共有名義アパートの経営にありがちなトラブルと対処法
はじめは問題なくても、アパートを共同経営しているうちに問題が生じ、トラブルに発展するケースは少なくありません。
共有名義のアパート経営にありがちなトラブルと対処法は以下のとおりです。
ありがちなトラブル |
対処法 |
特定の共有者が家賃を独り占めしている |
「不当利得返還請求」を行い家賃を回収する |
無償でアパートの一室に居住している共有者がいる |
無償で居住することを了承していなかった場合は「不当利得返還請求」を行い家賃を回収する |
アパートの管理方針が共有者間で一致しない |
話し合いで解決できないなら共有状態の解消を検討する |
管理費・税金を支払わない共有者がいる |
「求償権」を行使し立て替えた分を請求するか「共有持分買取権」によって共有者の持分を強制的に買い取る |
管理業務の負担に偏りがある |
話し合っても状況が変わらないなら、自分の持分を共有者や第三者に買い取ってもらう |
相続によって権利関係が複雑になった |
・事前に回避したい:生前対策を行う
・すでに問題が起きている:弁護士に相談する |
上記の対処法を試しても問題が解決しないときは、共有状態の解消を検討したほうがよいかもしれません。
それぞれ詳しく解説します。
特定の共有者が家賃を独り占めしている
共有名義アパートの経営にありがちなトラブルには、特定の共有者が家賃を独り占めするケースが挙げられます。
本来賃貸アパートの家賃は、共有者全員が持分割合に応じて取得すべきです。
オーナーが複数人存在する共有アパートでも、通常は共有者それぞれにではなく代表者にまとめて家賃が入金されるため、代表者は受け取った家賃を他の共有者に分配しなければなりません。
しかし中には、家賃をそのまま独り占めしてしまう代表者もおり、そのことが原因でトラブルに発展してしまう場合があります。
対処法は、家賃を独り占めしている共有者に対して「不当利得返還請求」を行うことです。
【不当利得返還請求とは】
本来得るべきではないにもかかわらず得た利益を、返還するよう求めること。請求が認められれば、「独り占めした家賃の合計×返還請求を行う人の持分」が回収できる。請求できるのは最大過去10年分で、10年を超える部分に関しては時効にかかるため請求できない。
民法でも、以下のように定められています。
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
引用元 引用元:民法第七百三条|e-Gov法令検索
不当利得返還請求を行う際の注意点は、強引に手続きを進めてしまうと、共有者との関係が悪化し、今後のアパート経営に差し支える可能性がある点です。
親族同士で共有しているケースも多いため、「関係がこじれてしまうのは避けたい」と思う人もいるでしょう。家賃の回収よりも、とにかく関係を悪化させずに問題を収束させたいときは、共有状態の解消をおすすめします。
共有不動産を独り占めしている共有者への家賃請求や家賃未払いへの対処法については、以下の記事で解説しています。あわせてチェックしてください。
無償でアパートの一室に居住している共有者がいる
共有者の1人が無償でアパートの一室に住み着き、トラブルになるケースもあります。家賃を支払っていれば問題ありませんが、断りなく無償で居住しているとなると、他の共有者はよく思わないでしょう。
居住している本人は、「オーナーだからこれくらい許されるだろう」と思っているかもしれません。しかし、いくらアパートのオーナーであってもそこまでの権利はありません。
他の共有者の同意なく無償で居住しているときは、「特定の共有者が家賃を独り占めしている」で解説したケースと同様に、「不当利得返還請求」が可能です。
この場合、以下の金額が請求できます。
持分割合に応じた家賃×居住していた期間(最大過去10年分)
ただし、無償での居住に同意していたときは請求できないため注意が必要です。
なお、居住している共有者をアパートから無理やり追い出すことはできません。共有者にはそれぞれ不動産全体を利用する権利があり、不法占拠者にあたらないためです。
訴訟を提起したとしても、裁判所は共有者の居住を「適法である」と判断する可能性が高いでしょう。居住している共有者に持分を買い取ってもらうか、第三者に自分の持分を売却するなどして共有状態から抜け出すことをおすすめします。
アパートの管理方針が共有者間で一致しない
アパートを共同経営していると、共有者間で管理方針が一致しないことがよくあります。たとえば共有者Aは「売却したい」、Bは「建て替えたい」というように、共有者同士で意見が食い違っているケースです。
管理方針が一致しないことの問題点は、共有者全員の同意がなければ共有不動産を売却したり賃貸したりする「変更行為」を行えない点です。共有者のうち、1人でも反対していると変更行為はできません。
また、「管理行為」は共有者全員が同意していなくてもできますが、共有者のうち過半数の同意が必要です。
