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共有持分の買取請求とは?条件や流れ、請求された際の対処法も解説

共有持分の買取請求とは?条件や流れ、請求された際の対処法も解説

共有名義の不動産について、「リフォーム一つ自由にできない」「貸したくても共有者の同意が得られない」といった理由から、他の共有者の持分を買い取って単独名義にしたいと考える方は少なくありません。

共有持分を買い取って名義を一本化するための買取請求のアプローチには、大きく分けて2つの方法があります。

  • 当事者同士の交渉による共有持分の買取請求
  • 民法上の強制力を行使する共有持分の買取請求

任意交渉に応じてくれる共有者なら、価格や条件など、買取に向けての話し合いも円満に進めやすいでしょう。しかし、共有持分の買取についてお悩みの方のなかには、「相手が話し合いに応じない」「相手の不法行為が原因で人間関係がすでに破綻している」といった、共有者との任意交渉自体が難しいケースも少なくありません。

私の経験上、意見の対立や感情的なもつれによって交渉が進まず、結果的に話し合いによる解決を断念してしまう方も一定数いるのが実情です。

そのような場合には、「共有持分の買取請求権の行使(民法253条2項)」といった法的手続きを利用し、強制的に共有者の持分を買い取ることも可能です。

ただし、共有持分の買取請求権を行使するには、「共有者が1年以上にわたって管理費用を滞納している」「買取請求者がその分を立て替えている」などの条件を満たす必要があります。

そのため、共有者に対して買取請求を検討する際は、進め方やメリット・デメリットを把握し、「共有持分の買取請求権の行使は本当に自分の状況に合った選択なのか」を事前に検討することが重要です。その際は、不動産問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。

本記事では、共有持分の買取を実現するために、主に民法上の強制力を伴う「共有持分の買取請求権」の詳細や手続き方法を解説します。

弁護士  菅野 正太(かんの しょうた)
監修
菅野 正太(弁護士)

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共有持分の買取請求は2種類

共有持分の買取請求は、大きく分けて「当事者同士の交渉による方法」と「民法上の強制力を行使する方法」の2種類に整理できます。

共有持分の買取請求の主な方法

共有持分を取得したい場合、まずは当事者間の話し合いによる解決を試みるのが一般的です。しかし、交渉が成立しない場合や、共有者に管理義務違反がある場合には、民法に基づく法的手段を検討することになります。

当事者同士の交渉による共有持分の買取請求

当事者同士の交渉による共有持分の買取請求とは、共有者間で話し合いを行い、任意で持分の売買を成立させる方法です。

相手が話し合いに前向きであり、穏便に共有関係を解消したい場合には、まずこの方法が検討されます。

当事者同士の合意があれば、売買価格や支払い条件などを自由に決めることができ、裁判などの法的手続きを経ずに進められる点がメリットといえます。


ただし、交渉による買取は相手の同意が前提となるため、必ずしも買取に応じてもらえるとは限りません。

合意が得られない場合、交渉だけで相手の共有持分を取得することは原則としてできず、法的手段の検討が必要になります。

民法上の強制力を行使する共有持分の買取請求(民法253条2項)

「相手が一切交渉に応じない」「明らかな不法行為が見受けられる」といった場合は、民法上の強制力を行使して共有持分を買い取れる可能性があります。

民法上の共有持分の買取請求権とは、民法第253条第2項に基づき、他の共有者の共有持分を強制的に買い取る権利を指します。 具体的には、共有名義不動産に関する管理費用の支払いや、日頃の管理業務といった義務を怠る共有者に対して行使できるものです。

(共有物に関する負担) 第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。 2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。 e-Gov法令検索 民法第253条

この権利は、所定の要件を満たして意思表示をすれば、相手の承諾がなくても法的な強制力をもって売買を成立させることが可能です。まずは、民法254条2項に基づく共有持分買取請求権を行使できる要件に該当するかを確認しましょう。

民法上の共有持分買取権(民法253条2項)を行使する要件

民法上の共有持分の買取請求を行うには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 請求する側が管理費用を肩代わりしている
  • 請求される側が管理費用の支払いを1年以上履行していない

請求する側が管理費用を肩代わりしている

民法上の共有持分の買取請求を行うには、管理費用を滞納している人の支払いを、請求する側が肩代わりしている必要があります。代表的な管理費用は、次の通りです。

  • 固定資産税や都市計画税などの租税公課
  • 火災保険料や地震保険料
  • 建物の修繕費、清掃費、設備点検費、除草費などの維持管理費
  • マンションの管理費や修繕積立金
  • 水道光熱費の基本料金(維持管理に必要な場合)

