共有私道には2種類ある
共有私道には、下記の2種類があります。
| 種類 |
概要 |
権利関係の特徴 |
| 共同所有型私道 |
私道全体を複数の所有者が共同で所有しているタイプ。 |
私道全体を複数の所有者が共同で所有しているタイプ。
所有者全員が道路全体に対して共有持分を持ち、通行については自由。修繕などの管理行為については過半数の同意、変更・処分行為については全員の同意が必要となる。 |
| 相互持合型私道 |
各所有者が自分の敷地の一部を道路として提供し、互いに通行を認め合っているタイプ。 |
通行権を相互に認める関係であり、道路全体を共有しているわけではない。 |
それぞれの私道で、権利関係が異なります。
そのため、私道に接する土地を売却したいときは、自分の私道持分(私道における自分の所有権)がどのような状態になっているのかを確認しましょう。
共有私道の種類について調べたいときは、法務局に申請して私道の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得すればわかります。
共同所有型私道|私道全体を複数人で共有している
共同所有型私道・・・1つの私道を複数人で共有している状態
私道が共有名義となっており、共有者それぞれが私道全体に権利を有しています。そのため、私道の通行に関して共有者から許可をもらう必要はありません。
一方で、私道の舗装や水道管の引き直しなどをおこなうには、共有者の同意が必要になります。
なぜなら、共有物に関する「管理行為」は「共有持分の過半数」が必要であると民法第252条で定められており、私道の舗装や水道管の引き直しなどが管理行為に該当するからです。
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。出典:e-Govポータル「民法第252条」
共有物に対してどのような行為であれば単独でおこなえるのか詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にするとよいでしょう。
相互持合型私道|各宅地が私道の一部を分筆して所有している
相互持合型私道・・・分筆した私道を近隣住民がそれぞれ単独所有している状態
1つの私道を縦・横に分筆してあり、それぞれが単独名義の土地になっています。自分が所有している私道が、必ずしも自分の土地に接しているとは限りません。
通行に関しては所有者同士で取り決めをすべきですが、暗黙的に「なんとなく」で許可しあっているケースもあります。
舗装などの工事は、原則としては自分の所有部分だけなら自由です。
ただし、自分の所有部分のみを工事するときでも、他所有者の私道部分まで影響が出る場合は「掘削承諾」を得る必要があります。実際に手を加えなくても、工事車両が通る場合などは同じように許可が必要です。
共有私道に接する土地を売却するときの注意点
共有私道に接する土地は、私道の権利関係や費用負担、建築可否などが分かりにくく、売却を考える際に買主にとって不安材料となりやすい物件です。
事前の準備が不十分だと、売買交渉が難航したり、価格を下げざるを得なくなったりする可能性もあるため、注意が必要です。
物件をスムーズに売却するためには、共有私道に関するリスクを整理し、買主に分かりやすく説明できる状態にしておくことが重要です。
主に、以下の点を確認・整理しておきましょう。
- 売却前に共有私道の権利を明確にしておく
- 私道が建築基準を満たしているか確認する
- 私道の持分がない場合は通行権利を確保する
次の項目では、共有私道に接する土地を売却するときの注意点を順に解説しますので、売買交渉を進める際の参考にしてください。
売却前に共有私道の権利を明確にしておく
大切なのは、共有私道に関する権利を明確にして、買主にとっての不安材料を取り除くことです。
具体的には、以下の3つを実施しましょう。
- 掘削承諾を得る
- 共有私道の持分割合を明確にする
- 私道にかかる費用を計算する
上記3つを実施すれば、共有私道のリスクは大幅に低減できる可能性があります。
私道の共有者に掘削承諾をもらう
共有私道の補修や水道管・ガス管などのインフラ整備をするとき、共有者から掘削承諾をもらわなければならないケースもあります。
物件を購入した買主が新築や建て替えに伴ってインフラ整備をしようとしても、共有者から承諾をもらえず、トラブルに至ることも少なくありません。
このようなトラブルを避けるためにも、掘削工事をおこなう可能性がある旨を、物件売却前に私道共有者に了承してもらいましょう。
掘削承諾は工事内容の誤解や認識のずれを防ぐためにも、口約束だけではなく承諾書を作成して私道共有者に署名捺印をもらうことが大切です。
共有私道の持分割合を明確にする
共有私道全体の補修が必要になった場合、共有者全員で費用を負担するのが原則です。
例えば、「共有私道の補修工事費用が6万円」「共有者は6人」「共有私道の持分はそれぞれ1/6ずつ」だとすると、各共有者の費用負担は1万円となります
