そもそも共有不動産はトラブルが起こりやすい
共有不動産は複数人で一つの不動産を管理するという性質上、構造的に意見の対立が起こりやすく、トラブルに発展しやすい傾向にあります。
というのも、不動産の売却や大規模なリフォーム、名義変更といった手続きでは、共有者全員または持分価格の過半数の同意が原則必要なためです。共有者同士の意見が一致しなければ、不動産を自由に活用できず問題が長期化する可能性があります。
特に相続や離婚によって共有名義となった不動産では、時間の経過とともに共有者それぞれの事情や考え方が変化し、話し合いがまとまらなくなるケースも少なくありません。住宅ローンの返済や賃貸、売却の方針などを巡って対立が生じることもあり、当初は良好だった関係がトラブルへ発展することもあります。
また、共有状態を放置すると相続によって共有者が増えたり、共有持分が第三者へ売却されたりして権利関係がさらに複雑になるおそれがあります。トラブルが深刻化すると当事者同士での解決が難しくなり、弁護士への依頼や共有物分割請求訴訟などの法的手続きが必要になるケースも珍しくありません。
共有不動産でトラブルが発生した場合は、まず自分がどのような問題を抱えているのか整理し、状況に応じた解決方法を検討することが大切です。
【277人アンケート】共有不動産で起こりがちなトラブル
イエコン編集部は共有不動産を所有した経験のある人・現在所有している277名を対象に「共有不動産の実態調査」を実施しました。
- 調査名:共有不動産の実態調査
- 調査対象:共有不動産を所有した経験がある人・現在所有している人
- 調査方法:インターネットアンケート
- 調査期間:2025年10月
アンケート内の「共有不動産を巡り、共有者とのトラブルや困りごとを経験したことはありますか?」という質問については、以下のような結果となりました。
アンケート結果からも、実際に共有不動産の所有経験がある人の多くが、トラブルを経験していることが伺えます。さらに、アンケートの回答にて「はい」と回答した方の中から複数名の方に、実際に経験したトラブルと解決に至るまでの内容について詳しくお話を伺いました。
ここでは、アンケート回答者へのインタビューをもとに、実際に起こったトラブルとその解決までの経緯をご紹介します。なお、トラブルの内容はプライバシー保護のため、個人が特定されないよう一部内容を変更しています。
共有者の反対によって不動産全体を売却できなかった
「共有者の反対によって不動産全体を売却できなかった」というトラブル事例です。
インタビューへご協力いただいたAさんは、相続によって兄弟3人で共有名義となった実家を売却したいと考えていました。しかし、共有者である兄が「思い出があるので手放したくない」と反対したため、協議がまとまらず売却できない状態が数年間続いたそうです。
しかしAさんの立場からすると、現在の住居が実家から遠方にあり、定期的な管理や草木の手入れ、固定資産税などの負担を不公平に感じていました。一方、兄は「今すぐ売る必要はない」と考えており、お互いの主張は平行線のままとなったといいます。
話し合いを重ねるたびに口論になることも増え、次第に連絡を取ること自体が苦痛になっていきました。家族の集まりでも不動産の話題を避けるようになり、以前のような関係には戻れなくなってしまったそうです。
その後、不動産会社へ査定を依頼し、売却した場合の価格や今後も保有し続けた場合の維持費を具体的に説明しましたが、兄の考えは変わらず不動産全体の売却には至りませんでした。
このままでは状況が改善しないと判断したAさんは、第三者を交えて再度冷静に話し合う機会を設けました。「最終的に不動産の売却は諦めましたが、その代わり『手放したくないと主張する兄が、今後の固定資産税や実家の管理をすべて引き受ける』という条件で合意し、書面に残すことができました。
根本的な解決ではありませんが、ひとまず私の金銭的・労力的な負担は無くなり、少し肩の荷が下りました」と振り返っています。
共有不動産の売却は共有物の「変更」にあたるため、民法上は共有者全員の同意が必要です。今回のケースのように共有者が1人でも反対すると、不動産全体を自由に売却できません。
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
e-Gov法令検索 民法第251条
したがって、売却を反対された場合は「なぜ反対しているのか」を丁寧にヒアリングし、まずは妥協点を探ることが現実的な対処法となります。
たとえば今回のケースのように「反対する共有者に維持管理を任せる」ほか、「駐車場などとして賃貸に出し、その収益で維持費を賄う」といったルールを取り決めることで、ひとまず自身の金銭的・労力的な負担を軽減できる可能性があります。
固定資産税や修繕費などの費用負担で揉めた
「住んでいない共有不動産の固定資産税や修繕費などの費用負担で揉めた」という事例です。
インタビューへご協力いただいたBさんは、父親の相続をきっかけに、母と妹、自身の3人で実家を共有名義として相続しました。相続後は母がそのまま実家で暮らし、妹とBさんは結婚を機に別の場所で生活していました。
固定資産税や納税通知書がBさんの元へ届いていたため、当初は「あとで母と妹から負担分を受け取ればいい」と考え、毎年立て替えて支払っていたそうです。しかし、次第に「今は余裕がないから、また今度」「まとめて払うよ」と先延ばしにすることが増えていきました。
立て替えた費用を返済してもらえる気配が見られないことに不満を感じたBさんは、これまで立て替えてきた固定資産税や維持費について母と妹へ精算をお願いしました。
