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共有持分の売却は共有者の同意が不要!売却の方法や同意が得られない時の対処

共有不動産全体を売却する場合、共有者全員の同意が必要です。1人でも反対する共有者がいれば、売却を進めることはできません。

一方で、自分の共有持分(共有している不動産において自身が所有している割合部分)のみであれば、他の共有者の同意がなくても自由に売却することが可能です。これは、民法第206条で「所有者はその所有物を自由に処分できる」と定められているためです。

そのため「共有者に反対されている」「話し合いがまとまらない」といった場合でも、自己の持分であれば他の共有者の同意を得ずに単独で売却できます。

ただし、売却先の買主が新たな共有者となるため、他の共有者にとっては第三者が突然加わる形となり、トラブルを招くおそれがあります。特別な事情がない限り、事前に知らせておくのが無難です。

共有持分の売却は、一般の不動産取引とは異なり買い手が限られるため、スムーズに進めるには専門性が欠かせません。

共有者との関係がこじれている場合や、早期に現金化したい場合は、共有持分を専門に扱う買取業者への依頼が有効です。専門業者に依頼すれば、他の共有者に知られずに手続きを進めることも可能です。

ただし、買取りの可否や買取価格は業者によって異なります。

実際、弊社にも「他社では買い取ってもらえなかった」「思ったより安い査定額だった」といった相談が多く寄せられます。こうした失敗を防ぐには、複数の専門業者に査定を依頼し、条件を比較することが重要です。

しかし、共有持分を専門に扱う業者は限られており、ご自身で複数社を探してやり取りするのは大きな手間がかかります。

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共有持分の売却は共有者の同意なしでも可能!

共有名義の不動産でも、自分の共有持分だけであれば他の共有者の同意は不要で売却できます。共有持分とは、共有している不動産において自身が所有している割合部分です。

これは、民法第206条で定められている「所有権の自由処分の原則」に基づき、所有者は法令の範囲内で自由に自らの財産を処分できるとされているためです。

一方で、共有不動産全体の売却は共有者全員の権利に関わるため、民法第251条に定められる「変更行為」に該当します。そのため、共有不動産全体を売却する場合は、原則として共有者全員の同意が必要です。

共有物に関する主な行為の種類と、必要な同意の範囲は次のとおりです。

行為の種類 具体例 共有者の同意
保存行為 共有物の現状維持のための修繕・保存登記・明け渡し請求など 単独で可能
管理行為 短期の賃貸借契約・建物のリフォームや維持管理など 持分の過半数の同意
変更行為(軽微な変更) 土地の分筆や合筆・舗装工事など、形状や効用を著しく変えない行為 持分の過半数の同意
変更行為(重大な変更) 共有不動産全体の売却・建替え・解体・抵当権設定など 全員の同意

このように、自己の共有持分は他の共有者の同意なしで売却できますが、売却後には第三者が新たな共有者として加わるため、関係性が複雑化するおそれがあります。次章でリスクや注意点を確認しておきましょう。

共有者の同意は不要でも関係悪化のリスクに注意

法律上は、共有持分を売却する際に他の共有者の同意や通知は不要です。しかし、実際に無断で売却すると、共有者との関係が悪化するおそれがあります。

共有持分を第三者に売却すると、その買主が新たな共有者となります。他の共有者からすれば、突然知らない人と不動産を共有する状態になり、不信感を抱くケースも少なくありません。

また「共有物分割請求をする」で解説しますが、共有持分を買い取った人には共有物分割請求をする権利があります。共有物分割請求があった場合、最終的には共有状態が強制的に解消されるため、他の共有者の生活や利用状況に影響が出るおそれもあるでしょう。

そのため、親族や共同相続人など、日常的に関係のある共有者には、事前に一言伝えておくとトラブルを避けやすくなります。一方で、他人同士で連絡が取れない場合や、もともと関係が希薄な共有者であれば、必ずしも事前に連絡を取る必要はありません。

なお、業者に売却した場合は、その業者が新たな共有者(所有者)となり、今後は共有者とのやり取りの窓口になります。売却後に業者がどのように他の共有者へ対応してくれるのか、聞いてみるとよいでしょう。

