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共有名義人の片方が死亡したら不動産はどうなる?相続の基本ルールからシミュレーションまで徹底網羅!

共有名義人の片方が死亡したら不動産はどうなる?相続の基本ルールからシミュレーションまで徹底網羅!

共有名義の不動産において、一方の共有者が亡くなったとしても、その持分が生存している他の共有者へ自動的に承継されるわけではありません。亡くなった共有者の持分は、遺言で承継先が指定されていない限り、民法の定める法定相続人(配偶者、子などの直系卑属、親などの直系尊属、兄弟姉妹など)が相続することになります。

したがって、法定相続人でない友人やビジネスパートナーといった共有者は、他に相続人や特別縁故者がいる場合、特別に遺言で指定されていない限り、原則としてその持分を引き継ぐことはできません。

ただし、法定相続人が存在せず、かつ内縁の配偶者などの特別縁故者への財産分与も行われない場合には、家庭裁判所での清算手続を経た上で、最終的にその持分は残された共有者に帰属します(民法255条)。単独名義の不動産のように国庫に帰属するのではなく、既存の共有者に権利が移転する点が特徴です。

もっとも、相続により新たな共有者が加わることで権利関係は複雑化しやすくなります。相続人の人数が多い場合や関係が疎遠な場合には、不動産の売却や活用をめぐって合意を得ることが難しくなり、維持管理や処分などを巡るトラブルに発展するおそれがあります。

もし不動産を単独で所有したいと考えるのであれば、新たに共有者となった相続人からその持分を買い取る方法が現実的です。逆に所有を希望しない場合には、自らの持分を相続人や共有持分の専門買取業者に売却するという選択肢もあります。

特に自己の持分を売却したい場合には、複数の不動産業者の査定を比較できる「イエコン不動産一括査定」を活用することで、持分の適正な価値を把握しやすくなります。信頼できる業者を見極めるためにも、一括査定サービスを利用して相場感をつかんでおくことは有効といえるでしょう。

いずれにしても、共有者の死亡を契機として権利関係が変動する可能性があるため、早めに関係者間で調整を行い、必要に応じて専門家に相談することが望ましいといえます。

本記事では、共有名義の片方が死亡した場合の基本ルール、具体的な持分変化のシミュレーション、相続登記の流れと必要な手続きなどを詳しく解説します。適切な対応により将来のトラブルを防ぎ、最適な解決策を見つけるための参考にしてください。

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共有名義の片方が死亡した場合の基本ルール

共有名義の片方が死亡した場合の基本ルールは次の通りです。

  • 原則として、死亡した共有者の持分は法定相続人が相続する
  • 遺言書がある場合は、法定相続人でなくても相続可能
  • 注意:遺産分割協議で相続人間の合意があれば、相続割合は自由に決められる
  • 法定相続人も特別縁故者もいなければ死亡者の持分は共有者に帰属する

共有名義の不動産において片方が死亡した際の基本的な法律関係について解説します。多くの人が誤解しがちな点も含めて、正しい理解を深めましょう。

原則として、死亡した共有者の持分は法定相続人が相続する

共有名義の不動産で共有者の一人が死亡した場合、その持分は自動的に他の共有者に移転することはありません。死亡した共有者の持分は、他の財産と同様に相続財産として扱われ、法定相続人が相続します。

たとえば、友人同士のAさんとBさんが2分の1ずつ共有している不動産でAさんが死亡した場合を考えてみましょう。この場合、Aさんの持分はBさんに自動的に移転するのではなく、Aさんの配偶者や子どもなどの法定相続人が相続します。つまり、Bさんは突然、面識のないAさんの相続人と不動産を共有することになる可能性があります。

これは、共有持分も個人の財産権として法的に保護されているためです。共有者同士の関係が夫婦や親子などの相続関係にある場合は問題が少ないですが、友人やビジネスパートナーなどの場合は、相続により権利関係が複雑化するリスクがあります。ただし、法定相続人が存在せず、特別縁故者への財産分与も行われない場合は、最終的に残存共有者に持分が帰属します。

法定相続人と法定相続分については次章で詳しく解説しますので、あわせて参考にしてください。

遺言書がある場合は、法定相続人でなくても相続可能

死亡した共有者が遺言書を作成していた場合、法定相続人以外の人でも共有持分を相続することが可能です。たとえば、共有者同士が友人関係にある場合、遺言書により相手方に持分を遺贈させることで、第三者の介入を避けられます。

遺言書の種類と特徴は以下の通りです。

  • 自筆証書遺言:遺言者が自筆で作成(家庭裁判所での検認が必要)
  • 公正証書遺言:公証役場で公証人が作成(検認不要)
  • 法務局保管の自筆証書遺言:法務局の遺言書保管制度を利用(検認不要)

