予定の土地の調査・測量・登記について一括でお願いできます。そのため、分筆についての依頼なら土地家屋調査士が一番おすすめです。
土地家屋調査士に依頼したら、まず事前調査を進めていきます。事前調査は登記内容と実際の土地の内容比較をおこなうので、事前に公図、地積測量図、登記事項証明書を準備しておいてください。
分筆案を作成する
分筆案とは、分筆する土地をどのように分筆するかをまとめた書類です。共有名義不動産をどのように分筆するか決定し、土地家屋調査士に作成を依頼します。分筆検討時には、「分筆後の土地価格は低くならないか」「接道義務は満たせているか」など、不動産価値に影響する部分をしっかりと確認しておきましょう。
役所の担当者に現地確認してもらう
分筆案を作成した後は、役所の担当者に分筆予定の土地の現地確認をお願いします。役所の担当者は分筆案の確認、事前調査の内容、実際の土地との差異などを確認します。
隣地の所有者の同意や隣地の所有者立会いの下での分筆案確認をお願いする
役所の担当者の確認が終わったら、隣地の所有者に分筆の同意や、隣地の所有者立会いの下での分筆案確認をお願いしていきます。隣地の所有者の同意や確認がなければ、分筆に関する登記手続きを進められないからです。
境界標を現地に設置する
役所と隣地の所有者の確認が終わったら、土地の境界線を点・線の位置で表す「境界標」を設置します。境界標には、コンクリート杭、プラスチック杭、石杭、金属標、金属鋲などが存在します。どの境界標でも問題ないですが、途中で破損して境界がパッと見でわからなくなる事態を避けるために、破損しにくいものを選ぶのがおすすめです。
分筆登記や所有権移転登記をおこなう
土地を物理的に分割できたら、分筆登記で分筆した土地の登記を進めます。分筆登記には登記申請書の他にも、境界確認書、地積測量図などこれまでの手続きを進めるうえで入手した書類が必要です。
土地家屋調査士は表示部分の登記はできるものの、所有権といった権利関係の登記を代理できません。所有権移転登記は、司法書士に依頼してください。所有権移転登記をしないと、分筆した土地をそれぞれ共有名義で所有している状態になってしまいます。
分筆した土地の売却について不動産仲介会社へ相談する
土地の分筆が完了すれば、後は通常の不動産を売却するときと同じように進めます。主な流れは次の通りです。
- 土地の売却について不動産仲介会社に依頼する
- 仲介を通じて土地をほしい人が見つかったら交渉する
- 売主・買主間で売買契約を締結する
- 売却代金が振り込まれたら所有権移転登記を進める
分筆後の土地は通常の不動産とほぼ同じであるため、不動産仲介でも十分に売却が見込めます。仲介は買取よりも高額で売却しやすいため、まずは不動産仲介での売却を検討するのがよいでしょう。
共有持分が特殊な状況下にあるケースの売却
ここまでは一般的な共有持分の売却について解説してきましたが、なかには特殊な状況下にある共有持分が存在します。もし共有名義不動産全体の売却や分筆による売却を検討している場合、特殊な状況に対応しなければ売却関係の手続きが進められません。
以下では、共有名義不動産の共有持分が特殊な状況下にあるケースでの売却について解説します。
自己持分だけなら、特殊な状況下でも売却できます。しかし、問題を放置した状態だと買主側にもリスクが大きすぎるので、共有持分自体の需要や価値がさらに下がってしまう可能性があります。
他の共有者と連絡が取れないケース
共有名義不動産のなかには、連絡が取れない、意思疎通が難しい共有者がいるケースがあります。具体的には次の共有者です。
- 共有者が行方不明で音信不通になっている
- 共有者が死亡している
- 共有者が認知症で判断能力がなく法律行為ができない
上記に該当する共有者からは同意を得られないので、共有者全員の同意が必要な共有名義不動産全体の売却が実質できません。共有者の共有持分割合によっては、共有者の持分価格の過半数が必要な分筆もできなくなります。
しかし、2023年の改正民法をはじめとするさまざまな制度を活用すれば、他の共有者との連絡や意思疎通が難しくても売却などを進められます。以下では、ケース別の対応方法をまとめました。
共有者が行方不明で音信不通になっている
共有者が行方不明で音信不通になっているときは、改正民法における制度の利用がよいでしょう。改正民法では共有者のなかに不明者が存在すると、裁判所の決定を経て以下の取り扱いが認められるようになりました。