変更行為・管理行為の具体例は以下のとおりです。
変更行為 |
・不動産全体の売却
・建物の新築・増改築・建て替え
・大規模修繕
・リフォーム
・建物の解体
・土地の造成・土盛
・不動産全体への抵当権設定
・3年を超える賃貸借契約 |
管理行為 |
・3年以内の賃貸借契約
・賃貸借契約・使用貸借契約の解除 |
一方、軽微な修繕や法定相続分どおりで相続する場合の所有権移転登記、不法占拠者への明渡請求などは共有者それぞれが自分の意思だけで行えます。
意見が食い違っている間、修繕やリフォームが行えないと適切な管理ができず、不動産としての価値が下がってしまう可能性があります。管理方針についてすでにもめている・話し合いすらできないほどこじれてしまったというときは、早いうちに共有状態の解消を検討すべきでしょう。
管理費・税金を支払わない共有者がいる
共有アパートの管理費・税金を支払わない共有者がいるケースもあります。
アパートを所有していると、以下の費用が発生します。
共有アパートに自ら住んでいなくても、管理費や修繕費はそれぞれの持分割合に応じて支払うのが一般的です。固定資産税や都市計画税も共有者全員に納付義務があり、通常は持分割合に応じて負担します。
第十条の二 共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
引用元 引用元:地方税法第十条二項|e-Gov法令検索
ただし固定資産税や都市計画税の納付書は、共有者全員に発送されるのではなく代表者だけに届きます。代表者が納付したあと、他の共有者にそれぞれの負担分を請求し精算する仕組みです。
管理費や税金を支払わない共有者がいる場合、「求償権を行使する」方法があります。
【求償権とは】
立て替えたお金を請求できる権利のこと。日本郵便株式会社が「いつ・誰が・誰に・どのような文書を送ったか」を証明してくれるサービスである「内容証明郵便」を用いて、支払いに応じない共有者に請求する方法が一般的。
参照:内容証明|日本郵便株式会社
注意点は、求償権を行使しないまま10年が経過してしまうと求償権が時効によって消滅し、立て替えた分が回収できなくなることです。管理費や税金を支払わない共有者がいるなら、泣き寝入りせず求償することを検討しましょう。
ただし、求償権を行使することで共有者との関係性が悪化するおそれがあるほか、弁護士に依頼すると回収した金額によっては費用倒れになる可能性があります。費用については前もって弁護士に相談し、リスクを理解したうえで行うことをおすすめします。
なお、請求から1年以上経っても相手が支払いに応じず、他の共有者が費用を立て替えているときは、「共有持分買取権」を行使するのも1つの手段です。
【共有持分買取権】
立て替えた管理費・税金の請求から1年以上経っても共有者が支払わない場合に、相当の償金を支払うことで共有者の持分を強制的に買い取れる制度。行使された共有者は拒否できない。
民法では、以下のように定められています。
第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
引用元 引用元:民法第二百五十三条|e-Gov法令検索
共有持分買取権については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
管理業務の負担に偏りがある
特定の共有者に管理業務の負担が偏ることが、トラブルにつながる場合もあります。「自分だけがアパートのオーナーとして管理業務を行っており、他の共有者は何もせず家賃だけ受け取っている」となれば、不満が出るのは当然でしょう。
アパート経営には、以下のような業務が発生します。
- 入居者の募集
- 家賃回収
- 賃貸契約の更新
- 入居者のトラブル対応
- 建物の掃除・メンテナンス
- 敷地内の草刈り・樹木の伐採
- 確定申告に関する作業
管理費や税金などと同じように、管理業務も本来であれば共有者全員で平等に行うべきです。しかし、住んでいる場所や本業の有無によって管理業務に割ける時間は異なり、遠方に住んでいる共有者は管理業務に携わりたいと思っても現実的に難しいでしょう。
また、業務管理を不動産会社に委託するのも有効な手段ですが、今度は費用面や「委託する・しない」でもめる可能性があります。
他の共有者が管理業務をせず、話し合っても状況が好転しないときは、自分の持分を第三者や他の共有者に売却するなど、共有状態の解消を検討したほうがよいかもしれません。
相続によって権利関係が複雑になった
アパートに限らず、共有名義の不動産につきものなのが、相続による権利関係の複雑化です。基本的に、相続が発生すればするほど共有者は増えていくためです。
現在共有者との関係が良好でアパート経営がうまくいっていても、この先自分も含めて共有者が亡くなり、相続が発生すると相続人が増えます。
たとえば今は共有者が2人しかいなくても、それぞれ3人ずつ相続人がいる場合、現在の共有者が亡くなり共有で相続すれば、共有者はあっという間に6人まで増えます。
