建物を建築できない再建築不可物件でも、建築確認申請が不要な範囲のリフォームやリノベーションなら認められています。
ただし、再建築不可物件のリフォームは新築と同じくらいの費用がかかるうえ、リフォームローンは借りられますが、住宅ローンの利用は難しいです。
ですので、再建築不可物件をリフォームする場合、再建築不可物件の専門業者に相談し、多額の費用をかけてもリフォームしたほうが得なのか、慎重に検討することをおすすめします。
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再建築不可物件のリフォームはどこまで可能?
再建築不可物件でも、リフォームやリノベーションは可能ですが、普通の物件のように自由に工事ができるわけではありません。
原則として、再建築不可物件でできるリフォームは「建築確認申請が不要」な範囲です。
都道府県や市町村の建築主事または指定確認検査機関に確認申請書を提出して、問題ないことが確認されれば「確認済証」が交付されます。
そして確認済証の交付を受けて初めて施工会社は工事を始められます。
建築確認申請が不要な範囲までリフォーム可能
新しく家を建てる場合、建築基準法に基づいて、敷地が原則として公道などの幅員4m以上の道路に2m以上接している「接道義務」が必要です。
しかし、再建築不可物件はこの接道義務を満たしていません。
そのため、再建築不可物件は「違法」の状態で、本来であれば取り壊し・撤去の対象なのですが、建築基準法が施行される前に建築された建物については、新たに増改築できない代わりに、解体しなくてもよいとされています。
とはいえ、再建築不可物件は建築基準法に違反しているので、建築許可はおりません。
そういうわけで、再建築不可物件がリフォームをするときには、建築確認申請が不要な範囲までとなっています。
再建築不可物件をリフォームできないケース
建築基準法では「リフォーム」という言葉はなく、以下のような5つの分類で区別されます。
- 増築
- 改築
- 移転
- 大規模な修繕
- 大規模な模様替え
このような工事をする場合、建築確認申請が必要となるので容易におこなうことはできません。
ただし、防火・準防火地域外かつ10㎡以内であれば、建築確認申請は不要なので、工事がおこなえるケースもあります。
それぞれ、どのようなケースなのか順番に見ていきましょう。
1.増築
建て増しをして、物件の延べ床面積(建物面積)を増加させることを「増築」といいます。
敷地内に新たに建築する場合も建築基準法上の増築に含まれます。
2.改築
建築物の全部または一部を撤去した場合や災害などによって無くなった場合、無くなる前と同様の用途・構造・規模のものに建て替えることを「改築」といいます。
3.移転
同一敷地内で移動させることを「移転」といいます。
別の敷地へ移す場合は、移転先の敷地に対して新築または増築となります。
4.大規模な修繕
「修繕」とは、経年劣化した部分を今使っているものと概ね同じ位置・材料・形状・寸法のものを使って原状回復させることをいいます。
そして「大規模な修繕」というのは、壁・柱・床・梁・屋根または階段などの主要構造部に対して、1/2を上回る修繕を施すことです。
5.大規模な模様替え
「模様替え」とは、建築物の構造・規模・機能の同一性を損なわない範囲で改造することをいいます。
修繕との違いは、原状回復を目的とするのではなく、性能の向上を図ることを目的としている点で、間取りの変更も模様替えに含まれます。
そして大規模な模様替えは、壁・柱・床・梁・屋根または階段などの主要構造部を、1/2を上回る模様替えをすることです。
再建築不可物件をリフォームできるケース
建築確認申請が不要な範囲は以下のとおりです。
- 防火・準防火地域外での10平方メートル以内の増改築・移転
- 1/2以内の修繕・模様替え
上記に該当しない場合、必ず建築確認申請をしてからリフォームを施すようにしましょう。
少しくらいなら大丈夫だろうと考えて、建築確認申請をせずに増改築しても、それは建築確認がとれていない「違法建築物」となります。
違法建築物が行政に発覚すると、建物の解体を迫られることもあるので、対象となる場合、必ず建築確認申請を出すようにしてください。
戸建てなら大規模な修繕・模様替えも可能
再建築不可物件のリフォームについて調べると「フルリフォーム」という内容を見かけると思います。
「フルリフォーム」とは、当然ながら大規模な修繕・模様替えです。
再建築不可物件となっている一戸建てのほとんどは、建築基準法第6条第1項第4号で定められた、以下のような建築物です。
木造住宅 | 2階建て以下 延べ面積500㎡以下 |
---|---|
鉄骨造の住宅 | 1階建て 延べ面積200㎡以下 |
4号建築物であれば特例として、大規模な修繕・模様替えのときには、建築確認の審査を省略されます。
そのため、再建築不可物件でもフルリフォームと言われるような大規模な修繕・模様替えをおこなえるのです。
隣地を借りることができれば再建築も可能
