共有持分は自分の持分だけなら原則として他の共有者の同意なしで譲渡できる
共有持分を譲渡できるか判断するには、「自分の権利」と「不動産全体」を区別することが大切です。自分の持分だけなら原則として単独で処分できますが、譲渡方法によって相手の合意や登記への協力が必要になります。
- 共有持分は、土地や建物の特定の部分ではなく、所有権の割合を示す
- 売却・贈与には取引相手の合意が必要だが、他の共有者の同意は原則不要
- 放棄の意思表示に同意は不要でも、登記には原則として他の共有者の協力が必要
それぞれ詳しく説明していきます。
共有持分とは、不動産を共有している人それぞれの所有権の割合
共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有しているときに、それぞれが持つ所有権の割合です。
たとえば、兄と弟が実家の土地・建物を2分の1ずつ所有していれば、それぞれの共有持分は2分の1です。この場合、兄は自分の持分を弟や第三者に譲ることができます。
ただし、持分が2分の1だからといって、「建物の1階は兄のもの」「土地の右半分は弟のもの」と決まるわけではありません。持分を取得する人も、不動産全体に対する一定割合の権利を取得します。
そのため、不動産全体を単独で所有する場合とは異なり、持分を買っただけで建物を自由に解体したり、他の共有者を自由に退去させたりできるわけではありません。
売却・贈与には譲渡相手の合意が必要でも、他の共有者の同意は原則不要
自分の共有持分だけを売却・贈与する場合、取引相手以外の共有者から同意を得る必要は原則としてありません。一方、売買も贈与も契約なので、譲る相手との合意は必要です。
たとえば、兄・弟・妹の3人で共有している不動産について、兄が弟に持分を売る場合、兄と弟が売買条件に合意すれば、原則として妹の同意は不要です。ただし、弟に購入意思がなければ、売買は成立しません。
贈与も同様です。「無料で譲るから受け取ってほしい」と一方的に伝えるだけでは成立せず、相手が受け取ることを承諾する必要があります。
なお、共有不動産全体を通常の売買で売却する場合は、原則として共有者全員の同意が必要です。自分の持分を売ることと、他の人の持分も含めて不動産全体を売ることを混同しないようにしましょう。
参考:e-Gov法令検索「民法」第206条・第251条・第549条
放棄の意思表示に他の共有者の同意は不要でも、登記には原則として協力が必要
共有持分の放棄は、売却・贈与のように相手と契約する方法ではありません。放棄した持分は、民法第255条により他の共有者に帰属します。
ただし、放棄の意思表示と、登記簿の名義を変更する手続きは別です。持分移転登記は、原則として放棄した人と持分を取得する他の共有者が共同で申請します。
他の共有者が登記に協力しない場合は、登記手続きへの協力を求める訴訟などが必要になることがあります。「放棄すれば誰とも関わらず、その日からすべての負担がなくなる」と考えるのは避けましょう。
参考:e-Gov法令検索「民法」第255条、e-Gov法令検索「不動産登記法」第60条・第63条
共有持分を譲渡する3つの方法|売却・贈与・放棄の違い
売却・贈与・放棄の主な違いは、代金を受け取れるか、持分を取得する相手を選べるか、どのような合意や協力が必要かです。
| 方法 |
代金の受け取り |
持分の移転先 |
合意・協力 |
| 売却 |
あり |
売買条件に合意した買主 |
買主との合意と登記への協力が必要 |
| 贈与 |
なし |
贈与を受け入れた相手 |
相手の受諾と登記への協力が必要 |
| 放棄 |
なし |
他の共有者全員に、それぞれの持分割合に応じて帰属 |
放棄の同意は不要だが、登記には原則として他の共有者の協力が必要 |
それぞれの仕組みと注意点を詳しく説明していきます。
売却:他の共有者や第三者に持分を譲り、代金を受け取る
売却は、自分の持分を買主に譲る代わりに、売買代金を受け取る方法です。現金化しながら共有関係から抜けたい場合に検討できます。
主な売却先は、他の共有者や、共有持分を扱う買取業者などです。一般の個人にも売却できますが、持分だけでは不動産全体を自由に利用できないため、自宅を探している買主には選ばれにくい傾向があります。
不動産の査定実務では、建物の状態や立地だけでなく、「誰が住んでいるか」「共有者は何人いるか」「利用や管理についてどのような取り決めがあるか」も確認します。取得後の利用や権利調整の見通しが、買主にとって重要だからです。
なお、売却価格から取得費や譲渡費用などを差し引いて利益が出る場合は、売主に所得税・住民税などがかかります。代金をすべて使ってしまわず、納税分を見込んでおく必要があります。
