旗竿地を所有している人のなかには、「物件を建て替えることはできない?」などと考える人もいるでしょう。
そもそも旗竿地とは、文字通り旗のような形状をした土地です。建物を建て替えるには、法律や条例で定められた基準を満たさなければなりませんが、旗竿地は特殊な土地の形状が原因でこの基準を満たせないケースがあります。
とはいえ、「旗竿地=基準を満たしていない」ではなく、場合によっては旗竿地であっても建て替えできる可能性はあります。そのため、まずは所有している物件が基準を満たしているかを確認してみるのが大切です。
また、基準を満たしておらず再建築不可の旗竿地であっても、建て替えるための方法はあります。所有している物件が再建築不可の旗竿地と判明した場合は、建て替えるための方法がとれないかを検討してみてください。
当記事では、旗竿地を建て替える方法をテーマに解説していきます。建て替えせずに現状のまま物件を活用する方法や、そのまま売却する方法も解説していくため、建て替えできない旗竿地を所有している場合には参考にしてみてください。
旗竿地で建て替えできない理由は2つ!再建築不可物件かどうかをまずは確認しよう
建物の建て替えをするには、法律や条例で定められた基準を満たしている必要があります。しかし、竿に旗をたてたような特殊な形状の旗竿地の場合、法律や条例の基準を満たせずに「再建築不可物件」と扱われるケースがあります。
再建築不可物件とみなされれば、基準を満たすまで建物の建て替えや増改築を行えません。すべての旗竿地が再建築不可物件とは限らないため、まずは所有する旗竿地が再建築不可物件かどうかを確かめてみてください。
ケース1.接道義務を満たしていない
建築基準法では、建物の敷地について「幅員が4m以上ある道路に、敷地の間口が2m以上接していなければならない」という規制が定められています。この規制を「接道義務」といい、災害時の避難経路の確保、消防車や救急車などの緊急車両がスムーズに進入できるようにするために定められています。
旗竿地は道路と接する間口が狭いため、接道義務を満たしていないケースが多々あります。
所有している旗竿地がこの接道義務を満たしていない場合、再建築不可物件として扱われ、建て替えができません。
接道義務を満たしていなくても例外的に建て替えできるケース
一見すると接道義務を満たしていなくても、実は建て替えが可能だったというケースもあります。建築基準法第43条第2項では、下記のような場合は「建築の許可を認めてもよい」とされています。
- 敷地の周囲に公園、緑地、広場など広い空地があること
- 敷地が幅員4m以上の農道や公共性のある道(例:不特定多数の通行人が通る道)に2m以上接していること
- 敷地が避難や通行に問題なく、建築基準法上の道路に通じている通路に接していること
いずれかの基準を満たしており、交通・安全・防火・衛生に関して支障がないと認められると、接道義務を満たしていなくても建て替えが可能です。
許可申請は、特定行政庁に提出する必要があります。自治体によって認定基準が異なるため、具体的な条件は自治体へ問い合わせてみるとよいでしょう。
ケース2.条例の建築制限を満たしていない
建築基準法とは別に、地域や自治体ごとに建築を規制する条例が定められている場合があります。主に、通路部分の長さについて制限を設けたものです。
たとえば、東京都建築安全条例では、下記のようなルールが定められています。
- 路地状部分が20m以下の場合は、道路に接する部分が2m以上必要
- 路地状部分が20m超の場合は、道路に接する部分が3m以上必要
条例に違反してしまった場合は、接道義務を満たしている旗竿地であっても建て替えができません。
規制内容は地域や自治体によって異なるため、ホームページや窓口などで確認してみましょう。
参照:江戸川区役所「敷地が道路より奥にある場合は建築はできますか?」
再建築不可の旗竿地を建て替える方法
所有している旗竿地が再建築不可物件であっても、その原因を解消することで建て替えが可能になります。
具体的には、下記にあげる3つの方法を検討してみましょう。
- 隣接地を買い取る
- 通路部分の土地を借りる
- 43条但し書き道路の申請をする
方法1.隣接地を買い取る
所有する旗竿地が建築基準法に満たない場合、隣接地を購入することで再建築可能になります。
隣接している土地すべてを隣地者から買い取ることで、土地の形状が旗竿ではなくなり接道義務の問題も解消されます。
隣地すべてを買い取ることが難しい場合は、旗竿地の竿(通路)にあたる部分だけ売ってもらうことで間口が広がり、建て替え可能となります。
