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【弁護士監修】共有物分割請求訴訟をわかりやすく解説!メリットやデメリット、手続きの流れは?

【弁護士監修】共有物分割請求訴訟をわかりやすく解説!メリットやデメリット、手続きの流れは?

共有不動産を所有している方の中には、「共有状態を解消したいのに話し合いが進まない」「連絡しても無視される」「意見が対立して平行線のまま」といった悩みを抱えている方も少なくありません。

実際の不動産取引現場において、当事者同士の協議だけで決着をつけようとしても、感情面や利害が絡むほど長期化し、解決の糸口が見えなくなるケースが多いのが実情です。

そうした状態に対する最終手段が「共有物分割請求訴訟」です。共有物分割請求訴訟とは、裁判所に対して共有状態の解消を求める法的な手続きを指します。

制度上、訴訟を提起して判決(または裁判上の和解)が出れば、法的な強制力をもって共有状態を終わらせることができます。しかし実務上は、「必ずしも自分の希望どおりの形で解消できるわけではない」という点に注意が必要です。

裁判所は、当事者の希望をそのまま通すわけではなく、以下の3つの分割方法の中から事案に応じて最も適したものを客観的に決定します。

現物分割 代償分割 換価分割
内容 1つの土地を物理的に分ける 1人が不動産を単独名義で取得し、他の共有者に金銭(代償金)を支払う 不動産全体を売却し、得られた金銭を持分割合で分配する
特徴 原則的な分割方法の1つ。建物やマンションでは物理的に不可能。土地の形状によっては分筆により価値が下落するリスクがある。 現物分割と並ぶ原則的な分割方法。不動産を残せるが、取得する側に代償金を一括で支払うだけの十分な資力があることが条件となる。 他2つが現実的に不可能な場合に選択される最終手段。原則として「競売」となることが多いため、市場価格より低い金額での売却になりやすい。
金銭調整 分筆後の評価額に差が出る場合、部分的価格賠償で調整する 全面的に金銭で調整する(全面的価格賠償) 売却代金(競売の落札代金など)から経費を差し引き、持分割合に応じて分配する

たしかに、共有物分割請求訴訟は法的な強制力をもって共有状態を終わらせることができるというメリットがあります。しかし一方で、「共有者同士の関係が悪化してしまう可能性がある」「解決までに多大な時間や弁護士費用などのコストがかかりやすい」といったデメリットも存在します。

そのため、本来は当事者間の話し合い(協議)で、円満に解消するのが理想的です。重ねてになりますが、訴訟は、どうしても協議が調わない場合に限って検討すべき最終手段として捉えておくと良いでしょう。

この記事では、共有物分割請求訴訟の要件や手続きの流れ、メリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。

松浦総合法律事務所 松浦 絢子 弁護士
監修
松浦総合法律事務所
松浦 絢子 (弁護士)

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共有物分割請求訴訟とは共有状態の解消を裁判所に求める法的な手続き

共有物分割請求訴訟とは、裁判所に対して共有状態の解消を求める訴訟のこと

共有物分割請求訴訟とは協議で解決できない共有状態の解消を裁判所に求める法的手続きのことです。共有状態の解消について、共有者と話し合いができない場合や話し合っても解決が望めない場合に、交渉を前に進めるための最終手段として使われるのが基本です。

裁判所は共有者それぞれの言い分を聞きながらも、あくまでも中立公正な立場で分割方法を判断し、決定します。その決定には共有者全員が従わなければならないため、共有状態の解消を図るうえで強力な法的手段の一つです。

一方で、共有物分割請求訴訟は「必ず自分の希望どおりの方法で共有状態を解消できる手続き」ではありません。裁判所は現物分割・代償分割・換価分割の3つの分割方法からもっとも最適と判断した方法を選びますが、その判決によって結果は大きく変わります。

時間や費用がかかるうえ、競売のような想定外の着地になることもあるのが現状です。そのため、協議の段階での解決を目指して交渉したり、弁護士を介して条件を詰めたりなど、訴訟に踏み切らずに解決できる方法を模索することが重要になります。

訴訟と協議の主な違いは次の通りです。

共有物分割請求訴訟 共有物分割請求協議
決着方法 ・裁判官による判決や裁判上の和解
・裁判外の和解なら原告・被告の合意
原則として共有者全員の合意
分割内容 ・裁判官が審理内容を基にすべて決定する
・裁判上の和解なら裁判所が作成した和解案などを基に決定する
・裁判外の和解なら原告・被告が話し合った内容で成立できる
原則として共有者全員が合意した内容で分割する
実施方法 裁判所での審理 対面、オンライン会議、電話、メール、手紙などでの話し合い
費用 ・裁判手続きで発生する費用や裁判所までの交通費など
・弁護士に裁判対応を依頼するなら弁護士費用
協議のための交通費や通信費などの実費
・弁護士を間に入れるなら弁護士費用
拒否の是非 ・被告が出廷しない場合でも審理は進み、裁判所は提出された資料に基づいて判断する
・判決が確定すれば、換価分割や単独取得といった内容に沿って、強制的に共有状態を解消する手続きが進められる
・協議は当事者の合意によって進めるため、共有者の一人でも拒否すれば成立しない
・話し合いがまとまらない場合は、訴訟へ移行することが多い

参照:電子政府の総合窓口e-Gov「民法第256条」

共有物分割請求訴訟を起こすための要件

共有者として不動産の権利を有していても、いきなり共有物分割請求訴訟をおこなうことは原則としてできません。実際は、「協議が調わないこと」または「協議をすることができないこと」が訴訟提起の前提条件になります。

いきなり「裁判を起こしたい」と思っても一度は協議を試みた事実が必要になります(相手が行方不明などの場合を除く)。したがって、まず共有者間で共有物分割協議を行い、協議がまとまらなければ、調停または訴訟を検討するという流れが基本です。ちなみに、調停は必須ではありません。共有物分割請求は「調停前置主義」の対象ではないため、協議が調わなければそのまま訴訟へ進むことも可能です。

ここでは、訴訟を申し立てるための具体的な条件について解説します。

  • 共有物分割協議が不調に終わった(協議が調わない)こと
  • そもそも話し合いができない(協議をすることができない)状況にあること

協議を試みている、または協議不可能な状況であること

裁判所に共有物分割請求訴訟を申し立てるには、原則として共有者の間で協議を試みる必要があります。(ただし、相手が行方不明や面会謝絶などの場合は「協議をすることができない」として訴訟提起が可能です。)民法でも、以下のように定められています。

