再建築不可物件のリフォームはどこまで可能?
再建築不可物件は建築基準法の「接道義務」を満たしていない物件のことです。建物を壊して更地にすると新たに物件を建てられなくなることから、再建築不可物件と呼ばれています。
接道義務とは、建築基準法に基づき、建物を建てる敷地が原則として「幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない」という規定のことです。
建築基準法によって接道義務が定められたのは1950年であるため、現在残っている再建築不可物件は古い建物であることが大半です。
再建築不可物件を取り壊して建物を新築することはできませんが、リフォームであれば可能な場合があります。ただし、通常の物件のように自由に工事ができるわけではなく、原則として「建築確認申請が不要な範囲」のリフォームになります。
また、戸建てであれば大規模なリフォームができるケースもありますが、2025年4月に施行予定の法改正により、リフォームの範囲が狭まる可能性があります。
次の項目から、再建築不可物件のリフォームが可能な範囲について詳しくみていきましょう。
建築確認申請が不要な範囲までリフォーム可能
再建築不可物件は建築基準法の接道義務を満たしていないため、大規模なリフォームをしようとしても工事の許可が下りません。
そのため、再建築不可物件をリフォームをするときには、建築確認申請が不要な範囲までとなっています。建築確認とは、新築や増築、改築、移転などの工事をする前に、その計画が建築基準法を満たしているかの確認を受けることです。
建築確認申請が不要な範囲は以下のとおりです。
- 防火・準防火地域外での10㎡以内の増改築・移転
- 主要構造部の1/2以内の修繕・模様替え
自治体によって詳細は異なりますが、一例として物置やウッドデッキの設置、屋根・床の補修、外壁の塗り替え、柱の修繕などが上記の範囲内に該当します。
建物の維持管理をするための修繕は基本的に可能ですが、大規模なリフォームを施して外観や住み心地を大きく変えるというのは難しいと考えておきましょう。
仮に建築確認申請をせず大規模なリフォームをすると、建築確認が取れていない「違法建築物」として扱われます。違法建築物が行政に発覚すると解体を迫られることもあるので、注意しておきましょう。
参照:「法律上の手続きと補助・融資等の制度」(国土交通省)
戸建てなら大規模な修繕・模様替えも可能
大規模リフォームをする際には基本的に建築確認申請が必要ですが、「4号建築物」に該当する戸建てであれば建築確認の審査を省略できます。
4号建築物とは、建築基準法第6条第1項第4号で定められている以下のような建築物のことです。
木造住宅 |
2階建て以下
延べ面積500㎡以下 |
鉄骨造の住宅 |
1階建て
延べ面積200㎡以下 |
4号建築物に該当する場合、建築基準法における「4号特例」が適用されます。4号特例とは、小規模建築物に対して建築確認の手続きが簡略化される特例です。
再建築不可物件となっている一戸建ての大半は4号建築物に該当します。そのため、再建築不可物件が戸建てなのであれば、フルリフォームと呼ばれるような大規模なリフォームを施すことが可能です。
2025年4月以降は4号特例が縮小される予定
再建築不可物件でも戸建てであれば大規模なリフォームは可能ですが、2025年4月に建築基準法が改正され、建築物の分類が変更される予定です。
具体的には4号建築物や4号特例の制度が廃止され、現在の4号建築物は以下2つのどちらかに分類されることになります。
分類 |
概要 |
建築確認申請 |
新2号建築物 |
木造2階建て、または延べ面積200㎡超の木造平屋建て |
すべての地域で必要 |
新3号建築物 |
延べ面積200㎡以下の木造平屋建て |
都市計画区域等内の場合は必要 |
新2号建築物に該当する場合は、どの地域でも建築確認申請が必要になります。新3号建築物は、都市計画区域に該当する地域のみ建築確認申請が必要です。
このように、2025年4月以降は4号特例の制度が縮小され、現在よりも再建築不可物件の大規模リフォームが難しくなります。知らずに建築確認申請を省略すると違法建築物とみなされるため、注意が必要です。
参照:2025年4月(予定)から4号特例が変わります|国土交通省
再建築不可物件で認められていないリフォームの種類
建築基準法では「リフォーム」という言葉はなく、以下のような5つの分類で区別されます。
分類 |
概要 |
増築 |
建て増しをして物件の延べ床面積(建物面積)を増加させること |
改築 |