共有持分を売却する主な方法

実務の現場では「共有者の意見がまとまらない」「買い手が見つからない」といった理由で手続きが止まることも少なくありません。

弊社にも「長期間売却活動を続けたが買い手が見つからなかった」「共有者が協力してくれないため持分だけでも売りたい」といったご相談が多く寄せられています。

共有持分の売却には、主に次の3つの方法があります。それぞれの方法で必要な手続きや得られる金額、共有者との関わり方が異なります。

売却方法 特徴・リスク・相場
不動産全体を共有者と一緒に売却 ・ 市場価格に近い高値で売却できるのが特徴
・ 全員の同意が必須のため、共有者間で意見が分かれると長期化するリスクがある
・ 相場:「不動産の全体の価格×持分割合」の100%前後
他の共有者に自分の持分を売却 ・共有者に買い取る資金がなければ取引が成立しない
・ 関係が良好であればスムーズに進むが、価格交渉が難航することもある
・ 理論上は持分割合で金額が決まるが、実際の取引では相場より1〜3割ほど下がる傾向がある
・ 相場:「不動産の全体の価格×持分割合」の70〜90%程度
専門の買取業者など第三者に自己持分を売却 ・ 共有者の同意が不要で、最短数日〜1ヵ月で現金化できるのが特徴
・ 契約不適合責任が免責されることも多く、トラブル防止につながる
・ 再販リスクを業者が負うため、買取価格は市場価格より5〜7割ほど下がる傾向がある
・ 相場:「不動産の全体の価格×持分割合」の30〜50%程度

次章では、それぞれの方法の進め方と注意点を詳しく解説します。

自己持分含む不動産全体を共有者と一緒に売却する

自己持分含む不動産全体を共有者と一緒に売却する

共有名義の不動産を最も高く売る方法は、共有者全員の同意を得て不動産全体をまとめて売却することです。

不動産全体を一括で売却できるため、通常の不動産売買と同じく市場価格に近い金額で成約するケースが多く見られます。

売却代金は持分割合に応じて公平に分配でき、共有状態を完全に解消できるのもメリットです。ただし、共有者が多い場合は売却時期や価格をめぐって意見が合わないことも多く、1人でも反対すると売却が進みません。

そのため、早い段階で話し合いの場を設け、書面で合意内容を残しておくことが大切です。

実務の流れとしては、次のような手順で進めます。

  • 共有者全員で売却方針(時期・価格・分配方法)を決定する
  • 不動産会社に査定を依頼し、販売価格を設定する
  • 仲介契約を締結し、購入希望者との売買契約を行う
  • 売却代金を持分割合に応じて分配する

共有者間の調整が難しい場合は、弁護士や不動産会社などの専門家に相談し、合意形成や売却手続きのサポートを受けるとよいでしょう。

弁護士が法的な合意書や委任関係を整え、不動産会社が売却実務を進めることで、全体の手続きを円滑に進めやすくなります。

他の共有者に自分の持分を売却する

他の共有者に自分の持分を売却する

共有者のなかに1人でも買取に同意してくれる人がいれば、その共有者に自分の持分を売却することも可能です。関係が良好であれば、話し合いで価格を決めて比較的スムーズに進むケースもあります。

買い取る側にとっても、持分を増やすことで不動産の管理・活用の自由度が高まるというメリットがあるでしょう。

ただし、買い手となる共有者に十分な資金がないと取引は成立しません。共有持分は担保評価が不安定で、住宅ローンを利用するのは難しく、現金での支払いとなるケースが一般的です。そのため、実務上は取引が難航する場合も少なくありません。

理論上は持分割合を基準に価格を決めますが「共有状態を解消できる」という買主側のメリットがあるため、実務では相場より1〜3割ほど低い金額で成立することが多いのが実情です。

また、売却価格が相場から大きく離れると「みなし贈与」と判断され、課税対象となるリスクがあります。価格の根拠を明確にし、税金面で不明点があれば税理士へ確認すると安心です。

親しい間柄の売買でも不動産会社に仲介を依頼する

共有者同士の売買であっても、不動産会社に仲介を依頼するのがおすすめです。親しい間柄であっても、金銭が関わる取引では「言った・言わない」のトラブルが生じることがあるためです。

不動産会社を介せば、共有持分の査定や条件交渉、仲介などの実務サポートを受けられます(契約内容によりサポート範囲は異なります)。

仲介手数料はかかりますが、第三者が間に入ることで価格の妥当性や手続きの透明性が確保され、トラブル防止にも有効です。(仲介手数料については、「仲介手数料がかからない」をご覧ください。)

