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共有名義不動産の火災・地震保険は誰が支払う?共済と保険における契約者の違いや受取額の割合も解説

万一の火災によって建物が焼失したり、地震によって建物が倒壊・損壊するなどの場合に備え、火災保険や地震保険に加入するのが一般的です。しかし、不動産が共有名義の場合は「共有者のだれが保険の契約者になる?」といった疑問を持つ人も多いでしょう。

結論からいうと、保険の契約締結は共有者の誰がおこなっても問題ありません。また、保険金が発生した際は、共有者全員が持分の割合に応じて保険金を受け取るのが原則です。

実務上、共有名義不動産の火災保険・地震保険では共有者のうち一人を代表契約者とし、共有者全員を被保険者として契約するのが基本です。

共有名義の不動産における保険契約の基本は、下記のとおりです。

保険契約者(保険料を支払う人) 原則一人
(不動産の所有者でなくても可)
保険料の負担割合 共有者の合意で決定
(共有持分の割合に影響されない)
被保険者(保険金を受け取る人) 共有者全員
保険金の受取額の割合 共有持分に応じる

共有者の中で誰を契約者にするか迷った場合は、地震保険料控除を活用しやすい人を契約者にするという考え方もあります。一般的には、所得税率が高い人ほど控除による節税メリットを受けやすいため、共有者の中で所得が高い人を契約者とするケースも見られます。

なお、地震保険料控除を受ける際は、火災保険とセットで保険契約を結ぶことが必要です。

また、火災・地震保険とは別に、「火災共済」などの共済制度を利用する方法もあります。共済は保険と異なり、商品によっては共有持分ごとに契約できるケースもあります。

ただし共有不動産の場合、実際に災害が発生した際は「建物全体に対してどこまで補償されるのか」「修繕費をどのように負担するのか」などの整理が複雑になるケースもあります。

共済の加入を検討する場合は、補償範囲は商品内容や契約条件によって異なるので事前に確認しておくことが大切です。

本記事では、共有名義不動産の保険について、保険そのものの仕組みをふまえて詳しく解説しています。

林本弁護士
監修
P&M法律事務所
林本 悠希(弁護士)

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共有名義不動産の火災・地震保険は誰が支払うのか?

不動産を所有する際は、万一の火災や地震による被害に備えるため、火災保険や地震保険に加入するのが一般的です。

不動産が共有状態であるとき、その不動産の保険料は誰が支払うべきなのでしょうか?

共有不動産における保険料の取り扱いは「誰が契約し、誰が負担するのか」が曖昧になりやすく、実際にトラブルのご相談も少なくありません。特に相続によって共有状態になった不動産では「長男が代表で契約しているが、他の共有者は内容を把握していない」といったケースもよく見受けられます。

ここでは、火災保険・地震保険の基本的な仕組みをふまえながら、共有名義不動産における保険契約の考え方を整理していきましょう。

保険料は基本的に契約者が支払う

共有名義不動産 保険 契約者

保険契約は、保険契約者と保険会社との間で締結され、これによって保険契約者は保険会社に対して保険料の支払い義務が生じます。

保険会社に保険料という費用を支払い、保険会社と保険契約を締結する人を「保険契約者」といいます。

保険契約者は、保険をかける対象となる不動産の所有者がなるのが一般的です。しかし、必ずしも所有者でなければいけないルールはなく、契約者の父母や兄姉、妻、子や孫なども保険契約者になれます。

不動産の所有者でない人が保険契約者になると贈与税が発生する場合がある

たとえば、長男が所有する不動産に対して、父親が保険をかけて保険料を負担する場合もあるでしょう。これを「第三者のためにする保険契約」といいます。

この場合、保険料は父親が支払っていますが、事故が発生した場合に保険金を受け取るのは不動産の所有者である長男です。なお、保険金を受け取る権利を持つ人は「被保険者」といいます。

ここで注意すべきは、税法上は父親の支払う保険料負担と契約名義の関係によっては、贈与税に該当する可能性があるということです。

火災保険や地震保険は、損害を補填することを目的とした損害保険であるため、通常、受け取った保険金そのものが贈与税の課税対象になるわけではありません。

もっとも、契約形態や保険料負担の状況によっては、税務上の問題が生じるケースもあります。たとえば、積立型保険の満期返戻金を第三者が受け取る場合などには、贈与税等の課税関係が問題となる可能性があります。

また、親族間で保険料相当額の援助が行われている場合でも、それだけで直ちに贈与税の対象になるとは限りません。援助の趣旨や金額、生活費負担との関係などを踏まえて個別に判断されます。