建築物の全部または一部を撤去し、同様の用途・構造・規模のものに建て替えること |
移転 |
同一敷地内で建物を移動させること |
大規模な修繕 |
壁・柱・床・梁・屋根・階段などの主要構造部に対して、1/2以上の修繕を施すこと |
大規模な模様替え |
建築物の構造・規模・機能の同一性を損なわない範囲で主要構造部の1/2以上を改造すること |
上記のような工事をする場合は建築確認申請が必要になるので、再建築不可物件では基本的に実施することはできません。リフォームが必要な場合、先述した建築確認申請が不要な範囲内で検討してみてください。
再建築不可物件をリフォーム可能にする方法
再建築不可物件でも、条件を満たせば接道義務をクリアしてリフォーム可能にすることができます。具体的な方法は以下の2つです。
それぞれの方法について、詳しくみていきましょう。
隣地を借りるか購入する
隣地から土地を借りるか購入することで接道義務を満たせば、増築や改築ができるようになります。
再建築不可物件は接道義務を満たしていないことが問題なので、土地を拡大して接道義務さえ満たせば、通常の物件と同じようにリフォームが可能です。
隣地が空き地の場合は地主に連絡を取り、賃貸借や購入が可能かどうかを尋ねてみましょう。空き地でない場合は、所有者と交渉して土地の一部を借りられるか、購入させてもらえるかを相談してみてください。
なお、工事のときのみ隣地を借りる一時賃借は法律的にグレーな部分があるため、控えておきましょう。一時的に接道義務を満たしても、工事終了後に接道義務を満たさなくなると建築基準法違反に該当する可能性があるためです。
隣地を活用する際は、地主と正式に賃貸借契約を交わして借りるか、購入するかのどちらかを考えてみてください。
セットバックをおこなう
再建築不可物件をリフォーム可能にする方法の一つに、セットバックがあります。
セットバックとは、土地と道路の境界線を後退させることで、接道義務を満たす方法です。
接道義務を満たすためには幅員4m以上の道路に、敷地が2m以上接してしなけれなりません。そのため、セットバックによって道路の幅員が4m以上になれば、接道義務を満たせるということになります。
注意点として、セットバックをするためには数十万円以上の工事費用を自己負担する必要があります。また、敷地面積も狭くなってしまうため、再建築する建物が現在より小規模になるかもしれません。
もともとの敷地面積が狭くセットバックをすることで最低敷地面積を下回ると建物を建てられなくなるので、慎重に検討しましょう。
再建築不可物件をリフォームする際の注意点
再建築不可物件は通常の物件とは状況が大きく異なるため、リフォームの際には以下のポイントに注意しましょう。
- フルリフォームすると新築購入と同じくらいの費用がかかる
- リフォーム工事できない場合もある
- 追加費用がかかることも多い
この項目では、再建築不可物件をリフォームする際の注意点を3つ紹介します。
フルリフォームすると新築購入と同じくらいの費用がかかる
一般的に中古物件を購入してリフォームする費用の合計は、新築を購入するよりも安いものです。
ただし、再建築不可物件のフルリフォームとなると、耐震基準を満たすための耐震補強工事なども必要で、リフォーム費用は1,000万〜2,000万円以上かかることもよくあります。
とくに今まで全くメンテナンスされていない状態であれば、新築を購入するよりも多額の費用がかかってしまうかもしれません。
通常のリフォームの予算で収まらないケースがほとんどなので、注意してください。
リフォーム工事できない場合もある
再建築不可物件は接道義務を満たしていないということからもわかるように、立地や周辺の環境が悪い物件がほとんどです。
フルリフォームのために必要な掘削機の搬入ができなかったり、足場が悪くて工事が難しかったりすれば、リフォームできない事態も十分にありえます。
リフォーム工事の内容も含めて、工事可能かどうか確認しておくことが大切です。
追加費用がかかることも多い
再建築不可物件は築年数40年を超える物件が多く、外から見ただけでは正確な見積もりを出すことが難しいです。
そのため、実際にリフォーム工事を始めて「壁を壊してみると、想定していた状態と違った」といった事態がよく起こります。
その場合、追加工事や変更工事が必要になるため、見積もりの金額から追加で費用を負担しなければなりません。
追加工事・変更工事の費用は、リフォーム工事でトラブルになることが多いです。
トラブルを避けるためにも、見積もりのときに追加工事の可能性や費用などを確認しておきましょう。
再建築不可物件をリフォームする場合にローンは利用できる?
