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共有名義不動産が売却できない!共有者に反対されている時の対処法とは?

共有名義の不動産に関するご相談を受けていると「共有者の1人が反対していて不動産の売却ができない」といった声をよく耳にします。

共有名義不動産全体の売却は共有者全員の同意が必要なため、1人でも反対すれば全体の売却はできません(民法249条)。民法上、不動産全体の売却は「変更行為」にあたるため、共有者のうち1人でも反対すれば、仮に売買契約を結んだとしても移転登記の段階で手続きを進めることはできなくなります。

そのため、共有名義不動産を売却したい場合は、まず共有者が売却に反対している理由を把握することが重要です。下記には、売却を反対する理由ごとに、売却の同意を得やすくする方法や、その他のできる対処についてもまとめています。

反対理由 具体例 主な対処法
不動産に思い入れがある ・実家や相続した土地など、思い出が詰まっている
・亡くなった親の遺志を尊重したい
・感情を否定せず、丁寧に話し合いの場を設ける
・売却ではなく「持分譲渡」や「一時的な賃貸」など代替案を提示する
・弁護士や不動産会社など第三者を交えて冷静に話し合う
共有者が居住・利用している ・共有不動産に実際に住んでいる
・店舗や倉庫として使用している
・居住者に対して使用補償(使用料)を提案(民法249条
・代替住居の確保や売却時期・条件の調整を提案する
・話し合いが困難な場合は共有物分割請求訴訟を検討する
売却価格・条件に納得していない ・提示された査定額が安い
・売却先に不信感がある
・複数の不動産会社に査定を依頼して相場を共有する
・不動産鑑定士の評価書を取得し妥当性を説明する
・売却時期や分配方法を柔軟に調整する
税金や費用の負担を懸念している ・譲渡所得税や登記費用を負担したくない
・分配が不公平になるのではと不安
・売却後の税負担シミュレーションを提示して不安を解消する
・費用を売却代金から按分(均等に差し引く)する方法を提案する
・税理士を交えて手取り額を具体的に共有する
今後の活用を検討している ・建て替えや賃貸経営を考えている
・子ども世代に残したい
・共有のまま保有するリスク(意思決定の遅延・費用負担の不公平・相続時の共有者増加など)を説明する
・単独所有化や持分買取・交換などの整理を検討する
・「数年後に再協議する」など期限を設けて合意する
共有者同士の関係が悪化している ・相続後の兄弟間で意見が合わない
・過去の遺産分割で不信感がある
・感情的な対立を避けるため弁護士を代理人に立てる
・最終手段として共有物分割請求訴訟を視野に入れる
・持分のみを買取業者に売却する方法も検討する

このように、不動産の売却を反対する背景にはさまざまな事情があるため、まずは理由を明確にし、冷静に話し合うことが大切です。その際には、弁護士など専門家のサポートを受けて解決を図るとよいでしょう。

なお、不動産全体の売却に反対されていたとしても、自己持分だけであれば単独の意思で売却することが可能です。共有名義不動産は活用や処分において共有者の同意が必要となり扱いにくいため、基本的に買い手は専門業者に限られます。

とはいえ、業者によって査定基準や条件が異なるため、複数社に査定を依頼し比較検討することが大切です。「イエコンの一括査定」なら、共有持分や共有不動産の取引に強い専門業者を厳選し、1度に複数社へ無料査定を依頼できます。

「交渉から買取まで一貫して対応できる」など、特定の条件に合う業者に絞って査定結果を受け取ることもできます。また、弊社のサポートセンターが間に入るため、買取業者からのしつこい営業は一切ありません。「まずは現状を把握したい」という方も、査定を通じて信頼できる売却先を見つけてみてください。

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共有名義不動産全体は共有者の同意がなければ売却できない

共有名義不動産全体を売却する場合、共有者全員の同意がなければ売却することはできません。これは民法第249条で「共有物の処分および変更は、共有者全員の同意をもって決する」と定められているためです。

