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共有持分の買取請求とは?条件や具体的な流れを解説!

共有持分の買取請求とは?条件や流れ、請求された際の対処法も解説

共有持分の買取請求とは、共有不動産の共有者に対して自分の共有持分を買い取ってもらう、あるいはこちらが買い取ることを求める手続きです。買取請求の方法にも種類があり、大きく分けて「当事者間の任意交渉による買い取り」と「民法に基づく法的な買取請求(持分取得権の行使)」の2つのアプローチがあります。

共有持分の買取請求を実現する2つの方法
方法 概要 要件・実務上のハードル
任意交渉による売買 当事者同士の話し合いで価格や条件に合意し、持分を「買い取る」または「売却する」方法。
  • 相手に交渉に応じる意思があり、合意できること
  • ※実務上は、相手が対象不動産に居住している場合など、感情的な対立から交渉すら始まらないケースも少なくありません。
民法253条2項に基づく買取請求 一定の要件を満たすことで、相手の同意がなくても強制的に持分を取得できる法的手段(民法253条2項)。正式には「持分取得権」と呼びます。
  • あなたが固定資産税や維持修繕費などの管理費用を立て替えていること
  • 相手がその費用の負担義務を1年以上怠っていること
  • 「相当の償金(持分の適正価格)」を支払うこと
  • ※実務上は「1年の起算点」を明確にするため、内容証明郵便による確実な費用請求と証拠保全が不可欠です。

まずは、相手と条件が合えば最も円満な解決となる「任意交渉による売買」を検討するのが基本です。しかし実際は、共有者間に長年のしこりがあったり相手がその不動産を単独で占有していたりして、交渉のテーブルに着かせること自体が難しいケースも多々あります。

そこで検討すべき2つ目の方法が、「民法上の強制力を行使した買取請求(民法253条2項)」です。これは、上記の表に記載した特定の要件を満たした場合、相手の合意がなくとも一方的な意思表示で持分を取得できる権利です。

ただし、権利を行使して持分を取得できる状態であっても、実務上は以下の手順を踏み、最終的には相手の協力を得るか、裁判手続きを経る必要があります。

  1. 【準備】立替費用の領収書など客観的な証拠を集める
  2. 【催告】内容証明郵便で肩代わりした管理費用を請求する(起算点の確定)
  3. 【待機】費用請求の到達から1年が経過するのを待つ
  4. 【評価】買い取る共有持分の適正価格(相当の償金)を算定し、資金を用意する
  5. 【行使】持分買取の意思表示を行うとともに、対価(償金)を提供する
  6. 【登記】持分移転登記を行う(相手が協力しない場合は調停・訴訟へ)

ここで不動産の専門家としてお伝えしたいのは、制度上は「意思表示と償金の支払い」をもって法的に持分は移転するという建前ですが、実際の持分移転登記には相手の協力(実印と印鑑証明書など)が必要になるという実務上の壁です。相手が登記手続きを拒否した場合は、結局のところ「持分移転登記請求訴訟」を起こして勝訴判決を得なければならず、解決までに時間と弁護士費用等のコストがかかります。

さらに資金面でのハードルも存在します。共有持分は担保としての評価が極めて低いため、金融機関の一般的な住宅ローンや不動産担保ローンを利用できないケースが大半です。そのため、買取資金(償金)を現金で用意しておくことが前提となります。

本記事では、共有持分における買取請求の概要や具体的な流れ、法的な要件や訴訟リスクを含めた実務上の注意点について詳しく解説します。

弁護士  菅野 正太(かんの しょうた)
監修
菅野 正太(弁護士)

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共有持分の買取請求は2種類

共有持分の買取請求は、大きく分けて「当事者同士の交渉による方法」と「民法上の強制力を行使する方法」の2種類に整理できます。

共有持分の買取請求の主な方法

共有持分を取得したい場合、まずは当事者間の話し合いによる解決を試みるのが一般的です。しかし、交渉が成立しない場合や、共有者が費用負担義務を果たしていない場合は、民法に基づく法的手段を検討することになります。

当事者同士の交渉による共有持分の買取請求

共有持分を整理する際、まず第一の選択肢となるのが当事者間での直接交渉です。これは単に「穏便だから」という理由だけでなく、実務上のコストや時間を最小限に抑え、スピーディに単独名義へ移行するための最も合理的な手段と言えます。