契約書の法的効力や権利関係に不安がある場合は、不動産に強い弁護士や、弁護士と提携している買取業者への相談も検討しましょう。

専門の買取業者など第三者に自己持分を売却する

専門の買取業者など第三者に自己持分を売却する

共有者の同意を得ずに売却したい場合は、専門の買取業者に直接売却する方法があります。

この方法なら、他の共有者の同意を得る必要がなく、自分の持分だけを単独で売却できます。

買取業者は自らが買主となるため、仲介のように第三者の買い手を探す必要がなく、条件がまとまれば短期間で売却が可能です。

多くの買取業者は、取得した共有持分をもとに他の共有者と交渉し、物件全体を単独所有にしたうえでリフォームや解体を行い、転売や賃貸で利益を得るビジネスモデルを採用しています。

そのため、リフォーム費用や再販リスクを見越した査定が行われ、買取価格は「不動産全体の評価額 × 持分割合」の3〜5割程度にとどまるケースが一般的です。

それでも「共有者と連絡が取れない」「話し合いが難航している」といった悩みを持つ人にとっては、共有者の同意が不要で確実に現金化できる点は大きな魅力といえるでしょう。

ここでは、専門の買取業者に依頼する主なメリットを解説します。

  • 共有者に話さなくても売却できる
  • 仲介手数料がかからない
  • 数日〜1ヵ月程度で売却できる
  • 契約不適合責任が免責される
  • 売却が難しい共有持分でも買取が期待できる

共有者に話さなくても売却できる

共有持分の売却は、民法第206条で、他の共有者の同意を得ずに単独で行うことができると定められています。

そのため、他の共有者と連絡が取れない場合や、関係が悪化して話し合いが難しいケースでも、買取業者に売却することが可能です。

ただし、無断で売却すると共有者との関係悪化やトラブルにつながるおそれがあるため、可能であれば事前に事情を伝えておくとよいでしょう。

共有持分の専門業者であれば「事前に共有者へ相談すべきか」や「売却後の対応方針」などについて、実務経験に基づいたアドバイスを受けられる場合もあります。

なお、売却が完了した時点で、元の所有者は共有不動産に関する権利を失います。その後に共有者間で交渉や調整が行われたとしても、元の所有者が対応する必要はありません。

仲介手数料がかからない

買取業者への売却では、不動産会社が自ら買主となるため、仲介手数料は発生しません。

仲介手数料とは、不動産会社が買主を探して売買を成立させた際に、売主や買主が支払う報酬です。

宅地建物取引業法第46条に基づき、上限は次のとおり定められています。

売却価格の3%+6万円(税別)
※売買価格が400万円を超える場合

たとえば、売却価格が1,000万円の場合、仲介手数料の上限は36万円(税別)です。

仲介手数料が不要なぶん、手取額を多く確保でき、費用面でも見通しが立てやすくなります。

数日〜1ヵ月程度で売却できる

買取業者への売却では、業者が直接買主となるため、広告掲載や内見対応を行う必要がありません。査定から契約、入金までの手続きが一社内で完結するため、最短で数日〜1ヵ月程度で現金化できるケースも多く見られます。

共有持分を専門に扱う買取業者であれば、権利関係の確認や必要書類の準備に慣れており、手続き全体をスピーディーに進められます。

一方、仲介で売却する場合は、買い手を探すための広告掲載や交渉が必要となり、成約までに3〜6ヵ月ほどかかるのが一般的です。とくに共有持分のように権利関係が複雑で単独利用が難しい物件は、買い手がつきにくく、さらに時間がかかる傾向にあります。

そのため「すぐに売却したい」「共有者とやり取りせずに現金化したい」という場合は、共有持分に特化した買取業者への相談が有効です。

契約不適合責任が免責される

契約不適合責任とは売買した土地や建物が契約内容に適さない場合に売主が負う責任を定めたもの

買取業者に売却する場合、契約不適合責任が免責されるのが一般的です。契約不適合責任とは、売却した物件が契約内容に適していなかった場合に、売主が買主に対して負う責任を指します(民法第562条)。