共有物に関する行為は「保存」「管理」「変更」に分けられ、売却はこのうち最も制限が厳しい変更行為にあたります。

保存行為(修繕や不法占拠者への明け渡し請求)は単独で、管理行為(リフォームや短期賃貸)は過半数の同意で行えますが、売却や建物の解体などの変更行為は、共有者全員の同意がなければ行えません。

たとえば、親子で相続した土地や夫婦・兄弟で購入したマンションなどが共有名義になっている場合、共有者の1人が「売りたくない」と言えば全体の売却は不可能です。これは、それぞれの共有者の権利を不当に奪わないようにするための法的な仕組みです。

もし一部の共有者が反対している場合は、まずその理由を明確にしたうえで、丁寧な話し合いや専門家のサポートを通じて解決策を模索することが重要です。

なお、共有者全員の合意が得られない場合でも、自己の持分のみを売却する方法があります。詳しくは「共有名義不動産全体を売却できなくても自己持分なら売却できる」をご覧ください。

共有者が共有名義不動産全体の売却に反対している理由と対処

共有名義不動産の全体を売却しようとしても、共有者のうち誰かが反対していれば、全体の売却を進めることはできません。まずは、なぜ共有者が売却に同意しないのか、その理由を明確にすることが重要です。

反対する理由は、感情的なものから経済的なものまでさまざまです。

代表的なケースとしては、以下のものが挙げられます。

反対理由 具体例 主な対処法
不動産に思い入れがある ・実家や相続した土地など、思い出が詰まっている
・亡くなった親の遺志を尊重したい
・感情を否定せず、丁寧に話し合いの場を設ける
・売却ではなく「持分譲渡」や「一時的な賃貸」など代替案を提示する
・弁護士や不動産会社など第三者を交えて冷静に話し合う
共有者が居住・利用している ・共有不動産に実際に住んでいる
・店舗や倉庫として使用している
・居住者に対して使用補償(使用料)を提案(民法249条
・代替住居の確保や売却時期・条件の調整を提案する
・話し合いが困難な場合は共有物分割請求訴訟を検討する
売却価格・条件に納得していない ・提示された査定額が安い
・売却先に不信感がある
・複数の不動産会社に査定を依頼して相場を共有する
・不動産鑑定士の評価書を取得し妥当性を説明する
・売却時期や分配方法を柔軟に調整する
税金や費用の負担を懸念している ・譲渡所得税や登記費用を負担したくない
・分配が不公平になるのではと不安
・売却後の税負担シミュレーションを提示して不安を解消する
・費用を売却代金から按分(均等に差し引く)する方法を提案する
・税理士を交えて手取り額を具体的に共有する
今後の活用を検討している ・建て替えや賃貸経営を考えている
・子ども世代に残したい
・共有のまま保有するリスク(意思決定の遅延・費用負担の不公平・相続時の共有者増加など)を説明する
・単独所有化や持分買取・交換などの整理を検討する
・「数年後に再協議する」など期限を設けて合意する
共有者同士の関係が悪化している ・相続後の兄弟間で意見が合わない
・過去の遺産分割で不信感がある
・感情的な対立を避けるため弁護士を代理人に立てる
・最終手段として共有物分割請求訴訟を視野に入れる
・持分のみを買取業者に売却する方法も検討する

反対する理由を把握できれば、感情的な対立を避けつつ、現実的な解決策を選びやすくなります。また、共有状態の放置は修繕費や固定資産税の負担、将来の相続トラブルにつながるため、早い段階で専門家を交えて協議することが大切です。

以下では、理由ごとに具体的な対処法を解説します。

不動産自体に思い入れがある

実家や相続した土地など、思い出が詰まった不動産には、愛着を持つ人も多いものです。とくに「亡くなった親の遺志を尊重したい」「先祖代々の土地を手放したくない」といった理由から、売却に強く反対するケースもあります。

このような場合は、感情を否定せず、理解を示すことが大切です。

売却以外にも、次のような代替策を検討するのもよいでしょう。

  • 自分の持分を他の共有者に譲渡する(自己の持分は原則、単独で譲渡可能)
  • 一時的に賃貸に出して様子を見る(賃貸は管理行為に当たり、過半数の同意が必要。民法252条
  • 共有のまま一定期間保有し、期限を決めて定期的に再協議する

