共有名義不動産の固定資産税は共有者全員に支払い義務がある
共有名義不動産に対して発生する固定資産税は、その不動産の共有者全員に支払い義務があります。地方税法第10条の2における「連帯納税義務」にて、共有物などに対する地方団体へ支払うお金は、納税者全員に納税義務があると定められているからです。
第十条の二 共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
e-Gov法令検索 地方税法第10条第2項
もし共有者のうち支払いを拒否する人がいた場合でも、他の共有者が代わりに納税しなければなりません。一度固定資産税を納税した後、支払った分を滞納者へ請求します。
ワンポイント解説
滞納者が支払うべき債務を他の人が代わりに負担したとき、支払った人が滞納者へ負担分を請求できる権利を「求償権」と呼びます。求償権については、民法第442条に規定があります。求償権の時効は、原則として代わりに負担した日から5年間です。
固定資産税の負担額は共有者それぞれの持分割合によって決まるのが原則
共有名義不動産の固定資産税の負担額は、共有者それぞれの共有持分割合によって決まるのが原則です。
<おさらいポイント>
共有持分とは、共有名義不動産の共有者それぞれが持つ所有権のことです。共有者が3人なら、3人とも共有持分を所有している状態になります。共有持分割合は、共有名義不動産において「共有持分をどれだけ持っているか」の指標です。共有持分割合が50%なら、不動産の所有権を50%持つ状態を表します。
簡単に言えば、共有持分の割合が多い人ほど固定資産税の負担額が大きくなります。共有名義不動産の利用頻度や、実際に住んでいるか否かなどは、固定資産税の負担額に影響しません。
上記の負担割合は、民法第253条に明記された「各共有者は持分に応じて共有物に関する負担を負う」が基になっています。
(共有物に関する負担)
第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
e-Gov法令検索 民法第253条
以下では、固定資産税の負担割合について簡単にシミュレーションをおこないました。
<固定資産税の負担割合>
- 固定資産税額:30万円
- 共有持分割合:A50%・B30%・C20%
- Aが支払うべき固定資産税:30万円×50%=15万円
- Bが支払うべき固定資産税:30万円×30%=9万円
- Cが支払うべき固定資産税:30万円×20%=6万円
なお、民法第253条の負担割合はあくまで基準を示したものです。共有者同士の合意があれば、負担割合を自由に決められます。「Aだけが不動産を利用しているから、Aが固定資産税を全額支払う」といった取り決めも可能です。
また、民法第253条の基準は、固定資産税の支払い以外にも原則として適用されます。たとえば共有名義不動産の維持管理費や修繕費も、共有持分割合に応じた金額を共有者それぞれが負担します。
共有名義不動産の固定資産税は代表者がまとめて納める
共有名義不動産の固定資産税は、代表者が他の共有者全員から負担分を徴収した後、まとめて納めます。
自治体によって異なりますが、基本的に4月から6月頃に納付書が代表者へ送付されるのが一般的です。代表者は各共有者から集めた負担分を、4回の分割、もしくは一括払いで納税します。
分割払いの納付時期も自治体によって異なります。例えば、東京都と愛知県の納付時期は以下のとおりです。
東京都の固定資産税の納付時期 |
6月(第1期)/9月(第2期)/12月(第3期)/翌年2月(第4期) |
愛知県の固定資産税の納付時期 |
4月(第1期)/7月(第2期)/12月(第3期)/翌年2月(第4期)
|
参照:東京都主税局
参照:愛知県
固定資産税の主な納付方法は、次の通りです。
- 金融機関や役所の窓口、コンビニにて現金支払い
- 口座振替(自動振込)
- スマホ決済アプリ
- クレジットカード
- 電子マネー
- インターネットバンキング納付
納付方法は、各自治体によって対応する方法が異なります。どの納付方法に対応しているかは、各自治体に直接問い合わせて確認することをおすすめします。
スマホ決済アプリやクレジットカードなどのキャッシュレス納付なら、地方税共同機構が運営する地方税ポータルシステム「eLTAX」のeL-QRの利用が便利です。
ワンポイント解説
自治体によっては、代表者による納付ではなく、共有者それぞれの個別納付が認められているケースがあります。
