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共有者が固定資産税を払わないときはどうする?立て替えた後の請求方法も解説

共有者が固定資産税を払わないときはどうする?立て替えた後の請求方法も解説

共有不動産を所有しているものの、固定資産税を支払わない共有者がいて困っている人もいるのではないでしょうか。前提として、固定資産税の納付義務は共有者全員にあります。

どんなに持分が小さくても、全員がその支払い義務を負っているのが基本です。もし、一部の共有者が支払わない場合、全員が滞納扱いとなり、税務署からの督促や延滞金が発生するリスクもあります。

そのため支払わない共有者がいる場合、他の共有者が立て替えてでも納税するのが賢明です。立て替えた分は、以下の方法であとから請求することになります。

  • 求償権:支払った分を他の共有者に請求する
  • 持分買取:支払わない共有者の持分を他の共有者が買い取る

ただし、求償権には時効があり、5年以内に請求しないと権利が消失するため、なるべく早めに行使することが重要です。また、認知症や行方不明の場合、物理的に支払えないこともあります。こうした場合には、成年後見制度や不在者財産管理人制度を利用して、適切に対応することが求められます。

この記事では、共有者が支払わない場合に取るべき方法を詳しく解説します。立て替え払いが発生した場合、なるべく当事者同士の話し合いで解決するのが理想です。もし相手が一筋縄に応じてくれない場合は、法的措置が必要になるため、回収するのに複雑な手続きをとらざるを得なくなるケースもあります。

裁判や弁護士を通じた手続きには時間や費用もかかるので、慎重に対応しましょう。また、もし共有不動産の管理に疲れているなら、共有名義を解消する選択肢もあります。

共有状態を解消すれば、固定資産税を含む管理負担も軽減され、トラブルからも解放されるでしょう。共有不動産は、全員の同意が必要ですが、持分だけであれば単独で売却可能です。

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共有不動産の固定資産税は共有者全員に納税義務がある

共有不動産の固定資産税は、共有者全員に納税義務があります。地方税法第10条の2第1項では、共有物に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負うと定めています。


第十条の二
共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
引用元 地方税法 | e-Gov 法令検索

これは、共有者全員が各自の持分割合に関係なく、それぞれ固定資産税の全額を納付する義務を負うことを意味しています。

一方、共有者同士の内部的な負担割合は、共有不動産の持分割合に従うのが原則です。民法第253条第1項では、共有物に関する費用は、各共有者が持分に応じて負担すると定めています。

第二百五十三条
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索

たとえば、兄弟2人で2分の1ずつの持分割合で共有している不動産の固定資産税が10万円だったとします。この場合、兄と弟は自治体に対して10万円全額の納税義務を負いますが、実際の負担額は兄と弟でそれぞれ5万円ずつとなるのが基本です。

実際の納税方法としては、毎年4~5月頃に自治体が決めた代表者に納税通知書が送られてくるので、その代表者が各共有者の負担分を取りまとめて納付します。先に各自の負担分を徴収してから納付するか、代表者が一旦全額を立て替えて納付してから後で請求するかどうかについては、基本的に代表者の裁量に委ねられています。

どうしても共有者が固定資産税を払わない場合はとりあえず立て替えておく

固定資産税を払わない共有者がいる場合は、他の共有者がその分を一時的に立て替えて納税するのが最も賢明です。なぜなら、もし一人でも税金を払わない共有者がいると、共有者全員に滞納のリスクが及ぶからです。

そのため、滞納だけは避けるためにも早めに納税することが大切です。後ほど説明しますが、立て替えて支払った分は後で本来負担すべき共有者に請求できます

固定資産税を支払わない共有者がいるからといって滞納してしまうと、共有者全員が滞納扱いとなるため、以下のような深刻なリスクが生じます。

  • 督促状が送付される
  • 延滞金が加算される
  • 財産の差し押さえに発展する

固定資産税の納付期限を過ぎると、納付期限の翌日から全額納付が完了する日まで、滞納分に対する延滞金が毎日加算され続けます。延滞金の利率は、滞納期間によって以下のように定められています。

