共有持分を買取業者に売却するとトラブルが起こる?
結論から言うと、共有持分を買取業者に売却したからといって、必ずトラブルが起こるとは限りません。
しかし、買取業者に売却したことがきっかけとなり、「売主と買取業者」「売主と他の共有者」「買取業者と他の共有者」との間で以下のようなトラブルが生じる場合もあります。
| トラブルが発生する間柄 |
事例 |
| 共有持分の買取業者と他の共有者 |
・電話・訪問など強引な営業を繰り返された
・賃料・使用料の支払いを求められた
・明け渡しや立ち退きを請求された
・共有物分割請求訴訟を起こされた |
| 共有持分の買取業者と売主 |
・相場よりも安い価格で買い叩かれた
・契約後に想定外の費用を請求された |
| 売主と他の共有者 |
他の共有者からの反感を買い、関係性が悪化してしまう |
これらのトラブルは、特に悪質な買取業者に共有持分を売却した場合に起こる可能性が高いです。これは、買取業者のビジネスモデルが関係しています。
弊社を含め、共有持分の買取業者は、仕入れた不動産をリフォームしたり、共有名義を単独名義にしたりして価値を高めてから転売・活用することで利益を得ています。悪質な買取業者は自社の利益のみを追求するため、安く買いたたいたり、強引な営業を繰り返したりなど法令やモラルを無視した行動を取る傾向にあります。
一方で、買取実績が豊富で信頼性の高い優良な買取業者に売却すれば、これらのトラブルに巻き込まれるリスクを抑えられるため、安心して取引を進めやすいです。しかし、優良な買取業者に売却した場合でも、共有持分の性質上、売却後のトラブルを完全に回避できるわけではありません。
だからこそ、共有持分を買取業者に売却する際は、トラブルが生じやすいということを前提に、どのような問題が起こり得るのかをあらかじめ把握しておくことが重要です。
共有持分の買取業者と他の共有者の間で起こるトラブル事例
共有持分を買取業者に売却すると、買取業者と他の共有者との間でトラブルに発展する可能性があります。
弊社と連携している共有持分専門の買取業者からも、買取業者と他の共有者との間で生じたトラブルについてよく相談を受けます。具体的なトラブル事例としては、主に以下の4つがあります。
- 電話・訪問など強引な営業を繰り返されたケース
- 賃料・使用料の支払いを求められたケース
- 明け渡しや立ち退きを請求されたケース
- 共有物分割請求訴訟を起こされたケース
ここからは、それぞれのトラブル事例について1つずつ詳しく解説していきます。
電話・訪問など強引な営業を繰り返されたケース
買取業者に共有持分を売却した後、その買取業者が残りの共有持分もどうにかして取得しようと、他の共有者に対して電話や訪問などで強引な営業が繰り返し行われるケースがあります。
前提として、共有持分のみだけでは不動産全体を自由に活用・売却できません。そこで買取業者は、不動産を単独名義で取得するため、他の共有者に対しても買取交渉を行うのが基本です。
その際、法令やモラルを無視した強引な手法で営業を行う業者が存在するのも事実です。実際に弊社へ寄せられたご相談の中にも、「自分の共有持分を買い取った業者が、他の共有者にも強引に持分の売却を迫っていて困っている」というものがありました。
<相談事例>
相続した実家の共有持分を買取業者に売却したところ、その買取業者が残りの共有者である兄に対し、持分の売却を強引に迫り始めるようになった。兄には実家を手放す意思がなく、売却を断っているにもかかわらず、「仕事中に何度も営業電話がかかってくる」「夜8時過ぎにアポなしで訪問してくる」など、兄に対して強引な営業が繰り返し行われている。
今回の事例では、弊社が買取業者の共有持分を引き受けて強引な営業をストップさせました。それから地道に交渉を続けた結果、最終的にはお兄さまが共有持分を買い取って実家を単独で所有する形で問題の解決に至りました。
賃料・使用料の支払いを求められたケース
