共有私道には2種類ある
共有私道には、下記の2種類があり、それぞれの私道で、権利関係が異なります。
| 種類 |
概要 |
権利関係の特徴 |
| 共同所有型私道 |
私道全体を複数の所有者が共同で所有しているタイプ。 |
私道全体を複数の所有者が共同で所有しているタイプ。
所有者全員が道路全体に対して共有持分を持ち、通行については自由。修繕などの管理行為については過半数の同意、変更・処分行為については全員の同意が必要となる。 |
| 相互持合型私道 |
各所有者が自分の敷地の一部を道路として提供し、互いに通行を認め合っているタイプ。 |
通行権を相互に認める関係であり、道路全体を共有しているわけではない。 |
そのため、私道に接する土地を売却したいときは、自分の私道持分が「所有権なのか通行権なのか」「共有か単独所有か」といった権利の整理状況を把握することが前提となります。
実際のご相談でも、登記上は共有持分が存在していないにもかかわらず「私道を共有している認識だった」というケースや、逆に共有持分があるにもかかわらず管理ルールが曖昧なままになっているケースが一定数見受けられます。
こうした認識のズレは、売却時の説明や条件整理で支障になることがあるため注意が必要です。
共有私道の種類について調べたいときは、法務局に申請して私道の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得すればわかります。
登記事項証明書は法務局の窓口で取得する他、オンラインで請求も可能です。オンラインで請求する場合は郵送、または請求後に最寄りの登記所や法務局証明サービスセンターで受け取れます。
参照:法務局|登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です
ここからは、2種類の共有私道について詳しく解説していきます。
共同所有型私道|私道全体を複数人で共有している
共同所有型私道・・・1つの私道を複数人で共有している状態
私道が共有名義となっており、共有者それぞれが私道全体に権利を有しています。通行については共有持分に基づく使用権が認められるため、私道の通行に関して共有者から許可をもらう必要はありません。
一方で、私道の舗装や水道管の引き直しなどをおこなうには、共有者の同意が必要になります。
なぜなら、このような大規模な行為は民法上の「管理行為」とみなされるからです。
共有物に関する「管理行為」は「共有持分の過半数」が必要であると民法第252条で定められており、舗装や上下水道の敷設・更新といった行為は、判例・実務上も管理行為として取り扱われるケースが多いです。
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。出典:e-Govポータル「民法第252条」
なお、工事の規模や内容によっては共有者全員の同意が必要な「変更行為」に該当する可能性もあり、実務上は事前に範囲を精査することが重要です。
当社に寄せられるご相談でも、「一部の共有者の同意しか得られていない状態で工事を進めてしまい、後からトラブルになった」というケースは珍しくありません。
特にインフラ関連の工事は利害関係が大きくなりやすく、合意形成の難易度が上がる傾向があります。
共有物に対してどのような行為であれば単独でおこなえるのか詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にするとよいでしょう。
相互持合型私道|各宅地が私道の一部を分筆して所有している
相互持合型私道・・・分筆した私道を近隣住民がそれぞれ単独所有している状態
1つの私道を縦・横に分筆してあり、それぞれが単独名義の土地になっています。この形態では、私道全体としての共有関係は存在せず、あくまで個別の土地所有権と通行承諾の積み重ねによって道路機能が維持されています。
そのため、自分が所有している私道が必ずしも自分の土地に接しているとは限らないケースも実務上よく見られます。
通行に関しては所有者同士で取り決めをすべきですが、暗黙的に「なんとなく」で許可しあっているケースもあります。こうした場合、売却時に買主側から通行の法的根拠を確認されることがあります。
舗装などの工事は、原則としては自分の所有部分だけなら自由です。
ただし、自分の所有部分のみを工事するときでも、他所有者の私道部分まで影響が出る場合は、事前に「掘削承諾」を得る必要があります。実際に手を加えなくても、工事車両が通る場合などは同じように許可が必要です。
特に掘削を伴う工事では、他人地への影響の有無にかかわらず「掘削承諾書」の提出を求められるケースが多く、工事車両の通行や資材搬入についても同様に調整が必要となるのが実態です。
共有私道に接する土地を売却するときの注意点
共有私道に接する土地は、私道の権利関係や費用負担、建築可否などが分かりにくく、売却を考える際に買主にとって不安材料となりやすい物件です。
