共有持分のメリット・デメリット
共有持分を上手に扱うためにはまず、さまざまなメリット・デメリットを知っておくことが大切です。
これらを把握しておくと、不動産の売買や処分がスムーズにおこなえることでしょう。また、複数人での相続が発生したときにトラブルを減らせることも考えられます。
共有持分の売買において
共有持分は持分だけであれば自由に売買できます。しかし、所有権利者が基本単独で設定されている通常の不動産のように売買が単純かつスムーズにいかないのが共有持分の特徴でもあります。
持分の購入や売却時において、具体的に以下のようなメリット・デメリットがあります。
■メリット
・住宅ローンの審査が通りやすくなる
■デメリット
・持分のみの売却価格は低くなる
・他共有者との売買トラブルが発生するおそれがある
次の項目からそれぞれ詳しく解説していきます。
【メリット①】購入時の住宅ローン審査に通りやすくなる
一般的に不動産を購入する際、現金一括ではなく住宅ローンを組むことが多いかと思います。しかし住宅ローンの審査はその人の属性、いわゆる資産や収入等がどの程度なのかというものに左右されます。
つまり、単独名義で不動産を購入する場合は契約者個人が審査されるため、その人自身の収入等が安定していないとローン契約ができません。
その問題を解消できるのが「不動産の共有名義」です。
例えば、共働きの夫婦でマイホームを持ちたいということであれば、夫婦2人分の資産・収入で審査してもらえるローン商品を選ぶことで、借り入れがしやすくなります。(ペアローン等)
この場合、共有名義で登記することになり、それぞれが出資した金額に応じて持分を有することになります。
住宅ローンを利用する場合は退職の予定や今後のライフステージの見通しを立てることも忘れないようにしましょう。
【デメリット①】共有持分のみの売却価格は低くなる
共有持分は非常に扱いにくい物件です。実際に形あるモノではなく物件における権利部分のみということに加えて、他人と不動産を共有することになるため、なかなか購入したいと考える買い手はいません。
そのため、持分のみを売却したときの価格は安価になるケースが多々あります。
売買価格を単純に考えると、資産価値3,000万円の土地は兄弟3人がそれぞれ1/3ずつ分けると、一人あたり1,000万円分の持分があることになります。しかし実際には、分割された持分はもっと低い価値になってしまいます。
具体的には第三者に自分の持分のみを売却する際、1/3の持分は1,000万円ではなく500~700万円(50~70%)で売買されるといわれています。
【デメリット②】売買によって他共有者との関係性が悪化するおそれがある
自分が所有する持分は他の共有者の同意なく自由に売却できます。つまり、他の共有者に知られること無く不動産業者などの第三者に売却できるということになります。
しかし、他の共有者からしたら勝手に持分を売られて全く知らない第三者が共有者になることはとても都合の悪いことです。なぜなら、全く無関係な第三者(新たな共有者)から共有物分割訴訟を提起され、余計な争いが生まれるなどの可能性があるからです。
自由に売却できるとしても、やり方によっては残された共有者たちとの関係性が悪くなることもあります。その結果、別のトラブルやいがみ合いが発生するおそれもあることを念頭に置いておきましょう。
手間や時間、心労などを考えるとなるべく共有者間のトラブルは避けたいところです。
税金において
共有持分は権利割合のみといっても、売却・譲渡時には通常の不動産と同じように税金がかかります。また、購入時の住宅ローンについても押さえておきたいポイントがいくつかあります。
比較的に税金面においては共有持分のメリットが多いといえます。
■メリット
・住宅ローン控除(減税)が共有者ごとに適用される
・3,000万円特別控除の特例が共有者ごとに適用される
・相続税の節税対策になる
■デメリット
・贈与税が発生することがある
・他の共有者の税金を負担しなければならないことがある
次の項目から税金面でのメリット・デメリットについて説明します。
【メリット①】住宅ローン控除(減税)が共有者ごとに適用される
「住宅ローン控除(減税)」は10~13年間に渡って住宅ローンにおける年末残高の1%(11~13年目は2/3%)を控除してもらえる制度です。(住宅借入金等特別控除ともいい、控除割合の%数値は令和元年10月1日~令和2年12月31日まで)
控除額については一般住宅が年間40万円、認定住宅は年間50万円が限度として定められています。