なお、共有物の売却や処分は民法249条で「共有者全員の同意」が必要と定められています。他の共有者による持分買取を進める場合にも、全員の理解を得て進めるとよいでしょう。

感情と手続きを切り離し、弁護士などの第三者を交えて冷静に話し合うのも有効です。感情的な対立が深まっている場合は、一定の冷却期間を設けてから再度話し合うなど、時間をかけて合意を目指すとよいでしょう。

住んでいる・利用している

共有不動産に共有者の1人が実際に居住している、または事業用に使用している場合「今の生活や仕事を続けたい」という理由から売却に反対されるケースがあります。

このような場合は、まず民法第249条の趣旨に基づき、使用補償(使用料)の支払いを求めることができます。これは、他の共有者が共有物を使用できない状態にある場合に、公平を保つための実務的対応です。

また、居住者が生活を立て直せるよう、売却時期や条件を調整することも現実的な対処法です。たとえば、引っ越しの時期を譲渡日から数ヵ月後にするなど、条件をすり合わせるとよいでしょう。

とにかく共有状態を解消したいという場合は、共有物分割請求という手段もあります。共有物分割請求は、不動産などの財産の共有状態を解消するために、共有者全員に対して協議(話し合い)で共有物の分割を求める手段です。

話し合いで解決が難しい場合は、最終的に共有物分割請求訴訟を提起し、裁判所が「競売」や「分筆」などの方法で分割を命じることも可能です。実際、裁判所が競売による換価分割を選択するケースが多くみられます。

共有物分割請求の詳細は「共有物分割請求│まずは話し合い、最終的には訴訟も検討」をご覧ください。

売却価格・条件に納得していない

提示された査定額が安すぎる、あるいは売却先に不信感があるといった理由で、共有者が売却に同意しないケースも少なくありません。このような場合は、客観的な根拠をもとに説明することが大切です。

不安は大きく「価格の妥当性」と「条件の公平性」に分かれるため、以下の対応が有効です。

  • 複数の不動産会社に査定を依頼し、相場価格を共有する
  • 不動産鑑定士による評価書を取得し、第三者の公平な根拠を提示する(※鑑定書は裁判所提出資料として用いられることもある一方、作成に費用・期間がかかります)
  • 売却時期や分配方法を柔軟に調整し、全員が納得しやすい条件を整える(例:引渡し時期の調整、経費や譲渡益の配分の書面合意など)

査定の根拠や条件をわかりやすく共有し、他の共有者が安心して判断できる状況を整えることが重要です。不透明なまま話を進めると誤解や不信につながるため、情報を丁寧に開示しながら、全員が納得できる形を目指して話し合うことが大切です。

売却時の税金や費用の負担を懸念している

「譲渡所得税や登記費用が高そう」「売却後の分配で不公平が生じるのではないか」といった経済的な不安から反対されるケースもあります。この場合は、税金や費用の仕組みを具体的に説明して不安を取り除くことがポイントです。

不安を解消するためには、次のような対応が効果的です。

  • 税理士に相談し、売却後の税負担シミュレーションを提示する
  • 費用を売却代金から按分(均等に差し引く)して支払う方法を提案する
  • 税理士を交えて、税負担後の手取り額を全員で共有する

数字を根拠に説明することで、負担の不公平感をやわらげ、合意を得やすくなります。客観的な数値をもとに話し合えば、感情的な対立の長期化も防げるでしょう。

なお、譲渡所得税は、不動産の売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた利益(譲渡所得)に対して課税される仕組みです。所有期間が5年以内の場合は39.63%、5年を超える場合は20.315%が適用され、2037年までは所得税額に対して2.1%の「復興特別所得税」も加算されます。ただし、マイホーム特例や3,000万円控除などを活用すれば、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