- 不明者以外の共有者全員の同意があれば、その共有物における変更行為(売却や取り壊しなど)ができる
- 不明者以外の共有者の持分価格の過半数があれば、その共有物における管理行為(分筆やリフォームなど)ができる
共有者が死亡している
共有者が死亡しているときは、まず共有者の相続人を探して連絡を取りましょう。共有者が死亡した時点で、その共有持分は相続人へ相続されているからです。相続人が同意すれば、死亡した共有者が同意したものと同じように進められます。
もし相続人が存在しないときは、裁判所へ申し立てて「相続財産管理人」を選任します。
民法第255条には「共有者が共有持分を放棄した、または死亡して相続人がいないときは、その持分は他の共有者に帰属する」となっていますが、結局は相続財産管理人を選任して所有権移転登記をしてもらわなければなりません。選任するには、「相続財産管理人の選任」「債権申立てや相続人捜索の公告」「特別縁故者に対する相続財産の分与」をおこなう必要があります。
共有者が認知症で判断能力がなく法律行為ができない
共有者が認知症だと、民法第3条の規定通り「意思能力が欠けた状態だと法律行為は無効」となります。共有者が認知症の場合は、法定後見人制度を利用し、家庭裁判所の審判で選任した成年後見人から同意を得る方法があります。
しかし、成年後見制度は手続きに手間がかかる、後見人を自由に指名できない、認知症の本人が死亡するまで継続するなど他の問題も発生しやすいです。そのため、共有者に認知症の傾向が見られる前に「共有名義を解消する」「家族信託で所有者と管理者を分けておく」といった対策を講じることが一番有効です。
上記の他には、認知症の共有人の特別代理人を立ててから、共有物分割請求訴訟を起こす方法もあります。
夫婦の共有名義不動産で住宅ローンが設定されているケース
共有名義不動産のなかには、夫婦で所有しているものも珍しくありません。しかし、夫婦の共有名義不動産で住宅ローンが設定されているケースだと、夫婦が離婚するときに契約関係が複雑になる可能性があります。
たとえば、住宅ローンが残っている状態で共有名義不動産を売却しようとすると、ローンの状態がアンダーローンかオーバーローンかで対応が変わります。
ローンの種類 |
概要 |
例 |
アンダーローン |
不動産査定価格>ローン残債の状態 |
不動産査定価格1,000万円
ローン残債500万 |
オーバーローン |
ローン残債>不動産査定価格 |
ローン残債1,000万円
不動産査定価格500万 |
アンダーローンの場合は、共有名義不動産を売却すれば住宅ローンを完済できるので、ローン充当後に残った現金を財産分与すれば問題ないでしょう。
一方、オーバーローンの場合は共有名義不動産を売却しても住宅ローンが完済できないので、夫婦が売却に合意しようとも金融機関が抵当権を外すことを認めません。オーバーローンの夫婦の共有名義不動産の売却は、抵当権を設定した金融機関の許可を得て、任意売却する方法が考えられます。任意売却後も住宅ローンが残っているときは、夫婦が住宅ローンの残債を均等に負担します。
もし離婚後も夫婦のどちらかが住宅ローンが残った共有名義不動産に住み続けるときは、共有名義を解消したほうが無難です。共有名義のままだと、離婚後も配偶者が関与してくる、ペアローンだと相手側の滞納を自分が背負う可能性がある、共有名義のままで相続が発生するとさらに共有者が増えるなどのデメリットがあります。
共有持分を持ち続けることで想定されるトラブル
売却以外の方法を含め、共有持分を手放したいと考えている人は、早めに手放すように動くことをおすすめします。共有持分を持ち続けることで想定されるトラブルは、主に次の通りです。
- 共有持分だけだと活用が難しいうえに固定資産税や維持管理費がかかる
- 共有者とのトラブルに発展する
- 相続で共有持分がさらに分割されて権利関係が複雑化する
それぞれについて解説します。
共有持分だけだと活用が難しいうえに固定資産税や維持管理費がかかる
共有持分を持ち続けていても、共有名義不動産を自分で自由に活用できるわけではありません。建て替え・増改築・長期賃貸借などには共有者全員の合意、リフォームや砂利道のアスファルト舗装には共有者の持分価格の過半数が必要です。
仮に同意が得られても、実施した行為の効果を他の共有者も享受することになります。共有名義不動産から何かしらの収益が出ても、共有持分に応じて分配しなければなりません。仮に活用せずに放置していても、共有持分割合に応じた固定資産税・都市計画税・維持管理費は、共有持分を所有する限り支払う必要があります。