合意さえできれば、裁判所を通さずとも、売買価格や支払い時期を双方の事情に合わせて柔軟に決められる点が大きなメリットです。

しかし、不動産買取の現場に長く身を置く立場からお伝えすると、この「話し合い」こそが最も難航するプロセスでもあります。親族間であれば、過去の相続時のしこりや感情的な対立が再燃しやすく、客観的な「相場」とはかけ離れた高い価格を要求されるケースも少なくありません。

実務の現場での肌感覚では、交渉がスムーズに進むかどうかは「相手に売却のメリットを提示できるか」にかかっています。たとえば、持分を持ち続けることで発生する固定資産税の負担や、将来の相続トラブルのリスクを丁寧に説明し、納得感を引き出すプロセスが不可欠です。

共有者との交渉で最も注意すべきなのは「いつまで交渉を続けるか」という見極めです。実務上、最初の1、2回の接触で相手の反応を確認した時点で、交渉の成否は見えています。あくまで目安の期間ではありますが、一ヶ月もしないうちに相手に譲歩の意思がないと判断できれば、いたずらに時間を浪費せず、次に説明する「法的手段」へ舵を切るのが現実的な流れです。

共有持分問題は時間が経過するほど権利関係が複雑化し、解決の難易度が跳ね上がることが理由です。また、親族間だからといって極端に安い価格で売買すると、後から税務署に「贈与」とみなされ、思わぬ税金がかかるリスクもあります。

このように、交渉による解決は自由度が高い反面、相手から同意を得るための戦略と、実務的なリスク管理の双方が求められるプロセスの連続なのです。

民法上の強制力を行使する「共有持分買取請求権」

もし、共有者が固定資産税や管理費などの維持費を1年以上滞納している場合は、民法253条2項に基づく「共有持分買取請求権」にて相手の持分を取得できるケースがあります。

共有持分買取請求権とは、固定資産税や管理費などの維持費を1年以上滞納している共有者に対し、あなたが「相当の代金(償金)」を支払うことで、相手の合意がなくてもその持分を取得し、名義を一本化できる法的な制度です。

第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。e-Gov法令検索 第253条【共有物に関する負担】

法律で定められた下記の条件を満たして「買い取ります」という意思表示をすれば、相手が拒否していても持分を取得できる可能性があるため、解決に向けた強力な後押しとなります。

項目 必要な条件(要件)
費用の肩代わり 固定資産税や維持費などを、あなたが立て替えて支払っていること
滞納期間 相手が費用の支払いを1年以上怠っていること
証拠の有無 支払いを催告した事実や立替の記録が、客観的な資料で残っていること

ただし、現場でこの手続きを進めるには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。

この制度はあくまで「義務を果たさない共有者との関係を解消するもの」であり、相手に非があるからといって安く買い叩けるわけではありません。支払う代金は、原則として不動産鑑定士などが算出した「時価」が基準となります。そのため、手続きを検討する際は、あらかじめ適正な価格での買取資金を準備しておくことが、スムーズな解決への第一歩となります。

また、実務において最も重要になるのが、滞納期間を客観的に証明するための「準備」です。単に「払ってくれない」と主張するだけでなく、事前に内容証明郵便などで支払いを促し、そこから正確に1年が経過したという記録を積み上げる必要があります。

このように、民法253条2項による買取請求は、共有者が費用負担の義務を履行しない場合に、停滞した共有関係を法的に整理するための正当な手段です。「いつ、どのような準備を始めるか」という見通しを立てることで、長年の悩みだった共有関係を確実に解消へと導くことができます。

民法上の共有持分買取請求権(民法253条2項)を行使する要件

民法上の共有持分の買取請求を行うには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 請求する側が管理費用を肩代わりしている
  • 請求される側が1年以上、支払い義務を履行していない

請求する側が管理費用を肩代わりしている

民法上の共有持分の買取請求を行うには、管理費用を滞納している人の支払いを、請求する側が肩代わりしている必要があります。代表的な管理費用は、次の通りです。

  • 固定資産税や都市計画税などの租税公課
  • 火災保険料や地震保険料
  • 建物の修繕費、清掃費、設備点検費、除草費などの維持管理費
  • マンションの管理費や修繕積立金
  • 水道光熱費の基本料金(維持管理に必要な場合)

たとえば、管理費用の滞納者がいた場合でも「自分には関係ない」と決め込んで、一切肩代わりしていない場合は買取請求権の主張が認められにくくなります。

なお、共有名義不動産の管理費用は地方税法第10条や民法第253条に基づき、共有者全員に負担義務があります。「自分の分は支払っているから問題ない」と考えていたとしても、原則として共有者は滞納者の分を立て替えざるを得ないのが実情です。