滞納期間 延滞金の利率
納付期限から1ヶ月以内 年7.3%
(令和7年度分は年2.4%)
納付期限から1ヶ月経過した後 年14.6%
(令和7年度分は年8.7%)

また、自治体から督促状が送られてきた後も固定資産税を滞納し続けると、早ければ納付期限から1ヶ月ほどで強制執行による財産の差し押さえが行われます。共有不動産の固定資産税は、共有者全員に連帯納税義務があるため、財産の差し押さえも共有者全員のそれぞれの財産が対象です。

共有不動産も差し押さえ対象に含まれているため、最悪共有不動産を失ってしまうリスクもあります。

共有者が固定資産税を払わないときは「求償権」を行使する

共有者が本来負担すべき固定資産税を支払わない場合は、その共有者に対して「求償権」を行使することで、立て替えた固定資産税の負担分を請求できます。求償権とは、債務者の代わりに債務を弁済した人が、その債務者に対して立て替えた分の返済を請求できる権利のことをいいます。

たとえば、兄弟2人で2分の1ずつの持分割合で共有している不動産の固定資産税が10万円だった場合、民法上では兄と弟がそれぞれ5万円ずつ負担するのが原則です。仮に兄が弟の負担分の5万円を立て替えて納付した場合、兄は弟に対して立て替え分の5万円の返済を請求できます。

求償権は法律上の正当な権利であるため、求償権を行使された側はそれに応じる義務が生じます。ただし、単に返済を求めただけでは返済に応じてくれないケースも少なくありません。その場合は、法的手続きを利用して返済を求めることが可能です。

求償権の行使方法

求償権を行使する際には、以下の流れで行います。

  1. 口頭などで直接請求する
  2. 内容証明で請求を行う
  3. 支払督促や訴訟を行う
  4. 強制執行で差し押さえる

まずは当事者間での解決を目指し、それでも解決しない場合は法的手段に移行して強制的な回収を目指すことになります。ここからは、それぞれの手順について詳しく解説していきます。

1.口頭などで直接請求する

まずは、相手に対して求償権を行使し、立て替えた固定資産税の返済を求める意思を直接伝えます。請求方法は法律で定められていないため、対面での口頭や電話、書面、メールなど、どのような方法でも構いません。

しかし、私の実務経験から言うと、口頭や電話での請求は後々トラブルの原因になることが多いです。実際に、口頭で請求したにも関わらず、「そんな請求を受けた覚えはない」「言っていない」といった反論を受けた事例が何度もありました。

特に、共有者間で感情的な対立がある場合、言った・言わないの水掛け論になることが少なくありません。そのため、リスクを最小限に抑えるためにも、書面やメールなど、請求した事実が記録として残る方法で請求することが非常に重要です。

2.内容証明で請求を行う

直接請求しても返済してもらえない場合は、内容証明を利用して直接請求を行います。内容証明とは、郵便局が差出人・宛先・差出日時・内容を証明してくれる郵便サービスです。料金は、一般書留に480円(2枚目以降は290円)を加算した金額です。

内容証明には相手に返済を強制する法的拘束力はありませんが、請求した事実が証拠として残るため、相手から「そんな請求を受けていない」と主張されても確実に反論できます。また、内容証明で請求することで、相手に強い心理的プレッシャーを与える効果にも期待できます。

実務上、内容証明は度重なる督促に応じない相手に対し、法的手段に移行する前の最終的な警告手段として位置づけられています。内容証明で請求することで、「このまま放置すれば法的手段を辞さない」という強い意思が相手に伝わりやすいため、法的手段に移行する前に請求に応じてもらえる可能性が高まります。