また、印紙税や司法書士報酬などの諸費用も発生するため、事前に見積もりを確認しておきましょう。

今後の活用を検討している

「将来的に建て替えや賃貸経営を考えている」「子ども世代に不動産を残したい」といった理由で、売却せずに所有し続けたいと考える共有者もいます。しかし、共有状態のまま長期間所有し続けると、修繕費の負担割合をめぐる対立や、共有者の死亡による相続人の増加、管理責任の所在が不明確になるなど、トラブルに発展する可能性が高くなります。

そのため、共有状態を整理したうえで、単独所有化の方法を検討するのが望ましいでしょう。

たとえば以下のような方法があります。

  • 持分を買い取ってもらい単独名義に変更する
  • 「数年後に再度方向性を話し合う」など期限を設けた合意を交わす

共有のまま活用を続ける場合でも、修繕や税金負担、相続発生時の対応などについてあらかじめ取り決めておくことが重要です。トラブルを防ぐためにも、早い段階で弁護士に相談しておくとよいでしょう。

共有者同士の関係が悪化している

相続後に兄弟間で意見が対立している、過去の遺産分割をめぐる不信感が残っているなど、人間関係の悪化が原因で話し合いが進まないケースもあります。

このような場合は、感情的な対立を避けるために弁護士を代理人に立てるのが有効です。第三者を仲介に入れれば、冷静な交渉や法的な整理がしやすくなります。

話し合いでも合意に至らない場合は、共有物分割請求訴訟の提起を検討しましょう(民法258条)。裁判所が、現物分割・代償分割・競売などの方法の中から、各共有者の事情を考慮して最も妥当な方法を判断します。

また、話し合いが完全に決裂している場合は、自己の持分のみを買取業者へ売却する方法も検討できます。クランピーリアルエステートのように、共有トラブルの解決に実績を持つ専門業者であれば、現金化と共有状態の解消を同時に進めることが可能です。

特殊な事情で共有名義不動産全体を売却できない理由と対処

共有名義不動産の売却は、共有者全員の同意が必要です。しかし、共有者のなかに「連絡が取れない」「意思能力がない」などの事情がある場合、話し合い自体が進まなくなるケースもあります。

共有者の事情によって売却できない主なケースと、その対処法・注意点は以下のとおりです。

状況 主な理由 対処法 注意点
共有者の連絡先がわからない 転居や疎遠などにより所在が不明 ・住民票や戸籍附票で住所を調査する
・親族や知人に確認する
・見つからない場合は「不在者財産管理人選任申立て」や「所在等不明共有者の持分取得制度」を検討する
調査には弁護士の関与が必要になる場合がある
共有者が行方不明 長期間所在不明で連絡が取れない ・家庭裁判所に「不在者財産管理人選任申立て」を行い、選任された管理人が代理で売却に同意する ・売却の実行には裁判所の許可が必要
共有者が認知症で意思能力がない 判断能力を失い、法的に同意が無効となる ・家庭裁判所で「成年後見人」の選任手続きを行い、後見人が代わりに売却に同意・手続きを実施する ・選任までに数週間〜数ヵ月かかる
・親族の同意が必要な場合がある
共有者が未成年 法律行為を単独で行えない(民法第5条 ・親権者または未成年後見人が代理で手続きを行う 親が共有者の場合は利益相反になるため「特別代理人選任申立て」が必要
共有者が海外在住 物理的に署名・押印・本人確認が困難 ・委任状を作成し、在外公館(日本大使館・領事館)で署名証明・認証を受ける 郵送や認証に時間を要するため、余裕をもって対応する

上記のような事情がある場合でも、法律上の手続きや代理制度を活用すれば、売却の実現は可能です。ただし、家庭裁判所への申立てや各種手続きには時間がかかるため、早めに弁護士へ相談し計画的に進めましょう。

共有者の連絡先がわからない

所在等不明共有者の持分取得制度

共有者が転居していたり疎遠で連絡先が不明だったりする場合、まずは行政機関での情報調査を行いましょう。市区町村役場で住民票や戸籍附票を取得すれば、過去の住所履歴や現住所を確認できる場合があります。また、親族や知人などに聞き取りを行い、居住地や連絡手段を探すことも有効です。

