共有不動産の売却にあたって、もっとも問題となるのが「共有者全員の意思統一」です。
共有不動産は、共有者の1人でも反対すると売却できません。売却自体の合意は取れても、価格でもめたり、代金の分割がされないといったトラブルがありえます。
共有不動産を売却するときは、事前に売却条件をしっかり話し合うことが大切です。
しかし、共有者に売却の合意が取れないときは、自分の共有持分だけ売却することもおすすめします。共有持分だけなら共有者の同意がなくても売却可能で、好きなときに現金を手に入れられます。
共有持分を売却すれば、共有者とのトラブルも回避可能です。専門の買取業者なら最短48時間での現金化も可能なので、なるべく早く手放したい人はぜひ検討しましょう。
共有不動産を共有者全員で売却する流れ
共有不動産を共有者全員で売却するときは、全員が売却に合意していることを証明しなければいけません。
具体的には、次のような流れで進めます。
- 共有者全員の合意を得る
- 不動産業者に売却の仲介を依頼する
- 共有者全員が契約に立ち会う
- 現金を分割する
1.共有者全員の合意を得る
共有名義の不動産は、共有者それぞれが所有権を持っている状態です。したがって、共有不動産を売却しようと思ったときには共有者全員の合意が必要になります。
例え1/100というわずかな持分であっても、その持分権者が売却に反対したりすれば共有不動産は売却できません。
もし売却に反対する人がいれば、その理由を聞いて具体的な解決方法を考えてみましょう。反対している共有者の説得を不動産業者に依頼することも選択肢の1つです。
共有者全員が売却に合意したのであれば、その事実を不動産会社・購入希望者に証明できるように同意書を作成しましょう。
口頭で「共有者全員が売却に同意しているので安心してください」といわれても、なかなか信じてもらえない可能性があります。
手間かもしれませんが、スムーズに売却を進めるためにも同意書の作成をおすすめします。
2.不動産業者に売却の仲介を依頼する
共有者全員の合意を得られたら、売却の仲介を不動産業者に依頼します。仲介を依頼すると、売却価格を決めるために査定をしてもらいましょう。
不動産業者から出された査定額が妥当なものか判断するために、事前に不動産一括査定サイトなどで市場の売却価格を調べることもおすすめです。
無料査定をおこなっている不動産業者がほとんどなので、気になる不動産業者が複数あれば、同時に査定を依頼してもよいでしょう。
査定価格と不動産業者・営業担当者の雰囲気、対応の良し悪しから依頼する業者を決めます。
査定時には、対象の不動産に関する重要書類を集めておくと、権利関係や公的な評価額も踏まえたうえで、より正確な金額を出してもらえます。具体的には下記のような書類です。
- 権利証・登記識別情報
- 固定資産税納税通知書・固定資産税評価証明書
- 土地測量図
- 登記簿謄本
- 購入時の重要事項説明書
- 購入時の売買契約書
- 間取り図面
- 管理規約や使用細則(マンションの場合)
実際に売買契約を結ぶときにも必要な書類なので、早めにそろえておくとスムーズに売却活動を進められます。
3.共有者全員が契約に立ち会う
不動産業者に売却を依頼したあと、具体的な売却活動は担当者の方で進めます。そのため、売却活動で不動産の所有権者がおこなうことはほとんどありません。
内覧希望があったときに希望者を案内したり、質問があれば回答したりする程度です。
内覧時の立ち会いは不動産業者に任せることもできますが、物件の魅力を伝えて購入を後押しするためにも、共有者のうち1人は立ち会うとよいでしょう。
買主が決まれば売買契約を結びます。売買契約書は不動産業者が作成したものを使用するので、自分で作成する必要はありません。
ただし、契約書の内容に自分の認識と異なる条項がないか、あいまいな文言がないか確認してください。契約を結んだあとに「そのようなことは知らなかった」といっても、対応してもらえないでしょう。
また、売買契約のときには、
・共有者全員の実印
・住民票(登記上の住所と現住所が異なる場合)
・本人確認書類
も必要です。
印鑑証明書と住民票は発行から3カ月以内のものとなっているので注意してください。そして、売買契約で一番のポイントは、契約締結時には共有者全員が立ち会い、署名・捺印する必要がある点です。
遠方であったり、仕事で忙しかったりなど、全員が同時に集まれないこともあるでしょう。その場合は、代理人を立てて対応することもできます。
ただし、代理人を立てるときには委任状が必要となるので、忘れずに準備しましょう。様式として決まったものはありませんが、不動産業者に相談すれば参考の形式をもらえるはずです。
買主は住宅ローンを組んで購入することがほとんどなので、売買契約を結んだ日は手付金だけ受け取ることが一般的です。そのため、引き渡しも後日になります。
4.現金を分割する
売買契約を結んだ時点では、一般的に手付金のみ受け取ります。
