不動産の共有持分を売却する際、取引内容を明確にし、後々のトラブルを防ぐうえで欠かせないのが「売買契約書」です。実際の取引では、不動産会社を通して売却する場合、宅地建物取引業法に基づき契約書の作成が義務付けられており、仲介会社が作成します。
一方で、個人間取引では法的義務はありませんが、売買条件や持分割合、責任の範囲を明確にしておくことで、後からのトラブルを避け、安心して取引を進められます。
共有持分の売却では、契約書に自己の持分割合を売却する旨や持分割合を必ず明記する必要があります。
ただ、その他に関しては一般的な不動産売買契約書と大きく変わりません。しかし、契約書の作成や内容のチェックには法律的な専門知識が求められるため、個人で判断して不備を防ぐのは簡単ではありません。
契約後に、思わぬ条件で取引していたことが判明したり、契約解除や損害賠償を請求されるリスクもあり得ます。こうした理由から、個人間での共有持分売買はリスクが高く、できる限り避けるべきです。
どうしても個人間で取引を行う場合は、契約書の作成や内容確認を、不動産会社、弁護士、司法書士などの専門家に依頼しておくことが、安全かつトラブルを未然に防ぐために不可欠です。
本記事では、共有持分売買契約書の基本、ひな形の活用方法、必要書類、注意点まで、実務経験に基づき詳しく解説します。
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共有持分の売却で使用する売買契約書とは?
共有持分を売却する場合でも、取引条件を明確にして双方の合意を証明するためには「売買契約書」が欠かせません。
特に不動産会社を介する場合は、宅地建物取引業法で作成が義務付けられており、契約内容や物件情報を正確に記載する必要があります。個人間取引では義務はないものの、後のトラブルを防ぐためには作成が望ましく、単独名義の物件とは異なり持分割合や自己持分のみの売却である旨を盛り込むのが特徴です。
ここでは、共有持分の売買契約書がどのようなもので、誰がどのように作成するのかを解説します。
不動産売買契約書は不動産業者が作成するもの
不動産の売買は、多くの場合、不動産仲介会社などを通じて行われます。その際の売買契約書は、仲介会社が作成し、取引の条件や物件情報を正確に記載します。宅地建物取引業法第37条では、不動産業者が売買契約を締結する際、契約の当事者に対し書面(37条書面)を交付することが義務付けられており、この書面が実質的に売買契約書となるのが一般的です。
宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。出典:e-gov 宅地建物取引業法 第三十七条
記載内容には、物件の所在地・面積・権利関係・代金・支払条件・引渡し時期などが含まれ、双方が署名・押印することで法的効力を持ちます。仲介会社による作成は、法令に沿った記載や必要事項の漏れ防止につながり、取引の安全性と透明性を確保する重要な役割を果たします。
共有持分の不動産売買契約書と通常の契約書の記載内容に大きな違いはない
共有持分の不動産売買契約書は、基本的には単独名義の物件における契約書と内容が大きく異なるわけではありません。
所在地や面積、権利関係、売買代金、支払い方法、引渡し時期、契約解除の条件など、取引に必要な主要項目は同様に記載されます。
ただし、共有持分の取引では特有の記載が求められます。それが「持分割合」と「自己の持分のみを売却する旨」です。持分割合は登記簿に記載された数字を用い、売却の対象範囲を明確化します。
また、全体ではなく自分の権利部分だけを譲渡することを明記することで、契約当事者間の誤解や認識違いを防ぎ、円滑な取引を実現できます。
共有持分の売却で使用する売買契約書のひな形
共有持分の売買契約書には、法律で定められた統一のテンプレートは存在しません。
そのため、個人間で契約書を作成する場合には、一般財団法人 不動産適正取引推進機構が公開している「標準的売買契約書のひな形」が参考として広く利用されています。
共有持分の売却では、通常の契約書に加え、(A)目的物の表示欄に「持分割合」を示す項目を設け、登記簿に記載された割合を明確に記入します。
売買契約書以外に共有持分の売買をする際に必要な書類
共有持分の売買では、売買契約書のほかにも下記のような書類が必要になります。
- 重要事項説明書
- 登記識別情報(もしくは権利証)
- 土地測量図及び境界確認書
- 実印及び印鑑登録証明書
- 身分証明書・住民票
以下ではそれぞれの書類について説明します。
重要事項説明書
重要事項説明書は、不動産取引に関する物件情報や契約条件などを詳細に記載した書類で、売買契約書と並んで重要な役割を持ちます。宅地建物取引業法に基づき、不動産会社が関与する取引では交付が義務付けられており、作成と説明は必ず有資格者である宅地建物取引士が行います。
物件の権利関係や法令上の制限、設備状況、契約解除条件などが記載され、買主が契約内容を正しく理解し、納得した上で取引できるようにするための重要な資料です。
登記識別情報(もしくは権利証)