それでも所在が確認できない場合は、弁護士を通じて法的な手続きを検討する必要があります。

たとえば、他の共有者が「所在等不明共有者の持分取得制度」(民法第262条の2)を利用して、所在不明の共有者の持分を取得できる場合もあります。「所在等不明共有者の持分取得制度」は、所在不明の共有者によって売却や活用が進まない状態を解消するための仕組みとして、2021年の民法改正で新設されました。裁判所への申立てや公告などの手続きを経て進めます。

一方で、長期間行方不明の場合は、家庭裁判所で「不在者財産管理人の選任」を申立てることも可能です。

「不在者財産管理人の選任」については次項で詳しく説明します。

共有者が行方不明

不在者財産管理人

共有者の消息が長期間にわたり完全に不明な場合は、家庭裁判所で「不在者財産管理人選任申立て」を行うことになります。

不在者財産管理人とは、民法第25条に基づき、不在者の財産を保全・管理するために裁判所が選任する人です。選任された管理人は、不在者に代わって財産の管理や処分を行うことができ、共有不動産の売却にも代理で同意できます。

ただし、実際に売却を行うには家庭裁判所の許可が必要です。許可が下りるまでには数週間から数ヵ月ほどかかることもあり、申立書類も複雑なため、早めに弁護士へ相談して手続きを進めるとよいでしょう。

共有者が認知症で意思能力がない

共有者が認知症で意思能力がない

共有者が認知症などで意思能力を失っている場合、本人の同意は法的に無効となります。このような場合は、成年後見制度を利用し、家庭裁判所で「成年後見人」を選任してもらう必要があります。

成年後見人とは、判断能力が十分でない人(被後見人)に代わって、財産の管理や契約行為などの法律行為を行う人のことです。成年後見人には、配偶者や子どもなどの親族のほか、弁護士や司法書士などの専門職が家庭裁判所により選任される場合もあります。

後見人が選任されると、本人に代わって不動産の売却に同意したり、契約手続きを進めたりすることが可能です。

成年後見の申立ては、本人の親族や利害関係人、または市区町村長などが行えます。ただし、後見人の選任には家庭裁判所の手続きが必要で、数週間〜数ヵ月かかります。そのため、早めに申立てを行い、専門家の助言を受けながら手続きを進めるとよいでしょう。

共有者が未成年で意思能力がない

共有者が未成年で意思能力がない

民法第5条により、未成年者は法律行為を単独で行うことができないため、親権者または未成年後見人が代理で手続きを行います。

未成年後見人とは、親権者がいない未成年者に代わって財産を管理したり、法律行為を行ったりするために家庭裁判所が選任する人です。親がすでに亡くなっている場合や、病気・行方不明などの理由で親権を行使できない場合には、家庭裁判所で未成年後見人を選任する手続きが必要です。多くの場合、親族や弁護士などが選任されますが、必要に応じて弁護士や司法書士などの専門職が選任されることもあります。

なお、親が共有者の1人である場合は、親子間で利益が相反するため「特別代理人選任申立て」を行わなければなりません。特別代理人とは、親が未成年者の代理人になると利益が衝突する場合に、代わりにその行為を行うために裁判所が選任する人です。特別代理人も、親族や弁護士、司法書士などのなかから選ばれます。

この申立ては家庭裁判所で行い、審理や選任までに数週間程度かかるケースが一般的なため、早めに準備しておくことが大切です。

共有者が海外在住

共有者が海外に住んでいる場合、連絡や同意の取得が難しいうえに、署名や押印、本人確認を国内と同じ形式で行うことも困難です。

この場合は、委任状を作成して送付し、在外公館(日本大使館・領事館)で署名証明や認証などの公証手続きを受けることで、正式な代理権を証明できます。署名証明付きの委任状は、日本国内での登記や売買契約の際に有効な書類として利用できます。これにより、共有者が日本にいなくても売却手続きを進めることが可能です。