隣接地をすべて買い取って接道義務を満たす
隣接地をすべて買い取り、1つの物件にする(合筆)ことで、通常の物件と同じ再建築可能な土地となります。
しかし、買い取れるかどうかは隣地者との交渉次第です。買取を拒否される可能性も十分にありえます。
そのため、隣地者がすでに土地の売却活動をおこなっているタイミングや、土地を放置して誰も利用していないという状況でなければ、難しい手段といえます。
また、買取自体は承諾をもらえても、高額な価格を提示される恐れもあります。
交渉をスムーズに進めるためには、いきなり「土地をすべて売ってくれ」と交渉するのではなく、隣地者と日々コミュニケーションをとっておくことが大切です。
隣接地の一部を購入して接道義務を満たす
隣接地すべてを買い取るのではなく、通路部分の土地を一部だけ買い取るという方法もあります。
買い取るのは間口や通路に関わる一部分のみとなるため、土地すべてを買い取る場合よりも、隣地者との交渉はしやすいでしょう。
ただし、一部分を買い取るには、隣地者の土地を測量し分筆する必要があります。境界確定に立ち合いが必要なことや、測量費用の負担については、あらかじめ話しておきましょう。
一部分だけの購入であっても、隣地者にさまざまな手間をかけさせることを考慮したうえ、交渉を進めることが大切です。
方法2.工事をするときに通路部分の土地を借りる
隣接地を買い取れない場合は、隣地者と一時的に賃貸借契約を結んで、土地を借りる方法(一時使用賃貸借契約)もあります。
建て替え工事の期間中だけでも接道義務を満たしていれば、再建築は可能と認められます。
賃貸契約の期間や賃貸料などの詳しい契約内容は、書面にしっかりと残しておきましょう。
この方法の場合、隣地所有者は一時的とはいえ土地の一部を使用できなくなります。また、工事をおこなうとなれば騒音などの迷惑をかけることになるので、賃貸契約を結ぶときに了承をもらっておきましょう。
方法3. 43条但し書き道路の申請をする
接道義務を満たせない旗竿地は再建築不可物件となり、原則基準を満たすまでは建て替えできません。具体的には周囲が住居や空き地の土地が該当し、基本的には接道義務を満たせません。
しかし、このような旗竿地でも「43条但し書き道路」という規定によって再建築を可能にすることもできます。
43条但し書き道路とは、建築基準法上における道路ではないものの、ある一定の基準を満たして建築審査会からの同意が得られれば建て替えが可能になる道のことです。簡単にいえば、周囲の空き地を道路として扱ってもらうための申請をすることで、接道義務を満たして再建築を可能にしようという方法です。
下記の要件を満たしている物件であれば、43条但し書き道路として認められる可能性があります。
- 敷地の周囲に広い空き地がある
- 幅員4m以上の農道や公共用の道に2m以上接している
- 特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上の支障がないと認めている
- 道の部分の所有権・地上権・借地権の所有者の1/2以上の承諾を得ている
- 建築物は地上2階以下で、かつ地階は1階以下の専用住宅・二戸長屋である
これらは主な要件であり、自治体によって要件が異なることも考えられます。また、43条但し書き申請の際にはさまざまな書類が必要になるため、要件や申請方法についてを自治体の建築課に問い合わせておくとよいでしょう。
旗竿地の建物を解体するときの4つの注意点
旗竿地の解体工事は整形地に比べて費用が高く、近隣住民とのトラブルが起きやすいといえます。そのため、旗竿地を建て替えることになった場合、建物の解体工事には注意が必要です。
また、悪質な業者に依頼してしまい、高額請求や手抜き工事をされてしまうケースもあります。
この項目では、建物の解体工事を依頼するときに注意したいポイントを4つ説明します。
注意点1.解体費用が割高になる
旗竿地の通路が狭く、重機やトラックなどが入れない場合は、建物の解体や廃棄物の運搬などを手作業でおこなう必要があります。
そのため、解体費用は通常の物件よりも割高になる場合があります。
なお、重機にはさまざまなサイズがあり、車幅が2m未満のもの(小型重機)であれば、旗竿地の通路部分が狭くても搬入できるかもしれません。
木造の平屋や2階建てであれば小型重機で解体できるため、手作業での解体に比べれば解体費用を抑えることが可能です。
「通路の幅が狭くて重機が入れるか心配」という人は、車幅が2m未満の小型重機を扱っている解体業者に依頼するとよいでしょう。