(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。引用:民法|e-Gov法令検索「民法第258条」

つまり、はじめから訴訟を起こせるというわけではなく、「話し合いがまとまらない、あるいは話し合いができないときにはじめて裁判所に訴訟が提起できる」ということです。

もっとも、実際は全員が一堂に会する必要はなく、以下のような場合でも「協議が調わない(またはできない)とき」に該当します。

  • 共有者の一部が連絡を無視している
  • 協議に応じない
  • 出席を拒否している
  • 行方不明などでそもそも連絡が取れない

つまり、共有者のうち誰かがまったく話に応じず協議への出席や連絡を拒否する場合であっても、「協議が調わない(できない)とき」に該当します。

共有物分割協議を成立させるには、物理的な出席ではなく「共有者全員の同意」が必要です。1人でも同意しなければ、法的には協議不成立となります。

協議は電話やメールなどを利用しても良い

共有者が遠方に居住していて会うことが難しい、病気やケガで入院しているなどの理由で全員が集まれないケースであれば、電話やメール(手紙)などを利用して協議をおこなっても問題ありません。

重要なのは「協議を試みた事実」を残すことです。協議を行ったことを証明できなければ、訴訟の前提を満たしていないと判断される可能性があります。

そのため、書面で通知する場合は「いつ・誰が・誰に・何を送ったか」といった情報を郵便局に保管・証明してもらえる内容証明郵便を利用しましょう。

内容証明郵便を利用することで、訴訟を阻止したい共有者に「協議に関する手紙はもらっていない」と主張されたり、郵送事故が起きて手紙が紛失してしまったりするトラブルに見舞われたりすることを回避できます。

共有物分割協議が不調に終わったこと

共有者に協議を申し入れたにもかかわらず以下のような状況であれば、「協議が不調に終わった」と判断されることがあります。

  • 無視される
  • 明確に拒否される
  • 期限までに回答がない

ただし、繰り返しになりますが、訴訟を起こすには「不調だった」という事実を客観的に示せることが重要です。

そのため、内容証明郵便の利用や「分割協議書」を作成し、協議をおこなったことの客観的な証拠を残しておくことが大切です。

なお、共有物分割請求訴訟を起こす前にできる手続きとして、裁判所の調停委員などが間に入って話し合いをおこなう「共有物分割調停」もあります。調停では裁判所の調停委員が間に入り、当事者の話し合いを促します。

ただし、共有物分割請求は離婚事件などのように「必ず調停を経なければならない」調停前置主義の対象手続きではありません。そのため、協議が不調であれば直接訴訟へ進むことが可能です。

そもそも、調停も本質的には話し合いの延長です。実際に、弊社と提携している弁護士事務所が取り扱う案件でも、共有者の対立が強い場合では調停でも歩み寄りが生まれず、そのまま訴訟へ移行するケースが少なくありません。

もっとも、訴訟は時間・費用・人間関係への影響が大きい手続きですので、状況に応じて、どの手段が現実的かを見極めることが重要です。訴訟に移るべきか判断に迷う場合は弁護士に相談しましょう。

共有物分割請求訴訟による3つの分割方法

不動産の共有物分割請求訴訟では和解が成立した場合を除き、裁判所の判決によって分割方法が決定します。「どの分割方法になるか」によって、その後の負担や手取り額、精神的な影響が大きく変わるのが現実です。

現場でも、同じような条件の不動産でも、分割方法の違いで出口がまったく異なる結果になることは珍しくありません。裁判所が決定する分割方法は以下の3パターンです。

共有物分割請求訴訟による不動産の3つの分割方法
  • 現物分割:土地を物理的に分ける
  • 代償分割:不動産を単独所有した人が共有者に対価を支払う
  • 換価分割:競売によって得られた売却金を共有者で分配する

多くの場合、裁判所がまず検討するのが「現物分割」「代償分割」ですが、これでも決着しない場合は最終手段として「換価分割」が選ばれます。

なお、「現物分割」と「代償分割」で優先度に違いはありませんが、土地と違って建物は分割が不可能なため、現実的な決着として代償が選択されるのが基本です。ここでは、各分割方法の特徴について解説します。

1つの土地を物理的に分ける「現物分割」

「現物分割」は1つの土地を物理的に分ける分割方法


現物分割とは、共有持分割合に応じて不動産を物理的に分ける方法
のことです。3つの分割方法のうち、この「現物分割」と、後述する「代償分割」の2つが原則的な分割方法として法律上も同列に位置づけられています。
(※もちろん、事案に応じて柔軟に判断されてます。)

共有不動産が土地であれば、共有持分に応じて「分筆」することが可能です。分筆とは、1つの土地を複数に切り分け、それぞれの土地を登記し直す作業を指します。
例えば、夫の持分が70%・妻の持分が30%の場合は、その不動産を7:3の境界で分割し、それぞれ単独で登記登録をします。分割された土地はそれぞれ自分の所有物となるため、分割後に活用しやすいのがメリットです。

ただし、土地と違って建物は物理的に分けられないため、現物分割は現実的に不可能です。そのため、建物単体または建物のある土地の共有分割訴訟において、裁判所が現物分割を決定するケースは限定的です。

価格の過不足を調整する「部分的価格賠償」

現物分割では、持分割合どおりに面積を分ければ良いわけではありません。土地の形状・接道状況・日当たり・高低差・用途地域などの条件によって、同じ面積でも評価額に差が出るのが不動産の実情です。

そのため、現物分割を公平に成立させるために用いられるのが「部分的価格賠償」という考え方です。

部分的価格賠償とは、現物分割の結果として価値に差が生じた場合に、より高い価値の土地を取得する側が、その差額分を金銭で補填する制度をいいます。実務上も、現物分割を選択する場合は、この価格調整がセットで検討されるのが基本です。

たとえば、1つの土地を2人が50%ずつ共有しているとします。この土地を南北に分筆したところ、日当たりによって評価額が以下のようになったとしましょう。

  • 南向きの土地:評価額500万円
  • 北向きの土地:評価額300万円

本来、持分1/2であればそれぞれ400万円相当を取得するのが公平ですが、南側取得者は500万円、北側取得者は300万円となり、200万円の不均衡が生じます。

そこで、南側を取得する人が差額200万円の半分である100万円を北側取得者に支払うことで、最終的に双方400万円相当となるよう調整します。

このように、現物分割による不公平を金銭で是正するのが部分的価格賠償です。実際は、単純な日当たりだけでなく、以下のような複数の要素が評価額に影響します。

  • 再建築の可否
  • 間口の広さ
  • 道路付け
  • 地形の整形/不整形
  • 擁壁や高低差の有無

そのため、「面積は半分だから公平」とはならないのが不動産の難しいところです。実務では、不動産会社の査定や鑑定評価を参考にしながら調整額を決めることになります。

また、価格差が大きすぎる場合には、部分的価格賠償では解消できず、共有者の誰かが全員分の共有持分を買い取る「代償分割」に近い形になることもあります。部分的価格賠償はあくまで補正であって、価値差が極端な場合には適用が難しいのが実情です。

