共有不動産全体を全員の同意を得て売却する流れ
共有不動産全体を一緒に売却するときは、共有者全員が売却に合意していることを証明しなければいけません。共有者のうち1人でも売却に反対していると、共有不動産の売却は原則として不可です。
具体的には、次のような流れで進めます。
- 共有者全員の合意を得る
- 不動産業者に売却の仲介を依頼する
- 共有者全員が契約に立ち会う
- 現金を分割する
1.共有者全員の合意を得る
共有名義の不動産は、共有者それぞれが所有権を持っている状態です。つまり、共有者全員の同意がないまま売却できてしまうと、同意をしていない人の所有権を無視したことになります。
例え1/100というわずかな持分であっても、その持分権者が売却に反対したりすれば共有不動産は売却できません。共有者全員の同意が必要になる根拠は、民法にて定められています。詳細は記事内「共有不動産全体の売却に全員の同意が必要な理由は法律で定められているから」をご覧ください。
もし売却に反対する人がいれば、その理由を聞いて具体的な解決方法を考えてみましょう。反対している共有者の説得を不動産業者に依頼することも選択肢の1つです。
共有者全員が売却に合意したのであれば、その事実を不動産会社・購入希望者に証明できるように同意書を作成します。
口頭合意だけでは、「共有者全員が売却に同意しているので安心してください」と言われても、なかなか信じてもらえない可能性があるからです。手間かもしれませんが、スムーズに売却を進めるためにも同意書の作成をおすすめします。
2.不動産業者に売却の仲介を依頼する
共有者全員の合意を得られたら、売却の仲介を不動産業者に依頼します。仲介を依頼すると、売却価格を決めるために共有不動産の査定がおこなわれます。
無料査定をおこなっている不動産業者がほとんどなので、気になる不動産業者が複数あれば、同時に査定を依頼してもよいでしょう。不動産業者から出された査定額が妥当なものか判断するために、事前に不動産一括査定サイトなどで市場の売却価格を調べることもおすすめです。
査定価格と不動産業者・営業担当者の雰囲気、対応の良し悪しから依頼する業者を決めます。
査定時には、対象の不動産に関する重要書類を集めておくと、権利関係や公的な評価額も踏まえたうえで、より正確な金額を出してもらえます。具体的には下記のような書類です。
- 権利証・登記識別情報
- 固定資産税納税通知書・固定資産税評価証明書
- 土地測量図
- 登記簿謄本
- 購入時の重要事項説明書
- 購入時の売買契約書
- 間取り図面
- 管理規約や使用細則(マンションの場合)
実際に売買契約を結ぶときにも必要な書類なので、早めにそろえておくとスムーズに売却活動を進められます。
3.共有者全員が契約に立ち会う
不動産業者に売却を依頼したあと、具体的な売却活動は担当者の方で進めます。そのため、売却活動で不動産の所有者がおこなうことはほとんどありません。内覧希望があったときに希望者を案内したり、質問があれば回答したりする程度です。
内覧時の立ち会いは不動産業者に任せることもできますが、物件の魅力を伝えて購入を後押しするためにも、共有者のうち1人は立ち会うとよいでしょう。内覧を受け付けるときは、あらかじめ共有不動産内の清掃や物品の移動を済ませておき、よい状態の不動産を隅々まで見てもらえるようにしておきます。
買主が決まれば売買契約を結びます。売買契約書は不動産業者が作成したものを使用するので、自分で作成する必要はありません。
ただし、契約書の内容に自分の認識と異なる条項がないか、あいまいな文言がないか確認してください。契約を結んだあとに、「そのようなことは知らなかった」といっても、対応してもらえません。逆に買主側から「契約内容と違う」と後から言われると、売主は「契約不適合責任」によって修繕対応や損害賠償などの負担を負う可能性も出てきます。
売買契約のときには、以下のものが必要です。
- 共有者全員の印鑑証明書
- 共有者全員の実印
- 住民票(登記上の住所と現住所が異なる場合)
- 本人確認書類
印鑑証明書と住民票は、発行から3か月以内のものを準備してください。
共有不動産における売買契約で一番のポイントは、契約締結時には共有者全員が立ち会い、署名・捺印する必要がある点です。
遠方であったり仕事で忙しかったりなど、全員が同時に集まれないときは、代理人を立てて対応できます。代理人を立てるときには委任状が必要となるので、忘れずに準備しましょう。委任状の様式として決まったものはありませんが、不動産業者に相談すれば参考の形式をもらえるはずです。
4.現金を分割する
買主は住宅ローンを組んで不動産を購入することがほとんどなので、売買契約を結んだ日は手付金(売買価格の20%が上限)だけ受け取ることが一般的です。そのため、引き渡しも後日になります。
