更正登記とは誤った登記内容を訂正する手続き
更正登記とは、不動産登記の申請内容に誤りがあった場合に、正しい内容に更正するための手続きです。
通常、不動産登記の申請内容に誤りがある場合、登記官から補正を求められます。しかし、誤った内容に気付かず、錯誤(記入ミスや勘違い)または遺漏(記入漏れ)により、事実と異なる内容が誤って登記されるケースもあります。
誤った内容のまま登記が残ると、今後行われる売買、相続における取引や金融機関の手続きで不利益を受ける可能性があります。とくに、実際の持分割合と登記内容が異なっている場合、贈与税が発生したり住宅ローン控除額が少なくなったりするおそれがあります。
そのため、共有名義の登記内容に誤りが判明した際は、速やかに更正登記の手続きを進めましょう。
更正登記の手続き方法は「誤りの原因」によって異なる
更正登記の手続き方法は、登記内容に誤りが生じた原因が申請者と法務局のどちらにあるのかによって異なります。
申請者が提出した書類の内容がそもそも間違っていた場合は、申請者側に責任があるため、申請者が自ら更正登記を申請する必要があります。申請の際は、登録免許税を負担しなければなりません。
一方、申請内容は正しかったものの、登記官の記載ミスによって誤りが生じた場合は、法務局側に落ち度があるため、申請者が法務局に連絡すれば登記官の職権で更正登記を行ってもらえます。もちろん、登録免許税の負担は必要ありません。
なお、更正登記ができるのは、以下2つの要件を満たしている場合に限られます。
- 登記申請時に申請者または法務局の錯誤・遺漏により、誤った登記がされた場合
- 更正登記の前後で、登記内容に同一性がある(権利の主体に変更がない)と認められる場合
更正登記の際には、訂正前後で登記内容に同一性があることが求められるため、名義人を全く異なる人物に変更できません。この場合、不動産登記を抹消したうえで、あらためて正しい内容で登記を行う必要があります。
共有持分で更正登記が必要なケース
所有権共有持分で更正登記が必要なケースとしては、主に下記の2つあります。
- 登記した住所や名前に誤字・脱字がある
- 共有持分割合を誤って登記していた
ここからは、上記のケースについてそれぞれ詳しく解説していきます。
登記した住所や名前に誤字・脱字がある
登記した名義人の住所や名前に誤字・脱字があった場合は、錯誤・遺漏を理由に更正登記を申請できます。
名前を訂正する場合は「所有権登記名義人氏名更正」、住所を訂正する場合は「所有権登記名義人住所更正」を申請しましょう。
名前や住所の誤りが発生するケースの例は、以下のとおりです。
- 名前の漢字の一部に間違いや抜け落ちがある状態で登記してしまった
- 登記申請時はすでに姓が変わっていたのに、誤って旧姓で登記してしまった
- 住所の一部を誤って登記してしまった
- 登記申請時はすでに住所が変わっていたのに、誤って前の住所で登記してしまった
前述したとおり、更正登記の際には訂正前後で同一性があることが求められるため、申請者と登記名義人が同一人物であることを証明するための資料が必要です。たとえば、住民票の写しや戸籍の附票などが該当します。
また、登記申請書の「登記の事由」の部分には「錯誤」または「遺漏」と記載し、錯誤・遺漏によって登記内容に誤りが生じたことがわかるようにしておきましょう。
なお、登記簿上の名義人の氏名・住所が実際の名義人のものと全く異なる場合は、前後の同一性が認められません。このような場合はいったん誤った登記を抹消してから、改めて正しい内容で登記を申請する必要があります。
共有持分割合を誤って登記していた
共有持分の割合を誤って登記してしまった場合は、所有権更正登記(持分の更正)の申請が必要です。
共有持分割合の誤りが発生しやすい主なケースは、「夫婦や親子で資金を出し合い、共有名義で不動産を購入したとき」です。
たとえば、夫婦がペアローンを利用してマイホームを購入し、夫が7割、妻が3割の負担割合で住宅ローンを組んだとします。