贈与:受け取る相手の合意を得て、持分を無償で譲る
贈与は、代金を受け取らず、合意した相手に持分を譲る方法です。他の共有者だけでなく、共有者ではない親族や第三者に贈与することもできます。
たとえば、「実家に住んでいる兄に自分の持分をまとめたい」「自分の持分を子どもに譲りたい」といった場合に検討できます。相手が購入代金を用意する必要がない点が特徴です。
ただし、受け取る人には、贈与税や不動産取得税、登記費用などが生じる場合があります。持分を取得した後は、固定資産税や修繕費などの負担も関係してきます。
「無料だから相手にとって得になる」とは限りません。贈与する持分の価値と、取得時・取得後の負担を説明し、相手が納得したうえで進めましょう。
放棄:自分の持分を手放し、他の共有者に持分割合に応じて帰属させる
放棄は、自分の持分を手放し、他の共有者にその権利を帰属させる方法です。贈与とは異なり、受け取る人を自由に指定することはできません。
たとえば、A・B・Cの持分がそれぞれ2分の1・3分の1・6分の1で、Aが持分を放棄したとします。Aの持分は、BとCに従来の持分の比率である2対1で帰属します。結果として、Bの持分は3分の2、Cの持分は3分の1になります。
「Bだけに譲りたい」という希望があるなら、放棄ではなく、Bへの売却や贈与を検討します。
また、放棄で持分が増えた共有者には贈与税がかかる場合があります。登記の協力だけでなく、税負担についても事前に説明しておくことが重要です。
共有持分の譲渡方法はどれを選ぶ?希望と相手の意向で判断する
共有持分の譲渡方法は、「代金が必要か」「誰に譲りたいか」「相手の合意や協力を得られるか」で絞り込めます。そのうえで、税金・費用と手続きの進めやすさを確認しましょう。
| 現在の状況・希望 |
検討する方法 |
最初に確認すること |
| 他の共有者が買いたいと言っている |
共有者への売却 |
購入予算・資金調達・支払い時期 |
| 共有者と交渉しにくい、共有者に購入意思がない |
共有持分を扱う不動産会社への売却相談 |
買取か仲介か、売却価格・費用・契約条件 |
| 特定の人に無料で譲りたい |
贈与 |
相手の受諾・税額・取得後の負担 |
| 代金は不要で、他の共有者全員に持分が移ってもよい |
放棄 |
登記への協力・各共有者の税負担 |
それぞれの判断ポイントを詳しく説明していきます。
他の共有者に購入意思と資金があるなら、共有者への売却を検討する
他の共有者が持分を買いたいと考えており、代金も用意できるなら、共有者への売却が有力な選択肢です。
とくに、2人で共有している不動産について一方が他方の持分を買い取れば、買主は単独所有にできます。取得するメリットが明確なため、売却条件を話し合う余地があります。
ただし、「買いたい」という意思と、実際に支払えることは別です。次の3点を早めに確認しましょう。
- いくらまでなら購入できるか
- 自己資金で払うのか、融資が必要なのか
- いつまでに代金を支払えるか
価格について意見が分かれる場合は、不動産会社の査定や、必要に応じて不動産鑑定士の評価を判断材料にします。根拠のない希望額だけで交渉すると、親族間では感情的な対立にもつながりやすいためです。
共有者との交渉が難しいなら、共有持分を扱う不動産会社に売却を相談する
共有者が購入しない場合や、直接の交渉が難しい場合は、共有持分の取り扱い実績がある不動産会社に相談しましょう。
相談先には、その会社自身が買主になる「買取」と、別の買主を探す「仲介」があります。契約相手や費用の仕組みが異なるため、最初にどちらの提案なのか確認することが大切です。
| 相談方法 |
確認するポイント |
| 買取 |
提示価格、代金を受け取れる時期、契約解除の条件、売主に残る責任 |
| 仲介 |
想定する買主、販売期間、仲介手数料、売れない場合の対応 |
買取では、取得後の共有者との調整費用や保有リスクなどが価格に反映されます。そのため、不動産全体の価格に持分割合を掛けた金額で、そのまま売れるとは限りません。
また、「他の共有者の同意がいらない」ことは、「売却後も絶対に知られない」ことを意味しません。共有者への連絡方針も含めて確認し、金額だけでなく条件を比較しましょう。
特定の相手に無償で譲りたいなら、相手の税負担を確認して贈与を検討する
代金を受け取る必要がなく、譲りたい相手が決まっているなら、贈与を検討できます。ただし、相手が税金や維持費を負担できることが前提です。
贈与に同意してもらう前に、少なくとも次の内容を共有しましょう。
- どの不動産の、どれだけの持分を譲るのか
- 贈与税・不動産取得税・登記費用がどれくらいかかるか
- 取得後に固定資産税や修繕費などをどう負担するか
