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共有名義(持分)の土地に関する基礎知識と売却のコツを分かりやすく解説

不動産を複数人の名義にした状態を「共有名義」といいます。複数人いる名義人は「共有者」と呼び、共有者それぞれがもつ所有権は「共有持分」と呼びます。

共有名義の土地は、複数人で一つの土地を所有している状態です。夫婦や親子で不動産を共同購入した場合や、相続による財産分与が行われた場合などに、共有名義になるケースが多いとされます。

共有名義の土地には下記のようなメリット・デメリットがあります。

メリット デメリット
・土地購入費用の負担額が小さくなる
・住宅ローン減税を2重に受けられる
・土地を売却したときに3,000万円の特別控除を2重に受けられる
・相続税の負担を軽減できる
・相続で共有名義人が増えて権利関係が複雑になりやすい
・売却がしづらい
・持分だけで売却すると安くなる
・持分だけで相続税の物納ができない

共有名義不動産は売却時に共有者全員の同意が必要となります。相続などで共有者が増えていくと、売却するのが困難になるおそれがあります。そのため、できるだけ早く共有状態を解消するのがおすすめです。

共有名義の解消方法は下記の7つが挙げられます。

内容 メリット デメリットや注意点
全部売却 共有者全員の同意をもって共有名義不動産全体を売却し、元々の持分割合に応じて売却金を共有者に配分する。 通常の不動産と同じように相場価格で売却できる。 共有者全員の同意が必要なため、共有者の人数が多い・所在不明・認知症などで意思決定能力がない・売却に反対しているなどの場合は売却まで難航する、もしくは売却できない。
持分売却 自己持分を第三者に売却する。 共有者の同意なく持分の所有者単独の意思で実行できる。 基本的に売却先は共有持分専門の買取業者に限定される。売却価格は「不動産の市場価格×持分割合」よりも低くなりやすい。
持分移転 自分の持分を共有名義人に売却する 自己持分を第三者に売却するよりも高く売れやすい。 買い取ってもらう相手に資力が必要。不動産の価値に対して安く売却すると贈与税がかかる可能性がある。
持分買取 共有名義人の持分を買い取って、不動産の所有者を自分1人にする 他の共有者の持分を全て買い取れば単独名義不動産として利用できる。 他の共有者の持分を買い取るための資力が必要。買取価格やそもそも売りたくないといった意見の対立が起こる可能性がある。
持分放棄 共有持分の所有する権利を放棄する 放棄するだけなら単独で実行できる。 共有持分の一部だけの放棄はできない。他の共有者の持分割合に応じて分配されるので特定の共有者に何%分配するといったことができない。放棄した後に共有者に登記してもらわないと、放棄した後でも固定資産税の通知が来る可能性がある。売却すれば得られるはずの現金が得られない。
分筆 1つの土地を登記簿上で2つ以上の土地に分ける 分筆後は単独名義の土地になる。 分筆には共有者の過半数の同意が必要。境界確定の際に隣地所有者の立会いが必要。分筆することで価値が下がる可能性がある。持分割合の価値と合うように分筆するのが難しい。数十万円の費用がかかる。基本的に広く分筆後も接道義務を果たせる土地に限る。
共有物分割請求訴訟 裁判所の判決で共有名義を解消する 確実に共有状態を解消できる 費用も時間もかかる。共有者全員を巻き込んで訴訟を起こすので他の共有者全員との仲が険悪になりやすい。どのような手段で分割するかは裁判所の判断にゆだねられるので誰も望まない結果になる可能性がある。

自分の置かれる状況に合わせて、適切な方法を選ぶと良いでしょう。「手間をかけずに、共有名義の土地を素早く手放したい」といった場合は、共有持分専門の買取業者に売却するのもおすすめです。

本記事では、共有名義の土地の基礎知識やメリット・デメリット、共有名義の解消方法、共有持分を高く売却するコツなどを詳しく紹介します。

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共有名義の土地は「複数人で一つの土地を共有」している状態

