共有持分の売却は共有者の同意なしに可能と民法で定められている
共有名義の不動産であっても、自分の共有持分だけを売却する場合であれば、他の共有者の同意は不要です。共有持分とは、共有している不動産のうち、各共有者が持つ所有割合を指します。
これは、民法第206条に定められた「所有権の自由処分の原則」を前提に、共有状態であっても自己の持分を自由に処分できると解釈されているためです。
ただし、売却の対象が「共有持分のみ」か「不動産全体」かによって、必要となる同意の範囲が異なります。
以下で、それぞれのケースを詳しくみていきましょう。
共有持分のみの売却は共有者の同意は不要
法律上は共有持分のみであれば売却できますが、実際に無断で売却すると、共有者との関係が悪化するおそれがあります。
共有持分を第三者に売却すると、その買主が新たな共有者となります。他の共有者からすれば、突然知らない人と不動産を共有する状態になり、不信感を抱くケースも少なくありません。
また「共有物分割請求をする」で解説しますが、共有持分を買い取った人には共有物分割請求をする権利があります。共有物分割請求があった場合、最終的には共有状態が強制的に解消されるため、他の共有者の生活や利用状況に影響が出るおそれもあるでしょう。とはいえ、直ちに行使されるとは限らず、実際には協議や調停を経て進められるのが一般的です。
このような将来的な影響を踏まえると、親族や共同相続人など、日常的に関係のある共有者には、事前に一言伝えておくとトラブルを避けやすくなります。一方で、他人同士で連絡が取れない場合や、もともと関係が希薄な共有者であれば、必ずしも事前に連絡を取る必要はありません。
なお、共有持分を買取業者に売却すると、その買取業者が新たな共有者となり、他の共有者との調整は原則として買取業者が対応することになります。
売却後、どのように他の共有者へ対応してくれるのかは、事前に確認しておくとよいでしょう。
共有名義不動産全体の売却は共有者全員の同意が必要
共有名義の不動産を不動産全体として売却する場合は、共有者全員の同意が必要です。
民法第251条では、共有物に重大な「変更」を加える行為について、原則として共有者全員の同意が必要と定めています。不動産全体の売却は変更行為に該当するため、共有者のうち1人でも反対すれば売却はできません。
たとえば、次のようなケースでは、不動産全体を売却することはできなくなります。
- 共有者の一部が売却に反対している
- 共有者と連絡が取れず、意思確認ができない
- 売却条件(価格・時期など)について意見が一致しない
このように、共有名義不動産を全体として売却する場合は、法的にも実務上もハードルが高くなりやすいのが実情です。
共有持分の売却先は「他の共有者」もしくは「専門の買取業者」が現実的
共有持分は不動産全体の一部にすぎず、単独で利用・活用できないため、一般の個人や通常の不動産仲介では買主が見つかりにくいのが実情です。実務の現場でも「長期間売却活動を続けたが成約しなかった」「共有者の協力が得られず話が進まない」といった相談は少なくありません。
そのため、共有持分の売却先として現実的なのは「他の共有者に売却する方法」または「共有持分を専門に扱う買取業者へ売却する方法」の2つに分けられます。
それぞれ、売却までにかかる時間や価格の目安、共有者との関わり方が異なるため、自身の状況に合った方法を選ぶことが重要です。
| 売却先 |
特徴・注意点・相場の目安 |
| 他の共有者に売却 |
・ 共有状態を解消できるため、関係が良好であれば比較的スムーズに進む
・ 買い取る側に十分な資金が必要(住宅ローンは使えないケースが多い)
・ 実務では価格交渉が生じやすく、相場より1〜3割程度低い金額で成立することが多い
・ 相場目安:不動産全体の評価額 × 持分割合の70〜90%程度
|
| 共有持分の専門買取業者 |
・ 他の共有者の同意が不要で、単独で売却できる
・ 条件が合えば数日〜1ヵ月程度で現金化が可能
・ 再販リスクを業者が負うため、価格は低くなりやすい
・ 相場目安:不動産全体の評価額 × 持分割合の20〜50%程度
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以下では、それぞれの売却先について、具体的な進め方や注意点を解説します。
共有持分を他の共有者に売却する
共有者のなかに1人でも買取に応じてくれる人がいれば、その共有者に自分の持分を売却する方法があります。
