共有物分割請求とは共有関係の解消を求める正当な権利・手続き
共有物分割請求とは、共有者の一人が他の共有者に対して共有状態の解消を求め、単独所有への変更や共有財産の公平な分配を求める手続きです。
これは民法第256条で認められた「各共有者が単独で行使できる法的な権利」です。たとえ持分が少ない共有者からの請求であっても、法的に正当な権利行使として扱われます。
ちなみに、共有物分割請求が行われると、他の共有者は原則として拒否することはできません。「分割したくない」と主張しても、法的には共有関係を解消する方向で手続きが進むことになります。
ただし、実際の現場では、具体的な分割方法(誰が取得するか、いくらで売るか等)の協議でスムーズに合意できるケースは決して多くありません。「売りたい人」「住み続けたい人」「感情的に反対している人」など、共有者それぞれの利害や感情が衝突するため、当事者同士の話し合いだけでは長期化・膠着化するのが実情です。
そのため、協議で合意に至らない場合や、そもそも話し合いに応じない共有者がいる場合には、調停や訴訟といった裁判上の手続きを通じて、最終的に共有名義の解消を図ることになります。
つまり共有物分割請求は、話し合いが行き詰まった共有問題を最終的には裁判所の力を借りて解決まで進められる点が特徴です。
共有物分割請求の種類と流れ
共有物分割請求は大きく分けて「協議→調停→訴訟」という流れで進んでいきます。まずは当事者間の協議から始め、合意に至らなければ調停、訴訟へと進むのが一般的です。
※上記の期間はあくまで一般的な目安であり、実際の解決までの期間は個別の事情によって大きく変動します。また、協議で解決できない場合、調停を経ずに訴訟へ移行することも可能です。
このように、協議と調停はいずれも「話し合いによる解決」であり、共有者全員の合意がなければ共有状態を解消することはできません。一方で、訴訟まで進めば、当事者の合意がなくても裁判所の判決によって強制的に共有状態が解消することが可能です。
共有物分割協議:話し合いを行う
共有分割請求は、まず「共有物分割協議」から始まります。共有物分割協議とは、共有者同士で話し合って分割方法を決定することです。共有者全員で分割方法について話し合い、合意が得られれば、その内容に基づいて共有名義を解消します。
(ちなみに、協議の段階から弁護士に依頼することも可能です、)
※共有物の分割方法についてはこちらをご覧ください
協議は、各共有者の意見を反映して柔軟に分割方法を決められるため、円満に解決しやすいというメリットがあります。
一方で、協議は基本的に共有者全員の参加と合意が条件です。分割方法に反対する者が1人でもいれば、どれだけ他の共有者が歩み寄っても成立しません。
「話し合いの場には出てくるが感情的になって議論にならない」といったケースでは、協議自体が成り立たないのが現実です。このように協議が行き詰まった場合、次の段階として調停や訴訟を検討することになります。
共有物分割調停:調停委員を介して話し合いを行う
協議で話がまとまらなかった場合は、裁判所に「共有物分割調停」を申し立てることができます。共有物分割調停とは、調停委員や裁判官で構成される調停委員会が間に入り、当事者の意見を聞きながら合意形成を目指す手続きです。
調停では、調停委員会が当事者を交互に個室へ呼んで事情を聴く形式が一般的です。当事者同士が直接顔を合わせる必要がなく、中立的な第三者を介して意見を交わせるため、感情的な対立を抑えつつ議論ができるメリットがあります。
しかし、調停もあくまで「話し合い」である以上、解決には共有者全員の合意が不可欠です。
裁判所が強制的に結論を下すわけではないため、最後まで合意に至らず不調(不成立)に終わるケースも少なくありません。
なお、この後に控える「共有物分割請求訴訟」には、訴訟の前に必ず調停を行わなければならないというルール(調停前置主義)が適用されません。そのため、話し合いでの解決が難しい場合は、調停を経ずにいきなり訴訟を提起することも法的に可能です。
共有物分割請求訴訟:裁判所が分割方法を決定する
協議や調停が不調に終わった場合、最終手段として「共有物分割請求訴訟」を提起します。共有物分割請求訴訟とは、裁判所の判決によって強制的に分割方法を決めてもらう手続きです。
判決には法的拘束力があるため、確定後はその内容に従って必ず共有状態が解消されます。
ただし、訴訟では裁判所が法律に基づいて分割方法を決定するため、必ずしも当事者の希望通りになるとは限りません。