共有持分を買い取った買取業者が、共有不動産の占有者に対して賃料・使用料の支払いを請求したことがきっかけで、トラブルに発展するケースもあります。
特定の共有者に不動産を占有されている場合、それ以外の共有者は占有者に対し、自身の持分割合に応じた賃料相当額を請求できます。
買取業者はビジネスとして共有持分を買い取っているため、不動産全体を収益化できるまでの間は占有者に対し、持分割合に応じた賃料を請求するのが基本です。これは正当な権利行使であるため、買取業者が占有者に賃料を請求すること自体は法的に何ら問題ありません。
しかし、これまで無償で不動産に住み続けてきた占有者からすれば、見知らぬ買取業者から賃料を請求されることは、金銭的にも心理的にも大きな負担が伴います。強い心理的抵抗や将来への不安などから、買取業者からの賃料請求に従わず、トラブルが泥沼化するケースが多く見られるのも事実です。
実際に弊社へ寄せられたご相談の中にも、見知らぬ買取業者から突然賃料を請求されるようになり、金銭的な負担が増えて困っているというものがありました。
<相談事例>
これまで疎遠だった姉と2人で共有していた都内の実家に無償で住み続けていたが、姉が共有持分を買取業者に売却したことがきっかけで、その買取業者から月額15万円の賃料を請求されるようになった。現在の経済状況では毎月15万円の賃料を支払うのが困難で、これまで支払いを滞納していた。それから買取業者から執拗な支払い督促を受けるようになり、精神的に追い詰められている。
今回のご相談者さまの事例では、弊社が買取業者とご相談者さまの共有持分をすべて買い取り、ご相談者さまの引っ越し費用を全額負担するという形で問題の解決に至りました。
明け渡しや立ち退きを請求されたケース
共有持分を買い取った買取業者が、共有不動産の占有者に対して明け渡しや立ち退きを請求したことにより、買取業者と占有者との間でトラブルが生じるケースもあります。
占有している共有者に対する明け渡しや立ち退き請求は原則として認められていません。ただし、以下のいずれかに該当する場合は、明け渡しや立ち退きが認められる可能性があります。
- 共有名義の土地に家を建てようとしている
- 共有者全員で決めた使用方法と異なる
- 共有持分権の濫用と認められた
- 暴力や脅迫などの実力行使による占有である
とはいえ、これらに該当する場合でも買取業者には強制的に占有者を追い出す権限はないため、買取業者からの単なる要求に応じる必要はありません。しかし、悪質な買取業者の場合は、占有者を追い出すまで執拗に請求を繰り返したり、嫌がらせしてきたりするケースがあるのも事実です。
実際に弊社へ寄せられたご相談の中にも、買取業者から賃料の不払いを理由に明け渡しや立ち退きを執拗に迫られて困っているというものがありました。
<相談事例>
両親の死後に兄弟3人で相続した実家に居住しているが、突然見知らぬ買取業者から賃料を請求されるようになった。賃料の支払いを拒否したところ、買取業者は不払いを理由に立ち退きや物件の明け渡しを強引に迫ってくるようになった。立ち退きや明け渡しも拒否したところ、買取業者から明け渡し請求訴訟を起こすとの通告を受け、今後どう対処すればいいのか分からず困っている
今回のご相談者さまの事例では、弊社がご相談者さま・お姉さま・買取業者の共有持分をすべて買い取り、その売却代金を持分割合に応じて分配するという形で問題の解決に至りました。
共有物分割請求訴訟を起こされたケース
共有物分割請求訴訟とは、共有不動産の共有状態の解消を求めて裁判所に申し立てる訴訟のことです。共有物の各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できることが民法256条で定められています。
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索
共有物分割請求では、まず共有者全員の話し合いによる合意を目指すのが基本ですが、話し合いがまとまらない場合は共有物分割請求訴訟を起こすことが可能です。