相手の税負担が大きい場合は、贈与だけにこだわらず、適正な価格での売買なども比較します。相続対策を目的とする場合も、単に生前に名義を変えれば節税になるわけではありません。贈与と将来の相続を通じた負担を税理士に確認しましょう。
対価も譲る相手の指定も不要なら、登記への協力を確認して放棄を検討する
代金を受け取らず、他の共有者全員に持分が移ってもよい場合は、放棄も選択肢になります。
ただし、相手が贈与を断ったからといって、放棄なら簡単に解決するとは限りません。放棄でも、登記への協力や他の共有者の税負担が問題になるためです。
判断する際は、次の3点を確認します。
- 他の共有者それぞれに、どれだけ持分が増えるか
- 持分が増える人に贈与税などがかかるか
- 持分移転登記に協力してもらえるか
協力が得られない見込みであれば、放棄の通知を送る前に、弁護士へその後の手続きと費用を相談しましょう。
ワンポイント解説
共有者全員が手放したい場合は、不動産全体の売却も検討する
共有者全員が売却に同意しているなら、自分の持分だけでなく、不動産全体をまとめて売る方法もあります。買主が単独で所有できるため、持分だけを売る場合より購入を検討する人の幅が広がります。
ただし、売出価格だけでなく、売却時期、居住者の退去、費用負担、代金の分配方法まで決めておくことが大切です。全員が売却に賛成していても、条件がそろわなければ取引は進められません。
共有持分の譲渡にかかる税金・費用|誰が何を負担する?
共有持分の譲渡では、売却する人、持分を取得する人、契約や専門家への依頼をする人で負担するお金が異なります。
まずは、方法ごとの主な税金と費用を整理しましょう。以下は、個人が共有持分を手放す場合を中心とした説明です。法人への贈与などでは課税関係が異なります。
| 方法 |
譲る側の主な税金 |
取得する側の主な税金 |
その他の費用 |
| 売却 |
利益が出る場合の所得税・復興特別所得税・住民税 |
不動産取得税、通常負担する登録免許税 |
紙の売買契約書の印紙税、仲介を利用する場合の仲介手数料、司法書士報酬など |
| 贈与 |
個人への通常の贈与では、原則として譲渡所得税は生じない |
贈与税、不動産取得税、通常負担する登録免許税 |
紙の贈与契約書の印紙税、司法書士報酬など |
| 放棄 |
個人間の通常の持分放棄では、原則として譲渡所得税は生じない |
贈与税、不動産取得税、持分移転登記の登録免許税 |
司法書士報酬、通知費用、必要に応じて訴訟費用など |
税金には控除・軽減措置などがあり、表に記載した税金が必ずすべて発生するわけではありません。また、登記費用などの実際の負担は当事者間で取り決めることができます。負担者と計算の考え方を、それぞれ詳しく説明していきます。
売却した人:売却益に対する所得税・住民税など
共有持分を売却して税務上の利益が出た場合、売却した人に所得税・復興特別所得税・住民税がかかります。売却代金の全額に税率を掛けるわけではありません。
課税対象となる譲渡所得=売却代金-取得費-譲渡費用-適用できる特別控除
取得費は、売却する持分に対応する購入代金や購入時の費用などです。建物については、所有期間中の価値の減少に当たる減価償却費を差し引きます。譲渡費用には、売却のために支払った仲介手数料などが含まれます。
税率は、売却した年の1月1日時点の所有期間で変わります。
| 所有期間 |
税率の合計 |
| 5年を超える場合 |
20.315% |
| 5年以下の場合 |
39.63% |
※所得税・復興特別所得税・住民税を合計した通常の税率です。
たとえば、売却代金が800万円、取得費が300万円、譲渡費用が50万円で、特別控除がない場合、譲渡所得は450万円です。長期譲渡所得に該当すれば、税額の目安は次のようになります。
800万円-300万円-50万円=譲渡所得450万円
450万円×20.315%=約91万4,000円
住宅ローンの残高は、そのまま取得費として差し引けるものではありません。「ローンを返したらお金が残らないので、税金もかからない」とは判断できない点に注意しましょう。
なお、居住用財産の3,000万円特別控除などを利用できる場合がありますが、配偶者や親子など特別な関係のある相手への売却は対象外です。
参考:国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」「短期譲渡所得の税額の計算」「マイホームを売ったときの特例」
贈与を受けた人:取得した持分の評価額などに応じた贈与税
個人から共有持分を贈与された場合、贈与税を負担するのは受け取った人です。