特に注意が必要なのは、判決で「競売(換価分割)」が命じられる可能性がある点です。競売になると共有物が市場価格より安く売却されることが多く、経済的な損失を被るリスクがあります。
共有物分割請求で決定される3つの分割方法
共有物分割請求において決定される分割方法は、主に以下の3種類です。
現物分割
共有名義の財産を物理的に分割し、各共有者がそれぞれ単独名義で取得する方法です。
例えば、広い土地を分筆してAさんの土地・Bさんの土地と分けるケースがこれに当たります。
原則として最も優先される方法ですが、共有不動産(マンションや一戸建て)のように物理的に分けることが不可能な不動産では採用できません。
代償分割(価格賠償)
特定の共有者が単独所有する代わりに、他の共有者に対して持分に応じた代償金(金銭)を支払う方法です。
例えば、長男が実家を単独で相続し、次男と三男にそれぞれの持分相当額の現金を支払うケースです。
不動産を残したい人がいる場合に有効ですが、取得する人に代償金を支払うだけの資力(支払い能力)があることが前提条件となります。訴訟においても、支払い能力がないと判断されれば採用されません。
換価分割
共有物を売却し、諸経費を差し引いた現金を共有者の持分に応じて分配する方法です。
「現物分割」ができず、「代償分割」も資力不足などで困難な場合に選択されることが多いです。
協議や調停での「任意売却」であれば市場価格で売れる可能性がありますが、訴訟の判決による換価分割は原則として「競売」となります。
競売は市場価格の6〜7割程度で落札されることもあり、経済的損失が大きいため、実務上は「全員が損をする解決策」として回避すべき最終手段と考えられています。
共有物分割請求のメリット
共有物分割請求を行うメリットとしては、主に以下の2つが挙げられます。
- 共有状態を法的な強制力を持って解消することが可能
- 共有物を適正価格で評価することが可能
ここからは、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
共有状態を法的に解消することが可能
共有物分割請求の最大のメリットは、相手が話し合いに応じない、あるいは強く反対している状況であっても、共有状態を解消できることが可能である点です。
民法第256条に基づく「共有物の分割請求」は、各共有者に認められた正当な権利です。そのため、請求を受けた他の共有者は、これを拒否することは原則としてできません。
これまでご相談いただいた中にも、「相手が感情的で話し合いにならない」「音信不通の共有者がいて手詰まりだ」と諦めかけている方が多くいらっしゃいました。
しかし、共有物分割請求では、相手の合意がなくても手続きは進行します。
最終的には裁判所が判決を下し、その内容は法的拘束力を持ちます。つまり、当事者の「売りたくない」「認めたくない」という意思に関わらず、強制的に共有名義を解消させることが可能なのです。
不動産を適正価格で評価することが可能
共有物分割請求(特に訴訟)では、共有物の価値を「客観的な適正価格」で評価できるというメリットがあります。
当事者同士の話し合い(協議)では、「安く買い取りたい側」と「高く売りたい側」の利益が相反しやすいため、価格面で合意できずに決裂するケースが非常に多く見受けられます。これは、「相場感が分からない」「相手の提示額が信用できない」という不信感が、解決を遠ざける最大の要因でしょう。
しかし、訴訟において価格争いになった場合、裁判所が選任した「不動産鑑定士」による鑑定が行われます。
不動産鑑定士は国家資格を持つ専門家であり、立地、法令上の制限、市場動向などを踏まえて厳格に評価額を算出します。当事者の感情や思惑を排除した「客観的な数値(鑑定評価額)」が示されることで、双方が納得せざるを得ない基準ができるのです。
共有物分割請求のデメリット
このように、共有物分割請求は強力な解決手段である一方、以下のようなデメリットも存在します。
- 共有者(親族)との人間関係が決裂する可能性が高い
- 解決までに年単位の時間と多額の費用がかかりやすい
- 「競売」になった場合、市場価格より安く売却され損をしやすい
これらについて、詳しく解説します。
共有者との関係が悪化する可能性が高い
共有物分割請求は、共有者間(多くは親族間)の人間関係を悪化させるリスクがあります。
なぜなら、法的手続きである以上、相手方に対して「内容証明郵便」を送ったり、最終的には「訴状」が届いたりすることになります。特に、先祖代々の土地を守りたいと考えている共有者や、その家に住んでいる共有者からすれば、「身内から突然訴えられた」「住処を奪おうとしている」という攻撃的な行為として受け取られる可能性もゼロではありません。