遺言書がある場合は、原則としてその内容に従って相続手続きが進められるため、共有関係を継続したい場合や特定の人に持分を承継させたい場合には有効な手段となります。

注意:遺産分割協議で相続人間の合意があれば、相続割合は自由に決められる

遺言書がない場合でも、相続人全員で遺産分割協議を行うことにより、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割できます。この協議では、共有持分を特定の相続人が単独で相続したり、相続人以外の共有者に売却したりすることも可能です。

遺産分割協議で注意すべき点は以下の通りです。

  • 相続人全員の合意が必要
  • 合意内容は遺産分割協議書として文書化
  • 各相続人が実印で押印し、印鑑証明書を添付
  • 不動産以外の財産も含めて総合的に分割方法を決定

この制度により、共有状態の複雑化を避けるため、不動産を特定の相続人が取得し、他の相続人は預貯金などの別の財産を取得するという調整も可能になります。

法定相続人も特別縁故者もいなければ死亡者の持分は共有者に帰属する

共有者の一人が死亡し、法定相続人が存在しない場合、様々な手続きを経たのち、最終的に死亡した共有者の持分が共有者に帰属することがあります。といっても、その持分がすぐに他の共有者に移転するわけではありません。

民法255条は「共有者の一人が死亡して相続人がないときは、その持分は他の共有者に帰属する」と定めていますが、実際にはより複雑な手続きを経ることになります。

実例として、最高裁判所の判例(平成元年11月24日判決)により、共有持分についても特別縁故者に対する財産分与(民法958条の3)が優先されることが明らかになっています。特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、療養看護に努めた者など、被相続人と特別の縁故があった者を指します。

たとえば、内縁の配偶者や事実上の養子など、法定相続人ではないものの被相続人と深い関係にあった人がいる場合、家庭裁判所の審判により、その共有持分の全部または一部が分与される可能性があります。

共有持分が他の共有者に帰属するまでには、以下の手続きを経る必要があります。

  • 相続人の不存在が確定する
  • 相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了する
  • 特別縁故者に対する財産分与の審判が行われる
  • 財産分与がされず、共有持分が承継すべき者のないまま残存することが確定する

これらすべての手続きを経て初めて、民法255条により他の共有者に持分が帰属することになります。この一連の手続きには相当な時間を要するため、共有者の死亡から実際に持分が移転するまでには数年かかることも珍しくありません。

なお、マンションの敷地利用権については、専有部分と敷地利用権の分離処分が禁止されている場合、民法255条の規定は適用されません。この場合、区分所有者が死亡して相続人がいないときは、土地の共有持分は他の区分所有者に移転するのではなく、専有部分とともに国庫に帰属します。

相続で必ず押さえておくべき法定相続人と相続分

共有名義の不動産相続を理解するためには、法定相続人の範囲と相続分について正しく理解することが重要です。

たとえば相続において、配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の親族には優先順位が定められています。この順位に従って、実際に相続権をもつ人が決定されます。

法定相続人の順位と相続分
相続人の組み合わせ 配偶者の相続分 その他相続人の相続分
配偶者と子 2分の1 子が2分の1(複数いる場合は等分)
配偶者と直系尊属(親など) 3分の2 直系尊属が3分の1(複数いる場合は等分)
配偶者と兄弟姉妹 4分の3 兄弟姉妹が4分の1(複数いる場合は等分)
配偶者のみ すべて なし
子のみ(配偶者なし) なし 子がすべて(複数いる場合は等分)

各順位の相続人について詳しく説明します。

第1順位の子(直系卑属)は被相続人の子で、実子と養子の区別はなく、同等の相続権をもちます。子がすでに死亡している場合は、その子(被相続人の孫)が相続します。

第2順位の直系尊属(父母・祖父母)は、子がいない場合に相続人となります。父母がともに健在の場合は等分で相続し、父母が死亡している場合は祖父母が相続人となります。

第3順位の兄弟姉妹は、子も直系尊属もいない場合に相続人となります。兄弟姉妹が既に死亡している場合は、その子(被相続人の甥・姪)が代襲相続(子や孫が相続すること)しますが、甥・姪の子への再代襲はありません。

こうした基本ルールを理解しておけば、共有名義の不動産で相続が発生した際に、誰がどの程度の持分を相続するかを正確に把握できるようになります。

【パターン別】共有者の片方が死亡し、法定相続分に応じて相続したら不動産はどうなる?

ここでは、共有名義の不動産で片方が死亡した場合の具体的な変化をパターン別に解説します。理解しやすくするために、全てのケースで元々は2人が2分の1ずつ持分を所有していた設定で説明します。

  • 遺産分割協議により相続人間で異なる分割方法に合意した場合
  • 遺言書があり、その内容に従って相続する場合
  • 相続人の一部が相続放棄をした場合

なお、相続人間の合意があれば、法定相続分とは異なる割合で自由に分割できるため、必ずしも以下の通りになるわけではありません。また以下はあくまでもシミュレーションであるため、必ずしも記載した通りはならない点に留意しておいてください。

