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既存不適格建築物と違反建築物の違いをわかりやすく解説!

「既存不適格建築物」と「違反建築物」という言葉があります。どちらも建築基準法に適合していない建物ですが、それぞれ定義が異なります。

既存不適格建築物は「法改正などで基準に満たなくなった既存の建築物」であるのに対し、違反建築物は「新築や増改築にあたって基準を違反した建築物」です。

ひとくちに「基準に満たない物件」といっても、既存不適格建築物と違反建築物のどちらにあてはまるのかによって、実務上の取り扱いが異なります。そして、どちらの物件も「売却しにくい物件」です。

そのため、既存不適格建築物や違反建築物を売却したい場合は、それら専門に取り扱う買取業者に相談するのがおすすめです。

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既存不適格建築物とは「法改正などで基準に満たなくなった建物」

既存不適格建築物

既存不適格建築物とは、法改正などによって新しい規定に適合しなくなった建築物のことをいいます。

建築基準法は改正されることが多く、平成29年の1年だけでも2回の法改正がおこなわれています。

しかし、法改正されるたびに、全ての建築物に改修工事を義務付けるのは現実的ではありません。

基礎工事からやり直す必要があるなど、費用も時間も莫大にかかり、混乱が起きてしまいます。

そこで、建築基準法では「適用の除外」という項目を作り、下記のように定めています。

この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替えの工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は、適用しない。引用:e-Govポータル「建築基準法第3条2項」

簡潔にいえば、建築基準法が制定された1950年(昭和25年)以前の建築物については「そもそも建築基準法の適用から除外される」ということです。

また、建築にあたって従うべき規定は「工事が始まったタイミングにおける建築基準法」であるとされます。これらのルールは、自治体の都市計画による条例や命令にもあてはまります。

つまり、建物の工事中に法改正があっても、改正前の基準で建築を続行できるのです。

これらのことから、法改正のたびに改修工事をする必要はありませんし、継続して利用することも可能です。

ただし、建て替えや一定範囲以上の増改築、大規模修繕などをおこなう場合は、不適格部分を現時点での建築基準法に適合するような改修工事が必要となります。

既存不適格建築物の原因となるポイント

具体的に、どのようなポイントが原因で既存不適格建築物になるのでしょうか?

具体的な例としては、下記のものがあげられます。

  • 耐震基準
  • 建築物の高さ
  • 建ぺい率・容積率

上記は実際に、法律や条例の改正で影響が出やすいポイントです。

ポイント1.耐震基準

耐震基準が法律で定められたのは関東大震災の後、1924年です。実は、建築基準法が制定されるよりも前に耐震基準は導入されています。

大きな地震が発生するたびに、被害状況を踏まえて改正が繰り返されてきました。

そして耐震基準が大きく変わったのは1981年6月1日です。この改正以前を旧耐震基準、以降を新耐震基準と呼んでいます。

なんの対策もされていなければ、1981年6月1日よりも前に建築確認がおこなわれた建物は、既存不適格建築物である可能性が高いでしょう。

ポイント2.建築物の高さ

低層住宅の住環境を保護するために、建築物の高さに制限が定められた「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」というものがあります。

指定された地域では、建築物の高さは10mもしくは12m以下でなければいけません。

こうした用途地域は、都市計画の変更などによって変わることがあります。最新の情報は各市区町村に確認しましょう。

用途地域の変更があっても、変更前から存在する建物は適用外なので、高さ制限を超えていても建て直す必要はありません。ただし、一度取り壊して建て直す際は、高さ制限が適用されます。

参照:e-Govポータル「建築基準法第55条」

ポイント3.建ぺい率・容積率

建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の割合、容積率は敷地面積に対する延べ床面積の割合のことをいいます。

これらの上限は、用途地域ごとに都市計画で定められます。都市計画の変更により、建ぺい率や容積率をオーバーしてしまう建築物が出来てしまうのです。

こうした規定をオーバーした建築物については、建て替え時に現行の規定に合うよう改修するのが原則です。

ただし、建ぺい率・容積率は特例が適用される場合もあります。改修工事をおこなう前には、役所に確認してみましょう。

危険性や有害性のある既存不適格建築物には是正命令が下される

是正命令とは「規定に適合していない部分を改めなさい」という命令です。既存不適格建築物であっても、新たに増改築などをしないのであれば、基本的に是正命令は下りません。