たとえ請求する側に正当な理由があったとしても、感情的な対立は避けられません。「裁判で決着はついたが、親族関係は絶縁状態になった」というケースは、実務上決して珍しくないのです。
一度こじれた関係は、その後の相続手続きや法事などにも悪影響を及ぼします。そのため、「法的に勝てるか」だけでなく、「将来的な人間関係を断ち切る覚悟があるか」まで含めて慎重に判断する必要があります。
共有状態の解消まで時間や費用がかかる
解決までに時間と費用がかかりやすい点も大きなデメリットです。
相手が素直に応じれば早期解決も可能ですが、そもそも話し合いがまとまらないから共有物分割請求を行うケースがほとんどです。
対立が激しい場合、調停に3~6ヶ月、訴訟になれば半年~1年以上、鑑定や控訴まで含めると解決まで2~3年かかることも稀ではありません。
また、費用面での負担も重くなります。
訴訟代理人を弁護士に依頼すれば、着手金・報酬金で数十万円〜百万円単位の費用がかかります。さらに、前述した「不動産鑑定」を行う場合、予納金として別途30〜50万円程度(物件によってはそれ以上)の現金を裁判所に納めなければなりません。
「共有状態を解消するために裁判をしたが、弁護士費用と鑑定費用がかさみ、手元に残るお金がほとんどなかった」とならないよう、費用対効果のシビアな計算が求められます。
競売になった場合、安い価格で売却される可能性がある
訴訟の判決で「換価分割」が命じられた場合、不動産は原則として裁判所の「競売(けいばい)」手続きによって売却されます。
競売は、一般の不動産市場とは異なり、内覧ができない、引渡し後の不具合に対する保証がないなどのリスクがあるため、購入希望者が限定されます。その結果、落札価格は市場相場の6~7割程度まで下がることが一般的です。
本来、全員で協力して不動産会社を通じて売却(任意売却)すれば市場価格に近い金額で売れた物件が、競売になったために安値で売ることになり、そこからさらに訴訟費用が引かれる、といった事態も起こり得ます。
「裁判で白黒つけた結果、全員が経済的に大損をした」という結果を避けるためには、訴訟中であっても、可能な限り競売を回避し、任意売却や代償分割での和解を探る姿勢が重要になります。
共有物分割請求を検討すべき主なケース
前述の通り、共有物分割請求は、法的に共有状態を解消でき得る強力な手段ですが、裏を返せば、親族間の人間関係の断絶や、経済的損失を招くリスクも伴います。
そのため、「共有関係が煩わしい」という理由だけで安易に選択すべきではありません。あくまで、話し合いによる円満解決が不可能で、かつ放置できない事情がある場合の「最終手段」として考えるべきだと、弊社と提携している弁護士も考えています。
具体的に、共有物分割請求を検討すべき(法的手続きに踏み切るメリットが大きい)ケースは、主に以下の2つです。
- 共有不動産全体を売却したいが、同意しない(できない)人がいる
- 共有不動産に居座る共有者を退去させたい
それぞれのケースについて、なぜ共有物分割請求が有効な解決策となるのか解説します。
共有名義不動産を売却したいのに共有者との話し合いがまとまらない
法律上、共有名義の不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必須です。一人でも反対する人がいれば売却は不可能ですし、行方不明で連絡が取れない共有者がいる場合も、そのままでは手続きを進めることができません。
実際、「固定資産税の負担が重いので手放したい」「空き家を処分したい」と考えても、一部の共有者の反対や音信不通により、何年も塩漬けになっているケースは非常に多いです。
しかし、共有物分割請求(訴訟)を行えば、反対している共有者がいても、裁判所の手続きを通じて強制的に共有関係を解消する判決を得ることができます。
判決によって「換価分割(競売)」や「代償分割」が確定すれば、反対していた共有者の同意がなくとも、不動産の現金化や単独所有化が可能になります。
ただし、判決によって「換価分割」が命じられた場合、不動産は裁判所主導の「競売」にかけられます。競売での落札価格は一般市場価格よりも低くなる(市場価格の6~7割程度になることもある)傾向にあるため、任意売却に比べて手元に残る現金が減ってしまう経済的リスクは覚悟しなければなりません。
共有名義不動産に住む共有者を退去させたい
実家などに特定の共有者が住み着いており、他の共有者が不利益を被っている場合も、共有物分割請求が有効な解決策となります。