たとえば、雨漏りやシロアリ被害、構造上の欠陥など、引き渡し後に不具合が発覚した場合、仲介での売却では修補や損害賠償を求められるリスクがあります。

一方、買取業者への売却では、「契約不適合責任を一切負わない」という条件で契約が締結されるのが一般的です。そのため、売却後に欠陥が見つかっても、修繕や賠償を請求されることは基本的にありません。

売主にとっては、売却後のトラブルを避けられるというメリットがあります。ただし、業者によって免責範囲や契約条件が異なるため、契約前に書面で内容を確認しておくことが重要です。

売却が難しい共有持分でも買取が期待できる

共有者間のトラブルや老朽化、未登記といった事情を抱える共有持分は、一般の個人や不動産会社では買い手がつかず、取引自体が難しいケースがほとんどです。これは、共有持分が不動産全体の一部にすぎず、単独での利用や処分が難しいためです。

しかし、共有持分の買取を専門とする業者は、取得後の交渉や再活用を見据えたノウハウを持っており、こうした「訳あり物件」でも条件次第で買取に応じてくれるケースがあります。

たとえば、立地条件がよく、再販や再利用の見込みがある物件なら、瑕疵(雨漏り・シロアリ被害など)や共有トラブルを抱えていても、業者によっては買い取るケースもあります。

そのため「トラブルがあって売れない」「他社で仲介を断られた」といった場合でも、まずは共有持分の買取に特化した業者へ相談してみるとよいでしょう。

不動産の売却について共有者の同意を得るためにできること

共有不動産を売却する際は、共有者全員の意見をそろえることが重要です。

もっとも、自分の持分のみを売却する場合には、法律上ほかの共有者の同意は不要です。ただし、事前の説明や相談をしないまま進めると、後々「知らないうちに売られた」といったトラブルに発展するおそれがあります。

そのため、たとえ単独で売却できる場合でも、できるだけ共有者に事情を丁寧に伝え、理解を得ておくことが大切です。

実際、弊社にも「兄弟で意見が分かれて調整が進まない」「共有者の1人が売却に協力してくれない」といったご相談が多く寄せられています。

トラブルを避け、スムーズに話を進めるには、共有者の理解と協力を得るための次のような工夫が有効です。

  • 売却したい事情を丁寧に説明する
  • 売却方法の選択肢を複数提示する
  • 弁護士や不動産会社など第三者を交えて話す

ここでは、それぞれの対応策を詳しく解説します。

まずは売却したい事情を丁寧に説明する

共有者に同意を得るためには、売却の事情を丁寧に伝えつつ、相手のメリットも示すことが大切です。

たとえば「子どもの進学資金や住宅ローン返済などに資金が必要」「管理負担が重い」「将来のトラブルを避けたい」といった自身の事情を説明しつつ、「売却金を公平に分配できる」「維持費や固定資産税の負担から解放される」など、共有者にとっても利益があることを具体的に伝えることで、理解を得やすくなります。

売却の同意が取れたら必ず書面化しておく

共有者から同意を得られたら、必ず合意内容を書面化しておきましょう。口約束のままだと「言った・言わない」といったトラブルや、売却後の分配をめぐる誤解が生じやすくなります。

書面には、次のような内容を明記し、共有者全員の署名・押印をしておくとよいでしょう。

  • 売却対象となる不動産の所在地・内容
  • 共有者ごとの持分割合
  • 売却価格および代金の分配方法
  • 合意日
  • 売却手続きを代表して進める共有者や代理人の氏名(必要な場合)

委任状や合意書の作成を弁護士に依頼するのも有効です。

売却方法の選択肢を複数提示する

共有者に一方的に「売りたい」と伝えるよりも、いくつかの選択肢を示して協議する姿勢を見せたほうが、合意が得られやすくなります。

たとえば、次のような方法が考えられます。

  • 共有者全員で不動産をまとめて売却する
  • 他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう
  • 自分の持分だけを買取業者に売却する
  • 共有物分割請求をして現金化を目指す

それぞれの方法で得られる金額や手続きの負担が異なるため、複数案を比較しながら「公平な提案」であることを伝えることが大切です。

また、共有者の希望によっては売却時期や分配方法を調整するなど、なるべく相手の意向を組むと同意を得やすいでしょう。

弁護士や不動産会社など第三者を交えて話す

共有者同士だけで話し合うと、感情的になって話が進まなくなる場合があります。
そのようなときは、弁護士や不動産会社など第三者を交えると、冷静な話し合いがしやすくなるでしょう。