このように、よほどの目的や収益がなければ、共有持分の所有を持ち続けるメリットは薄いと考えられます。
共有者とのトラブルに発展する
共有名義不動産の所有権を有する際の大きなリスクが、他の共有者とのトラブルが発生する点です。具体的には、以下のトラブルが想定されます。
- 特定の共有者が共有名義不動産を占有している
- 他の共有者から家賃を請求される
- 共有名義不動産から発生した収益を特定の共有者が独占する
- 他の共有者が自分が持つ共有持分を悪質な買取業者に売り、さまざまなトラブルに巻き込まれる
- 共有物分割請求を起こされて、忙しいなかでも対応せざるおえなくなった
- 他の共有者が共有持分を放棄した結果、法律の基づいて分配された共有持分の贈与税や不動産取得税を支払うはめになった
上記のトラブルは、共有持分を持っていなければ回避できるものばかりです。
相続で共有持分がさらに分割されて権利関係が複雑化する
共有持分は、他の不動産と同じく共有状態にできます。ある不動産の共有持分を1/3所有している状態から、さらに2人が均等に共有すると1/6・1/6ずつの共有持分になります。
こうした共有持分の分割が、意図せず発生するのが相続です。もし他の共有者が死亡して相続が発生したときは、死亡した共有者の共有持分を相続人が取得するので、自分以外の共有者がさらに増えてしまいます。共有者が増えるほど権利関係が複雑になり、さまざまなトラブルや争いが発生しやすくなります。売却や建て替え時に、共有人全員の同意を得るのもより困難となるでしょう。
相続によって権利がより複雑化する前に、共有名義を解消する、自分の共有持分を手放すといった対応を取ることをおすすめします。
共有持分売却時に発生する費用や税金
共有持分売却時には、さまざまな費用や税金の支払いが発生します。あらかじめ費用や税金について確認しておき、「手取りが想像より少なくて混乱した」「必要なお金を支払っていなかった」といった事態を避けられるようにしましょう。
共有持分売却時に発生する費用や税金は、主に次の通りです。
- 売却益にかかる譲渡所得税・住民税
- 登録免許税や司法書士報酬など登記関係の費用
- 売買契約書にかかる印紙税
- 不動産仲介を使うなら仲介手数料
- 土地を分筆するなら測量や分筆にかかる費用
- その他雑費など
それぞれ簡単に解説します。
売却益にかかる譲渡所得税・住民税
共有持分を売却して売却益が出たら、その売却益に対して譲渡所得税(復興特別所得税含む)と住民税がかかります。正確には、以下の計算式で算出された譲渡所得に税率を乗じ、その金額分の譲渡所得税や住民税を支払います。
【譲渡所得税の計算】
・譲渡所得=共有持分の売却価格-(取得費※+譲渡費用)-特別控除
・譲渡所得税・住民税=譲渡所得×税率
※取得費は共有持分割合に応じた金額になる
譲渡所得に乗じる税率は、その共有持分の所有権が発生したときからの所有年数に応じて決まります。
- 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下:39.63%(譲渡所得税30.63%・住民税9%)
- 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年超:20.315%(譲渡所得税15.315%・住民税5%)
譲渡所得税・住民税が発生したら、確定申告によって税務署(住民税は自治体)に譲渡所得や納税額を申告しなければなりません。確定申告後、任意の方法で納税します。
もし売却する共有持分が「マイホーム(居住用財産)」や「被相続人の居住用財産(空き家)」
に該当する場合は、最大3,000万円の控除が受けられます。
出典:国税庁「No.3308 共有のマイホームを売ったとき」
共有持分の売却は共有者ごとに3,000万円ずつ適用できるので、マイホームの共有持分を売却するときなら特別控除が使えないか確認してみてください。
参考:国税庁「土地や建物を売ったとき」
登録免許税や司法書士報酬など登記関係の費用
所有権移転登記や司法書士報酬など、登記関係にも費用がかかります。原則として売主側は買主側よりも登記関係の費用は少ないものの、契約内容などによっては売主側も登記費用を負担する可能性もあります。一応、登記にいくらかかるのかを確認しておいてください。