例えば鳥取県日南町では、各共有者の持分に応じて個別に納付書を送付してもらうことができます。
個別納付を受け付けるかどうかは自治体の判断によるため、詳しくは役所に問い合わせてみましょう。
固定資産税の納付代表者の決め方は共有名義不動産の取得状況によって異なる
固定資産税の納付代表者となる人の決め方は、共有名義不動産を取得した状況によって異なります。
- 不動産を共有名義で購入した場合は、自治体の基準に沿って選出される
- 相続した不動産を共有名義にした場合は、相続人同士で話し合って決める
- 代表者が自分の持分を売却する場合は、新しい代表者を届け出る必要がある
納付代表者の決定は、あくまで納税通知書を受け取る人を決める行為であり、納税の支払い義務や不動産の所有権に関わるわけではありません。
相続時の遺産分割とも別の手続きとなります。
共有名義不動産における固定資産税の納税義務は、共有持分の所有者全員に課せられるものですし、取得した不動産の所有権を主張するためには「持分移転登記」や「相続登記」などの手続きが別途必要です。
ワンポイント解説
なお、代表者を変更したいときは、新代表者と旧代表者それぞれの署名・押印をした上で、「代表者指定(変更)届出書」を事前に役所へ提出する必要があります。
先述のとおり、固定資産税は毎年1月1日時点の状況を基準に課税されるため、もし翌年分から代表者を変更したい場合は、届け出を前年のうちに済ませておかなければなりません。
代表者の変更手続きも、おおむねどの自治体も共通しています。具体的な手続き手順は、以下のとおりです。
- 共有者全員の同意を得る
- 役所に変更届を提出する
- 変更届には旧代表者と新代表者が署名・押印をする
その他詳しい方法は、管轄の役所に問い合わせてみましょう。
不動産を共有名義で購入した場合|自治体の基準に沿って選出される
不動産を共有名義で購入した場合、自治体の基準に沿って、自治体によって代表者が選出されます。
一例として愛知県知多市の選定基準をご紹介しますので、参考にしてください。
知多市では、納税通知書を送付する代表者の選定について、特に指定が無い場合は、おおむね次の優先順により代表者を決定しています。
1.所有権移動前の代表者が引き続き所有する場合はその方
2.物件地の在住の方
3.知多市に住民登録をしている方
4.持分が多い方(市内同士・市外同士)
5.登録順位が早い方出典:知多市「共有資産に係る固定資産税の代表者選定基準について」
納付代表者の選定基準は、自治体によって異なりますが、実際にはどの自治体もおおよそ同じです。
相続した不動産を共有名義にした場合|相続人同士で話し合って決める
不動産を共有名義で相続した場合は、相続人同士で話し合って代表者を選出する流れとなります。申請に必要な「相続人代表者指定届」が法定相続人に送付されるので、その書類によって届け出をおこないましょう。
もし届出をおこなわなかった場合は、とくに罰則はありませんが、自治体の基準に基づいて法定相続人の中から代表者が指定されることに注意してください。
相続放棄した人や遺産分割協議で相続しないと決まった人が代表者に選ばれてしまうと、納税通知書が相続した人以外に届いてしまう可能性があります。
納付手続きがおこなわれず督促状が届いたり、延滞税が発生したりとトラブルに発展する恐れがあるので、「相続人代表者指定届」によって事前に代表者を指定する方が安心です。
代表者が自分の持分を売却する場合|新しい代表者を届け出る必要がある
代表者が自分の持分を売却するときは、その他の共有者同士で話し合い、新しい代表者を届け出る必要があります。もし届出がなければ、自治体の基準に基づいて自治体によって選定されます。
固定資産税の課税は、毎年1月1日時点の状況を基準におこなわれるため、代表者が自分の共有持分を売却しても、代表者が変わるのは翌年度の課税からです。
売却した当年の納税については、売主である旧代表者がおこないます。ただし、自分の負担分については買主との間で日割り清算をおこなうケースが一般的です。
共有名義不動産の固定資産税を計算する方法
共有名義不動産の固定資産税の金額は、自治体から送られてくる「固定資産税の課税明細書」や、役所の担当部署で閲覧できる「固定資産課税台帳」などで確認できます。