法的には、各共有者は持分の割合にかかわらず「共有物全体を使用する権利(民法第249条)」を持っています。そのため、特定の共有者が独占的に住んでいても、基本的には「権利に基づいた正当な占有」とみなされます。
たとえ他の共有者に賃料(不当利得)を払っていないとしても、それだけで直ちに「不法占拠」になるわけではなく、単に「出て行ってほしい」と明け渡し請求の訴訟を起こしても、認められないのが実情です。
そこで共有物分割請求を利用します。この手続きによって、居住している共有者の「持分(所有権)」を失わせることができれば、退去を求める法的根拠が生まれます。
- 代償分割(価格賠償)による解決:
居住していない共有者が、居住者の持分を買い取る判決を得れば、居住者は「所有権」を失います。所有権がなくなれば占有権原もなくなるため、所有者として退去を強制することが可能になります。
- 換価分割(競売)による解決:
競売によって第三者が新たな所有者となれば、元々の共有者は全員権利を失います。当然、居住していた元共有者も住み続ける権利を失うため、退去せざるを得なくなります。
このように、直接的に「出ていけ」と言うのが難しい場合でも、「共有関係を解消し、相手の所有権をなくす」というアプローチをとることで、結果として退去を実現できる可能性があります。
ただし、換価分割(競売)の場合は自分たちも不動産を失うことになるため、不動産そのものを残したい場合は、買い取る資金(代償金)の準備が必要です。
共有物分割請求にかかる費用
共有物分割請求で発生する費用の目安は以下の通りです。
| 費用項目 |
金額の目安 |
備考 |
| 内容証明郵便の送付費用 |
1通あたり 1,500~3,000円程度 |
他の共有者全員に「協議の申し入れ」等を送る実費 |
弁護士費用 (着手金・報酬金) |
50万円~ (物件価格により変動) |
弁護士に交渉や訴訟を依頼する場合の費用。 ※取得する持分の価格(経済的利益)に応じて算出されます。 |
裁判所に納める費用 (収入印紙・郵便切手) |
数千円~数万円 (評価額により変動) |
裁判所に調停や訴訟を申し立てる際の手数料。 ※不動産の評価額が高いほど高額になります。 |
不動産鑑定費用 (予納金) |
30~50万円程度 |
訴訟で価格について争いになり、裁判所が不動産鑑定士を選任する場合に必要。 |
※特に「弁護士費用」と「裁判所費用」は、不動産の固定資産税評価額や依頼者の経済的利益(持分の価格)によって大きく変動するため、あくまで一般的な目安としてご覧ください。
共有物分割請求にかかる費用は、「協議」「調停」「訴訟」のどの段階で解決するかによって大きく異なります。
まず「協議(話し合い)」の段階では、裁判所を介さないため、ご自身で対応する場合は実費(内容証明郵便代など)のみで済みます。ただし、交渉を有利に進めるために初期段階から弁護士に依頼する場合は、別途弁護士費用が発生します。
次に「調停」の段階ですが、これは裁判所での話し合い手続きです。申し立て自体にかかる費用(印紙代など)は数千円〜数万円程度と比較的安価です。しかし、調停であっても「法的な主張を整理したい」「代理人として交渉してほしい」として弁護士に依頼するケースが多く、その場合は着手金などの弁護士費用がかかります。
そして最も費用がかさむのが「訴訟」の段階です。
訴訟手続きは法的な専門知識が必須となるため、弁護士への依頼がほぼ不可欠となり、数十万円〜100万円単位の弁護士費用が発生します。
さらに、訴訟で大きな負担となりやすいのが「不動産鑑定費用」です。
不動産の価格について当事者間の主張が食い違う場合、裁判所が選任した不動産鑑定士による鑑定が行われます。この際、鑑定費用の予納金として30〜50万円程度(物件によってはそれ以上)を一括で納める必要があります。
このように、訴訟まで進むと諸費用が積み重なり、総額で100万円を超える負担になるケースも決して珍しくありません。
また、費用をかけたからといって、必ずしも経済的にプラスになるとは限らない点にも注意が必要です。特に判決で「競売」となった場合、市場価格より安く売却されるうえに、そこから多額の訴訟費用が差し引かれるため、「手元に残る現金が想定より大幅に少なくなってしまった」という事態も起こり得ます。
共有物分割請求を検討する際は、単に法的に解決できるかどうかだけでなく、「最終的に手元にいくら残るのか」という費用対効果を冷静に見極めることが重要です。
共有物分割請求の実際の例