ただし「特定行政庁が、著しく保安上危険もしくは衛生上有害であると認める場合、必要な撤去や使用禁止などの措置を取るように命令できる」という例外があります。

特定行政庁とは?
建築主事(建築確認をおこなう公務員の役職)を置く地方公共団体のこと。

簡単にいえば「周りに被害を出す可能性が高い既存不適格建築物」については、是正が必要ということです。

「著しく保安上危険もしくは衛生上有害」の判断については、国土交通省が作成したガイドラインが基準です。

参照:国土交通省「既存不適格建築物に係る是正命令制度について」

保安上危険な状態の例

「著しく保安上危険」というのは、以下のような場合を指します。

  • 劣化や自然災害などが原因で倒壊する可能性が高い
  • 倒壊した場合、通行人などに被害が及ぶ可能性が高い
  • 是正命令をおこなう社会的必要性がある

たとえば、下の画像のように、基礎が大きく破損していたり、柱がシロアリ被害で欠損していたりするような状態です。

基礎欠損 シロアリ被害

出典:国土交通省「既存不適格建築物に係る是正命令制度に関するガイドライン」

衛生上有害な状態の例

「著しく衛生上有害」というのは、以下のような場合を指します。

  • 建築物または設備などの破損が原因で通行人などに被害が出る可能性が高い
  • 是正命令をおこなう社会的必要性がある

たとえば、天井や壁に使われたアスベストが飛び散って、不特定多数に健康被害を与える可能性があると、既存不適格建築物であっても改修工事や撤去などの是正命令が出されるかもしれません。

違反建築物とは「建築時点で基準を満たしていない建物」

違法建築物

違反建築物とは、建築基準法の規定に違反した建築物をいいます。

違反建築物には、大きく分けて2つのケースがあります。

  • 建築当時から法律に違反していたケース
  • 増改築工事によって法律に違反してしまったケース

新しく建築物を建てる場合、基本的には役所に「建築確認申請」を提出して確認済証の交付を受けない限り、工事を始められません。計画を変更する場合は、再び建築確認申請をおこなう必要があります。