共有者同士の関係が良好であれば、話し合いによって価格や条件を決め、比較的スムーズに進むケースもあります。買い取る側にとっては、持分を増やすことで不動産の管理や活用の自由度が高まるというメリットがあるでしょう。
一方で、買い取る側の共有者に十分な資金がなければ取引は成立しません。共有持分は担保評価が不安定なため、住宅ローンが利用できないケースも多く、実務上は現金での支払いが一般的です。そのため、資金面で折り合いがつかず、交渉が難航することも少なくありません。
価格は原則として持分割合を基準に算出されますが「共有状態を解消できる」という買い取る共有者側のメリットがあることから、相場より1〜3割ほど低い金額で成立するケースが多いのが実情です。
ただし、売却価格が相場から大きく離れると、税務上「みなし贈与」と判断されるおそれがあります。価格設定の考え方や注意点については「価格設定を工夫する」で詳しく解説します。
親しい間柄の売買でも不動産会社に仲介を依頼する
共有者同士の売買であっても、不動産会社に仲介を依頼するのがおすすめです。共有持分の売買は、価格の決め方や将来の権利関係について認識のズレが生じやすく、親しい間柄であっても「言った・言わない」といったトラブルに発展するケースがあるためです。
不動産会社を介せば、共有持分の査定や条件の整理、売買契約書の作成、代金授受や登記手続きの段取りなど、実務面を一括してサポートしてもらえます(対応範囲は契約内容によって異なります)。
仲介手数料は発生しますが、第三者が間に入ることで価格の妥当性や手続きの透明性が確保され、結果的にトラブル防止につながる点はメリットといえるでしょう。(仲介手数料については、「仲介手数料がかからない」も参考にしてください。)
また、契約書の法的効力や権利関係に不安がある場合は、不動産に強い弁護士に相談するのも有効です。
共有持分を専門の買取業者に売却する
共有者の同意を得られない場合や、話し合いが難航している場合には、共有持分を専門に扱う買取業者へ直接売却する方法があります。
専門の買取業者は、共有持分を取得後、物件全体の再活用を前提としたノウハウを持っているため、共有持分のみでも買取に応じられるケースがあります。
専門の買取業者に依頼する主なメリットは以下のとおりです。
- 共有者に話さなくても売却できる
- 仲介手数料がかからない
- 数日〜1ヵ月程度で売却できる
- 契約不適合責任が免責される
- 売却が難しい共有持分でも買取が期待できる
ただし、再販までの交渉コストやリスクを業者が負うことから、買取価格は「不動産全体の評価額 × 持分割合」の20〜50%程度にとどまるケースが一般的です。
それでも「共有者と連絡が取れない」「売却に反対されている」といった状況では、共有者の同意を得ずに確実に現金化できる点は大きなメリットといえるでしょう。
共有者と話さなくても売却できる
共有持分を専門の買取業者に売却する場合、売却にあたって他の共有者と直接やり取りをする必要がない点は大きなメリットです。
共有者と連絡が取れない、感情的な対立があるといった状況では、話し合いそのものが大きな負担になりがちですが、買取業者への売却であれば、そうした調整を自分で行う必要はありません。
精神的な負担や対人トラブルを避けたい場合には、共有持分の買取を専門とする業者への売却は、現実的な選択肢といえるでしょう。
仲介手数料がかからない
共有持分を買取業者に売却する場合、不動産会社が自ら買主となるため、仲介手数料は発生しません。仲介手数料とは、不動産会社が買主を探して売買を成立させた際に、売主や買主が支払う報酬です。
宅地建物取引業法第46条に基づき、上限は次のとおり定められています。
売却価格の3%+6万円(税別)
※売買価格が400万円を超える場合
なお、2024年7月1日からの国土交通省の告示改正により、取引金額が800万円以下の不動産であっても、仲介手数料の上限が30万円(税別)に改定されました。
買取は仲介手数料が不要なぶん、手取額を多く確保でき、費用面でも見通しが立てやすくなります。
数日〜1ヵ月程度で売却できる
共有持分を買取業者に売却する場合、業者が直接買主となるため、広告掲載や内見対応を行う必要がありません。査定から契約、入金までの手続きが一社内で完結するため、最短で数日〜1ヵ月程度で現金化できるケースもあります。
一方、仲介で売却する場合は、広告掲載や買主との交渉、条件調整などが必要となり、成約までに3〜6ヵ月ほどかかるのが一般的です。とくに共有持分は権利関係が複雑で単独利用が難しいため、買主がつきにくく、さらに時間を要するケースも少なくありません。