基本的に買取業者は、最終的に不動産の完全所有権を取得することを目的としています。そのため、持分の買取交渉や話し合いによる共有状態の解消が難しいと判断した場合、共有物分割請求訴訟を起こすケースもあります。
最終的な判断は裁判所に委ねられているため、共有者の希望とは異なる結果になる可能性も高いです。裁判所の判決には法的拘束力があるため、分割を命じられた場合は共有者の意思にかかわらず、判決の内容に従って共有状態を解消しなければなりません。
そのため、今後の不動産の活用方針を巡って買取業者と他の共有者の意見が対立している場合は、共有物分割請求訴訟によってトラブルが生じやすいです。実際に弊社へ寄せられたご相談の中にも、買取業者から共有物分割請求訴訟を起こされそうで困っているというものがありました。
<相談事例>
兄と姉と共有名義で実家を相続したものの、遠方に住む兄は実家に住む予定がないということで、自身の共有持分を買取業者に売却。その後、自分や姉もその買取業者から共有持分を売却するように迫られたが、その買取業者は手法が強引で売却に抵抗があったため、何度も売却を断っていた。すると、その買取業者から売却に応じなければ共有物分割請求訴訟を起こすという通告を受けた。訴訟は回避したいものの、その買取業者には売却したくないという思いもあり、今後どのように対応すればいいのか分からず困っている。
今回のご相談者さまの事例では、弊社がご相談者さま・お姉さま・買取業者の共有持分をすべて買い取り、その売却代金を持分割合に応じて分配するという形で問題の解決に至りました。
共有持分の買取業者と売主の間で起こるトラブル事例
共有持分を買取業者に売却した際、買取業者と売主の間でトラブルが生じるケースも多々あります。共有持分の買取業者と売主の間で起こるトラブル事例として、主に以下の2つがあります。
- 相場よりも安い価格で買い叩かれたケース
- 契約後に想定外の費用を請求されたケース
ここからは、それぞれのトラブル事例について1つずつ詳しく解説していきます。
相場よりも安い価格で買い叩かれたケース
前提として、共有持分は下記の理由により市場での需要が極めて少ないのが実情です。
- 単独で不動産を自由に使用・売却できない
- 不動産の管理や利用に制約が多い
- 共有者間の利害対立や意見の衝突が起きやすい
上記に加えて、単独名義にするために他の共有者へ交渉したり、必要であればリフォームしたりなど、収益化できるまでの費用・時間的なコストは、基本的にすべて買取業者が負担します。そのため、共有持分を買取業者に売却する場合、一般の個人が主な買い手となる仲介に比べて安くなるのは普通のことです。
基本的に、共有持分を買取業者に売却する場合は「市場価格×持分割合×1/2から1/3程度」が相場です。この共有持分ならではの特性を悪用し、相場よりも不当に安い価格で買い叩こうとする悪質な買取業者も中には存在します。
相場を把握せずに安値で売却してしまった場合、結果として本来得られるはずだった利益を失うことになるため、買取業者とのトラブルを生む原因になり得ます。
実際に弊社へ寄せられたご相談の中にも、悪質な買取業者に相場の半値で買い叩かれそうになったものがありました。
<相談事例>
兄と2人で不動産を共有していたが、居住中の兄との関係が悪化したため、共有持分を売却して共有名義から抜けたいと考えていた。地元の不動産会社に相談してみたものの、売却を断られたため、インターネットで見つけた買取業者に査定を依頼した。その買取業者は兄との関係性を理由に相場の半値を提示し、売却を即決するように迫ってきた。共有名義から早く抜け出したいと思っているものの、その買取業者に不信感を抱いており、売却を躊躇している。
このご相談者さまは売却する前に弊社へご相談していただいたため、弊社が適正価格で共有持分を買い取ることで、不当に買い叩かれる事態を阻止できました。共有持分を安値で買い叩かれないようにするためにも、複数の買取業者に相談や査定を依頼し、適正価格をしっかりと把握したうえで取引を進めることが大切です。
