再建築不可物件は、火事や地震などの災害で大規模な修繕が必要になっても、新築はもちろん増築や建て替えがおこなえません。
そのため、多くの人が「火災や地震などの各種保険に加入しても意味はないんじゃないか」と考えたり「そもそも再建築不可物件の場合は保険に加入できないのでは」と思っているかもしれません。
しかし、これらの保険は「再建築不可物件」であっても問題なく加入できますし、たとえ再建築不可物件であっても、火災や地震などの各種保険に加入するべきです。
当記事では「火災・地震保険で補償される内容」や「火災・地震保険の選び方のポイント」などについて詳しく解説します。
もしも「再建築不可物件に保険金をかけたくない」と感じるなら、災害により被害を受ける前にできるだけ早く物件を手放すことも検討するとよいでしょう。
火事や地震などの災害で大きく損壊した建物が、近隣の建物にまで被害を及ぼし、損害賠償を請求される恐れがあります。とくに再建築不可物件は四方を建物に囲まれていることが多く、複数の近隣住民から合わせて数千万円もの損害賠償金を請求された事例もあるのです。
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再建築不可物件は火災や地震などの各種保険に加入するべき
再建築不可物件とは、建て替え・新築ができない物件です。
再建築不可物件になってしまう要因には、下記のようなものが挙げられます。
- 自身が所有する土地が道路に2m以上接していない
- 土地と道路は接しているが建築基準法で認められた道路ではない
上記の2つには建築基準法の「接道義務」が深く関係しています。
建築基準法の接道義務とは、建築物のある敷地が「建築基準法の条件を満たした道路」に2m以上接していなければならないものです。
これらは火事や地震などの災害が起こった際の避難経路としてはもちろん、救急車や消防車などの緊急車両が問題なく通れる道幅ということで設定されました。
つまり、再建築不可物件には緊急車両がアクセスしにくいということです。結果的に緊急車両の到着が遅れ、災害がより悪化する恐れもあります。
そのため、再建築不可物件は必ず火災や地震などの各種保険には加入をするべきです。
再建築不可物件が火事になったらどうなる?
建築不可物件に火事や火災が発生してしまったら、どのようなことが起こるのか予想できるでしょうか。
まず、再建築不可物件で火事や火災が発生してしまったら、消防車や救急車などの緊急車両を現場に要請することでしょう。
しかし、建築基準法上の基準を満たしていない再建築不可物件の前面道路は幅員も狭いため、緊急車両が通行する際に時間がかかってしまいます。
結果的に緊急車両の到着が遅れ、最悪火事や火災によって建物が全焼、隣家に燃え広がってしまう恐れもあります。
倒壊・全焼被害は周辺にも及ぶ可能性もある
再建築不可物件は限られた土地を有効に活用したいという目的から、敷地のギリギリまで使って、建物がすし詰め状態で建てられていることが多いです。
加えて、再建築不可物件は築年数が随分と経過している中古住宅が大半なので、建物によっては現在の建築基準法で定められている耐火や、耐震構造などの規定を満たしていないことが多いです。
そのため、火事や火災が発生して住宅が倒壊してしまったら、隣接する建物まで巻き添えになり、燃え広がって周辺一帯の建物が倒壊、全焼してしまう可能性も考えられます。
このように、通常の物件よりも多くのリスクに晒されている再建築不可物件だからこそ、いざという時のために火災や地震などの各種保険に加入して対策をしておく必要があるということです。
再建築不可物件を所有している際の保険加入・未加入のケース
再建築不可物件の所有者であるAさんは、万が一のために火災や地震などの保険に加入をしています。
一方、同じく再建築不可物件の所有者であるBさんは、再建築できない物件に保険をかける価値はないという考えから各種保険へ一切加入していません。
そして、その2人が住む地域は、数日後に大きな地震がありました。
しかし、保険に加入していたため、被害状況の申請後に被害に応じた損害保険金を受け取れました。
再建築不可物件の所有者であるBさんの住宅も同じく、先日の地震で大きなダメージを負ってしまいました。
保険に加入をしていなかったため、損害保険金を受け取ることができません。
そのため、保険に加入をしていれば損害保険金で賄えた、修繕費用を実費で支払わなければいけなくなりました。
上記のようなケースはあくまで例ですが、このような事例が実際に起こらないとは言い切れません。
再建築不可物件は、火災や地震などの各種保険に加入して対策することをおすすめします。
火災保険で補償される内容は?