しかし、固定資産税は路線価や再建築評点数などを使えば、自分でも固定資産税額の計算が可能です。事前に固定資産税の金額を把握しておけば、支払い計画が立てやすくなります。共有名義不動産の固定資産税は、以下の流れで計算します。
- 土地自体の固定資産税の税額を計算する
- 建物自体の固定資産税の税額を計算する
- それぞれの固定資産税を合わせて持分割合で按分する
1. 土地自体の固定資産税の税額を計算する
まずは、土地自体の固定資産税の税額計算を紹介します。土地の固定資産税を計算するには、土地の評価額に自治体ごとに定められた税率をかける必要があります。
<土地の固定資産税の計算式>
固定資産税評価額(※1)×1.4%(※2)
※1 固定資産税評価額とは、固定資産税や都市計画税などの税金を計算するうえで基準となる価格のことです。正確には後述する住宅用地の特例などを適用した後の「課税標準額」で計算しますが、本記事ではわかりやすさを優先して固定資産税評価額としています。
※2 税率は原則として標準税率である1.4%ですが、自治体によって1.3%になるなど税率が異なる場合があります。
固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書や固定資産課税台帳などで確認できます。自分で算出する場合は、国税庁の「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」にて公表されている、路線価を使います。
路線価とは、道路に面している土地の1㎡あたりの単価を、1,000円単位で表したものです。
<土地の固定資産税評価額の計算式(※)>
土地の面積×路線価
※ 厳密には借地権割合、奥行き価格補正率などの各種補正、面している道路の数なども考慮しますが、当記事では省略しています。
国税庁 財産評価基準書路線価図・評価倍率表
たとえば、1つの道路に面している共有名義不動産の土地が250㎡、路線価の表示が150だった場合、土地の固定資産税評価額は「250㎡×15万円=3,750万円」です。固定資産税評価額は、「3,750万円×1.4%=52万5,000円」になります。
路線価が設定されていない地域の場合は、評価倍率表を用いて「固定資産税評価額×評価倍率表に記載された倍率」で計算できます。しかしこの場合、結局は役所などで固定資産税評価額を調べる必要があるので注意しましょう
2. 建物自体の固定資産税の税額を計算する
建物自体の固定資産税の税額は、再建築費評点数や経年減点補正率などを用いて計算できます。
再建築費評点数とは、「現在の共有名義不動産と同じ建物を新築したときにかかる建築費」です。経年減点補正率は、「経年劣化による減額分を考慮した補正」を表します。
<再建築費評点数を用いた固定資産税の計算式>
・固定資産税評価額=評点数×評点1点あたりの価額
・評点数=再建築費評点数×経年減点補正率
・評点1点あたりの価額=1円×物価水準による補正率×設計管理費などによる補正率
とはいえ上記の方法は、普段から不動産にかかわっていない人からすると非常に難しい計算です。そのため建物の固定資産税評価額は、簡易的に「購入したときの50~70%」で考えるのがおすすめです。
たとえば購入金額が3,000万円、割合が70%なら、固定資産税評価額は「3,000万円×70%=2,100万円」になります。固定資産税額は、「2,100万円×1.4%=29万4,000円」です。
3. それぞれの固定資産税を合わせて持分割合で按分する
土地と建物それぞれの固定資産税が計算できたら、両方を合算して共有名義不動産全体の固定資産税を算出します。先ほどの計算結果で考えると、「土地52万5,000円+建物29万4,000円=81万9,000円」です。
ただし、ここまで計算した結果はあくまで共有名義不動産全体の固定資産税です。共有名義不動産の固定資産税の納税額は、前述の通り各共有者の共有持分割合に応じて分担します。そこで共有名義不動産全体の固定資産税額に各共有者の共有持分割合をかけ合わせると、共有者1人あたりの固定資産税額を算出できます。
<最終的に各共有者が支払う固定資産税額>
- 固定資産税額:81万9,000円
- 共有持分割合:A60%・B30%・C10%
- Aが支払うべき固定資産税:81万9,000円×60%=49万1,400円
- Bが支払うべき固定資産税:81万9,000円×30%=24万5,700円
- Cが支払うべき固定資産税:81万9,000円×10%=8万1,900円
