共有持分を相続する手順
共有持分を相続するときは、単独所有の不動産を相続するときと同様に、名義を変更する相続登記が必要です。
また、相続財産ですので、相続税を納める必要もあります。
相続の具体的な流れは、次のように進めます。
- 遺言書を探す
- 遺言書がなければ遺産分割協議をおこなう
- 相続登記を申請する
- 相続税を納める
1.遺言書を探す
最初に遺言書を探しましょう。遺言書が見つかれば、その内容にしたがって遺産を分割します。
自宅に置かれているケースもありますが、弁護士や司法書士のような専門家が保管している可能性もあります。そのような専門家の名刺や連絡先の有無を確認してみましょう。
また、公証役場で「公正証書遺言」が作成されていないかどうかも確認しましょう。公正証書遺言とは、法務大臣によって任命された公証人が「内容に不備がない」と確認した遺言です。
公正証書遺言が作成されていれば、公証役場で遺言書の有無を照会できます。謄本(写し)の取得も可能です。
ちなみに、公正証書遺言以外の遺言書は、開封するときに家庭裁判所で検認手続きが必要です。正当な手続き以外で開封した場合、開封者が罰則を受ける可能性もあるので注意しましょう。
参照:裁判所「遺言書の検認」
2.遺言書がなければ遺産分割協議をおこなう
遺言書が見つからなかったり、遺言書はあっても内容に不備がある場合、遺産分割協議によってどのように遺産を分けるか協議しなければいけません。
遺産分割協議で大切なことは、相続人全員が協議の内容に同意していることです。全員がそろっていない状態で遺産分割協議をおこなっても、無効となるので気をつけましょう。
また、遺産分割協議書の作成には実印と印鑑証明書が必要です。遺産分割協議書の書式に規定はありませんが、記載必須の項目などはあります。
遺産分割協議書の作成に疑問や不安がある場合、弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。
遺言書があっても条件を満たせば遺産分割協議はできる
遺言書があっても一定の条件が揃っていれば、遺産分割協議をおこない相続人たちで分割方法を決められます。条件は下記の3つです。
- 被相続人が「遺言書と異なる内容の遺産分割」を禁止していない
- 相続人および受遺者※1が「遺言書と異なる内容の遺産分割」に同意している
- 遺言執行者※2から同意を得ている(遺言執行者がいる場合)
※1「受遺者」・・・法律で定められた相続人以外の人で、遺言により財産の贈与を受ける人。
※2「遺言執行人」・・・遺言の内容を実行するために必要な手続きをする人。
もっとも重要なのは、相続人や受遺者の全員が遺言書に不満をもっており、遺産分割協議を望んでいる必要がある点です。
「相続人の一部が遺言の内容に納得していない」というだけでは、遺言書と違う内容での遺産分割はできません。
3.相続登記を申請する
遺産分割協議が完了したら相続登記をおこないます。相続登記とは、共有持分の名義を被相続人から相続人に変更する手続きです。
登記申請書を作成し、添付書類として登記原因証明情報と住所証明書・評価証明書を準備します。
登記原因証明情報とは、遺産分割協議書や遺言書になります。戸籍謄本と印鑑証明書は、相続人全員のものが必要です。
登記申請書は、個人でも作成できますが手間のかかる作業です。さらに、誤りがあると繰り返し修正しなければなりません。
そのため、手間なく確実に書類を作成するには、費用がかかっても弁護士や司法書士に任せたほうがよいでしょう。
4.相続税を納める
相続した共有持分には相続税がかかります。
例えば、1,000万円の不動産のうち1/2の共有持分を相続したら、課税対象額は500万円です。
実際に納める税額は、共有持分以外の相続財産や各種控除によって異なります。複雑な計算や特例の適用が必要になるため、税理士に相談しましょう。
相続税についてより詳しく知りたい場合は、下記の関連記事でも解説しています。
共有持分を相続するときの注意点
最後に、共有持分を売却するときの注意点を2つ解説します。
共有持分の相続でトラブルが起こらないよう、下記2点はとくに注意しましょう。