実際のご相談でも、「通行は問題ないと思っていたが、いざ売却しようとしたら通行の根拠を求められた」「私道の説明がうまくできず、内見後に見送りになった」といったケースは少なくありません。
事前の準備が不十分だと、売買交渉が難航したり、価格を下げざるを得なくなったりする可能性もあるため、注意が必要です。
物件をスムーズに売却するためには、共有私道に関する権利関係やリスクを整理し、買主に分かりやすく説明できる状態にしておくことが重要です。
主に、以下の点を確認・整理しておきましょう。
- 売却前に共有私道の権利を明確にしておく
- 私道が建築基準を満たしているか確認する
- 私道の持分がない場合は通行権利を確保する
次の項目では、共有私道に接する土地を売却するときの注意点を実務の観点を踏まえて解説するため、売買交渉を進める際の参考にしてください。
売却前に共有私道の権利を明確にしておく
大切なのは、共有私道に関する権利を明確にして、買主にとっての不安材料を取り除くことです。
売買実務では、買主側が確認する事項として「どの範囲まで通行が許容されるか」「将来の建替え時に支障がないか」「共有者間の合意形成がどの程度整っているか」といった点が重視される傾向にあります。
たとえば弊社へのご相談では、「長年問題なく通行できていたため権利関係を気にしていなかったが、売却時に初めて書面がないこととに気づいた」というケースが多く見られます。
このような場合、買主側から追加資料を求められたり、条件調整が必要になったりすることがあります。
スムーズに売却を進めるために、具体的には、以下の3つを実施しましょう。
- 掘削承諾を得る
- 共有私道の持分割合を明確にする
- 私道にかかる費用を計算する
これらは、いずれも契約不適合責任や引渡後の紛争リスクに直結しやすいポイントです。
つまり、上記3つを実施すれば、共有私道のリスクは大幅に低減できる可能性があります。
私道の共有者に掘削承諾をもらう
共有私道の補修や水道管・ガス管などのインフラ整備をするとき、共有者から掘削承諾をもらわなければならないケースもあります。
特に建替えや新築時には、既存配管の更新や新規引込が発生するため、承諾の有無および範囲が具体的な確認事項となるケースが多く見られます。
物件を購入した買主が新築や建て替えに伴ってインフラ整備をしようとしても、共有者から承諾をもらえず、トラブルに至ることも少なくありません。
また、承諾が得られていない場合、工事計画の変更や追加調整が必要となる可能性があります。
実際にあったケースでは、「既存建物の建替えなら問題ないだろう」と考えていたものの、いざ買主が建替えを検討した際に共有者の承諾が得られず、契約直前で話が止まってしまった事例があります。
このようなトラブルを避けるためにも、売却前の段階で掘削工事をおこなう可能性がある旨を伝え、私道共有者から承諾を得るようにましょう。
掘削承諾は工事内容の誤解や認識のずれを防ぐためにも、口約束だけではなく承諾書を作成して私道共有者に署名捺印をもらうことが大切です。
実際の取引でも、承諾内容が口頭ベースにとどまっていたために、引渡後に認識相違が生じたというケースは一定数確認されています。
共有私道の持分割合を明確にする
共有私道全体の補修が必要になった場合、持分割合に応じて共有者全員で費用を負担するのが原則です。
例えば、「共有私道の補修工事費用が6万円」「共有者は6人」「共有私道の持分はそれぞれ1/6ずつ」だとすると、各共有者の費用負担は1万円となります
しかし、登記上の持分と実際の利用状況が一致していない、あるいは持分割合自体が曖昧なケースも存在します。
実際の相談でも、「過去の慣習で均等負担していたが、登記上は持分が偏っていた」ということが判明し、売却時に説明を求められたケースがあります。
そのため、売却前に登記事項証明書等をもとに持分割合を確認し、費用負担の前提として説明できる状態にしておくことが求められます。
当社に寄せられるご相談でも、「過去の経緯が不明確で持分割合が整理されていない」というケースは一定割合で見受けられ、売買条件の調整に影響する要因となっています。
通行料や掘削承諾料など「私道にかかる費用」をまとめる
私道に関する費用には、通行料、維持管理費、補修費、掘削承諾料などが含まれます。
これらは契約書に基づくものだけでなく、地域慣行や共有者間の合意により運用されているケースも多く、内容の把握が不十分なままになっていることも少なくありません。
なかには「特に決まりはないが毎年なんとなく集金している」というケースも多く、いざ売却する段階で金額やルールを説明できないことがあります。
実際に、「年間いくらかかるのか分からない」と伝えたことで、買主が将来の負担をイメージできず、購入を見送ったという事例もあります。
そのため、過去の支払実績や取り決め内容を整理し、年間ベースでの概算費用を提示できる状態にしておくことが望まれます。
「共有私道に関わる費用が年間どのくらいの金額になるのか」がわかれば、買主も安心できるため土地を購入しやすくなるでしょう。
費用の目安は以下でご確認ください。
| 費用の項目 |