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契約後に想定外の費用を請求されたケース
売買契約を締結した後、買取業者から下記のような名目で想定外の費用を請求されるトラブル事例もあります。
- 修繕費
- 測量費
- 登記費用
- 契約手数料
- 行政書士・司法書士費用
基本的に、不動産会社に対して特別な手数料が発生することはありません。一般的に発生する費用としては、印紙税や抵当権抹消費用があり、これらの費用は通常5~6万円程度に収まることが多いです。
それ以上の高額な請求をされている場合は悪徳業者の可能性が高いですが、売買契約は、一度締結してしまうと原則として解除できません。
弊社にも、「他社で契約した後に追加費用を請求され、思ったより手取りが少なくなってしまった」というご相談が寄せられたことがあります。
そのため、査定額にどのような費用が含まれているのか、追加費用が発生する可能性についても事前に確認し、納得した上で契約を進めることが大切です。
また、買取業者の中には、買取を仲介するサービスを「買取」と称して提供している場合があります。この場合、他社に物件を買い取らせる仲介業務に該当するため、本来であれば発生しない仲介手数料がかかるリスクがあるのです。
利用すると、手元に残る金額が予想以上に少なくなるため、売買契約を締結する前に業者が自社買取を行っているかもしっかり確認することが重要です。
買取業者に共有持分を売却すると売主と他の共有者でトラブルになる可能性がある
前述の通り、買取業者には共有不動産全体を売却したり、貸し出しなどの活用をしたりという目的があります。そのため、共有持分を買い取った後は他の共有者に対して持分の買取交渉や賃料請求、共有物分割請求などの手段を講じるのが基本です。
これらの買取業者の行動に他の共有者から感情的な反発が生まれ、買取業者と他の共有者との間でトラブルに発展するケースも少なくありません。その際、他の共有者の怒りの矛先が買取業者だけでなく、共有持分の売主に向けられるケースも多いのが実情です。
なぜなら、買取業者と他の共有者間のトラブルを招いた根本的な原因は、共有持分を買取業者に売却した行為そのものにあるからです。実際に弊社へ寄せられたご相談の中にも、共有持分を売却した後に他の共有者との関係性が悪化してしまったというものがありました。
<相談事例>
実家を姉と2人で相続したが、その実家は姉家族が占有しているため、共有名義から抜けるために自分の共有持分を買取業者に売却。その後、買取業者は姉に対して強引な持分の買取交渉や賃料の請求を行うようになった。姉に何も相談せず無断で共有持分を売却してしまったため、突然見知らぬ買取業者が共有者となったことについて姉の家族全員からひどく責められた。これまで姉とは良好な関係を築いていたが、共有持分の売却が原因で関係が悪化し、交流も一切なくなってしまった。
今回のご相談者さまの事例では、弊社が買取業者の共有持分を一旦引き受け、最終的にはお姉さまが単独名義で不動産を取得するという形で問題の解決に至りました。ご相談者さまとお姉さまとの関係も、弊社が介入して話し合ったことで修復に成功いたしました。
共有持分の売却は単独で行えますが、他の共有者との関係を良好に保つためにも、可能であれば事前に相談しておくことが望ましいです。
共有持分の売却トラブルを避けるための買取業者の選び方
共有持分を買取業者に売却する際に起こり得るトラブルは、コンプライアンスを遵守する意識が低く、自社の利益のみを最優先に考えている悪質な買取業者に売却した際に生じやすいです。
売却トラブルを未然に防ぐためには、買取や相談実績が豊富で信頼のおける優良な買取業者に依頼することが重要なポイントになります。優良な買取業者を選ぶ際に重視したいポイントとしては、主に以下の10個が挙げられます。
- 【大前提】複数の買取業者を比較する
- 宅地建物取引業の免許を持っている
- 国土交通省のネガティブ情報検索サイトをチェックする