ここでは、弊社提携弁護士のサポートや監修のもと、実際に解決に至った事例や、裁判所の判断が示された判例をご紹介します。
それぞれの段階でどのような解決が図られるのか、あくまで参考としてください。
共有物分割協議を行い、円満に解決したケース
- 相談者:Aさん(兄・持分1/2)
- 相手方:Bさん(弟・持分1/2)
- 状況:実家を相続。弟が一人で住み続けているが、兄には賃料も払わず、売却にも応じない。
【相談までの経緯】
当初、Aさんは当事者同士で話し合いを試みましたが、Bさんは「俺の家だ」と感情的になり、会話が成立しませんでした。そこで弊社提携の弁護士が代理人として介入し、協議(交渉)を行いました。
弁護士からBさんに対し、「このままでは共有物分割請求訴訟になり、最悪の場合は競売(家を失うこと)になる可能性がある」という法的リスクを丁寧に説明。同時に、「Bさんが住み続けたいのであれば、Aさんの持分を適正価格で買い取るべき(代償分割)」という提案を行いました。
【結果】
法的根拠に基づいた説明によりBさんも態度を軟化させ、最終的に「Bさんが住宅ローンを利用して資金を用意し、Aさんの持分を買い取る」という内容で合意が成立。
裁判に発展することなく、Aさんは現金化、Bさんは単独所有化を実現し、兄弟間の関係悪化を最小限に抑えて解決しました。
共有物分割調停に進んだ結果、共有状態が解消されたケース
- 相談者:Cさん(持分1/3)
- 状況:長年放置された空き家。Cさんは売却を希望したが、他の2名が「先祖代々の土地だから」と漠然と反対し、話し合いが進まない。
【相談までの経緯】
提携弁護士による協議でも相手方の回答が曖昧だったため、Cさんは裁判所に「共有物分割調停」を申し立てました。
調停では、裁判所の調停委員という第三者が間に入り、「維持管理費の負担が増え続けるリスク」や「将来的にさらに相続が発生して権利関係が複雑化するリスク」を客観的に指摘しました。
【結果】
調停委員の説得により、反対していた親族も「将来世代に負担を残さないために、今のうちに現金化して分けるべき」と納得。
最終的に、全員の合意のもとで不動産会社(弊社)による仲介売却(換価分割)を行うことで調停が成立しました。市場価格に近い金額で売却でき、諸経費を引いた代金を3等分することで公平に解決しました。
共有物分割請求をされた場合の対処法
不動産が共有名義である限り、他の共有者から共有物分割請求される可能性もあります。この請求に対して適切な対応を怠ると、本来守れたはずの居住権や資産価値を失うといった取り返しのつかない事態を招くリスクが高まります。
もし、他の共有者から共有物分割請求をされた場合は、自身の意向に合わせて以下のように冷静に対応することが重要です。
- 【大前提】共有物分割請求を無視せずに共有者と話し合う
- 【持分を手放せる場合】自分の持分を手放すことを検討する
- 【持分を手放したくない場合】共有者同士の落としどころを見つける
ここからは、それぞれの対処法について1つずつ詳しく解説していきます。
【大前提】共有物分割請求を無視せずに共有者と話し合う
大前提として、他の共有者から共有物分割請求をされた場合、どのような状況であっても請求は無視せず、必ず共有者と話し合いを行いましょう。実務の現場では、「放っておけばそのうち諦めるだろう」「感情的になっているだけだから対応しないほうがいい」と判断してしまい、結果的に事態を悪化させてしまうケースを何度も見てきました。
共有物分割請求を無視し続けると、相手方は調停や訴訟といった裁判手続きに進まざるを得なくなります。そうなると、自分の意思とは関係なく、以下のような不利益を被るリスクが一気に高まります。
- 弁護士費用や訴訟費用で金銭的に大きな負担がかかる
- 不動産を所有し続けたかったのに、判決で代償分割が命じられ、他の共有者が不動産を単独所有することになった
- 判決で換価分割が命じられたことで不動産が競売にかけられ、市場価格よりも低い価格で手放すことになった
共有物分割請求をされた後は、まず共有者のみで話し合う「共有物分割協議」を行います。協議の段階であれば、話し合いによって分割方法を柔軟に決められるため、自分の希望を反映させた円満な解決を図ることが可能です。
他の共有者から共有物分割請求をされたら、「不動産を手放したくない」「不動産を売却したい」など自分の希望条件を明確にし、誠実に交渉へ臨むようにしましょう。
【持分を手放せる場合】自分の持分を手放すことを検討する
共有名義の不動産を使用しておらず、所有の意思もない場合は、自分の持分を手放すことを検討してみましょう。自分の持分だけなら、他の共有者から同意を得ず単独で売却できます。
