再建築不可物件とは、接道義務を満たしていないなどの理由で建築基準法の要件をクリアできず、建物の新築や建て替えができない物件を指します。
なお、2025年4月施行の建築基準法改正により、木造2階建てなどでも主要構造部の過半に及ぶ大規模なリフォームに建築確認が必要となったため、再建築不可物件ではこうした大規模改修も難しくなっています。
火事や災害などで建物を失っても再建築できないリスクをもつため、資産価値は一般の物件の5~7割程度とされ、固定資産税や都市計画税も安くなる傾向があります。
さらに、再建築不可物件のほとんどは築古物件であるため、経年減価補正率の適用によって、評価額が低くなることもあります。
固定資産税や都市計画税の税額は、下記の計算式で求められます。
■固定資産税
課税標準額×標準税率(1.4%)=固定資産税
■都市計画税
課税標準額×0.3%=都市計画税
再建築不可物件は一般の物件よりも資産価値が低く、計算式に用いられる「固定資産税評価額」も低くなり、税額も安くなるのです。
なお、一般の物件や再建築不可物件に関係なく、不動産が住居用地であれば下記の軽減措置を受けられます。
■小規模宅地の特例
1戸あたり200㎡以下の部分に適用され、固定資産税額は1/6、都市計画税は1/3となる。
■一般住宅用地の特例
200㎡を超える部分に適用され、固定資産税は1/3、都市計画税は2/3となる。
再建築不可物件の固定資産税や都市計画税は、住宅用地であれば軽減措置により安く抑えられます。
ただし、更地になった場合や特定空き家に指定された場合は、この軽減措置(住宅用地の特例)が受けられなくなり、200㎡以下の部分で固定資産税は最大6倍、都市計画税は最大3倍まで増えるおそれがあります。実務上は負担調整措置などにより一気に6倍ちょうどになるとは限りませんが、いずれにせよ負担が大きく増えることに変わりはありません。
いくら固定資産税や都市計画税が安くても、実際に不動産を活用していなければ無駄な税金負担です。さらに、軽減措置が受けられなくなった際の税金の増額リスクもあります。活用する予定のない再建築不可物件であれば、早いうちに処分した方が良いでしょう。
本記事では、再建築不可物件の固定資産税や都市計画税の計算方法、増額するケース、売却方法などを解説します。
なお、再建築不可物件は購入希望者が限られ、仲介では買い手が見つかりにくい傾向があります。そのため、売却方法としては、時間をかけて買い手を探す仲介のほか、不動産会社が直接買い取る買取も選択肢になります。
買取の場合、購入希望者を探す必要がないため、売れにくい再建築不可物件でも時間をかけずに手放せます。一方で、買取価格は仲介より低くなる傾向があるため、時間に余裕があれば仲介で買い手を探し、早く確実に手放したい場合は買取を選ぶというように、状況に応じて使い分けるとよいでしょう。
不動産における固定資産税・都市計画税とは?