しかし、持分割合がはっきりしていないと費用負担額が妥当なのか判断できません。
そのため、土地の売却前に持分割合を明確にしておき、買主に伝えおきましょう。持分割合を伝えておかないと、将来的に買主と私道共有者との間でトラブルが起こるかもしれません。
通行料や掘削承諾料など「私道にかかる費用」をまとめる
私道を共有していることで、通行料や整備協力金、掘削承諾料などを共有者に支払うときがあります。共有者間のルールとして定期的に私道の補修工事をおこなっていることもあるでしょう。
「共有私道に関わる費用が年間どのくらいの金額になるのか」がわかれば、買主も安心できるため土地を購入しやすくなります。
費用の目安は以下でご確認ください。
| 費用の項目 |
内容 |
相場の目安 |
| 通行料 |
私道を通行するために私道所有者へ支払う費用 |
年数千円〜数万円程度 |
| 整備協力金・維持管理費 |
私道の清掃・舗装補修・排水整備などの維持管理費用 |
年数千円〜数万円程度 |
| 補修工事費用 |
舗装の打ち替えや側溝補修など、大規模な修繕費用 |
数万円〜数十万円程度(持分割合に応じて負担) |
| 掘削承諾料 |
上下水道・ガス管などの工事で私道を掘削する際の承諾費用 |
無料〜数万円程度 |
| 登記・契約書作成費用 |
通行地役権設定や承諾書作成にかかる費用 |
数万円程度 |
私道にかかる費用の有無や金額、負担方法は、私道の場所や利用状況、共有者間の取り決めなどによって異なります。
また、私道の費用負担額は土地の売却価格にも影響するため、年間費用はおおよそでも算出することをおすすめします。
私道が建築基準を満たしているか確認する
共有私道が建築基準法を満たしていないとしたら、原則として再建築不可物件として建て替えや増改築できません。
建築基準法では、災害時の避難や消防活動の安全を確保するため、原則として「幅員4m以上の道路に敷地が2m以上接していなければならない」と定められています。
この基準は、戦後の市街地整備を進める中で設けられたもので、現在も建築の基本ルールとして適用されています。
再建築不可物件は宅地としての利用が難しいため、資産価値は低くなる傾向にあります。相場の5割~7割程度になることもありますが、立地や用途などにより、変動も考えられます。
売却する前に、建築基準法によって認められている私道なのか確認しましょう。
ちなみに、建築基準法の基礎知識や注意点などは以下の記事でわかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
私道の持分がない場合は通行権利を確保する
数は少ないですが、場合によっては「共有私道の持分がない土地」もあります。
土地に接する私道の持分を持っていない場合、出入りは「他人の私道を利用させてもらっている」状態です。
私道所有者の都合で通行を妨害されたり、通行料が高額になるといった不安材料があるため、買主側としても購入は躊躇します。
このような不安材料を取り除くためには、持分がなくても通行権利を確保しておくことが重要です。
もしくは、私道持分がない状態で不動産を売却する方法もあります。こちらの方法については、下記の記事も参考にしてください。
通行地役権を設定してもらう
通行地役権・・・私道を通行するための権利
私道所有者との間に私道を通行する契約を結ぶと「通行地役権」を得られます。
「とくに契約を結ばずに私道を利用していた」というケースの場合、暗黙の了解で私道の利用が許可されていた可能性がありますが、法的な権利はありません。
そのため、物件を売却して所有者が変わったタイミングで、私道の所有者が通行を拒否したり、条件を変更したりするリスクが生じます。買主と私道所有者が私道の利用を巡ってトラブルに発展してしまうかもしれません。
土地の売却前に私道利用について改めて私道所有者と確認しておくことをおすすめします。口頭だけでなく契約書を作成し、利用料の有無や車両通行の可否といった条件を記載するとよいでしょう。
また、法務局で通行地役権を登記しておけば、公的な証明となります。通行地役権の登記は、私道共有者と共同で申請するのが原則です。
私道持分を購入する
通行地役権を設定するだけでなく、私道の持分を購入することも買主を安心させる手段の1つです。
私道の持分があれば自由に通行する権利が認められるため、通行地役権の設定や通行料を支払うなどの必要がなくなります。
通行料を毎年支払うより、持分を購入する方がトータルの費用負担を減らせるケースもあるかもしれません。
ただし、私道所有者と取引価格の折り合いがつかなかったり、売買交渉自体を拒否されたりという可能性もあります。
私道持分の売買交渉をおこなうのであれば、相手に失礼のないよう誠意をもった対応を心がけましょう。一緒に登記してもらえるよう交渉が必要な場合は、弁護士に相談しましょう。
共有私道に接する土地の売却はどこに相談すべき?