肩代わりせず滞納状態を放置すると、滞納者以外の共有者にも財産の差し押さえが及ぶ可能性や、延滞金が発生するリスクがあります。

請求される側が管理費用の支払いを1年以上履行していない

請求される側が前述した管理費用の支払いを1年以上履行しなかった場合、民法上の共有持分の買取請求権を行使できます。ただし、「今月だけ支払いが遅れている」といった程度の滞納では足りません。

1年のカウントが始まる起算日は「肩代わり分を請求した日」です。そのため、内容証明郵便を利用して請求することで、「いつ請求したか」がわかる証拠を明確に残すことが大切です。

内容証明郵便とは、郵便局が郵便文書の内容や差出人・宛先人を証明するサービスです。万が一裁判になった際も、通知の事実や日付を証明する有効な証拠として扱われます。

実際に共有持分問題では「口頭では請求していたが証拠が残っていない」という理由で、後から立証に苦労するケースも少なくありません。共有者との関係が悪化している場合ほど、早い段階から証拠を整理しながら進めることが重要です。

共有持分の買取請求権を行使する流れ

買取請求権を行使して共有持分を買い取る流れは、次の通りです。

  1. 買取請求権を行使するため、まず証拠を集める
  2. 肩代わりしていた管理費用を請求する
  3. 費用請求から1年後、買取請求を通知する
  4. 買い取る共有持分の価格を決める
  5. 必要に応じて調停・訴訟を行う
  6. 対価を支払う
  7. 持分移転登記を行う

買取請求権を行使するため、まず証拠を集める

共有持分の買取請求権を行使するためには、「相手が負担義務を果たしていないこと」と、「自分が立替払いしていること」を客観的に証明できる状態にしておくことが重要です。

具体的に整理しておくべき主な資料は以下のとおりです。

  • 固定資産税の納税通知書
  • 管理費・修繕積立金の請求書
  • 支払いに関する領収書
  • 通帳の入出金履歴
  • 共有者へ請求したメール・LINE・手紙など

実務上も「支払っていたが証拠が残っていない」という理由で買取請求が進まないケースを見かけることもあります。特に親族間では口頭で済ませてしまうケースも多く、後からトラブル化すると「言った・言わない」になりやすいため、早い段階から記録を残しておくことが重要です。

肩代わりしていた管理費用を請求する

管理費用の滞納者に、肩代わりしていた管理費用を請求します。
この請求の事実がなければ、滞納期間がいくら長くなっても、原則として買取請求権を行使できません。

請求日を明確にするには、配達証明付きの内容証明郵便にて請求書を送り、「〇年〇月〇日に請求し、そこから1年が経過した」という客観的な記録を残しましょう。内容証明郵便があれば、仮に訴訟に発展しても「いつ・どのような請求をしたか」を示す有力な証拠となります。

費用請求から1年後、買取請求を通知する

管理費用の肩代わり分を請求してから1年以上経過しても支払いがない場合は、民法253条2項に基づく共有持分の買取請求権を行使できる条件が整います。
この段階で、滞納者に対して買取請求権を行使する旨の意思表示をしましょう。

買取請求権の行使について通知する場合も、内容証明郵便を利用するのが一般的です。相手が書類の受け取りを拒否したり、共有持分を手放す意思を見せなかったりする可能性があるためです。

買取請求の過程でトラブルを回避するためにも、こちら側が「買取請求権を行使する」という意思表示をした事実を残すことが大切です。

通知書には「買取請求する理由」や「対象となる共有持分」などを記載します。また、相手が態度を改めて買取代金を受け取る可能性もあるため、いつでも支払えるよう準備をしておきましょう。

買い取る共有持分の価格を決める

共有持分をいくらで買い取るかは、原則として当事者同士の協議で決定します。ただし、民法第253条 2項では「相当の償金を支払って取得できる」と明記されており、相手側に否があるからといって不当に安い金額で買い叩けるわけではありません。

買取価格は実務上「共有名義不動産全体の市場価格 × 共有持分割合」を基準にするケースが大半です。

たとえば、共有名義不動産全体の市場価格が4,000万円、滞納者の共有持分割合が30%だった場合、買取価格は1,200万円がひとつの目安となります。

弊社へのご相談でも「共有持分の買取相場はいくらくらいになるのか?」といったご質問をいただくことがあります。そのような場合には、一般的な目安としてこの計算式をベースにご説明することが多いです。