一般的な暦年課税では、その人が1月1日から12月31日までに受けた贈与の合計額から、基礎控除110万円を差し引いて計算します。110万円は、贈与する人ごとではなく、受け取る人1人につき年間で適用される金額です。
贈与税=(その年に受けた贈与の合計額-110万円)×税率-控除額
持分の贈与税評価額が500万円で、ほかに贈与を受けておらず、一般税率を適用する場合は、次のようになります。
(500万円-110万円)×20%-25万円=贈与税53万円
不動産は、原則として贈与税の評価方法に従って評価します。土地は路線価方式・倍率方式、家屋は固定資産税評価額を基礎とする方法などを用い、贈与する持分に対応する額を求めます。
買取業者の査定額と、贈与税を計算するための評価額は同じとは限りません。「売っても安い持分だから贈与税も安いはず」と考えず、税務上の評価を確認しましょう。
また、一定の要件を満たす親や祖父母からの贈与には特例税率が適用されます。相続時精算課税を選択している場合なども計算が異なります。
参考:国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」
放棄で持分が増えた人:取得した利益に対して贈与税がかかる場合がある
共有持分の放棄では、他の共有者が増えた持分を贈与によって取得したものとして扱われます。贈与契約を結んでいなくても、贈与税の対象になり得ます。
たとえば、贈与税評価額が合計900万円の共有不動産を3人で3分の1ずつ所有し、1人が持分を放棄するとします。放棄された300万円分の持分は、残りの2人に150万円ずつ帰属します。
各人が暦年課税を適用し、その年にほかの贈与がない場合、1人あたりの贈与税は次のとおりです。
(150万円-110万円)×10%=贈与税4万円
税金の有無は、各共有者が取得した持分の評価額や、その年に受けたほかの贈与などで変わります。放棄した人が一括して判断するのではなく、持分が増える人ごとに確認することが必要です。
参考:国税庁「相続税法基本通達 第9条関係・9-12「共有持分の放棄」」
持分を取得した人:不動産取得税と、通常負担する登録免許税
売買・贈与・放棄によって持分を取得した人には、不動産取得税がかかる場合があります。また、持分移転登記には登録免許税がかかります。
不動産取得税は、購入代金ではなく、原則として固定資産税評価額を基礎に計算します。共有持分だけの取得であれば、取得した持分に対応する額が基準です。
2027年3月31日までの土地・住宅の取得には原則3%、住宅以外の家屋には4%の税率が適用されます。宅地などの課税標準を2分の1とする特例や、住宅に関する軽減措置もあるため、単純な掛け算だけで納税額が決まるとは限りません。
参考:埼玉県「不動産取得税」
登録免許税は、原則として次のように計算します。
登録免許税=移転する持分に対応する固定資産税評価額×税率
| 持分移転の内容 |
主な税率 |
| 売買による土地の持分移転 |
1.5%(2029年3月31日までの軽減措置) |
| 売買による建物の持分移転 |
原則2%。住宅用家屋の軽減措置は要件を満たす場合に適用 |
| 贈与・放棄による持分移転 |
原則2% |
たとえば、土地全体の固定資産税評価額が1,000万円で、2分の1の持分を売買する場合、軽減税率1.5%による登録免許税は7万5,000円です。
売買では取得者が登録免許税を負担する取り決めが一般的ですが、法律上、共同で登記を受ける人には連帯して納付する義務があります。とくに贈与・放棄では、誰が実際に費用を出すかを先に決めておきましょう。
参考:国税庁「登録免許税の税額表」、e-Gov法令検索「登録免許税法」第3条
紙の契約書を作成する人:契約内容などに応じた印紙税
紙の売買契約書・贈与契約書を作成すると、原則として契約書の作成者に印紙税がかかります。共同作成した契約書については、作成者が連帯して納税義務を負います。
実際の取引では、売主と買主がそれぞれ保管する契約書について、各自が印紙代を負担する取り決めなどが行われます。
不動産の売買契約書に記載する金額が500万円を超え1,000万円以下であれば、軽減措置適用後の印紙税は1通5,000円です。贈与契約書など、契約金額の記載がない不動産譲渡契約書は1通200円となります。
なお、不動産売買契約書の軽減措置は、2027年3月31日までに作成される対象の契約書に適用されます。電子データのみで締結する契約は、原則として印紙税の課税対象ではありません。
参考:国税庁「印紙税額の一覧表」「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
仲介を依頼する人:売買が成立した場合の仲介手数料