以下では、発生が見込まれる登記に関する費用をまとめました。
手続き |
おおまかな費用 |
所有権移転登記(売買)の
登録免許税 |
固定資産税評価額に以下の税率を乗じる
土地:2%(2026年3月31日まで1.5%)
建物:2% |
所有権移転登記の司法書士報酬 |
1件あたり5万~10万円 |
分筆登記の
登録免許税 |
1筆あたり1,000円 |
分筆登記の土地家屋調査士報酬 |
6万~10万円 |
参考:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
売買契約書にかかる印紙税
売買契約書には、共有持分の売却価格に応じた印紙税がかかります。売却価格が100万超~10億円以下の1枚あたりの印紙税は次の通りです。
共有持分の売却価格 |
印紙税代 |
100万円超500万円以下 |
2,000円 |
500万円超1,000万円以下 |
1万円 |
1,000万円超5,000万円以下 |
2万円 |
5,000万円超1億円以下 |
6万円 |
1億円超5億円以下 |
10万円 |
5億円超10億円以下 |
20万円 |
参考:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
不動産仲介を使うなら仲介手数料
不動産仲介を利用した場合だと、成立した売買契約の価格に応じて、以下の仲介手数料の上限が定められています。
売却価格 |
手数料計算 |
200万円以下の部分 |
売却価格の5%+消費税
(計5.5%) |
200万円超から
400万円以下の部分 |
売却価格の4%+消費税
(計4.4%) |
400万円超の部分 |
売却価格の3%+消費税
(3.3%) |
売却価格400万円を超えるときの速算式 |
(売却価格の3%+6万円)×1.1 |
参考:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」
たとえば共有持分が1,000万円で売却できたとしても、不動産仲介を利用していると、最大で以下の仲介手数料が必要です。
- 200万円以下の部分:200万円×5.5%=11万円
- 200万円超~400万円以下の部分:200万円×4.4%=8万8,000円
- 400万円超~1,000万円の部分:600万円×3.3%=19万8,000円
- 合計:11万円+8万8,000円+19万8,000円=39万6,000円
- 速算式:(1,000万円×3%+6万円)×1.1=39万6,000円
土地を分筆するなら測量や調査にかかる費用
土地を分筆して売却する場合は、測量や調査などにかかる費用があります。これらは専門知識と実務経験が求められる作業であるため、土地家屋調査士へ対応を依頼するのが一般的です。土地家屋調査士に依頼したときにかかるおおまかな報酬は以下の通りです。
作業内容 |
土地家屋調査士報酬 |
現地測量 |
10万円~ |
測量費用 |
10万円~ |
資料作成費用(境界確認書など) |
10万円~ |
官民境界確定図の作成費 |
10万円程度 |
境界標の設置費 |
10万円~ |
分割登記の依頼を合わせると、30万~80万円程度が平均になるイメージです。土地の面積によっては、100万円以上かかる場合があります。
その他雑費など
共有持分の売却時には、売買契約に必要な書類の取り寄せ費用、共有名義不動産からの引越し費用、その他移動費などもかかります。おおよそ数万円程度を見込んでおくとよいでしょう。
共有持分売却時の必要書類
共有持分の売却時には、主に以下の必要書類を準備しておきます。
必要書類 |
概要・入手先 |
登記済権利書
または
登記識別情報 |
共有持分の所有者であると証明するもの
持分取得時に法務局から交付 |
重要事項説明書 |
契約上重要な情報が記載された書面
宅地建物取引士へ作成を依頼 |
固定資産税評価額の証明書 |
共有名義不動産の固定資産税評価額や共有持分割合、床面積、地積などが載っている証明書
自治体の窓口にて取得 |
身分証明書・住民票 |
自分が共有持分の所有者本人であると証明するためのもの
運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど顔写真が付いたもの
住民票は3か月以内に発行されたもの
住民票は自治体窓口やコンビニで取得 |
印鑑・印鑑証明書 |