取得した人が共有者に金銭を支払う「代償分割」

「代償分割」は土地を取得した人が 共有者に金銭を支払う分割方法

代償分割とは、1人の共有者が不動産を丸ごと取得し、他の共有者に対して持分割合に応じた代償金を支払うことで共有状態を解消する方法です。

例えば、3,000万円の不動産をAとBが持分2分の1ずつ共有しているとします。Aが不動産の所有権をすべて取得する代わりに、1,500万円をBに支払うことで共有状態が解消されます。

建物は物理的に分割できないため、共有不動産に建物が含まれる場合、実務上はまず代償分割が検討されるのが基本です。

現物分割のように形を分けることができない以上、以下のような事情がある場合には、代償分割が最も整理しやすい方法になります。

  • 誰かが住み続けたい
  • 事業用として使い続けたい
  • 思い入れが強い

共有状態をきれいに解消し、かつ金銭で公平に調整できます。また、競売のように強制的に第三者へ渡るわけではないため、心理的な抵抗も比較的少ない傾向です。

ただし、代償分割が成立するかどうかは、取得者側の資力に大きく左右されます。代償金を現実に支払える見込みがなければ、裁判所も代償分割を選択しません。

現物分割も困難であれば、最終的に換価分割(競売となる場合が多い)へ進む可能性が高くなります。代償分割は「きれいに終わらせやすい方法」ではありますが、資金計画まで含めて実現可能性を見極めることが重要です。

訴訟に入ってから慌てるのではなく、事前に資力や評価の整理をしておくことが、実務上は非常に大切になります。

競売で得た金銭を分配する「換価分割」

「換価分割」は競売によって得た金銭を 持分割合に応じて分配する分割方法

換価分割とは、共有不動産を売却し、その売却代金を持分割合に応じて分配する方法です。
建物のように物理的に分けられない不動産や、分けることで価値が大きく下がる土地などで選択されやすい分割方法です。

実務上、次のようなケースでは換価分割が選択される可能性が高まります。

  • 共有不動産が建物である
  • 現物分割をおこなうことで著しく資産価値を損ねてしまう
  • 代償分割に必要な資力をどの共有者も持っていない

不動産を手放さなければならないため、分割後に活用を考えている場合は要注意です。また、任意売却ではなく競売となる場合、市場価格を下回る価格で落札されることが少なくありません。あくまで物件によりますが、市場価格の5~7割程度(目安)となることが多いです。

もちろん物件や地域によって差はありますが、実務上も「想定より安く落札された」というケースは珍しくありません。とくに、といった訳あり要素がある場合は、さらに価格が伸びにくい傾向があります。

  • 占有者がいる
  • 建物が老朽化している
  • 権利関係が複雑

その結果、共有者全員の手取り額が想定より大きく減る可能性がある点は理解しておく必要があります。

さらに申立てから売却・配当まで相応の期間を要するのが通常です。訴訟期間と合わせると、解決まで1年以上かかるケースも十分にあり得ます。「訴訟を起こせばすぐ現金化できる」というイメージを持たれる方もいますが、実際は時間的コストも小さくないのが現実です。

換価分割になるくらいなら、通常の不動産の売却と同様となる任意売却の方が市場価格に近い水準で売却できる可能性があります。そのため、換価分割、「現物分割や代償分割が現実的でない場合の最終手段」として位置付けられることが多いのが実情です。

任意売却としたいときは、訴訟の途中で共有者全員の同意を得たうえで和解する方向で進める必要があります。結局訴訟せず行う分割方法と同じになるパターンも多いため、訴訟を起こさなければ本当に解消できないのか、しっかり考えることが重要です。

共有物分割請求訴訟によって必ずしも共有状態が解消されるわけではない

共有物分割請求訴訟は、判決に強制力があるため共有問題に決着をつけやすい手段です。とはいえ、権利濫用など極めて例外的な事情がある場合には、請求が却下される可能性もあります

つまり、「訴訟=必ず希望どおりに共有解消できる」とは言い切れないのが実情です。共有状態の維持(全部・一部)が問題になる代表例は、次のとおりです。

  • 共有物分割請求権の行使について「権利濫用(民法第1条)」が認められる
  • 請求した原告側グループのみの共有解消がおこなわれ被告側グループは共有状態が維持された
  • 請求した原告側のグループのみが共有状態を維持し被告側グループは共有状態が解消された

とくに、権利濫用が争点になるのは、分割の結果として相手が住まいを失うなど、被告側に一方的で著しい不利益が生じる一方で、原告側には他の選択肢が十分あるといった場面です。

実務上も、次のような事情が重なると「分割請求のやり方が行き過ぎではないか」が問題になりやすいのが現状です。

  • 息子が専門学校の費用を得るために母親が住むマンションを競売で分けたいと主張し母親の住む場所がなくなるところだった
  • 別居中の夫が妻子の住む家について共有物分割請求をおこない妻子が家を失いかけた
  • 夫が以前棄却となった共有物分割請求について今度は夫から共有持分を買い取った買取業者が訴訟を提起した
  • 訴訟の被告側が全員70歳以上かつ体に麻痺が残る後遺症を持つ人もいるなかで、換価分割にともなう建物からの退去が多大な不利益が発生すると判断された

ただし誤解のないように補足すると、共有状態の維持が結論になるのは、経験上かなり例外です。実際は、裁判所は現物分割・代償分割・換価分割などの枠組みの中で「どうやって分けるか」を探り、最終的に何らかの分割による判決を出すのが基本です。

そのため、「却下されるかもしれないから動けない」と悩み続けるより、権利濫用のリスクなどの争点を早い段階で整理することが重要になります。

まずは共有・紛争案件に強い弁護士や、共有持分を扱う専門業者に状況を共有し、現実的な解決ルートを比較したうえで方針を決めるのがおすすめです

共有物分割請求訴訟に発展しやすいケース

次のように、不動産の活用方法について他の共有者と話し合いで決着が着かない場合は共有分割請求訴訟に発展しやすいです。

  • 共有者が共有解消の話し合いに応じない
  • 不動産を独占しているため共有者を追い出したい
  • 不動産を売却したいのに共有者が同意してくれない

共有分割請求訴訟に発展しやすいケースについて具体的にみていきましょう。

共有者が共有解消の話し合いに応じない

共有者同士の話し合いで共有解消ができない場合、最終的に裁判所の判断に委ねる流れになることは珍しくありません。とくに多いのが、不動産の活用方法をめぐって意見が対立するケースです。