共有私道の種類や売却時の注意点を解説しましたが、結局のところ「共有私道に接する土地」を売却するなら、どこに相談すべきなのでしょうか?
不動産を売却するときは不動産会社に相談するのが一般的ですが、ひとくちに不動産会社といっても種類があり、大きく「仲介業者」と「買取業者」に分かれます。
| 項目 |
概要 |
| 仲介業者 |
買主を探して売却する一般的な方法。時間や手間はかかるものの、市場価格に近い金額で売却できる可能性が高い。
ただし、共有私道など権利関係が複雑な物件では売却が長期化することもある。
|
| 買取業者 |
不動産会社が直接物件を買い取る方法。
短期間で現金化しやすく、手間が少ない反面、 売却価格は相場より低くなる傾向がある。
共有私道など条件の難しい土地でも対応してもらえる場合がある。
|
それぞれに特色があるので、自分の希望に合ったところを選ぶことが大切です。
「時間や手間を惜しまず高値で売りたい」なら仲介業者へ相談しよう
不動産の売却を考えるとき、まず思い浮かぶのは仲介業者でしょう。買主を探してもらう代わりに、仲介料を支払うシステムです。
仲介料の分を考慮しても、買取業者に依頼するより高値で売却できる場合が多いでしょう。
ただし、仲介業者は物件の宣伝や売買契約の締結はサポートしてくれますが、権利関係のトラブルは解決できないことがほとんどです。
「共有私道に接する土地」に関しても、通行料や掘削承諾料に関する交渉は自分でおこなうか、弁護士などに別途相談する必要があります。
「短期間で売却したい」「面倒なことはしたくない」なら買取業者に相談すべき
買取業者は、不動産を自社で直接買い取る業者です。買い取った後はそのまま運用するか、不動産の価値を高めてから売却します。
そのため、仲介業者と比べて売却価格が下がりやすい傾向があります。
これは、買取業者が再販売を前提として、私道の通行権や掘削承諾といった権利関係の整理を行うほか、舗装や排水などの補修工事を実施するケースがあるためです。
また、状況によってはトラブル対応のための専門家費用や、再販売までにかかる税金・管理費なども、あらかじめ業者側が負担する必要があります。
一方で、買取業者のメリットは現状のまま不動産を買い取ってもらえる点です。私道に関するトラブルが起きていても、そのまま買取をしてくれます。
早ければ2日程度で買い取ってもらえるため、売却にあたって面倒な手続きや私道共有者との交渉をしたくない場合は、買取業者に相談することをおすすめします。
「弁護士と連携した買取業者」なら高額買取も期待できる
「買取業者は仲介業者と比べて売却価格が下がりやすい」といわれることもありますが、実際には業者の選び方次第で大きく差が出ます。
とくに、弁護士と連携した買取業者は、買い取った後の権利調整をスムーズにおこないコストを抑えられるため、買取価格に期待ができるケースもあります。
共有私道に接する土地の売却に関するトラブルと解決方法
共有私道に接する土地は権利関係が複雑に絡むため、共有者とトラブルに発展しやすくなります。
とくに起こりやすいトラブルには、以下の3つがあります。
- 掘削承諾が得られない
- 私道が建築基準を満たしていない
- 私道が荒れていて物件の印象が悪い
これらのトラブルの詳細を事前に把握し、適切な対処をできるようにしましょう。
次の項目から、それぞれのトラブルと解決方法を解説していきます。
掘削承諾が得られない
売却前に共有者から掘削承諾を得ようとしても、拒否されてしまう可能性があります。
「次の買主がどのような人物かわからないうちは掘削承諾を認めたくない」という私道共有者がいるかもしれません。
交渉が難航すれば、土地の売却にも支障が出る可能性があります。
【解決方法】私道共有者との交渉を弁護士に依頼する
共有者から掘削承諾をもらえなくても、私道やライフラインなどの修繕には生活に不可欠な「公共性」があるとされ、裁判所が掘削工事を認めた事例もあります。