そのため、相続後の整理や早期の資金化など、「できるだけ早く売却したい」場合には、共有持分に特化した買取業者への相談が有効といえるでしょう。
契約不適合責任が免責される
共有持分を買取業者に売却する場合、契約不適合責任が免責される条件で契約が結ばれるのが一般的です。契約不適合責任とは、売却した不動産が契約内容に適していなかった場合に、売主が買主に対して負う責任を指します(民法第562条)。
たとえば、雨漏りやシロアリ被害、構造上の欠陥などが引き渡し後に発覚した場合、仲介による売却では修補や損害賠償を求められるおそれがあります。
一方、買取業者への売却では、契約不適合責任を免責する特約が設けられることが多く、売却後に不具合が見つかっても、原則として修繕や賠償を求められることはありません。
売主にとっては、売却後のトラブルを避けやすい点がメリットといえるでしょう。ただし、免責の範囲や条件は業者や契約内容によって異なるため、契約前に必ず書面で内容を確認することが重要です。
売却が難しい共有持分でも買取が期待できる
共有持分は、権利関係が複雑で、共有者間の合意形成が難しいことから、仲介では売却を断られてしまうケースも少なくありません。たとえば、共有者と連絡が取れない、共有者同士で対立しているといった事情がある場合、仲介ではリスクが高いと判断されやすいのが実情です。
一方で、共有持分の買取を専門とする業者は、権利関係や交渉リスクを織り込んだうえで検討を行うため、条件次第で買取に応じてもらえる場合があります。そのため「他社で仲介を断られた」「トラブルがあるから売れないと言われた」といった場合でも、売却につながる可能性があるでしょう。
共有持分の売却を共有者の同意なしで進める流れ
共有持分の売却は、通常の不動産売却とは進め方や注意点が異なります。査定・契約・登記・税務までを押さえておくことで、手続きの行き違いや想定外の負担を避けやすくなります。
共有者の同意を得ずに共有持分を売却する場合の一般的な流れは、次のとおりです。
- 共有持分の査定を依頼する
- 売買契約を締結する
- 所有権移転登記を行う
- 確定申告を行う
以下では、それぞれのステップについて順番に解説します。
共有持分の査定を依頼する
まずは、共有持分の査定を依頼します。共有持分は不動産全体とは異なり「自己の持分のみ」を前提に評価する必要があるため、共有持分の買取を専門に扱う業者へ査定を依頼するケースが一般的です。
査定では、主に次のような点が確認されます。
- 不動産全体の所在地・規模・用途
- 売却する共有持分の割合
- 他の共有者の人数や関係性
- 建物の状態や権利関係の有無
これらの情報をもとに、共有持分としての具体的な買取価格が算出されます。なお、査定にあたって他の共有者の同意や立ち会いは不要なため、自分の判断で査定を依頼できます。
売買契約を締結する
査定金額や条件に納得できた場合は、買取業者と売買契約を締結します。共有持分の売買では、「どの持分を、いくらで、どのように引き渡すのか」を契約書で明確にしておくことが重要です。
契約時には、主に次の点が確認されます。
- 売却する共有持分の割合
- 売買代金の金額と支払時期
- 引き渡しおよび所有権移転登記の方法
共有持分の売買契約は、売却する持分のみを対象とするため、他の共有者の署名や押印は不要です。そのため、売主本人のみで契約手続きを進めることが可能です。
なお、売買契約書には契約金額に応じた印紙税がかかります。ただし、電子契約(電子署名)の場合は、原則として印紙税は不要です。
契約方法や書類の形式によって取り扱いが異なることもあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
所有権移転登記を行う
売買契約の締結後は、共有持分について所有権移転登記を行います。この登記によって、売却した共有持分は正式に買主へ移転します。
登記手続きは、司法書士が代行するのが一般的で、売主が直接法務局へ出向く必要はほとんどありません。多くの場合、契約締結から決済、登記申請までを一連の流れとして進めてもらえます。
なお、登記にあたっては登録免許税や司法書士報酬といった費用が発生します。費用の負担者は売買契約の内容によって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
確定申告を行う