共有名義とは

「共有名義の土地」というのは、1つの土地を複数人が共同で所有している状態の土地のことをいいます。つまり、土地の所有権を複数の人が持っている状態です。

一般的には、夫婦、親子、相続によって兄弟・親戚と共有名義となっていることが多いです。そして、名義人それぞれが持っている所有権の割合を持分といいます。

持分の割合は土地取得のための負担額の割合で決まる

持分の割合は、基本的に土地を所有するために出した金額の割合に応じて決まります。

共有名義の持分の割合は「土地取得のための負担額の割合」で決まる

たとえば、5,000万円の土地を所有するために、あなたが1,000万円、父親が4,000万円出して購入したとしたら、持分はあなたが1/5、父親が4/5です。

登記簿には、共有名義人の名前だけでなく、持分割合も記載されています。

具体的には、登記簿の「権利者その他の事項」のところに次のような形で登記されます。

共有名義人
 東京都○○区○○
 持分5分の4
田中 太郎

東京都○○区○○
 持分5分の1
田中 一郎

また共有名義の土地は、共有名義人がそれぞれ持分割合で土地の所有権を持っていますが「Aさんが50㎡・Bさんは25㎡」のように持分に応じた範囲の土地を所有している訳ではありません。

例えば、土地HをAさん、Bさん、Cさんの3人がそれぞれ持分1/3で所有していたとします。

このとき、土地をX・Y・Zに3等分して、AさんがXの部分、BさんがYの部分、CさんがZの部分を所有しているということではありません。

共有名義の土地であっても、すべての共有者が土地の全体を使用できます。

これは民法第249条でも、以下のように認められています。

民法第249条
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
出典:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089、e-Govポータル「民法第249条」

そのため、もし1/100程度の少ない持分割合であっても、共有名義人であれば土地の全体を使用できます。

ただし、土地を貸して地代を得ている場合、その収益は持分の割合に応じて受け取ることになります。

土地が共有名義になる理由

土地が共有名義になる主な理由は次の2パターンです。

  • 夫婦・親子で土地を共同購入した
  • 相続による財産分与で共有持分を取得した

はじめから共有名義で土地を共同購入する場合はもちろん、もともと単独だった土地を共有名義で相続するケースもあります。

それぞれのケースについて、くわしく見ていきましょう。

夫婦・親子での共同購入

1人では購入資金が足りないなどの理由で、複数人でお金を出し合って土地を購入した場合、共有名義となります。

夫婦でペアローンを組んでマイホームを購入したり、親子で2世帯住宅を購入したりするときに共同購入することが多いです。

土地を共同購入した場合、持分割合は出資した金額に応じて決まります。

夫婦・親子で共同購入した場合の持分割合
例えば、3000万円の土地を購入するのに夫A・妻Bで半分ずつお金を出した場合、それぞれの持分は1/2ずつです。

・Aの持分=1/2
・Bの持分=1/2

仮に、離婚により夫婦共有名義の不動産を財産分与する場合は下記の記事を参考にしてみてください。

相続による財産分与

土地が共有名義になる場合、もっとも多い理由は「相続による財産分与」です。

例えば、遺産分割協議で話がまとまらないときや、相続人同士の争いを避けたいときに、とりあえず法定相続分に従って分けたような場合です。

相続による財産で共有持分を取得する場合、持分割合は法定相続分に応じて決まります。

相続による財産分与の持分割合

また稀に、遺産の公平な分割方法だと思って、共有名義にするように遺言書で指定される方もいます。

共有名義の土地のメリット

相続で共有名義の土地を所有していたり、離婚予定の配偶者と共有名義の土地があったりする場合、「このまま共有名義の土地を所有していてよいのか」と迷う場合もあるでしょう。

土地の取り扱いを考える前に、まずは共有名義のメリット、デメリットを把握しておきましょう。

共有名義のメリットは、土地の購入資金はもちろん税金などの費用を抑えられる点です。

具体的には、下記のとおりです。

  • 土地購入費用の負担額が小さくなる
  • 住宅ローン減税を2重に受けられる
  • 土地を売却したときに3,000万円の特別控除を2重に受けられる
  • 相続税の負担を軽減できる