弁護士であれば、合意内容の書面化や共有物分割請求への対応など、法的トラブルを防ぐためのサポートが受けられます。

一方、不動産会社に相談すれば、市場価格を踏まえた公平な提案を受けられます。また、買取業者であれば、同意が得られない場合の代替案(共有持分の買取など)を提示してもらえることもあるでしょう。

専門家が中立的な立場で説明してくれることで、共有者全員が納得しやすい話し合いの場を作りやすくなります。

不動産全体を売却したいが、連絡が取れず同意を得られない共有者がいるときの対処法

共有不動産全体を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。

しかし、共有者のなかに「連絡が取れない」「所在がわからない」といった不明者がいる場合、全員の同意を得られず、不動産全体を売却できないことがあります。

以前はこのようなケースでは、売却を進めることがほとんど不可能でした。一方、2023年の民法改正により、所在が不明な共有者がいても、裁判所の手続を通じて売却や持分整理を進められるようになりました。

不動産全体を売却したいのに、連絡が取れず同意を得られない共有者がいる場合の対処法は以下のとおりです。

  • 改正民法の制度を利用する
  • 「不在者財産管理人制度」で不明者の代わりに管理人を立てる
  • 「失踪宣告」をして不明者を法律上死亡とみなす
  • 共有者が亡くなっている場合は相続人との交渉や相続財産清算人を選任する

なお、これらの制度はいずれも家庭裁判所を通じて行うため、申し立てから結果が出るまでに数週間から数か月程度かかる場合があります。

手続きを円滑に進めるためには、弁護士など専門家への相談も検討しましょう。

改正民法の制度を利用する

2023年施行の改正民法では、所在不明の共有者がいる場合でも、裁判所の手続を通じて不動産の処分や活用を可能にする制度が新たに設けられました。

主な制度は次の3つです。

  • 不明者の共有持分を取得できる「所在等不明共有者持分取得制度」
    民法第262条の2
  • 不明者の共有持分を含めて売却できる「所在等不明共有者持分譲渡の権限付与制度」
    民法第262条の3
  • 不明者以外の共有者の同意により変更行為・管理行為を行える制度
    民法第251条第252条

これらの制度によって、共有者の一部が行方不明でも、不動産を柔軟に処分・活用できるようになりました。

それぞれ詳しく解説します。

「所在等不明共有者持分取得制度」で不明者の持分を取得する

所在等不明共有者持分取得制度とは 不明者の共有持分をほかの共有者に取得させられる制度

「所在等不明共有者持分取得制度」とは、所在がわからない共有者の持分を、他の共有者が家庭裁判所の許可を得て取得できる制度です(民法第262条の2)。

たとえば、A・B・C・Dの4名共有のうちAが不明者である場合、他の共有者Bなどが申し立てを行い、裁判所の判断によりAの持分を取得できます。

なお、裁判所の許可を得るには、不明者が一定期間所在不明であることや、公告手続を経ることなどの条件を満たす必要があります。

「所在等不明共有者持分譲渡の権限付与制度」で不明者の持分を第三者へ売却する

所在等不明共有者持分譲渡の権限付与制度

「所在等不明共有者持分譲渡の権限付与制度」は、所在不明の共有者がいる場合に、他の共有者が家庭裁判所の許可を得て、不明者の持分を含めた不動産全体を第三者に譲渡する権限を得るための制度です。(民法第262条の3)。

裁判所は、不明者の利益を保護するための措置(たとえば代金の供託など)が取られているかどうかを確認したうえで、譲渡権限を付与します。

譲渡権限の決定が下りれば、所在不明の共有者がいても、不動産全体を第三者に売却することが可能になります。

不明者以外の同意によって変更・管理行為を行う

2023年の民法改正により、不明者以外の共有者全員が同意すれば、建て替えや増改築などの変更行為が可能になりました(民法第251条)。

また、不明者以外の共有者の持分の過半数の同意があれば、共有不動産の管理行為を行うことも認められています(民法第252条)。

「不在者財産管理人制度」で不明者の代わりに管理人を立てる

不在者財産管理人とは 失踪した共有者の代わりに財産を管理する人のこと

「不在者財産管理人制度」とは、家庭裁判所に申し立てて、不明者の代わりに財産を管理する人を選任する制度です。管理人は不明者の代理人として財産を管理し、裁判所の許可を得れば不動産の売却などの処分行為も行うことが可能です。