共有持分を売却した場合、譲渡所得が生じたときは、売却した年の翌年に確定申告が必要です。共有持分のみの売却であっても、不動産の譲渡に該当するため、税務上は通常の不動産売却と同様に扱われます。
確定申告では、主に次の内容を申告します。
- 共有持分の売却価格
- 取得費(購入代金・相続時の取得費、または概算取得費)
- 譲渡費用(登記費用・契約書の印紙代・測量費など)
これらをもとに譲渡所得を計算し、譲渡所得税・住民税がかかるかどうかと、課税される場合の税額が確定します。
確定申告の期間は、売却した年の翌年2月16日から3月15日までです。期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課されるおそれがあるため、忘れずに手続きを行いましょう。なお、3,000万円特別控除などの特例を利用する場合は、税額が発生しないケースでも確定申告が必要です。
また、売却によって譲渡損失が生じた場合でも、他の所得との損益通算や特例を利用できるかどうかの判断が必要になります。その結果、税額が発生しない場合でも確定申告が必要となるケースがある点に注意しましょう。
税額の有無や申告の要否で判断に迷う場合は、不動産税務に詳しい税理士へ相談することをおすすめします。
共有持分を共有者に売却したいときに同意を得るコツ
共有持分を他の共有者に売却する場合、法律上の可否よりも、共有者との話し合いをどう進めるかが結果を大きく左右します。
実務では「話し合いの途中で感情的に対立してしまった」「条件の説明が不十分で不信感を持たれてしまった」といった理由から、売却そのものが頓挫してしまうケースも少なくありません。
そのため、共有者に持分を買い取ってもらうことを検討する際は、最初の伝え方や選択肢の示し方を工夫することが重要になります。
共有者とのトラブルを避け、話し合いを前向きに進めるためには、次のようなポイントを意識すると効果的です。
- 不動産の現状を整理して丁寧に説明する
- 価格設定を工夫する
- 弁護士や不動産会社など第三者を交えて話す
以下では、共有者の理解を得やすくするための具体的な工夫について、順番に解説します。
不動産の現状を整理して丁寧に説明する
共有者の理解を得るためには、感情的な理由を先に伝えるのではなく、不動産の現状を客観的に整理したうえで説明することが重要です。
具体的には、次のような情報を事前にまとめておくと、共有者も状況を把握しやすくなります。
- 登記簿謄本に記載された不動産の内容
- 共有者全員の持分割合
- 現在の利用状況や管理状況
これらを書面や資料として共有しながら話を進めることで「誰が・どの程度の権利を持っているのか」を整理して伝えやすくなります。また、現状の課題についても、冷静に理解してもらいやすくなるでしょう。
そのうえで「管理の負担が大きい」「将来的なトラブルを避けたい」「資金が必要になった」といった、売却を検討するに至った事情を丁寧に説明すると、理解を得やすくなります。
あわせて、売却によって共有者側にも、どのようなメリットがあるのかを具体的に伝えましょう。たとえば「維持費や固定資産税の負担から解放される」ことや「売却代金を現金として分配できる」点などを示すことで、納得感を得やすくなります。
なお、共有者から売却について理解や同意が得られた場合は、合意内容を必ず書面に残しておくことが重要です。口頭だけの合意では、後から認識の違いが生じるおそれがあるためです。
書面には、次のような内容を明記し、共有者全員の署名・押印をしておくとよいでしょう。
- 対象となる不動産の所在地・内容
- 共有者ごとの持分割合
- 売却価格や代金の分配方法
- 合意日
- 売却手続きを代表して進める共有者や代理人(必要な場合)
状況によっては、合意書や委任状の作成を弁護士に依頼すると、将来的なトラブルを防ぎやすくなります。
価格設定を工夫する
共有者に自分の持分を売却する際は、価格設定の仕方が同意を得られるかどうかを左右する重要な要素になります。価格に納得してもらえなければ、感情的な対立に発展し、話し合いが止まってしまうケースも少なくありません。
そのため、市場相場とかけ離れない範囲で、相場よりやや低めの価格を提示することが有効です。「一方的に不利な条件ではない」と受け止めてもらいやすくなり、合意形成につながりやすくなるでしょう。
一方で、著しく低い価格で売却すると、税務上「みなし贈与」と判断されるおそれがあります。その場合、売却ではなく贈与とみなされ、後から税務署の指摘を受けて贈与税が課されるリスクがある点には注意が必要です。