まずは、それぞれのメリットをくわしく解説していきます。

1.土地購入費用の負担額が小さくなる

共有名義で土地を取得するということは、共同購入するということです。

そのため、たとえば1,000万円の土地を購入するときに、2人で共同購入すれば、1人あたりの負担額は500万円ずつになります。

2.住宅ローン減税を2重に受けられる

住宅ローン減税は、住宅ローンを利用してマイホームを購入したときに受けられる減税措置です。毎年末の住宅ローン残高または自宅の取得費のどちらか少ない方の金額の1%が10年間、所得税から控除されます。

夫婦でペアローンを組んでいる場合には、それぞれがローン契約をしているので、その住宅ローン残高に応じて、夫婦どちらも減税措置を受けられます。

3.土地を売却したときに3,000万円の特別控除を2重に受けられる

マイホームを売却したときに譲渡所得から最高3,000万円の控除を受けられる特例があります。これは、マイホームの土地を売却するときにも適用されます。

つまり、夫婦や親子で自宅を共同購入して、売却するときに売却益が出たら、その共有名義人の数だけ特別控除を受けられるということです。

ただし、マイホームの売却で6,000万円の利益になることはまずありません。

共有名義のメリットではありますが、あまり活用されることはないでしょう。

住宅ローンの特別控除については、こちらの記事を参考にしてください。

相続税の負担を軽減できる

共有名義の場合、単独名義よりも相続税の負担を軽減できる場合があります。

例えば、夫の単独名義の不動産の場合、夫が亡くなった際に不動産全体の評価額が課税の対象となります。一方、夫婦共有名義の不動産の場合、夫は亡くなった際に課税の対象となるのは、夫の持分のみです。

相続税の基礎控除は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」であるため、「単独名義だと基礎控除を超えるけれど、共有名義だと基礎控除内に収まる」といったケースでは、節税になるでしょう。

共有名義の土地のデメリット

共有名義の場合、単独名義のように自由に土地を扱えません。

具体的には、下記のようなデメリットがあります。

  • 相続で共有名義人が増えて権利関係が複雑になりやすい
  • 売却がしづらい
  • 持分だけで売却すると安くなる
  • 持分だけで相続税の物納ができない

それぞれのデメリットを解説していきます。

1.相続で共有名義人が増えて権利関係が複雑になりやすい

共有名義の状態で相続が発生すると、さらに遺産分割で共有名義人が増えていくことになります。

たとえば、兄弟で1つの土地を共有名義で持分1/2ずつ所有していたとします。兄が亡くなって、配偶者とその子ども2人に相続が発生したときには、共有名義の土地は次のような状態になります。

相続で共有名義が増える例
兄の配偶者:持分4分の1
兄の子どもA:持分8分の1
兄の子どもB:持分8分の1
弟:持分2分の1

さらにそこから弟も亡くなって弟の配偶者と子ども1人に相続が発生したとします。すると、

兄の配偶者:持分4分の1
兄の子どもA:持分8分の1
兄の子どもB:持分8分の1
弟の配偶者:持分4分の1
弟の子どもA:持分4分の1

となって、共有名義人の数が5人まで増えます。

このように共有名義のまま土地を所有していると、相続が発生した時にネズミ算式に共有名義人が増えていき、持分が細分化されます。

その結果、権利関係も複雑になっていき、共有名義人全員の意見をまとめるということが非常に難しくなります。

人が増えることで、所在不明の共有者が出てくることも考えられるでしょう。共有者が行方不明である場合の不動産売却については、「共有名義人が行方不明でも売却できるケース」で詳しく紹介します。

共有持分の売却や相続放棄、赤の他人との共有名義不動産の時効取得などについては、下記の記事を参考にしてみてください。

2.売却がしづらい

共有名義の土地を売却するときには、共有名義人全員の同意が必要です。そして、売買契約を結ぶときには、全員の身分証明書と実印、印鑑証明書を準備することになります。

持分割合によらず、誰か1人でも共有名義人が売却に反対すると売却できないデメリットがあります。

親子での共有名義の場合、共有者である親が認知症になり、売却の同意を得られないといったリスクも考えられます。その場合、成年後見人を立ててから売却の手続きを進める必要があります。