本来であれば、負担割合に合わせて夫の持分を7割、妻の持分を3割で登記するのですが、夫婦だから半々でよいと誤解し、各2分の1で登記してしまうケースがあります。
複数の共有者が資金を出し合って共有名義で不動産を購入する場合、登記上の共有持分割合は、実際の購入費用の負担割合に合わせて登記するのが原則です。
自己負担金と異なる共有持分で登記してしまうと、贈与とみなされて贈与税が課される可能性があります。また、住宅ローンの控除額が減少するなど、思わぬ不利益を被る可能性もあります。
共有者同士でトラブルが発生する原因にもなり得るため、共有持分割合を誤って登記してしまったときは、速やかに更正登記の手続きを申請しましょう。
共有持分の更正登記をせずに放置すると「税金の負担額が多くなる」可能性がある
前述の通り、不動産購入時の負担費用に見合った持分で登記していないと、下記のように税制上の不利益が生じる可能性があります。
- 住宅ローン控除額が低くなる
- 贈与税の課税対象になる
今回は以下のケースで見てみましょう。
夫と妻が共同で4,000万円のマンションを購入し、夫が3,500万円(うち3,000万円は住宅ローンを利用)、妻が500万円をそれぞれ出し、登記で夫と妻の持分をそれぞれ1/2とした
複数人で資金を出し合って不動産を取得する場合、税務上は登記上の持分割合を、実際の資金負担割合と整合させることが適正とされています。そのため、今回は夫の共有持分は7/8、妻の共有持分は1/8が適切な持分割合です。
このまま登記上の持分を2分の1ずつとした場合、登記上の持分が実際の負担より少ない夫は、住宅ローン控除額が少なくなります。一方、実際の負担より多い持分を登記された妻には、夫から無償で持分の一部を取得したとみなされ、贈与税の課税対象となる可能性があります。
持分割合の誤りを放置していると、控除額の減少や贈与税の問題など税務上の不利益が継続的に生じるおそれがあります。
次の項目から、住宅ローン控除額と贈与税について詳しくみていきましょう。
実際の負担額に見合わない持分登記では、住宅ローン控除の適用額が低くなる可能性がある
実際の不動産購入の自己負担金よりも持分割合を低く設定したまま、更正登記をしないと住宅ローンの控除が低くなります。
住宅ローンの控除率は一律0.7%となっており、新築住宅の場合は最大13年間、既存住宅(中古物件)の場合は最大10年間の控除が適用されます。住宅ローン控除額は、以下の計算式で算出されます。
住宅ローン年末残高×控除率0.7%
前述した夫婦のケースでいうと、夫名義で3,000万円のローンを組んでいることから、本来であれば夫は「3,000万円×0.7%=21万円」の住宅ローン控除を受けられます。
しかし、住宅ローン控除の対象となる額は「登記上の持分に相当する額まで」です。
登記上の持分(1/2)は2,000万円相当ですが、夫は自己資金として500万円を負担しているため、住宅ローン部分に該当するのは1,500万円となります。
つまり、本来なら21万円の控除を受けられるはずが、共有持分割合を1/2にしたことで年間最大控除額が「1,500万円×0.7=10万5,000円」に下がってしまいます。
更正登記をせず放置すると、将来的にも継続して控除額が減少するため、自己負担金と共有持分の割合が異なっているときは、速やかに正しい割合に訂正しましょう。
持分を贈与されたとみなされて贈与税の対象になる
持分を実際より多く取得してしまうと、持分を贈与されたとみなされて贈与税の課税対象となる可能性があります。
前述した夫婦の事例では、本来の妻の持分は1/8であるにもかかわらず、1/2で登記しています。そのため、この持分の差である3/8分(1,500万円分)が、夫から妻への贈与とみなされる可能性があります。
具体的には、1,500万円から基礎控除110万円を差し引いた1,390万円が課税価格となり、贈与税率45%、控除額175万円が適用されます。