共有不動産は、共有者それぞれが単独でできることや、他の共有者の同意を得なければできないことが明確に定められています。

保存行為 各共有者が単独でできる

雨漏り修理・塀の修繕・不法占拠者に対する明渡し請求など
管理行為 持分過半数の同意が必要

5年以内の賃貸借契約の締結や解除・資産価値を高めるためのリフォーム
変更行為 共有者全員の同意が必要

不動産全体の売却・建物の解体・抵当権の設定

例えば「相続した土地の権利関係が複雑になりそうだから共有解消しよう」という場合に、共有者が1人でも反対すると実行できません。

そのため、裁判所に分割してもらって共有解消を目指すという事例は多くみられます。

不動産を独占しているため共有者を追い出したい

1人の共有者が不動産を独占して他の共有者が迷惑を被っているため、裁判所に共有分割請求訴訟したいというケースも少なくありません。不動産の共有者は、その不動産を使用する権利を持っているため、たとえ独占していたとしても「明け渡せ」とは原則いえません。

現場では、以下のような事案が多く見られます。

  • 占有している共有者が固定資産税や管理費を負担しない
  • 他の共有者に無断で賃貸している
  • 話し合いに応じない

そこで、裁判所に分割してもらい、それぞれの持分を単独所有にすることで、不動産全体を独占するのをやめさせることができます。実際に、不動産に一人暮らしをしているにもかかわらず管理費や固定資産税を支払わないため、他の共有者が共有分割請求訴訟を提訴した事例がありました。

なお、不動産を独占している共有者に対しては、「不当利得返還請求」も可能です。これは、不動産の使用料相当額の支払いを請求する手続きですが、実際は「お金を払えば住み続けられる」という構図になり、根本解決にならないケースが多いのが実情です。

そのため、独占状態そのものを終わらせたい場合には、共有物分割請求訴訟によって単独所有へ整理するか、換価分割で全体を処分するかをが検討対象になります。

不動産を売却したいのに共有者が同意してくれない

実務上でも非常に多いのがこのケースです。不動産全体の売却は「変更行為」にあたるため、共有者全員の同意が必要になります。1人でも反対すれば売却はできません。

特に多いのが、親世代で共有していた不動産を子世代が相続し、共有者が増えてしまったケースです。共有関係が複雑化すると、意思の統一はさらに難しくなります。以下のように協議がまとまらないまま、数年経過することも珍しくありません。

  • 一部は現金化したい
  • 一部は思い入れがあるから残したい
  • 一部は関心がなく放置している

所有し続けたい共有者に持分を買い取ってもらう方法もありますが、資金力がなければ成立しません。その結果、裁判所に分割の判断を求める流れになります。

一度訴訟に入ると、換価分割により競売に出される可能性もあるため、訴訟に進む前には以下のような出口の比較を行うことが、損失を抑えるうえで重要なポイントです。

  • 任意売却の合意が取れないか
  • 持分のみを専門業者へ売却する方が早期解決にならないか
  • 代償分割ができる財力を持つ共有者はいないか

共有問題は「法的に解決できるか」よりも、「どの解決方法が最も合理的か」を見極めることが、実務上のポイントになります。

共有物分割請求訴訟をおこなうメリット

共有物分割請求訴訟をおこなうメリットは以下のとおりです。

  • 原則として共有状態を確実に解消できる
  • 共有者の同意がなくても提起できる
  • 裁判所が分割方法を決定するため納得しやすい
  • 言い値ではなく適正な価格で現金化できる

それぞれ解説します。

話し合いが不調でも共有状態の解消が可能

共有物分割請求訴訟は、判決に強制力があるため、最終的には共有状態を法的に整理できる手続きです。実際、協議では何年も動かなかった案件が、訴訟に入ったことで一気に出口まで進むケースも少なくありません。

共有不動産全体を売却する場合は「変更行為」にあたり、原則として共有者全員の同意が必要です。そのため、1人でも反対者がいれば売却や活用はできず、固定資産税や管理負担だけが続きます。

以下の事情から、事実上「なにも変更を加えられない」状態になっている不動産は珍しくありません。

  • 兄弟間で感情的対立がある
  • 連絡がつかない共有者がいる
  • 一部の共有者が「とにかく何もしない」姿勢を取っている

こうしたケースでは、訴訟によって法的に区切りをつける意味は大きいといえます。
ただし、訴訟では自分にとって望んでいた結果になるとはかぎらないことを覚えておきましょう。

裁判所は当事者の希望をそのまま採用するわけではなく、現物分割・代償分割・換価分割の中から最も妥当と判断した方法を選択します。そのため、以下のような結果になることも実際にはあります。

  • 代償分割を期待していたが資金力不足で換価分割になった
  • 任意売却を望んでいたが競売相当の整理になった

また先述したとおり、権利濫用が認められて訴訟自体が棄却されるケースがあることも知っておいてください。

裁判所の判決には法的強制力がある

共有物分割請求訴訟は共有者の同意がなくても提起できます。共有不動産の共有者は、持分にかかわらず分割請求をおこなう権利を持っているためです。

他の共有者が反対していても、自分の意思ひとつで訴訟を起こせる点は大きなメリットといえるでしょう。実際の現場でも、「何年も話し合ってきたが一歩も進まない」という状態から、訴訟提起をきっかけに状況が動き出すケースは少なくありません。

「共有物分割請求訴訟」を起こされると、他の共有者は被告となり、裁判を拒否できません。実務上も、「反対しているから何も起きない」という状態を打破できるのが訴訟の強みです。

どの分割方法になるかは別として、法的には共有関係を整理する方向へ必ず進む点は、協議との決定的な違いです。

不動産を適正な価格で現金化が可能

共有者同士の交渉では、価格の話になると感情が強く入り込みやすいのが実情です。以下のような主張が平行線をたどり、相場とかけ離れた金額で硬直するケースは、実務でも非常に多く見られます。

「この金額でなければ応じない」「そもそも売る気はない」

とくに親族間の共有では、感情や過去の経緯が優先され、冷静な価格協議が難しくなる傾向があります。共有物分割請求訴訟では、こうした言い値の応酬ではなく、客観的な資料を基に整理される点が大きな特徴です。

価格が争点になれば、不動産鑑定士による評価が検討され、裁判所はその結果を踏まえて代償金額や分割方法を判断します。

実際の現場感としても、裁判所が関与することで以下のように収束に向かうケースが多いのが現状です。

  • 極端に高額な請求が修正される
  • 不当に低い評価が是正される
  • 双方が一定のラインで歩み寄る

共有物分割請求訴訟をおこなうデメリット

前述のとおり、共有物分割請求訴訟をおこなうメリットはたくさんあります。しかし、その分デメリットも存在するため、訴訟すべきかはよく検討する必要があるでしょう。

共有物分割請求訴訟をおこなうデメリットは以下のとおりです。

  • 共有者同士の関係がさらに悪化する可能性がある
  • 解決までに多くの時間がかかる
  • 費用が高額になる可能性がある
  • 希望どおりに分割できるとはかぎらない