通常、不在者財産管理人には弁護士や司法書士などの専門家が選ばれます。申立人は他の共有者や配偶者などの利害関係人、または検察官です。

この制度を利用すれば、不明者の同意が得られない場合でも、裁判所の手続を経て不動産全体の売却を進められる可能性があります。

※参考:裁判所「不在者財産管理人選任」

「失踪宣告」をして不明者を法律上死亡とみなす

所在不明の共有者が7年以上生死不明の場合(普通失踪)や、自然災害・船舶事故など危難に遭遇して1年以上経過している場合(特別失踪)は、家庭裁判所に申し立てて「失踪宣告」を行うことができます(民法第30条第31条)。

失踪宣告とは、生死が長期間確認できない人を法律上「死亡した」とみなす制度で、相続や財産処分などの法的手続きを進められるようにするための仕組みです。

失踪宣告が確定すると、不明者は法律上死亡したものとみなされ、その共有持分は相続財産として相続人に承継されます。その相続人の同意を得ることで、不明者から同意を得たのと同じ扱いとなり、共有不動産全体の売却を進められるようになります。

なお、失踪宣告は不在者財産管理人制度とは異なり、不明者を死亡とみなして法的に相続関係を確定させる制度です。

詳しい手続きについては、以下の記事をご覧ください。

共有者が死亡している場合は相続人との交渉や相続財産清算人を選任する

相続財産清算人

共有者がすでに死亡している場合、その共有持分は相続人が承継しています。そのため、不動産全体を売却するには相続人全員の同意を得る必要があります。

一方、相続人が存在しない場合や不明な場合は、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立て、清算人を通じて売却手続きを進めなければなりません。相続財産清算人は、亡くなった共有者の財産を管理・処分し、債務整理や配当を行う権限を持つ人物で、弁護士などの専門家が選任されるのが一般的です。

なお、相続人が全員相続放棄している場合も、法律上は相続人不存在と同じ扱いとなり、この場合も相続財産清算人を選任して対応します。

詳しい手続きについては、以下の記事をご覧ください。

売却について共有者の同意が得られないときに共有状態から抜け出す方法

共有不動産を売却したくても、共有者の同意が得られず手続きが進まないケースは少なくありません。

そのような場合でも、共有状態から抜け出す手段はいくつかあります。

「共有持分を売却できそうにない」「できれば売却せずに共有状態を解消したい」といった場合は、以下の方法を検討してみましょう。

  • 自分の共有持分を放棄する
  • 共有持分を贈与する
  • 土地を分筆する
  • 共有物分割請求をする

以下で、それぞれの方法の特徴や注意点を詳しく解説します。

自分の共有持分を放棄する

自分の共有持分を放棄する

共有持分は、自分の意思で放棄することができます。そのため、持分を放棄して共有状態から抜け出すことも1つの方法です。

持分放棄は「放棄します」と意思表示するだけで成立し、他の共有者の同意は不要です。

放棄された持分は、民法第255条により、他の共有者に帰属すると定められています。

なお、放棄自体は自分の意思で成立しますが、持分放棄に伴う「持分移転登記」には他の共有者の協力が必要です。持分移転登記とは、放棄により他の共有者に移転した権利を法的に記録する手続きです。

登記に応じてもらえない場合は「登記引取請求訴訟」を起こす必要があり、手間と費用がかかります。訴訟になると、弁護士費用のほかに数万円〜十数万円の裁判費用が発生し、解決まで数ヵ月を要することもあります。放棄を検討する際は、あらかじめ他の共有者と調整しておくのが現実的です。

また、放棄によって他の共有者が利益を受ける場合、贈与税の対象とみなされる可能性があるため、事前に税理士など専門家へ確認しておくことをおすすめします。

共有持分を贈与する

共有持分の贈与

無償で共有持分を譲りたい相手がいれば、贈与によって共有状態を解消することも可能です。「無償で譲る」という点では持分放棄と似ていますが、持分放棄は他の共有者にしか効力が及ばないのに対し、贈与であれば第三者にも譲渡できます。