価格を調整する際は、不動産会社に査定を依頼し、市場相場や評価額を確認したうえで、適正価格の範囲内で設定することが重要です。客観的な根拠を示しながら価格を提示すれば、共有者にも説明しやすく、不要な誤解やトラブルを防ぎやすくなります。
弁護士や不動産会社など第三者を交えて話す
共有者同士だけで売却の話を進めようとすると、感情的な対立から話し合いが停滞してしまうケースも少なくありません。そのような場合は、弁護士や不動産会社などの第三者を交えて話を進めることが有効です。
たとえば弁護士に相談すれば、売却に関する合意内容の整理や書面化、共有物分割請求を見据えた対応など、法的トラブルを防ぐための実務的なサポートを受けることができます。共有者間の関係が悪化している場合や、将来的な紛争を避けたいときには、弁護士の関与が特に有効です。
一方、不動産会社(とくに共有持分の取扱いに慣れた専門業者)に相談すれば、市場相場や査定結果をもとに、価格や売却条件について客観的な説明をしてもらえます。当事者同士では伝えにくい内容も、第三者の立場から説明してもらうことで、共有者の納得を得やすくなるケースもあるでしょう。
また、共有者の同意がどうしても得られない場合には、共有持分の買取といった代替案を提示してもらえることもあります。売却の選択肢を1つに限定せず、複数の解決策を示すことで、話し合いが前に進みやすくなるでしょう。
専門家が中立的な立場で関与することで、感情論に偏らない話し合いが可能となり、共有者全員が納得しやすい話し合いの場を作りやすくなります。
共有持分の売却以外に共有状態から抜け出す方法
共有持分を売却したくても、共有者の同意が得られず、売却という選択肢自体が難しくなるケースは少なくありません。もっとも、売却ができない場合でも、法律上は共有状態から抜け出す方法がいくつかあります。
「共有持分を売却できそうにない」「できれば売却や裁判をせずに共有状態を解消したい」と考えている場合は、以下の方法を検討してみましょう。
- 自分の共有持分を放棄する
- 共有持分を贈与する
- 土地を分筆する
- 共有物分割請求をする
以下で、それぞれの方法の特徴や注意点を詳しく解説します。
自分の共有持分を放棄する
共有持分は、自分の意思で放棄することができ、共有状態から抜け出すことが可能です。持分放棄は「放棄します」と意思表示するだけで成立し、他の共有者の同意は不要です。
放棄された持分は、民法第255条により、他の共有者に帰属すると定められています。
なお、放棄自体は自分の意思で成立しますが、持分放棄に伴う「持分移転登記」には他の共有者の協力が必要です。持分移転登記とは、放棄により他の共有者に移転した権利を法的に記録する手続きです。
実務上は、登記まで完了しなければ登記簿上は共有者のままとなり、固定資産税の負担や管理責任が残るおそれがある点に注意が必要です。
登記に応じてもらえない場合は「登記引取請求訴訟」を起こす必要があり、手間と費用がかかります。訴訟になると、弁護士費用のほかに数万〜十数万円の裁判費用が発生し、解決まで数ヵ月を要する場合もあります。そのため、放棄を検討する際は、あらかじめ他の共有者と調整しておくのが現実的です。
また、放棄によって特定の共有者の持分割合が増えるなど、経済的利益を受けたと判断される場合には、贈与税の対象とみなされる可能性があります。税務上の扱いはケースによって異なるため、事前に税理士など専門家へ確認しておくことをおすすめします。
共有持分を贈与する
無償で共有持分を譲りたい相手がいれば、贈与によって共有状態を解消することも可能です。「無償で譲る」という点では持分放棄と似ていますが、持分放棄は他の共有者にしか効力が及ばないのに対し、贈与であれば第三者にも譲渡できます。
たとえば、家族や親族など特定の人に持分を譲りたい場合は、贈与が適しています。
ただし、贈与は契約行為であるため、相手の同意が必要です。相手が受け取りを拒否した場合は、共有状態を解消することはできません。
また、不動産の贈与には所有権移転登記が必要で、登録免許税(評価額の2%)が課されます。
贈与の金額や評価によっては贈与税が課税される可能性もあるため、税務上の確認も欠かせません。年間110万円を超える贈与は、贈与税の課税対象となります。
贈与を検討する際は、登記や税務の手続きも含めて、司法書士・税理士などの専門家へ相談するとよいでしょう。
土地を分筆する
土地を共有している場合は、土地を分筆(ぶんぴつ)して区画を分け、共有状態の解消を目指す方法もあります。