(1,390万円×45%)-175万円=450万5,000円
今回のケースでは、約450万円もの贈与税を請求される恐れがあるため、非常にリスクが高いといえるでしょう。共有持分の誤りは思わぬ税負担につながる可能性があるため、注意が必要です。
参照:贈与税の計算と税率(暦年課税) | 国税庁
共有名義不動産の登記内容が事実と異なる場合は所有権更正登記で登記を訂正する
登記した内容が事実と異なる場合、誤った登記をそのまま放置せず、正しい内容に訂正するための「所有権更正登記」を行う必要があります。
登記上の共有持分の割合が実態と一致していないと、将来的に売却や相続の手続きが複雑になるだけでなく、税務上の指摘を受ける可能性もあります。
ここからは、所有権更正登記の具体的な方法や、注意すべき点について詳しく解説していきます。
所有権更正登記とは最初から誤っていた登記の一部を事実に合致させる登記
所有権更正登記ができるのは、登記内容の一部に誤りがある場合に限られます。たとえば「共有持分の割合」や「名義人の記載の一部に誤りがある」ケースなどが典型例です。
登記内容のすべてが実態と異なる場合や、そもそも登記された権利関係自体が間違っている場合には、更正登記ではなく抹消登記など別の手続きが必要です。
また、所有権更正登記では更正の前後を通じて、同一の登記名義人が含まれている必要があります。別の人物に名義を変更するような場合は、更正登記の対象にはなりません。
所有権更正登記ができるのは、以下のような場合です。
所有権更正登記ができる例
|
更正前の所有者 |
更正後の所有者 |
| 1.単独所有から共同所有への更正 |
Aのみ |
A 2分の1
B 2分の1 |
| 2.共同所有から単独所有への更正 |
A 2分の1
B 2分の1 |
Aのみ |
| 3.登記名義人・共有持分割合の更正 |
A 2分の1
B 2分の1 |
A 3分の1
C 3分の1
D 3分の1 |
| 4.共有持分割合の更正 |
A 2分の1
B 2分の1 |
A 8分の1
B 8分の7 |
いずれのパターンにおいても、更正前後で同じ登記名義人が含まれているため、所有権更正登記が可能になります。
所有権更正登記では所有者以外の協力や承諾が必要なことがある
所有権更正登記をする際には、所有者だけで手続きを進められないことがあります。
更正登記によって、他の共有者や第三者の権利関係に影響が及ぶ場合には、登記上の利害関係者の協力や承諾が必要になることがあります。
具体的にどのような場合に協力や承諾が必要なのか、代表的なケースごとに解説します。
新たに所有者が加わる場合は「以前の所有者の協力」が必要になる
登記済みの不動産に新たな所有者が加わる場合、共有持分の以前の所有者に協力してもらい、共同での登記申請が必要なケースがあります。
たとえば、上記の表「1.単独所有から共同所有への更正」の場合、AとBだけでは手続きができず、以前の所有者(不動産の売主など)に協力してもらい、必要書類を提供してもらわなければなりません。
「3.登記名義人・共有持分割合の更正」では、Bが共有名義から抜けて新たにCDが加わることになるので、A・B・C・D全員が共同で登記申請を行う必要があります。
一方、「2.共同所有から単独所有への更正」や「4.共有持分割合の更正」の場合、前所有者の協力は必要なく、AとBのみで所有権更正登記を行えます。
抵当権がある場合の所有者変更をともなう更正登記は「不動産の抵当権者の承諾」が必要
抵当権が設定されている不動産で、所有者の変更や持分の増減をともなう所有権更正登記を行う場合は、抵当権者が登記上の利害関係人に該当するかどうかが問題になります。
抵当権とは、住宅ローンを借りる際に金融機関が不動産に設定する担保のことを指し、返済ができなくなった場合にはその不動産を売却して優先的に弁済を受ける権利のことです。