不動産を所有しているだけでも「固定資産税」という税金が課せられます。
また、不動産の所在地によっては「都市計画税」が課せられます。
これらの税金がどのように決められているのかなど、疑問に思う人もいるでしょう。
そこで、まずは固定資産税・都市計画税の概要について解説します。
固定資産税とは不動産の所有者が市町村に納める税金
固定資産税とは、毎年1月1日の時点で土地や建物、償却資産(事業用の固定資産)を所有している人が、市町村に納める税金です。東京23区に限り、都に納めます。
各市町村が、それぞれの土地建物の構造や条件などをもとに定めた「固定資産税課税標準額」に税率を乗じて、1年分の固定資産税額を計算します。
各市町村により異なりますが、税率は標準税率である1.4%を採用しているケースが多いです。
なお、住居用地である場合は、固定資産税評価額の軽減措置を受けられます。
固定資産税の計算方法は「課税標準額×1.4%」
固定資産税の算出は、以下の式で計算します。
課税標準額×標準税率(1.4%)=固定資産税
不動産ごとに評価額は異なり、再建築不可物件や築古の物件は基本的に評価が低くなります。
さらに、住居用地の場合は、面積に応じて下記のような軽減措置が受けられます。
| 軽減措置 |
内容 |
| 小規模住宅用地特例(200㎡以下) |
課税標準額を1/6に減額 |
| 一般住宅用地(200㎡超の部分) |
課税標準額を1/3に減額 |
再建築不可物件であっても、用途が住宅であれば軽減措置を受けられます。
都市計画税とは「都市計画区域」に不動産を所有する人が納める税金
都市計画税も固定資産税と同様に、毎年1月1日の時点で市街化区域内に不動産を所有している人が、市町村に納める税金です。
市街化区域・・・都市計画区域のうち、すでに市街地を形成している区域や、おおむね10年以内に優先的・計画的に市街化を図る区域のこと。都市計画税は原則としてこの市街化区域内の不動産に課税される。
都市計画税も、固定資産税と同様に「固定資産税評価額」を基準にして計算します。
各市町村により異なりますが、税率は基本的に0.3%です。
住居用地であれば、都市計画税も軽減措置を受けられます。
都市計画税の計算方法は「課税標準額×0.3%」
都市計画税の算出は、以下の式で計算します。
課税標準額×0.3%=都市計画税
住居用の不動産が受けられる軽減措置は下記のとおりです。
| 軽減措置 |
内容 |
| 小規模住宅用地特例(200㎡以下) |
課税標準額を1/3に減額 |
| 一般住宅用地(200㎡超の部分) |
課税標準額を2/3に減額 |
固定資産税・都市計画税は年4回に分けて納める
固定資産税は、自分で申告をする必要はありません。毎年5月〜6月頃までに、各市町村から納付書が送られてきます。
納付書に税額や納期などが記載されているので、その内容にしたがって納付します。
納期は年4回に分けられ、1年分を分割して支払うのが基本です。資金に余裕がある場合は、一括支払いもできます。
支払い方法は口座振替やクレジットカード決済、コンビニ払いなどがあります。自治体によって対応している支払い方法が異なるので、納付書で確認しましょう。
再建築不可物件の固定資産税は安いが、増額するケースもある
固定資産税は、建物の状態や経過年数だけではなく、土地の形状や道路の接道状況などによっても変わります。
再建築不可物件は無接道や不整形地といった物件が多く、土地や建物の評価に対して減価補正されるケースがあるため、評価額も安くなる傾向にあります。不動産として評価が低くなりがちな再建築不可物件は、税額も安くなりやすいのです。
ただし、物件が更地になった場合や、特定空き家に指定されてしまった場合は、住居用地の軽減措置が受けられなくなるため、固定資産税が最大6倍まで上がるおそれがあります
資産価値が低いため、固定資産税が安い
再建築不可物件は建て替えができず、増築にも制限があるため、一般の物件と比較すると使い勝手が悪いといえます。用途が限られる分、一般の物件よりも資産価値は低く、「通常価格の5~7割程度」が目安とされます。
そのため、固定資産税評価額も低くなり、一般の物件と比較して税額も低くなりやすいのです。
築年数が古いほど税額も下がる
建物の評価は年月とともに下がっていくシステムになっているため、固定資産税の負担額も築年数に応じて減額されているのが普通です。