注意点2.工事に時間がかかる
解体業者が小型重機を扱っていない場合や、小型重機でさえも敷地に入れない場合は、解体のほとんどが手作業になるでしょう。
重機を使えば1週間~2週間で終わるような解体工事でも、手作業のみの解体工事なら2倍の期間がかかるといわれています。
工事が長引けばその分だけ人件費もかかりますし、工事完了までの間は別の場所で生活をしなければいけません。工事期間が長くなると、仮住まいの家賃もかさんでいきます
注意点3.近隣住民とトラブルになりえる
旗竿地は通常の物件に比べて隣家との距離が近く、解体工事による騒音や振動が伝わりやすいことが大半です。
また、解体工事による影響で隣家の一部にヒビや破損などの被害が出るケースがあります。
通常、解体工事によって隣家に被害が出た場合は、解体業者が責任を負います。依頼主の責任は問われません。
しかし、隣家の人から解体工事による被害を報告・相談されても、依頼主がなにも対応しないままだと過失があるとされ、損害賠償を支払わなければならないケースがあります。
隣家の人から騒音や振動、建物の被害などに関する苦情やクレームがあった場合は、誠実な対応を心がけてトラブルを大きくさせないことが大切です。
注意点4.悪質な解体業者に気をつける
住宅の建て替えとなると、解体や建築など多くの費用がかかります。少しでも建て替え費用を安く抑えようと、見積もりの金額だけで解体業者を選ぶのは危険です。
受注を取るために、見積もりを安く提示してくる悪質業者も存在し、このような解体業者に引っかかると、下記のようなトラブルがあります。
- 極端に安い見積もりを出して、解体後に追加費用を高額請求してくる
- 工事によって発生した産業廃棄物を不法投棄する
- 解体工事の資格を持たないまま施工する
理由や根拠がないのに見積もり価格が際立って安い場合は、悪質な解体業者である可能性が高いので注意しましょう。
旗竿地の建物の解体費用は数十万円〜数百万円程度が相場
悪質業者を避けるためにも、解体工事の費用相場は把握しておくことが大切です。
あくまで目安ですが、旗竿地の建物の解体費用は数十万円〜数百万円程度が相場と一般的にはいわれています。
とはいえ、解体費用は建物の種類や広さ、地域や業者などよって変わります。旗竿地の建て替えを検討している場合、解体費用を決定する考え方についても把握しておくとよいでしょう。
解体費用は坪単価で決まる
住宅の解体費用は、基本的に住宅の構造ごとの坪単価で算出されます。以下の表で1坪あたりにおける解体費用の目安を確認しておきましょう。
構造 | 1坪あたりの解体費用 |
---|---|
木造 | 3~4万円 |
鉄骨造 | 3.5~4.5万円 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 5~7万円 |
例えば、30坪の木造住宅を解体する場合、90~120万円の費用がかかります。
ただし、建物の解体以外にも、地中埋設物やブロック塀などの撤去費用が上乗せされる場合もあるので注意しましょう。
解体作業以外の費用にも注意
建物自体の解体作業以外にも、さまざまな費用がかかります。
解体工事をするときは、粉塵や騒音・振動などが発生します。これらの対策として、防音パネルや防塵シートなどが設営されるため費用がかかります。
また、ブロック塀や花壇などを撤去する場合は、付帯工事として撤去費用が請求されます。
上記の別途費用は一例のため、解体業者に見積もり依頼をしたときに、解体費用の詳しい内訳をしっかりと確認しておきましょう。
建て替え不可の旗竿地の活用方法
隣地の土地を買うことも借りることもできず、再建築不可を解消できない場合もあると思います。
このような場合は、建て替え以外の活用方法を考えることで、物件を有効に活用できるかもしれません。
再建築不可物件を現状のままで有効活用できる方法を解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
方法1.リフォーム・リノベーションをする
木造住宅の場合、建物の基礎構造である柱や梁などの躯体を変えず、増築とならない範囲であればリフォーム・リノベーションをできます。新築に近い綺麗な状態にすることも可能です。
ただし、躯体が腐食やシロアリ被害などによって傷んでいると、補修しても長持ちしづらい可能性があります。リフォーム会社に相談して、物件の状態を確認してもらうといいでしょう。