ただし、郵送や認証手続きに時間がかかるため、売却スケジュールには十分な余裕を持って対応する必要があります。

また、国や地域によって必要書類や認証の方式が異なるため、事前に外務省の在外公館による証明制度を確認したうえで、弁護士に相談しておくと安心です。

共有名義不動産全体を売却できなくても自己持分なら売却できる

共有名義の不動産は、原則として全員の同意がなければ全体を売却できません。しかし、自分の持分だけであれば、他の共有者の同意がなくても単独で売却が可能です(民法第251条)。

自己持分の売却には、主に次の2つの方法があります。

売却方法 主なメリット
他の共有者に売却 ・相手に資金力があれば、最も円滑に進む方法。
・売却によって単独名義化できる。
専門の買取業者に売却 ・共有者の同意が不要で仲介よりも手続きがスムーズ。
・相場より安くなる傾向があるが、最短数週間〜1ヵ月ほどで現金化できる。

それぞれの方法について、詳しく解説します。

他の共有者に売却する

他の共有者に売却する

共有持分の売却方法として最も円滑なのは、他の共有者に買い取ってもらう方法です。相手に購入の意思と資金力さえあれば、話し合いだけでスムーズに取引を進められます。

他の共有者があなたの持分を買い取ることで、不動産の名義を単独化でき、将来的な管理や売却もしやすくなるというメリットがあります。買い取った共有者は所有権移転登記を行うことで、正式に単独名義へ変更可能です。

売却価格は、不動産会社に査定を依頼して市場価格を確認したうえで、共有者同士で話し合って決めるのが一般的です。

共有者と親しい関係であっても、金銭のやり取りを個人間で済ませるのは避け、必ず不動産会社を通して仲介契約を結ぶようにしましょう。不動産会社を介せば、宅地建物取引業法に基づく契約説明や決済管理が行われるため、安心して取引を進められます。

第三者が契約書や登記を管理することで「代金未払い」「登記が済まない」など後々のトラブルを防げます。

専門の買取業者に売却する

専門の買取業者に売却する

他の共有者が買い取らない場合は、共有持分の買取を専門とする業者へ売却する方法が現実的です。

共有持分は単独で利用できず、権利関係が複雑になりがちなため、一般的な不動産業者や個人が購入することはほとんどありません。

その点、買取業者は自らが買い手となるため、買主探しや仲介交渉の手間が省け、仲介よりも早期に現金化できる点がメリットです。

ただし、買取業者は他の共有者と交渉して物件全体を買い取り、リフォームや解体を行ったうえで転売・賃貸を行うのが一般的です。そのため、買取価格は「不動産全体の価格×持分割合」の2〜5割ほどになる傾向があります。

また、先述したように業者は他の共有者の持分もまとめて取得しようとするため、事前に他の共有者へ売却の意思を伝えておくと、後々のトラブルを防ぎやすくなります。

なお、査定を依頼する際は、複数の買取業者に見積もりを取り、価格や条件を比較することが大切です。共有持分の買取実績がある専門業者なら、法的手続きや登記のサポートだけでなく、共有関係の調整や税金面の相談までワンストップで対応してもらえる場合もあります。

ただし、共有持分の買取業者は数が限られているため、自力で探すのは大変です。そのような場合は「イエコン一括査定サービス」を活用するのがおすすめです。

イエコン一括査定であれば、複数の専門業者に一度で査定を依頼でき、最適な売却先を効率的に見つけられます。

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売却以外で共有状態を解消する方法

共有不動産の共有状態を解消するには、売却以外にもいくつかの方法があります。それぞれの方法には、費用や手間、法的手続きの要否などが異なるため、目的に応じた選択が必要です。

共有状態を解消する主な方法と、それぞれの特徴・注意点を以下の表で整理しました。

方法 概要・主なポイント
共有者の持分の買取り ・他の共有者の同意が得られる場合に有効。
・単独名義にでき、将来的なトラブルを防げる。
・自分に資金力があることが前提
・税金や登記費用が発生する。
持分の贈与 ・家族間など、無償で共有を整理したい場合に有効。
・贈与税がかかる場合があるため、税理士への相談が望ましい。
持分の放棄 ・管理負担などから離れたい場合に利用。
・放棄によって他の共有者の持分が増加する。
・単独で可能だが、移転登記には他の共有者の協力が必要。
分筆 ・土地を物理的に分けて単独利用したい場合に有効。
・測量や登記費用が必要。
・土地の形状や接道条件によっては実施できない場合もある。
共有物分割請求 ・共有者全員を相手に共有財産の分割を求める手段。
・協議や調停、裁判を通じて、現物分割・代償分割・競売分割のいずれかで解消できる。
・時間と費用はかかるが、確実に共有状態を解消できる。