夫婦で共有していた場合

夫が死亡し、子がいる場合

ここでは、夫婦でマンションを2分の1ずつ共有しており、夫が死亡した状況を想定します。

子が1人の場合、相続人は妻と子1人で、相続関係者の法定相続分は次の通りになります。

  • 妻:2分の1
  • 子:2分の1

相続後の持分割合は次の通りです。

相続前後の持分変化(子1人の場合)
項目
相続前の持分 50% 50% 0%
相続で取得する持分 25%(夫の50%×1/2) 25%(夫の50%×1/2)
相続後の最終持分 0% 75% 25%

この結果、妻は元々の持分50%に夫から相続した25%を加えて75%の持分をもち、子は25%の持分を新たに取得することになります。

次に、子が2人の場合を考えてみましょう。

相続人は妻と子2人(長男・次男)です。

相続関係者の法定相続分は次のようになります。

  • 妻:2分の1
  • 長男:4分の1
  • 次男:4分の1

相続後の持分割合は次の通りです。

  • 妻:75%(元の50%+相続分25%)
  • 長男:12.5%(夫の50%×1/4)
  • 次男:12.5%(夫の50%×1/4)

上記の通り、子が複数いる場合は、夫の持分50%に対する子の相続分2分の1(25%)を子の人数で等分することになります。

また、夫が死亡する前に子がすでに死亡しており、その子(夫の孫)がいる場合は孫が代襲相続します。

相続関係者の法定相続分は次の通りです。

  • 妻:2分の1
  • 孫:2分の1(死亡した子の相続分を代襲)

相続後の持分割合は次のようになります。

  • 妻:75%(元の50%+相続分25%)
  • 孫:25%(代襲相続により取得)

代襲相続により、妻は孫と不動産を共有することになり、世代を超えた権利関係が生じます。

夫が死亡し、子がいないが親がいる場合

ここでは、夫婦でマンションを2分の1ずつ共有しており、夫が死亡。子はおらず、相続人は妻と夫の両親になった場合を想定します。

相続関係者の法定相続分は次の通りです。

  • 妻:3分の2
  • 夫の父:6分の1
  • 夫の母:6分の1

相続後の持分割合は次のようになります。

親が相続人となる場合の持分変化
相続人 相続で取得する持分 最終持分
約33.3%(夫の50%×2/3) 83.3%
夫の父 約8.3%(夫の50%×1/6) 8.3%
夫の母 約8.3%(夫の50%×1/6) 8.3%

この場合、妻以外に夫の両親が共有者として加わることになり、3人での共有状態となります。不動産の管理や処分について、妻だけでなく義理の両親との協議が必要になる点に注意が必要です。

夫が死亡し、子も親もいないが兄弟姉妹がいる場合

ここでは、夫婦でマンションを2分の1ずつ共有しており、夫が死亡。子も親もおらず、相続人は妻と夫の兄弟姉妹になったと想定します。

相続関係者の法定相続分は次の通りです。

  • 妻:4分の3
  • 夫の兄弟姉妹:4分の1を人数で等分

夫に兄と妹がいる場合、相続後の持分割合は次のようになります。

  • 妻:87.5%(元の50%+相続分37.5%)
  • 夫の兄:6.25%(夫の50%×1/4×1/2)
  • 夫の妹:6.25%(夫の50%×1/4×1/2)

この場合、妻にとって関係の薄い義理の兄弟姉妹と不動産を共有することになる可能性があります。

子・親・兄弟姉妹もいない場合(配偶者のみ相続)

ここでは、夫婦でマンションを2分の1ずつ共有しており、夫が死亡。夫に法定相続人が配偶者しかいない場合を想定します。

相続関係者の法定相続分は次の通りです。

  • 妻:すべて(100%)

結果、相続後の持分割合は「妻:100%(元の50%+夫の持分50%)」となります。

夫の持分50%はすべて妻が相続し、結果として妻が不動産の100%を単独所有することになります。これは共有名義を解消する最もシンプルなパターンといえるでしょう。

親子で共有していた場合

父と子(兄)で共有し父が死亡、母と他の子(弟)は存命の場合

ここでは、父親と長男が不動産を2分の1ずつ共有しており、父親が死亡。母親と次男が存命の場合を想定します。

相続関係者の法定相続分は次の通りです。

  • 母親:2分の1
  • 長男:4分の1
  • 次男:4分の1

相続後の持分割合は次のようになります。

父と長男の共有で父が死亡した場合の持分変化
項目 長男 次男
相続前の持分 50% 0% 50% 0%
相続で取得する持分 25% 12.5% 12.5%
相続後の最終持分 0% 25% 62.5% 12.5%

この結果、父と長男の2人共有から、母・長男・次男の3人共有へと権利関係が複雑化します。長男は元々の持分50%に父親から相続した12.5%を加えて62.5%の持分をもつことになり、最も大きな割合を占めます。