しかし、基本的に下水道法や民法などの法律を根拠に判断が下されますが、すべての掘削工事が認められるわけではありません。
掘削の必要性や工事内容、私道の権利関係、共有者とのこれまでのやり取りなどによって結論が変わる可能性が高いため、不動産の権利関係に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。
私道が建築基準を満たしていない
古くからある物件や道路には、なんども建築基準法が改正されたことによって、再建築が認められなくなった物件があります。
そのため、共有私道に接する土地が昔から存在するものであれば、建築基準を満たしていないこともあり得ます。
先に解説したように、再建築不可物件は資産価値が下がってしまい、売却価格を低く設定しなければなりません。
【解決方法】セットバックして建築基準を満たす
私道の幅員が建築基準を満たしていないのであれば「セットバック」を行うことで再建築が可能になります。
セットバック・・・所有している土地の境界を後退させ、道路の幅員を広げる手段
例えば、共有私道の幅員が3mだとすると、土地を1m後退させる(セットバックする)ことで、道路の幅員が4mとなるため建築基準をクリアできます。
セットバックした部分は私道となりますが、地目変更しないままだと宅地扱いになります。
地目が宅地のままであると、使用状況としては道路であっても固定資産税などの税金がかかるため、法務局で地目変更の手続きを検討しましょう。
私道が荒れていて物件の印象が悪い
「私道のアスファルトにおける凹凸が激しい」「雨が止んでも大きな水たまりが残る」など、私道に不具合があると物件の印象も悪くなります。
その結果、買主から物件の購入を敬遠されたり、値下げ交渉の材料として利用されたりする可能性もゼロではありません。
土地をスムーズに売却するためにも、私道の状態を改善するとよいでしょう。ただし、工事の実施や費用負担について共有者と話し合う必要があります。
【解決方法】補助金を利用して私道を修繕する
私道の状態が悪く、修繕する範囲や規模が大きいほど費用も高くなってしまいます。
持分割合のみの金額負担だとしても「費用がかかるなら修繕しなくてもいい」と主張する共有者もいるかもしれません。
このようなとき、私道の整備に対して自治体から補助金や助成金が受けられることを伝えると、承諾してもらえる可能性が高くなります。
補助率や上限額は市町村により異なりますが、私道の状況や道幅、関係者の同意など、各自治体の条件を満たすことで助成金を申請することが可能です。
まずは、私道所在地を管轄する役所に確認してみましょう。
まとめ
共有私道に接する土地は、私道の権利関係や利用ルール、費用負担の有無などが複雑になりやすく、一般的な土地と比べて売却時に注意すべき点が多い不動産です。 とくに、私道の種類(共同所有型か相互持合型か)によって、通行の自由度や工事の可否、共有者の同意が必要となる範囲が異なるため、まずは登記簿謄本などで私道の権利関係を正確に把握することが重要です。
また、共有私道が建築基準法上の道路に該当しているかどうかによっては、再建築の可否や資産価値にも大きな影響が出ます。売却前に適合状況を確認し、必要に応じて掘削承諾の取得や通行条件の整理を行っておくことで、買主の不安を軽減し、売却をスムーズに進めやすくなります。
さらに、私道の持分を有していない場合には、通行地役権の設定や私道持分の購入などを検討することで、通行に関するリスクを抑えることも可能です。こうした対応は、買主にとっての安心材料となり、結果として売却条件の改善につながることもあります。
共有私道に関わる問題は、個々の事情や共有者との関係性によって対応が大きく異なります。自力での調整が難しいと感じた場合は、私道や権利関係に詳しい不動産会社や弁護士に相談することで、トラブルを回避しながら、状況に応じた売却方法を検討しやすくなるでしょう。