それぞれ解説します。

共有者同士の関係がさらに悪化する可能性がある

共有物分割請求訴訟をおこなうことで、共有者同士の関係がさらに悪化する可能性があります。共有状態の解消に反対していた共有者から、そこまでする必要があるのかと反感を買うこともあるでしょう。相手が身内であるなど、関係が近ければなおさらです。

実際に、訴訟提起をきっかけに連絡が完全に断絶したり、別件のトラブルに発展したりするケースもあります。裁判は公的な手続きである以上、「争い」として明確に可視化されるため、心理的インパクトは想像以上に大きいのが実情です。

訴訟を通じて関係が修復不能になる可能性は否定できません。

とはいえ、すでに関係が修復できないところまで悪化しているなら、訴訟による方法でないと解決できない可能性が高いです。話し合いによる解決が望めるうちは調停など他の手段で解決を目指し、話し合いでは解決できない場合の最終手段として訴訟を検討するとよいでしょう。

解決までに多くの時間がかかる

共有物分割請求訴訟は、提起すればすぐに終わる手続きではありません。

基本的には、訴状提出から解決まで半年〜1年程度かかるケースが多く、争点が多い案件では1年以上、控訴まで進めば数年単位になることもあります。実務上も、「思ったより長い」という声は非常に多いのが現状です。

鑑定が入ると日程調整や評価作業でさらに時間がかかるほか、共有者が多数いる場合や所在不明者がいる場合は手続きがより複雑化します。

訴訟が長期にわたると、その間訴訟のことばかり考えなければならず、大きな精神的負担にもなります。早急に解決したいなら、訴訟まで持ち込まず協議の段階で解決できるようにするか、共有状態の解消は諦めて自分の持分だけを売却するというように、訴訟以外の方法を考えたほうがよいでしょう。

費用が高額になる可能性がある

訴訟には、印紙代・郵券などの裁判費用に加え、不動産鑑定費用や弁護士費用が発生します。とくに代償分割で価格が争われる場合、鑑定費用は数十万円規模になることが多く、弁護士費用を含めるとトータルで100万円を超えるケースも珍しくありません。

実務上は、「解決で得られる経済的利益」と「訴訟コスト」を比較せずに進めてしまい、結果として手取りが想定より少なくなるケースも見受けられます。また、訴訟が長期化すると、その分弁護士費用が増えることもあります。

費用倒れにならないかを事前にシミュレーションしておくことは、専門家の立場から見ても重要です。

訴訟の費用については、「共有物分割請求訴訟にかかる費用」で詳しく解説します。

希望どおりに分割できるとはかぎらない

共有物分割請求訴訟を起こしたからといって、希望どおりに分割できるとはかぎりません。裁判所は訴訟の申立人の希望を叶える立場ではありませんので、あくまでも中立の立場でさまざまな事情を考慮し、裁判所が適正だと考える分割方法を決定します。

そのため、現物分割を望んでいても換価分割になる、代償分割を想定していたが資力不足で競売になる、といったケースは実務上も実際にあります。

裁判所の決定に納得がいかなければ控訴も可能ですが、共有物分割請求訴訟に関しては「控訴審では原審よりも控訴人に不利な判決ができない」という民事訴訟のルールが適用されません。そのため控訴したとしても希望どおりの判決になるとはかぎらず、かえって不利な結果になる可能性もあります。

希望どおりの分割にならないケースの例は、主に次のとおりです。

希望通りに分割できないケースの例 内容
請求棄却になる ・訴訟が権利濫用と判断される
・分割によって被告側が多大な不利益を被る可能性が高いと判断される
希望する分割にならない ・「希望した換価分割ではなく別の分割方法になる」といった自分が求めた分割とは異なる判決が下される
・お互いに譲歩した和解案が成立し自分の条件とは異なる分割で妥協することになった
訴訟の結果によって経済的損失を被る ・競売にて希望より大幅に安い金額で売却される可能性がある
・自分が持つ共有持分割合が小さく労力に割に換価分割の分配金額が低かった

訴訟を提起する際は、望んだとおりの結果にならない可能性があることを承知のうえで実行する必要があるでしょう。

共有者それぞれの意思を尊重しつつ柔軟な分割としたいなら、訴訟に至る前の協議段階での解決を目指すことを推奨します。

共有物分割請求訴訟の手続きと流れ

地方裁判所に訴訟を申し立てる

共有物分割請求訴訟を起こすには、まず他の共有者に対して分割の意思を示す必要があります。法律上は口頭でも足りますが、実務上は内容証明郵便などで通知し、証拠を残しておくのが重要です。

実際の現場でも、「そんな話は聞いていない」と後から争われるケースは少なくありません。内容証明であれば、いつ・誰が・誰に・どのような内容を通知したかが明確になるため、後の訴訟でも有利に働くことがあります。

いきなり訴訟を提起することも可能ですが、実際はまず当事者間で話し合いを試みて、それでもまとまらない場合、訴訟へ移行するケースが多いです。
そのうえで、一般的な流れは次のとおりです。

  1. 地方裁判所に訴訟を提起する
  2. 裁判所から当事者に期日呼出状が送付される
  3. 各当事者が答弁書その他の書面を裁判所に提出する
  4. 裁判期日を経て裁判所から判決が出る

流れに沿って、共有物分割請求訴訟の手続きを詳しく解説していきます。

①地方裁判所に訴訟を提起する

まずは訴訟を提起します。訴訟の管轄は共有不動産の所在地、または被告の住所地を管轄する地方裁判所です。訴訟提起の際に主に以下の必要書類などを提出しなければなりません。

・訴状の正本および副本
・収入印紙
・郵券
・固定資産評価証明書
・全部事項証明書(不動産登記簿謄本)

訴状の正本には収入印紙を貼り付けます。法令に記載すべき事項が厳密に定められています。実務上よくあるのは、「副本の部数が足りない」「登記簿の記載が古い」「共有者の住所が登記と異なる」といった形式的な不備です。共有者が多い案件では書類準備の段階で時間がかかることも珍しくありません。

また、収入印紙と郵券の金額については裁判所によって異なるため、申立先の裁判所に問い合わせて確認することが大切です。

固定資産評価証明書と不動産の全部事項証明書の入手方法については以下の記事でわかりやすく解説しているので、参考にしてみてください。

参照:裁判所「民事訴訟 訴え提起時に提出すべき書類等」

②裁判所から当事者に期日呼出状が送付される

訴状の提出をしたあと、裁判所による審査を経て、裁判所から当事者各自に期日呼出状が送付されます。裁判所の混雑状況にもよりますが、基本的には提起からおよそ1か月前後で第1回口頭弁論期日が指定されるケースが多いです。