それぞれの方法について、以下で詳しく解説します。

共有者の持分の買取り│他の共有者が売却に応じる場合

共有者の持分の買取り│他の共有者が売却に応じる場合

他の共有者が売却に応じてくれる場合は、自分が相手の持分を買い取る方法で共有状態を解消できます。共有者の持分を買い取れば、不動産を単独名義にできるため、将来的な管理や売却をスムーズに進められる点がメリットです。

ただし、買い取るためには自分に十分な資金力が必要です。また、売買契約に伴って登録免許税や不動産取得税などの費用も発生します。

親族間などで相場より著しく安い金額で取引すると、実質的に贈与とみなされて贈与税が課される場合があります。そのため、不動産会社へ査定を依頼して適正価格を把握したうえで、共有者同士で価格を話し合って決めることが重要です。

取引内容や金額を明確にしておくことで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。

持分の贈与│家族間で無償で共有を整理したい場合

持分の贈与│家族間で無償で共有を整理したい場合

共有持分を無償で移転する場合は、贈与によって共有状態を解消できます。とくに、相続などをきっかけに共有になった不動産を整理する目的で利用されるケースが多いです。

ただし、贈与を受けた人は贈与税が課される場合があります。税額は持分の評価額や基礎控除額(年間110万円)に基づいて算出されるため、事前に税理士に相談しておくとよいでしょう。

また、不動産の評価額が高額になると贈与税の負担が大きくなるため、必要に応じて相続時精算課税制度の利用を検討する方法もあります。

相続時精算課税制度とは、贈与税について年間110万円の基礎控除および累計2,500万円の特別控除を受けられる制度です。贈与者が60歳以上の親または祖父母、受贈者が18歳以上の子や孫など、一定の要件があります。制度の適用条件や税額の詳細についても、税理士に確認しておくとよいでしょう。

持分の放棄│とにかく不動産の管理や負担から離れたい場合

持分の放棄│とにかく不動産の管理や負担から離れたい場合

「管理や税負担から離れたい」「もう関わりたくない」といった場合には、共有持分を放棄する方法もあります。放棄により自分の持分は失われ、他の共有者の持分がその割合に応じて増加します(民法第255条)。

なお、放棄自体は単独で可能ですが、共有持分の移転登記をするためには、他の共有者の協力が必要です。放棄によって他の共有者に権利が移る形となるため、新たな名義人として登記申請を行う必要があるからです。

また、相手方が放棄を拒むことはできませんが、受け取りを望まない場合には、登記手続きが進まず実務上は難航するケースもあります。そのため、放棄の意思を伝える前に弁護士に相談し、手続きの可否やリスクを確認しておくことをおすすめします。

分筆│土地を物理的に分けて単独利用したい場合

分筆│土地を物理的に分けて単独利用したい場合

共有している土地を、それぞれが自分の持分に応じて単独で使いたい場合は、分筆登記によって土地を物理的に分ける方法があります。

ただし、すべての土地で分筆できるわけではありません。土地の形状や面積、接道条件によっては、新たに分けた区画が建築基準法上の「接道義務」を満たさず、分筆できないケースもあります。

手続きを進めるには共有者の過半数の同意で足りますが、境界確定や分筆後の登記には各所有者の関与が必要となるため、実務上は全員の同意を得ておくことが望ましいでしょう。