共有名義不動産の固定資産税の負担を軽減する方法
共有持分の固定資産税の負担を軽減する方法としては、次の2つがあげられます。
- 税法上の軽減措置を使う
- 不動産の評価額が正確か調査する
それぞれの具体的な内容を見ていきましょう。
税法上の軽減措置を使う
固定資産税には税法上の軽減措置があり、条件を満たせば減額や免除が可能です。
住宅用地の特例 |
・住宅が建っている土地については、固定資産税の算定基準となる評価額が減額される制度
・200㎡までの部分は1/6、それを超える部分は1/3に引き下げられる |
「公共の用に供する道路」の非課税措置 |
公道に通じている私道で、道路幅が1.8m以上かつ不特定多数の人が利用している場合は非課税となる制度
|
新築住宅に係る固定資産税の減額措置 |
新築住宅に係る固定資産税を、一定の条件を満たす場合に次の期間、2分の1に減額する制度
・1戸あたり120㎡相当分までが限度
・通常の新築住宅は3年間(マンション等の場合は5年間)
・認定長期優良住宅は5年間(マンション等の場合は7年間) |
住宅用地の特例
もし土地上にある建物がマイホームなどの居住用の家屋なら、「住宅用地の特例」と呼ばれる固定資産税の軽減措置の対象になります。住宅用地の特例が適用されると、固定資産税や都市計画税計算時の固定資産税評価額が最大1/6になります。
住宅用地の面積 |
固定資産税額 |
都市計画税額 |
小規模住宅用地(200㎡までの部分) |
固定資産税評価額×1/6 |
固定資産税評価額×1/3 |
一般住宅用地(200㎡超の部分) |
固定資産税評価額×1/3 |
固定資産税評価額×2/3 |
土地自体の固定資産税の税額を計算するのシミュレーション結果で住宅用地の特例が適用された場合、固定資産税額は以下の通りになります。
<住宅用地の特例を適用した場合の土地の固定資産税評価額の計算例>
- 小規模住宅用地に該当する部分:(3,750万円×200/250)×1/6=500万円
- 一般住宅用地に該当する部分:(3,750万円×50/250)×1/3=250万円
- 固定資産税額:(500万円+250万円)×1.4%=10万5,000円
- 前述のシミュレーションとの固定資産税額の差:52万5,000円-10万5,000円=42万円
参考:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」
参考:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」
「公共の用に供する道路」の非課税措置
「『公共の用に供する道路』の非課税措置」は、不特定多数の人に利用されている私道(道幅1.8m以上)が非課税になるという措置です。
「公共の用に供する私道」としては、以下のような道路が該当します。
通り抜け私道 |
道路の両端が公道に接している私道 |
コの字型私道 |
2戸以上の住宅への通り道として利用されているコの字型の私道(道幅4m以上) |
行き止まり私道 |
2戸以上の住宅への通り道として利用されている行き止まりの私道(道幅4m以上) |
セットバック部分 |
住宅前の道幅が4m未満のとき、4m以上の道幅を確保するために土地の一部を私道にして拡幅を図った箇所
※建築基準法上、住宅が4m以上の道幅に2m以上接していなければならないという義務がある(=接道義務) |
参考:東京都主税局「道路に対する 非課税のご案内」
参考:大阪市「「公共の用に供する道路」に係る事務処理要領」
新築住宅に係る固定資産税の減額措置
「新築住宅に係る固定資産税の減額措置」は、戸建て住宅やマンションを購入した人の負担を軽減することで、良質な住宅の建設を促すことを目的としています。
減額措置には適用要件が設けられており、以下の条件を満たしていることが必要です。
- 居住割合(居住部分の床面積の割合)が1棟全体の2分の1以上であること
- 居住部分の床面積が1戸当たり50㎡以上280㎡以下であること(賃貸の場合は40㎡以上280㎡以下)
参照:東京都主税局
上記の条件を満たす住宅に対して、床面積120㎡相当分の固定資産税が1/2に減額されます。もし床面積が120㎡を超える場合は、床面積120㎡に相当する固定資産税が減額の対象です。
参考:国土交通省「新築住宅に係る税額の減額措置」
不動産の評価額が正確か調査する