共有不動産全体の市場価格は、下記の3つを基準に調べます。

共有持分の買取価格を決める3つの方法
共有名義不動産の市場価格の調べ方 概要
不動産業者の査定額を基準にする ・不動産業者の無料査定を利用し、現時点での市場価格を把握する方法
・無料ではあるものの、不動産の専門家による査定を受けられる
・1社だけでなく複数社の査定を受けておおまかな相場を把握することで適正価格の判断精度が高まる
固定資産税評価額を基準にする ・納税通知書や固定資産課税台帳の閲覧などで固定資産税評価額を基準にする
・土地なら、国土交通省が毎年発表する公示価格の約70%、建物は現在価値で再び建てると想定した際の再建築価格の50~70%程度になる
・最新の市場動向が反映されにくく、実際の売買価格とズレやすい
不動産鑑定士の鑑定価格を基準にする ・不動産鑑定の国家資格者である「不動産鑑定士」に依頼して査定してもらう方法
もっとも正確な査定額を算出できるため、基準にすれば買取価格で揉めることが少なくなる
・費用として20万円以上、不動産によっては100万円以上の費用がかかるので注意が必要

合意が取れず訴訟に移行した場合は、不動産鑑定士の鑑定価格を採用するのが一般的です。

なお、買取価格を不当に安くして当事者同士で合意した場合、税務署から「実際の相場との差額分の贈与があった」と見なされ、差額分の贈与税が課せられるリスクがあります。

たとえば、市場価格が1,000万円の共有持分を100万円で買い取った場合は、差額の900万円に対して贈与税が数百万円程度かかる可能性があります。

このような税金トラブルを防ぐためにも、自分たちだけで価格を決めず、専門家の意見を取り入れて適正な価格を設定するのがよいでしょう。

場合により調停・訴訟を行う

当事者間で買取価格や手続きについて合意できない場合は、調停や訴訟に移行して買取請求を進めます。

調停とは、裁判所に設置された調停委員会が仲介役となり、当事者同士の話し合いによる解決を目指す手続きです。第三者が介在することで感情的な対立を避けながら合意点を探れるため、特に買取価格の妥当性について意見が分かれている場合に有効です。

制度上、共有持分の買取請求をめぐる手続きは必ずしも調停から行う必要はなく、最初から訴訟を提起することも可能です。そのうえで、実務上は当事者間の関係性や交渉状況によって、調停から進めるケースと初めから訴訟を選択するケースに分かれます。

たとえば、共有者同士で話し合いできる余地がある場合は、まず裁判所の調停手続きを利用し、第三者を交えながら解決を目指すのが現実的な方法です。調停は訴訟に比べて手続き負担や費用を抑えやすく、柔軟な話し合いがしやすい点が特徴です。

一方で「共有者との話し合いが難しい」「連絡が取れない」など、調停不成立となる可能性が高いことが想定される場合、初めから訴訟するケースも見られます。調停と訴訟のどちらを選択するかは、共有者との関係性や交渉状況を踏まえて判断されるのが一般的です。

訴訟では、不動産鑑定士による鑑定結果を基準として裁判所が適正な買取価格を決定し、持分の移転登記手続きの履行などを命じる判決を下します。

調停や訴訟の手続きを行うには、管轄の裁判所へ調停申立書または訴状を提出する必要があります。あわせて、固定資産評価証明書やこれまでの交渉経緯を示す資料、管理費用の滞納や肩代わりの事実を証明する証拠資料などを揃えなければなりません。

なお、調停や訴訟を行う過程で、以下の費用が発生する可能性があります。

調停・訴訟にかかる主な費用と発生ケース
費用の種類 発生するケース
裁判所に納める印紙代などの実費 調停申立てや訴訟提起を行う際に必ず発生(収入印紙・郵便切手代など)
弁護士への依頼料 交渉・調停・訴訟対応を弁護士に依頼する場合に発生
不動産鑑定士による鑑定費用 買取価格に争いがあり、裁判所が鑑定を必要と判断した場合に発生

調停や訴訟における法的主張の組み立てや書面作成は専門性が高いため、弁護士に依頼することを検討してください。弁護士に依頼する際は、まず見積もりを取り、手続きにかかる総費用と取得できる持分の価値を十分に比較検討した上で、具体的な手続きに進むかどうかを判断しましょう。

対価を支払う

当事者同士の話し合いや調停・訴訟で合意した買取価格で、相手方の共有持分を買い取ります。持分の買取は無償で取得できるわけではなく、あくまでも「相当の償金(対価)を支払うこと」を前提としています。