内容 |
相場の目安 |
| 通行料 |
私道を通行するために私道所有者へ支払う費用 |
年数千円〜数万円程度 |
| 整備協力金・維持管理費 |
私道の清掃・舗装補修・排水整備などの維持管理費用 |
年数千円〜数万円程度 |
| 補修工事費用 |
舗装の打ち替えや側溝補修など、大規模な修繕費用 |
数万円〜数十万円程度(持分割合に応じて負担) |
| 掘削承諾料 |
上下水道・ガス管などの工事で私道を掘削する際の承諾費用 |
無料〜数万円程度 |
| 登記・契約書作成費用 |
通行地役権設定や承諾書作成にかかる費用 |
数万円程度 |
私道にかかる費用の有無や金額、負担方法は、私道の場所や利用状況、共有者間の取り決めなどによって異なります。
また、私道の費用負担額は土地の売却価格にも影響するため、年間費用はおおよそでも算出することをおすすめします。
私道が建築基準を満たしているか確認する
共有私道が建築基準法上の接道義務を満たしていない場合、原則として再建築不可物件として建て替えや増改築できません。
建築基準法では、災害時の避難や消防活動の安全を確保するため、原則として「幅員4m以上の道路に敷地が2m以上接していなければならない」と定められています。
この基準は、戦後の市街地整備を進める中で設けられたもので、現在も建築の基本ルールとして適用されており、売買においても必須の確認項目です。
実際の現場でも、「再建築できると思っていたが、調査の結果できないことが判明し、価格の見直しが必要になった」というケースは少なくありません。
そのため、売却前に、対象私道が建築基準法上の道路に該当するか、接道状況に問題がないかを確認しておきましょう。
再建築不可物件は宅地としての利用が難しいため、資産価値は低くなる傾向にあります。相場の5割~7割程度になることもありますが、立地や用途などにより、変動も考えられます。
売却する前に、建築基準法によって認められている私道なのか確認しましょう。
ちなみに、建築基準法の基礎知識や注意点などは以下の記事でわかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
私道の持分がない場合は通行権利を確保する
数は少ないですが、場合によっては「共有私道の持分がない土地」もあります。
土地に接する私道の持分を持っていない場合、出入りは「他人の私道を利用させてもらっている」状態です。
私道所有者の都合で通行を妨害されたり、通行料が高額になるといった不安材料があるため、買主側としても購入は躊躇します。
実際に、「これまで問題なく通れていた」という説明だけでは不十分と判断され、契約に至らなかったケースもあります。
このような不安材料を取り除くためには、持分がなくても通行権利を確保しておくことが重要です。
もしくは、私道持分がない状態で不動産を売却する方法もあります。こちらの方法については、下記の記事も参考にしてください。
通行地役権を設定してもらう
通行地役権・・・私道を通行するための権利
私道所有者との間に私道を通行する契約を結ぶと「通行地役権」を得られます。
「とくに契約を結ばずに私道を利用していた」というケースの場合、暗黙の了解で私道の利用が許可されていた可能性がありますが、法的な権利はありません。
そのため、物件を売却して所有者が変わったタイミングで、私道の所有者が通行を拒否したり、条件を変更したりするリスクが生じます。買主と私道所有者が私道の利用を巡ってトラブルに発展してしまうかもしれません。
「昔から使っているから大丈夫」と考えていたものの、書面がなかったために買主側から不安視された、という相談は実務上よく見られます。
そのため、土地の売却前に私道利用について改めて私道所有者と確認しておくことをおすすめします。口頭だけでなく契約書を作成し、利用料の有無や車両通行の可否といった条件を記載するとよいでしょう。
また、法務局で通行地役権を登記しておけば、公的な証明となります。通行地役権の登記は、私道共有者と共同で申請するのが原則です。
私道持分を購入する
通行地役権を設定するだけでなく、私道の持分を取得する方法もあります。
私道の持分があれば自由に通行する権利が認められるため、通行地役権の設定や通行料を支払うなどの必要がなくなります。
通行料を毎年支払うより、持分を購入する方がトータルの費用負担を減らせるケースもあるかもしれません。
実務の現場でも、「毎年通行料を払っていたが、将来的な負担を考えて持分購入を検討した」というケースもあります。
ただし、私道所有者と取引価格の折り合いがつかなかったり、売買交渉自体を拒否されたりという可能性もあります。
そのため、持分取得はあくまで選択肢の一つとして、相手方との関係性や条件を踏まえて検討することが現実的です。
私道持分の売買交渉をおこなうのであれば、相手に失礼のないよう誠意をもった対応を心がけましょう。一緒に登記してもらえるよう交渉が必要な場合は、弁護士などの専門家に相談しながら進めることがおすすめです。
共有私道に接する土地の売却はどこに相談すべき?