- 【注意点1】「隠れた相続人」がいないかしっかり調べる
- 【注意点2】換価分割をおこなうときは事前に最低価格を決めておく
【注意点1】「隠れた相続人」がいないかしっかり調べる
後から「じつは相続人だった」という人が現れて、トラブルとなるケースがあります。
とくに多いのが、被相続人が離婚していて前の配偶者との間に子供がいたり、不倫などで隠し子がいる場合です。
遺産分割協議は「相続人の全員参加」が前提なので、後から「隠れた相続人」が発覚した場合、相続のやり直しをしなければいけません。
被相続人の戸籍などを調査し、相続人となる人を確認しておく必要があります。
【注意点2】換価分割をおこなうときは事前に最低価格を決めておく
共有持分の売却は、相続人全員の同意を持って進められます。「売却する」という行為そのものを決定するときだけでなく、いくらで売却するのかも相続人全員で決定しなければいけません。
しかし、相続人によって希望価格が異なることもありえます。
「時間がかかっても高く売却したい」という人もいれば「多少安くてもすぐに売却したい」という人もいるでしょう。相続人同士で話がまとまらず、トラブルになる事例は非常に多くあります。
こういった売却価格でのトラブルを防ぐため、売却活動をはじめる前に「最低何円だったら売却に同意する」という最低売却価格を決めておくと、スムーズに手続きをすすめられます。
共有持分は相続時に分割しよう
ここまでは、共有持分を相続するときの基本的な流れについて解説してきました。
次に、相続人が複数いるケースにおいて、共有持分を分割する方法を解説します。
具体的には、下記の3つがあげられます。
- 共有持分をそのまま分割する「現物分割」
- 代表者1人が共有持分を相続する「代償分割」
- 共有持分を売却して現金で分割する「換価分割」
共有持分をそのまま分割する「現物分割」
現物分割は、共有持分をさらに細かく分割する方法です。
例えば「相続財産は共有持分のみ(持分割合1/2)で、相続人は子供3名」という相続の場合、共有持分を均等に分割して、相続人それぞれが持分割合1/6の共有持分を取得するという方法です。
共有持分をさらに分割して相続するため、権利関係がより複雑になります。共有不動産の取り扱いを巡ってトラブルに発展する可能性が高いでしょう。
トラブルを起きやすいためなるべく避けるべき方法ですが、簡単に相続を終えられる点と、均等に分割しやすいので公平感がある点はメリットといえます。
ちなみに、現金や車など共有持分以外の相続財産があったとき「Aが車」「Bが現金」「Cが共有持分すべて」というような、種類別に遺産分割をおこなうのも現物分割に該当します。
代表者1人が共有持分を相続する「代償分割」
代償分割は、相続人のうち代表者1人が持分をすべて相続する方法です。ほかの相続人には、代表者から相続分に応じた現金が支払われます。
例えば、下記のような状況があったとします。
「相続人は被相続人の子供A・B・Cの3人」
「相続財産は共有持分のみ」
「共有持分の評価額は1,500万円」
代償分割によってAがすべての持分を相続する場合、B・Cに対して現金500万円(1,500万円×1/3)を支払います。
金額だけ見れば公平に分割可能であり、相続人が「共有持分が欲しい人」と「現金が欲しい人」で分かれている場合はとくに有効な方法です。
ただし、代表者には「ほかの共有者へ支払いをおこなうための資金」が必要です。
共有持分を売却して現金で分割する「換価分割」
換価分割は、相続財産である共有持分を売却し、その売却益を相続人で分割する方法です。現金で分割するため、公平な遺産分割が可能になります。
売却代金を得てから分割するので、代償分割のように相続人のだれかが現金を用意する必要もありません。
ただし、被相続人の名義のままでは売却できないため、一旦は相続人たちの共有名義で相続登記を済ませる必要があります。
遺産分割協議で換価分割を取り決め、遺産分割協議書を作成し、相続登記をおこなってから共有持分を売り出します。
共有持分は相続時に売却がベスト!共有持分を売却する手順
共有持分はのちのトラブルを避けるためにも、利用しないのなら相続時に売却するのがベストといえます。