- 移転登記と代金の受け渡しを同時におこなえるか確認する
- 売買契約を急かしてくる業者は避ける
- 現金での受け渡しに対応しているか確認する
- 相続物件についても実績が豊富
- 弁護士と連携している
- 買取業者の口コミ・評判が良い
- 担当者の対応が丁寧
ここからは、それぞれのポイントについて1つずつ詳しく解説していきます。
【大前提】複数の買取業者を比較する
まず大前提として、買取業者を探す際は必ず複数の業者に査定を依頼し、提示してもらった査定結果を比較・検討するようにしましょう。1社に査定してもらっただけでは、その査定額が適正価格であるのか、他社と比較して査定額やサービスの質が高いのかどうか判断するのが極めて困難です。
特に共有持分は、権利関係が複雑になりやすいうえに、利用や処分に制約が多いことから専門知識やノウハウがないと適正な評価がかなり難しいです。そのため、買取業者によって提示される査定額に大きな差が生じることも珍しくありません。
1社の査定のみで判断すると、「共有持分を相場よりも安く買い叩かれる」「他の共有者の持分も強引に買い取ろうとする」など、前述したような悪質な買取業者による売却トラブルに巻き込まれるリスクが高まります。
複数の買取業者の査定結果を比較すれば、共有持分の大まかな相場や高値で買い取れる業者を把握できます。また、担当者の対応やサービスの内容、相談・買取実績なども比較できるため、査定額やサービスの質が高い優良な買取業者に出会える確率が高まるのもメリットです。
加えて、複数の買取業者の査定結果は、本命の買取業者と価格交渉する際の材料としても活用できます。他社の査定結果を提示することで、交渉相手の買取業者からより高い買取価格やその他の有利な条件を引き出せる可能性も高まるでしょう。
共有持分の専門買取業者を比較するには「一括査定」が便利
共有持分専門の買取業者を比較する際は、一括査定サイトを利用するのがおすすめです。共有持分は不動産の中でも特殊な分野であるため、共有持分の買取実績や知識が豊富な専門業者は一般的な買取業者と比較して非常に限られています。
そんな中で専門の買取業者を自分で探し出し、個別に査定を依頼するのは労力も時間もかかります。一括査定サイトなら、物件情報を一度入力するだけで対応可能な専門の買取業者を検索できるほか、査定も一括で依頼できるため、買取業者を探す際の労力や時間を削減可能です。
弊社の「イエコン一括査定」では、共有持分を含む訳あり不動産を専門に取り扱っている買取業者を厳選し、複数の買取業者に査定を一括で依頼できるサービスを提供しています。弊社サポートセンターが買取業者との間に入ってやり取りを行うため、買取業者と個別でやり取りする手間がかからないうえ、しつこい営業電話も一切かかってきません。
無料で利用できるため、共有持分の売却を考えている方は、一度利用してみてはいかがでしょうか。
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宅地建物取引業の免許を持っている
買取業者を探す際は、宅地建物取引業免許の有無も確認しておきましょう。宅地建物取引業免許とは、宅地や建物の売買・貸借・交換などの取引を事業として営む場合に法律で取得が義務付けられている免許のことで、以下の2種類あります。
| 国土交通大臣免許 |
2つ以上の都道府県に事務所を設置して宅地建物取引業を営む場合に必要 |
| 都道府県知事免許 |
1つの都道府県のみ事務所を設置して宅地建物取引業を営む場合に必要 |
宅地建物取引業免許を持たずに共有持分の買取事業を営んでいる業者は、すべて違法業者に該当します。違法業者はコンプライアンスを遵守する意識が乏しく、法令や倫理観を無視した行動をとる傾向にあるため、前述したような深刻なトラブルに巻き込まれる可能性が極めて高いです。
トラブルを未然に防ぎつつ、安心して取引を進めるためにも、宅地建物取引業免許を取得している正規の買取業者であるかどうか必ず確認しましょう。宅地建物取引業免許を取得している買取業者は、以下の方法で確認できます。