不動産会社に仲介を依頼して売買が成立した場合は、依頼した人に仲介手数料が発生します。売主・買主の双方が仲介を依頼していれば、それぞれが契約に応じて負担します。
一方、不動産会社が直接買主となる買取で、別の仲介会社を利用しない場合は、仲介手数料は通常発生しません。
見積もりを比較する際は、「買取価格」だけでなく、別途請求される費用も確認してください。手数料や調査費などの名目があれば、内容と根拠、支払う時期を説明してもらいましょう。
司法書士に登記を依頼する人:司法書士報酬(当事者間で負担の取り決めが可能)
持分移転登記を司法書士に依頼すると、登録免許税などの実費とは別に、司法書士報酬がかかります。最終的に誰が負担するかは、依頼内容や当事者間の取り決めによります。
報酬額は、不動産の数、申請する登記の種類、必要書類の収集範囲などで変わります。住所変更登記や相続登記、抵当権抹消登記などを併せて行う場合は、その費用も確認しましょう。
不動産取引では、「登記費用」という見積もりに税金・証明書代・報酬がまとめて表示されることがあります。比較するときは総額だけでなく、内訳を確認すると負担を把握しやすくなります。
ワンポイント解説
譲る側の手取り額と、受け取る側の負担額を確認する
売却する場合は、代金から税金・手数料・必要なローン返済などを差し引き、最終的にいくら残るかを確認しましょう。
贈与・放棄では代金を受け取れず、持分を取得する人に税金や登記費用が生じる場合があります。無料で手放す方法が、双方にとって最も負担の少ない方法とは限りません。
また、相手の税金や費用を代わりに支払うと、その支払い自体が贈与と判断される場合があります。誰がいくら負担するかも含めて、税理士や司法書士に確認してから決めましょう。
共有持分を譲渡する前の準備と必要書類
どの方法を選ぶ場合も、最初に権利関係・費用・必要書類を確認します。名義や書類に問題があると、相手が決まっても登記を進められないことがあります。
- 登記事項証明書で、自分の持分と抵当権などを確認する
- 売却価格や税務上の評価額を調べ、費用を見積もる
- 方法に応じた登記書類と本人確認書類を準備する
それぞれ詳しく説明していきます。
登記事項証明書で持分割合・名義・抵当権を確認する
土地と建物の登記事項証明書を取得し、登記上の名義・持分割合・担保権を確認しましょう。登記事項証明書は、一般に「登記簿謄本」と呼ばれる書類です。
確認する主な項目は、次のとおりです。
| 確認する項目 |
確認する理由 |
| 所有者と持分割合 |
誰がどれだけの権利を持っているかを把握するため |
| 登記上の住所・氏名 |
現在の住所・氏名と異なる場合に、変更登記の要否を確認するため |
| 抵当権・根抵当権 |
どの不動産・持分が担保になっているかを確認するため |
| 差押えなどの記載 |
通常の取引を進めるうえで支障がないかを確認するため |
土地と建物で名義や持分割合が違うこともあります。「実家の持分は半分」といった記憶だけで判断せず、それぞれの登記を確認することが大切です。
また、登記簿に記載された抵当権の債権額は、現在のローン残高とは限りません。残高や返済条件は、金融機関の資料でも確認しましょう。
持分の価格や評価額を調べ、税金・費用を見積もる
売却を検討するなら査定価格、贈与・放棄を検討するなら取得者に生じる税金の概算を確認します。
ここで区別したいのが、次の3つの金額です。
- 売却価格:買主と合意して実際に取引する金額
- 固定資産税評価額:登録免許税や不動産取得税などの計算の基礎になる金額
- 贈与税評価額:贈与税の計算のために評価する金額
同じ持分でも、これらの金額は一致するとは限りません。売却価格は不動産会社、税額は税理士や税務署、登記費用は司法書士に確認すると整理しやすくなります。
共有持分の査定を依頼するときは、居住者の有無、賃貸借契約、共有者間の取り決めなども伝えましょう。価格に関わる情報を後から伝えると、査定額や契約条件の見直しにつながることがあります。
譲渡方法に応じて登記識別情報・印鑑証明書などの書類をそろえる
持分移転登記では、権利を移す理由を示す書類と、当事者の本人確認・住所確認などの書類を用意します。
一般的に確認・準備する書類は次のとおりです。実際に必要な書類は、申請方法や登記の状況によって異なります。
| 書類 |
主な用途・準備する人 |
| 登記事項証明書 |
所有者・持分割合・抵当権などの事前確認に使用 |
| 登記識別情報または登記済証 |
原則として持分を手放す人が用意 |
| 印鑑証明書 |
原則として持分を手放す人が用意。登記申請では作成後3か月以内のものが必要となるのが通常 |
| 住民票などの住所証明情報 |