共有持分は通常の不動産よりも価格が安い傾向にあるものの、それでも数百万円~数千万円の支払いが必要になるケースが少なくありません。

なお、共有持分は担保価値が低く、買取時に住宅ローンが使えないケースが多いので注意が必要です。そのため、実務上は自己資金による支払いとなることが一般的です。

もし、自己資金の確保が難しい場合は、不動産を担保にお金を貸す「不動産担保ローン」の利用を検討しましょう。特に、持分買取後に単独所有となる見込みがある場合や、他に担保となる不動産がある場合には、融資を受けられるケースもあります。

ただし、不動産担保ローンは金利が高めに設定される傾向があるため、条件を十分に比較・検討したうえで利用することが重要です。不動産担保ローンの審査が必ず通るとは限らないので、原則としては現金での支払いになることを想定しておきましょう。

ここで実務上注意すべきなのが、相手が買取に納得せず代金の受け取りを拒否する、あるいは振込先口座を教えないというケースです。このような場合、単に「支払う意思がある」というだけでは、買取請求権の要件を満たしたことにはなりません。

その際は、法務局の「供託」という制度を利用し、国に対して代金を預ける方法が検討されます。供託を行うことで、法律上は「相手へ支払ったのと同じ効果」が認められるため、代金の受け取りを拒否されたときの選択肢として有効です。

持分移転登記を行う

買い取った共有持分の所有権を法的に主張するためには、「持分移転登記」で買い取った共有持分の名義を自分に変更します。自分と相手方の共同申請になるため、協力が必要である旨を事前に伝えておきましょう。

なお、登記手続きは専門知識が必要かつ、不備が許されない厳格な手続きです。もし、個人情報の誤字脱字や持分に関する情報の記載を誤ると、その情報を修正する「更正登記」が必要になります。

更正登記をするにも専門知識や手間がかかるため、登記手続きは登記実務の専門家である司法書士に依頼するのが一般的です。

ワンポイント解説

管理費用を1年以上滞納する相手であることを踏まえると、登記手続きにも非協力的な態度を取る可能性もあります。万が一、相手が登記に協力してくれない場合は、「所有権移転登記手続請求訴訟」を提起し、自分単独で登記手続きが進められるように争う必要があります。

とはいえ実務上の経験を踏まえると、買取請求の要件を満たしている限り、登記に協力しない側が裁判で勝てる見込みはほとんどありません。そのため、相手方に対しては「もし裁判に発展した場合、最終的に登記が強制されるだけでなく、敗訴した側には弁護士費用や遅延損害金などの余計な金銭的負担が生じるリスクがある」という客観的な事実を冷静に伝えることが有効です。

裁判のデメリットを理解してもらうことで、結果的に相手方が任意での協力に応じてくれるケースも少なくありません。

伝え方によってはトラブルの火種となる可能性もあるので、具体的な請求方法や法的対応については、弁護士などの専門家へ相談しながら進めるのが確実です。

自分が共有者から持分の買取請求をされた際の対処法

「自分は売りたくないけど、他の共有者から買取請求されている」という人もいるかと思います。

ここで整理しておきたいのが、相手からの申し出が「単なる買取の打診」なのか、「法定要件を満たした買取請求権の行使」なのかという点です。単に「持分を買い取ってほしい」とお願いされているだけであれば、当然ながら応じる義務はありません。価格や条件に納得できなければ拒否することも可能です。

一方で、ここまで解説した「共有持分買取請求権」による買取請求を受けた場合、共有不動産を現状のまま維持し続けることは、実務上きわめて難しいといえるでしょう。

なぜなら、共有持分買取請求権は民法253条2項に基づく請求であり、法定要件を満たしていれば売却を拒否することはできないからです。

話し合いによって買取請求を取り下げてもらえない場合には、自分の希望にできる限り近づけるため、次善策を検討する必要があります。具体的には、次のような選択肢が考えられます。

相手から買取請求された場合の対処法
対処法 この対処法が向いているケース
自分が相手の持分を買い取る ・不動産を手放したくない
・資金に余裕がある
・将来的に活用や売却を考えている
買取条件に納得できるなら応じる ・将来的にも不動産を所有し続けたり、活用したりする予定がない
・共有関係を解消しつつ、現金化したい
・維持管理の負担を避けたい
共有者ではなく第三者に自分の持分を売却する ・相手との交渉がこじれている、関係が良くない
・相手の提示した買取額に不満がある
・共有関係を早く解消して、現金化したい


相手が裁判所を通じて法的に買取請求権を行使している場合、要件を満たしていれば原則として無視や拒否だけで解決することは困難な
のが実情です。

これは、共有持分買取請求権が民法に基づく法的効力を伴う制度であるためです。そのため、買取請求を受けた場合には、感情的な対応ではなく、法的な位置づけを踏まえて対応する必要があります。