国土交通省のネガティブ情報検索サイトをチェックする
国土交通省のネガティブ情報検索サイト では、法令違反や不適切な取引などで過去に行政処分を受けた事業者を確認できます。売却トラブルを未然に防ぐためにも、過去に処分履歴がある買取業者のうち、特に業務停止処分を受けたことのある買取業者との取引は避けるべきです。
業務停止とは、単なる事務手続きのミスではなく、重大な法令違反や消費者の利益を著しく害する行為があった場合に下される処分です。過去に業務停止処分を受けた買取業者は、コンプライアンス遵守の意識や企業体質に根本的な問題がある可能性が高いです。
行政処分を受けた後も企業体質が改善されず、再び不当な取引が行われている可能性も否定できません。売却トラブルのリスクを軽減するためには、過去に処分歴のない買取業者の中から売却先を選ぶことをおすすめします。
移転登記と代金の受け渡しを同時におこなえるか確認する
共有持分の取引を安全に進めるためにも、移転登記と代金の受け渡しを同時に行えるかも確認しておきましょう。共有持分を売却する際、移転登記が完了してから売却代金を支払うことを条件とする買取業者との取引は絶対に避けるべきです。
なぜなら、共有持分の所有権が買取業者に移転した後、代金が振り込まれないまま逃げられてしまう恐れがあるからです。代金未払いのリスクを回避するためにも、移転登記と代金の受け渡しを同時に行える買取業者に依頼するとよいでしょう。
売買契約を急かしてくる業者は避ける
査定や相談の際、売買契約を急かしてくる買取業者に依頼するのは避けるべきです。悪質な買取業者は売主の知識不足や心理的な弱みにつけこみ、共有持分をできるだけ安く買い取りたいと考えています。
そのため、冷静に検討する時間や他の買取業者に相談する時間を与えないよう、不安を煽って強引に売買契約の締結を迫ってくるケースが多いです。
一方、信頼性のある優良な買取業者は、売主が安心して取引を進められるよう、契約内容を丁寧に説明したうえで十分な検討期間を設けることを徹底しています。そのため、売買契約を急かすようなことは決してありません。
弊社にご相談いただいた場合でも、売却を即決していただく必要はありません。弊社としても、売主さまには契約内容に納得したうえで売却していただきたいため、じっくりと比較・検討してから判断していただくことをおすすめしています。
現金での受け渡しに対応しているか確認する
買取業者が現金での受け渡しに対応しているかどうか確認することも、売却トラブルを回避するための対策として有効です。特に、売却代金を現金ではなく、小切手で支払おうとする買取業者は要注意です。
小切手は信用性の高い決済手段として利用されていますが、小切手を振り出した買取業者の当座預金口座の残高が不足している場合、小切手を銀行で換金できません。悪質な買取業者はこの仕組みを悪用し、意図的に換金できない小切手を渡してくることがあります。
換金できない小切手を渡された場合、売主は代金を受け取れないまま共有持分だけ奪われてしまうことになります。このようなリスクを回避するためにも、現金または銀行振込での決済に対応している買取業者を選ぶのが賢明です。
相続物件についても実績が豊富
相続で共有状態になった不動産の持分を売却する場合は、相続物件についての実績が豊富かどうかも確認しておきましょう。不動産の共有状態は、相続をきっかけとして発生するケースも少なくありません。
相続に伴う共有持分の場合は、相続人の間で不動産の活用方針に関する意見の対立や、親との関係性や過去の経緯に絡む感情的な対立が特に生じやすく、複雑なトラブルに発展してしまいがちです。
相続物件の実績が豊富な買取業者は、相続物件ならではの複雑なトラブルにも慣れているため、相続によって取得した共有持分を売却する際も安心して取引を進められるでしょう。
また、税理士と連携している買取業者であれば、相続税や相続後の売却に伴う税金対策についても専門的なアドバイスが受けられるため、ワンストップで取引を円滑に進められます。