たとえば、管理費用の滞納者がいた場合でも「自分には関係ない」と決め込んで、一切肩代わりしていない場合は買取請求権の主張が認められにくくなります。

なお、共有名義不動産の管理費用は地方税法第10条や民法第253条に基づき、共有者全員に負担義務があります。「自分の分は支払っているから問題ない」と考えていたとしても、原則として共有者は滞納者の分を肩代わりしなければなりません。

肩代わりせず滞納状態を放置すると、滞納者以外の共有者にも財産の差し押さえが及ぶ可能性や、民間企業からの損害賠償請求などに発展するリスクがあります。

請求される側が管理費用の支払いを1年以上履行していない

請求される側が、前述した管理費用の支払いを1年以上履行しなかった場合に、民法上の共有持分の買取請求権を行使できます。ただし、「今月だけ支払いが遅れている」といった程度の滞納では足りません。

1年のカウントが始まる起算日は、「肩代わり分を請求した日」です。そのため、内容証明郵便を利用して請求することで、「いつ請求したか」がわかる証拠を明確に残すことが大切です。

内容証明郵便とは、郵便局が郵便文書の内容や差出人・宛先人を証明するサービスです。万が一裁判になった際も、通知の事実や日付を証明する有効な証拠として扱われます。

共有持分の買取請求権を行使する流れ

買取請求権を行使して共有持分を買い取る流れは、次の通りです。

  1. 買取請求権を行使するため、まず証拠を集める
  2. 肩代わりしていた管理費用を請求する
  3. 費用請求から1年後、買取請求を通知する
  4. 買い取る共有持分の価格を決める
  5. 必要に応じて調停・訴訟を行う
  6. 対価を支払う
  7. 持分移転登記を行う

買取請求権を行使するため、まず証拠を集める

共有持分の買取請求権を行使するためには、管理費用の滞納や、その肩代わりの事実を客観的に証明できる証拠が不可欠です。

固定資産税や管理費を支払った領収書、納税通知書、通帳の入出金履歴など、後の請求や手続きに備えて証拠を整理しておきましょう。

肩代わりしていた管理費用を請求する

管理費用の滞納者に、肩代わりしていた管理費用を請求します。
この請求の事実がなければ、滞納期間がいくら長くなっても、原則として買取請求権を行使できません。

請求日を明確にするには、配達証明付きの内容証明郵便にて請求書を送り、「〇年〇月〇日に請求し、そこから1年が経過した」という客観的な記録を残しましょう。内容証明郵便があれば、仮に訴訟に発展しても裁判所も採用する有力な証拠となります。

費用請求から1年後、買取請求を通知する

管理費用の肩代わり分を請求してから1年以上経過しても支払いがない場合は、共有持分の買取請求権を行使できる条件が整います。滞納者に対して、買取請求権を行使する旨の意思表示をしましょう。

買取請求権の行使について通知する場合も、内容証明郵便を利用するのが一般的です。相手が書類の受け取りを拒否したり、共有持分を手放す意思を見せなかったりする可能性があるものの、とにかく「買取請求権を行使する」という意思表示をした事実を残すことが大切です。

通知書には、「買取請求する理由」や「対象となる共有持分」などを記載します。また、相手が態度を改めて買取代金を受け取る可能性もあるため、いつでも支払えるよう準備をしておきましょう。

買い取る共有持分の価格を決める

共有持分をいくらで買い取るかは、当事者同士の協議で決定します。買取価格は、実務上「共有名義不動産全体の市場価格 × 共有持分割合」を基準にするケースが大半です。相手側に否があるからといって、不当に安い金額で買い叩けるわけではありません。