実際、これまで寄せられたご相談の中にも、内容証明で請求したことで立て替え分を返済してもらえたという事例は多くあります。繰り返し請求しても返済してもらえない場合は、内容証明で請求の意思や法的手段を辞さないという意思を明確に伝えるようにしましょう。

3.支払督促や訴訟を行う

内容証明で請求を行っても返済してもらえない場合は、裁判所に申し立てて支払督促や訴訟を行います。支払督促とは、借金や立替金を相手が支払わない場合に、簡易裁判所の書記官が相手に支払いを命じる略式的な法的手続きです。

支払督促が送付されてから2週間以内に相手からの異議申し立てがなかった場合は、裁判所で仮執行宣言の申立てを行うことで、強制執行による財産の差し押さえが可能になります。支払督促が送付されてから2週間以内に相手が異議を申し立てた場合は、自動的に訴訟へ移行します。

訴訟では、当事者双方が主張や証拠を出し合い、最終的には裁判所の判決によって求償権行使の可否が決まるのが基本です。訴訟に移行した場合は、裁判所への出廷や証言、求償権を認めてもらうための証拠の提出が必要になります。

弁護士に依頼すれば訴訟手続きをすべて代行してもらえますが、その場合は裁判費用とは別に高額な弁護士費用がかかります。そのため、求償権の行使で法的手段を取る場合は、いきなり訴訟に移行するのではなく、まずは支払督促を送付して相手の出方をうかがうケースが多いです。

なぜなら、固定資産税の求償権の行使においては、支払いの事実や金額を立証するのが極めて容易で、相手と争う余地がほぼないためです。実際に私が関わってきた事例でも、最初に支払督促を送付することで、相手が異議を申し立てずに支払いに応じたケースが多くありました。

また、支払督促は、訴訟のように裁判所に出廷して相手と争う必要がなく、申立人の申し立てのみに基づいて手続きが進められます。訴訟に比べて支払督促は手続きが簡便で、コストも抑えられるため、最初の段階では支払督促を利用するのが一般的です。

4.強制執行で差し押さえる

支払督促や訴訟を経ても返済がされない場合は、最終手段として裁判所に強制執行を申し立てます。強制執行とは、支払督促や訴訟で確定した債務名義に基づき、裁判所の執行官が債務者本人の財産を差し押さえ、強制的に債権を回収する手続きです。

差し押さえの対象となるのは、債務者本人が保有する財産や債務者本人が権利を持つ債権で、具体的には以下のような財産が差し押さえの対象となります。

  • 預貯金
  • 給与債権
  • 有価証券
  • 不動産(共有持分を含む)
  • 自動車
  • 貴金属

なお、強制執行で差し押さえる財産は、債権者が自力で調査・特定する必要があります。その際、法律で差し押さえが禁止されている財産や、金銭的価値のない財産は差し押さえできません。

実務上、財産調査で把握できた財産のうち、給与債権や預貯金といった換価が容易で回収の確実性が高い財産を優先的に差し押さえ対象として指定するケースが多いです。

共有不動産の固定資産税で求償権を行使するケースでは、相手が共有持分を保有していることが特定できている状態にあります。そのため、共有持分を差し押さえ対象として指定するのも選択肢の1つです。

実際に、固定資産税の支払いを押し付けられている共有者の持分を買い取ったこともありました。その際、私の方から支払督促を送っても返答がなかったため、強制執行に移り、共有持分を差し押さえ対象として指定したケースもあります。

差し押さえ対象の財産を特定した後は、裁判所に強制執行の申し立てを行います。強制執行は債務者の意思や事情にかかわらず、裁判所が主体となって手続きが進められるため、手続きが開始されればほぼ確実に立て替え分の回収が可能です。

求償権は5年経過で時効となるので注意

求償権には時効があり、固定資産税を立て替えてから5年間経過すると権利が消滅してしまいます。

第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。出典:e-Govポータル「民法第253条」

しかし、実務上では、時効が中断したり、完成猶予や更新される場合もあります。このため、固定資産税の立て替えから5年が経過しても、必ずしも時効が適用されるわけではありません。