父と子で共有し子が死亡、子の配偶者は存命の場合

ここでは、父親と子が不動産を2分の1ずつ共有しており、子が死亡。子はひとりで孫はおらず、子の配偶者と子の母(父の妻)が存命の場合を想定します。

相続関係者の法定相続分は次の通りです。

  • 子の配偶者:3分の2
  • 父親:6分の1
  • 母親:6分の1

相続後の持分割合は次のようになります。

父と子の共有で子が死亡した場合の持分変化
項目 子の配偶者
相続前の持分 50% 50% 0% 0%
相続で取得する持分 約8.3% 約8.3% 約33.4%
相続後の最終持分 58.3% 0% 8.3% 33.4%

この場合、父親は元々の持分50%に加えて子の持分の一部を相続し、子の配偶者が最も大きな相続分を取得します。父と子の2人共有から、父・母・子の配偶者による3人共有となります。

兄弟(姉妹)で共有していた場合

ここでは、兄と弟が不動産を2分の1ずつ共有している場合を想定します。兄が死亡した際の相続パターンは、兄の配偶者や子の有無により法定相続人が決まります。

兄に配偶者と子がいる場合、相続人は兄の配偶者と兄の子となり、弟に相続権はありません。

相続関係者の法定相続分は次の通りです。

  • 兄の配偶者:2分の1
  • 兄の子:2分の1

相続後の持分割合は次のようになります。

兄に配偶者と子がいる場合の持分変化
項目 兄の配偶者 兄の子
相続前の持分 50% 50% 0% 0%
相続で取得する持分 0% 25% 25%
相続後の最終持分 0% 50% 25% 25%

なお、兄が独身で子がいない場合、弟が兄の相続人となり、相続関係者の法定相続分は「弟:すべて(100%)」となります。

相続後の持分割合は次の通りです。

兄が独身で子もいない場合の持分変化
項目
相続前の持分 50% 50%
相続で取得する持分 50%
相続後の最終持分 0% 100%

なお最終持分は法定相続分に応じて変動し、兄弟関係では相続により単独所有となるか、複数人での複雑な共有状態となるかが大きく異なります。

友人や第三者で共有していた場合

ここでは、親族ではない友人やビジネスパートナー、または完全に他人と共有していたパターンを想定します。たとえば、友人と購入した別荘や野山、共同経営者と所有する事務所などが該当します。

当然ながら友人や第三者は法定相続人ではないため、遺言書で指定されていない限り、原則として相続分はありません。

ただし、前述のように死亡した共有者に法定相続人も特別縁故者もいない場合は、最終的に残存共有者に持分が帰属します。以下では、友人Aさんが死亡し、配偶者と子がいる一般的なケースで解説します。

相続関係者の法定相続分は次の通りです。

  • Aさんの配偶者:2分の1
  • Aさんの子:2分の1

相続後の持分割合は次のようになります。

友人同士の共有で一方が死亡した場合の持分変化
項目 友人A 友人B Aの配偶者 Aの子
相続前の持分 50% 50% 0% 0%
相続で取得する持分 0% 25% 25%
相続後の最終持分 0% 50% 25% 25%

共有状態は残存共有者(友人Bさん)と死亡者(Aさん)の相続人で継続されます。この結果、友人Bさんは突然、面識のないAさんの家族と不動産を共有することになり、管理や処分において大きな困難が生じる可能性があります。

このようなリスクを避けるため、友人同士で不動産を共有する場合は、事前に遺言書の作成や持分売買に関する取り決めをしておくことが重要です。

内縁の夫と共有していた場合

ここでは、内縁関係にある男女が不動産を2分の1ずつ共有しており、内縁の夫が死亡した場合を想定します。

まず前提として内縁の妻には法律上の相続権はなく、遺産を相続することはできません。財産を引き継がせたい場合は、遺言書を作成して「遺贈」により財産を渡すか、事前に「生前贈与」する方法があります。以下にて具体例を見てみましょう。

内縁の夫に実子がいる場合

内縁の夫に実子がいる場合、相続関係者の法定相続分は次のようになります。

  • 内縁の夫の実子:すべて(100%)

相続後の持分割合は次の通りです。

内縁の夫と共有で夫が死亡した場合の持分変化
項目 内縁の夫 内縁の妻 夫の実子
相続前の持分 50% 50% 0%
相続で取得する持分 0% 50%
相続後の最終持分 0% 50% 50%

内縁夫婦間に子がいる場合

内縁の妻の子が遺産を相続するには、父親である被相続人による「認知」が必要です。認知がなければ相続権は原則として認められませんが、認知されれば他の実子と同様の相続権を得られます。
この場合の持分割合を見てみましょう。

内縁夫婦間の認知された子がいる場合の持分変化
項目 内縁の夫 内縁の妻 認知された子
相続前の持分 50% 50% 0%
相続で取得する持分 0% 50%
相続後の最終持分 0% 50% 50%