しかし、二人とも「今は余裕がない」「余裕ができたらちゃんと返すから」と返済を先延ばしにするばかりで、具体的な返済時期や金額については話が進みませんでした。次第に、Bさんが費用の話をするたびに口論へ発展するようになったそうです。
費用負担のルールを明確に決めていなかったこともあり、話し合いは平行線をたどり、家族の集まりでも不動産の話題を避けるようになってしまったといいます。
Bさんは「自分たちだけの話し合いでは解決できない」と判断し、弁護士へ相談しました。弁護士からは、共有不動産の固定資産税や維持費は、原則として共有者が持分割合に応じて負担する義務があることや、立て替えた費用についても話し合いによって精算方法を取り決められることを説明されたそうです。
その後、弁護士も交えて改めて話し合いを行い、これまでBさんが立て替えてきた固定資産税や維持費は持分割合に応じて返済すること、今後は固定資産税や維持費が発生した際の負担割合や支払期限をあらかじめ決め、書面に残すことで合意しました。
Bさんは「費用負担のルールが明確になったことで、以前のようにお金のことで言い争うことは少なくなりました。」と振り返っています。
共有不動産の固定資産税や管理費などは民法第253条にて、共有者が持分割合に応じて負担することとされています。
(共有物に関する負担)
第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
e-Gov法令検索 民法第253条
また、固定資産税の納税通知書は共有者全員ではなく、代表者となる共有者1人へ送付されるのが一般的です。代表者が一旦全額を立て替えて納付し、後から他の共有者へ持分に応じた負担分を請求するケースも少なくありません。
しかし、インタビューに答えていただいたBさんのように、立て替えた費用が返済されなかったり、返済を先延ばしにされたりするケースもあります。その結果、一部の共有者だけに費用負担が偏り、不満が蓄積して家族間のトラブルへ発展することがあります
費用負担に関する問題を防ぐには、費用負担の割合や支払期限、立替金の精算方法まで事前に話し合い、書面に残しておくことが大切です。当事者同士で話し合いがまとまらない場合は、Bさんのように弁護士へ相談し、第三者を交えながらルールを整理するのも選択肢のひとつです。
離婚後も元配偶者と連絡を取る必要があって辛かった
離婚後も共有名義を解消しなかったことで、元配偶者とのやり取りが続き、精神的な負担を抱えてしまった事例です。
インタビューへご協力いただいたCさんは、離婚時に住宅ローンが残っていたことから、自宅を元夫との共有名義のままにしていました。子どもの生活環境を変えたくないという思いから、離婚後も子どもと一緒にそのまま自宅で暮らし続けることを選んだそうです。
しかし、不動産を共有名義のまま所有していたため、固定資産税の支払いや住宅設備の修繕、売却の検討など、不動産に関することがあるたびに元夫と連絡を取らなければなりませんでした。
Cさんは「離婚した以上、できるだけ元夫とは関わりたくありませんでした。それでも、不動産のことになると話し合いが必要で、離婚したのに関係が終わらないような気持ちでした」と振り返っています。
「このまま元夫と連絡を取り続けるしかないのだろうか」と悩んだCさんは、弁護士へ相談しました。すると弁護士からは「共有名義を解消しない限り、不動産に関する連絡を完全になくすことは難しい」と説明を受ける一方で、「連絡方法をあらかじめルール化することで、精神的な負担を軽減できる場合もある」とアドバイスを受けました。
その後、弁護士を介して話し合いを行い、不動産に関する連絡は電話ではなくメールのみで行うこと、固定資産税や修繕など最低限必要な内容以外は連絡しないことなどを取り決め、書面に残すことで合意しました。
Cさんは「共有名義のままなので、元夫との連絡が完全になくなったわけではありません。それでも、必要なことだけを事務的にやり取りするルールができたことで、以前より精神的な負担は軽くなりました。」と話しています。
事例にもあるように、離婚後も共有名義を解消せず、不動産を共有したまま生活を続けるケースは少なくありません。イエコンを運営する株式会社クランピーリアルエステートが実施したアンケート調査でも、「離婚後に自分または元配偶者のどちらかが住み続けた」と回答した人は全体の約半数を占めています。
離婚後も共有名義のまま不動産を所有している場合、売却や大規模なリフォームなどの重要な決定を行う際には、共有者全員の同意が必要です。そのため、離婚後であっても元配偶者との話し合いが必要になることもあります。
元配偶者との関わりをできるだけ減らしたい場合は、Cさんのように「不動産に関する連絡はメールのみで行う」「固定資産税や修繕など必要な内容だけをやり取りする」など、連絡方法やルールをあらかじめ決めておく方法が現実的です。
状況によって最適な方法は異なるため、当事者同士で解決が難しい場合は、弁護士や不動産会社などの専門家へ相談するとよいでしょう。
共有者が勝手に住み続けたり、利用方法を独断で決めていた
一部の共有者が実家を実質的に占有し、利用方法を一方的に決めてしまったことで、ほかの共有者との間にトラブルが生じた事例です。
インタビューへご協力いただいたDさんは、兄弟で実家を相続し、共有名義で所有していました。相続後、兄が「空き家のままでは管理が大変だから」と実家で暮らし始め、Dさんも当初は管理を任せられるのであればと特に反対しなかったそうです。
しかし、その後も兄は実家に住み続け、売却や活用方法について相談しても「今は住み続けたい」と話し合いに応じてもらえませんでした。また、家賃なども支払われておらず、Dさんは実家を自由に利用できず、固定資産税や管理費の支払いだけが続いていました。