さらに、家屋の評価には経過年数に応じた「経年減価補正率」が設定されており、築年数が古くなるほど評価額は下がっていきます。ただし下限が定められており、木造家屋の場合は新築時の2割(補正率0.20)が下限で、それ以下には下がりません。
そのため、築古の再建築不可物件であっても、建物の評価額がゼロになるわけではなく、一定の固定資産税はかかり続ける点に注意しましょう。
再建築不可物件でも固定資産税額が増加する場合がある
再建築不可物件は不動産の評価が低いため、固定資産税も安くなるケースがほとんどです。
しかし、再建築不可物件であっても、固定資産税が増えてしまう場合があります。
具体的には、下記2つのケースで税額が高くなります。
- 更地になった場合
- 特定空き家・管理不全空き家に指定される場合
更地になった場合
「再建築不可物件の土地を高く売るために建物を解体した」「再建築不可物件の建物が地震で倒壊してしまった」などの理由で、物件を更地にすることもあるでしょう。
住宅が建っていた物件を更地にすると、住宅用地における軽減措置(住宅用地の特例)が解除され、200㎡以下の部分で固定資産税の負担が最大6倍(200㎡超の部分は最大3倍)にまで膨れ上がってしまいます。
■小規模宅地の特例
1戸あたり200㎡以下の部分に適用され、固定資産税額は1/6、都市計画税は1/3となる。
■一般住宅用地の特例
200㎡を超える部分に適用され、固定資産税は1/3、都市計画税は2/3となる。
また、再建築不可物件には新たに住宅を建てられないので、値上がりした固定資産税をずっと支払い続けることになります。
更地にすると住宅用地の特例が外れて固定資産税が上がるため、その状態で長期間放置するのは避けたいところです。固定資産税の負担を踏まえると、早めに売却するか、月極駐車場や駐輪場、貸農園などとして活用し、収益で税負担をまかなう方法を検討するとよいでしょう。
なお、駐車場などにしても住宅用地の特例は復活せず、固定資産税が安くなることはありません。あくまで「上がった税金を活用収益で相殺する」という考え方になります。
また、ここで注意しなければならないのは、そもそも駐車場として活用できるかという点です。
再建築不可物件の多くは、道路に接していない、前面道路の幅が2m未満であるなどといった理由で指定されています。
つまり、車が進入できない狭い路地の奥に位置しているケースがほとんどであるため、現実的には月極駐車場にすることすらできず、駐輪場や資材置き場など、収益性の低い方法しか選べないケースが多いのが現実です。
再建築不可物件を更地にするメリット・デメリット、活用法については、下記の記事でも詳しく紹介しています。
特定空き家・管理不全空き家に指定される場合
特定空き家とは、倒壊の危険性がある、衛生上有害となる、周囲の景観に著しく悪影響をおよぼすといった状態の空き家に対して指定されるものです。
特定空き家に指定され、自治体からの勧告を受けると、土地にかかる固定資産税の軽減措置が解除され、更地と同様に負担額が最大6倍まで増えます。
なお、2023年12月施行の改正空家法では、特定空き家の予備軍にあたる「管理不全空き家」が新設されました。これにより、「そのまま放置すれば特定空き家になるおそれがある状態」の空き家も、勧告を受ければ軽減措置が外れるようになっています。
以前より早い段階で税負担が増えるリスクがあるため、空き家を放置している場合は注意が必要です。
また、自治体が強制的に空き家を解体し、所有者に解体費用を請求する場合もあります。
空き家の解体に対して補助制度を設けている自治体もあるので、役所に相談してみましょう。
空き家の固定資産税や売却、手放す方法については下記の記事でも詳しく紹介しています。
固定資産税の税額を確認する方法
自分が所有している物件の固定資産税は、納付書の控えなどで確認すればすぐにわかります。しかし、書類を紛失してしまうケースもあるでしょう。
また、これから不動産を購入するにあたって、検討している物件の税額を知りたいというケースもあります。
固定資産税の調べ方について、ケース別に詳しく見ていきましょう。
自分が所有している不動産は「納付書」や「固定資産課税台帳」で確認
自分が負担している固定資産税は、納付書の控えから確認可能です。
ちなみに、不動産が共有名義の場合、納付書は代表者にのみ送られます。他の共有者には、納付書とは別に通知書を送付する自治体もあります。
それらの書類が手元にない場合は「固定資産課税台帳」を閲覧しましょう。
固定資産課税台帳とは、自治体が地域の固定資産について記録・管理する帳簿です。