【期日呼出状とは】
民事訴訟で原告や被告などに期日を知らせ、出頭を命じる旨が記載されている書面のこと。

期日呼出状は特別送達という方法で郵送されるのが原則です。受け取りを拒否したり、不在が続いたりしても、一定の条件を満たせば送達は成立します。実務上も、「受け取らなければ無効になる」ということはありません。

呼出状には、答弁書の提出を求める書面や、原告の主張に対する認否を記載するための書類が同封されていることがあります。

実際の現場では、他の共有者がこの書面で初めて「本当に裁判になった」と認識するケースがほとんどです。訴訟を提起された当事者は、答弁書に必要事項を記載し、期日の約1週間前までに裁判所に提出しなければなりません。

③各当事者が答弁書その他の書面を裁判所に提出する

訴訟を起こされた当事者は、原則として裁判期日に出席する必要があります。また、答弁書その他の書面を裁判所に提出します。

初回の期日に限り、裁判所へ出頭しない場合は、答弁書に記載された内容のを期日で主張したものとみなして手続が進められます。そのため、答弁書に記載された内容に間違いがなければ裁判所に出頭しなくても問題ありません。

ただし、原告の主張をすべて受け入れる場合をのぞき、裁判所の期日は複数回にわたり行われます。第2回目の期日以降は、事前に自分の主張をまとめた書面を提出するとともに、裁判期日にも出頭しないといけません。

裁判期日に出頭しない場合、原告の請求がそのまま認められることがあります。「出席しなければ裁判が止まる」と誤解されることがありますが、実際は逆で、相手方の主張に沿った形で判断が進むリスクが高まるのです。

ただし、共有不動産の分割を巡る事案では当事者同士の感情対立が強いことが多く、本人同士が法廷で顔を合わせない方が円滑に進むケースも多いのが実情です。そのため、訴訟代理人として弁護士に依頼しているなら、弁護士に任せて当事者本人は欠席、もしくは弁護士とともに裁判期日に出頭しても構いません。

経験上、答弁書の段階で適切に争点を整理できるかどうかが、その後の分割方法や和解の方向性を左右します。訴訟に入った以上は受け身にならず、戦略的に主張を組み立てることが重要です。

④裁判期日を経て裁判所から判決が出る

複数回の口頭弁論を経て、裁判所は当事者双方の主張や提出証拠を総合的に検討し、分割方法を判断します。共有物分割請求訴訟では、現物分割・代償分割・換価分割のいずれが相当かが主な争点になります。

もっとも、判決はあくまで「裁判所が適切と判断した方法」で言い渡されます。原告が希望した分割方法がそのまま認められるとは限りません。

訴訟では、共有状態は解消されるものの、全員にとって望ましくない結果になる可能性もあることを念頭に入れておきましょう。

また、判決が言い渡される裁判所から和解を提案されるケースもあります。各共有者が和解に応じれば、「裁判上の和解」が成立し訴訟は終了します。

和解するにしても判決が言い渡されるにしても、訴訟によって分割方法が決定した場合、共有者はその結果に従わなければなりません。従わない共有者がいるときは、強制執行により実現することも可能です。

共有物分割請求訴訟にかかる費用

共有物分割請求訴訟にはさまざまな費用がかかります。事案によっては費用が高額になることもあるため、費用面も考慮したうえで訴訟を起こすかどうか決める必要があるでしょう。

ここでは、訴訟にかかる費用について解説します。

共有物分割請求訴訟にかかる費用
  • 裁判費用:5万円〜
  • 不動産鑑定費用:20〜100万円
  • 弁護士費用:着手金30万円+報酬金5%

裁判費用(印紙代・郵便切手代):5万円〜

裁判費用とは、裁判にかかる実費です。支払い先は裁判所で、内訳としては「印紙代」「郵便切手代(郵券)」になります。印紙代は原告が裁判所に提出する訴状に必ず貼付するもので、端的にいえば裁判の手数料にあたります。

手数料の金額は以下のとおり、不動産の固定資産税評価額によって異なります。

固定資産税評価額 手数料
500万円 3万円
1,000万円 5万円
1,500万円 6万5,000円
2,000万円 8万円

参照:手数料額早見表(単位:円)|裁判所

例えば不動産の評価額が1,000万円なら、5万円の手数料がかかります。

一方、郵便切手代とは、裁判所が当事者(共有者)に必要書類を郵送する際にかかる料金です。郵便切手第は当事者の数に応じて次のように変動します。

裁判所によって異なりますが、他の共有者が1人であれば6,000〜8,000円程度かかり、相手の人数が1人増えるごとに2,000円程度加算されます。

不動産の評価額が1,000万円で他の共有者が2人なら、6万円程度見ておくとよいでしょう。

このように、印紙代と郵便切手代は不動産の価値と当事者の数に応じて変動するため、具体的な金額は個別のケースによって異なります。相場は5万円程度ですが、事案によっては十数万円かかる事例もみられます。

不動産鑑定費用:20〜100万円

不動産鑑定が必要になった場合、不動産鑑定費用として20〜100万円程度かかります。

金額に幅があるのは、土地のみなのか、建物を含むのか、収益物件か自宅かといった個別事情によって、評価の難易度や調査範囲が大きく異なるためです。加えて、不動産鑑定士ごとに報酬体系が異なるため、同じ物件でも見積額に差が出るのが実情です。

不動産鑑定はすべてのケースで必要になるわけではありません。実務上、鑑定が必要になりやすいのは「代償分割」で金銭をいくら支払うかが争点になるケースです。

共有者全員が評価額について合意できれば、鑑定を行わずに進むこともあります。しかし実際は、「高すぎる」「安すぎる」と評価額で対立するケースが多く、各当事者がそれぞれ独自に鑑定書を提出する場面も少なくありません。そのうえで、裁判所の選任した不動産鑑定士によって、中立の立場から不動産鑑定がおこなわれます。

ただし、裁判所が不動産鑑定を行うか否かは、裁判官の判断次第であり不動産鑑定が必ず行われるとは限りません。

鑑定費用には明確な基準がなく、不動産鑑定士の見積金額がそのまま鑑定費用になります。上記で解説したとおり20〜100万円程度が相場ですが、50万円前後になるケースが多いです。ケースによっては鑑定をおこなわず、不動産会社の査定書で代用できることもあります。

弁護士費用:着手金30万円+報酬金5%程度

共有物分割請求訴訟は、法律上は本人訴訟(自分で行う訴訟)も可能です。しかし実際は、訴状の作成、証拠整理、評価額の主張立証、分割方法の選択など、専門的な判断が求められるため、弁護士に依頼するケースが少なくありません。