共有者全員で売却した後に売却代金が振り込まれたら、その現金をそれぞれの持分割合に応じて分割します。
このとき、不動産売却にかかった費用も持分割合に応じて負担するのが一般的なので、その分を計算して分割しなければいけません。
どんな項目にどのくらいの費用がかかったかを証明するために、各領収書は残しておくようにしましょう。
以上で、共有不動産を共有者全員で売却する手続きは完了です。
共有不動産全体の売却に全員の同意が必要な理由は法律で定められているから
共有不動産全体の売却に全員の同意が必要な法的な理由は、民法にて定められています。
共有不動産の売却は、法律上の「変更行為(共有物の性質・用途・形状などに著しい変化を加える行為)」です。そして民法第251条では、「ほかの共有者の同意がなければ、共有物に変更を加えられない」と記載があります。
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
e-Gov法令検索 民法第251条
売却のほかには、共有不動産の増改築、3年以上の賃貸借契約の締結、そのほか軽微な変更に該当しない変更行為が、ほかの共有者全員の同意なしでは進められません。
共有不動産を共有者全員で売却するときによくあるトラブルと対処法
共有不動産を共有者全員で売却するときに、よくあるトラブルは以下の4つです。
- 途中で売却の意思を変える共有者が現れる
- 売却価格に合意が得られない
- 売却代金を受け取った代表者からお金が分割されない
- 所在がわからない共有者が存在して全員の同意が集まらない
上記のトラブルに関して事前に対処法を知っておくことで、スムーズに対応できます
途中で売却の意思を変える共有者が現れる
共有不動産の売却に同意したはずなのに、売却活動が長引くうちに共有者が「やっぱり売却に反対だ」と言いだす可能性もあります。
同意書があったとしても、売買契約時には共有者全員の立ち会いが必要です。途中で反対されると、売却を進められません。
途中で売却に反対された場合、対処法としてはその共有者への説得になります。最初は売却に同意していたのに反対に変わったのであれば、なにか理由があるはずです。その理由を具体的に聞いてみましょう。
共有者同士での解決が難しい場合、弁護士など専門家に相談して代わりに交渉してもらう方が、迅速に解決する可能性もあります。たとえば訳あり物件専門の買取業者である弊社「クランピーリアルエステート」では、提携している弁護士と相談しながら共有者様同士の話し合いをサポートし解決に導いた実績が多数あります。
話が複雑化している共有不動産の売却については、不動産に強い弁護士や法的問題に対応できる不動産会社などへ相談してみるのもよいでしょう。
売却価格に合意が得られない
売却の意思は一致していても、売却価格で意見が割れる事例もよくあります。
「もっと高く売れるはずだから、その価格では売却できない」
「価格はいいから、とりあえず早く売りたい」
上記のように、共有者によって考えが異なることも珍しくありません。
そこで、売却活動をはじめる前に「どの金額だったら売却するか」の意見を統一させておくことが大切です。
しかし、どのくらいの金額が妥当か判断に迷ってしまうかもしれません。
実際にどれくらいの価格で売れるか知りたい場合は、不動産会社に査定を依頼するのがおすすめです。
売却価格を決めるときは不動産会社へ査定を依頼する
ほとんどの不動産会社では、不動産の査定を無料で対応してくれます。複数の不動産会社へ査定を依頼すれば、より正確な査定価格が確認できるでしょう。売却しようとする共有不動産の売却相場を事前に調査し、ほかの共有者が納得できる金額を提示できるようにしてください。
不動産会社には「仲介業者」と「買取業者」の2種類があります。
仲介業者の方は査定額が高い傾向にありますが、確実に買い手がつくとは限りません。
一方、買取業者は査定額が低い傾向にありますが、業者が直接買い取るので速やかに不動産を売りたい人にはおすすめです。共有者から売却価格の合意が得られないときは、どちらかの不動産業者へ相談してみましょう。
売却代金を受け取った代表者からお金が分割されない
3つ目は、売却代金の分割に関するトラブルです。
共有不動産には所有権者が複数います。代金決済のときには代表者の口座へ売却代金を振り込んでもらい、その後にほかの共有者へ分割する方式が一般的です。
しかし、代表者が売却代金を分割せずそのまま保有するリスクがあります。代表者には分割する義務があるのですが、強制的に支払わせるのにも協議・裁判などによる手間や費用がかかります。弁護士に相談するにも費用や時間がかかるため、できれば避けたいところです。