たとえば、共有名義不動産全体の市場価格が4,000万円、滞納者の共有持分割合が30%だった場合、買取価格は1,200万円を基準に考えます。

つまり、共有持分の買取価格を決めるときは、まず共有不動産全体の価格を算出する必要があります。

具体的には、下記の3つを基準にします。

共有持分の買取価格を決める3つの方法
共有名義不動産の市場価格の調べ方 概要
不動産業者の査定額を基準にする ・不動産業者の無料査定を利用し、現時点での市場価格を把握する方法
・無料ではあるものの、不動産の専門家による査定を受けられる
・1社だけでなく複数社の査定を受けておおまかな相場を把握することで適正価格の判断精度が高まる
固定資産税評価額を基準にする ・納税通知書や固定資産課税台帳の閲覧などで固定資産税評価額を基準にする
・土地なら、国土交通省が毎年発表する公示価格の約70%、建物は現在価値で再び建てると想定した際の再建築価格の50~70%程度になる
・最新の市場動向が反映されにくく、実際の売買価格とズレやすい
不動産鑑定士の鑑定価格を基準にする ・不動産鑑定の国家資格者である「不動産鑑定士」に依頼して査定してもらう方法
もっとも正確な査定額を算出できるため、基準にすれば買取価格で揉めることが少なくなる
・費用として20万円以上、不動産によっては100万円以上の費用がかかるので注意が必要

合意が取れず訴訟に移行した場合は、不動産鑑定士の鑑定価格を採用するのが一般的です。

なお、買取価格を不当に安くして当事者同士で合意した場合でも、税務署から「実際の相場との差額分の贈与があった」と見なされ、差額分の贈与税が課せられるリスクが存在します。たとえば、市場価格が1,000万円の共有持分を100万円で買い取った場合は、差額の900万円に対して贈与税が数百万円程度かかる可能性があります。

このような税金トラブルを防ぐためにも、自分たちだけで価格を決めず、専門家の意見を取り入れて適正な価格を設定するのがよいでしょう。

場合により調停・訴訟を行う

当事者間で買取価格や手続きについて合意できない場合は、調停や訴訟に移行することもあります。

調停とは、裁判所に設置された調停委員会が仲介役となり、当事者同士の話し合いによる解決を目指す手続きです。第三者が介在することで感情的な対立を避けながら合意点を探れるため、特に買取価格の妥当性について意見が分かれている場合に有効です。

調停でも合意に至らなかった場合や、相手方が買取請求権の行使自体を認めないような場合には、訴訟に進んで裁判所の判断を仰ぐことになります。訴訟では、不動産鑑定士による鑑定結果を基準として、裁判所が適正な買取価格を決定し、持分の移転登記手続きの履行などを命じる判決を下します。

これらの手続きを行うには、管轄の裁判所へ調停申立書または訴状を提出する必要があります。あわせて、固定資産評価証明書、これまでの交渉経緯を示す資料、管理費用の滞納や肩代わりの事実を証明する証拠資料などを揃えなければなりません。こうした法的主張の組み立てや書面作成は専門性が高いため、弁護士に依頼することを検討してください。

なお、調停や訴訟を行うには、裁判所に納める印紙代などの実費がかかります。ただし、弁護士に依頼した場合には着手金や報酬金といった大きな費用が発生する点に注意が必要です。また、適正な時価を算出するために不動産鑑定士による鑑定が必要になれば、別途鑑定費用もかかります。事前に弁護士から見積もりを取り、手続きにかかる総費用と取得できる持分の価値を十分に比較検討した上で、具体的な手続きに進むかどうかを判断しましょう。

対価を支払う

当事者同士が合意した買取価格で、相手方の共有持分を買い取ります。共有持分は通常の不動産よりも価格が安い傾向にあるものの、それでも数百万円~数千万円の支払いが必要になるケースが少なくありません。。

なお、共有持分は担保価値が低く、買取時に住宅ローンが使えないケースが多いので注意が必要です。原則として、現金一括での支払いになると思っておきましょう。

共有持分の取得には原則として対価が必要

共有持分買取請求権を行使する場合であっても、相手の共有持分を無償で取得できるわけではありません。民法第253条第2項に基づく買取請求権は、あくまで「相当の償金(対価)を支払うこと」を前提とした制度です。

そのため、共有持分を取得する際には、実務上も時価を基準とした金銭の支払いが必要となり、金額について争いが生じた場合は、不動産鑑定士による鑑定結果などを踏まえて判断されることになります。

持分移転登記を行う

買い取った共有持分の所有権を法的に主張するためには、「持分移転登記」で買い取った共有持分の名義を自分に変更します。自分と相手方の共同申請になるため、協力が必要である旨を伝えておきましょう。

なお、登記手続きは専門知識が必要かつ、不備が許されない厳格な手続きです。そのため、登記手続きは登記実務の専門家である司法書士に依頼するのが一般的です。

ワンポイント解説

管理費用を1年以上滞納する相手であることを踏まえると、登記手続きにも非協力的な態度を取る可能性もあります。万が一、相手が登記に協力してくれない場合は、「所有権移転登記手続請求訴訟」を提起し、自分単独で登記手続きが進められるように争う必要があります。