共有名義人の親が認知症になった際の不動産売却や、成年後見制度については下記記事を参考にしてみてください。

3.持分だけで売却すると安くなりやすい

土地の売却について、共有名義人の合意がとれないときは、持分を売却することもできます。

しかし、持分のみでは買主を見つけることも難しく、売却価格も土地の持分割合に応じた市場価格よりも安くなりやすいです。

例えば、市場価格1,000万円の共有名義の土地の共有持分1/2を売却するとします。

この場合、共有持分の売却価格は1,000万円の1/2である500万円という訳ではありません。

一般的に市場価格よりも安く買い叩かれてしまうケースが多いです。

対処法としては、共有持分の専門業者に買取してもらうことで、市場価格に近い価格で引き取ってもらうことも可能です。

他の買取業者では安く買い叩かれてしまう共有持分も当社なら高額買取できます。以下のボタンからお気軽にご相談ください。

4.相続税の物納に持分が利用できない

相続税を納めるときに、現金での納税が難しいと認められたときには現金以外の財産を物納できます。

一般的には土地も物納として認められるのですが、共有名義の場合「管理処分不適格財産」として認められません。

もし共有名義の土地を物納するときには、売却と同じように共有名義人全員が物納に同意することが必要です。

共有持分を所有するリスクや解消法については、下記記事でも詳しく紹介しています。

共有名義を解消する7つの方法

このように、共有名義の土地はメリットよりもデメリットの方が多いです。そのため、共有名義はできるだけ早く解消することをおすすめします。

具体的に解消する主な方法は次の7つです。

内容 メリット デメリットや注意点
全部売却 共有者全員の同意をもって共有名義不動産全体を売却し、元々の持分割合に応じて売却金を共有者に配分する。 通常の不動産と同じように相場価格で売却できる。 共有者全員の同意が必要なため、共有者の人数が多い・所在不明・認知症などで意思決定能力がない・売却に反対しているなどの場合は売却まで難航する、もしくは売却できない。
持分売却 自己持分を第三者に売却する。 共有者の同意なく持分の所有者単独の意思で実行できる。 基本的に売却先は共有持分専門の買取業者に限定される。売却価格は「不動産の市場価格×持分割合」よりも低くなりやすい。
持分移転 自分の持分を共有名義人に売却する 自己持分を第三者に売却するよりも高く売れやすい。 買い取ってもらう相手に資力が必要。不動産の価値に対して安く売却すると贈与税がかかる可能性がある。
持分買取 共有名義人の持分を買い取って、不動産の所有者を自分1人にする 他の共有者の持分を全て買い取れば単独名義不動産として利用できる。 他の共有者の持分を買い取るための資力が必要。買取価格やそもそも売りたくないといった意見の対立が起こる可能性がある。
持分放棄 共有持分の所有する権利を放棄する 放棄するだけなら単独で実行できる。 共有持分の一部だけの放棄はできない。他の共有者の持分割合に応じて分配されるので特定の共有者に何%分配するといったことができない。放棄した後に共有者に登記してもらわないと、放棄した後でも固定資産税の通知が来る可能性がある。売却すれば得られるはずの現金が得られない。
分筆 1つの土地を登記簿上で2つ以上の土地に分ける 分筆後は単独名義の土地になる。 分筆には共有者の過半数の同意が必要。境界確定の際に隣地所有者の立会いが必要。分筆することで価値が下がる可能性がある。持分割合の価値と合うように分筆するのが難しい。数十万円の費用がかかる。基本的に広く分筆後も接道義務を果たせる土地に限る。
共有物分割請求訴訟 裁判所の判決で共有名義を解消する 確実に共有状態を解消できる 費用も時間もかかる。共有者全員を巻き込んで訴訟を起こすので他の共有者全員との仲が険悪になりやすい。どのような手段で分割するかは裁判所の判断にゆだねられるので誰も望まない結果になる可能性がある。

これらの中から適切な方法を選ぶことで共有名義を解消し、トラブルを避けられるでしょう。

1.全部売却

全部売却は共有名義人全員で土地を売却する方法です。共有名義人が得られるお金は、売却価格から売却にかかった諸費用を除き、持分割合に応じて分けられます。

たとえば、土地の売却益が3,000万円だったとします。そして、その土地をAさん、Bさん、Cさんがそれぞれ1/3ずつの持分で共有していた場合、1,000万円ずつに分ける、ということです。