Dさんは「自分も共有者なのに、実家をどうするかを兄が一人で決めているような状況でした。」と振り返っています。
何度話し合いをしても考え方の違いは埋まらず、Dさんは弁護士へ相談しました。弁護士からは、一部の共有者だけが共有不動産を使用している場合は、持分割合に応じた家賃相当額を請求できる可能性があることや、利用方法について明確なルールを決めておくことが大切だと説明を受けたそうです。
その後、弁護士を交えて話し合いを行い、兄が実家に住み続ける間はDさんへ持分割合に応じた家賃相当額を支払うこと、また、大規模な修繕や将来的な売却については事前に話し合うことを書面で取り決めました。
Dさんは「利用ルールを決めて書面に取りまとめたことで、お互いに納得したうえで実家を管理できるようになりました」と話しています。
共有不動産では、各共有者が持分割合に応じて不動産全体を使用する権利があります。もし、特定の共有者が自分の持分を超えて不動産を占有・使用した場合は、その超える部分についてほかの共有者へ対価を支払わなければならないと民法で定められています。
(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
e-Gov法令検索 民法第249条
とはいえ、今回のトラブル事例のように、一部の共有者だけが共有不動産に住み、家賃を払わないなどの対応でほかの共有者との間でトラブルに発展することは珍しくありません。
共有不動産の利用方法をめぐるトラブルを防ぐには「誰が不動産を利用するのか」「共有者が住み続ける場合は家賃相当額を支払うのか」など、事前に利用ルールを決めておくのが効果的です。また、売却や大規模な修繕などの事項についても、どのような手順で話し合い、意思決定するのかを事前に取り決めておくとよいでしょう。
当事者同士で話し合いが難しい場合は、弁護士などの第三者を交えながらルールを整理することで、共有者全員が納得できる形で利用を続けられる場合もあります。
共有者と連絡が取れなくなってしまった
共有者である弟と連絡が取れなくなり、不動産を売却したくても話し合いができず、長年悩み続けていた事例です。
インタビューへご協力いただいたEさんは、兄弟3人で実家を相続し、共有名義で所有していました。
相続当初は特に大きな問題はありませんでしたが、その後、弟が県外へ転居してから徐々に連絡が取れなくなったそうです。電話やメールを送っても返事がなく、実家について話し合う機会もなくなってしまいました。
そのまま10年以上が経過し、実家は空き家となって老朽化も進み、屋根の補修や庭木の管理なども必要な状態になりました。そこでEさんと兄は、まず弟の住民票や戸籍の附票を取得して所在を調べることにしました。しかし有力な手がかりは見つからず「このままでは状況が変わらない」と感じたEさんは、弁護士へ相談することにしました。
弁護士からは「一定の要件を満たせば、裁判所の許可を得て所在が分からない共有者を除いた共有者だけで管理や変更の決定を行える場合がある。」と説明を受けたそうです。その後、必要な手続きを進めた結果、裁判所の許可を得て、Eさんと兄の判断で必要な修繕や空き家の管理を進められるようになりました。
Eさんは「最低限必要な管理ができるようになり、空き家がさらに傷むことは防げました。根本的な解決ではありませんが、長年何もできない状態から抜け出せて少し安心しました」と話しています。
共有不動産を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。そのため、共有者の一人と連絡が取れなくなると、売却や活用について話し合うことができず、不動産を長期間放置せざるを得ないケースがあります。
このような場面、まずは行方が分からない共有者の住民票や戸籍の附票を取得し、連絡先の取得を試みるところから始めます。それでも連絡先が見つからない場合は、裁判所の決定を得ることにより、所在不明な共有者を除いた共有者だけで、共有物の変更や管理に関する事項を決定できる場合があります。
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
e-Gov法令検索 民法第251条2項
Eさんの事例でも、まずは住民票や戸籍の附票を取得するなどして共有者の所在調査を行いました。それでも所在が判明しなかったため、裁判所へ申立てを行い、所在等不明共有者を除いた共有者だけで共有不動産の管理を進められるようになりました。
共有者の所在が分からない状態で共有不動産の売却を考えている場合は、「所在等不明共有者の持分の譲渡」という方法も選択肢です。2023年の民法改正により、一定の要件を満たせば、裁判所へ所在不明な共有者の持分譲渡の申立てを行えるようになりました。
所在等不明共有者の持分の譲渡とは、所在や連絡先が分からない共有者がいる場合に、裁判所の許可を得て、その共有者の持分を第三者へ譲渡できる制度です。ほかの共有者も同じ買主へ自分の持分を譲渡することで、不動産全体を売却することが可能です。
(所在等不明共有者の持分の譲渡)
第二百六十二条の三 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすること
ができる。
e-Gov法令検索 民法第262条3項
ただし、この制度を利用するには以下の条件を満たす必要があります。
- 裁判所へ申立てを行い、許可を得ること
- 所在等不明共有者以外の共有者全員が、自分の持分も含めて同じ相手へ譲渡すること
- 住民票の調査や戸籍の附票の確認などを行っても所在が判明しないこと
- 公告期間(6ヶ月間)中に所在不明者から異議が出ないこと