共有私道の種類や売却時の注意点を解説しましたが、実際のご相談でも多いのが<「結局どこに相談するのが良いのかわからない」という点です
不動産を売却するときは不動産会社に相談するのが一般的ですが、ひとくちに不動産会社といっても種類があり、大きく「仲介業者」と「買取業者」に分かれます。
| 項目 |
概要 |
| 仲介業者 |
買主を探して売却する一般的な方法。時間や手間はかかるものの、市場価格に近い金額で売却できる可能性が高い。
ただし、共有私道など権利関係が複雑な物件では売却が長期化することもある。
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| 買取業者 |
不動産会社が直接物件を買い取る方法。
短期間で現金化しやすく、手間が少ない反面、 売却価格は相場より低くなる傾向がある。
共有私道など条件の難しい土地でも対応してもらえる場合がある。
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それぞれに特色があるため、「価格を重視するのか」「スピードや手間を重視するのか」といった優先順位によってご自身の希望に合ったところを選ぶことが大切です。
「時間や手間を惜しまず高値で売りたい」なら仲介業者へ相談しよう
不動産売却で一般的なのが仲介による売却です。仲介は、買主を探してもらう代わりに、仲介料を支払うシステムです。
市場に出して買主を探すため、条件が整えば市場価格に近い水準での成約が期待できる点が特徴です。
仲介料の分を考慮しても、買取業者に依頼するより高値で売却できる場合が多いでしょう。
実際のご相談でも、「時間はかかってもできるだけ高い条件で売却したい」という場合には、まず仲介を検討するケースが多く見られます。
一方で、共有私道に接する土地の場合、権利関係や利用条件の説明が必要になる場面が多く、買主側の理解を得るまでに時間がかかることがあります。
たとえば、「通行承諾の内容が曖昧」「掘削の可否が整理されていない」といった状態では、内見後に検討が進まないケースも一定数見受けられます。
また、仲介業者は売買契約のサポートが中心となるため、共有者間の調整や法的な整理については、必要に応じて弁護士などの専門家へ別途相談するケースが一般的です。
「共有私道に接する土地」に関しても、通行料や掘削承諾料に関する交渉は自分でおこなうか、弁護士などに別途相談する必要があります。
「短期間で売却したい」「面倒なことはしたくない」なら買取業者に相談すべき
買取業者は、不動産を自社で直接買い取る業者です。業者自身が買主となるため、条件が合えば比較的短期間で契約まで進む点が特徴です。
買い取った後はそのまま運用するか、不動産の価値を高めてから売却します。
買取業者は仲介業者と比べて売却価格が下がりやすい傾向があります。
これは、取得後に権利関係の整理や工事対応、再販売に向けたコストが見込まれるためです。
また、状況によってはトラブル対応のための専門家費用や、再販売までにかかる税金・管理費なども、あらかじめ業者側が負担する必要があります。
一方で、買取業者のメリットは現状のまま不動産を買い取ってもらえる点です。私道に関するトラブルが起きていても、そのまま買取をしてくれます。
早ければ2日程度で買い取ってもらえるため、共有者との調整に時間をかけられない」「条件整理に不安がある」といった場合には、こうした選択肢も検討されることがあります。
専門家と連携している事業者に相談するケースもある
共有私道が関係する売買では、通行権や承諾関係など、法的な整理が必要になる場面もあります。
そのため、不動産会社単独ではなく、弁護士や司法書士などの専門家と連携して対応する体制が取られるケースもあります。
実際のご相談でも、「共有者間の合意形成に不安がある」「権利関係の整理が必要そう」といった場合には、こうした連携体制を前提に進められることがあります。
法的な整理が必要になることが多い不動産の場合、弁護士と連携した専門の買取業者を利用するのも一つの方法です。