もしも代表者を信用できない場合、共有者それぞれの口座へ直接代金を振り込んでもらえないか買主へ依頼してみましょう。承諾されれば、代金が分割されないという不安を感じることもなくなります。
所在がわからない共有者が存在して全員の同意が集まらない
共有者全員の同意を得られない原因として、「共有者のうち所在がわからない不明者がいる」「共有者が亡くなっている」というケースがあります。原則として、連絡が取れない共有者がいたとしても、その共有者の同意をあったものとして勝手に売却を進めることはできません。
そのため共有者が1人でも連絡がつかないと、ほかの共有者全員の同意があっても、そのままでは全員の同意を得られたことにならず、共有不動産の売却ができません。
不明者がいるときは、以下の方法で対処します。
- 民法第251条を適用し、不明者以外の共有者の合意があれば売却できるよう裁判をおこなう
- 登記簿などで不明者の情報を見て連絡できないかを確認する
- 共有者が亡くなっているときは共有者の相続人から同意を得る
- 不在者財産管理人や相続財産清算人(相続財産管理人)などを専任する
不明者がいるときの対処法は、以下の関連記事にて詳しく解説しています。
共有不動産売却について全員の同意を得るための交渉のコツ
共有不動産全体の売却を成功させるには、いかに共有者全員から同意を得るかが大きなポイントになります。共有不動産の売却について、全員の同意を得るための交渉のコツは次の通りです。
- 全員で売却するのが一番高額になると伝える
- 共有名義を持ち続けることのリスクを説明する
- 売却後の各種手続きを自分が中心に対応することも視野に入れる
- 共有者同士で揉めているなら弁護士を入れて話す
全員で売却するのが一番高額になると伝える
共有不動産全体を売却すると、売却価格は通常の不動産と同じ相場になります。共有者全員の所有権が移動して買主の完全所有権になるため、買主側から見ると通常の不動産を購入したときと変わらないからです。
一方、自分の共有持分だけ売却することもできますが、共有持分単独だけで売ると市場価格よりも面積あたりの単価が安くなる傾向にあります。そのため、交渉のときには共有者全員で売却したほうが得られる現金が高額になることを説得材料として使うようにしましょう。
共有名義を持ち続けることのリスクを説明する
不動産を共有名義のままで持ち続けると、さまざまなトラブルになる可能性があります。共有不動産に関するリスクの存在は、売却の同意を得るための交渉材料になります。共有不動産の所有でよくあるトラブル例は次の通りです。
- 共有不動産の使用方法、運用の方向性、税金・管理費用負担などで言い争いになる
- 共有持分の相続や売却で所有権が複雑になる
- 共有者の1人が物件を占有したり家賃を分配しなかったりする
- 共有者が音信不通になって同意を得られず売却やリフォームが進められなくなる
売却後の各種手続きを自分が中心に対応することも視野に入れる
「売却したいけど手続きが面倒」「ちゃんと売却代金の振込があるか不安」といった共有者がいるなら、売却手続きや売却代金の分配を自分が中心で対応すると伝えると、同意を得られる可能性が上がります。
ただし売却時には共有者全員の立会が必要になるため、その部分は協力をあらかじめお願いしておきましょう。
共有者同士で揉めているなら弁護士を入れて話す
「特定の共有者が不動産を占有している」「権利関係が複雑で把握しきれない」といった、すでに発生した共有者関係のトラブルが原因で話し合いが困難なときは、弁護士を入れての交渉を推奨します。費用や
弁護士に交渉のサポートを依頼するメリットは次の通りです。
- 共有者相手にこちら側の本気を伝えやすい
- 複雑な権利関係でも専門知識や実務経験を基に解決へ導いてくれる
- トラブルの当事者となっている共有者と話したくないときに交渉の代理をお願いできる
とはいえ、大きなトラブルでもないのに弁護士を通じて話すと、相手から逆に不信感や不満を持たれる可能性があります。あくまで法的な問題のあるケースがあるときに、弁護士への依頼を検討するのがよいでしょう。
全員の同意が得られず共有不動産の共有名義が解消できないときの対処法
共有不動産全体の売却の同意は必ずしも得られるものではなく、ケースによっては共有名義状態が解消できないこともあります。しかし、「自分だけでも共有状態から抜け出したい」「せめて共有名義は解消したい」といったときは、売却以外の方法で対応できる可能性があります。
具体的な対処法は次の通りです。
- 自分の持分を第三者に売却する
- 自分の持分を他の共有者に売却する
- 分筆して売却する
- 共有物分割請求をおこなう
【対処法1】自分の持分を第三者に売却する