自分の持分をすべて売却すれば共有名義から抜けられるため、将来的な他の共有者とのトラブルや訴訟に発展するリスクから完全に回避できます。共有持分の主な売却先は、「他の共有者」と「専門の買取業者」の2つありますが、まずは他の共有者への売却を優先的に検討してみましょう。
一般の買い手から敬遠されやすい共有持分も、既存の共有者からすれば「自身の持分割合が増加することで支配権が強まる」というメリットがあるため、第三者に売却するよりも有利な条件で合意してもらいやすいです。
また、残される共有者にとっても、見知らぬ第三者が共有関係に加わることによる心理的負担や、権利関係が複雑化するリスクを未然に防げるというメリットがあります。ただし、この方法は他の共有者に買取の意思や資金がなければ成立しません。
もし、他の共有者に売却するのが困難な場合は、専門の買取業者への売却を検討してみましょう。買取価格の相場は「不動産全体の市場価格×持分割合」の30~50%程度に留まりますが、複雑な権利関係やトラブルが生じている不動産の持分であっても積極的に買取に応じてもらえます。
【持分を手放したくない場合】共有者同士の落としどころを見つける
自分の持分をどうしても手放したくない場合は、協議の段階で他の共有者とよく話し合い、共有者全員が納得できる落としどころを模索してみましょう。訴訟にまで発展してしまうと、自分にとって不利な判決が命じられてしまうリスクがあります。
他の共有者が持分を取得する形での代償分割や換価分割が命じられ、自分の持分を手放さざるを得ない状況に追い込まれることもあり得ます。
しかし、協議の段階であれば、共有者それぞれの意見を尊重したうえで柔軟に解決方法を決められます。自分の持分を手放したくない場合は、話し合いの場でその切実な想いを明確に伝えたうえで、持分を手放さずに済む具体的な解決策を提示してみましょう。
<持分を手放したくない場合の解決策の例>
- 土地を物理的に分割し、それぞれ単独名義で取得する
- 自分が他の共有者全員の持分を適正価格で買い取る
- 自分が不動産を利用し続ける代わりに、他の共有者へ賃料相当額を支払ったり、固定資産税を全額負担したりする
重要なのは、「自分の希望を押し通すこと」ではなく、「相手にとっても合理的だと思える選択肢を提示すること」です。実際の現場では、金銭面や負担の分担を明確にするだけで、相手の態度が軟化し、訴訟を回避できたケースも少なくありません。
自分の意見だけに固執せず、他の共有者の立場や利益にも配慮しながら交渉を続けることで、結果として持分を失わずに共有問題を整理できる可能性は十分にあります。
まとめ
共有物分割請求は民法で認められた強力な権利であり、共有者であればいつでも請求することが可能です。協議の段階で合意が得られなかったとしても、最終的には強制的に共有名義を解消できるのが最大のメリットです。
しかし、訴訟にまで発展してしまうと、多大な時間や費用がかかるうえに、不本意な形で分割が命じられてしまう恐れがあります。また、法的に強力な権利行使であるがゆえに、他の共有者からの感情的な反発を招きやすく、人間関係の深刻な悪化につながるケースも珍しくありません。
そのため、共有物分割請求は共有名義を解消したいからという理由だけで安易に選択すべきではありません。まずは不動産全体に向けての交渉や自分の持分のみの売却といった別の手段を模索し、それでも共有名義を解消できない場合の最終手段として検討するようにしましょう。
共有物分割請求についてよくある質問
共有物分割請求にかかる税金はありますか?
共有物分割請求で共有名義の不動産を分割した際、状況によっては税金が課される場合もあります。共有物分割請求で課される可能性がある主な税金としては、「登録免許税」「不動産取得税」「譲渡所得税」「贈与税」があります。
| 税金の種類 |
概要 |
| 登録免許税 |
現物分割や代償分割によって分割した後の不動産を単独名義に変更する際に課税。換価分割では落札者が負担するため、共有者には原則として課税されない。 |
| 不動産取得税 |
原則として非課税。ただし、分割によって当初の持分割合を超えて不動産を取得した場合は、その超過分に対して課税。 |
| 譲渡所得税 |
代償分割や換価分割で持分や不動産を譲渡して売却益が生じた場合、その売却益に対して課税。 |
| 贈与税 |
原則として非課税。ただし、現物分割で分割した後の各土地の評価額に差がある場合、代償分割で相場よりも著しく低い価格で持分を売買した場合は、その差額分に課税。 |