- 所在等不明共有者の持分が相続財産で、相続開始から10年を経過していない場合は利用できないこと
なお、所在が不明だった共有者が後から現れた場合は、持分に応じた時価相当額の支払いを請求される可能性がある点に注意しましょう。
また、不動産全体を売却するのではなく、所在が不明な共有者の持分を取得して共有者だけで所有したい場合は、「所在等不明共有者の持分の取得」を利用できる可能性があります(民法第262条の2)。
共有者の所在調査を行っても連絡が取れず、不動産の管理や売却に困っている場合は、弁護士などの専門家へ相談し、裁判所への申し立ても含めて対応策を検討するとよいでしょう。
共有者が認知症になってしまった
共有者が認知症になってしまい、不動産を売却したくても契約手続きを進められなかったトラブル事例です。
インタビューへご協力いただいたFさんは、母親と弟の合計3人で相続した実家を共有名義として所有していました。
相続から数年後、実家の維持管理や固定資産税の負担が大きくなってきたことから、家族で今後の管理方法について話し合うことになりました。
しかし、その頃から母親に物忘れが増えたり、通販で同じ商品を何度も購入したりするなど、これまでとは違う様子が見られるようになりました。心配になったFさんが病院へ連れて行ったところ、母親は認知症と診断されたといいます。
Fさんと弟は共有不動産の売却も検討していたので、母親の認知症も踏まえてそ不動産会社へ状況を伝えたところ「認知症によって契約内容を十分に理解・判断できない状態であれば、売買契約を締結できません。成年後見人を選任し、必要に応じて家庭裁判所の許可を得る必要があります。」と説明を受けました。
成年後見制度については受診した病院からも話があったので、まずは家庭裁判所へ必要な手続きや流れを確認しながら、成年後見人の選任を申し立てました。その後、家庭裁判所の審判により弁護士が成年後見人に選任され、以後は成年後見人を窓口として、不動産会社とも連携しながら実家の管理方法について協議を進められるようになったそうです。
Fさんは「成年後見人が決まったことで、家の管理について建設的に話を進められているのでよかったです。」と話しています。
共有不動産では、共有者が認知症などによって契約内容を理解・判断する能力が十分でない場合、本人だけで不動産の売買契約などの法律行為を行うことはできません。不動産を売却するには、成年後見制度を利用して成年後見人を選任する必要があります。
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などによって契約内容を十分に理解・判断することが難しくなった人を保護・支援する制度です。
成年後見制度を利用するには、家庭裁判所へ後見開始の審判を申し立てる必要があります。また、成年後見人が本人に代わって居住用不動産を売却する場合も、家庭裁判所の許可が必要です。
法務省が公表している「成年後見制度・成年後見登記制度」によると、成年後見人の選任の申立てから開始までの期間は、多くの場合4か月以内とされています(法務省|成年後見制度・成年後見登記制度)。そこから売却準備の期間もあるので、共有者の中に認知症などで成年後見制度の利用が必要な方がいる場合は、通常よりも売却手続きが長期化する可能性があります。
さらに、成年後見制度を利用する場合、主に以下の費用が発生します。
成年後見制度の申立てにかかる主な費用
| 費用項目 |
金額 |
| 申立手数料(収入印紙) |
800円 |
| 登記手数料(収入印紙) |
2,600円 |
| 連絡用の郵便切手 |
申立てを行う家庭裁判所によって異なる |
| 鑑定料 |
10万円以下が一般的(個々の事案によって異なる) |
参考:成年後見制度・成年後見登記制度「制度の利用について」
なお、将来的な認知症による「不動産凍結」を予防したい場合は、判断能力があるうちに不動産の管理や処分を家族などに託す「家族信託」制度の利用も選択肢のひとつです。
信託契約(財産管理や運用のルール)で売却権限などを定めておけば、委託者が認知症になった後でも、契約内容に基づいて受託者が不動産の管理や売却手続きを進められます。ただし、認知症になって判断能力を失ってから家族信託を始めるのは難しいので、利用を検討する場合は判断能力があるうちに準備する必要があります。
もし、共有者が高齢で将来的に認知症のリスクがある場合は、判断能力が十分にあるうちに共有名義を解消、または家族信託の利用を検討するとよいでしょう。売却や持分の買取、家族信託などを早めに検討しておくことで、将来的なトラブルを防止できる可能性があります。
知らない間に共有者がかなり増えていた
共有不動産を長年放置することで共有者が増え続け、誰が共有者なのか分からなくなってしまった事例です。
インタビューへご協力いただいたGさんは、祖父から相続した土地を親族4人で共有していました。
共有不動産はGさんの住まいから遠方にあるので利用予定もなく、相続当初は「そのうち売却すればいい」と考えており、そのまま何年も土地を所有し続けていたそうです。
その後、空き家となった土地の管理や固定資産税の負担が気になり、今後の活用方法について話し合おうと考えました。しかし、その時には既に亡くなっている共有者もおり、当時とは共有者が異なっている状況でした。
自分で現状の共有者を調べる方法が分からなかったので、弁護士へ相談して戸籍を収集して相続関係を調査したところ、現在の共有者は10人以上に増えていることが判明しました。
弁護士からは「まずは現在の共有者と持分割合を正確に把握したうえで、一人ひとり順番に連絡を取り、今後の管理や活用方法について話し合う必要があります。」とアドバイスを受けました。