ちなみに、 リフォームは古くなった建物を新築に近い状態に戻すことであり「原状回復」とも言い換えられます。
一方で、リノベーションは間取りや内装を変更して住宅の機能・性能を改良したり、建物自体の構造を変えるなど、リフォームよりも大掛かりになる改築作業のことをいいます。
自宅として活用する
「外壁を塗り直したい」「新しいキッチンやトイレを取り付けたい」などのように、住宅の一部を修繕するのであれば、リフォームを依頼しましょう。また、住み慣れた家の雰囲気を残したい場合もリフォームを選ぶ理由となるでしょう。
子供部屋を増やしたり、高齢になった親が住みやすい家にしたりなど、理想の間取りにして自宅を活用したいのであれば、建物をリノベーションすることになります。
自宅として活用するために、リフォームとリノベーションで迷っている場合は、ライフスタイルや住宅の状態を考慮して決めるといいでしょう。
賃貸物件として運用する
再建築不可の旗竿地は宅地としての価値が低くなるのが一般的であるため、買主が見つかりにくい傾向があります。
しかし、都市圏のように賃貸需要が高い地域であれば、賃貸物件として収益を上げることもできる可能性があります。
賃貸物件として活用するのであれば、リフォームやリノベーションにかける予算や、どのくらいの期間で費用を回収できるのかをあらかじめシミュレーションしておくことが大切です。
方法2.更地にして駐車場や駐輪場として活用する
物件の劣化が激しく、リフォームしても長く住めないような状態であれば、更地にして駐車場やコインパーキングとして活用することも選択肢の1つです。
ただし、旗竿地は入り口が狭いため、車がスムーズに通れるかは確認しておきましょう。
車が通れない場合、駐輪場にするという方法もあります。自転車であれば、細い形状の土地でも無理なく通れるでしょう。
更地にする場合は税負担が増える点に注意
再建築不可物件を更地にするときは、建物解体後に宅地として利用できないことや、固定資産税の軽減措置が受けられなくなることを覚えておきましょう。
まず、再建築不可物件を更地にすると、接道義務を満たさない限り、新しく建物を建てることはできません。
また、建物を解体することで土地に課せられる固定資産税の軽減措置(住宅用地の特例)が受けられなくなり、固定資産税の負担が最大6倍になる可能性があります。
上記のようなデメリットを考えたうえで、更地にするかどうかを慎重に判断しましょう。
建て替えできない旗竿地は売却も検討しよう
「所有している旗竿地の使い道がない」「住んでいる場所から遠いところにあって管理しにくい」という場合は、そのまま放置せず売却するのが得策です。
使いみちのない不動産を保有していても、維持費がかかるだけです。将来的に使う予定もなければ、早めに売却することをおすすめします。
売却方法1.隣接地の所有者に売却する
隣接地の所有者なら、高額で買い取ってもらえる可能性があります。
なぜなら、第三者にとっては価値の低い物件でも、隣接地の所有者が買い取れば自分の土地と合わせて資産価値を高められるからです。
隣接地も接道義務を満たしていない状態であれば、隣り合った土地と合筆することで、再建築可能となり土地の価値を上げられます。
隣接地の所有者にとっては、買取のメリットは特別大きいといえるのです。
売却方法2.再建築不可物件専門の買取業者に売却する
なるべく早く旗竿地を売却したい場合、再建築不可物件を専門に取り扱う買取業者に売却しましょう。
専門の買取業者は、使い勝手の悪い旗竿地でも収益化できる知識・資金を豊富にもっているため、積極的な買い取りが可能です。
自社で直接買い取り、代金は現金一括で支払うため、早ければ相談から2日〜3日で旗竿地を現金化できる場合もあります。
再建築不可物件専門の買取業者を探すときは、一括査定を利用しましょう。複数の不動産会社にまとめて査定を依頼できるので、効率的に買取業者を見つけられます。
当サイトで申し込める一括査定では、全国から厳選された不動産会社に査定を依頼できます。再建築不可物件の専門買取業者も見つけられるので、ぜひ活用してください。
まとめ
建築基準法の接道義務や自治体などが定めている条例によって、所有している旗竿地が建て替えできないケースがあります。
ただし、旗竿地が再建築不可物件であっても、隣接地を買い取ったり借りたりできれば、建て替えが可能な土地にできます。
仮に建て替えができなくても、リフォームやリノベーションをして、賃貸物件などとして収益化することも可能です。
建て替えや収益化が難しい場合、隣地者や買取業者へ売却することも検討するとよいでしょう。