また、中間検査や完了検査などで、計画どおり工事されているかを逐一調べられます。

しかし、実際には完了検査を受けていない建築物も少なくありません。下のグラフは、国土交通省が発表している検査済証交付件数と完了検査率の推移です。

国土交通省グラフ

出典:国土交通省「効率的かつ実効性ある確認検査制度等のあり方の検討」

黒い折れ線グラフが完了検査率になります。完了検査率は建築確認の件数における検査済証交付件数の割合です。

平成10年度の時点では、完了検査を受けている建築物はわずか4割程度になっています。そこから増加していますが、それでも平成23年度の検査率は9割弱です。

このグラフから読み取れるのは、事前の建築確認は受けていても、建築後の完了検査を受けていない工事が一定数あるということです。

つまり、工事が計画どおりにおこなわれず、違反建築物の状態で引き渡しまでされている可能性もあるといえます。

違反建築物には強制的な是正命令が下される

建築基準法第9条には、違反建築物に対する措置が明記されています。

特定行政庁は、工事途中でも工事を停止させることができます。すでに完成している場合でも、違反建築物の除去や移転・改築・使用禁止などの措置を命令することが可能です。

また、違法建築物の設計者や工事業者には、宅地建物取引業法による免許の取り消しや業務停止命令などの処分が与えられる場合もあります。

さらに、平成19年6月20日施行の改正建築基準法により、罰則が強化されています。

たとえば、工事施工停止命令違反による懲役刑が1年から3年に延びたり、建築確認や検査による罰金が30万円から100万円に引き上げられたりしています。

参照:e-Govポータル「建築基準法第9条」

「既存不適格建築物」と「違反建築物」の違い

既存不適格建築物と違反建築物の大きな違いは、規定を満たさなくなる要因にあります。

既存不適格建築物とは、法改正や都市計画の変更といった「所有者にはどうしようもない事情」で規定を満たさなくなった建築物のことです。

一方で、違反建築物は「新築時から規定を満たしていない」もしくは「増改築などをおこなって規定を満たさなくなった建築物」のことをいいます。

「建築基準法を満たしていない」という点では同じですが、要因は大きく違います。そして、実務上の取り扱いもそれぞれ違いがあるため注意しましょう。

1.住宅ローンの審査について

違法建築物ではほとんどの場合、融資の審査が通りません。これは国土交通省が、民間金融機関に協力要請したことが関係しています。

要請があったことで、検査済証のない物件については基本的に融資が下りなくなったのです。

そのため、違法建築物を売却するときは、現金一括で購入できる買主を探す必要があります。

一方で、既存不適格建築物の場合は、住宅ローンを借りられる可能性が残されています。

検査済証の代わりとして、役所で台帳記載事項証明書を発行してもらったり、建築基準法の法適合調査等の裏付書類を取得したりすることで、融資をしてもらえるケースがあるのです。

2.建築基準法に適合させるタイミングについて

違反建築物は、是正命令があれば直ちに「現行の建築基準法」に適合させる必要があります。

建築から数十年経っている物件でも、現行の建築基準法に適合させなければいけません。もし是正命令に従わなければ、懲役や罰金などの罰則を受けることになります。

一方、既存不適格建築物の場合、大規模な増改築や修繕・用途変更などおこなうときを除いて、現行の建築基準法に適合させる必要はありません。

また、平成21年には制限緩和があり、増築をする場合でも小規模であれば、既存部分に対する改修工事をおこなわなくてもよいとされています。

これから既存不適格建築物を増築する場合は、改修工事の必要性について、役所やリフォーム業者に聞いてみましょう。

「既存不適格建築物」や「違反建築物」でも売却できる

売却

既存不適格建築物も違反建築物も、買主への告知義務さえ守れば売却できます。

告知は、口頭だけでなく書面の添付も必要です。万が一、告知義務を怠ると契約解除または損害賠償請求されるので注意しましょう。

また、売却可能とはいえ、需要の少なさは覚悟しなければいけません。価格を大幅に下げたり、そもそも買主が見つからないというケースもあるでしょう。

そもそも、既存不適格建築物や違反建築物は、活用が難しい物件です。建て替えをしようと思っても、接道義務を満たさず再建築ができないというケースが珍しくありません。

そのため、大手の不動産会社や一般的な仲介業者に相談しても、取り扱いを断られるケースが少なくないのです。

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まとめ

以上、既存不適格建築物と違反建築物の違いについて解説しました。

既存不適格建築物は「法改正や都市計画の変更により現在の規定に適合しない建築物」を指します。

一方、違反建築物は「新築時もしくは増改築時に、規定に違反して建てられた建築物」のことです。

いずれの場合も売却は可能ですが、需要は著しく下がります。なるべく早期に処分したい場合は、専門の買取業者に相談するとよいでしょう。

既存不適格建築物と違反建築物のよくある質問

既存不適格建築物とは何ですか?

既存不適格建築物とは、新築時は法令に基づいて建てられたものの、法改正などによって新しい規定に適合しなくなった建物です。

違反建築物とは何ですか?

違反建築物とは、建築基準法に違反する建物のことで、建築当時から法律に違反していた場合と、その後の増改築工事によって法律に違反してしまった場合があります。

既存不適格建築物を所有していると、どのようなリスクがありますか?

新たに増改築などをしないのであれば、既存不適格建築物をそのまま保有しても問題はありません。ただし「著しく保安上危険」または「著しく衛生上有害」な場合、撤去や使用禁止といった措置を命じられる恐れがあります。

違反建築物を所有していると、どのようなリスクがありますか?

すでに完成している違反建築物については、除去・移転・改築・使用禁止などの措置を命じられる恐れがあります。工事途中であっても、工事停止命令が出されるかもしれません。

既存不適格建築物や違反建築物は売却できますか?

法律上の制限はないので、既存不適格建築物や違反建築物であってもそのまま売却できます。ただし、買主が見つかりにくいため、なかなか売れにくいです。「再建築不可物件専門の買取業者」のように、問題のある物件を専門に取り扱う不動産業者であれば、高額・スピード買取も可能です。→ 【最短12時間の無料査定!】再建築不可物件の専門買取業者はこちら

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更新日 : 2024年05月23日
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