そこで、登記簿謄本や戸籍をもとに現在の共有者と持分割合を整理したうえで、連絡が取れる共有者にも「ほかの相続人の連絡先を知らないか」と協力を依頼しました。そして、連絡先が判明した共有者から順番に事情を説明し、今後の管理や活用方法について話し合いを始めることにしたそうです。
Gさんは「今の共有者を探して一人ひとり話し合いをするのは大変でしたが、現状を整理できてよかったです。もっと早く権利関係を確認していれば、ここまで複雑になる前に対応できたかもしれません」と話しています。
共有不動産は共有者が亡くなると、その共有持分が相続人へ承継されます。そのため、共有状態を長期間放置すると相続のたびに共有者が増え、権利関係が複雑になることがあります。
また、共有不動産全体の売却や大規模な修繕などの重要な事項を決める際には、原則として共有者全員の同意が必要です(民法第251条)。Gさんのように、共有者が増えると所在や連絡先が分からない共有者が出てくることがあり、共有不動産の活用や管理に支障が出るケースは少なくありません。
このようなケースでは、まず登記簿謄本や戸籍などを確認し、現在の共有者と持分割合を正確に把握することから始めます。調査方法が分からない場合は、必要に応じて弁護士などの専門家へ相談し、相続関係を整理したうえで共有者一人ひとりへ連絡を取りましょう。
共有者の借金滞納によって、持分が差し押さえになってしまった
共有者である兄の借金によって共有不動産の持分が差し押さえられた事例です。
インタビューへご協力いただいたHさんは、父親が亡くなった際、兄と2人で実家を相続しました。母親は「実家は将来あなたたちで自由にしてほしい」と考え、自身は持分を相続しなかったそうです。
その後も母親は実家で暮らしていましたが、高齢となり介護が必要になったことから老人ホームへ入所することになりました。空き家となった実家を維持する必要もなくなったため、不動産の今後について兄と話し合うことにしました。
しかし、その話し合いで兄から「実は事業の失敗で借金を抱えていて、財産を差し押さえられている」と打ち明けられました。
突然の告白に驚いたHさんは、「実家まで差し押さえられてしまうのではないか」と不安になり、不動産会社へ相談して登記を確認しました。すると、担当者から「差し押さえられているのは、お兄様の共有持分です」と説明を受け、兄の共有持分に差押登記がされていることが分かったそうです。
どう対応すればよいか分からず弁護士へ相談したところ、「差し押さえられているのはお兄様の共有持分だけであり、Hさんの共有持分まで差し押さえられているわけではありません。ただし、今後の共有不動産の売却や管理に影響が及ぶ可能性があります。」と説明を受けました。
その後、Hさんは弁護士の助言を受けながら、差し押さえられた共有持分への対応や兄の借金問題について整理し、必要に応じて債権者との調整も視野に入れながら対応を検討することにしました。
Hさんは「自分の持分まで失ってしまうのではないかと不安でしたが、まずは状況を正しく理解できたことで少し落ち着くことができました。まだ解決していないので、弁護士と連絡を取りつつ解決できればお思っています。」と話しています。
共有者の一人が借金や税金を滞納した場合、その共有者の持分が差し押さえられることがあります。不動産業界の傾向として、差し押さえが付いた共有不動産は、原則としてそのままの状態だと売却手続きを進めるのが難しいといえます。
買主へ所有権を移転するまでに差し押さえを解消する必要があり、債権者との調整が欠かせないためです。また、差し押さえられた持分は競売の対象となることがあります。
もし、競売に出された共有持分が第三者に買い取られた場合、その新たな共有者から共有物分割請求をされる可能性があります。
共有者の持分が差し押さえられていることが判明した場合は、そのまま放置すると競売にかけられるおそれがあるので、早めに弁護士などの専門家へ相談することが重要です。
差し押さえが付いた共有不動産は、債権者との交渉や売却方法の検討など、状況に応じて必要な対応が異なります。状況に応じた適切な対応を判断するためにも、専門家のアドバイスを受けながら解決策を検討するのが現実的な方法です。
共有不動産のトラブルを根本的に解決する方法
共有不動産で発生するトラブルは、話し合いや一時的な取り決めによって改善できるケースもあります。しかし、それらはあくまで対症療法であり、共有不動産が複数人で管理・所有する資産である以上、共有者間のトラブルが生じる可能性は残ります。
共有状態を解消する方法はいくつかありますが、各方法ごとにメリット・デメリットがあります。
| 解決方法 |
メリット |
デメリット |
| 共有者全員で不動産全体を売却する |
共有状態を完全に解消できる。市場価格で売却しやすく、売却代金を公平に分配できる。 |
共有者全員の同意が必要で、1人でも反対すると売却できない。 |
| 自分の共有持分をほかの共有者に買い取ってもらう |
自分だけ共有関係を解消でき、他人が新たな共有者になる心配がない。 |
相手の同意と買取資金が必要で、価格交渉がまとまらないことがある。 |
| ほかの共有者から持分を買い取って単独名義にする |
単独で売却や賃貸などを行えるようになり、共有トラブルを根本的に解消できる。 |
ケースによっては多額の買取資金が必要で、相手の同意や価格交渉も必要となる。 |
| 自分の共有持分のみを第三者に売却する |
他の共有者の同意なく共有関係から離れられ、比較的早く現金化できる。 |
買取額は市場価格より安くなる傾向がある。 |
| 土地を分筆してそれぞれ単独所有にする |
それぞれが単独名義となり、自由に売却・活用できる。 |