とはいえ実務上、要件を満たしている限り、登記に協力しない側が裁判で勝てる見込みはほとんどありません。そのため、「裁判になればあなたが負ける可能性が高く無駄な出費が増えるだけ」と諭すことで、相手も観念して任意での協力に応じてくれるケースが多いはずです。

自分が共有者から持分の買取請求をされた際の対処法

「自分は売りたくないけど、他の共有者から買取請求されている」という人もいるかと思います。

ただし、相手からの申し出が「単なる買取の打診」なのか、「法定要件を満たした買取請求権の行使」なのかによって、対応は異なります。単に「持分を買い取ってほしい」とお願いされているだけであれば、応じる義務はなく、拒否することも可能です。

一方で、、ここまで解説した「共有持分買取権」による買取請求を受けた場合、共有不動産を現状のまま維持し続けることは、実務上きわめて難しいといえるでしょう。

なぜなら、共有持分買取請求権を行使された場合、法定要件を満たしていれば売却を拒否することはできないからです。

話し合いによって買取請求を取り下げてもらえない場合には、自分の希望にできる限り近づけるため、次善策を検討する必要があります。具体的には、次のような選択肢が考えられます。

相手から買取請求された場合の対処法
対処法 この対処法が向いているケース
自分が相手の持分を買い取る ・不動産を手放したくない
・資金に余裕がある
・将来的に活用や売却を考えている
買取条件に納得できるなら応じる ・将来的にも不動産を所有し続けたり、活用したりする予定がない
・共有関係を解消しつつ、現金化したい
・維持管理の負担を避けたい
共有者ではなく第三者に自分の持分を売却する ・相手との交渉がこじれている、関係が良くない
・相手の提示した買取額に不満がある
・共有関係を早く解消して、現金化したい


相手が裁判所を通じて法的に買取請求権を行使している場合、要件を満たしていれば原則として拒否することはできません。

これは、共有持分買取請求権が、民法に基づく法的効力を伴う制度であるためです。そのため、買取請求を受けた場合には、感情的な対応ではなく、法的な位置づけを踏まえて対応する必要があります。


実務上、買取請求を無視した場合、その対応姿勢が裁判所に考慮され、結果として自分に不利な条件での買取が成立するおそれもあります。

また、買取請求を取り下げさせようとして圧力をかけたり、強い言動で迫ったりすると、状況によっては違法と判断される可能性も否定できません。買取請求を受けたときは、感情的に対立するのではなく、法的に適切な選択肢を整理したうえで対応していくことが重要です。

不動産を手放したくないなら自分が相手の持分を買い取る

共有持分を売りたくない理由が「不動産を手放したくない」という場合には、自分が相手方の共有持分を買い取る方法が有効です。

相手の買取請求の理由が「権利関係を整理したい」「賃貸や売却によって収益化したい」といった事情であれば、必ずしも共有持分そのものを取得することが目的とは限りません。

そのため、自分のほうで買い取ることを申し出れば、円満に解決できる可能性があります。

なお、持分買取の資金がないという人は、ローンを借りることも検討してみましょう。

「高齢で借りられるか不安」といった人も、持分買取後の不動産を担保にする「不動産担保ローン」を使えば、十分な資金を借りられる可能性があります。

相手の買取条件に納得できるなら応じる

買取請求時に相手が出した買取条件に納得できるなら、素直に応じてしまうのも1つの選択肢です。共有持分を手放せるうえに、共有持分の売却価格分の金銭を得られるメリットがあります。

相手としても争いなくスムーズに買取できるため、双方にとってメリットが大きいと言えるでしょう。

買取条件に納得できないときは、一旦金額について交渉するのもよいでしょう。ただし、買取条件で揉めすぎると共有持分買取権の行使に発展する可能性があります。

相手に売りたくないなら「第三者への持分売却」も検討

共有持分を売りたくない理由が「相手方の共有者にだけは売りたくないから」という人もいるでしょう。

相手の提示価格が安すぎるケースや、これまでの関係性から悪感情を抱いているケースなど、さまざまな理由があると思います。

どうしても相手に売りたくないのであれば、第三者に売ることも考えましょう。第三者に売れば自分だけ共有名義から抜けることになるため、他の共有者と関係を断つことも可能です。