例えば、夫婦2人の共有名義で不動産を購入した場合、それぞれにこの住宅ローン控除が適用されます。これにより住宅購入時に本来納めるべき税金から年間で合計80~100万円の住宅ローン控除を受けられるため、税負担が軽減されます。
ただし、夫婦それぞれが控除を受けるためには個別で住宅ローンを組む、もしくはどちらかが「連帯債務者」になり住宅ローンを組まなければなりません。また、連帯債務者を「連帯保証人」と勘違いしないよう注意が必要です。
【メリット②】3,000万円特別控除の特例が共有者ごとに適用される
3,000万円特別控除とは居住用財産を譲渡・売却したときに得た売却利益から取得費などを差し引いた譲渡所得に対して3,000万円を控除できる制度です。
これにより、不動産を売却したときの譲渡所得が3,000万円以内であれば、実質として税金の負担はゼロということになります。
また、共有名義の場合、それぞれの持分割合に応じた譲渡所得に対して特例が適用されるため、2人合わせて最高6,000万円までの控除が受けられます。(確定申告は個別でおこなわなければならない)
【メリット③】相続税の節税対策になる
夫婦でマイホームを購入する場合などでは収入のある夫の単独名義にするケースが多いでしょう。しかし万が一、夫が事故などで亡くなり相続が発生すると、不動産の評価額に相続税が課せられます。
このとき夫婦で共有名義にしていた場合、相続分である夫の持分に応じた評価額に対してのみ課税されるので相続税の負担が軽減します。
例えば、評価額3,000万円のマイホームに対して夫の持分割合が7、妻の持分割合が3だとします。夫が亡くなり相続が発生すると「3,000万円×0.7=2,100万円」が課税対象となるということになります。
【デメリット①】贈与税が発生することがある
共有名義で不動産を購入したときの持分割合と購入資金の負担割合が合わない場合、贈与税が発生する可能性があります。
基本的に「各人が負担した物件購入資金が半分ずつ、であれば持分は1/2」というように負担資金と持分がイコールの関係でなければなりません。
出資した際の負担割合以上の持分割合で登記してしまうと、持分割合を超える分だけ贈与とみなされ税金が課されるので注意が必要です。
また、住宅ローンに関しても同様で、共有者が退職したり収入が減ることによって住宅ローンが払えなくなってしまい、もう一人の共有者がその住宅ローンを肩代わりすると「贈与」とみなされ税金が課せられるケースもあります。
夫婦共有で個々に住宅ローンを組んだ際には「肩代わり」する前に今一度、贈与税についてよく考え行動するべきでしょう。
参照:国税庁「No.4411 共働きの夫婦が住宅を買ったとき」
【デメリット②】他の共有者の税金を負担しなければならないことがある
共有名義の不動産の固定資産税・都市計画税といった税金は、地方税法によって共有者全員に全額納税義務が課されています。
代表者がまとめて支払い、他の共有者から回収する流れが一般的ですが、連絡がつかないなどで回収できないケースも。その分は肩代わりするしかないため、負担が大きくなるデメリットがあります。
共有者が税金を支払ってくれないときの対処方法はこちらにもまとめているので、ぜひ読んでみてください。
共有持分を夫婦で所有する場合
不動産の共有で特に多いのが婚姻後に夫婦で共有するケースです。
住宅等を購入するときに夫と妻が共同で出資することによってそれぞれに持分が与えられますが、離婚等のトラブルが起こると持分争いになり問題が複雑化することもあります。
■メリット
・離婚時に一方的に家を売却されない
■デメリット
・離婚後トラブルに発展する可能性が高い
離婚におけるメリット・デメリットについて次の項目から解説していきます。
【メリット①】一方的に不動産の全てを売却されない
共有名義となっている不動産全てを売却する場合は共有者である全員の同意が必要です。そのため、不動産の持分を所有していることで勝手に「所有物件の全てを売却される」といったことにはなりません。
例えば、夫のみの単独名義だとすると、離婚してすぐ家を売却・活用するかもしれません。別れた妻がいきなり家を追い出されるというケースも考えられます。
しかし、妻が少しでも不動産の持分を所有しているのであれば、所有者として権利を主張できます。
離婚時などで一方的に家を追い出される形を避けることが可能であり、相手との話し合いや交渉の余地が生まれます。
【デメリット①】離婚後の持分トラブルに発展する可能性が高い
マイホームを夫婦互いの出資で購入した後に離婚してしまうこともよくありますが、このときにマイホームの処分や持分割合について揉めてしまうことがあります。