実務上、買取請求を無視した場合、その対応姿勢が裁判所に考慮され、結果として自分に不利な条件で買取が成立するおそれもあります。

もっとも、だからといって買取請求を取り下げさせようとして圧力をかけたり、強い言動で迫ったりするのは避けるべきです。状況によっては違法と判断される可能性も否定できません。買取請求を受けたときは、「今後その不動産をどうしたいのか」を整理したうえで、必要に応じて弁護士などの専門家へ相談しながら進めるのが現実的な方法です。

不動産を手放したくないなら自分が相手の持分を買い取る

共有持分を売りたくない理由が「不動産を手放したくない」という場合には、自分が相手方の共有持分を買い取る方法が有効です。

相手の買取請求の理由が「権利関係を整理したい」「賃貸や売却によって収益化したい」といった事情であれば、必ずしも共有持分そのものを取得することが目的とは限りません。

そのため、自分のほうで買い取ることを申し出れば、円満に解決できる可能性があります。

なお、持分買取の資金がないという人は、ローンを借りることも検討する余地があります。

「高齢で借りられるか不安」といった人も、持分買取後の不動産を担保にする「不動産担保ローン」を使えば、十分な資金を借りられる可能性があります。

相手の買取条件に納得できるなら応じる

買取請求時に相手が出した買取条件に納得できるなら、素直に応じてしまうのも1つの選択肢です。共有持分を手放せるうえに、共有持分の売却価格分の金銭を得られるメリットがあります。

特に「今後その不動産を利用する予定がない」「遠方で管理が難しい」などの事情がある場合は、早めに共有状態を整理したほうが結果的に負担が少なく済むこともあります。

相手としても争いなくスムーズに買取できるため、双方にとってメリットが大きいと言えるでしょう。

もし買取条件に納得できないときは、一旦金額について交渉するのもよいでしょう。実務上も、価格交渉によって条件が調整されるケースは珍しくありません。ただし、買取条件で揉めすぎると共有持分買取請求権の行使に発展する可能性もあるため、どこまで争うかは冷静に判断する必要があります。

相手に売りたくないなら「第三者への持分売却」も検討

結論から申し上げますと、相手の共有者に売りたくない場合は買取業者などの第三者へ売却できます。共有持分自体は原則として自由に売却できます。ただし、すでに買取請求を受けている場合には、訴訟の進行状況によっては売却が制限される可能性もあります。

共有持分を売りたくない理由が「相手方の共有者にだけは売りたくないから」という人もいるでしょう。

相手の提示価格が安すぎるケースや、これまでの関係性から悪感情を抱いているケースなど、さまざまな理由があると思います。

どうしても相手に売りたくないのであれば、第三者に売ることも考えましょう。第三者に売れば自分だけ共有名義から抜けることになるため、他の共有者との直接的な関係から離れることも可能です。

自分の共有持分なら自由に売却することができるので、特別な合意がない限り、事前に共有者へ伝える必要もありません。ただし、すでに買取請求を受けている場合には注意が必要です。

交渉段階であれば売却自体は可能ですが、「調停や訴訟に発展している」「すでに裁判で買取が認められた」場合は、第三者への売却が制限されたり、対抗できなくなるリスクがあります。

弊社へのご相談でも、「共有者との関係が限界なので、とにかく早く共有状態から抜けたい」という理由で第三者への売却を検討される方は少なくありません。

共有持分の買取請求を受けた場合は「拒否するかどうか」だけでなく「自分にとって最も負担の少ない出口はどれか」という視点で整理することが後悔のない判断につながります。

話し合いがまとまらない場合は「共有物分割請求」も検討する

「相手が管理費用を滞納しているわけではないが、共有状態を解消したい」「協議を重ねても話し合いがまとまらない」といった場合は、民法第256条に基づく「共有物分割請求」や、民法第258条に基づく「共有物分割請求訴訟」を検討しましょう。

共有物分割請求とは、文字どおり共有不動産の分割(共有名義の解消)を、他の共有者全員に求める手続きのことです。共有持分の所有者なら、原則としていつでも誰でも請求可能です。また、強い法的拘束力を持っており、原則として他の共有者は共有物分割請求を拒否できません。

弊社には累計10,000件超の共有持分に関するご相談が寄せられていますが、中でも多いのは相続によるトラブルで、数値としては2割程度を占めています。その中には「相続人同士で感情的対立が深く、協議が成立しない」といった相談も多く、最終的に共有物分割請求へ進むことは珍しくありません。