原則として持分を取得する人が用意。既存の登記情報などにより扱いが異なる場合がある |
| 固定資産評価証明書など |
登録免許税の計算に必要な評価額の確認に使用 |
| 登記原因証明情報 |
売買・贈与・放棄による権利移転の内容と日付などを示す書類 |
| 本人確認書類・委任状 |
司法書士による本人確認や登記の代理申請などに使用 |
売買契約書・贈与契約書と、登記に必要な登記原因証明情報は、用途を分けて確認しましょう。契約書があれば必ずそのまま登記申請に使えるわけではありません。
登記識別情報などを紛失している場合も、別の本人確認手続きなどで対応できることがあります。再発行はされないため、紛失に気づいた時点で司法書士に相談してください。
参考:法務局「不動産登記の申請書様式について」
共有持分を譲渡する手続き|売却・贈与・放棄の流れ
売却・贈与は相手との契約を基に進め、放棄は意思表示を基に進めます。いずれも、持分移転登記と必要な税務手続きまで見据えて準備することが大切です。
| 方法 |
主な流れ |
| 売却 |
買主と条件を決める→売買契約を結ぶ→代金を精算する→持分移転登記を申請する |
| 贈与 |
相手の受諾を得る→贈与契約を結ぶ→持分移転登記を申請する |
| 放棄 |
帰属先・税負担・登記の進め方を確認する→放棄の意思表示をする→持分移転登記を申請する |
| 手続き後 |
それぞれの立場に応じて、税金の申告・納付を行う |
それぞれ詳しく説明していきます。
売却:買主と条件を決め、売買契約・代金の精算・持分移転登記を行う
売却では、価格だけでなく、支払い方法と登記の時期、売主・買主の責任まで合意してから契約します。
- 買主を探し、価格や取引条件を協議する
- 売買する不動産と持分割合、代金、支払い期限などを契約書に記載する
- 司法書士などが登記に必要な書類を確認する
- 残代金の支払いと登記申請を連動させて進める
- 登記完了後、持分が正しく移転しているか確認する
不動産の売買実務では、司法書士が登記に必要な書類を確認し、残代金の支払いと登記申請を同じ決済の機会に進める形が一般的です。代金を払ったのに登記ができない、名義を移したのに代金を受け取れない、といった事態を防ぐためです。
親族間の売買でも、契約書と振込記録を残しましょう。口約束や現金の手渡しだけでは、後から金額・支払いの有無を確認しにくくなります。
贈与:相手の受諾を得て、贈与契約・持分移転登記を行う
贈与では、相手が受け取る意思を確認し、税金・登記費用の負担を決めてから契約します。
- 贈与する持分と、相手に生じる税金・費用を確認する
- 相手の受諾を得て、贈与契約書を作成する
- 必要書類をそろえ、贈与を原因とする持分移転登記を申請する
- 登記の完了と、贈与税などの申告の要否を確認する
贈与契約書には、当事者、対象の不動産、譲る持分割合、贈与の時期、費用負担などを記載します。「自分の持分を全部譲る」のか「一部だけ譲る」のかも明確にしましょう。
なお、相手に住宅ローンなどの債務を引き受けてもらう贈与は、通常の無償贈与とは税務上の扱いが異なる場合があります。持分と借金を一緒に移す場合は、契約前に金融機関と税理士へ確認してください。
参考:国税庁「負担付贈与に対する課税」
放棄:他の共有者への意思表示と、放棄を原因とする持分移転登記を行う
放棄では、他の共有者に放棄の意思を明確に伝え、その内容に基づいて持分移転登記を進めます。
- 他の共有者と、その人たちに帰属する持分割合を確認する
- 税負担と登記の進め方を説明し、手続きへの協力を確認する
- 対象の不動産・持分を特定して、放棄の意思表示をする
- 必要書類をそろえ、放棄を原因とする持分移転登記を申請する
通知の内容と到達を証拠として残すため、配達証明付きの内容証明郵便などを利用する方法があります。ただし、内容証明郵便を使うこと自体が、すべての持分放棄で法律上必須というわけではありません。
また、通知を送っても登記が自動的に変わることはありません。他の共有者が協力しない場合は、登記手続きへの協力を求める訴訟などを検討します。対立がある場合は、通知内容も含めて弁護士に相談するとよいでしょう。
手続き後:売却・贈与・放棄の内容に応じて税金の申告・納付を行う
登記が終わっても、必要な税金の申告・納付は別に行います。売却した人と、贈与・放棄によって取得した人では、確認する税金が異なります。
| 立場 |
確認する手続き |
原則的な時期 |
| 持分を売却した人 |
譲渡所得に関する所得税の確定申告 |
売却した年の翌年2月16日~3月15日 |
| 贈与・放棄で持分を取得した人 |
贈与税の申告 |
取得した年の翌年2月1日~3月15日 |
| 持分を取得した人 |