たとえば、600㎡の土地をAが2/3、Bが1/3で共有しているなら、400㎡と200㎡に区画を分けるイメージです(実際の区画形状・接道等により異なります)。
分筆後、区画ごとに単独名義へ整理できれば、各自で売却・建て替えなどの意思決定をしやすくなる点がメリットです。ただし、分筆登記だけでは共有状態が残る場合もあるため、状況によっては共有物分割の協議や持分移転登記まで必要になります。
分筆には次のような負担やリスクがあります。
- 分筆の決定自体は持分価格の過半数で決められるが、測量や分筆登記の手続きでは共有者全員の協力が必要となる
- 測量・境界確認では隣地所有者の立会いが必要となる場合が多く、手続きが煩雑になりやすい
- 測量費や登記費用など、一般的に数十万円規模の費用がかかる場合がある
- 区画が狭くなったり形状が悪くなったりすることで、利用価値や売却価格が下がる場合がある
- 接道・形状・日当たり等により価値に偏りが生じ、不公平感や対立の原因になりやすい(代償金や地役権等の調整が必要になることもある)
また、分筆後の各区画が建築基準法第43条の「接道義務」を満たさない場合など、法令上の制限により建物の新築・建て替えができなくなるおそれもあります。
このように、分筆は同意の調整や費用負担が大きく、土地の価値や活用性が下がるリスクもあります。共有状態の解消方法としては、現実的にはハードルが高い選択肢といえるでしょう。
他の共有者との協議に加え、司法書士・土地家屋調査士など専門家の意見も踏まえて慎重に判断することをおすすめします。
共有物分割請求をする
共有者同士の話し合いで共有状態を解消できない場合は「共有物分割請求」により、裁判所を通じて共有関係を解消する方法があります。共有物分割請求とは、共有状態にある不動産を法的に分け、共有関係そのものを解消するための手続きです。
民法第256条では、共有者は原則として誰でも、いつでも分割を請求できると定められています。また、協議が調わないときは、裁判所に共有物の分割を請求することが可能です(民法第258条)。
共有物分割は、まず共有者同士で合意を目指す「協議」によって進めるのが一般的です。話し合いがまとまらない場合には、調停などの手続きを経て訴訟へ進むこともあります。
共有物分割請求には、主に次の3つの方法があります。
| 現物分割 |
共有している不動産を物理的に分ける方法 |
| 代償分割 |
特定の共有者が不動産を取得し、他の共有者へ代償金を支払う方法 |
| 換価分割 |
不動産を処分して換金し、代金を持分割合に応じて分ける方法 |
ただし、調停や訴訟に進んだ場合には、分割方法や条件は裁判所の判断に委ねられ、必ずしも自分の希望どおりの結果になるとは限りません。
また、手続きが長期化すると、共有者同士の関係悪化につながるほか、時間的・精神的な負担も大きくなりがちです。共有物分割請求はあくまで最終手段と位置づけ、請求前には必ず弁護士へ相談したうえで慎重に判断しましょう。
現物分割で土地を物理的に分ける
現物分割とは、共有している土地を物理的に分け、それぞれを単独所有にする方法です。十分な広さがあり、形状や接道条件に無理なく分けられる土地であれば、有効な選択肢です。
一方で、分割後に著しい価値差が生じる場合や、一部が利用しづらい土地になる場合には、公平性を欠くとして、裁判所が現物分割は相当でないと判断することもあります。
現物分割では実務上、分筆登記を行うケースが多く、測量や登記に数十万円程度の費用がかかるのが一般的です。また、面積や立地条件の違いによって価値に差が出る場合には、公平を保つために代償金の支払いが求められることもあります。
分割後は土地ごとに評価額が算定されるため、固定資産税の負担が増減し、想定していなかった税負担が生じる可能性もあるでしょう。
こうした費用や手間はかかるものの、不動産を売却せずに共有状態を解消したい場合には、有効な選択肢といえます。
代償分割で共有者1人の単独所有にする
代償分割とは、特定の共有者が不動産を取得し、他の共有者に対して金銭などの代償を支払うことで、共有関係を解消する方法です。
共有物分割の結果として、自分の持分に相当する代償金を受け取れば、現金を得ながら共有状態を解消できます。一方で、自分が他の共有者に代償金を支払えば、その不動産を単独所有することも可能です。
ただし、代償金の支払い能力が求められるため、取得する側に十分な資金がなければ実現は難しくなります。住宅ローンを利用できず、自己資金での対応が必要となるケースも少なくありません。