具体的には、以下のような状況で時効が中断・完成猶予・更新されることがあります

項目 時効の更新 時効の完成猶予
概要 時効期間をリセットし、再度時効のカウントがスタートする 時効の完成を一定期間延期する
発動する条件 債務者が債務の存在を認める(債務の承認)、債権者が裁判上の請求をした後、判決が確定した、債権者が支払督促をしたものの、債務者が異議申し立てしなかった場合、強制執行の手続きが完了した、担保権の実行が完了した 債権者が裁判上の請求をした(催告)、債権者が仮差押え・仮処分を行使した、債権者が強制執行を行使した、債務者が協議を行う旨の合意をした、債務者が未成年者または成年被後見人、離婚後の6か月間、財産相続後の6か月間、天災で時効を更新できないとき
発動後 支払いや合意があった時点から、新たに5年の時効期間がスタート。 それぞれの条件に応じて、原因が解消されるまで時効の完成が遅れる(最大6ヶ月~1年程度)。

求償権の時効は、立て替えた日から5年間経過することにより発生します。したがって、固定資産税を立て替えた日が時効の起算日です。

例えば、2020年5月1日に固定資産税を立て替えた場合、時効の起算日は2020年5月1日から始まり、2025年5月1日に時効が成立します。

上記のケースで、起算日から2年目の5月1日に時効の更新や6か月間の完成猶予に当てはまる事由があった場合、最終的な時効は以下のようになります。

・時効の更新:2027年5月1日
・時効の完成猶予:2025年11月1日

時効の更新や完成猶予は何度でも発動します。しかし、共有不動産の場合は親族と共有しているケースも多く、不満を感じつつも関係悪化を恐れて何もせずに過ごしている人も多いです。

いざ求償権を行使しようとしたタイミングで時効が成立しており、結局回収できずに終わるケースも少なくありません。そのため、確実に立替分を回収するためにも放置せず、支払督促や催告などのアクションは継続することが重要です。

求償権の行使を依頼したときの弁護士費用

求償権を行使する場合、支払督促や訴訟には法的知識が必要なので、弁護士に依頼するのが一般的です。

弁護士の費用は各事務所が独自に設定するため、統一された基準がありません。一応の目安としては、下記の金額を想定しておきましょう。

  • 相談料…1時間あたり1万円~
  • 着手金…15万~150万円程度
  • 報酬金…弁済額(相手方から支払ってもらう金額)の15~20%程度
  • その他実費

請求額によっても異なるため、まずは弁護士に見積もりを出してもらいましょう。

なお、上記とは別に支払督促や訴訟にかかる手数料もあります。手数料は訴額(裁判所に申し立てる目的物の価額。実際の請求額とは異なる場合がある)を基準に決定します。

手数料早見表(一部抜粋)
訴額 手数料
訴訟 支払督促
10万円まで 1,000円 500円
20万円 2,000円 1,000円
30万円 3,000円 1,500円
40万円 4,000円 2,000円
50万円 5,000円 2,500円
100万円 10,000円 5,000円
200万円 15,000円 7,500円
300万円 20,000円 10,000円
1,000万円 50,000円 25,000円

参照:裁判所「手数料額早見表」

費用が請求額を上回ってしまうと意味がないため、支払督促や訴訟は費用対効果を考えてから実行しましょう。

共有者が固定資産税を1年以上払わないときは強制的に持分買取ができる

共有者が本来負担すべき固定資産税を1年以上支払わなかった場合、他の共有者は未払いの共有者が保有する持分を強制的に買い取ることが可能です。これは「共有持分買取権」という、民法253条第2項に基づいた正当な権利です。

第二百五十三条
2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索

共有持分買取権を行使して強制的に持分を買い取れば、買い取られた側の共有者は共有不動産の所有権を失うことになります。納税義務を果たさない共有者を共有関係から排除できるため、共有者間で生じた不公平感を解消できるのがメリットです。