実務上も「親が払っていた保険の扱いを相続後どう整理すべきか分からない」というケースは少なくありません。税務上の判断が必要になる場合は、税理士などの専門家へ確認するのが安全です。

なお、契約時に被保険者の指定を誤ると、保険金請求時に契約内容の訂正手続きが必要になる場合があります。

損害保険は保険をかけた対象物の損害を補填する制度

そもそも、火災保険や地震保険のような損害保険は、保険をかけた対象物である不動産が火災や地震等によって損害を受けた場合に、損害を補填するための制度です。

従って、保険金を受領できるのは、対象不動産の損壊等によって損害を被った人、すなわち対象不動産の所有者でなければなりません。

以上のことを前提として、共有物に火災保険や地震保険をかける場合について見ていきましょう。

保険の契約者は原則として一人とされる

共有名義不動産 保険契約者

まず、火災保険や地震保険の契約者は、原則として一人と決められているケースがほとんどです。

これは、保険会社の運営母体が営利目的の民間企業ということもあり「加入者と保険会社が1対1で契約する」というスタンスを取っているためです。従って、保険をかける対象不動産が複数の人の共有に属する場合であっても、共有者全員が別々に保険契約者になることは原則できません。

もし共有者ごとに契約ができる商品があったとしても、万一の事故が発生した場合、二重に保険金が出ることはありません。そのため、契約内容によっては保険料負担だけが増えてしまう可能性があります。

そういった事情も考えると、共有名義不動産に保険をかける場合には共有者の一人が代表として保険契約を締結することが原則となります。

火災共済などは共有者ごとに契約できる場合もある

火災保険や地震保険とは別物として存在する「共済」においては、一つの対象不動産について共有者ごとの契約ができるようになっています。同一生計親族以外(生計を共にしていない他人)との共有名義であってもそれぞれ加入できる商品もあります。

「なぜ保険会社では認められない契約が共済だと可能なのか」という理由についてですが、これは「運営母体の考え方」が大きく影響しているためです。

まず、保険会社と違って共済というのは運営母体が非営利団体で「加入者全員でお金を出し合って災害に備える契約形態」となっています。つまり、「加入者全員で一つの契約を共有しているような状態」ともいえます

そのため、共有者ごとの契約も選択できるようになっている商品もあります。(※商品や団体による)

「夫婦で掛金をしっかり分けて管理したい」などのケースにおいては、共済が提供している持ち分に応じた契約は有効に活用できます。

しかし、災害時のことを考えると、手続き自体が複雑になってしまうリスクもあります。実務上は、一本化した契約の方が管理しやすいケースが多いのも事実です。

特に相続で共有者が複数いる場合、連絡調整だけでも負担になることがあるため、契約方法は慎重に検討した方がよいでしょう。

保険料は共有者間の合意で決定される

共有物の場合、保険料の負担はどうなるのでしょうか。これは共有者間の合意によって決定します。保険会社に対しては、代表として保険契約者になった者が保険契約の当事者として保険料を負担します。

もし仮に合意がない場合は、民法253条(管理費用の負担)に基づき各共有者が持分割合に応じて負担するのが原則です。火災保険は一般的に、共有者全員で負担する管理費に含まれると考えられています。

実務上も、この法的原則をベースに負担の分配を話し合うのがスムーズです。

その上で、保険契約者のみが負担するのか、各共有者間で負担を分配するのかは、共有者間の合意によって決定できます。これはあくまでも共有者間での問題です。

保険契約者は他の共有者からの分担金の支払いがないことを理由に、保険会社に対する保険料の支払いを拒むことはできません。契約者自身による解約自体は可能ですが、共有者間で別途トラブルとなる可能性があります。

弊社へのご相談でも「他の共有者が保険料や固定資産税を払ってくれないため、自分が長年立て替えている。関係も悪化しているので持分だけ売却したい」といったケースは非常に多く見受けられます。

一時的な立替であっても、後から分担金を回収するのは感情的なしこりを生みやすいため、最初から負担ルールを明確にしておくことが重要です。

このように、共有者間で費用負担の認識が曖昧なまま契約を継続していると、後々トラブルになることがあります。共有状態が長期化している場合は、保険料負担についても書面やメッセージで整理しておくことが有効です。

保険金を受け取る被保険者は誰になるのか?