登記識別情報(もしくは権利証)は、不動産の所有者であることを証明する極めて重要な書類です。2005年3月以降に共有持分を取得した場合、法務局から通知される12桁の英数字で構成された「登記識別情報」が発行されます。
それ以前に取得した場合は「登記済権利証」が交付され、所有権を示す証拠となります。これらは登記名義人にのみ交付され、売却時の登記申請に必須です。紛失すると再発行はできず、代替手続きが必要になるため、厳重な保管が求められます。
土地測量図及び境界確認書
土地測量図および境界確認書は、共有持分の対象が土地である場合に重要となる書類です。土地測量図は、土地の正確な面積や形状を示す図面で、取引対象部分を明確にする役割があります。
一方、境界確認書は、隣接する土地所有者との間で境界線を確認・合意したことを証明する書類です。これらは、面積や境界に関する認識の相違から生じるトラブルを防ぐために不可欠です。特に売却後の紛争回避や、買主が安心して取引できる環境を整える上で、事前に揃えておくことが望まれます。
実印及び印鑑登録証明書
共有持分を売却する際は、売主本人の実印と、その印鑑が公的に登録されていることを証明する印鑑登録証明書が必要です。これにより、契約書や登記申請における本人確認と意思表示の真正性が担保されます。
自分の持分のみを売却する場合は、他の共有者の実印や印鑑証明書は不要です。ただし、書類の有効期限は発行から3か月以内が一般的なため、事前に確認して準備することが重要です。
身分証明書・住民票
共有持分を売却する際には、売主本人の身分証明書と住民票が必要です。身分証明書としては、運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど顔写真付きの公的証明書が一般的です。これにより本人確認を行い、契約の正当性を確保します。
登記簿上の住所と現住所が異なる場合は、3か月以内に発行された住民票を提出し、住所変更を証明します。
自分の持分のみを売却する場合、他の共有者の身分証や住民票は不要です。事前に有効期限や必要部数を確認し、契約手続きを円滑に進められるよう準備しましょう。
共有持分の売買でかかる費用・税金
共有持分の売却では、契約や登記に伴い複数の費用や税金が発生します。主な項目は以下の4つです。
仲介会社を通じて売却する場合は仲介手数料が必要で、法律に基づき上限額が定められています。登記手続きには登録免許税が課され、不動産の種類や固定資産税評価額に応じて計算されます。売買契約書には印紙税がかかり、契約金額に応じた印紙を貼付します。また、売却によって利益が出た場合には譲渡所得税が発生し、所有期間や税率によって金額が異なります。
事前にこれらの費用を把握し、売却価格や手取り額を試算しておくことが重要です。
費用・税金
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内容
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計算方法・金額の目安
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仲介手数料
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仲介会社への報酬
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(売買価格×3%+6万円)+消費税(上限)
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登録免許税
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所有権移転登記に必要な税金
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固定資産税評価額×2%(土地・建物)
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印紙税
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売買契約書に貼付する印紙代
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契約金額に応じた税額(例:1,000万円超〜5,000万円以下=1万円)
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譲渡所得税
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売却益に課される税金
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(譲渡価格−取得費−諸経費)×税率(所有期間5年以下:39.63%、5年超:20.315%)
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共有持分の売買契約書を個人で作るときに注意すべきこと