固定資産税は「固定資産の評価額×標準税率1.4%」で計算しますが、土地によっては評価額が間違っている場合もあります。
例えば、先祖代々引き継いできた土地などは、実際の面積と登記簿上の面積が異なっており、余分に課税されているケースがあるのです。
正確な測量をして実際の面積が登記簿上の面積より小さければ、固定資産税を下げられる可能性があります。
ただし、その逆のケースがあることも理解しておきましょう。評価額を再調査することで固定資産税が上がる可能性もあり得るということです。
共有名義不動産の固定資産税を立て替えた分を他の共有者に請求する方法
立て替えた分を他の共有者へ請求するときは、まず本人に直接請求をおこない、それでも支払ってもらえない場合は訴訟に進むことになります。
返済の請求は、口頭や電話・メッセージなどでも構いません。
もし立替金の返済を拒む場合は、法的に取り立てることも可能です。その際は内容証明郵便を送り、立替金の請求をおこなった事実を残すことが大切になります。
内容証明郵便を利用すれば郵便局に郵便物の内容を証明してもらえるため、訴訟時に他の共有者が「請求を受けていない」と言い逃れることを防げます。
訴訟を起こした場合は、最終的に財産の差し押さえが実行されます。
実際に請求や訴訟をおこなうときは、不動産問題に詳しい弁護士へ依頼することでスムーズに手続きをおこなえるので効率的です。
立て替えた分の清算を拒否されたら「強制的な持分買取」もできる
他の共有者が立て替え分の清算を拒否する場合、「共有持分買取権」を行使して、その共有者が持つ共有持分を強制的に買い取ることもできます。
共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。出典:e-Govポータル「民法第253条第2項」
持分買取をおこなう流れは、以下の通りです。
- 買取を実施する共有者が、買い取る共有持分の評価額を支払う
- 買取をおこなう共有者に対して強制買取の旨を通知する(内容証明郵便で送る)
共有持分を強制的に買い取るための条件は、「共有者が1年間、税金や維持費の支払いを拒否し続けていること」そして「自分自身が共有者の負担分を肩代わりしていること」が必要です。
立て替え分に関しては、買取価格から相当額を差し引くことで清算する形になります。この買取請求を行うには、法的手続きを経る必要があることに留意しましょう。
共有名義不動産の固定資産税を滞納した場合のリスク
固定資産税を始めとする税金の納付は国民の義務であり、原則として必ず納めなければなりません。
共有名義不動産の固定資産税を滞納した共有者には、代表者や自治体からのさまざまな措置がおこなわれるリスクがあります。共有名義不動産の固定思案税を滞納した場合のリスクは、次の通りです。
固定資産税を滞納した場合のリスク |
概要 |
延滞税がかかる |
以下の固定資産税がかかる可能性がある
・納期限の翌日から1か月を経過するまでの期間:滞納した金額×2.4%×延滞した日数÷365日
・納期限の翌日から1か月を経過した後の期間:滞納した金額×8.7%×1か月を経過して延滞した日数÷365日 |
自治体から督促状が送られる |
・地方税法第329条に基づき、納期限が過ぎてから20日後に督促状が送られてくる
・督促状を無視すると財産差し押さえに発展するリスクがある |
不動産全体を含めた共有者全員の財産が差し押さえの対象になる |
・地方税法第10条の連帯納税義務に基づき、共有者全員の財産が差し押さえになる可能性がある
・差し押さえ対象は動産、給与、預貯金、債権など |
延滞税がかかる
納付期限までに固定資産税の納付できなかった者には、納付期限から実際に納付した日までに応じた延滞税が課せられます。
<令和7年時点での固定資産税の延滞税の計算方法(※)>
・納期限の翌日から1か月を経過するまでの期間:滞納した金額×2.4%×延滞した日数÷365日
・納期限の翌日から1か月を経過した後の期間:滞納した金額×8.7%×1か月を経過して延滞した日数÷365日
※ 当分の間は「特例措置」が設けられており、本来は「納期限の翌日から1か月を経過するまでは7.3%と延滞金特例基準割合+1%のうち低いほう」「1か月を経過した後は14.6%と延滞金特例基準割合+7.3%のうち低いほう」です。
たとえば、滞納した金額が6万円、滞納した日数が140日だった場合の延滞税は次の通りです。
- 6万円×2.4%×30日÷365日≒118円(1円未満切り捨て)