全部売却はその土地の市場価格で売却でき、あとから紹介する一部売却に比べてもそれぞれの手元に残るお金は大きくなります。そのため、共有名義を解消する方法の中でも理想的な方法の1つです。

ただし、全部売却は共有名義人全員が土地の売却に同意していることが条件になります。たとえ1人でも売却に反対していると、その方の持分割合にかかわらず全部売却の方法は取れません。

共有者全員で売却する際の流れについては、下記記事でも紹介しています。

2.一部売却

一部売却は、自分の持分を共有名義人以外の第三者に売却する方法です。

自分の持分のみの売却であれば、他の共有名義人の承認や同意は必要ありません。持分の範囲内であれば、自由に売却できます。しかし、持分のみを購入しても買主は土地を自由に使えるわけではありません。

そのため、一般の個人の方が購入することはまずありません。投資家か買取業者が買主になります。そして、どちらに売却するにしても、持分のみの売却価格は市場価格よりもかなり安いです。

持分売却については、下記記事も参考にしてみてください。

3.持分移転

持分移転は、自分の持分を共有名義人に売却する方法です。

たとえば、共有名義人のうちの1人が、土地を売るのに反対だったとしても、持分を買取るなら問題ないというときには、この方法が有効です。

持分移転するときの注意点は、「買い取ってもらえるなら何円でもいい」と市場価格よりも非常に安く売却してしまわないことです。

市場価格と売却価格の差が大きかったときには、税務署から贈与とみなされて、買い取った共有名義人に贈与税が課せられる可能性があります。

そのため、共有名義人へ持分を売却するときには、不動産鑑定士に土地の評価をしてもらい、その価格に近い価格で売却するようにしてください。

4.持分買取

持分買取は、共有名義人の持分を買い取って、不動産の所有者を自分1人にする方法です。

共有名義人が複数いたとしても、全員から適正価格で持分を買取ることができれば共有名義を解消できます。

持分を買い取ったあとも自分でその土地を使用する予定があり、買取れるだけの資金力があるか、融資を受けられるのであれば有効な方法です。

持分買取のときも、先ほどの持分移転と同様に贈与とみなされないように、市場価格に近い適正価格で買取ることが大切です。この方法で共有名義を解消する場合でも、不動産鑑定士に土地の評価を依頼するようにしましょう。

共有者から持分を買い取る方法については、下記記事も参考にしてみてください。

5.持分放棄

持分放棄は、そのまま持分を「放棄」することです。これは売却とは異なります。

持分放棄には、共有名義人の承諾や同意は不要です。また、持分を放棄したあとは、その持分は他の共有名義人に帰属します。

たとえば、あなたを含む3人で土地を共有名義で所有していて、持分割合がそれぞれ1/3ずつだった場合は次のようになります。あなたが放棄した1/3の持分は、残り2人に帰属し、それぞれの持分割合に従って、放棄された持分が分配されます。


この場合は、放棄された持分1/3が、残り2人に1/6ずつ分配され、それぞれの持分割合が1/2になるということです。

そして持分放棄の登記は「持分放棄を登記原因とする所有権移転登記」を申請します。

6.分筆

分筆は、1つの土地を登記簿上で2つ以上の土地に分けることです。

分筆することによって、1つの土地に複数の所有者がいた状態から、複数の土地に1人の所有者がいる状態に変わり、単独名義となります。

単独名義になれば、売却も土地活用も自分のみの意思で行えるようになります。

このとき、土地評価額が持分割合に応じたものとなるように土地を分けることがポイントです。たとえば、2人で2,000万円の土地を共有名義で所有していたときは、分筆後、それぞれの所有する土地の評価額が1,000万円になるようにするということです。