分筆することで資産価値が下がる場合もある。また、分筆が難しいケースもある。 |
| 共有持分を放棄する |
自分の意思で共有関係から離れられ、固定資産税などの負担をなくせる。 |
売却代金は受け取れず、登記手続きや税金に注意が必要。持分移転登記の際、共有者の協力が必要になる。 |
| 共有持分を贈与する |
無償で共有関係を解消でき、親族へ引き継ぎやすい。 |
贈与税などの税負担が発生する可能性がある。 |
| 共有物分割請求 |
話し合いで合意できなくても、法的に共有状態の解消を目指せる。 |
訴訟となるため時間や費用がかかり、共有者との関係が悪化する可能性がある。 |
ここでは、共有名義を解消する各方法の詳細について解説します。
共有者全員で合意して不動産全体を売却する
共有不動産全体を売却し、原則として売却代金を共有持分の割合に応じて分配することで、共有状態を解消する方法です。不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要となるため、共有者全員が売却に同意している場合に適しています。
共有不動産を売却すれば共有名義を解消できるため、固定資産税や維持費の負担、売却や活用を巡る意見の対立など、共有状態が原因となるトラブルをまとめて解決できます。また、売却代金は原則として持分割合に応じて分配されるため、財産を公平に清算しやすい点もメリットです。
たとえば、共有不動産を誰も利用していない場合や、離婚後に共有名義のまま住宅を所有している場合は、不動産全体を売却することで今後のトラブルを防ぎやすくなります。
ただし、繰り返しにはなりますが、不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要です。1人でも反対している場合は売却できないため、売却の必要性や売却後の見通しなどを共有しながら丁寧に話し合いを進めることが重要です。
自分の共有持分をほかの共有者に買い取ってもらう
自分の共有持分を他の共有者に売却し、共有状態を解消する方法です。共有不動産全体の売却が難しく、他の共有者が持分の取得に前向きな場合に適しています。
持分のみを売却するのであれば、不動産全体を売却せずに自分だけが共有関係から離れることができ、持分に応じた代金も受け取れます。また、持分を買い取った共有者は持分割合が増えるため、不動産を活用できる幅が広がる可能性があります。
持分割合ごとにできることは以下のとおりです。
| 持分割合 |
できること |
| 単独名義(100%) |
売却・賃貸・建替えなどを自分の判断で行える |
| 持分価格の過半数 |
管理行為を単独で決定できる(建物は3年以内、土地は5年以内など民法で定められた期間内の賃貸借契約を締結できる) |
| 持分価格の過半数未満 |
他の共有者との協議が必要となる場面が多く、単独で決定できる範囲は限定される |
※管理行為については民法第252条に基づきます。
共有持分を共有者に売却するには、相手に持分を買い取る意思と資金があることが前提です。また、不動産業界の傾向として、持分の買取は所有権を引き渡すタイミングで一括払いするのが一般的です。
持分の買取資金を用意するのが難しい場合の手段として、不動産を担保に借り入れる「不動産担保ローン」やフリーローンなどを利用できるケースもあります。ただし、共有持分のみを担保とした融資は対応する金融機関が限られるので、事前に金融機関へ相談しておきましょう。
なお、共有持分の買取価格は法律で定められているわけではなく、当事者同士の合意によって決定します。そのため、価格面で折り合いがつかず、話し合いが長引くケースも少なくありません。
価格で意見がまとまらない場合は、不動産会社や不動産鑑定士に査定・鑑定を依頼し、客観的な価格を基準に協議を進めることが重要です。第三者による評価を参考にすることで、お互いが納得しやすくなり、円滑な合意につながる可能性があります。
ほかの共有者から持分を買い取って単独名義にする
共有不動産に住み続けたい場合や不動産を今後も活用したい場合は、ほかの共有者の持分を買い取って単独名義にする方法が最適です。
単独名義になれば、不動産の売却や賃貸、リフォームなどを自分の判断で進められるようになるため、共有名義が原因で発生するトラブルを根本的に解消できます。また、固定資産税や維持費の負担についても自分で管理できるようになり、共有者との協議や同意を得る必要がなくなります。
また、離婚後にどちらか一方が住宅に住み続ける場合も、一方が持分を買い取って単独名義にするケースがあります。
ただし、持分の買取には相手の同意が必要であり、買取代金を準備する必要があります。また、買取価格が法的に決まっているわけではないので、「いくらで買い取るか」という価格で意見が対立することも少なくありません。
まずは不動産会社へ査定を依頼し、客観的な評価額を把握したうえで協議を進めることが大切です。双方が納得できる条件で合意できれば、共有名義を解消して将来的なトラブルを防ぐことにつながります。
自分の共有持分のみを第三者に売却する
ほかの共有者が不動産全体の売却に応じない場合や、自分の持分を買い取ってもらえない場合は、自分の共有持分のみを第三者へ売却する方法もあります。
共有持分は自分の財産であるため、原則としてほかの共有者の同意を得ることなく売却できます。共有者との協議がまとまらない場合でも、共有持分を第三者に売却することで、共有状態を解消することが可能です。
共有持分を第三者に売却する方法は、大きく「売買」と「仲介」に分けられます。
| 項目 |
買取(売買) |
仲介 |
| 売却先 |
共有持分専門の買取業者 |