夫婦それぞれの持分は出資額に関わらずとりあえず半分に決めていたなどで曖昧な割合になっている場合、処分時の売却金額で争われることも多いです。
また、住宅ローンを共同で組んでいた場合、妻が離婚した夫との距離を遠ざけたいと思い持分を売ろうとしても、妻側の持分にかかるローンを返済しない限り第三者に持分を勝手に売ることはできません。
妻と夫の離婚問題に借入先の金融機関も絡んできてしまうと、争いが泥沼化するおそれがあります。
相続発生時において
相続におけるメリット・デメリットは以下の通りです。
■メリット
・管理にかかる労力や費用を分担できる
・相続財産を平等に分割できる
■デメリット
・相続によって共有者が増えてしまう
次の項目からそれぞれのメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
【メリット①】相続財産を平等に分割できる
法定相続分に従って共有持分を設定することで平等に相続財産を分割することが可能です。法定相続分に従うことで遺産分割協議をスムーズに進め、他の相続人と揉めることなく相続が完了するかもしれません。
例えば、兄弟3人が1つの土地を法定相続したとすると、それぞれ1/3ずつの持分を所有することになります。また、持分を所有していることで3人全員が土地全体を使用できるため、持分を使用する権利も平等になるといえます。
遺産分割において争いやトラブルが起きそうだと予想される場合は、相続不動産に共有持分の設定をすることを提案してみましょう。
【デメリット①】相続によって共有者が増えてしまう
共有者の誰かが他界してしまった場合、その人の持分は相続対象となります。そのため、ケースによって共有者の人数が増え、権利関係が複雑になってしまうことがあります。
仮にAさんとBさんが不動産を共有しており、Aさんが亡くなってしまうとします。すると、Aさんの持分の相続が発生するため、もしAさんに配偶者と子供が2人いるとしたら、この3人が相続をします。
その結果、BさんとAさんの家族が不動産を共有することになります。つまり、共有者が2人から4人に増えてしまうというわけです。
また、BさんとAさんの家族は面識がなく関係性が薄いなどの場合、共有不動産の取り扱い等の話し合いがまとまりにくいなどの問題も出てくるかもしれません。
共有持分の相続にまつわるトラブル回避策や、私道の共有持分といった本記事で解説しきれなかったリスクの部分などは、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。
共有持分のデメリットやリスクを解消する方法
ここまで解説してきたとおり、共有持分にはメリットだけではなく、さまざまなデメリットもあります。ここでは、上述したデメリットの解消方法を以下のポイントで解説します。
- 売買のデメリットは専門の買取業者への売却で解消
- 税金のデメリットは負担額の明確化で解消
- 離婚時のデメリットは早めの協議や専門の買取業者への売却で解消
- 相続時のデメリットは単独所有化か専門の買取業者への売却で解消
デメリットを解消できれば、共有者同士のトラブルや売買リスク等によって大きな損失を発生させずに自分の持分を上手に扱えるでしょう。
それぞれ詳しく解説します。
売買のデメリットは、共有持分の専門買取業者に依頼して解消する
共有持分の売買では「売却価格が安価」「他共有者との関係が悪化する恐れがある」などのデメリットがあることを前の項目で挙げました。
まず、売却価格が安価になるというデメリットを解消するには、共有持分に特化した不動産専門買取業者へ買い取ってもらうことがもっとも最善の策といえます。
共有持分に特化した不動産専門買取業者なら、買取後に弁護士と連携して他共有者と交渉し、残りの共有持分を買い取ったうえで共有不動産を丸ごと売却することも可能です。このように、共有持分の活用方法を熟知しているため、売却価格が下がりやすい共有持分も、高値で買い取ってもらえる可能性があります。
さらに、共有持分の売却中や売却後に、他共有者とトラブルが発生しても、弁護士と連携して対処できるため、スムーズに売却手続きを進められます。
当社クランピーリアルエステートは、共有持分などを専門とする不動産買取業者ですので、お悩みの方はぜひ一度下記のリンクよりご相談ください。
共有持分を売却するとデメリットを解消できます。当社なら共有持分を「トラブルなく」「高値で」買取可能ですので、お気軽にご相談ください。