特に相続不動産では「売却したい人」と「住み続けたい人」で意見が対立しやすく、協議だけで解決できないケースが多いのが実情です。

話し合いがまとまらない場合は訴訟に移行し、最終的には裁判官による判決が下されるため、ほぼ確実に共有不動産の分割が実現します。

共有分割請求とは不動産の共有名義を 解消するための請求のこと

共有物分割請求による分割方法は、下記のいずれかになります。

共有物分割請求訴訟による不動産の3つの分割方法
分割方法 具体的な内容
現物分割 共有不動産そのものを切り分けて分割する方法。
※現物分割にあたって持分割合どおりの分割が困難な際、現金で差額分を清算する「部分的価格賠償」がおこなわれる。
換価分割 共有不動産全体を売却し、売却代金を持分割合に応じて分割する方法。
代償分割(全面的価格賠償) 共有者の1人が共有不動産全体を取得する代わりに、他の共有者へ金銭を支払う分割方法。実質的には「共有者同士で持分を売買する」方法。

上記のうち、代償分割が認められれば、他共有者の持分買取をおこなえます。

共有持分を買い取るには「代償分割」を認めてもらう必要がある

共有物分割請求を通じて他の共有者の共有持分を買い取るためには、「代償分割」を認めてもらう必要があります。

ただし、自分が請求を起こしたからといって、必ず代償分割が選ばれるわけではありません。

具体的には、次のいずれかが成立しない限り、他の分割方法(現物分割・換価分割)が選択される可能性があります。

  • 裁判官が、代償分割が相当であるとして判決を下す
  • 代償分割を内容とする和解が成立する

代償分割を認めてもらうためには、代償分割が「合理的かつ公平な分割方法であること」に加え、取得者である自分に、共有持分を一括で買い取れる十分な資力があることを、裁判所に対して具体的に主張・立証する必要があります。

たとえば、住宅ローン審査資料や預貯金、収入状況などから「実際に代償金を支払える資力があるか」が重視されるケースもあります。また、実務上は「現在その不動産に居住している共有者」が取得者として有利に評価される傾向もあります。

しかし、これらを適切に主張するには専門的な法律知識や裁判実務への理解が不可欠です。
そのため、代償分割を目指す場合は、不動産問題に強い弁護士に代理やサポートを依頼するのが現実的でしょう。

なお、代償分割が認められた場合の買取金額は、買取請求権を行使した場合と同様に、
「共有名義不動産の市場価格 × 各共有者の持分割合」を基準として算定される傾向があります。

代償分割の成立要件とは?

代償分割の成立要件は非常に複雑であり、物件の状況に応じてケースバイケースで考える必要があります。

判断の基準としては1996年の判例を参考にするのが一般的で、下記はその判例の要旨を部分的に引用したものです。

共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情があるときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法(いわゆる全面的価格賠償の方法)によることも許される。引用:公益社団法人全日本不動産協会「共有物分割請求」

上記をおおまかにまとめると、次のようになります。

  • 共有者のうち、特定の人が共有不動産全体を取得するのが合理的である
  • 取得者は、適正価格で他共有者に賠償(金銭の支払い)をする
  • 取得者は、上記の賠償について支払い能力をもっている
  • 代償分割によって共有者間の公平性が大きく損なわれない

さらに、合理的かどうかの判断には下記の要素が総合的に考慮されます。

合理的かどうかの判断要素 備考
取得者となる共有者本人が取得を希望しているか 取得を希望しない人に無理やり買い取らせることはできない
現状はだれがどのように利用しているか 実際に住んでいる共有者が取得者として考慮されることがある
持分割合 持分割合が多いほど取得者になりやすい
共有名義になった経緯 共有持分取得の経緯に問題がある場合「非合理的」とされる恐れがある
社会的利益 分割後に物件を有効利用できるかどうか

例えば、持分割合を過半数もっており、実際に共有不動産で暮らしている人であれば、代償分割が認められやすいでしょう。反対に、資金面に不安があるケースや「単に他共有者に売りたくない」という感情面だけでは、希望どおりにならないこともあります。

自分の状況で代償分割が認められるかどうか不安であれば、弁護士に相談してみましょう。

現物分割や換価分割になるとどうなるのか?