後述する縦覧期間に確認する場合は無料ですが、それ以外の期間に確認する場合や、内容の証明書を発行してもらう場合には300円ほどの費用がかかります。
他の不動産の「評価額」は縦覧制度で比較できる
自分の土地・家屋の評価額が適正かを確認したい場合は、「縦覧制度」を利用して他の不動産の評価額と比較できます。
縦覧制度とは、納税者が自分の所有する土地・家屋の評価額が、近隣の他の不動産と比べて適正かどうかを確認するための制度です。市区町村が作成する「土地価格等縦覧帳簿」「家屋価格等縦覧帳簿」を閲覧する形で、評価額などを比較できます。(※ただし、他人の具体的な税額や個人情報が記載された課税台帳を見られるわけではありません)
閲覧できるのは同一区域内の不動産のみです。
さらに、固定資産課税台帳の縦覧は期間が決まっています。土日祝日の関係で毎年若干の前後はありますが、おおむね4月中だと考えておけばいいでしょう。
これから購入する不動産の場合は売主に確認
これから購入する不動産の固定資産税額を正確に知りたい場合は、その不動産の売主(または仲介会社)に直接確認するのが確実です。
不動産の売買取引においては、売主に「固定資産税・都市計画税の納付書(課税明細書)」や、役所で取得できる「公課証明書(税額が記載された証明書)」の提示を求めるのが一般的な実務の流れです。
購入検討の段階で維持費が気になる場合は、早めに不動産会社の担当者に税額の確認を依頼しましょう。
固定資産課税台帳に誤りがあれば過去5年間の税額が還付される
再建築不可物件を購入する場合には、固定資産課税台帳を確認し、間口や土地の形、面積などを確認しましょう。
再建築不可物件は、通常の物件と比較して「間口や前面道路が狭い」「土地の形が綺麗な四角形ではない」など、住宅としての条件が悪い物件です。
したがって、通常の不動産より固定資産税が低額になるのが一般的です。
しかし、固定資産課税台帳の記載内容に誤りがあり、高額の固定資産税を納税し続けているケースも稀に見受けられます。誤っている点は役所に伝え、修正してもらいましょう。
固定資産課税台帳に誤りがあった場合、地方税法上は原則として過去5年分の過誤納金の還付を求められます。また、国家賠償請求訴訟を通じて20年分さかのぼって賠償が認められた事例もあります。
ただし、還付請求の手続きや、まして国家賠償請求訴訟となると専門的な法知識が必要です。還付請求そのものは自治体の窓口で対応できますが、自治体が誤りを認めず話がこじれた場合は、不動産問題に詳しい弁護士へ相談しましょう。
実務上も、評価の誤りを所有者自身が見つけるのは難しく、購入時や相続時に専門家に課税内容をチェックしてもらう中で発覚するケースが多く見られます。
再建築不可物件の活用が難しければ早めの処分がおすすめ
再建築不可物件は建築に大きな制限があるため、活用が難しい物件です。市場での需要も限られ、一般的な仲介では買い手が見つかりにくいケースが多くあります。
固定資産税が安くても、活用できなければ維持費だけがかかり続けることになります。無駄な税金や管理費を負担し続けないためにも、活用の予定がなければ早めの売却を検討するとよいでしょう。
売却方法には仲介と買取があります。仲介は時間をかけて買い手を探す分、買取より高く売れる可能性がありますが、再建築不可物件では買い手がつきにくい傾向があります。一方、再建築不可物件の取扱実績がある不動産会社による買取であれば、買い手を探す手間がなく、早ければ数日〜数週間で現金化できる一方、価格は仲介より低くなりやすいという特徴があります。
どちらが適しているかは、急ぎ具合や希望価格によって変わります。まずは複数の不動産会社に査定を依頼し、仲介・買取それぞれの見込み額を比較したうえで判断するとよいでしょう。
まとめ
再建築不可物件は、建築基準法の制限により建て替えや新築ができず、活用が難しい物件です。
そのため、固定資産税や都市計画税は一般の物件より低くなる傾向がありますが、活用しなければ維持費や税金だけがかかる無用の負担となります。
さらに、更地化や特定空き家に指定されると、税額が大幅に増加するリスクもあります。
資産価値が低く市場での需要も限られるため、一般の仲介では売却が難しい場合も少なくありません。再建築不可物件を所有している場合は、こうした特徴やリスクを理解したうえで、再建築不可物件の取扱実績がある不動産会社に相談し、仲介・買取それぞれの可能性を比較しながら、早めの処分を検討することが重要です。