弁護士費用は事務所ごとに異なりますが、相場感は次のとおりです。

内容 相場
着手金 結果の成否にかかわらず必ず支払う費用

30万円
報酬金 成功した場合に支払う費用

得られた利益(共有持分の時価)の5%

例えば共有持分の時価が500万円であれば、弁護士費用は「30万円+500万円×5%=55万円」となります。費用だけを見ると高額に感じられますが、訴訟戦略を誤って不利な分割方法が選ばれれば、数百万円単位で差が出ることもあります。

その意味では、弁護士費用は「コスト」であると同時に「リスク管理費用」という側面もあるといえるのです。また、弁護士に依頼することで訴訟が円満に進む確率が高まるため、自力での訴訟準備にかかるストレスも減らせます。

実際の現場でも、「もっと早く相談していれば換価分割を避けられた」「資力の主張が不十分で代償分割が認められなかった」と後悔される方は少なくありません。

訴訟を検討する段階で、費用総額・想定される分割方法・最終的な手取り額を含めてシミュレーションしておくことが、後悔しない判断につながります。

共有物分割請求訴訟の注意点

共有物分割請求訴訟の3つの注意点

「共有者が協議に応じてくれない」「決めた内容を実行してくれない」といった場合、共有物分割請求訴訟は非常に有効な手段です。実務上も、交渉が完全に行き詰まった案件では、訴訟によってしか前に進まないケースがあるのは事実です。

しかし一方で、訴訟は最終手段であり、始める前にリスクや制約を十分理解しておくことが極めて重要です。現場でも、「こんなはずではなかった」と後悔される方は少なくありません。

  • 共有者全員を当事者にする必要がある
  • 所在不明の共有者がいるときは公示送達や民法の制度を利用する
  • 遺産分割が終わっていない相続財産は原則として共有物分割請求訴訟ができない
  • 共有状態を解消したいなら「持分放棄」や「共有持分の売却」といった他の方法もある

それぞれの注意点についてわかりやすく解説していきます。

共有者全員を当事者にする必要がある

不動産の取り扱いを決める話し合いをおこなう際、共有者が多ければ賛成する共有者・反対する共有者とさまざまでしょう。このような状況でも、共有分割請求訴訟を申し立てた場合、自分以外の共有者全員に当事者(被告)として裁判に参加してもらわなければなりません。

例えば、以下のケースを例に考えてみましょう。

・A・B・C・Dが不動産を共有している
・A・B・Cは共有不動産の売却に賛成している
・しかしDだけが売却に反対している
・AがDに対して共有物分割請求訴訟を申し立てた

上記のケースではAとDの2人が裁判で争うのではなく、BとCも含めた共有者全員で裁判に参加しなければなりません。B・Cも共有不動産の所有権を有しており、裁判で下された結果が彼らにも影響を及ぼすことになるためです。

実務上も、「反対している人だけ訴えればよい」と誤解されるケースが非常に多いのですが、それでは手続きが成立しません。共有者が1人でも抜けていると、却下や補正命令の対象になる可能性があります。

基本的な構図は、分割を求める側が「原告」、その他の共有者全員が「被告」です。もっとも、分割に賛成している共有者が複数いる場合は、連携して「共同原告」として提起することも可能です。実務上も、賛成者がまとまって動いたほうが、訴訟の方向性は安定しやすい傾向があります。

もし賛否両論ある中で訴訟を申し立てるのであれば、訴訟を提起する前に賛成している共有者に対して訴訟を起こす旨を話しておくとよいでしょう。賛成しているからと言って話を通さずにいると、反感を買ってしまう恐れがあります。

所在不明の共有者がいるときは公示送達や民法の制度を利用する

共有不動産のご相談で非常に多いのが、「共有者と連絡が取れない」「住所もわからない」というケースです。相続を繰り返して権利関係が複雑化し、面識のない共有者が存在していることも珍しくありません。

前述のとおり、共有物分割請求訴訟は共有者全員を当事者にしなければなりません。そのため、1人でも所在不明者がいると、そのままでは訴訟を提起できないのが原則です。

このような場合に活用できるのが、「公示送達」や民法上の各種制度です。
公示送達とは、相手の所在が分からず訴状を送れない際に、代わりに簡易裁判所に送付する制度です。届いた書類は裁判所の掲示場に掲示され、一定期限を過ぎると、これで相手に訴状が届いたとみなされます。

つまり、建前上は共有者が当事者に含まれた形式を作れるため、共有分割請求訴訟が可能になります。ただし、公示送達をするには相手の氏名が判明しているのが最低条件です。相手の氏名が分からない場合は、残りの手段である民法の制度の利用を検討します。

共有者に所在不明者がいる場合、訴訟を進めるための前提として利用できる制度と、訴訟自体を回避して共有を解消できる新制度の4通りがあります。

制度名 概要
失踪宣告 行方不明から一定期間経過後に、家庭裁判所へ申し立て死亡したとみなす
不在者財産管理人 家庭裁判所への申し立てにより、所在不明者の代わりに財産を管理する「不在者財産管理人」を選任してもらう
所在等不明共有者の持分取得制度 地方裁判所への申立てにより、他の共有者が所在不明者の持分を取得する
所在等不明共有者の不動産の持分の譲渡 地方裁判所への申立てにより、所在不明者の持分を含めて不動産全体を第三者に譲渡する権利を認めてもらう

これまでは「不在者財産管理人」の制度がポピュラーでした。しかし、令和3年の民法改正で新たに創設された「所在等不明共有者の持分取得制度」と「所在等不明共有者の不動産の持分の譲渡」という新制度を用いると、さらに所在不明者がいる分割請求訴訟をスムーズに進められます。

所在等不明共有者の持分取得制度とは、裁判所への申立てにより、他の共有者が所在不明者の持分を取得できる制度です。例えば原告が行方不明者の持分も取得すると、「当事者になれない人がいない」状態になるため、共有分割請求訴訟が可能になります。

一方、所在等不明共有者の不動産の持分の譲渡とは、裁判所への申立てにより、行方不明者の持分も含めて不動産全体を第三者への売却を認めてもらう制度を指します。第三者への譲渡を前提としており、この制度を活用すれば換価分割を実施できる可能性があります。

参考:裁判所「所在等不明共有者持分取得申立てについて
参考:裁判所「所在等不明共有者持分譲渡の権限付与の申立てについて

遺産分割が終わっていない相続財産は原則として共有物分割請求訴訟ができない

遺産分割協議が終わっていない相続財産に対しては、原則として共有物分割請求訴訟ができません。相続に関する事件は地方裁判所ではなく、家庭裁判所での「遺産分割手続き」を行うのがルールだからです。

複数の人が不動産を共有することになる原因の1つに相続があります。たとえば、被相続人が遺言を残さずになくなった場合、「土地は長男」「車は長女」のように、個別に相続するものがはっきりしていない状態に陥りやすくなります。