内縁の妻が特別縁故者として認められる場合

内縁の夫に法定相続人がいない場合、内縁の妻は「特別縁故者」として家庭裁判所に財産分与を申し立てることができます。

特別縁故者とは、被相続人と特別の縁故があった者のことで、以下のような人が該当します。

  • 被相続人と生計を同じくしていた者(内縁の配偶者、事実上の養子など)
  • 被相続人の療養看護に努めた者
  • その他、被相続人と特別の縁故があった者

内縁の妻が特別縁故者として認められるためには、以下のような証拠を提出する必要があります。

  • 被相続人との同居期間を確認できるもの(住民票など)
  • 定期的な振り込みがあった通帳
  • 親密な関係性であったことがわかるもの(メール、LINE、SNS、手紙など)
  • 一緒に過ごしていたことがわかるもの(写真や日記など)

家庭裁判所が特別縁故者として認めた場合、内縁の妻は内縁の夫の持分の全部または一部を取得できる可能性があります。ただし、この手続きには相続人不存在の確定や清算手続きなど、複雑な過程を経る必要があり、相当な時間を要します。

このように、内縁関係では法的保護が限定的であるため、将来の相続に備えて遺言書の作成や法律婚への移行などの対策を検討することが重要です。

共有者の相続人も特別縁故者もいない場合(共有者に帰属)

亡くなった共有者に法定相続人が一切いない場合でも、その持分がただちに残存共有者に移転するわけではありません。民法255条は「共有者の一人が死亡して相続人がないときは、その持分は他の共有者に帰属する」と定めていますが、実際には特別縁故者への財産分与が優先されます。

前述したように、最高裁判所の判例(平成元年11月24日判決)により、法定相続人が存在しない場合でも、まず特別縁故者への財産分与の審判が行われ、財産分与がされなかった場合に初めて民法255条により残存共有者に持分が帰属します。

特別縁故者への財産分与もされず、すべての清算手続が終了した場合の持分変化は以下の通りです。

法定相続人も特別縁故者もいない場合の持分変化
項目 死亡した共有者 残存共有者
相続前の持分 50% 50%
清算・財産分与手続後に取得する持分 50%
最終持分 0% 100%

残存共有者は死亡した共有者の持分50%を取得し、不動産の単独所有者となります。

不動産の共有名義人の片方が死亡した際の相続登記の流れ

共有名義の不動産で一方が死亡した場合、死亡した共有者の持分を相続人に移転する相続登記が必要です。ここでは、相続登記までの具体的な手続きの流れを解説します。

遺言書の確認

相続手続きを開始する最初のステップは、遺言書の有無を確認することです。遺言書は相続分の決定に大きく影響するため、まず最初に徹底的に調査する必要があります。

遺言書の調査範囲は以下の通りです。

  • 故人の自宅での書面調査
  • 親族・友人への確認
  • 公証役場での公正証書遺言の検索
  • 法務局での自筆証書遺言保管の照会

遺言書が発見された場合の取り扱いも重要です。自筆証書遺言については家庭裁判所での検認手続きが必要ですが、公正証書遺言や法務局保管の自筆証書遺言では検認は不要です。

また遺産分割協議後に遺言書が発見された場合でも、遺言内容が優先されるため、相続人全員が同意しない限り遺言に従った分割が必要になります。

相続人と相続財産の確定

遺言書がない場合、または遺言書があっても全ての財産が指定されていない場合は、法定相続人と相続財産の確定作業を行います。

相続人調査では、故人の出生から死亡まですべての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を収集し、戸籍の移動履歴をたどって以下の点を確認します。

  • 配偶者の存在
  • 子の人数(認知した子を含む)
  • 直系尊属(両親・祖父母)の生存状況
  • 兄弟姉妹の存在

加えて、不動産の共有持分以外にも、相続財産全体を把握する必要があります。

  • 金融機関での預貯金調査
  • 証券会社での株式等の確認
  • 負債の存在確認(借入金・保証債務等)
  • その他の財産(貴金属・美術品等)の調査

負債が多額である場合は相続放棄の検討が必要になるため、プラス財産だけでなくマイナス財産の調査も重要です。

遺産分割協議(遺言書がない・全員が協議することに同意した場合)

法定相続分と異なる分割を希望する場合、または遺言書があっても相続人全員が協議による分割を希望する場合は、遺産分割協議を行います。

協議では相続人全員が参加して、各財産の帰属先を決定。共有不動産については以下の選択肢があります。

  • 法定相続分による共有継続
  • 特定の相続人による単独取得
  • 売却して代金を分配
  • 代償金を支払った上での単独取得

協議がまとまったら、内容を書面化して遺産分割協議書を作成します。協議書は相続登記申請時の必須書類であり、後日の紛争防止のためにも正確な記載が重要です。

なお、協議書には以下の要素を含める必要があります。

  • 故人の氏名・生年月日・死亡年月日・最終住所
  • 不動産の正確な表示(登記簿謄本の通り)
  • 各相続人の取得財産の詳細
  • 相続人全員の署名・実印押印

相続登記(持分移転登記)

2024年4月から相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記申請を行わなければなりません。正当な理由なく期限内に登記をしなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

相続登記申請には以下の書類が必要です。

  • 登記申請書
  • 故人の出生から死亡までの戸籍謄本等
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 遺産分割協議書(協議を行った場合)
  • 相続人全員の印鑑証明書(協議書がある場合)