たとえば、家族や親族など特定の人に持分を譲りたい場合は、贈与が適しています。

ただし、贈与は契約行為であるため、相手の同意が必要です。相手が受け取りを拒否した場合は、共有状態を解消することはできません。

また、不動産の贈与には所有権移転登記が必要で、登録免許税(評価額の2%)が課されます。

贈与の金額や評価によっては贈与税が課税される可能性もあるため、税務上の確認も欠かせません。年間110万円を超える贈与は、贈与税の課税対象となります。

贈与を検討する際は、登記や税務の手続きも含めて、司法書士・税理士などの専門家へ相談するとよいでしょう。

土地を分筆する

土地を分筆する

土地を共有している場合は、土地を分筆(ぶんぴつ)して物理的に区画を分け、共有を解消する方法もあります。

たとえば、600㎡の土地をAが2/3、Bが1/3で共有しているなら、400㎡と200㎡に区画を分けるイメージです(実際の区画形状・接道等により異なります)。

分筆後は、区画ごとに所有者を定めて単独所有にできるため、各自で売却・建て替えなどの意思決定をしやすくなるというメリットがあります。

ただし、分筆は実務上のハードルが高く、慎重な検討が必要です。

  • 土地が広いことが前提になる(用途地域や最低敷地面積の制約も影響)
  • 分筆するには、共有者の持分の過半数による同意が必要
  • 測量・境界確認で隣地所有者の立会いが必要になるなど、手続きが煩雑になる
  • 測量費や登記費用など、一般的に数十万円規模の費用がかかる
  • 分筆後の区画が狭くなり、形状によっては利用価値や売却価格が下がる場合がある
  • 区画ごとの接道・形状・日当たり等で価値に偏りが生じ、不公平感や対立の原因になりやすい(代償金や地役権等の追加調整が必要になることもある)
  • 分筆後は、各自所有権移転等の登記が必要なため、最終的には全員の協力が求められる

また、分筆後の各区画が建築基準法第43条の「接道義務」を満たしていない場合、建物の新築・建て替えができなくなるおそれもあります。

このように、分筆は手続きや費用の負担が大きく、土地の価値や活用性が下がるリスクもあります。そのため、共有状態の解消方法としてはあまりおすすめできません。

他の共有者との協議や、司法書士・土地家屋調査士など専門家の意見を踏まえて慎重に判断しましょう。

共有物分割請求をする

共有者間の話し合いで共有状態を解消できない場合は、「共有物分割請求」によって裁判所を通じて共有関係を解消することができます。共有物分割請求とは、共有している不動産の分割を共有者に請求する手続きです。

民法第256条では、共有者の誰でも、いつでも分割を請求できると定められています。

共有物分割請求には、主に次の3つの方法があります。

共有物分割請求訴訟による不動産の3つの分割方法
現物分割 共有している不動産を物理的に分割する方法
代償分割 1人の共有者に共有持分を買い取ってもらい共有状態を解消する方法
換価分割 不動産を売却して持分割合に応じて現金を分割する方法

ただし、話し合いがまとまらない場合には、調停や訴訟に発展する可能性があります。

訴訟で裁判所が分割方法を決める場合、不動産が競売にかけられる「換価分割」となるケースが多く、市場価格よりも安く売却されるおそれがあります。また、分割方法は裁判所の判断によるため、必ずしも自分の希望どおりの結果になるとは限りません。

訴訟に発展すると関係の悪化や長期化につながることもあり、手続きには半年〜1年以上かかる場合もあります。

共有物分割請求は最終手段として検討し、請求前に必ず弁護士へ相談するようにしましょう。

現物分割で土地を物理的に分ける

現物分割で土地を物理的に分ける

現物分割とは、共有している不動産を物理的に分割し、それぞれを単独所有にする方法です。

物理的に分けられるほど広い土地であれば有効な手段ですが、形状や立地によっては公平な分割が難しく、裁判所が現物分割を認めない場合もあります。

現物分割によって単独所有になった土地は、各共有者が自由に売却・利用できるようになり、共有関係の煩わしさを解消できるのが利点です。

ただし、分筆と同様に測量や登記の費用(数十万円程度)が発生するほか、公平を保つために代償金の支払いが求められるケースもあります。

また、分割後の評価額が変動することで固定資産税が増減し、想定以上の出費や税負担が生じるおそれもあります。

こうした費用や手間はかかるものの、不動産を売却せずに共有状態を解消したい場合には、有効な選択肢といえるでしょう。

代償分割で共有者1人の単独所有にする

代償分割で共有者1人の単独所有にする

代償分割とは、共有者のうち1人が他の共有者の持分を金銭などで精算し、単独所有にする方法です。

自分の持分を他の共有者に買い取ってもらえば、現金を得ながら共有状態を解消できます。逆に、自分が他の持分をすべて買い取れば、その不動産を自分だけの所有にすることが可能です。