- 6万円×8.7%×110日÷365日≒1,573円(1円未満切り捨て)
- 118円+1,573円≒1,600円(100円未満切り捨て)
自治体から督促状が送られる
固定資産税の滞納が続いていると、納期限後20日以内に自治体から共有名義の代表者宛てに督促状が送られてきます。督促については地方税法第329条にて定められています。
(市町村民税に係る督促)
第三百二十九条 納税者(特別徴収の方法によつて市町村民税を徴収される納税者を除く。以下本款において同様とする。)又は特別徴収義務者が納期限(第三百二十一条の十一又は第三百二十八条の九の規定による更正又は決定があつた場合においては、不足税額又は不足金額の納期限をいい、納期限の延長があつたときは、その延長された納期限とする。以下市町村民税について同様とする。)までに市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しない場合においては、市町村の徴税吏員は、納期限後二十日以内に、督促状を発しなければならない。但し、繰上徴収をする場合においては、この限りでない。
e-Gov法令検索 地方税法第329条
なお、地方税法第331条には「督促状を発した日から10日経過しても完納しない場合は財産を差し押さえなければならない」と定められていますが、実務上は差し押さえ前に連絡にて催告がおこなわれます。
不動産全体を含めた共有者全員の財産が差し押さえの対象になる
督促状や催告をおこなっても固定資産税の滞納が続く場合は、自治体による財産調査がおこなわれます。財産調査の結果、差し押さえできる財産があれば、滞納した固定資産税や延滞税の分だけ差し押さえられます。
ここで注意したいのは、共有名義不動産の固定資産税滞納の場合、滞納者以外の共有者の財産も差し押さえ対象になる点です。なぜなら、前述した地方税法第10条における連帯納税義務にて共有者全員が連帯して納付すべきと定められているからです。
差し押さえの対象になる財産は、次の通りです。
- 自動車、貴金属、ブランド品などの動産
- 会社の給与・賞与
- 預貯金
- 家賃収入や貸付金などの債権
- 共有名義不動産そのもの
固定資産税の金額を考慮すると、滞納が数百万円以上になるケースはほぼないと思われるため、主に動産、給与、預貯金、債権が差し押さえ対象になるでしょう。一方で、必要な生活費、年金、生活保護費、農業・漁業などの仕事に使うための工具などは、差し押さえ対象外です。
共有名義不動産の固定資産税を負担したくない場合は共有持分の売却を検討する
共有名義不動産の共有持分を所有し続ける限り、原則として固定資産税を負担し続けなければなりません。共有名義不動産の固定資産税を負担したくない場合は、共有持分を処分して共有状態から抜け出すことも1つの手です。
共有名義不動産全体を処分する場合は、共有者全員の同意が必須です。しかし、自分が持つ共有持分だけなら、他の共有者の同意がなくても自由に処分できます。
共有持分を処分するなら、売却がおすすめです。共有持分は通常の不動産よりも売却相場が低いと言われますが、実際には数百万~数千万円で取引されるのが基本です。ただし一般の人からの需要がほぼないため、不動産仲介だと売却は難しいでしょう。
そのため、共有不動産の売却先は、「専門の買取業者」か「他の共有者」の2つになると考えておくのが無難です。
・スピーディーかつトラブルのない売却をしたい人におすすめ
共有持分の売却先 |
特徴 |
専門の買取業者 |
・売却相場は「共有名義不動産の市場価格×共有持分割合×1/2~1/3」 |
他の共有者 |
売却相場は「共有名義不動産の市場価格×共有持分割合」
・できる限り高値で売却したい人におすすめ |
共有持分を専門の買取業者に売却する
買取業者とは、顧客から不動産を直接買い取り、買い取った不動産を転売したり活用したりして収益を得る業者です。共有持分を専門とする買取業者なら、共有持分の積極的な買取を期待できます。
共有持分専門の買取業者へ売却するメリットは、次の通りです。
- 共有持分に関する専門知識と買取実績を基に、他の不動産会社などで買取を断られたものでも適切に査定して買取してくれる
- 数日~一週間、早いところなら即日で現金化できる
- リフォームや修繕をしなくてもそのままの状態で売却できる
- 売却後にキズ・欠陥や法的問題が見つかっても責任を取らなくてよい「契約不適合責任免責」で取引できる