登記申請は、不動産を取得する相続人が不動産所在地を管轄する法務局に対して行います。申請方法は以下の通りです。

  • 窓口での直接申請
  • 郵送による申請
  • オンライン申請

なお、相続登記の際は登録免許税が課税されます。税額は固定資産税評価額の0.4%であり、申請時に収入印紙で納付します。

手続きに不安がある場合は、司法書士に依頼することで正確かつスムーズな登記申請が可能になります。専門家への依頼により、書類収集から申請まで一括して対応してもらえるため、時間と労力の節約にもつながるでしょう。

不動産を相続したら発生する可能性のある税金・費用

不動産を相続した場合、さまざまなタイミングで税金や費用が発生します。相続時・保有中・売却時のそれぞれで異なる税負担があるため、事前に把握しておくことが重要です。

以下の表で全体像を確認しましょう。

不動産相続に関わる税金・費用の一覧
時期 税金・費用の種類 課税対象・計算方法 備考
相続時 相続税 遺産総額が基礎控除額超過時 申告期限:死亡から10か月以内
登録免許税 固定資産税評価額×0.4% 相続登記時に必要
不動産取得税 特定遺贈・死因贈与等の場合のみ 原則、法定相続人は非課税
保有中 固定資産税・都市計画税 固定資産税評価額に基づく 毎年1月1日時点の所有者
維持費 修繕費・管理費・保険料等 物件状況により変動
売却時 譲渡所得税・住民税 譲渡所得に対して課税 所有期間により税率変動

相続時

相続時にかかる税金は次の通りです。

  • 相続税円
  • 登録免許税
  • 不動産取得税

以下にて詳しく見てみましょう。

相続税

相続税は、遺産の総額が基礎控除額を超えた場合に課税される税金です。不動産単体ではなく、現預金や有価証券なども含めた全相続財産の評価額をもとに計算されます。

【基礎控除額の計算方法】
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

法定相続人数別の基礎控除額
法定相続人数 基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円
5人 6,000万円

不動産の評価方法においては、土地の評価は路線価方式、または倍率方式により算出されます。路線価が設定されている地域では路線価方式、設定されていない地域では固定資産税評価額に一定の倍率を乗じる倍率方式を使用します。

相続税の申告・納付期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内と定められており、期限を超過するとペナルティが課せられるため注意が必要です。

登録免許税

相続登記を行う際に課税される税金で、以下の計算式で算出されます。

【登録免許税の計算方法】
登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%

たとえば、固定資産税評価額が5,000万円の不動産の場合、登録免許税は20万円となります。2024年4月から相続登記が義務化され、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行わなければ、10万円以下の過料が科せられる可能性があるため注意しておきましょう。

不動産取得税(特定遺贈や死因贈与等の場合のみ)

不動産取得税は、原則として法定相続人による相続では課税されません。ただし、以下の場合には課税対象となります。

【課税されるケース】

不動産取得税が課税されるケース
ケース 内容 具体例
①相続人以外の方への特定遺贈 法定相続人でない人が遺言により不動産を取得した場合、不動産取得税が課税される 子のいない夫婦で夫が死亡し、遺言により妻の兄弟が不動産を取得するケース
②死因贈与 被相続人の生前に締結された契約により、死亡時に不動産が移転する場合も課税対象となる 生前に「死亡時に不動産を譲渡する」という契約を結んでいたケース
③相続時精算課税制度 生前贈与で相続時精算課税制度を選択した場合、相続時の精算において不動産取得税が課せられることがある 生前贈与時に相続時精算課税を選択し、相続時に精算が行われるケース

これらのケースでは、固定資産税評価額に対して原則3%(住宅用土地は1.5%)の税率で課税されるため、事前の確認が重要です。

保有中

保有中にかかる税金・費用は次の通りです。

  • 固定資産税・都市計画税
  • 維持費

以下にて詳しく見てみましょう。

固定資産税

固定資産税とは、不動産を所有している限り、毎年課税される税金です。毎年1月1日時点での所有者に対して課税され、年4回に分けて納付します。

【税額の計算方法】
・固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%(標準税率)
・都市計画税 = 課税標準額 × 0.3%(制限税率)

なお、同一市区町村内の固定資産の課税標準額が以下の金額未満の場合は課税されません。

  • 土地:30万円
  • 家屋:20万円
  • 償却資産:150万円

相続した不動産を賃貸に出す場合は、家賃収入から必要経費を差し引いた不動産所得に対して所得税・住民税が課税されます。

維持費

不動産を保有する期間中は、税金以外にも以下のような維持費が発生します。

  • 建物の修繕費・メンテナンス費用
  • 火災保険料・地震保険料
  • マンションの場合:管理費・修繕積立金
  • 庭木の手入れ・除草費用
  • 空き家の場合:定期的な管理費用

特に空き家の場合、適切な管理を怠ると「特定空家等」に指定され、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなるリスクがあります。