共有名義不動産 被保険者

既に説明したとおり、被保険者とは、事故が発生した場合に保険金を受け取る人です。

共有名義不動産の場合、火災や地震によって損害を受けるのは不動産所有者であるため、原則として共有者全員が被保険者になります。

ここは共有名義不動産の火災保険における、最も注意すべきポイントです。実務上「共有名義であることを保険会社へ十分説明していなかった」といった理由から、共有者の一人だけを被保険者として契約してしまうケースも少なくありません。

もし被保険者として共有者全員を指定しなかった場合や、保険契約の締結時に被保険者を指定しなかったために契約上は保険契約者が被保険者として取り扱われた場合、その代表者の持分割合の範囲内でしか保険金が下りず、建物全体が被害を受けても十分な補償が受けられないリスクが生じます。

建物全体に対して保険金が不足すると、「不足分を誰が負担するのか」「修繕費を持分割合どおりに出すのか」といった問題が発生し、共有者同士のトラブルへ発展する可能性があります。

保険金の請求を行う際は、保険契約の変更または訂正の手続が必要となります。

その結果、保険金の請求に際して、煩雑な手続を行う必要が生じたり、保険金を受け取るまでに時間がかかったりするなどの不都合が生じます。

特に火災後の修繕や建て替えでは、保険金の支払い時期が資金計画に直結します。実際の現場でも「保険契約の名義整理ができておらず、保険金支払いまで想定以上に時間がかかった」というケースは珍しくありません。

共有不動産では相続登記や持分整理だけでなく、保険契約の内容確認もあわせて行っておくことが大切です。

契約者を決める場合は「地震保険料控除」がポイント

保険の契約者を決める場合は、地震保険料控除を活用できる人を選ぶと税金対策になります。

その根拠は以下2つです。

  • 保険契約締結は共有者の誰がおこなってもよい
  • 地震保険料控除を利用することで節税できる

それぞれ、順番に解説していきます。

保険契約締結は共有者の誰がおこなってもよい

火災保険・地震保険については、共有名義不動産について共有者のうち一人を代表契約者として契約する方法が一般的です。

では、具体的に共有者のうちの誰を保険契約者にすればいいのか、その選び方が問題になります。最終的には、不動産の共有者全員で決めるべきこととなります。

ただし、誰が保険契約者にならなければならないという決まりはありません。つまり、共有者全員が納得できる選び方をすることが大切です。

実務上、相続不動産では「管理を担っている共有者」が契約者になるケースが多い一方、夫婦共有では住宅ローンの主債務者が契約者になるケースが多く見られます。大切なのは、共有者全員が契約内容や保険料負担について認識を共有しておくことです。

地震保険料控除を利用することで節税できる

共有者の誰を契約者にするか検討する際は、「地震保険料控除」を活用できるかどうかも重要なポイントです。地震保険に加入すると、年末調整や確定申告において「地震保険料控除」を受けられ、所得税・住民税の軽減につながります。

現在、地震保険は単独だと契約できず、火災保険に付帯する形で加入する仕組みになっています。

ところで、日本では所得税について累進課税制度が採用されているため、収入から経費を差し引いた所得の金額が高いほど、税率は高くなります。

一般論としては、共有者の中で所得の高い人が保険契約者として保険料を負担し、地震保険料控除を受ければ、節税効果は大きくなります。

実際の相談でも「夫婦共有だが、どちらを契約者にした方が得なのか」といったご質問をいただくことがあります。そのような場合には「誰が保険料を負担しているか」という実態を踏まえ、年末調整で控除を受けやすい側を契約者にすることで節税効果が大きくなることをお伝えしております。

なお、地震保険料控除額には上限があり、所得税が最大5万円、住民税が最大2万5,000円です。契約の条件や控除額を踏まえて、金銭的なメリットのある考え方として検討してみてください。

保険金受取額の割合は「共有持分」に応じて分配される

保険事故が発生した場合には、保険金は被保険者である共有者からの請求により、原則として共有持分割合などの権利関係を踏まえて支払われることになります。

たとえば、共有持分が2分の1ずつの場合、基本的には保険金もそれぞれ2分の1ずつ受け取る形になります。

もっとも、実際の保険金請求では共有者全員が個別に請求するのではなく、共有者の一人が代表して請求・受領するケースも少なくありません。保険会社側としても手続きを一本化できるため、実務上よく行われている方法です。

ただ、この場合だと共有者の一人が勝手に保険金を受領し、独占することでトラブルになる可能性があります。そのため、通常は他の被保険者である共有者の同意を得ることが求められています。

具体的には、代表となる人が他の被保険者である共有者から保険金の請求・受領に関しての代理権を授与してもらい、その代理権に基づいて被保険者である共有者全員を代表して保険金の請求を行うことになります。

代理権を証明するためには、他の共有者全員の委任状に加え、印鑑証明書の提出を保険会社から求められるのが一般的です。高額な保険金が動くため、実務上の手続きは厳格に行われます。

共有名義人が死亡・離婚した場合はどうすればいいのか?