自分の共有持分なら自由に売却することができるので、事前に共有者へ伝える必要もありません。

「共有持分の売却はしたいけど、他の共有者と関わりたくない」という人は、ぜひ第三者への売却を検討してみましょう。

話し合いがまとまらない場合は「共有物分割請求」も検討する

「相手が管理費用を滞納しているわけではないが、共有状態を解消したい」「協議を重ねても話し合いがまとまらない」といった場合は、民法第256条に基づく「共有物分割請求」や、民法第258条に基づく「共有物分割請求訴訟」を検討しましょう。

共有物分割請求とは、文字どおり共有不動産の分割(共有名義の解消)を、他の共有者全員に求める手続きのことです。共有持分の所有者なら、いつでも誰でも請求可能です。また、非常に強い法的拘束力を持っており、原則として他の共有者は共有物分割請求を拒否できません。

話し合いがまとまらない場合は訴訟に移行し、最終的には裁判官による判決が下されるため、ほぼ確実に共有不動産の分割が実現します。

共有分割請求とは不動産の共有名義を 解消するための請求のこと

共有物分割請求による分割方法は、下記のいずれかになります。

共有物分割請求訴訟による不動産の3つの分割方法
分割方法 具体的な内容
現物分割 共有不動産そのものを切り分けて分割する方法。
※現物分割にあたって持分割合どおりの分割が困難な際、現金で差額分を清算する「部分的価格賠償」がおこなわれる。
換価分割 共有不動産全体を売却し、売却代金を持分割合に応じて分割する方法。
代償分割(全面的価格賠償) 共有者の1人が共有不動産全体を取得する代わりに、他の共有者へ金銭を支払う分割方法。簡単にいえば「共有者同士で持分を売買する」方法。

上記のうち、代償分割が認められれば他共有者の持分買取をおこなえます。

共有持分を買い取るには「代償分割」を認めてもらうことが必要

共有物分割請求を通じて、他の共有者の共有持分を買い取るためには、「代償分割」を認めてもらうことが必要です。

ただし、自分が請求を起こしたからといって、必ず代償分割が選ばれるわけではありません。

具体的には、次のいずれかが成立しない限り、他の分割方法(現物分割・換価分割)が選択される可能性があります。

  • 協議の段階で、共有者全員が代償分割に合意している
  • 裁判官が、代償分割が相当であるとして判決を下す
  • 代償分割を内容とする和解が成立する

代償分割を認めてもらうためには、代償分割が「合理的かつ公平な分割方法であること」に加え、取得者である自分に、共有持分を一括で買い取れる十分な資力があることを、裁判所に対して具体的に主張・立証する必要があります。

しかし、これらを適切に主張するには専門的な法律知識や裁判実務への理解が不可欠です。
そのため、代償分割を目指す場合は、不動産問題に強い弁護士に代理やサポートを依頼するのが現実的でしょう。

なお、代償分割が認められた場合の買取金額は、買取請求権を行使した場合と同様に、
「共有名義不動産の市場価格 × 各共有者の持分割合」を基準として算定される傾向があります。

代償分割の成立要件とは?

代償分割の成立要件は非常に複雑であり、物件の状況に応じてケースバイケースで考える必要があります。

判断の基準としては1996年の判例を参考にするのが一般的で、下記はその判例の要旨を部分的に引用したものです。

共有物の分割をする場合において、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情があるときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法(いわゆる全面的価格賠償の方法)によることも許される。出典:裁判所「 平成8年10月31日 最高裁判所判例」

上記をおおまかにまとめると、次のようになります。

  • 共有者のうち、特定の人が共有不動産全体を取得するのが合理的である
  • 取得者は、適性価格で他共有者に賠償(金銭の支払い)をする
  • 取得者は、上記の賠償について支払い能力をもっている

さらに、合理的かどうかの判断には下記の要素が総合的に考慮されます。

合理的かどうかの判断要素 備考
取得者となる共有者本人が取得を希望しているか 取得を希望しない人に無理やり買い取らせることはできない
現状はだれがどのように利用しているか 実際に住んでいる人に取得させる傾向がある
持分割合 持分割合が多いほど取得者になりやすい
共有名義になった経緯 実力行使で無理やり共有持分を取得していると「非合理的」とされる恐れがある
社会的利益 分割後に物件を有効利用できるかどうか

例えば、持分割合を過半数もっており、実際に共有不動産で暮らしている人であれば、代償分割が認められやすいでしょう。

自分の状況で代償分割が認められるかどうか不安であれば、弁護士に相談してみましょう。

現物分割や換価分割になるとどうなるのか?