工事時に隣地から土地を借りることで、4号建築物でなくても、増築や改築ができるようになります。
つまり、工事の際だけでも隣地を借りて接道義務を満たした状態になれば、通常の物件のように自由なリフォームができるようになるのです。
隣地を借りる時は口頭だけでなく、しっかりと土地の一時使用の賃貸契約を交わし、契約書を結ぶことが大切です。
建築確認申請のときに合わせて提示すると、許可が下りる可能性が高くなります。
土地の一時貸借は専門的な知識も必要になり、トラブルにも発展しやすいので、隣地の使用許可も含めて不動産会社に仲介してもらうとよいでしょう。
再建築不可物件をリフォームする際の注意点
再建築不可物件は通常の物件とは状況が大きく異なります。
そのため、リフォームのときにも注意するべきポイントは多いです。
- フルリフォームすると新築購入と同じくらいの費用がかかる
- リフォーム工事できない場合もある
- 追加費用がかかることも多い
この項目では、再建築不可物件をリフォームする際の注意点を3つ紹介します。
フルリフォームすると新築購入と同じくらいの費用がかかる
一般的に中古物件を購入してリフォームする費用の合計は、新築を購入するよりも安いです。
ただし、再建築不可物件のフルリフォームとなると、耐震基準を満たすための耐震補強工事なども必要で、リフォーム費用は1,000万~2,000万円かかることもよくあります。
特に今まで全くメンテナンスされていない状態であれば、新築を購入するよりも多くの費用がかかってしまうかもしれません。
通常のリフォームの予算で収まらないケースがほとんどなので、注意してください。
リフォーム工事できない場合もある
再建築不可物件は接道義務を満たしていないということからもわかるように、立地や周辺の環境が悪い物件がほとんどです。
フルリフォームのために必要な掘削機の搬入ができなかったり、足場が悪くて職人さんでも工事が難しかったりすれば、リフォームできない事態も十分にありえます。
リフォーム工事の内容も含めて、工事可能かどうか確認しておくことが大切です。
追加費用がかかることも多い
再建築不可物件は築年数40年を超える物件が多く、外から見ただけでは正確な見積もりを出すことが難しいです。
そのため、実際にリフォーム工事を始めて「壁を壊してみると、想定していた状態と違った」といった事態がよく起こります。
その場合、追加工事や変更工事が必要になるため、見積もりの金額から追加で費用を負担しなければなりません。
追加工事・変更工事の費用は、リフォーム工事でトラブルになることが多いです。
トラブルを避けるためにも、見積もりのときに追加工事の可能性や費用などを確認しておきましょう。
再建築不可物件をリフォームする場合にローンは利用できる?
再建築不可物件をリフォームすると新築一戸建てを建てるときと同じくらいの費用がかかります。
それだけのお金を現金一括払いできる人はほとんどいないでしょう。
そこでリフォーム費用はローンを利用しようと考えると思いますが、通常のリフォームと同じように「リフォームローン」であれば、問題なく融資を受けることができます。
例えば、みずほ銀行のリフォームローンであれば最大500万円、最長15年で借りられます。担保や保証人も不要です。
そのため「すでに住まいとして使っている再建築不可物件をリフォームしたい」といった場合、通常のリフォームのときのようにリフォームローンを申請すれば問題ありません。
一方で「これから中古一戸建ての再建築不可物件を購入して、同時にリフォームしたい」と考えている場合は注意が必要です。
購入時にリフォーム一体型の住宅ローンは難しい
中古一戸建てを購入する際、物件の購入価格とリフォーム費用をまとめて借りられる「リフォーム一体型の住宅ローン」を利用する人も多いです。
ただし、再建築不可物件の場合、そもそも住宅ローンを借りられません。
通常、住宅ローンを借りるときには担保としてその不動産を入れるのですが、再建築不可物件は資産価値が少ないので担保とならないからです。
そのため、リフォーム一体型の住宅ローンを利用することは難しくなります。
それでも、再建築不可物件とは他に不動産を持っていれば、それを共同担保に入れることで住宅ローンを借りられる可能性もあります。
また、通常の住宅ローンより金利が高いですが、再建築不可物件に対して融資している金融機関もあります。
もし住宅ローンを利用しようと考えている場合は、諦める前に金融機関へ相談してみてください。
まとめ
再建築不可物件の魅力は販売価格が安く購入しやすい点と、資産価値が低いおかげで固定資産税も低いことです。
住宅ローンも使えず、増改築できないというデメリットもありますが、適切なリフォームをすることで、あなたの望む家をつくることができます。
そして、再建築不可物件のリフォームについては、地域によって判断が異なり、立地条件によっては増改築できる場合もあります。
そのため、リフォームする前には不動産業者などの専門家だけでなく、都道府県庁などの行政機関にも相談してみるとよいでしょう。