弁護士と連携した買取業者は、買い取った後の権利調整をスムーズにおこないコストを抑えられるため、買取価格に期待ができるケースもあります。
共有私道に接する土地の売却に関するトラブルと解決方法
共有私道に接する土地は権利関係が複雑に絡むため、共有者とトラブルに発展しやすくなります。
実務上も、権利関係や利用ルールが共有者間の合意に依存しているケースも多く、取引の過程で認識のズレが表面化しやすい傾向があります。
実際のご相談でも、「普段は問題なく使えていたが、売却をきっかけに初めてトラブルが顕在化した」というケースは少なくありません。
とくに起こりやすいトラブルには、以下の3つがあります。
- 掘削承諾が得られない
- 私道が建築基準を満たしていない
- 私道が荒れていて物件の印象が悪い
これらは、いずれも売却活動の途中で発覚すると条件調整が必要になりやすいポイントです。
これらのトラブルの詳細を事前に把握し、適切な対処をできるようにしましょう。
次の項目から、それぞれのトラブルと解決方法を解説していきます。
掘削承諾が得られない
売却前に共有者から掘削承諾を得ようとしても、拒否されてしまう可能性があります。
「次の買主がどのような人物かわからないうちは掘削承諾を認めたくない」という私道共有者がいるかもしれません。
交渉が難航すれば、土地の売却にも支障が出る可能性があります。
実務では、「これまで問題なく通行・利用できていたため承諾の必要性を認識していなかったが、売却を機に書面化を求めたところ合意に至らなかった」という事例が一定数見られます。
【解決方法】私道共有者との交渉を弁護士に依頼する
2023年4月の民法改正により、「ライフライン設置権(民法第213条の2)」が新設されました。
これにより、他人の土地を利用しなければ水道・ガス・下水道・電気などのライフラインを引き込めない場合、一定の要件を満たせば、法律上の権利として私道の掘削や配管工事を行えることが明確化されています。
具体的には、工事内容や時期について事前通知を行うことや、必要に応じて損害金を支払うことなどが求められますが、共有者全員の承諾が得られない場合でも、直ちに工事が不可能になるわけではありません。
一方で、ライフライン設置権があるからといって、無断で掘削工事を進めてよいわけではありません。
実際には、「工事の必要性」「掘削範囲の妥当性」「他共有者への影響」などを巡ってトラブルになるケースも多く、感情的対立へ発展することもあります。
そのため、掘削の必要性や工事内容、私道の権利関係、共有者とのこれまでのやり取りなどによって結論が変わる可能性が高いため、不動産の権利関係に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。
実務上も、当事者間の任意交渉で解決に至らない場合、弁護士を介して法的根拠を整理しながら合意形成を図るケースが多く見られます。
当社に寄せられる事例でも、初期段階では感情的対立に近い状況であっても、論点を法的に整理することで合意に至るケースが一定割合で確認されています。
私道が建築基準を満たしていない
古くからある物件や道路には、建築基準法の改正により現行基準を満たしていないケースがあります。
特に、幅員不足や接道条件を満たしていない場合、建築行為に制限が生じる可能性があります。
そのため、共有私道に接する土地が昔から存在するものであれば、建築基準を満たしていないこともあり得ます。
先に解説したように、再建築不可物件は資産価値が下がってしまい、売却価格を低く設定しなければなりません。
【解決方法】セットバックして建築基準を満たす
私道の幅員が建築基準を満たしていないのであれば「セットバック」を行うことで再建築が可能になります。
セットバック・・・所有している土地の境界を後退させ、道路の幅員を広げる手段
例えば、共有私道の幅員が3mだとすると、土地を1m後退させる(セットバックする)ことで、道路の幅員が4mとなるため建築基準をクリアできます。
セットバックした部分は私道として利用されますが、固定資産税は登記上の地目ではなく「実際の利用状況(現況)」をもとに判断されます。