不動産を共有していると、共有名義人の一人が亡くなることもあります。

また、共有者となっている配偶者と離婚してしまうかもしれません。

その場合、保険金の受け取りはどうすればよいのでしょうか。

共有者の一人が亡くなった時は共有持分が相続される

共有者の一人が亡くなった場合、その人が有していた共有持分は相続によって相続人に承継されます。その結果、対象不動産は、従来の共有者と相続人との共有となります。

建物を共有するAとB(共有持分は各2分の1とします)のうちBが亡くなり、Bの配偶者Cと子供Dが相続した場合、当該建物は以下の通り、AとCとDの共有となります。

共有持分 相続 持分割合
Aの持分:1/2(従来通り)
Cの持分:1/4(Bが有していた持分1/2に対する相続分の半分)
Dの持分:1/4(Bが有していた持分1/2に対する相続分の半分)

亡くなった共有者に相続人がおらず、特別縁故者への財産分与などが行われない場合、その共有持分は他の共有者に帰属することになります。

つまり、上記の例でBに相続人がいない場合、Bの共有持分はAに帰属し、最終的にAの単独所有となります。

A・B・Cという3人の共有(共有持分はそれぞれ1/3とします)のうち、相続人がいない状態でBが亡くなった場合には、Bの共有持分はAとCがそれぞれ取得します。

この場合のAとCの持分は3/6(従来の持分であった1/3に、Bの持分であった1/3の半分、すなわち1/6がAとCにそれぞれ追加される)となります。

共有者の一人が亡くなった場合には、このように共有者が変更されます。

保険契約者が亡くなった場合は保険契約者の変更が必要

共有者のうち、保険契約者となっていた共有者が亡くなった場合には、他の共有者や亡くなった共有者の相続人への契約者変更手続について、速やかに保険会社へ相談する必要があります。

これを怠って保険料の支払い等が途絶えてしまうと、保険契約が失効してしまうことになりかねませんので注意が必要です。

実務上「親が契約していた保険の内容が分からないまま更新時期を迎えていた」というケースも少なくありません。特に相続では不動産登記や遺産分割協議などやるべきことが多く、保険契約の名義変更まで対応できていないケースも多いので注意が必要です。

共有者が離婚した場合は保険契約者を変更すべき

夫婦が不動産を共有で取得した場合において、万一、離婚することとなった場合には、通常、財産分与などがなされ、財産の清算・移転などが行われます。

その結果、不動産の共有関係に変更が生じた場合には、それに応じて保険契約者や、被保険者の変更手続きをとる必要があります。

最初に述べたとおり、火災保険等の被保険者は、対象不動産の所有権を持つ人間でなければなりません。

仮に、離婚によってその共有持分を財産分与等によって移転し、共有持分を有しないことになった場合、その者は被保険者に該当しなくなります。

また、保険契約者が離婚等によって共有者でなくなった場合、実際の所有関係と契約内容を一致させるためにも、契約者変更を検討すべきです。

まとめ

当然のことですが、共有名義不動産についても、単独所有の場合と同様に火災保険や地震保険等をかけられます。

ただ、その契約の仕方や保険金の請求・受け取りに関しては、対象不動産が共有であることに伴う特殊な手続き等が必要になる場合があります。

それ以上に注意が必要なのは、共有関係に変更が生じた場合の取り扱いです。

保険料の支払いが継続されている場合でも、契約内容と実際の共有関係や所有関係が一致しない場合、保険金請求時に追加資料の提出や契約内容の確認を求められることがあります。

従って、実際に事故が発生した時に慌てなくてもいいように、共有持分などに変化があった時は、すぐに保険会社に連絡して、手続きをとりましょう。

それ以外の手続きについても、保険会社によっていろいろと手続きが異なる場合がありますので、早めに保険会社への問い合わせや専門家へ相談することをおすすめします。

共有名義不動産の火災・地震保険でよくある質問

保険は複数人で契約できるの?

火災保険や地震保険の契約者は、原則として一人と決められているケースがほとんどです。

もし災害が発生したら、誰が保険金を受け取れるの?

共有者全員に受け取る権利が認められています。しかし、保険金の請求を行う際は、保険契約の変更または訂正の手続が必要です。

共有者のうち、誰を保険契約者にすればいいの?

共有者間で協議して、共有者の誰かを代表として契約を締結することが好ましいです。そこで、地震保険料控除を有効活用できる人を保険契約者にするとよいです。

共有持分に関するコラムはこちら

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    更新日 : 2025年11月07日
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