再建築不可物件をリフォームすると、新築一戸建てを建てるときと同じくらいの費用がかかります。1,000万〜2,000万円以上もの金額を現金一括払いするのは非常に難しいでしょう。
再建築不可物件をリフォームする場合、通常のリフォームと同じように「リフォームローン」であれば、問題なく融資を受けられる可能性があります。
たとえばみずほ銀行のリフォームローンであれば最大500万円、最長15年で借りられます。担保や保証人は必要ありませんが、債務者の収入や返済能力などの審査があります。
「すでに住まいとして使っている再建築不可物件をリフォームしたい」という場合は、通常のリフォームと同じようにリフォームローンを申請すれば問題ありません。
一方で「これから中古一戸建ての再建築不可物件を購入して、同時にリフォームしたい」と考えている場合は注意が必要です。
参照:「みずほ銀行リフォームローン」(みずほ銀行)
購入時にリフォーム一体型の住宅ローンは難しい
中古一戸建てを購入する際、物件の購入価格とリフォーム費用をまとめて借りられる「リフォーム一体型の住宅ローン」を利用する人も多いです。
ただし、再建築不可物件の場合、そもそも住宅ローンを借りられません。通常、住宅ローンを借りるときにはその不動産を担保に入れるのですが、再建築不可物件は資産価値が低く担保にはならないからです。
そのため、リフォーム一体型の住宅ローンを利用することは難しくなります。
なお、再建築不可物件とは他に不動産を持っていれば、それを共同担保に入れることで住宅ローンを借りられる可能性もあります。
また、通常の住宅ローンより金利が高いですが、再建築不可物件に対して融資している金融機関もあります。
もし住宅ローンを利用しようと考えている場合は、諦める前に金融機関へ相談してみてください。
まとめ
再建築不可物件は建築基準法の接道義務を満たしていないため、通常の物件のように自由なリフォームはできません。原則として、建築確認申請が不要な範囲内のリフォームのみとなります。
増築や改築、大規模な修繕などは建築確認申請が必要であるため、再建築不可物件に施すのは難しいと考えておきましょう。
再建築不可物件をリフォーム可能にする方法として、隣地の借り入れ・購入やセットバックなどがあります。いずれも多額の費用が発生する方法なので、再建築不可物件のリフォームが本当に必要かどうかも踏まえ、慎重に検討してみてください。
実際にリフォームする際には、不動産業者などの専門家だけでなく、都道府県庁などの行政機関にも相談して可能かどうかを確認しましょう。
再建築不可物件のリフォームに関するよくある質問
再建築不可物件でも耐震工事は可能ですか?
再建築不可物件でも、戸建てであれば建築確認申請を省略できるため、耐震工事を行うことは可能です。再建築不可物件は築年数が40年以上の古い物件が大半を占めており、安全面の観点からも耐震工事は施しておいた方が良いといえます。
ただし、2025年4月に建築基準法が改正されると物件によっては建築確認申請が必須になる可能性があります。この場合、耐震工事を施すことはできません。
リフォーム後に売却することはできますか?
再建築不可物件でも売却は可能ですが、需要が限られるため難航する可能性があります。とくに一般の購入希望者にとっては、再建築ができないという点が大きなハードルになるため、買い手が付きにくい傾向があります。
そのため、無理にリフォームを行って売却するよりも、そのままの状態で訳あり不動産の専門業者に売却することをおすすめします。訳あり不動産の専門業者は再建築不可物件の取り扱いにも慣れているため、スピーディーかつ高額買取が期待できます。
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