不動産会社を通じた個人・法人・投資家など |
| 売却価格 |
不動産全体の市場価格から算出した持分価格より低くなる傾向 |
買取より高い価格で売却できる可能性がある |
| 売却スピード |
早い |
購入希望者が見つかるまで時間がかかる場合がある |
| 売却のしやすさ |
比較的売却しやすい |
購入希望者が限られるため、売却が難しい場合がある |
ここで不動産業界における傾向をお伝えすると、共有持分を第三者に売却する場合、仲介よりも買取を利用するケースが一般的です。共有持分だけを取得しても、不動産全体を自由に使用・処分できるわけではないことが理由です。
購入後は他の共有者との交渉や権利調整が必要になるケースも多く、一般の個人が購入するメリットはほとんどありません。そのため、仲介市場では買主が見つかりにくい傾向があります。
最悪の場合、仲介で売却活動を続けても買主が見つからず、時間だけが経過してしまうこともあります。
一方、共有持分専門の買取業者は、共有者との交渉や権利調整を前提に事業を行っているため、一般市場では売却が難しい共有持分でも買い取れるケースがあります。
買取価格においては仲介の方が高い傾向にありますが、売却スピードや確実性を踏まえると、共有持分を専門に取り扱う買取業者へ売却する方法が現実的な選択肢となるでしょう。
なお、共有持分を第三者へ売却すると共有関係から離れられる一方で、新たな共有者が加わることになります。もし、親族間の関係を維持したい場合や、将来的に共有者との関係を重視したい場合は、事前に持分を売却することを伝えたり、買取実績が豊富な不動産会社や買取業者を選ぶことが大切です。
土地を分筆してそれぞれ単独所有にする
1つの土地を複数の土地に分け(分筆)、それぞれを別々に登記することで単独所有にする方法です。土地を分けて各所有者が単独名義となるため、売却や建物の建築、賃貸などを自分の判断で行えるようになり、共有状態が原因となるトラブルを解消できます。
たとえば、兄弟で相続した広い土地を半分ずつ利用したい場合や、それぞれが自分の土地として売却・活用したいときに有効な選択肢となります。共有者同士で利用方法が異なっていても、土地を分けることで互いの意向を尊重しやすくなります。
ただし、すべての土地を自由に分筆できるわけではありません。土地の面積や形状、接道状況、建築基準法や自治体の条例などによっては、分筆が難しいケースや分筆後に建物を建てられなくなるケースがあります。また、分筆できたとしても利用価値や資産価値が下がる可能性もあります。
なお、分筆には測量費用や登記費用も発生するので、費用負担の割合について事前に共有者と確認する必要があります。分筆を検討する際は、土地の状況や資産価値への影響を考慮したうえで、事前に土地家屋調査士や不動産会社などの専門家へ相談することがおすすめです。
共有持分を放棄する
共有持分の放棄は、ほかの共有者の同意を得ることなく自分の持分を手放すことができる方法です。
共有持分を放棄すると、その持分は原則としてほかの共有者に持分割合に応じて帰属するため、自分は共有者ではなくなります。これにより、固定資産税や維持費の負担から解放されます。
(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
引用元 e-Gov法令検索 民法第255条
たとえば、相続によって取得した不動産の利用予定がなく、売却や持分の買取も難しいケースでは、共有持分の放棄が選択肢になることがあります。共有不動産を所有し続けることで発生する固定資産税や維持管理の負担、共有者とのトラブルを避けたい場合に検討される方法です。
なお、共有持分の放棄自体は自分の意思のみで行えますが、他の共有者へ持分が移動するため、不動産登記簿の名義を変更するための持分移転登記が必要です。この登記は、原則として持分を放棄する共有者と、その持分を取得するほかの共有者が共同で申請しなければなりません。
そのため、実際のところはほかの共有者へ持分を放棄する旨を伝え、登記手続きに協力してもらう必要があります。登記手続きを怠ると、登記上は持分が移転していないので、これまで通り固定資産税の納税義務や維持管理に関する負担が生じるリスクもあります。
ほかにも、共有持分を放棄することで、持分を取得したほかの共有者に贈与税が課される可能性があります。 持分放棄によって無償で持分を取得したほかの共有者は、贈与を受けたとみなされる場合があるためです。
このように、共有持分の放棄にはいくつかの注意点があるため、「本当に放棄すべきか」「売却や買取などほかの解決方法はないか」を十分に比較・検討したうえで判断することが重要です。判断に迷う場合は、税理士や司法書士などの専門家へ相談してから手続きを進めると安心です。
共有持分の放棄については以下の記事で詳しく解説しているので、前向きに考えている方は参考にしてみてください。
共有持分を贈与する
共有持分の贈与とは、自分の持分を無償でほかの人へ譲り渡すことです。贈与が成立すると自分は共有者ではなくなるため、固定資産税や維持費の負担、共有者との協議などから解放されます。
「親族に無償で譲ってもよい」「売却代金よりも早く共有関係を解消したい」というケースでは、選択肢のひとつとなるでしょう。
ただし、共有持分の贈与は無償で財産を譲り渡すため、受け取った側に以下のような税金が課税される可能性があります。
| 税金の種類 |
概要 |
| 贈与税 |
贈与によって取得した共有持分の評価額に応じて課税される税金。年間110万円の基礎控除を超える場合は、贈与税が発生する可能性がある。 |
| 不動産取得税 |
共有持分を取得した際に課税される税金。取得した共有持分に対応する固定資産税評価額を基準に計算される。 |