また、代償金を受け取る側には、譲渡所得税が発生することもあるため、税務面での確認も重要です。
資金面や税金の扱いに不安がある場合は税理士に、条件調整や手続きの進め方に迷う場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
換価分割で全員が所有権を手放して現金を分ける
換価分割とは、共有不動産を処分して換金し、得られた代金を持分割合に応じて分ける方法です。共有者全員が不動産の所有権を手放すことになるため、共有関係を完全に清算でき、将来的なトラブルを避けやすいという特徴があります。
共有者全員が売却に合意し、協議によって進められる場合には、一般的な仲介売却に近い価格で売却できることもあるでしょう。
一方で、共有者の一部が売却に反対したり、条件で対立したりすると手続きが進まず、調停や訴訟に発展するおそれがあります。その結果、換価分割として形式的競売が選択されるケースもあり、その場合は市場価格より低い金額で処分される可能性があります。
なお、売却によって利益が生じた場合には、譲渡所得税が課されるケースもあるため、税務面の確認も行っておくとよいでしょう。
まとめ
共有不動産そのものを売却するには、原則として共有者全員の合意が必要です。1人でも反対する共有者がいれば、不動産全体を売却することはできません。
一方で、自分が所有している共有持分のみであれば、他の共有者の同意がなくても売却することが可能です。共有者間で合意が取れない場合や、共有状態を早く解消したい場合には、持分のみの売却が現実的な選択肢となります。
共有持分の売却方法としては、他の共有者に持分を取得してもらう方法のほか、第三者へ売却する方法があります。なかでも、共有者との交渉が難しいケースや、できるだけ早く現金化したい場合には、共有持分の買取を専門とする業者を利用する方法も検討するとよいでしょう。
専門業者を利用すれば、手続きが比較的スムーズに進みやすく、短期間で現金化できる点が特徴です。状況に応じて、自分に合った売却方法を選ぶことが大切です。
共有持分のよくある質問
共有持分の売却で発生する費用はどれくらい?
共有持分を売却する際には、売却方法や売却益の有無によって、いくつかの費用が発生します。すべてのケースで同じ費用がかかるわけではないため、事前に全体像を把握しておくことが大切です。
以下は、共有持分の売却で発生する主な費用の一覧です。
| 費用の種類 |
発生するケース |
主な内容 |
| 譲渡所得税 |
売却益が出た場合 |
売却益に応じて課税。所有期間により税率が異なる。
・売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下(短期)
・売却した年の1月1日時点で所有期間が5年超(長期)
|
| 印紙税 |
売買契約書を作成する場合 |
契約金額に応じて課税(200円〜48万円)。 |
| 仲介手数料 |
仲介を利用する場合 |
上限:売却価格×3%+ 6万円+消費税。買取業者への直接売却では不要。 |
| 登記費用 |
契約内容による |
所有権移転登記にかかる登録免許税や司法書士報酬。負担者は売買契約で決まる。 |
譲渡所得税は売却益が出た場合にのみ発生し、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかによって税率が変わります。
また、共有持分を買取業者に直接売却する場合は、仲介手数料が不要となるケースが一般的です。
なお、共有持分の売却であっても、一定の要件を満たす場合には、譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる特例が適用できることがあります。ただし、適用可否は物件の利用状況や売却形態によって異なるため、事前に税理士などの専門家へ確認すると安心です。
どれ残すか考える
共有名義不動産を全体で売却する場合、発生する費用はどれくらい?
共有名義不動産を不動産全体として売却する場合に発生する費用の種類自体は、共有持分のみを売却する場合と変わりません。譲渡所得税や仲介手数料、印紙税、登記費用などが主な費用です。
ただし、共有持分のみを売却する場合とは異なり、不動産全体を売却する際には、これらの費用を共有者全員で負担します。一般的には、売却によって生じた費用や税金を各共有者の持分割合に応じて分担します。
また、不動産全体の売却には共有者全員の合意が必要となるため、売却を進める前に費用負担についても共有者同士で確認しておくことが重要です。