「単独所有から共同所有」「共同所有から単独所有」「登記名義人を追加・変更」などのように、更正前後で所有者が変わるケースでは、抵当権の及ぶ範囲にも影響が出る可能性があります。
抵当権の範囲が変われば抵当権者に利害が発生するため、抵当権者である金融機関などの承諾書が必要になります。
たとえば、持分を減少させる共有者の持分に抵当権が設定されている場合は、担保の範囲が縮小する可能性があるため、抵当権者の承諾が求められます。
なお、更正前後で所有者は変わらず共有持分割合のみを更正する場合、共有不動産全体に抵当権が設定されていれば抵当権者に利害が及ばないため、抵当権者の承諾を得る必要はありません。
抵当権者の承諾が必要かどうかは、更正登記の内容や抵当権の設定状況によって異なるため、事前に法務局や専門家へ確認するとよいでしょう。
所有権更正登記ができない場合の2つの解決方法
所有権更正登記ができない場合には、以下の2つの理由が考えられます。
- 登記内容の一部ではなく、全部に誤りがある
- 不動産の前所有者の協力や抵当権者の承諾が得られない
ここからは、それぞれのケースでの解決方法を解説します。
登記内容が全て誤っている場合は所有権抹消登記後に所有権移転登記をする
所有権更正登記は、登記内容の一部に誤りがあり、更正前後の登記名義人が同一人物(本人)である場合に限り認められます。
そのため、以下のケースのように登記内容がすべて誤っており、登記名義人が異なるケースでは所有権更正登記ができません。
更正前はAが登記名義人だったが、更正後はBとCがそれぞれ1/2ずつの持分を所有する登記名義人になる
このような場合は所有権抹消登記を行い、あらためて所有権移転登記を行います。
所有権抹消登記とは、登記簿に記載されている所有権の記録を取り消す手続きのことです。登記内容がすべて誤っている場合や、本来の所有者とは異なる人が登記名義人として登記されてしまった場合に行います。
まずは所有権抹消登記で現在の登記記録を抹消し、その後で所有権移転登記の手続きをおこないましょう。
更正登記の利害関係者に承諾が得られない場合は真名回復登記をする
前述のとおり、所有権更正登記や抵当権の状況によっては、前所有者の協力や抵当権者の承諾を得る必要があります。しかし、なかには協力や承諾が得られないケースもあります。
その場合は所有権更正登記ではなく、「真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記」(真名回復登記)をおこない、事実と登記内容を一致させましょう。
真名回復登記とは、登記簿上の誤った名義人から、正しい所有者へ「所有権移転登記」という形で名義を回復させる手続きです。登記簿上の誤りを抹消するのではなく、あくまで「新たな移転」として正しい登記名義人に訂正します。
真名回復登記では抵当権の範囲に影響を与えないため、以前の所有者や抵当権者の協力・承諾が不要となる場合があります。
ただし、真名回復登記を行うには、登記原因証明情報で合理的な理由を記載する必要があります。単純に「前所有者の協力が得られない」「担保権者の承諾が得られない」という理由だけで認められるのは難しいでしょう。
真名回復登記の登記原因証明情報には、以下のように詳細な理由の記載が必要です。
- 登記内容が現状と合致せず、登記名義人は所有権を有していない状態である
- 更正登記後の所有者が所有権を握っている状態である
- 所有者が登記内容の不一致を認めており、真名回復登記による所有権変更に意義がない
登記原因証明情報の作成には専門知識も求められるため、司法書士に相談して作成を代行してもらうことをおすすめします。
なお、真名回復登記では、登録免許税が通常の更正登記よりも高くなる点に注意が必要です。
通常の所有権更正登記であれば、更正登記する不動産1つに対して一律1,000円ですが、真名回復登記の場合は一律ではなく以下の計算式で算出されます。