滞りなく手続きを進めるために、手順を把握しおきましょう。
共有持分を売却する流れは次のとおりです。
- 遺産分割協議で換価分割に合意し相続登記をする
- 売却に必要な書類を集める
- 買主を探す
- 売買契約を結ぶ
- 持分移転登記をする
1.遺産分割協議で合意し相続登記をする
すでに解説したとおり、換価分割をおこなう前に相続登記をおこない、共有持分の名義を被相続人から相続人に変えておく必要があります。共有持分の売却は、登記上の名義人にしかできないためです。
相続人全員の共有名義にするのが一般的ですが、代表者1名の名義にすることもできます。どちらにしても一時的な措置であり、売却後に代金を分割するという結果に違いはありません。
ただし、いずれにしても相続登記の前に遺産分割協議書を作成し、換価分割をおこなう旨を明記しておきましょう。口約束だけだと、相続登記の後に「やっぱり売却しない」と言い出す相続人がいるかもしれません。
2.売却に必要な書類を集める
共有持分を売却すると決まったあとは、必要書類を集めます。詳細は不動産業者に確認すると確実ですが、少なくとも以下の書類が必要です
- 登記済証または登記識別情報
- 固定資産税納税通知書
- 土地測量図
- 登記簿謄本または登記事項証明書
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の住民票
売却活動をスムーズに進められるよう、前もって準備しておきましょう。
3.買主を探す
共有持分のみを売却する場合、一般的な不動産売却と比べて需要が大きく下がります。共有持分のみを取得しても、不動産を実際に管理・使用するには共有者と協議しなければいけないためです。
そのため、買主の候補は「ほかの共有名義人」「第三者の投資家」「共有持分専門の買取業者」の3つに絞って考えましょう。
ほかの共有名義人に売却できれば、その人にとっても持分割合を増やせるメリットがあるので買い取ってもらいやすいでしょう。ただし、その共有名義人に共有持分を買い取る資金がなければいけません。
第三者の投資家に売却したいときは、仲介業者に依頼するのが一般的です。しかし、仲介料を取られる上に、共有持分を欲しがる投資家少ないため、買主が現れるとは限りません。
3つの買主候補のなかでは、共有持分専門の買取業者がもっともおすすめです。査定から買取までにかかる期間は早ければ数日で済みますし、共有持分の運用ノウハウがあるため、高額買取も可能です。
「弁護士と提携した共有持分の買取業者」に相談がおすすめ
共有持分の売買実績が豊富な専門買取業者なら、一般的な不動産業者よりも早く・確実に共有持分を売却可能です。
なかでも、弁護士と提携した買取業者であれば、権利関係の複雑な共有持分でもトラブルなく買取できます。
なぜなら、どのように相続するかで揉めていても、弁護士との連携を活かして、個別の状況に応じた適確なサポートをおこなえるからです。
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4.売買契約を結ぶ
購入希望者が見つかり、価格交渉も完了したら売買契約を結びます。
共有持分の売買契約を結ぶときには、相続人全員の立ち会いが必要です。
仕事などで忙しかったり、遠方に住んでいたりで立ち会いが難しい場合は、共有者のなかから代表者を立てるか、相続人としての権限を代行する代理人を選びましょう。
どちらも権限を委任する形になるので、委任状を作成する必要があります。
5.持分移転登記をする
売買契約を結んだあとは、持分移転登記をおこないます。売却による持分移転登記の場合、売主と買主が共同で申請する必要があります。
ただし、実際の申請手続きは法律事務所に代行を依頼するのが一般的です。
持分移転登記については、下記の関連記事でも解説しています。
売却に反対した共有者がいたら自身の持分のみで売却しよう
共有持分は相続時に売却するのがベストと前の項目でお伝えしました。
しかし、共有持分全体、つまり不動産を一括売却するには共有者全員の同意が必要なのです。
そのため、共有持分の売却に反対した共有者がいた場合は、共有不動産全体での売却ができません。