- 広告で買い手を募る必要がないので周囲の人にバレずに売却できる
- 弁護士や司法書士と提携している買取業者なら、共有者同士の争いや相続問題がある共有持分でも法的に対応できる
専門の買取業者へ売却する場合の売却相場は、「共有名義不動産の市場価格×共有持分割合×1/2~1/3」です。市場価格が3,000万円、共有持分割合が50%なら、売却価格は500万~750万円が相場になります。
買取後のリフォーム・修繕費や、現況のままでの買取・契約不適合責任免責に関するリスク負担費などが査定額に反映されるため、他の共有者に売却するよりも相場は低めです。
とはいえ、その分だけ共有持分の売買に関するさまざまなサポート・フォローを受けられるのが買取業者の特徴です。スピーディーかつトラブルのない共有持分売却を求める人は、専門の買取業者の利用を検討してみてください。
当サイト「イエコン」なら、都道府県別・相談内容別で全国の買取業者を無料検索できます。一括査定の代行も行っており、売主さまの希望に近い買取業者だけを紹介することも可能です。
共有持分専門の買取業者をお探しであれば、ぜひお問い合わせください。
共有持分を共有者に売却する
共有持分は、他の共有者がほしがっている場合はその共有者にも売却できます。他の共有者が共有持分を買い取った場合、買い取った分だけ共有持分割合が増加します。たとえば、共有持分割合30%の人が共有持分を20%買い取れば、買い取った人の共有持分割合は50%です。
共有持分割合が増える分だけ、共有持分に対する影響力が大きくなります。
たとえば共有持分割合が50%以上になると、軽微なリフォームや短期賃貸借契約などの管理行為が他の共有者の同意を得なくても単独で可能です。もし共有持分を1/2ずつ持っている状態で、その1/2を共有者が買い取れば、不動産が単独所有になって売却や活用が自由におこなえるようになります。
上記のメリットから、他の共有者が共有持分を積極的にほしがるケースがあります。その場合に価格交渉の材料として使えれば、交渉を有利に進められるでしょう。また買取業者の査定のように経費やリスク負担費が差し引かれることがないため、売却価格が高値になることを期待できます。
ただし、自分と他の共有者の2者間だけで契約を締結すると、契約内容に問題が出てきたり契約不適合責任が発生したりなどのトラブルが想定されます。他の共有者へ売却する場合は、不動産仲介会社や不動産に強い弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
まとめ
共有名義不動産の固定資産税は、共有持分を持っている限り負担義務があります。利用価値のない共有持分を保有し続けると税金負担が増えるため、早めに売却してコストを減らしていきましょう。
原則として代表者1名が納付をおこなうため、「誰が代表者になるのか」「どのように清算をおこなうか」などを事前に共有者の間で話し合っておきましょう。固定資産税を滞納し続けると、延滞税の支払いや自治体からの催告・財産差し押さえなどに発展します。
共有不動産を利用する予定がないのであれば、共有持分を売却してしまうのも1つの方法です。共有持分専門の買取業者や他の共有者へなら、一般の人からの需要が低い共有持分でも、高値での売却を期待できます。
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共有持分の固定資産税についてよくある質問
固定資産税の代表者が死亡した場合はどうすればよいですか?
代表者の共有持分を相続した人か、他共有者のだれかが代表者の立場を引き継ぎます。どちらの場合も、役所への申請が必要です。
共有持分を年途中で手放した場合、1月1日から手放した日までの固定資産税の支払いは必要ですか?
実務上、1月1日から手放した日までの日数分の固定資産税は、日割り計算で支払うケースが多いです。
売却以外に共有持分を手放す方法はありますか?
共有持分の贈与・放棄、土地の分筆、共有物分割請求などが考えられます。相続時なら、始めから共有持分を相続しない相続放棄も選択肢に入ります。詳細は関連記事をご覧ください。なお共有持分を手放した場合でも、1月1日〜手放した日までの固定資産税の負担が必要になる可能性があります。
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