そのため、セットバック部分を非課税にしたい場合は、単に法務局で地目変更登記を行うだけでは足りません。
対象不動産を管轄する市区町村(役所の税務課や都税事務所など)に対して、「公共の用に供する道路の非課税申告」を行う必要があります。
実務上も、地目を公衆用道路へ変更したので非課税になると思っていたが、申告未了で課税が継続していたというケースは少なくありません。
ただし、後退部分の確保や共有者間の合意、境界確定など複数の要素が関係するため、単純に解決できるとは限りません。
また、2項道路や位置指定道路に該当するかどうかによっても判断が変わるため、行政への事前照会が実務上不可欠です。
当社の実務でも、「再建築不可と認識されていたが、行政調査により条件付きで建築可能と判断された」というケースが一定数存在します。
私道が荒れていて物件の印象が悪い
私道の管理状態は、物件全体の印象形成に影響します。
「私道のアスファルトにおける凹凸が激しい」「雨が止んでも大きな水たまりが残る」など、私道に不具合があると物件の印象も悪くなります。
実務上も、内見時の第一印象として「道路の状態」が評価に影響するケースは多く、舗装の劣化や排水不良が指摘されることがあります。
その結果、買主から物件の購入を敬遠されたり、値下げ交渉の材料として利用されたりする可能性もゼロではありません。
土地をスムーズに売却するためにも、私道の状態を改善するとよいでしょう。ただし、工事の実施や費用負担について共有者と話し合う必要があります。
【解決方法】補助金を利用して私道を修繕する
私道の状態が悪く、修繕する範囲や規模が大きいほど費用も高くなってしまいます。
持分割合のみの金額負担だとしても「費用がかかるなら修繕しなくてもいい」と主張する共有者もいるかもしれません。
実務上は、「必要性は認識されているものの費用負担で合意できない」というケースが多く、修繕が先送りされる傾向があります。
このようなとき、私道の整備に対して自治体から補助金や助成金が受けられることを伝えると、承諾してもらえる可能性が高くなります。
補助率や上限額は市町村により異なりますが、私道の状況や道幅、関係者の同意など、各自治体の条件を満たすことで助成金を申請することが可能です。
まずは、私道所在地を管轄する役所に確認してみましょう。
実際の事例でも、補助金の活用を前提とした再提案により、これまで停滞していた協議が進展したケースが確認されています。
また、売却を優先する場合には、修繕を行わず現況のまま条件整理を行うという選択肢も含め、総合的に判断しましょう。
まとめ
共有私道に接する土地は、私道の権利関係や利用ルール、費用負担の有無などが複雑になりやすく、一般的な土地と比べて売却時に注意すべき点が多い不動産です。
とくに、共同所有型か相互持合型かといった私道の種類私道の種類によって、通行の自由度や工事の可否、共有者の同意が必要となる範囲が異なるため、まずは登記簿謄本などで私道の権利関係を正確に把握することが重要です。
また、共有私道が建築基準法上の道路に該当するかどうかは、建築可否に直結する重要な判断要素であり、売買においても必ず確認されるポイントです。
売却前に適合状況を確認し、必要に応じて掘削承諾の取得や通行条件の整理を行っておくことで、買主の不安を軽減し、売却をスムーズに進めやすくなります。
さらに、私道の持分を有していない場合には、通行地役権の設定や私道持分の購入などを検討することで、通行に関するリスクを抑えることも可能です。こうした対応は、買主にとっての安心材料となり、結果として売却条件の改善につながることもあります。
実務上も、「長年問題なく使えている」という状況だけでは足りず、権利関係の裏付けが求められるケースが多く見られます。
共有私道に関わる問題は、個々の事情や共有者との関係性によって対応が大きく異なります。
そのため、自力での調整が難しいと感じた場合は、私道や権利関係に詳しい不動産会社や弁護士に相談することで、トラブルを回避しながら、状況に応じた売却方法を検討しやすくなるでしょう。