この場合、まず遺産分割協議を先にすべきというのが裁判所の原則的な立場です。これは、相続による共有状態には、単なる「持分の割合」だけでは決められない事情が含まれているためです。

たとえば、以下のような事情がある場合、法律上は単純に法定相続分どおりに分けるのが公平とは限りません。

  • 生前に多額の援助を受けていた相続人がいる(特別受益)
  • 長年にわたり親の介護や家業を支えてきた相続人がいる(寄与分)

このような事情を整理しないまま共有物分割請求訴訟で形式的に分けてしまうと、「本来より少ない取り分になった」「貢献が反映されていない」といった新たな紛争が生じるおそれがあります。

そのため裁判所の実務では、まず家庭裁判所で遺産分割を行い、各相続人の取り分を確定させるべきだとされています。

したがって、遺産共有状態にある相続財産は、原則としてそのままでは分割請求訴訟は認められていません。まずは相続人同士で遺産分割協議を行い、誰がどの遺産を所有すべきかが確定したのちに、改めて共有関係を解消していくのが基本です。

ただし相続開始から10年が経過している場合は例外

ただし、令和5年4月施行の改正民法により、相続開始から「10年」を経過した遺産については、例外として遺産分割ではなく「共有物分割請求訴訟」の対象になり得るというルールが新設されました。

10年が経過すると、先述した「特別受益」や「寄与分」などの特別な事情は原則として考慮されなくなり、原則として法定相続分(持分)に従って画一的に分けることになります。そのため、長期間放置された相続財産の場合は、地方裁判所での共有物分割請求訴訟で解決できるケースがありますが、手続きの判断が複雑になるため専門家への確認が必須です。

共有状態を解消したいなら他の方法もある

不動産の共有状態を解消したいなら、共有物分割請求訴訟の他にも方法があります。

例えば以下の2つです。

  • 持分放棄
  • 共有持分の売却

自己持分の放棄

持分放棄は、自分の持分を他の共有者に引き継ぐことで共有関係から解放される方法です。持分を「放棄」するため共有者でなくなる点はメリットといえますが、売却とは異なり金銭は得られず、ただ所有権だけを失います。

また、法律上は自分の意思だけで「持分を放棄する」と宣言することは可能です。しかし、手放したことを公的に証明する「持分移転登記」の手続きを進めるには、他の共有者の協力が原則として必要になります。(協力が得られない場合は、別の裁判を起こす必要が生じます)

共有者の都合がつかない場合は実印を押印した委任状と印鑑証明書が必要になるため、形式上は単独でできる行為でも、実質的には他の共有者との協力関係が前提になります。

実務上も、関係が悪化している案件では登記協力が得られず、手続きが止まるケースは珍しくありません。引き受けてくれる共有者が見つかれば、自分のタイミングで共有関係から離脱できる点はメリットです。固定資産税や管理費などの将来的な負担からも解放されます。

ただし、放棄はあくまで無償譲渡なため、手放したところで対価を受け取ることはできません。そのため、以下の条件が揃っている場合におすすめな選択肢になります。

  • とにかく関係を断ちたい
  • 金銭は不要
  • 協力してくれる共有者がいる

一方で、「お金も欲しい」「相手と関係が悪い」というケースでは、放棄は機能しにくいのが実情です。その場合は、持分売却や訴訟といった他の方法も含めて検討する必要があります。

自己持分の売却

共有持分の売却は自分の共有持分のみを他の共有者や第三者に売却する方法です。持分放棄とは異なり、自分の意思だけで売却できるため手続きに共有者を巻き込みません。

また、売却によって売却代金という利益も得られます。とはいえ、共有持分は単独では自由に使用できないことから、一般の個人が購入するケースはほぼありません。

仮に現れたとしても、他の共有者との間でトラブルが発生する可能性が高く、売主に連絡が入るなど後味の悪い結果になることもあります。

最も円滑なのは他の共有者による買取ですが、資金の準備できない場合は、共有持分を専門に扱う買取業者への売却が一つの選択肢になります。専門業者は共有関係のリスクや出口戦略を織り込んだうえで価格を提示するため、スピード感をもって現金化できる可能性があります。

もちろん、市場価格どおりの評価になるわけではありません。あくまでも目安ですが、市場価格の7割程度の売却益になるのが基本です。しかし、買い取り業者の場合は不動産の築年数が古かったり室内が散らかっていたりしても、現状のまま買取が可能です。

リノベーションなどの必要もないため、こちらはリスクを回避しながら売却できます。共有状態を解消したいなら、共有物分割請求訴訟に踏み切る前に、共有持分の売却を検討してみてはいかがでしょうか。共有持分の売却については、以下の記事で詳細を解説しています。

まとめ

共有物分割請求訴訟の手順や費用について解説しました。

不動産の取り扱いや分割方法が共有者間の協議でまとまらないときは、裁判所に共有物分割請求訴訟を申し立てることが可能です。

ただし、訴訟には「確実に共有状態を解消できる」というメリットがある一方で、「共有者の関係が悪化する」「時間や費用がかかる」といったデメリットが存在します。また、すぐに訴訟を提起できるわけではなく、共有者間の協議が調わない事実を証明しなければなりません。

裁判所の判決によっては自分が不利になってしまうこともあります。ケースによっては、和解での解決を検討したほうがよいこともあるでしょう。

共有物分割請求訴訟は専門知識や訴訟の経験が必要です。自分で対応するにはハードルが高いと感じるかもしれません。訴訟に関して疑問や不安がある人は、共有不動産の問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

共有物分割請求訴訟についてよくある質問

共有物分割請求訴訟は拒否できないのですか?

はい、拒否できません。共有者の誰かが訴訟を起こせば、共有者全員が分割方法について裁判で争うことになります。また、判決には強制力があるため、決定した分割方法には共有者全員がしたがわなければいけません。

共有不動産の共有人が認知症になったら訴訟は起こせる?

認知症になった共有者について裁判所に特別代理人を選任してもらえるので、特別代理人が認知症の共有者の代わりに訴訟代理を任せられます。

共有物分割と財産分与の違いは?

共有物分割は、分割の対象となるもののみについて分割するものです。一方で財産分与は、夫婦が持つ共有財産すべてについて分け方を決めます。

次に共有物分割は共有持分に応じた割合で分けるのが原則である一方、財産分与の場合だと夫婦で2分の1ずつ分けるのが基本です(共有物分割、財産分与のいずれも同意があれば割合を自由に決められる)。

ほかにも、財産分与は夫婦の一方の単独所有と認められる「特有財産」を分割対象から外しますが、共有物分割は特有財産などに関係なく共有分割請求権の対象となるという違いがあります。

また財産分与の請求は、離婚後2年間という期限があります。一方で共有物分割請求に期限はありません。

共有持分に関するコラムはこちら

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    更新日 : 2025年11月07日
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