実際に火災や地震などの各種保険に加入をするとなれば、補償の内容は理解しておきたいものです。
そこで、ここからは火災保険について詳しく解説をしていきます。
下記に、火災保険で補償できる内容や、損害保険金が支払われるケースをまとめました。
- 火災
- 落雷
- 爆発や破裂
- 風災
- 雹災や雪災
火災保険を扱っている保険会社や各社のプランなどによって若干の違いはありますが、上記のような内容をメインとして扱っているケースが多いです。
また、各社のプランによっては下記のようなものも、補償内容として含まれるところがあります。
- 水災
- 建物外での物体の落下、飛来、衝突
- 騒擾(そうじょう。デモ行為などによる破損被害のこと。)
- 破損や汚損
火災保険では補償されない内容
火災保険は火災だけでなく落雷や風災、爆発や破裂など幅広い災害やトラブルに対応可能です。
しかし、そんな火災保険でも補償できない内容もあります。
ここからは、火災保険で補償されない内容を解説していきます。
地震が原因の火事や倒壊などは補償の対象外
火災や建物の倒壊なども火災保険の補償範囲には入っています。
ただし、それは火災や水災、風災などが原因で起こった場合のみです。
地震が原因で火事が発生したり、建物が倒壊してしまったという際は、火災保険の補償対象外となります。
保険契約者本人や親族などが故意で損害を与えても補償の対象外
騒擾(そうじょう。デモ行為などによる破損被害のこと。)による建物の破損なども、火災保険の補償範囲には入っています。
ただし、それがもし保険契約者本人やその親族によるものだったら、火災保険の補償対象外となります。
保険金を受け取りたいからといって、住居へ故意に損害を加えることはないと思いますが、覚えておきましょう。
地震保険で補償される内容は?
地震保険とは数ある損害保険の1つで、地震もしくは噴火や津波による損害を補償する保険になります。
また、火災保険では補償の対象外だった「地震による火災」も補償範囲に入っています。
下記に地震保険で補償できる内容や、損害保険金が支払われるケースをまとめました。
- 地震が原因での建物・家財損壊
- 地震が原因で発生した火災・津波
地震保険では補償されない内容
ここまで、地震保険で補償される内容を解説してきました。
地震保険は、地震によって発生した二次災害にも対応が可能な保険です。
しかし、そんな地震保険でも補償できない内容もあります。
ここからは、地震保険で補償されない内容を解説していきます。
建物ではなく敷地内の門や塀のみの損壊は補償の対象外
各社の地震保険やプランによっても異なりますが、敷地内の門や塀のみの破損は補償の対象外となります。
地震保険はあくまで居住用の建物と家財を補償する保険になります。
そのため、たとえ自身の敷地内であっても門や塀のみの損壊は補償の対象外となってしまいます。
自動車や高価な貴金属類(30万円を超えるもの)は補償の対象外
各社の地震保険やプランによっても異なりますが、基本的には自動車や1個あたり30万円を超える高価な貴金属類などは補償の対象外となります。
こちらは、地震保険内の家財の補償に加入していても、補償の対象外になってしまいます。
自動車や高価な貴金属類の補償を受けたい場合は、一度保険会社と相談しておく必要があります。
地震保険は損害の度合いにより支払われる損害保険金が異なる
ここまで、地震保険で補償される内容について説明してきました。
しかし、地震保険は火災保険とは違い、損害の度合いにより支払われる損害保険金が異なることに注意しましょう。
損害の度合い | 建物の状態 | 受け取れる保険金額 |
---|---|---|
全損 | 建物の時価額の50%以上・焼失や流失した部分の延床面積が70%以上 | 保険金額の100% |
大半損 | 建物の時価額の40%以上50%未満・焼失や流失した部分の延床面積が50%以上70%未満 | 保険金額の60% |
小半損 | 建物の時価額の20%以上40%未満・焼失や流失した部分の延床面積が20%以上50%未満 | 保険金額の30% |
一部損 | 建物の時価額の3%以上20%未満・大損、大半損、小半損のどれにも該当しない場合 | 保険金額の5% |
※主要構造部とは、床や柱などの基礎、軸組、外壁、屋根などのことです。
以上のように、地震保険は状況によって損害保険金が変化するので覚えておきましょう。
また、保険会社や各種プランによって「建物のみの補償」「家財のみの補償」というものもありますので、加入前に下調べをしておく必要があります。
火災・地震保険の選び方のポイント
ここまで、火災や地震の各種保険の概要から、補償内容までを解説してきました。
実際に、火災・地震保険を選ぶなら「自身に必要な補償をしっかりと精査し、保険を選ぶ」ことが大切です。
しかし、その中には自身には必要のない補償が含まれている可能性があります。
マンションの高層階に住んでいるのに、洪水・水災に対する補償が充実していても、意味はありません。
自身が住んでいる物件が一戸建て住宅かマンションなのか、周辺の環境や地形などの場所はどういったものなのか等で必要な補償も変化します。
そこで、おすすめしたいのが、自身に必要な補償だけを選んで組み合わせられる保険です。
自身に必要な補償だけを選べる保険は、保険料を安く抑えることも可能になります。
そのため、火災や地震の各種保険に共通していることですが、自身に必要な補償を選べる保険に加入することが大切です。
まとめ
再建築不可物件には文字通り再建築できないというデメリットがありますが、通常の物件と同様に火災や地震といった各種保険に加入しておきましょう。
なぜなら、再建築不可物件は通常の物件に比べて、多くのリスクに晒されているからです。
また「火災保険」は火災以外にも「落雷、爆発、破裂、風災、水災、騒擾、盗難」などといった幅広い災害やトラブルに対応できる保険になります。
もちろん、地震保険も地震だけでなく、地震が原因で発生した火災や津波などの災害にも対応できる保険となっています。
数ある保険会社やプランの中で、最も適したものを選ぶポイントは自身に必要な補償を選べる保険に加入するということです。