不動産取得税の申告や軽減申請、納付 |
所在地の都道府県の案内・納税通知書に従う |
※申告期間は、土日祝日などにより変わる場合があります。
売却益が出ていなくても、特例の適用に申告が必要な場合があります。また、贈与税も基礎控除や選択した課税制度などによって申告の要否が異なります。
売買・贈与の契約書、代金の振込記録、取得時の契約書、諸費用の領収書などは保管しておきましょう。
参考:国税庁「贈与税の申告と納税」
共有持分を譲渡する前に確認したい注意点
共有持分を譲渡するときは、価格の決め方だけでなく、借金・共有者との関係・登記・相続の状況も確認します。
- 親族間の安すぎる売買は、贈与税の問題につながる場合がある
- 持分を譲っても、住宅ローンや保証債務は自動的にはなくならない
- 第三者への譲渡後は、その人と残った共有者との共有関係になる
- 登記を放置すると、取得者が権利を守れない場合がある
- 相続が関係する場合は、誰がどの権利を持つかを先に整理する
それぞれ詳しく説明していきます。
親族間でも著しく安い価格で売ると、買主に贈与税がかかる場合がある
個人間で時価より著しく安く共有持分を売ると、時価と売買代金の差額が贈与とみなされる場合があります。
たとえば、「贈与税を避けたいので、実際には価値のある持分を1円で売る」という方法でも、税金の問題がなくなるわけではありません。
著しく低い価格かどうかは、財産や取引の事情に応じて判断されます。「時価の半分以上なら必ず大丈夫」といった一律の基準で判断することはできません。
親族間の取引では、不動産会社の査定書や価格を決めた経緯を残し、税理士に妥当性を確認しましょう。契約上は売買でも、代金が実際に支払われていなければ、別の税務上の問題が生じます。
参考:国税庁「個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」
住宅ローンや保証債務は、持分を譲渡しただけではなくならない
不動産の持分と、住宅ローンを返す義務は別です。売却・贈与・放棄によって名義が変わっても、借入人や連帯保証人の責任が自動的になくなるわけではありません。
確認するのは、次の3点です。
- 誰が借入人・連帯債務者・連帯保証人になっているか
- 抵当権が不動産全体に設定されているか、特定の持分だけに設定されているか
- 金融機関との契約に、名義変更や譲渡に関する制限があるか
抵当権が付いたままでも法律上の権利移転が可能な場合はありますが、買主は担保付きの権利を取得することになり、取引は難しくなります。無断の譲渡がローン契約に違反すれば、一括返済を求められるおそれもあります。
売却代金で完済できるかだけでなく、担保を外せるか、債務者・保証人を変更できるかを金融機関に確認しましょう。
第三者に譲渡すると、その相手と残った共有者との共有関係になる
第三者に持分を譲ると、その第三者が新しい共有者になります。売主が共有関係から抜けても、残った共有者にとっては、利用や管理について話し合う相手が変わります。
買主は、取得後に他の共有者へ持分の売買を提案したり、利用状況の整理や共有物分割を求めたりする可能性があります。一方、持分を買ったという理由だけで、居住している共有者を当然に退去させられるわけではありません。
事前の説明で対立を避けられる場合は、共有者に意向を伝えることも検討しましょう。ただし、強い対立や威圧的な言動がある場合まで、無理に直接交渉する必要はありません。
売却を依頼する不動産会社には、既存の利用合意や紛争の有無を伝え、共有者への連絡方針を確認してください。
持分移転登記をしないと、取得した権利を第三者に主張できない場合がある
売買や贈与が成立しても、登記をしなければ、取得した権利を第三者に主張できない場合があります。
民法第177条は、不動産の権利の取得・変更などについて、登記がなければ第三者に対抗できないと定めています。契約書だけを作って名義変更を放置すると、二重譲渡や差押えなどが起きた際に問題になります。
また、登記上の名義が残っていると、固定資産税の課税や行政からの連絡にも影響することがあります。ただし、「登記していないから所有権が一切移っていない」とは限りません。権利の移転と登記の役割を分けて考える必要があります。
契約の段階で登記申請の日程を決め、完了後は移転した持分割合まで確認しましょう。
参考:e-Gov法令検索「民法」第176条・第177条
相続登記や遺産分割が済んでいない場合は、先に権利関係を確認する
登記名義が亡くなった人のまま、または遺産の分け方が決まっていない場合は、通常の共有持分の譲渡と同じように進めないでください。