認印でも問題ないが実印のほうが望ましい
印鑑証明書は発行から3か月以内
自治体の窓口やコンビニにて取得 |
土地測量図・境界確認書
(土地の共有持分売却の場合) |
持っていないときは土地家屋調査士に依頼して土地境界確定測量を実施 |
上記の他にも書類を求められることがあります。また、土地を分筆登記するときには以下の書類が必要です。
必要書類 |
概要・入手先 |
土地測量図・境界確認書 |
分筆手続時に土地家屋調査士から取得 |
登記申請書 |
分筆登記に関する申請書
法務局などで取得 |
現地案内図 |
分筆する土地の場所がわかる案内図 |
委任状 |
土地家屋調査士が代理で登記申請する際に必要になる書類 |
なお実際にどのような書類が必要になるかは、都度業者へ確認しましょう。
共有持分売却後には確定申告や納税が必要
共有持分売却後に譲渡所得税が出る場合は、所得税の確定申告が必要です。所得税の確定申告をすれば自治体にも共有されるため、住民税の申告もしたことになります。
譲渡所得税は「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」に該当し、申告分離課税として申告します。事業の儲けを表す事業所得や、ビジネスマンの給料として受け取る給与所得などの総合課税とは別計算です。使用する確定申告書も、分離課税用の確定申告書(第三表)を使うので注意してください。
参考:国税庁「確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)」
確定申告の方法は、国税庁が公開する「譲渡所得の申告のしかた」といったガイドブックに沿えば誰でも簡単にできます。国税庁の確定申告書等作成コーナーやクラウド会計ソフトを使えば、画面の案内にしたがって情報を入力するだけで確定申告書の作成が可能です。近年では、電子申請にも対応しています。
確定申告書は、共有持分の売却益を得た翌年の2月16日~3月15日の期間中に納税地の税務署へ提出しましょう。確定申告をした後は、申告した譲渡所得税を支払い用紙、口座振替、e-Taxを使った納付、クレジットカード、コンビニQRコードなどの方法で納税してください。
参考:国税庁「【税金の納付】」
共有持分を売却する以外に共有状態を解消する方法
「売却じゃなくてもよいので、とにかく共有持分を手放したい」「共有状態を解消したい」という場合は、以下の方法で共有状態を解消できます。
- 「放棄」をして他の共有者の共有持分割合に応じて贈与する
- 「贈与」をして特定の共有者へ無償で渡す
- 「共有物分割請求」で分筆・売却・単独所有のいずれかを選ぶ
それぞれの概要を見ていきましょう。
「放棄」をして他の共有者の共有持分割合に応じて贈与する
共有持分の放棄手続きをすると、民法第255条に基づき他の共有者の共有持分割合に応じて、放棄した共有持分が分配されます。たとえば共有名義不動産で3人が1/3ずつ共有持分を持ち合っているケースだと、1人が共有持分を放棄すると、残りの2人に分配されて1/2ずつになります。
共有持分の放棄のメリットは、自分だけの意思で進められることです。売買契約なども必要ないので、売却よりも簡単に手放せます。一方で現金は一切手に入らず、共有持分を手放せる以外に利益がないのが放棄のデメリットです。また、譲渡先を自分で選べない、受贈先に贈与税や不動産取得税がかかる、放棄時の名義変更には他の共有者の協力が必要になるといった注意点も存在します。
相続時に共有持分を放棄するのは「相続放棄」にあたり、上記で解説した放棄とは別の手続きになります。
「贈与」をして特定の共有者へ無償で渡す
贈与なら放棄とは異なり、自分の共有持分を特定の相手へ無償で渡せます。生前贈与による相続税対策としても有効です。共有持分を渡したい人が明確に存在するなら、贈与による共有状態の解消を検討してみてください。
ただし、受贈者には共有持分の評価額に応じた贈与税や不動産取得税が課せられます。共有持分の評価額が高額になるほど税金も高くなるため、事前に贈与相手と情報を共有し確認を取っておきましょう。
とくに贈与税は税率が高く、共有持分の評価額が高額だと受贈者に大きな負担がかかります。共有持分の相続税評価額が1,000万円だと、贈与税は以下の通りです(暦年課税・一般贈与財産用)。
<贈与税の計算例>
(1,000万円-基礎控除110万円)×30%-65万円=贈与税額202万円