単独所有になれば、自由に売却・建て替え・賃貸などができるようになります。

ただし、代償金の支払い能力が求められるため、買い取る側に十分な資金がなければ実現は難しくなります。

また、金銭を受け取る側には譲渡所得税が発生することもあるため、税務面での確認も欠かせません。

資金面や税金の扱いに不安がある場合は税理士に、条件交渉や手続きの進め方に迷う場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。

換価分割で全員が所有権を手放して現金を分ける

換価分割で全員が所有権を手放して現金を分ける

換価分割とは、共有不動産をまとめて売却し、得られた代金を持分割合に応じて分ける方法です。共有者全員が不動産の所有権を手放すことになるため、将来的なトラブルを避けられるメリットもあります。

通常の仲介売却と同程度の価格で売却できることが多く、共有関係を完全に清算したい場合に適した方法です。

ただし、全員の協力が前提となるため、共有者の一部が売却に反対したり、条件で対立したりすると手続きが進まなくなるおそれがあります。その場合は話し合いによる解決が難しく、調停や訴訟に発展することもあります。

なお、売却によって利益が生じた場合には、譲渡所得税が課されるケースもあるため、税務面の確認も行っておくとよいでしょう。

まとめ

共有不動産を売却するには、原則として共有者全員の合意が必要です。1人でも反対する共有者がいれば、不動産全体を売却することはできません。

共有持分を売却する方法には、共有者全員で不動産全体を売却する方法と、他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう方法があります。

ただし、自分の持分のみであれば、他の共有者の同意がなくても自由に売却することが可能です。

共有者の合意が得られないまま話し合いが進まない場合や、できるだけ早く現金化したい場合は、共有持分の買取専門業者に売却を検討するのも1つの方法です。

専門業者であれば、最短で数日〜1ヵ月ほどで現金化が可能です。契約不適合責任も免除されるのが一般的で、売却後のトラブルリスクが少なく、安心して取引を進められます。

なお、共有持分を少しでも有利な条件で売却したい場合は、複数社の査定を一括で比較できる「イエコン一括査定」を活用してみましょう。イエコン一括査定なら、共有持分の買取実績が豊富な不動産会社を効率的に見つけることができます。

共有不動産の売却に悩んでいる人は、まずイエコン一括査定で自分の持分の価値を確かめることから始めてみてください。

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共有持分のよくある質問

共有持分の売却で発生する費用はどれくらい?

共有持分を売却するときには、譲渡所得税や印紙税、登記費用など、さまざまな費用がかかります。売却方法によっても費用負担は変わるため、全体の目安を把握しておくことが大切です。

以下は、共有持分の売却で発生する主な費用の一覧です。

費用の種類 金額の目安 主な内容
譲渡所得税 数万円〜数十万円程度 売却益に応じて課税。所有期間によって税率が異なる
・売却した年の1月1日から5年以下(短期)39.63%
・売却した年の1月1日から5年超(長期)20.315%
印紙税 200円〜48万円 売買契約書の作成時に課税。契約金額に応じて税額が変動する。
仲介手数料 上限:売却価格×3%+6万円+消費税 不動産仲介を利用する場合に発生。買取業者への直接売却なら不要。
登記費用 数万円〜数十万円 所有権移転登記にかかる登録免許税や司法書士報酬など。

売却益が出る場合は譲渡所得税が課され、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかによって税率が変わります。

また、不動産会社に仲介を依頼した場合は仲介手数料が発生しますが、買取専門業者に直接売却する場合は手数料が不要です。

詳しい税金や費用の内訳については、以下の記事で詳しく解説しています。

共有持分に関するコラムはこちら

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更新日 : 2025年11月07日
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