共有不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。その一方で、自分の持分だけであれば自分の意思で売却できます。
自分の持分を第三者に売却することが、共有不動産から抜け出すための1つの対応方法になります。
ただし、買主からすれば、持分を取得しても不動産全体を自由に使用できるわけではありません。買主が可能なのは、持分割合に応じた賃料を共有者に請求することや、他の共有者から持分を買い取って単独名義にすることだけです。
このように、持分を購入しても不動産活用の選択肢が限られているため、売却価格は非常に低くなってしまいます。とくに買い手が個人の場合は、不動産の売却相場に持分割合をかけた金額で売れず、そこからさらに安くなることがほとんどです。
共有持分を高く売るのであれば、共有持分の専門買取業者をおすすめします。共有持分の運用ノウハウを持った専門買取業者なら、売却相場に近い、もしくはそれ以上の買取価格がつくこともあります。
【対処法2】自分の持分をほかの共有者に売却する
売却相場に持分割合を掛けた金額に近い金額で、自分の持分のみを売却したいのであれば、他の共有者に売却する方法があります。
共有不動産の売却で揉める主な原因として、共有者のだれかが「不動産を所有しておきたい」と思っているケースがあります。このようなケースであれば「自分の持分を買い取らないか」と、その共有者に提案してみてください。
その共有者は売却するよりも所有しておくことに価値を見出しているので、価格の折り合いがつけばあなたの持分を購入してくれるかもしれません。
ただし、売却価格には注意が必要です。
共有者が顔見知りや親戚だからといって、市場価格よりも安くしすぎると「贈与」とみなされ、贈与税が課せられてしまう恐れがあります。
【対処法3】分筆して売却する
共有不動産が土地の場合は、分筆して単独名義にしてから売却するという方法もあります。
分筆することで、分筆した土地の1つが自分だけの所有権になるので共有関係が解消されます。したがって、自分の所有権になった部分の売却も、自分の意思だけで自由に進められます。
ただし、分筆は時間も費用もかかります。分筆後に売却活動をはじめると、売却完了まで1年ほどかかる可能性も珍しくありません。この場合、余裕を持って売却活動ができるかも重要になります。
【対処法4】共有物分割請求をおこなう
最後の方法として、共有物分割請求があります。これは、共有状態の解消を裁判所に委ねるものです。
裁判所に判決には強制力があるので、売却意思の有無にかかわらず共有状態はなくなります。具体的には次の3つのなかから、分割方法を決められます。
・現物分割
・代償分割
・換価分割
現物分割によって分割されたものは単独名義になっている状態です。そのため、個人の意思で、そのまま売却活動をはじめられます。
代償分割となった場合は「共有不動産を所有し続けたい」という人から、持分を引き渡す「代償」として代償金を受け取ります。
これにより、共有不動産の権利関係が解消されます。また、売却希望の共有者は現金を手に入れられるので、それぞれにメリットがあります。
換価分割は、共有不動産を競売に出し、落札価格を持分割合に応じて現金で分割する方法です。
競売となった場合、その落札価格は通常の市場価格に比べて低くなります。
共有物分割請求における判決に対する拒否権は認められていません。そのため、共有物分割請求で強制的に意見を押し通してしまった場合、他の共有者との関係も悪化してしまう恐れがあります。
共有物分割請求は最後の手段として、ほかの方法で対処できないか考えましょう。
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共有持分の売買は一般的な不動産取引ではないため、不動産会社でも売買に必要な知識をもっていない場合があります。共有持分を売却するときは、実績のある不動産会社に相談することが大切です。
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まとめ
共有不動産の売却は、共有者全員の同意があってはじめて可能です。連絡が取れないからといって、共有者全員の同意が不要とはならないので注意してください。
また、売買契約を結ぶときには原則、共有者全員が立ち会わなければいけません。共有不動産の売却は、共有者全員の意見の統一が必要という点で、スムーズに進みにくいものです。
共有者間でのトラブルも起こりやすいので、トラブルを避けるためにも、共有者全員で不動産の取り扱いについて冷静に話し合うことが大切です。
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