いきなり200万円超えの贈与税+不動産取得税がかかるとなると、受贈者側も準備なしで対応するのは非常に困難です。
贈与するときは後からトラブルが起こらないよう、売買と同じように事前に贈与関係の税金・費用の話を共有したうえで、受贈者との贈与契約書を作成することを推奨します。
参考:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
「共有物分割請求」で分筆・売却・単独所有のいずれかを選ぶ
共有者同士の話し合いがまとまらないという場合は、共有名義不動産に関する共有物分割請求を起こす方法があります。共有物分割請求のなかで「分筆して持ち合う」「すべて売却して得た現金を分配する」「共有者の1人がほかの共有持分をすべて買い取る」のいずれかの方法を決定し、共有状態解消を目指すのも1つの選択肢です。
上記の分割方法を、それぞれ現物分割・換価分割・代償分割と呼びます。
共有物分割請求の方法 |
概要 |
現物分割 |
分筆によって共有持分割合に応じた土地の分割をおこない、それぞれを単独名義で所有させる方法 |
換価分割 |
共有名義不動産をすべて売却し、得た売却益を共有持分割合に応じて分配する方法 |
代償分割 |
共有者の1人がほかの共有者の共有持分を買い取り、対価を支払う方法 |
共有物分割請求は、原則として拒否は認められていません。
共有物分割請求の協議・調停では、どの分割方法をおこなうかを共有者同士の話し合いで決めます。話し合いがまとまらず共有物分割請求訴訟に移行したときは、法廷での争いを基に裁判官が最終決定を下します。共有物分割請求についての詳細は、以下の記事をご覧ください。
まとめ
共有持分を売却するには、「買取業者の買取」「他の共有者への売却」「共有名義不動産を分筆後に売却」の3つの方法が考えられます。買取業者の買取なら自分の意思だけで進められるうえに、トラブルが多い共有持分でも1か月程度でスムーズに売却が可能です。契約不適合責任免責などによって、売却時・売却後のトラブルも防ぎやすいメリットがあります。
一方、もし他の共有者が協力してくれるなら、他の共有者への売却や分筆後の売却のほうが、買取業者へ売却するときよりも売却価格が高くなる可能性が上がります。どの方法があなたにとって一番適切であるか、ぜひ当記事を参考にご判断ください。
買取業者による買取をご希望なら、共有持分・共有不動産といった訳あり物件専門の買取業者である「クランピーリアルエステート」がお受けいたします。年間3,000件以上の相談実績、数千万円以上の共有持分買取実績、全国1,500以上の士業(弁護士や税理士など)との連携など、共有持分買取に関するさまざまな経験とノウハウを有しています。
無料相談や無料査定にも対応していますので、気軽にお問い合わせください。
共有持分・共有名義不動産に関するよくある質問
共有持分の資産価値の確認方法は?
共有持分の資産価値を前もって正確に確認したいときは、不動産鑑定士や土地家屋調査士などの専門家の協力を得て査定を進めるのがよいでしょう。現在の固定資産税評価額を知りたいときは、固定資産税の納税通知書や自治体の窓口にて固定資産税台帳を確認します。
共有者が持分を勝手に売却したらどうなりますか?対処法は?
共有者が勝手に自分のものを売却すること自体には、法的問題は一切ありません。もし新しい共有者に問題があるときは、自分の共有持分を売却・放棄する、問題がある共有者の共有持分を買い取るなどが今のところの対処法です。共有物分割請求請求をされたら、すぐに不動産に強い弁護士へ相談するのがよいでしょう。
共有持分を売却するならどのタイミングがよい?
共有持分は、相続時に売却するのが一番よいタイミングです。遺産分割協議のなかで共有持分以外の相続財産に代える、遺産分割協議を通じて共有名義不動産全体の売却を提案しやすい、相続放棄でスムーズに手放せるなど、柔軟な対応が取りやすいからです。他には離婚したとき、住宅ローンがアンダーローンになったときも共有持分に手放すタイミングになります。
共有状態にならないようにするためには?
不動産所有者が生きている間に不動産を処分しておく、不動産相続時の遺産分割で「不動産を単独所有にする代わりに代償金を支払う」といった対応をする、不動産を共同出資で購入しないなど、そもそも共有名義不動産ができないように立ち回るのが効果的です。
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