| 登録免許税 |
所有権移転登記を行う際に課税される税金。取得した共有持分に対応する固定資産税評価額を基準に計算される。 |
| 印紙税 |
贈与契約書を作成した場合に課税される税金。契約金額の記載がない贈与契約書は200円。 |
特に注意したいのが贈与税です。共有持分は実際の売却価格ではなく、相続税評価額をもとに評価されます。そのため、市場で売却できる価格よりも高い評価額で贈与税が計算されるケースがあります。
中には想定以上の税負担が生じるケースもあるため、贈与前に税理士などの専門家へ相談するのが現実的な対応策です。
共有持分の贈与を検討する際は、税負担や権利関係への影響を踏まえて慎重に判断する必要があります。事前に税理士や司法書士へ相談し、自分にとって贈与が最適な方法かどうかを確認したうえで手続きを進めることをおすすめします。
【最終手段】共有物分割請求で法的に解決する
共有者との話し合いで解決できない場合は、共有物分割請求によって共有状態を解消する方法があります。
共有物分割請求とは、共有者であれば原則としていつでも行える権利です。「共有者同士の協議で合意できない」「協議自体ができない」などの場合は、裁判所へ共有物分割請求訴訟を提起し、法的な手続きによって共有状態の解消を目指します。
裁判所は不動産の状況や共有者それぞれの事情を踏まえ、主に以下3つの方法から最も適切な分割方法を判断します。
| 分割方法 |
概要 |
| 現物分割 |
土地を分筆するなどして、不動産そのものを物理的に分割し、それぞれを単独所有とする方法です。不動産の性質上、分割が可能な場合に選択されます。 |
| 代償分割 |
共有者の一人が不動産を取得し、ほかの共有者へ持分相当額の代償金を支払う方法です。不動産を残したまま共有状態を解消したい場合に選択されます。 |
| 換価分割 |
不動産を売却し、その売却代金を共有持分に応じて分配する方法です。現物分割や代償分割が難しい場合に選択されます。状況によっては競売だけでなく、任意売却が認められるケースもあります。 |
共有者が「絶対に売却しない」と主張したとしても、裁判所が共有状態を維持することが適切ではないと判断すれば、不動産全体の売却が命じられるケースもあります。話し合いでは解決できなかった問題でも、裁判所が客観的な立場から最適な分割方法を判断するため、共有者同士の協議が完全に行き詰まった場合の有効な解決手段となります。
一方で、共有物分割請求は訴訟となるため、解決までに時間や費用がかかるほか、共有者との関係がさらに悪化する可能性があります。また、裁判所が必ずしも自分の希望どおりの分割方法を認めるとは限りません。
共有物分割請求はあくまでも、他の方法では解決できない場合の最終手段と考えるべきです。まずは不動産全体の売却や共有持分の売買など、協議による解決を目指し、それでも合意できない場合に法的手続きを検討するとよいでしょう。
まとめ
共有不動産は、相続や離婚などをきっかけに所有するケースが多い一方で、売却や管理、固定資産税の負担などを巡って共有者同士のトラブルが起こりやすい不動産です。
実際にイエコン編集部が実施したアンケートでも、共有不動産を所有した経験がある人の約8割が、何らかのトラブルや困りごとを経験していました。
共有者との意見の対立だけでなく「連絡が取れなくなる」「相続によって共有者が増える」など、時間が経つほど解決が難しくなるケースも少なくありません。
共有不動産のトラブルを未然に防ぐためには「今は大きな問題がないから」と放置するのではなく、問題が発生する前に対策することが重要です。不動産全体の売却や共有持分の売買など、状況に応じた解決方法を選ぶことで将来のトラブルを防ぎやすくなります。
なお、共有不動産の問題は、当事者だけで解決することが難しいケースもあります。共有者との話し合いが進まない場合や、どの方法を選ぶべきか迷っている場合は、共有不動産の取り扱いに詳しい専門家へ早めに相談するとよいでしょう。
よくある質問
不動産を共有するとどんな問題がありますか?
ひとつの不動産を複数人で共有している状態だと、売却や賃貸などで利用する際、ほかの共有者の同意が必要になります。このように、不動産を自由に利用できないという問題があります。
たとえば、不動産を売却したい人と住み続けたい人で意見が分かれたり、固定資産税や修繕費の負担割合を巡って揉めたりするケースは少なくありません。さらに、共有状態を長期間放置すると相続によって共有者が増え、権利関係が複雑になることもあります。
共有者が増えるほど全員の合意を得ることが難しくなり、共有不動産の売却や共有名義の解消が困難になる傾向があります。不動産を共有することに不安を感じている場合は、トラブルが深刻化する前に、不動産全体の売却や共有持分の売買などによって共有状態を解消することも検討するとよいでしょう。
共有持分を他の共有者と揉めずに売ることはできますか?
他の共有者との関係性や状況によって異なりますが、対応方法によって大きなトラブルになることなく共有持分を売却できる可能性があります。
最も円満に解決しやすい方法は、ほかの共有者に共有持分を買い取ってもらうことです。価格や条件について合意できれば、第三者が新たな共有者になることなく共有名義を解消できます。
一方、共有者による買取が難しい場合でも、共有持分は原則として他の共有者の同意なく第三者へ売却できます。ただし、共有者に何も伝えずに売却すると、突然知らない人が共有者になるので関係性が悪化するおそれがあります。
共有者との関係をできるだけ良好に保ちたい場合は、事前に売却の意思を伝えたうえで、専門家に相談しながら進めることが大切です。