不動産の固定資産税評価額×20/1000
たとえば、不動産の固定資産税評価額が1,000万円の場合は「1,000万円×20/1000=20万円」の登録免許税が発生します。
不動産の固定資産税評価額が高いほど登録免許税が高額になるため、真名回復登記をする前に固定資産税評価額について確認しておく必要があります。
固定資産税評価額は、毎年税務署から送付される固定資産税通知書に同封されている「課税証明書」で確認できます。
共有持分の更正登記の手続きに必要な準備や費用
共有持分の更正登記の手続きをする際に準備する必要があるものとして、以下の項目が挙げられます。
- 登記申請書
- 登記原因証明情報
- 印鑑
- 印鑑証明書
- 所有権を取得した際の登記識別情報または登記済証
- 本人確認資料
- 登録免許税
また、状況に応じては以下の書類や費用も準備しておく必要があります。
ここからは、それぞれの項目について詳しく解説していきます。
更正登記に必要な書類
共有持分の更正登記には、登記申請をするための登記申請書と、なぜ更正登記をするのか理由を記した登記証明情報の2つが必要です。
登記申請書
登記申請書とは、更正登記などの登記を申請する際に法務局へ提出する書類のことです。司法書士に作成を依頼することも、自分で作成することも可能です。
なお、更正登記に必要な登記申請書の書き方については「共有持分の更正登記を申請する際のひな型」の項目で解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
登記原因証明情報
登記原因証明情報とは、登記を訂正する理由を客観的に証明する書類や情報のことです。登記の申請に際して、申請原因や錯誤の事実・経緯などを示すために添付します。
たとえば夫婦でマンションを購入し、夫が3,500万円、妻が500万円を負担したにもかかわらず、登記上ではそれぞれ1/2ずつの持分にしてしまったようなケースがあったとします。
これを正しい持分割合に訂正する場合、購入時の資金負担割合がわかる契約書や、資金負担の経緯を説明する陳述書などを登記原因証明情報として提出する必要があります。
なお、具体的にどのような登記原因証明情報が必要なのかはケースによって異なるため、司法書士に相談したほうがよいでしょう。
登記権利・者登記義務者ごとで必要なもの
更正登記後に持分割合が増減する人によって、必要なものが異なります。
登記義務者・登記権利者ごとで必要なもの
|
登記権利者(持分増加者:夫) |
登記義務者(持分減少者:妻) |
| 印鑑 |
認印 |
実印 |
| 印鑑証明書 |
× |
〇 |
| 登記識別情報または登記済証 |
× |
〇 |
| 本人確認資料 |
〇 |
〇 |
登記権利者と登記義務者で違いがあるのは、印鑑・印鑑証明書・登記識別情報(登記済証)の取扱いです。
印鑑
登記権利者(持分が増加する方)は印鑑として、認印が必要です。実印である必要はありません。
一方で登記義務者(持分が減少する方)は原則として、実印が必要です。持分が減少する側については、本人の意思を厳格に確認する必要があるため、実印での押印が求められます。
印鑑証明書
登記義務者(持分減少者である妻)は、発行日から3か月以内の印鑑証明書が必要です。実印と印鑑証明書を併せて提出することで、本人であることを確実に証明します。
登記権利者(持分増加者)については、印鑑証明書の提出は不要です。しかし、代理申請などの場合には提出を求められることがあります。
所有権を取得した際の登記識別情報または登記済証
登記義務者(持分減少者)は、原則として所有権を取得した際の登記識別情報または登記済証が必要です。登記識別情報または登記済証の所持者であれば、登記名義人であることを公的に証明できます。
平成17年の不動産登記法の改正で、登記済証から登記識別情報が発行されるようになったため、どちらかがあれば問題ありません。
本人確認資料