ただし、持分の買取を成立させるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 買取をする共有者が、未払いの共有者が負担すべき固定資産税や共有物に関する費用を立て替えて支払っていること
  • 未払いの共有者が正当な理由なく1年以上固定資産税や共有物に関する費用を支払っていないこと
  • 買取をする共有者が未払いの共有者に対し、買取対象の持分に相当する金銭を支払うこと

不履行期間(1年)の起算点は、判例・実務上、未払いの共有者に催告(立て替え分を直接請求)した時点としています。

共有持分買取権を行使する際、催告した時点から1年以上経過していることを立証できるようにするためには、請求日や請求した事実を公的に証明できる内容証明で行うのが最も確実です。共有持分買取権を行使する際の大まかな流れは以下の通りです。

  1. 立て替え分の固定資産税の支払いを内容証明で請求する
  2. 内容証明で請求してから1年経過後、共有持分買取権を行使する旨を内容証明で通知する
  3. 当事者間で話し合って、共有持分の買取価格を決める
  4. 話し合いで決めた買取価格で共有持分を買い取る
  5. 法務局で持分の移転登記を申請する

共有持分買取権を適切に行使したにもかかわらず買取を拒否された場合や、当事者間の話し合いで買取価格が決まらない場合は、調停や訴訟などの法的手続きを利用して解決を目指すことになります。

認知症・行方不明・死亡で固定資産税を請求できないときの対処法

認知症や行方不明、死亡などの理由で固定資産税を支払えない(請求できない)場合は、それぞれに対応する対処法があります。

  • 認知症の場合…成年後見制度を利用する
  • 行方不明の場合…不在者財産管理人制度を利用する
  • 死亡の場合…相続人に請求する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

認知症の場合は成年後見制度を利用する

認知症の場合は成年後見制度を利用する

共有者が認知症になってしまい、固定資産税の請求ができない場合は、成年後見制度を利用しましょう。成年後見制度とは、意思決定が困難な人を支援し、身体の保護や財産管理に必要な手続きを後見人が行う制度です。

成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。

任意後見制度と法定後見制度の違い
成年後見制度 法定後見制度
手続きをする人 本人が判断能力を失う前に準備する 本人の判断能力が低下した後、家族などが申し立てる
手続き内容 1.本人が指定した任意後見人と契約する
2.判断能力の低下後、家庭裁判所に申し立てる
3.後見監督人の監督のもと、任意後見人が本人を保護する
1.周囲の人が家庭裁判所に法定後見開始の審判を申立てる
2.裁判所が後見業務の範囲を決定し、成年後見人等(補助人・保佐人・成年後見人)を選任する
3.成年後見人等が本人を保護する(家庭裁判所や後見監督人の監督あり)
後見人になる人 本人が指定した人 裁判所が選任した人
(申し立て時に希望を出すことは可能)

任意後見制度のメリットは、本人の意志に基づいて後見人を選べる点です。後見契約後、本人が判断能力を失った時点で家庭裁判所に申し立て、後見人としての活動が開始されます。

後見契約は公正証書が作成されるため、公証役場で契約の有無を確認できます。一方で法定後見制度は、周囲の人が裁判所に申し立てなければなりません。配偶者のほか、4親等以内の親族や市区町村長、検察官などが可能です。

後見人の選任は裁判所が最終的に決定するため、後見人の選定に時間がかかることがあります。

どちらの制度も、後見人によって固定資産税の管理や納付が行われるため、万が一認知症になったとしても税金の滞納を防げます。

実際に後見制度を早期に利用したことで、固定資産税の支払いを含めた財産管理が問題なく進んだケースも多いです。逆に、後見制度の利用が遅れて立て替えが必要になり、誰が立て替えるのかでもめるなどトラブルになった事例も少なくありません。