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他共有者との関係性を悪化させない手段
最も関係性が悪くなりそうなことは「相談もせず勝手に持分を売ってしまうこと」です。もちろん同意無しで売却可能なのですが、モラル的には悪手だといえます。
できれば、他の共有者に相談や連絡をいれるということは必ずやっておくとよいでしょう。
その際に反対する共有者もいるかとは思いますが、連絡や話し合いをした上で売却に反対されたとなれば「やむを得ない判断」として自分の持分を売却できるので負い目を感じずに済みそうです。
また、「不動産買取業者に相談しておく」というのも効果的です。他共有者を上手に説得する自信がない場合は、不動産のプロである専門家に相談し、反対者がいれば担当の不動産業者に直接説得してもらうことが最もトラブル無く持分売却ができる方法です。
税金のデメリットは、物件購入資金の負担額を明確化して解消する
税金におけるデメリットとして「贈与税が発生する可能性」を挙げました。
これは「物件購入資金の負担額を明確化し、それに則って所有権登記の持分割合を決める」ことで対処できます。
夫婦や家族だからといって持分割合の決定において忖度したり、いい加減に決めたりはしないように心がけることが大切です。
わかりやすく例を出すと、総額5000万円の物件購入において夫婦それぞれの購入負担額が「夫4000万円」「妻1000万円」の場合、持分割合は半分の「2分の1」ではなく、「夫5分の4」、「妻5分の1」で所有権登記をしておくと贈与税がかかりません。
相続のデメリットは、所有権の単独化するか業者にまとめて売却して解消する
共有持分の相続問題においては特に解消しておきたい事柄が多いです。
「共有者が増え続けて把握しにくくなる」というデメリットを解消するには、なるべく相続発生後すぐに持分を売却するなどで共有関係から抜け出すことが大事です。
相続した共有不動産はねずみ算式に共有者が増えていく傾向があります。1人亡くなれば共有者が3人増えるというように相続の連鎖が続き持分も細分化していきます。
そのため、相続における法定相続持分は共有者の誰か1人に売却して所有権を単独化するか、不動産買取業者に相談し細分化した持分をまとめて売却してしまったほうが将来的に良い結果になるといえます。
まとめ
共有持分におけるメリット・デメリットは、必ずしも先の行動を決定するものではありません。
個々の状況によって優先すべき事柄というのは異なるため、デメリットがあっても不動産を共有状態にしたほうが都合の良い結果になることもあります。
また、今回解説したメリット・デメリットは一般的なものなので、人によってはもっとさまざまなメリット・デメリットがあるかもしれません。
もしも、共有持分というものから開放されたいと考えている方は一度、当社クランピーリアルエステートへご相談ください。きっと解決の糸口が見つかるはずです。
共有持分のよくある質問
共有持分とは?共有不動産との違いは?
共有持分とは共有不動産における「共有者ごとの所有権割合」を表したものです。持分の権利割合は1/3などの数字で表記します。ちなみに共有不動産は「他人と共有している不動産そのもの」を指します。
共有持分のメリットはなんですか?
不動産を購入するときに複数人で出資するので、費用負担が軽くなります。税金面では、持分権者全員が軽減制度の対象になるので、工夫次第で節税が可能です。相続のときは、書類上の名義を変更するだけなので、公平に遺産を分割しやすいでしょう。
共有持分のデメリットはなんですか?
共有不動産の管理や利用には共有者の同意が必要になるので、意見が対立してトラブルになりやすいといえます。権利関係が複雑なので、一度話がこじれると解決まで時間がかかり、裁判に発展することも少なくありません。相続や離婚が発生すると、共有不動産の取り扱いを巡って泥沼の争いになることもあります。
自分の持分だけを売却したいのですが可能ですか?
はい、売却可能です。自分の共有持分であれば、共有者の同意がなくても売却できます。ただし、共有している不動産自体をまるごと売却するときは共有者の許可が必要です。
共有持分を高く買い取ってくれる業者はありますか?
はい、あります。一般的な物件を扱う大手不動産会社よりも「共有持分を専門としている買取業者」へ売却したほうが高額となる可能性があります。また、離婚などで共有者どうしがトラブルになっている共有持分は、弁護士と連携している専門買取業者への売却がおすすめです。→
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