「1つの土地を2つに分ける」といっても、その方法は色々あります。

ここでは、AとBの2つの図をつかって説明します。

分筆で土地を分ける際の例

Aの分け方であれば、基本的には土地の評価額は同じです。しかし、Bの分け方をした場合、面積は同じでも、道路に接していない土地の方は評価額が低いです。

そのため、このような場合はAの形で分けるということになります。

ただ、共有名義人が3人以上いる場合や立地によっては、評価額を同じになるように分筆することが難しい場合もあります。

そのときは、持分以上の評価額の土地を取得した共有名義人から、持分未満の評価額の土地を取得した共有名義人に、その金額を渡して調整します。

共有名義の土地の分筆については、下記記事でも詳しく解説しています。

7.共有物分割請求訴訟

共有物分割請求訴訟は裁判所の判決で共有名義を解消する方法です。

裁判所の判決としては、現物分割が優先的に検討されます。現物分割が難しい場合に代償分割が検討され、それも難しい場合には、競売にかけるという判決になります。

現物分割は土地の分筆のことで、代償分割は持分移転・持分買取のことです。つまり、ここまで紹介した共有名義人同士で共有名義を解消する方法の中で、どれが適切かを判断する方法とも言えます。

また、もし競売にかけられるということになると、そのときの落札価格は市場価格よりも非常に低くなってしまいます。

土地を売却してしまうことは同じなのに、全部売却したときよりも、売却価格が安くなってしまうデメリットがあります。

そのほか、共有物分割請求訴訟は当事者同士で解決する場合より、費用も時間もかかります。

どうしても当事者同士で話がまとまらない場合のみ、不動産問題に強い弁護士へ相談するようにしてください。

共有物分割請求訴訟の詳しい内容、弁護士への相談のメリットについては、下記記事も参考にしてみてください。

共有持分の不動産をできるだけ高く売却するコツ

売却

ここまで共有名義の土地を解消する方法について解説しました。しかし、さまざまな事情で共有持分の状態のまま売却しなければならないこともあるでしょう。

そのような場合に、できるだけ高く売却するコツは3つあります。

  • 共有名義人全員が同意していることを不動産会社に伝える
  • 売却に反対している共有名義人の説得を不動産会社に依頼する
  • 共有持分の売却実績が豊富な不動産会社へ依頼する

それぞれ詳しく解説していきます。

1.共有名義人全員が同意していることを不動産会社に伝える

不動産会社にとっても、共有名義人の全員が売却に同意しているかどうかは重要です。もし売却の同意が取れていない場合は、そこから始めなければならず、不動産会社の手間も負担も大きいです。

また売買成立の直前になって、共有不動産の売却に反対している人がいると分かったら取引がなくなってしまいます。不動産会社の利益は、売買契約を成立させたことによる仲介手数料です。

そのため、売却活動をして話をまとめたのに、取引がなくなる可能性が高ければ、積極的に動いてはくれません。その結果、手間をかけず売却するために、相場よりも安い価格で売却活動を進める場合もあります。

できるだけ高く売却するためには、不動産会社が全力で売却活動に取り組めるような状態にすることが大切です。

2.売却に反対している共有名義人の説得を不動産会社に依頼する

共有名義人の中に1人でも売却に反対している方がいれば、全部売却はできません。

その方を説得できなければ、持分のみでの売却となって、売却価格は市場価格よりも大きく下がってしまいます。

しかし、反対されている方も何か理由があるはずです。

その理由を不動産の専門家に聞いてもらうことで、より良い解決策が見つかるかもしれません。

また不動産会社の担当者に査定結果などの客観的な資料を準備してもらえば、気持ちが変わるかもしれません。

そのため、共有名義人の中に反対されている方がいる場合でも、不動産会社に説得してもらえないか相談することをおすすめします。

共有持分の売却における仲介や買取、売却相場については下記記事を参考にしてみてください。

3.共有持分の売却実績が豊富な不動産会社へ依頼する

共有持分を売却するときの不動産会社選びも大切です。共有持分の売却手続きは、単独名義の不動産を売却するときの手続きとは少し違います。

売買契約のときには共有名義人全員の出席が必要になりますし、出席できない場合には代理人を立てるための委任状の準備も必要です。

共有持分の売却に慣れていない会社に依頼してしまうと、売却価格が安くなるだけでなく、取引がスムーズに進まない可能性もあります。不動産会社へ売却の相談に行ったときには、過去に共有持分を売却した実績があるかも確認するようにしてください。