その後、買主が住宅ローンの審査を受けて融資が実行されてから、残額の決済と物件の引き渡しという流れです。
そして、共有者全員で売却したときには、売却代金をそれぞれの持分割合に応じて分割します。
このとき、不動産売却にかかった費用も持分割合に応じて負担するのが一般的なので、その分を計算して分割しなければいけません。
どんな項目にどのくらいの費用がかかったかを証明するために、各領収書は残しておくようにしましょう。
以上で、共有不動産を共有者全員で売却する手続きは完了です。
共有不動産を共有者全員で売却するときによくあるトラブルと対処法
次に、共有不動産を共有者全員で売却するときによくあるトラブルを3つ解説します。
- 途中で売却の意思を変える共有者が現れる
- 売却価格に合意が得られない
- 売却代金を受け取った代表者からお金が分割されない
それぞれよく起きるものですが、事前に対処法を知っておくことでスムーズに対応できます
途中で売却の意思を変える共有者が現れる
共有不動産の売却に同意したはずなのに、売却活動が長引くうちに共有者が「やっぱり売却に反対だ」といいだす可能性もあるでしょう。
同意書があったとしても、売買契約時には共有者全員の立ち会いが必要です。途中で反対されると、売却を進められません。
途中で売却に反対された場合、対処法としてはその共有者への説得になります。最初は売却に同意していたのに反対に変わったのであれば、なにか理由があるはずです。
その理由を具体的に聞いてみましょう。共有者同士での解決が難しい場合、弁護士など専門家に相談して代わりに交渉してもらう方が、迅速に解決する可能性もあります。
売却価格に合意が得られない
売却の意思は一致していても、売却価格で意見が割れる事例もよくあります。
「もっと高く売れるはずだから、その価格では売却できない」
「価格はいいから、とりあえず早く売りたい」
上記のように、共有者によって考えが異なることも珍しくありません。
そこで、売却活動をはじめる前に「どの金額だったら売却するか」の意見を統一させておくことが大切です。
しかし、どのくらいの金額が妥当か判断に迷ってしまうかもしれません。
実際にどれくらいの価格で売れるか知る場合は、不動産会社に査定を依頼するといいでしょう。
売却価格を決めるときは不動産会社へ査定を依頼する
不動産市場の最新の相場は、不動産会社がもっとも詳しいでしょう。
ちなみに不動産会社には「仲介業者」と「買取業者」の2種類があります。
仲介業者の方は査定額が高い傾向にありますが、確実に買い手がつくとは限りません。
一方、買取業者は査定額が低くい傾向にありますが、業者自体が必ず買い取るので速やかに不動産を売りたい人にはおすすめです。
売却価格に合意が得られないときは、どちらかの不動産業者へ相談してみましょう。
売却代金を受け取った代表者からお金が分割されない
3つ目は、売却代金の分割に関するトラブルです。
共有不動産には所有権者が複数います。そして、代金決済のときには代表者1名を決めてその人に振り込んでもらい、その後に他の共有者へ分割する方式が一般的です。
しかし、代表者がそのまま代金を分割しないことがあります。もちろん代表者には分割する義務があるのですが、強制的に支払わせるのにも手間がかかります。
弁護士に相談するにも費用や時間がかかるため、できれば避けたいところです。
もしも代表者を信用できない場合、買主に手間をかけさせることになりますが、共有者それぞれに直接、代金を振り込んでもらえないか依頼してみましょう。
承諾されれば、代金が分割されないという不安を感じることもなくなります。
不動産の売却において共有者同士で揉めたときの対処方法
共有者全員で売却しようと思っていたのに、なかなか話がまとまらなかったり、売却活動の途中で意見が割れたりして、思うように売却できないことがあります。
そこで、不動産の売却において共有者同士で揉めたときの対処方法を4つ紹介していきます。
【対処法1】自分の持分を第三者に売却する
共有不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。
その一方で、自分の持分だけであれば自分の意思で売却できます。
自分の持分を第三者に売却することが1つの対応方法になります。
ただし、買主からすれば、持分を取得しても不動産全体を自由に使用できるわけではありません。買主が可能なのは、持分割合に応じた賃料を共有者に請求することや、他の共有者から持分を買い取って単独名義にすることだけです。
このように、持分を購入しても不動産活用の選択肢が限られているため、売却価格は非常に低くなってしまいます。とくに買い手が個人の場合は、不動産の売却相場に持分割合をかけた金額で売れず、そこからさらに安くなることがほとんどです。
共有持分を高く売るのであれば、共有持分の専門買取業者をおすすめします。共有持分の運用ノウハウを持った専門買取業者なら、売却相場に近い、もしくはそれ以上の買取価格がつくこともあります。
共有持分の売却は「専門買取業者」に相談しよう!