その結果、面識がない人同士が共有者になってしまったり、共有者の所在がわからず同意が得られなかったりといった事態に陥るケースも珍しくありません。
新たな共有者同士の関係が希薄だと、共有者の同意が必要なシーンで同意を得られず、アパートを適切に経営していくことが難しくなります。賃貸物件としてすべきことを行えないまま、アパートが放置されるといったことも起こり得るでしょう。
自分が亡くなったあとのことが心配であれば、亡くなる前に共有状態を解消したり遺言書を作成したりといった対策をおすすめします。
生前対策については、「共有アパートを相続しないためにできる生前対策」でも解説しています。ぜひあわせてチェックしてください。
すでに問題が起きてしまっているときは、弁護士への相談を検討しましょう。
アパートの共有状態を解消する6つの方法
アパートの共有状態を解消する方法は以下のとおりです。
解消方法 |
おすすめのケース |
アパート全体を売却する |
・共有者間で売買の話が持ち上がっている
・少しでも高値で売却したい |
他の共有者の持分を買い取って単独所有にする |
・アパート経営を続けたい
・アパートを手放さずに共有状態から抜け出したい |
自分の持分を他の共有者に買い取ってもらう |
単独で所有したがっている共有者や良好な関係性の共有者がいる |
自分の持分を放棄する |
・他の共有者との話し合いは可能だがアパートの管理方針が合わない
・金銭を得ることよりもとにかく共有状態から脱したい |
自分の持分を買取業者などの第三者に売却する |
・他の共有者と関わらずに売却したい
・一刻も早く共有関係から抜け出したい
・現金化を急ぐ事情がある
・他の解消方法が選択できない |
「共有物分割請求訴訟」を提起する |
・共有者同士の関係が悪く話し合いが難しい
・裁判所の判断に委ねたい |
それぞれ解説します。
なお、共有名義の解消方法と解消しないリスクについては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
【関連記事】共有名義解消のための完全ガイド!解消方法7つと解消しないリスクを解説|株式会社クランピーリアルエステート
アパート全体を売却する
アパート全体を売却することで共有状態を解消できます。
アパート全体を売却する場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット |
・売却益を平等に分られる
・持分だけを売却する場合よりも高値で売れる可能性が高い |
デメリット |
・共有者全員から同意を得る必要がある
・アパートが手元に残らない |
売却によって得た金銭をそれぞれの持分割合に応じて分配できるため、平等で納得しやすい方法といえるでしょう。
たとえば以下の例では、共有者A・B・Cが1,000万円ずつ分け合って共有状態を解消します。
・アパートの市場価格:3,000万円
・共有者3人で3分の1ずつ所有
また、持分だけを売却するときは売買価格が安くなる傾向にありますが、売却対象がアパート全体であるため、市場価格とそう変わらない価格で売却できる可能性があります。
注意点は、アパート全体の売却には「共有者全員の同意」が必須である点です。1人でも売却に反対する共有者がいると行えません。売却に反対している共有者がいるなら、ほかの方法を検討しましょう。
そのほか、当然ですが売却によってアパートを失います。手元に残したい場合は他の方法を選択すべきでしょう。
アパート全体の売却がおすすめなのは、以下のようなケースです。
- 共有者間で売買の話が持ち上がっている
- 少しでも高値で売却したい
なお、売却の同意が得られれば、共有者全員が集まって売買契約に進む必要はありません。共有者の中から代表者を立て、他の共有者が代表者に手続きを委任する方法もあります。
他の共有者の持分を買い取って単独所有にする
他の共有者の持分を買い取り、自分の単独所有にする方法でも共有状態は解消できます。
他の共有者の持分を買い取る場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット |
・アパートを手放す必要がない
・アパート好きなように管理できる |
デメリット |
・持分を買い取れるだけの資金が必要
・他の共有者に売却の意思がないとできない
・価格でもめる場合がある |
持分やアパート全体を売却する方法とは異なり、アパートを手元に残せます。また、自分の意思でアパート経営が行えます。
ただし、他の共有者の持分をすべて買い取ろうと思うとそれなりの資金が必要になるため、資金がなければ選択できない方法といえるでしょう。他の共有者に売却の意思がないと成立しないところや、売却する気はあっても価格がネックになって話がまとまらない可能性がある点もデメリットです。
他の共有者の持分の買い取りがおすすめなのは、以下のようなケースです。
- アパート経営を続けたい
- アパートを手放さずに共有状態から抜け出したい