境界を確定する際には、隣地所有者の立ち合いが必要です。また、境界確定測量や登記申請といった費用も発生します。

こうした費用や手間を考慮すると、土地が十分に広く、分けても各共有者が単独で有効活用できる場合に適した方法といえます。

実際に分筆を検討する際は、土地家屋調査士に相談して測量や境界確定の可否を確認し、登記手続きの際は司法書士に依頼するとよいでしょう。

共有物分割請求│まずは話し合い、最終的には訴訟も検討

共有物分割請求

共有者は、共有物分割請求によって他の共有者に対し、共有財産の分割を求めることができます(民法第256条)。
「共有物分割請求」とは、共有状態にある財産について、共有者の1人が他の共有者に対して共有関係の解消を求める手続きです。

まずは共有者同士の協議によって分割方法を決めるのが原則です。
話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所の調停を申し立てることもできますが、一般的には最終的な手段として訴訟(共有物分割訴訟)へ移行します。

裁判では、裁判所が公平性を考慮して最終的な分割方法を決定します。
そのため、必ずしも自分の希望どおりの結果になるとは限りません。

裁判所で採用される分割方法は、主に次の3つです。

  • 現物分割:土地や建物を物理的に分け、それぞれ単独所有とする方法
  • 代償分割:不動産を1人が取得し、他の共有者に代償金を支払う方法
  • 換価分割(競売分割):不動産を競売で売却し、得られた代金を共有者に分配する方法

実務では換価分割が選ばれる場合が多いですが、競売では市場価格より安く売却されるケースが多く、金銭的に不利になる可能性があります。

なお、民法では各共有者がいつでも共有物の分割を請求できると定められていますが、共有を続ける約束を5年以内の期間で結んでいる場合は、その間は請求できません。

共有物分割請求は、手続きに時間と費用がかかり、共有者全員を相手に行うため関係が悪化するおそれがあります。それでも、話し合いが完全に決裂した場合に、共有関係を法的に解消できる唯一の手段といえるでしょう。

まとめ

共有名義の不動産は、共有者全員の同意がなければ不動産全体を売却することはできません。民法上、不動産全体の売却は「変更行為」にあたり、共有者全員の合意が必要となるためです。共有者の一人でも反対すれば、手続きを進めることはできなくなります。

一方で、自分の持分のみであれば、共有者の同意がなくても売却が可能です。

共有関係を解消する方法には、他の共有者に自分の持分を売る、または他の共有者の持分を買い取るほか、持分の贈与・放棄・分筆・共有物分割請求などの手段もあります。

しかし、話し合いが難しい場合や、できるだけ早く共有状態から抜け出したいときは、専門の買取業者に持分を売却するのが現実的な選択肢です。共有持分専門の買取業者であれば、トラブルを抱えた不動産でもスピーディーに現金化できます。

なお、「イエコン一括査定サービス」を利用すれば、複数の共有持分・訳あり不動産専門業者に一度で査定を依頼でき、条件を比較しながら売却先を選ぶことが可能です。

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共有名義不動産の売却でよくある質問

共有持分の価格はどのように決まるのですか?

共有持分の価格は土地や建物全体の価格を基準に、持分割合や権利関係、利用状況などを考慮して決まります。当事者間の合意で決められますが、合理的な根拠がないと後々トラブルにつながるおそれがあるでしょう。

共有者間での売買よりも、第三者や業者への売却では、共有状態のリスクを考慮して価格が下がる傾向があります。まずは複数の専門業者に査定を依頼し、価格の妥当性や相場感を確認しておくことが大切です。

共有持分を売却したあとにトラブルになることはありますか?

第三者に持分を売却したあと、新しい共有者との間で利用や管理をめぐるトラブルが起こるケースがあります。特に親族間での売却では、感情的な対立に発展するケースも少なくありません。売却前に弁護士や買取業者へ相談し、リスクを整理しておくことが大切です。

共有者が売却に反対している場合、どうやって話し合えばいいですか?

共有者が売却に反対している場合は、感情的な議論を避け、事実ベースで話すことが重要です。不動産の維持費や固定資産税など、放置した場合の負担を数字で共有すると理解を得やすくなります。

それでも解決しない場合は、弁護士や買取業者など第三者を交えて冷静に話し合うのがおすすめです。

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更新日 : 2025年11月07日
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