そこでこの項目では、共有者に共有持分の売却を反対されたときの対処法をお伝えします。
共有不動産の売却には共有者全員の同意が必要
共有不動産全体の売却は「管理行為」とみなされるため、共有者全員の同意が必要です。
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。出典:e-Govポータル「民法第252条」
例えば自分が全体の99/100の共有持分を所有していたとしても、1/100の持分を所有する共有者が売却に反対した場合は、売却ができません。
自身の共有持分のみなら共有者の許可なく売却できる
自身の共有持分のみなら、共有持分の使用とみなされるため自由に売却ができます。
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。出典:e-Govポータル「民法第249条」
そのため、共有者が反対していたとしても、問題なく自身の共有持分を売却できるのです。
しかし、共有持分のみの売却は売却価格が低くなってしまうのが一般的です。
共有持分専門の買取業者への売却がおすすめ
共有持分のみの売却なら、共有持分専門の買取業者への売却がおすすめです。
共有持分のみの売却は、価格が相場よりも大幅に低くなってしまうのは前述しました。
それは、通常の不動産業者は共有持分の取扱いに慣れておらず、買取しても上手く運用できないことが大きな理由です。
一方で、共有持分専門の買取業者なら、買い取った共有持分の運用方法を熟知しているため、通常の不動産業者よりも高値で買取できるケースが多いです。
まずは気軽に「相続した共有持分がいくら程度で売れるのか?」を無料査定で確認してみてはいかがでしょうか。
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まとめ
共有持分を相続するときは、現物分割・代償分割・換価分割の3つの分割方法によって必要な対応は異なります。
遺産分割協議では、上記の方法から「どのような形で共有持分を相続するか」を決めることが一番重要です。
共有持分を売却する「換価分割」をおこなうのであれば、最短数日での高額買取が可能な「共有持分専門の買取業者」に相談することをおすすめします。
共有持分の相続でよくある質問
共有持分とは?共有不動産との違いは?
共有持分とは共有不動産における「共有者ごとの所有権割合」を表したものです。持分の権利割合は1/3などの数字で表記します。ちなみに共有不動産は「他人と共有している不動産そのもの」を指します。
相続人が複数人いる場合、共有持分はどのように分割しますか?
相続時の分割方法は3つあります。共有持分のまま相続人で分割する現物分割、代表者が共有持分をすべて相続してほかの相続人に代償金を支払う代償分割、共有持分を売却してその利益を分け合う換価分割の3つです。
共有持分を売却して相続する場合、なにをすればよいですか?
遺産分割協議で換価分割に合意し、遺産分割協議書を作成しましょう。その後は普通の不動産売買と同じで、不動産業者に依頼して買主を探します。ただし、共有持分は一般的な仲介業者では取り扱いを積極的におこなわない場合もあるので、共有持分を専門とする買取業者に相談することをおすすめします。→
共有持分専門の買取査定はこちら
「いろいろな不動産会社に買取を断られてしまった・・・」こんな共有持分・不動産でも売れるの?
不動産の買取自体を断られている物件でも売却できます。共有不動産は権利関係が複雑でコストもかかるので買取を積極的におこなっていない会社もあります。そういった場合も「共有持分の専門買取業者」へ売却すると良い結果が得られることが多いです。
遺産分割協議がまとまらず、相続人で揉めています。どうすればよいですか?
相続トラブルや不動産問題に詳しい弁護士に相談してみましょう。客観的な観点でアドバイスしてもらえるほか、必要に応じて調停や訴訟の手続きもしてくれます。弁護士と連携している共有持分の専門買取業者に相談すれば、相続トラブルから共有持分売却まで一貫したアドバイスが可能です。
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