早めに制度を活用し、認知症を患う前に後見人を決めておくことで、税金や不動産の管理が確実に行われます。トラブルを未然に防ぐためにも、万が一の備えとして、できれば元気なうちに成年後見契約をしておくのがおすすめです。

法定後見制度を利用する際は、弁護士や司法書士などのに相談し、適切な手続きを進めるとよいでしょう。

参照:法務省「任意後見制度について」
参照:法務省「法定後見制度について」

行方不明の場合は不在者財産管理人制度を利用する

行方不明の場合は不在者財産管理人制度を利用する

行方不明で連絡も取れない共有者がいる場合は、「不在者財産管理人制度」という裁判所の手続きを利用しましょう。不在者財産管理人制度とは、家庭裁判所に選任された不在者財産管理人が、不在者の財産を本人に代わって管理・保全する制度のことです。

この制度を利用すれば、不在者財産管理人が行方不明の共有者に代わり、その共有者の財産の範囲内で固定資産税の納税義務を履行してくれます。納付代表者が求償権を行使した際も、不在者財産管理人が行方不明の共有者の財産の範囲内で返済に応じてくれます。

不在者財産管理人制度を利用する流れは以下の通りです。

  1. 家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる
  2. 裁判所が審査のうえ不在者財産管理人を選任する
  3. 不在者財産管理人に固定資産税の支払いを請求する

ただし、不在者の財産が少ないと、立替分の全額は返って来ないことも頭に入れておきましょう。

なお、行方不明になってから7年以上経過している場合は、「失踪宣告」という制度も利用できます。失踪宣告とは、行方不明になってから7年間生死が明らかでない場合に、家庭裁判所がその行方不明者を法律上死亡したものとみなす制度です。

戦争や災害などの危機に遭遇して行方不明となった場合は、その危機が去ってから1年間で、以下のような行方不明者の利害関係人のみ行えます。

  • 配偶者や推定相続人
  • 不在者財産管理人
  • 受遺者

失踪宣告の申し立てが認められれば、行方不明の共有者が保有する共有持分は、その共有者の相続人に引き継がれることになります。これにより、固定資産税の納税義務も共有持分を引き継いだ相続人に移るため、その相続人に対して固定資産税の立て替え分を請求できるようになります。

参照:裁判所「不在者財産管理人選任」

死亡の場合は相続人に請求する

共有者が死亡した場合、支払っていない固定資産税は相続人が引き継ぐことになります。相続放棄をされない限り、相続人に立替分を請求可能です。

相続人が複数の場合、各相続人に対して相続分に応じた割合を請求します。例えば、相続人Aの相続分が1/2なら請求できる立替分も1/2までです。

なお、自分が相続人である場合は、相続した割合に応じて立替分は相殺されます。仮に相続分が1/2なら、他の相続人に対して1/2の立替分までしか請求できません。

共有不動産の固定資産税を支払いたくない場合は共有名義を解消する

共有不動産の固定資産税を支払いたくない場合は、共有名義を解消する必要があります。共有名義を解消すれば、共有不動産の所有権を失う代わりに、固定資産税の納税義務や管理責任など共有不動産に関わるすべての義務・責任から解放されます。