登記権利者・登記義務者とも、本人確認資料が必要です。
本人確認資料として有効なのは、運転免許証・パスポート・マイナンバーカード・国民年金手帳などのことで「住所・氏名・生年月日」の記載があるものです。
状況に応じて必要な書類
更正登記では、申請の状況によって追加の書類が必要になることがあります。
たとえば、代理人に登記申請を依頼する場合や、利害関係者(抵当権者など)の関与がある場合は、それを示す書類が必要になります。
委任状なしに代理人が申請したり、口頭のみで承諾を得てもこれらの書類がないと登記申請できません。
委任状
代理人に登記申請を依頼する場合には、代理人に申請の権限を委任したことを示す委任状が必要です。代理人として申請するのは、司法書士や弁護士が一般的です。
司法書士や弁護士に登記申請の手続きを依頼する場合、登記の申請人本人が、その専門家に対して手続きを任せることを示す委任状を用意します。
承諾書
不動産に抵当権が設定されている場合、金融機関などの抵当権者は所有権更正登記の利害関係者となることがあります。その場合に、利害関係者の承諾書が必要です。
たとえば、抵当権が設定されている不動産について登記変更をする場合、金融機関から所有者側に対する委任状(抵当権者の承諾・委任)が必要になるケースがあります。
利害関係者から承諾書が得られない場合、登記申請が受理されない、または補正を求められる可能性があります。
共有持分の更正登記にかかる費用
共有持分の更正登記にかかる費用は、司法書士への報酬と登録免許税です。
- 司法書士への報酬:おおよそ3万円〜10万円程度
- 登録免許税:不動産1個につき1,000円
更正登記は自分で申請することも可能ですが、不備があると作成した書類の確実性を証明できなくなります。
必要な書類の取り寄せや申請書、登記原因証明情報などの作成を考慮すると、司法書士に依頼するしたほうが間違いがなく確実です。
司法書士への報酬
司法書士に登記申請書の手続きを依頼すると、登記申請書の作成や必要書類の整理・法務局への申請代行などを行ってもらえます。
司法書士に支払う報酬の金額は、司法書士事務所や案件の内容によって幅がありますが、約3万〜10万円が目安です。
登録免許税
所有権更正登記の申請には、登録免許税がかかります。
不動産1件につき、一律1,000円の登録免許税がかかります。たとえば土地と建物の両方を更正する場合、登録免許税は合計2,000円です。
登録免許税は、現金か収入印紙のいずれかで納めます。
共有持分の更正登記を申請する際のひな型
更正登記に必要な登記申請書には、主に下記の情報を記入します。
- 登記の目的:「〇番所有権更正」と記入(〇番には登記事項証明書の何番の所有権を構成するのか記入)
- 原因:登記内容に誤りが生じた原因(錯誤または遺漏)を記入
- 更正後の事項:更正後に登記されるべき内容を記入
- 登記権利者:更正登記によって利益を受ける者の氏名・住所を記載
- 登記義務者:更正登記によって不利益を受ける者の氏名・住所
- 添付情報:必要な添付書類を記載(登記原因証明情報・登記識別情報・印鑑証明書など)
- 更正登記の申請日・申請先の法務局
- 登録免許税の金額(1,000円×更正登記の対象となる不動産の数)
- 不動産の表示:更正登記の対象となる不動産の概要を登記事項証明書の記載通りに記入
上記の「夫の共有持分を7/8、妻の共有持分1/8とすべきところを、錯誤によって夫婦で2分の1ずつの共有持分で登記してしまった夫婦」を例とする場合、下記のように登記申請書を記入します。
登記の目的:〇番所有権更正(※1)
原因:錯誤
更正後の事項:〇〇△△(夫の氏名)の共有持分 8分の7
〇〇××(妻の氏名)の共有持分 8分の1
登記権利者:〇〇県△△市××〇丁目△番×号 〇〇△△(夫の氏名・住所)
登記義務者:〇〇県△△市××〇丁目△番×号 〇〇××(妻の氏名・住所)
添付情報:登記原因証明情報、登記識別情報、印鑑証明書(※2)