相談したときに、必要な書類や売却の流れなどを詳しく教えてくれる不動産会社であれば安心です。

当社、クランピーリアルエステートでも共有持分の買取をおこなっております。

税理士や弁護士などを中心とした士業とのネットワークを活かした買取をしているので、他の共有者とトラブルにならない方法で柔軟に対応できるという強みがあります。

共有不動産そのものの売却はもちろん、あなたの共有持分だけでも素早く、高価に買い取り致します。

共有名義人が行方不明でも売却できるケース

まず、自分の持分のみであれば、共有名義人が行方不明であっても問題なく売却できます。しかし、土地のすべてを売却したいときには特別な対応が必要になります。

同意していない共有名義人が1人でもいれば、土地のすべてを売却することはできないからです。このことは、共有名義人が行方不明であっても例外ではありません。

そのため、まずは行方不明の共有名義人を捜すことから始まります。知り合いや実家に連絡し、それでもわからない場合には住民票の追跡調査などを行います。

通常、住民票の開示には本人の委任状が必要です。ですが、正当な使用目的があると役所が認めた場合には委任状がなくても開示してもらえます。そして、土地売却の同意を得るためということであれば認められる場合が多いです。

ただ、実際には住民票の追跡調査を行っても行方不明の共有名義人を見つけるのは難しいです。

そこで、共有名義人がどうしても見つからないときには、不在者財産管理人を選任します。そうすることで売却が可能になります。

不在者財産管理人は行方不明者の財産を管理する人

不在者財産管理人とは、家庭裁判所によって選任された行方不明になっている方の財産を管理・保全する人のことをいいます。

裁判所が不在者財産管理人をつけてもよいと認めるのは、その人物が「容易に帰来する見込みのない」ときだけです。

認められるのは、1年以上連絡がつかない時です。2~3カ月連絡が取れないだけでは、行方不明とは認められないので注意してください。

そして、不在者財産管理人になるのに必要な資格はありませんが、一般的にはその行方不明者の親族が選ばれます。

ただし、共有名義人のような行方不明者と直接的な利害関係がある場合には認められない可能性が高いです。

その場合には他の親族か、家庭裁判所が弁護士や司法書士などの中から選ぶことになります。

不在者財産管理人については、こちらの記事でも紹介しています。

不在者財産管理人が土地を売却するには家庭裁判所の許可が必要

不在者財産管理人を選任しただけでは土地を売却することはできません。

なぜなら、不在者財産管理人に認められた権限は、財産を適切に管理・保全することまでで、行方不明者の財産を処分することは認められていないからです。

つまり土地の売却は権限を越えた行為となるため、権限外行為許可の申立てを家庭裁判所におこない、許可を得る必要があります。

このとき、土地の売却が不在者である共有名義人の不利益とならないように、土地の売却予定価格が、市場価格に沿った適正な価格であることを示します。

市場価格を示すときには、不動産鑑定士に土地の鑑定を依頼することをおすすめします。

失踪宣告の制度を利用する方法もある

共有名義人が行方不明になっている土地を売却するときには、不在者財産管理人を選任する以外に、失踪宣告の制度を利用する方法があります。

この制度は、行方不明の期間が7年以上になっている場合に、失踪宣告することで、行方不明者を死亡したものとみなします。

その結果、行方不明者の財産は相続人へ相続され、その相続人の同意を得られれば土地を売却できるというわけです。

また行方不明者に相続人がいない場合は、持分の放棄と同等の扱いとなり、他の共有名義人に帰属することになります。

そのため、行方不明者を除いた共有名義人の同意で土地を売却できるようになります。

まとめ

共有名義の土地は相続によって権利関係が複雑になったり、共有者全員の同意を得られず売却が難しくなったりといったリスクが考えられます。

面倒だからと共有名義のまま土地を所有していても良い方向に進むことはまずないため、できるだけ早く共有状態を解消しましょう。

共有者同士での話し合いが難しい場合は、不動産会社や弁護士への相談も検討してみてください。

また、「なるべく早く持分を手放したい」「面倒な手続きなしで共有状態を解消したい」といった場合は、共有持分を専門とする買取業者への相談も検討すると良いでしょう。

専門の不動産会社に相談することをおすすめします。

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更新日 : 2024年05月23日
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