共有名義の解消方法としては、以下の6つが挙げられます。

共有状態の解消方法 内容 メリット デメリット
共有不動産全体の売却 共有者全員が協力して、共有不動産全体を売却する方法 ・共有者全員が売却益を得られる
・共有持分のみを売却するよりも買い手がつきやすく、高値で売却しやすい
・共有者全員の同意が必要
・売却までに時間がかかる場合もある
共有者間で共有持分を売却 共有者のうちの1人がすべての共有持分を買い取り、不動産を単独で所有する方法 ・「不動産全体の価格×持分割合」の金額で売却しやすい
・第三者に売却することによるトラブルのリスクが低い
買取の意思や資金がある共有者がいなければ成立しない
自分の共有持分を第三者に売却 自分の共有持分を買取業者や一般の個人などの第三者に売却する方法 他の共有者の同意が必要なく、単独で売却できる ・仲介での売却は困難で、買い手は専門の買取業者に限られるケースが多い
・売却価格は「不動産全体の価格×持分割合」よりも安い傾向がある
土地を分筆(土地のみの場合) 1筆の土地を複数の土地に分けてから、各共有者がそれぞれ単独で所有する方法 単独名義で取得することで土地を自由に活用・売却できる 土地の形状や法的要件によっては分筆ができない場合もある
共有持分を放棄 自分の共有持分を放棄し、それを他の共有者に無償で帰属させる方法 他の共有者の同意が必要なく、単独で放棄できる ・売却代金が得られない
・他の共有者全員に贈与税が課される可能性がある
共有物分割請求訴訟を提起 裁判所の判決で決定した方法に従って共有状態を解消する方法 共有者同士で話し合いができない場合や意見が対立している場合でも、強制的に共有状態を解消できる ・共有者が望まない分割方法が命じられる場合がある
・弁護士費用や時間、手間がかかる

共有者全員が共有名義の解消を望んでいる場合は、共有者全員で協力して共有不動産全体を売却するのがベストな方法です。共有不動産全体の売却では、市場価格とほぼ同等の価格での売却にも期待できるため、各共有者が個別に共有持分を売却するよりも金銭的なメリットが非常に大きいです。

共有不動産を残したい共有者がいる場合は、その共有者に対して自分の共有持分を売却することを優先的に検討してみましょう。

市場での価値が著しく低い共有持分も、他の共有者からすれば持分割合が増加することで、不動産活用の自由度が向上し、単独所有化の実現にもつなげやすくなるというメリットがあります。

そのため、第三者に売却するよりも高値での売却に応じてもらいやすく、双方にとって大きなメリットがあります。

共有者への売却が難しく、不動産全体の売却にも応じてもらえない場合は、自身の持分のみの売却を検討しても良いでしょう。ただし、共有持分は自由に活用できないなどのデメリットが多いことから、一般市場で買い手が現れることはほぼありません。

そのため、共有持分専門の買取業者に売却することになるのが基本です。もし、共有不動産や共有持分の売却を検討しているのであれば、イエコンの一括査定サービスを活用するのがおすすめです。複数の共有持分専門業者に一括で査定依頼ができるため、条件の良い買取先を効率的に見つけられます。

共有者と連絡を取るのが難しいケースや、相続・離婚に関連する複雑な共有不動産でも、弁護士と連携した業者に査定依頼が可能です。次の固定資産税の支払時期が来る前に、ぜひ一度無料査定をお試しください。

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まとめ

不動産を共有している場合には、その不動産から発生する収益・費用の配分を行わなければならず、面倒に感じることが多いです。

その代表例が、年に4回訪れる固定資産税の負担分の精算でしょう。

共有者が高齢になってしまうと不動産の売買が困難となってしまうため、共有を解消する意向がある場合には早めに行動した方がいいでしょう。

しかし、なかなか機会をつかめなかったり、つい先延ばしにしてしまっている方も多いと思います。

固定資産税の負担額を請求する際や共有者の皆さんが集まる機会に、共有状態の解消に向けて話し合ってみてはいかがでしょうか。

共有不動産の固定資産税についてよくある質問

共有名義にすると固定資産税は安くなりますか?

各共有者が持分割合に応じて負担するため、一人ひとりの支払い額として安くなります。しかし、共有名義だからといって課税総額が変わることはありません。
また、全員が等しく納税の義務を負う「連帯納税義務」になるので、自治体が請求するときは各共有者を区別しません。「持分に応じて負担する」というのはあくまで共有者間でのルールであり、自治体は共有者の誰にでも全額請求が可能です。

共有持分に関するコラムはこちら

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更新日 : 2025年11月07日
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