共有持分の売買は一般的な不動産取引ではないため、不動産会社でも売買に必要な知識をもっていない場合があります。共有持分を売却するときは、実績のある不動産会社に相談することが大切です。
当サイトを運営するクランピーリアルエステートは、共有持分専門の買取業者として豊富な経験をもち、買取後の共有持分を活用するための知識があるので、高額買取が可能です。
「全国の弁護士と連携している」という他社にはない強みがあるので、権利トラブルのある不動産でも、法的手続きに則ってスムーズな買取ができます。
無料相談も承っているので、持分売却が少しでも気になっている方はお気軽にお問い合わせください。あなたの状況に応じて、最適なアドバイスをいたします。
【対処法2】自分の持分を他の共有者に売却する
売却相場に持分割合を掛けた金額に近い金額で自分の持分のみを売却したいのであれば、他の共有者に売却するとよいかもしれません。
共有不動産の売却で揉める主な原因として、共有者のだれかが「不動産を所有しておきたい」と思っているケースがあります。
このようなケースであれば「自分の持分を買い取らないか」と、その共有者に提案してみてください。
その共有者は売却するよりも所有しておくことに価値を見出しているので、価格の折り合いがつけばあなたの持分を購入してくれるかもしれません。
ただし、売却価格には注意が必要です。
共有者が顔見知りや親戚だからといって、市場価格よりも安くしすぎると「贈与」とみなされ、贈与税が課せられてしまう恐れがあります。
【対処法3】分筆して売却する
共有不動産が土地の場合は、分筆して単独名義にしてから売却するという方法もあります。
分筆することで、所有権が自分だけになるので共有関係が解消されます。したがって、売却も自分の意思だけで自由に進められます。
ただし、分筆は時間も費用もかかります。分筆後に売却活動をはじめると、売却完了まで1年ほどかかる可能性も。この場合、余裕を持って売却活動ができるかも重要になります。
【対処法4】共有物分割請求をおこなう
最後の方法として、共有物分割請求があります。これは、共有状態の解消を裁判所に委ねるものです。
裁判所に判決には強制力があるので、売却意思の有無にかかわらず共有状態はなくなります。具体的には次の3つのなかから、分割方法を決められます。
・代償分割
・換価分割
現物分割によって分割されたものは単独名義になっている状態です。そのため、個人の意思で、そのまま売却活動をはじめられます。
代償分割となった場合は「共有不動産を所有し続けたい」という人から、持分を引き渡す「代償」として代償金を受け取ります。
これにより、共有不動産の権利関係が解消されます。また、売却希望の共有者は現金を手に入れられるので、それぞれにメリットがあります。
換価分割は、共有不動産を競売に出し、落札価格を持分割合に応じて現金で分割する方法です。
競売となった場合、その落札価格は通常の市場価格に比べて低くなります。
共有物分割請求における判決に対する拒否権は認められていません。そのため、共有物分割請求で強制的に意見を押し通してしまった場合、他の共有者との関係も悪化してしまう恐れがあります。
共有物分割請求は最後の手段として、ほかの方法で対処できないか考えましょう。
まとめ
共有不動産の売却は、共有者全員の同意があってはじめて可能です。連絡が取れないからといって、共有者全員の同意が不要とはならないので注意してください。
また、売買契約を結ぶときには原則、共有者全員が立ち会わなければいけません。共有不動産の売却は、共有者全員の意見の統一が必要という点で、スムーズに進みにくいものです。
共有者間でのトラブルも起こりやすいので、トラブルを避けるためにも、共有者全員で不動産の取り扱いについて冷静に話し合うことが大切です。