令和〇年〇月〇日申請 △△法務局
登録免許税:金2,000円
不動産の表示(※3)
不動産番号:〇〇〇〇〇〇
所在:〇〇県△△市××〇丁目
地番:△△番地
地目:宅地
不動産番号:〇〇〇〇〇〇
所在:〇〇県△△市××〇丁目
家屋番号:△△番
種類:居宅
構造:木造スレート葺き2階建て
床面積:1階〇〇平方メートル
2階〇〇平方メートル
※1:登記事項証明書(登記簿謄本)の甲区(権利部:所有権に関する事項)何番の所有権を更正するのか記入します。
※2:権利者・義務者以外の人が代理で申請する場合は、代理人の住所・氏名を記載し、代理権限証明情報(委任状)を添付します。
※3:登記事項証明書(登記簿謄本)の記載どおりに、所有権更正登記を行う不動産の情報を記入します。不動産番号を記入すると、土地の所在以下の情報を省略できます。
登記の目的は所有権移転か所有権更正になります。今回のように、共有持分割合のみを修正する場合は所有権更正です。原因は、売買や錯誤が考えられますが、今回のように間違えて登記してしまったものを修正する場合は、錯誤と記載しましょう。
更正後の事項は、更正登記の結果どうなるかを記載します。今回は夫の持分が7/8、妻の持分が1/8になることが更正後の事項です。また、登記権利者は持分が増える共有者(今回は夫)、登記義務者は持分が減る共有者(今回は妻)を指します。
不動産の表示は、更正登記の対象となる不動産の概要のことです。登記事項証明書を参考に記入しましょう。なお、登記申請書のひな型は、法務局の公式ホームぺージでダウンロードできます。
共有持分の更正登記を専門家に依頼して予想外の負担を受けないようにしよう
不動産登記の内容に誤りがあることに気付いた場合は、更正登記の手続きを行い、速やかに誤りを訂正しましょう。
とくに、不動産の共有持分を実際の負担割合と異なる内容で登記してしまった場合、思わぬ不利益を被る恐れがあるため、早めの申請が大切です。たとえば、住宅ローンの控除額が減ってしまったり、贈与税が課されてしまったりする可能性があります。
こうしたリスクを避けるためにも、登記の訂正や更正登記を行う際には、弁護士や司法書士などの専門家に依頼するのがおすすめです。専門家は登記に必要な書類の準備や手続きの進め方を熟知しており、トラブルやミスを防げます。
なお、将来的に共有持分の売却を検討している場合は、共有持分の取引実績が豊富な不動産会社に相談しておくと、スムーズに手続きを進められるでしょう。
共有持分の更正登記に関するよくある質問
共有持分の更正登記はいつまでにすればよいですか
共有持分の更正登記はいつまでにしなければならないという期限は特に決められていません。しかし、自己負担金の割合よりも共有持分の割合が多い場合は、他の共有者から共有持分の贈与を受けたとして、本来負担する必要のない贈与税が課される可能性があります。そのため、少なくとも贈与税の申告期限までには、更正登記を行っておく必要があります。
更正登記で持分割合を変更すると贈与税はかかりますか
共有持分の割合を変更すると、共有者間で共有持分の贈与があったとみなされ、移転した共有持分に贈与税がかかる場合があります。しかし、錯誤(申請者の勘違いや記入内容のミスなど)を理由とした更正登記で共有持分の割合を変更した場合は贈与税がかかりません。各共有者が合意した上で登記し、その後に共有持分を変更する場合は贈与税の対象となるのでご注意ください。
更正登記の対象が農地の場合、特別な手続きは必要ですか?
農地が対象となる場合は、農地法の規定によって事前に農業委員会の許可や届出が必要になることがあります。
農地の所有者や持分割合を変更する更正登記では、内容によっては「農地法の許可書」や「届出書」の提出を求められるケースがあります。そのため、対象不動産が農地である場合は、事前に管轄の農業委員会や司法書士に相談し、必要な許可・届出の有無を確認しておくことが大切です。