アパートを所有することやアパート経営を続けることにこだわらないのであれば、反対に自分の持分を第三者や他の共有者に売却する手段もあります。
自分の持分を他の共有者に買い取ってもらう
自分の持分を他の共有者に買い取ってもらう方法もあります。
自分の持分を他の共有者に買い取ってもらう場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット |
持分に応じた現金を取得できる |
デメリット |
持分を買い取ってくれる共有者がいなければ成立しない |
他の共有者に買い取ってもらうことで、持分に応じた現金を得られるのがメリットです。交渉次第では、高値で買い取ってもらえる可能性もあります。
ただし、当然共有者に買い取りたいという気持ちがあり、さらに持分を買い取れるだけの資力がなければ成立しません。
おすすめなのは、「単独で所有したがっている共有者や、良好な関係性の共有者がいる」ケースです。
資金面の問題をクリアしたうえで、アパートを単独で所有したがっている共有者や、売買の話を持ちかけられるほど良好な関係を築いている共有者がいる場合は、検討してみてもよいでしょう。
買い取ってくれる共有者がいないときは、共有持分専門の買取業者への売却をおすすめします。
自分の持分を放棄する
自分の持分を放棄することで、共有関係から脱却できます。
自分の持分を放棄する場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット |
・共有関係から抜け出せる
・管理費や税金を支払わずに済む |
デメリット |
・一切お金にならない
・他の共有者と共同で登記申請をする必要がある
・「みなし贈与」に該当すると共有者が贈与税の対象になる |
持分を放棄することで共有関係から脱却でき、それ以降は管理費や税金の負担がなくなります。
ただし売却とは異なり、一切お金にならないことを理解したうえで選択する必要があります。
また、放棄の際に行う「持分移転登記」は、他の共有者と共同で申請しなければなりません。他の共有者とアパートの管理方針が合わないようなケースでも、協力してもらえる程度の関係性は必要でしょう。
持分の放棄がおすすめなのは、以下のようなケースです。
- 他の共有者との話し合いは可能だがアパートの管理方針が合わない
- 金銭を得ることよりもとにかく共有状態から脱したい
他の共有者が協力してくれそうにない場合や、少しでも現金化したいときは、持分を放棄するのではなく買取業者などへの売却も検討しましょう。
なお、協力してくれない共有者がいるなら、単独で持分移転登記を行うための訴訟「登記引取請求訴訟」を提起する方法もあります。しかし、訴訟の提起から判決までに平均9カ月かかるため、急いでいるときにはおすすめできません。
登記引取請求訴訟の概要や流れについては、以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。
自分の持分を買取業者などの第三者に売却する
共有状態を解消するには、自分の持分だけを共有持分専門の買取業者などの第三者に売却する方法もあります。
自分の持分を第三者に売却する場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット |
・自分の意思だけで売却できる
・買取業者ならスピーディな買い取りが可能 |
デメリット |
・一般的な不動産会社では取引を断られる場合がある
・市場価格より値が下がる傾向にある |
自分の持分だけを売却するなら、他の共有者の同意は不要です。他の共有者や近隣住民に知られることなく売却することも可能でしょう。
また、売却先が共有持分専門の買取業者であれば、最短数日〜1週間程度という短期間で売却できます。
ただし、権利関係の整理やリフォームにコストがかかることから、市場価格より安価になる傾向にあるというデメリットもあります。買取業者に自分の持分を売却するときは複数の業者を比較し、少しでも条件のよい業者を選びましょう。
持分の売却がおすすめなのは、以下のようなケースです。
- 他の共有者と関わらずに売却したい
- 一刻も早く共有関係から抜け出したい
- 現金化を急ぐ事情がある
- 他の解消方法が選択できない
共有関係からの脱却や現金化を急ぐ場合はもちろん、アパート全体の売却や他の共有者との売買といった他の解消方法を選択できないケースにもおすすめの方法です。
共有持分の売却相場については、以下の記事で解説しています。ぜひあわせてチェックしてください。
「共有物分割請求訴訟」を提起する
「共有物分割請求訴訟」を提起するのも1つの方法です。
【共有物分割請求訴訟とは】
共有状態の解消を裁判所に求める手続きのこと。状況や各共有者の主張から、裁判所が適切と考える分割方法を決定する。
共有物分割請求訴訟を提起する場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット |
・他の共有者と話し合いすらできないケースでも共有状態を解消できる
・裁判所の決定であるため各共有者が納得しやすい |
デメリット |
・望んだ結果になるとは限らない
・訴訟費用・弁護士費用・不動産鑑定費用などがかかる
・判決までに数年かかるケースもある |
他の共有者との仲が悪く、話し合いすら難しいケースでも、共有物分割請求訴訟を行えば共有状態を解消できます。裁判所が決定したことであるため、他の共有者も納得しやすいでしょう。
ただし、必ずしも望んだ結果になるとは限らず、誰にとってもよい結果といえない結末になる可能性もあるため、安易に選択することはおすすめできません。
また、訴訟費用や弁護士に依頼した場合は弁護士費用、不動産鑑定が必要になったときは鑑定費用がかかります。判決までに時間がかかるケースも多いため、共有状態の解消を急いでいるなら他の方法を検討したほうがよいでしょう。
共有物分割請求訴訟がおすすめなのは、以下のようなケースです。
- 共有者同士の関係が悪く話し合いが難しい
- 裁判所の判断に委ねたい
共有物分割請求訴訟の要件や流れについては以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。
共有アパートを相続しないためにできる生前対策
「相続によって権利関係が複雑になった」で解説したとおり、相続が発生するたびに相続人が増えていきます。
将来相続人になる配偶者や子どもなどに共有アパートを相続させたくないときは、生前に単独所有に変えておくか、現金化して利益を分配するのが理想です。
ただし自分が単独所有者になるなら、通常他の共有者に対して持分相当分の支払いが発生します。そのため、資金面で不可能なケースもあるでしょう。
もちろん、他の共有者の同意も得なければなりません。
アパートの現金化は、売却で得た金銭を持分に応じて分けるため平等でトラブルになりにくいですが、こちらも他の共有者が反対するときは実行できない方法です。また、アパートを残したい場合には向きません。
複数の相続人がいるなら、遺言書を作成しておきましょう。遺言書を作成しておけば、少なくとも自分が亡くなったときの相続では相続人を増やさずに済み、相続人同士がもめるリスクも減らせます。
他の共有者とも、相続が発生したときのことを想定してあらかじめ話し合っておくことをおすすめします。
まとめ
共有名義のアパート経営にありがちなトラブルや、その対処法について解説しました。
共有アパートを経営していると、特定の共有者が家賃を独り占めしたりアパートの管理方針が一致しなかったりといった共有者間のトラブルが起きる可能性があります。
トラブルの解決方法は、不当利得返還請求をしたり求償権を行使したりとトラブルごとに異なりますが、根本的な解決を望むのであれば、やはり共有状態を解消すべきでしょう。
なお、共有状態の解消方法も状況によって異なります。たとえば、共有者全員が売却に同意しているならアパート全体を売却できますが、話し合いすらできない状況であれば自分の持分だけを買取業者に売却するなど、記事を参考に適切な方法を探してみてください。
専門知識のある人に相談しながら進めたい場合は、共有不動産に強い弁護士に相談することをおすすめします。
共有アパートのトラブルに関するよくある質問
アパートを売却したあと確定申告は必要ですか?
アパートを売却し、利益が出た場合は確定申告が必要です。持分だけを売却したときは売却した人、アパート全体を売却したなら共有者全員がそれぞれ手続きします。
なお、申告期限はアパートを売却した翌年の2月16日〜3月15日です。期限を過ぎてしまったり申告しそびれたりしてしまうと、「無申告加算税」や「延滞税」が課せられる場合があるため注意しましょう。
アパートの売却で利用できる可能性のある特例は以下のとおりです。それぞれ国税庁のホームページで要件などをチェックしてみてください。
- 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除
- 事業用資産の買換えの特例
参照:No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除|国税庁
参照:No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例|国税庁
これからアパートの共同経営を検討している人は共有名義を避けるべきですか?
これからアパートを購入するのであれば、
できるだけ共有名義は避けたほうがよいでしょう。
アパートの共同経営には、管理業務を分担できたり、単独所有に比べて所得税を軽減できたりといったメリットもあるものの、記事の中でも解説したとおり、デメリットのほうが多いためです。
トラブルになるリスクが高いため、可能であれば単独名義で所有することをおすすめします。
訳あり不動産の売却でお悩みなら
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