現物分割や換価分割をおこなうと、原則として共有不動産は分割されて別々の不動産になったり、売却されて共有不動産の所有権そのものがなくなったりします。

そのため現物分割や換価分割だと、現在の共有不動産そのままの形で維持することができません。

そのため、「共有持分を買い取って単独名義にしたい」という目的には適さない点に注意が必要です。

共有物分割請求では希望の分割方法になるとは限らないため、弁護士などの専門家に全面的価格賠償が認められる可能性があるかの助言を求めておくことが重要です。

共有物分割請求が使えないケースもある

共有物分割禁止特約とは、共有者全員の同意があれば 共有物分割請求を禁止できる特約である

共有者全員の同意があれば、共有物分割請求を禁止することが可能であり、これを「共有物分割禁止特約」といいます。

禁止期間は最長5年間で、期間が満了するまで共有物分割請求はできなくなります。ただし、終了時に再び共有者全員の同意があれば、期間を更新することも可能です。

なお、共有物分割禁止特約を登記(法務局に不動産の権利関係を登録すること)することも可能で、その場合は新しい共有者にも特約が引き継がれます。

つまり、共有物分割禁止特約が登記されていると、だれかが共有持分のみを売却したときや、相続によって共有持分の名義が変わった場合であっても、新しい共有者は特約を守る必要があるということです。

共有持分の買取請求権の行使を見据えるなら弁護士への相談をご検討ください

共有持分の買取請求権は、要件を満たせば相手の意思にかかわらず行使できる強力な制度です。しかしその一方で、要件の判断や手続きの進め方を誤ると、買取請求が認められなかったり、不要な訴訟リスクを負ったりする可能性もあります。

実務上、問題になりやすいのは次のような点です。

  • 管理費用に該当するかどうかの判断が微妙な支出が含まれている
  • 「請求した日」や「1年経過」の起算点を証拠で立証できない
  • 買取価格をめぐって相手と争いになり、訴訟に発展する
  • 共有物分割請求との関係整理が不十分なまま手続きを進めてしまう

これらは、条文を読んだだけでは判断が難しく、過去の裁判例や実務の運用を踏まえた対応が求められる領域です。特に、内容証明郵便の文面やタイミング、買取価格の算定方法などは、その後の交渉や裁判の行方を大きく左右します。

また、「本当に買取請求権を行使すべきか」「共有物分割請求を選択したほうが合理的ではないか」など、状況によっては別の手段を選んだほうが結果的に有利になるケースも少なくありません。

そのため、共有持分の買取請求を検討している段階から、共有不動産のトラブルに精通した弁護士に相談し、法的な見通しやリスクを整理しておくことが重要です。早い段階で専門家の意見を聞いておくことで、不要な対立や時間的・金銭的な負担を避けられる可能性が高まります。

まとめ

共有持分の買取請求は、「民法上の強制力を行使」または「当事者間での交渉」するのいずれかの方法でおこなえます。共有者との関係が良好であったり、双方に買取・売却の意思がある場合には、当事者間での交渉で買取請求しましょう。話し合いによって条件がまとまれば、時間や費用を抑えて共有関係を解消できます。

一方、共有者との話し合いが難しい場合や、管理費用の滞納など明らかな義務違反がある場合には、民法に基づく法的手段を用いて共有持分の取得を目指すことになります。

買取請求の方法 概要 この方法が向いている人
交渉 共有者間で話し合う ・共有者との関係が良好
・双方に買取・売却の意思がある
・共有者が将来的に不動産を所有・活用する意思がない
共有持分買取権の行使 維持費や税金を支払っていないなど、管理義務を怠っている場合に強制的に買い取れる ・共有者が1年を超えて管理義務を怠っている

民法上の強制力を行使する場合は、弁護士への依頼や裁判が必要です。そのため、手間や時間、費用がかかる点を押さえておきましょう。

また、共有持分買取権の行使をおこなうには要件があるため、詳しくは不動産問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。

買取請求の目的が「権利関係の整理」や「共有不動産全体の処分」であれば、持分買取にこだわらず、自分の共有持分を買取業者に売却することも検討してみましょう。

共有持分専門の買取業者であれば、権利関係が複雑でトラブルを抱えた物件でも対応できるので、買取請求をするよりスピーディーに問題を解決できます。

弊社では共有持分の再販ルートを活用し、通常より高値での買取が可能です。「共有者との関係が悪い」などといった特別な事情がある共有持分も問題なく買取できるため、まずはお気軽にご相談ください。

共有持分に関するコラムはこちら

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    更新日 : 2025年11月07日
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