売却時

売却時にかかる税金は次の通りです。

  • 譲渡所得税
  • 住民税

以下にて詳しく見てみましょう。

譲渡所得税

相続した不動産を売却した場合、売却益に対して譲渡所得税・住民税が課税されます。

【譲渡所得の計算方法】
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除

譲渡所得税の税率
所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年超 15% 5%

相続により不動産を取得した場合、被相続人が取得した日と取得価額を引き継ぐことができます。ただし、取得費が不明な場合は売却価額の5%を取得費とみなす概算取得費の特例もあります。

空き家を売却する場合は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」により、最大3,000万円の特別控除を受けられる可能性があります。この特例を活用することで、大幅な節税効果が期待できます。

共有名義不動産の共有名義人の片方が死亡した場合に考えられるリスク

不動産を共有することにはさまざまなリスクがあり、相続によって共有者が増えればその人とトラブルが起きてしまうことになりかねません。

不動産を共有することのリスクとしては、下記が挙げられます。

  • 共有不動産の活用や処分をめぐって争いが起きる可能性がある
  • 共有不動産の維持管理費を負担割合について新しい共有者と揉める可能性がある
  • 自分の子どもや孫もトラブルに巻き込まれてしまうおそれがある

ここからは、不動産を共有することで起こり得るトラブルについて、それぞれ詳しく解説していきます。

共有不動産の活用や処分をめぐって争いが起きる可能性がある

共有不動産は通常の不動産と異なり、複数人で不動産を所有している状態です。そのため、不動産の売却・賃貸・処分などをするには、共有者からの同意が必要になります。

共有不動産をどのように活用するかによって同意が必要な共有者の人数は異なり、具体的には下記のように定められています。

行為の種類 必要な要件 具体例
変更行為 共有者全員から同意が必要 ・不動産全体の売却
・建物部分の取り壊し
管理行為 共有持分の過半数の同意が必要 ・賃貸借契約の締結や解除
・増改築など不動産の価値や用途を変更するようなリフォーム
保存行為 合意がなくても単独で行為可能 ・維持を目的とした補修などのリフォームやメンテナンス ・所有権を持たない人物に対しての明渡し請求

たとえば、共有名義の不動産を売却したり取り壊したりするには、共有者全員からの同意を得る必要があります。また、賃貸物件として不動産を活用する場合には、共有持分の過半数の同意が必要です。

不動産の共有状態が続けば、その物件を売却したり賃貸に出したりと、活用することを希望する共有者も現れることも考えられます。

「不動産は活用せずに残しておきたい」と考える共有者がいれば、共有者間で意見が食い違ってしまい関係性が悪化してしまうケースも考えられるのです。

共有不動産の維持管理費を負担割合について新しい共有者と揉める可能性がある

共有不動産に限りませんが、建物や土地を所有している場合、所有者は下記のような費用を負担しなければなりません。

  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 家の修繕費
  • 火災保険料
  • 地震保険料

共有名義の不動産において、原則として各共有者の持分割合に応じて維持管理費を負担します。そのため、仮に共有名義の不動産を利用していなかったとしても支払義務は生じてしまうのです。

固定資産税などの費用は決して少額とはいえない金額であり、毎年数十万円ほどの費用がかかることも少なくありません。そのため、共有名義の不動産の維持管理にかかる費用負担をめぐって、共有者間でトラブルが起きてしまう可能性があるのです。

自分の子どもや孫もトラブルに巻き込まれてしまうおそれがある

前述したように、共有持分は遺産相続の対象になります。万が一共有名義の不動産を所有している人が亡くなった場合、持分を引き継いだ親族が新たな共有者になります。

そして、不動産の共有状態を解消しないままにすると、自分の子どもや孫もトラブルに巻き込まれてしまう可能性もあります。

たとえば、不動産をA・B・Cの3人で共有しているケースを想定します。仮にBに子どもが2人いると仮定すれば、Bが亡くなった際には2人の子どもが共有持分を相続することができます。

2人の子どもが共有持分を相続した場合、不動産の共有者は3人から4人に増えることになるのです。

前述したように、共有名義の不動産を所有する場合、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。さらに、共有者が増えれば増えるほど、将来的にトラブルが起こりやすくなり、子どもや孫にとってもトラブルの種になるリスクがあるのです。

共有名義の相続トラブルを避けるための対策

前述したように、不動産を共有することにはさまざまなリスクがあります。そのため、共有名義の片方が死亡したときには単独所有にして共有状態を解消しておくことを検討するべきですが、共有状態を解消できないケースもあることでしょう。

場合によっては子どもや孫が相続トラブルに巻き込まれてしまう可能性もあるため、共有名義の相続トラブルを避けるためにも生前対策を講じておくことが得策です。

共有名義の相続トラブルを避けるための対策としては、下記が挙げられます。

  • 生前贈与を行う
  • 遺言書を作成する
  • 家族信託を利用する

ここからは、共有名義の相続トラブルを避けるための対策について、それぞれ詳しく解説していきます。

生前贈与を行う

生前贈与とは、生きている間に財産を贈与することです。任意のタイミングで指定した人に共有持分を贈与できるため、共有持分を贈与したい人がいる場合には検討してみてもよい方法といえます。