共有持分の売買契約書を個人で作成する際は、契約不適合責任の免責や修復義務の範囲、面積差異に関する責任免除などを明記し、取引後のトラブル防止を図ることが重要です。
契約不適合責任の免責条項を記載する
契約不適合責任とは、売買契約後に引き渡した不動産が契約内容と適合しない場合に、売主が負う法的責任のことです。民法第562条では、目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合、買主は追完請求や代金減額請求、損害賠償請求、契約解除ができると定められています。
契約不適合責任の内容
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買主の権利例
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種類・品質・数量の不適合
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修補・代替物請求、代金減額請求
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損害発生
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損害賠償請求
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信頼関係破壊
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契約解除
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こうした責任を避けるため、契約書に免責条項を明記し、売主が既知で告知しなかった場合を除き責任を負わない旨を記載することが重要です。
売却後見つかった不備の修復義務の範囲を記載する
不動産の売却後に欠陥や不具合が見つかった場合、その修復義務を誰が負うのか、また負担の範囲を契約書に明確に定めておくことは極めて重要です。取り決めがないと、売主と買主の間で責任の所在があいまいになり、修繕費用を巡る予期せぬ出費や紛争に発展する恐れがあります。
民法では契約不適合責任として、契約内容に適合しない場合に売主が修補や損害賠償を求められる可能性があるため、契約段階で修復義務の有無や範囲を明文化しておくことで、取引後のトラブル防止と双方の安心を確保できます。
民法 第五百六十二条
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。出典:e-gov 民法 第五百六十二条
登記簿上の面積と実際の面積が異なっても責任追及しない旨を記載する
不動産取引では、登記簿記載の面積を基準とする「公簿売買」と、測量に基づく面積で取引する「実測売買」があります。共有持分の売却で公簿売買を選択する場合、登記簿上の面積と実際の面積に差があることは珍しくありません。
この差異が判明した際、買主が売主に対して代金の減額や損害賠償を求めるトラブルを防ぐため、契約書には「面積の差異があっても責任を負わない」旨を明記しておくことが重要です。こうした条項は、取引後の不要な紛争を未然に防ぐ有効な手段となります。
共有持分の売買契約書の作成は専門家に依頼した方がいい
共有持分の売却は、法的には当事者同士の合意があれば個人間で行うことが可能です。しかし、共有不動産は権利関係が複雑で、契約条件や書類の不備、解釈の相違などからトラブルに発展するリスクが高い取引です。
特に契約書の作成や登記手続き、税務上の確認などは専門的な知識が求められるため、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することで、安全性と確実性が向上します。また、共有不動産の買取を行う専門業者に相談すれば、売却条件の調整や他の共有者との交渉もスムーズに進めやすくなります。
まとめ
共有持分の売却では、契約条件や権利関係を明確化する売買契約書が重要です。単独名義物件と基本構成は同じですが、持分割合や自己の持分のみを売却する旨を記載する点が特徴です。契約書には、契約不適合責任の免責や修復義務範囲、面積差異の責任免除などを盛り込み、トラブルを未然に防ぐ工夫が欠かせません。
また、重要事項説明書や登記識別情報、測量図、印鑑証明書、身分証など必要書類を事前に揃え、費用・税金も把握しておくことがスムーズな取引につながります。
共有持分は権利関係が複雑であり、個人間取引ではリスクも高いため、専門業者の活用が安心です。訳あり物件専門である弊社「株式会社クランピーリアルエステート」では、無料相談・無料査定で適正価格を提示し、迅速かつ安全な売却をサポートしています。まずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
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