まず、遺言の有無、相続人、遺産分割の状況、登記名義を確認します。相続した持分を売却するために、前提として相続登記が必要になる場合があります。
また、特定の不動産の共有持分を譲ることと、相続財産全体に対する「相続分」を譲ることは別の手続きです。遺産分割前の権利を処分すると、その後の相続人間の調整が複雑になることがあります。
相続手続きの途中で手放したい場合は、司法書士や弁護士に、譲渡できる権利の範囲と手続きの順序を確認しましょう。
譲渡や放棄が進まないときは、共有物分割による解決も検討する
譲渡先が見つからない場合や、共有者間の条件がまとまらない場合は、共有物分割によって共有関係を整理する方法もあります。
共有物分割は、自分の持分を誰かに譲るだけでなく、不動産全体をどのように分けるかを決める手続きです。ここでは、次の3点を整理します。
- 共有物分割の基本的な仕組み
- 土地・売却代金・金銭によって分ける方法
- 話し合いがまとまらない場合の裁判手続き
それぞれ詳しく説明していきます。
共有物分割は、共有している不動産の分け方を決める手続き
共有物分割は、共有者間で財産を分け、共有関係の解消を目指す手続きです。共有者は原則として分割を求めることができます。
最初から裁判をする必要はなく、まずは共有者間で分け方を話し合います。ただし、分割を求められることと、自分が希望する方法や金額が必ず認められることは別です。
また、有効な共有物分割禁止の合意がある場合などは制限があります。遺産分割前の相続財産についても、通常の共有物分割ではなく遺産分割の手続きによる場面があるため、確認が必要です。
参考:e-Gov法令検索「民法」第256条・第258条・第258条の2
分け方には、土地を分ける・売却代金を分ける・取得する人が金銭を支払う方法がある
共有物分割では、不動産の形状や利用状況、共有者の希望と資金力に応じて分け方を検討します。
| 方法 |
内容 |
主な確認事項 |
| 現物分割 |
土地を分筆するなどして、それぞれが単独所有する |
分割後の価値・接道・面積・測量費用。分筆だけで共有名義が解消するわけではない |
| 換価分割 |
不動産を売却し、代金を分ける |
売却方法・価格・費用・代金の分配。裁判では競売になる場合がある |
| 価格賠償による分割 |
不動産を取得する共有者が、ほかの共有者に持分に見合う金銭を支払う |
不動産の評価と、取得する共有者の支払い能力 |
土地を分ける場合も、面積だけを持分割合に合わせれば公平とは限りません。道路に面する長さや土地の形によって、分割後の価値や建築のしやすさが変わるためです。
また、価格賠償による分割は「代償分割」と呼ばれることもありますが、遺産分割における代償分割とは税務上の扱いが異なる場合があります。金銭を受け取る側の課税も含めて確認しましょう。
話し合いで解決しない場合は、弁護士に裁判手続きと費用を相談する
分け方の協議がまとまらない場合や、協議そのものができない場合は、裁判所に分割を求めることを検討します。
ただし、裁判をすれば必ず希望価格で持分を買い取ってもらえるわけではありません。不動産の状況や支払い能力などによっては、競売による換価が選ばれる場合もあります。
弁護士には、次の内容を確認しましょう。
- 希望する分割方法が認められる見込み
- 弁護士費用・裁判費用・不動産鑑定費用などの見積もり
- 解決までの見通しと、長期化する要因
- 持分だけを売却する場合との手取り額や負担の違い
共有物分割は、売却や放棄と比較しながら検討する選択肢です。必ずほかの方法をすべて試してからでなければ相談できないわけではありません。
まとめ|共有持分の譲渡は相手の意向・税負担・手続きを確認して選ぶ
共有持分を譲渡・手放す方法には、売却・贈与・放棄があります。自分の持分だけなら原則として他の共有者の同意なしで処分できますが、相手との合意や登記への協力が必要になる場面は異なります。
- 代金を受け取りたいなら、他の共有者や第三者への売却を検討する
- 特定の相手に無償で譲りたいなら、受諾と税負担を確認して贈与を検討する
- 対価も相手の指定も不要なら、他の共有者への影響と登記への協力を確認して放棄を検討する
方法を決める前に、譲る側の手取り額だけでなく、受け取る側の税金・費用と、手続きを最後まで進められるかを確認しましょう。
売却価格や買主探しは不動産会社、登記は司法書士、税金は税理士、共有者との争いは弁護士が主な相談先です。
売却を検討していて、「自分の持分を扱う業者が分からない」「提示された条件をどう比較すべきか迷う」という方は、訳あり物件の買取業者探しを支援するイエコンにご相談ください。価格だけでなく、費用や契約条件まで確認し、ご自身の状況に合う手放し方を検討することが大切です。