また、1年間に贈与をした財産の価値が110万円を超える場合、その金額に対して贈与税がかかりますが、暦年贈与を活用することで贈与税を抑えつつ共有持分を贈与することも可能です。

暦年贈与とは、110万円を範囲で毎年贈与を繰り返し行う方法のことです。

たとえば、親と子どもの2人で不動産を共有しているケースを想定します。暦年贈与によって毎年110万円を超えないように親から子どもに少しずつ共有持分を贈与していくことで、いずれはその不動産を子どもが単独所有することが可能です。

ただし、共有持分を贈与する場合には、その度に登記手続きが必要になり、その際には登録免許税などの支払いが必要です。

暦年贈与によって複数回にわたって共有持分を贈与する場合には登記にかかる費用がかさんでしまうため、1度で共有持分のすべてを贈与するよりも費用が高額になってしまう可能性もあります。

生前贈与を行う場合、一度ですべてを贈与する場合の贈与税と、暦年贈与によって発生する登記費用の全額を比較したうえで、どちらの方法であれば費用を抑えられるのかを検討しておくことも大切です。

遺言書を作成する

遺言書を作成しておけば、原則的にはその内容に基づいて遺産分割が行われます。自身が所有する共有持分を誰に相続させるかを生前に決めておくことが可能です。

たとえば、現時点で親と子どもの2人で不動産を共有している場合を想定します。親が遺言書に「共有持分はすでに不動産を共有している子どもに相続させる」のように定めておくことで、相続後はその不動産を単独所有にできるのです。

ただし、相続財産が不公平な内容の遺言書である場合、遺産を多く受け取った相続人に対して遺留分侵害額請求が行われる可能性があります。

また、遺言書に不備などがあると効力が発揮されないため、遺言書を作成するのであれば公証役場で公証人が作成する「公正証書遺言」を作成するのが得策です。

家族信託を利用する

家族信託とは、自身が所有する財産の管理・処分などを信頼できる家族に任せるための制度のことです。認知症によって財産の管理などが難しいケースもあるため、その対策として利用されることも多いです。

家族信託は当事者間で契約内容を決められるため、自身が亡くなった後にどのような順序で財産を相続するかを指定することもできます。

たとえば、親と長男で不動産を共有しているケースで、親が家族信託によって「自身が亡くなった後は長男に共有持分を相続させる」と決めておくことで、相続後は不動産の共有状態が解消されます。この場合、相続によって共有状態のトラブルを未然に防げるのです。

共有状態を抜け出したければ単独所有にするか持分を処分する

共有名義の不動産で相続が発生した場合、共有状態を抜け出すことで、将来のトラブルを防げます。

主な解決方法を以下の表にまとめました。

共有状態解消の主な方法
解決方法 詳細
全員で協力して売却 共有者全員が売却に同意している場合、不動産全体を第三者に売却し、代金を持分割合に応じて分配する方法。最も高値での売却が期待できるが、全員の合意が必要となる。
新しい共有者との持分売買 相続により新たに共有者となった人との間で、持分の売買を行う方法。一方が他方の持分を買い取ることで単独所有とすることができる。価格設定や資金調達の問題をクリアできれば、円滑な解決が可能。
第三者(業者)に持分売却 共有持分の買取を専門とする業者に売却する方法。他の共有者の同意は不要だが、持分のみの売却となるため、不動産全体を売却する場合と比較して価格は低くなる傾向がある。

そのほかの方法として持分放棄や分筆なども存在しますが、持分放棄は他の共有者に無償で利益を与えることになり、分筆は物理的に分割困難な不動産では実現が困難です。そのため、これらの方法はあまり推奨していません。

どの方法でも解決できない場合の最終手段として、共有物分割請求訴訟があります。この方法では裁判所が強制的に共有状態を解消する方法を決定しますが、時間とコストがかかるため、できる限り話し合いによる解決を優先することが重要です。

共有状態の解消を早期に検討すれば、より多くの選択肢から最適な方法を選択できます。専門家に相談しながら、状況に応じた最適な解決策を見つけることをおすすめします。

まとめ

共有名義の不動産で片方が死亡した場合、生き残った共有者が自動的に持分を取得するわけではなく、法定相続人が持分を相続します。これにより共有者が増加し、売却や賃貸の合意が困難になったり、費用負担を巡るトラブルが発生したりするリスクがあります。

共有状態が複雑化した場合は、全員での売却、持分売買、第三者への持分売却などで早期解決を図ることが重要です。

共有名義の不動産相続は法律関係が複雑で税務上の取り扱いも多岐にわたるため、司法書士、税理士、不動産の専門家に相談し、個々の状況に応じた最適な解決策を検討することをおすすめします。

共有持分に関するコラムはこちら

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更新日 : 2025年11月07日
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