現物分割や換価分割をおこなうと、原則として共有不動産は分割されて別々の不動産になったり、売却されて共有不動産の所有権そのものがなくなったりします。

現物分割や換価分割だと、現在の共有不動産と同じ形での利用継続が極めて難しいのが実情です。

そのため、「共有持分を買い取って単独名義にしたい」という目的を果たすことができない点に注意が必要です。

共有物分割請求では希望の分割方法になるとは限らないため、弁護士などの専門家に全面的価格賠償が認められる可能性があるかの助言を求めておくことが重要です。

共有物分割請求が使えないケースもある

共有物分割禁止特約とは、共有者全員の同意があれば 共有物分割請求を禁止できる特約である

共有者全員の同意があれば、共有物分割請求を禁止することが可能であり、これを「共有物分割禁止特約」といいます。

禁止期間は最長5年間で、期間が満了するまで共有物分割請求はできなくなります。ただし、終了時に再び共有者全員の同意があれば、期間を更新することも可能です。

なお、共有物分割禁止特約を登記(法務局に不動産の権利関係を登録すること)することも可能で、その場合は新しい共有者にも「共有物分割禁止特約」を主張できます。

つまり、共有物分割禁止特約が登記されていると、だれかが共有持分のみを売却したときや、相続によって共有持分の名義が変わった場合であっても、新しい共有者は特約を守る必要があるということです。

もっとも、実務上は共有物分割禁止特約が利用されるケースはそれほど多くありません。一方、親族間で「一定期間は実家を売却しない」といった目的で設定されるケースは存在します。

特に相続直後は感情面の整理がついていないことも多いため「当面は共有状態を維持する」という合意がなされることがあります。

ただし、将来的には相続の再発生や共有者の増加によって権利関係が複雑化することもあるため、安易に長期間共有を続けることには注意が必要です。

共有持分の買取請求権の行使を見据えるなら弁護士への相談をご検討ください

共有持分の買取請求権は、要件を満たせば相手の意思にかかわらず行使できる強力な制度です。しかしその一方で、要件の判断や手続きの進め方を誤ると、買取請求が認められなかったり、不要な訴訟リスクを負ったりする可能性もあります。

実務上、問題になりやすいのは次のような点です。

  • 管理費用に該当するかどうかの判断が微妙な支出が含まれている
  • 「請求した日」や「1年経過」の起算点を証拠で立証できない
  • 買取価格をめぐって相手と争いになり、訴訟に発展する
  • 共有物分割請求との関係整理が不十分なまま手続きを進めてしまう

これらは条文を読んだだけでは判断が難しく、過去の裁判例や実務の運用を踏まえた対応が求められる領域です。特に、内容証明郵便の文面やタイミング、買取価格の算定方法などは、その後の交渉や裁判の行方を大きく左右します。

また、「本当に買取請求権を行使すべきか」「共有物分割請求を選択したほうが合理的ではないか」など、状況によっては別の手段を選んだほうが結果的に有利になるケースも少なくありません。

そのため、共有持分の買取請求を検討している段階から、共有不動産のトラブルに精通した弁護士に相談し、法的な見通しやリスクを整理しておくことが重要です。早い段階で専門家の意見を聞いておくことで、不要な対立や時間的・金銭的な負担を避けられる可能性が高まります。

まとめ

共有持分の買取請求は、大きく以下2つの方法があります。

  • 共有者同士の話し合いによる「任意交渉」
  • 民法上の制度を利用した「法的手続き」

共有者との関係が良好であったり、双方に買取・売却の意思がある場合には、当事者間での交渉で買取請求しましょう。話し合いによって条件がまとまれば、裁判手続きに比べて時間や費用を抑えて共有関係を解消できます。

一方、管理費用の滞納など明らかな義務違反があり、共有者との話し合いが難しい場合は、民法に基づく法的手段を用いて共有持分の取得を目指すことになります。

買取請求の方法 概要 この方法が向いている人
交渉 共有者間で話し合う ・共有者との関係が良好
・双方に買取・売却の意思がある
・共有者が将来的に不動産を所有・活用する意思がない
共有持分買取請求権の行使 維持費や税金を支払っていないなど、管理義務を怠っている場合に強制的に買い取れる ・共有者が1年を超えて管理義務を怠っている

なお、相続不動産では法律問題だけでなく、親族間の感情的対立や将来的な相続も絡みやすいという特徴があります。「法的に可能か」だけでなく「実務上どの方法が現実的か」という長期的な視点で検討することが重要です。

民法上の強制力を行使する場合は、弁護士への依頼や裁判が必要です。そのため、手間や時間、費用がかかる点を押さえておきましょう。

また、共有持分買取請求権の行使をおこなうには要件があるため、詳しくは不動産問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。

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    更新日 : 2025年11月07日
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