弁護士と連携している
共有持分の売買では、複雑な法的手続きや深刻なトラブルに直面することも少なくありません。これらが原因で売却手続きが進められないといったケースもあるため、買取業者を選ぶ際には弁護士と連携しているかもチェックしておきましょう。
弁護士と連携している買取業者に依頼すれば、他の共有者との交渉やトラブルも、弁護士を通じてスムーズに対処できます。法律面や税務面の複雑な問題をスムーズに対処できる体制が整っているため、トラブルを抱えた共有持分の売却も安心して任せられるのが大きなメリットです。
また、イチから弁護士を探して依頼するよりも手続きの負担やコストを抑えられるため、結果として共有持分をより高値で売却できるケースも多いです。すでに深刻なトラブルが生じている共有持分でも、弁護士と連携している買取業者であれば適正価格での買取を実現しやすくなるでしょう。
買取業者の口コミ・評判が良い
共有持分の買取業者を探す際には、実際に買取業者へ売却を依頼した人の口コミや評判もチェックしておきましょう。
ただし買取業者の公式ホームページ上に掲載されている情報は、買取業者にとって都合が良い情報に偏っている傾向にあるため、その情報だけで判断するのは避けるべきです。共有持分の知識や実績が不十分であるにもかかわらず、自社サイトでは知識や実績が豊富と偽るなど、事実に基づかない情報や誇張された情報が掲載されている場合もあります。
実際に買取業者へ売却を依頼した第三者視点の正直な意見や悪い評判も確認するためにも、口コミサイトやGoogleマップ、SNSなどで口コミや評判を調べるのがおすすめです。本当に信頼できる買取業者を見極めるための重要な判断材料となります。
第三者視点での口コミや評判が良い買取業者であれば、満足のいく取引を実現しやすいでしょう。ただし、サクラによる書き込みや事実に基づかない悪意のある口コミが投稿されている場合もあるため、インターネット上の情報収集に偏り過ぎるのも危険です。
買取業者を探す際には、公式ホームページの内容やインターネット上の評判・口コミを参考にしつつ、実際に買取業者の担当者と話してみることをおすすめします。
担当者の対応が丁寧
売却の相談や査定を依頼した際に担当者の対応が丁寧かも、買取業者の信頼性を判断するうえで重要なポイントとなります。信頼性の高い優良な買取業者は、売主が安心して取引を進められるよう、売主の立場に立った親身な対応や丁寧な説明を心掛けている業者が多いです。
「不安や事情に寄り添って親身になって相談に乗ってくれる」「質問に分かりやすくスピーディーに回答してくれる」といった買取業者であれば、トラブルなく安心して取引を進められる可能性が高いでしょう。
逆に、「質問に対してあいまいな回答を繰り返す」「難解な言葉や専門用語を多用する」など、対応が雑な担当者がいる買取業者は、自社の利益のみを最優先に考えている傾向にあります。
こういった買取業者とは信頼関係を築くのが難しく、将来的に売主や他の共有者との間でトラブルが生じるリスクが高いため、避けた方が無難です。
共有持分を買取業者に売却するメリット
共有持分を買取業者に売却するメリットとしては、主に以下の4つが挙げられます。
- 短期間での現金化が可能
- 仲介手数料がかからずコストを抑えられる
- 契約不適合責任が免責される契約が結べる
- 他の共有者に知られるリスクが低い
ここからは、それぞれのメリットについて1つずつ詳しく解説していきます。
短期間での現金化が可能
買取業者へ売却すれば、短期間で共有持分をスピーディーに売却・現金化できます。
一方で、仲介では市場で買い手を探さなければならないため、広告活動や問い合わせ・内覧対応などの売却活動に時間がかかります。
現金化までに要する期間は3~6ヶ月が目安で、条件次第では1年以上かかる場合もあります。特に共有持分は一般の買い手から敬遠されやすいため、長期間買い手が見つからないことも珍しくありません。
その点、買取では市場で買い手を探す必要がないため、売却活動にかかる時間を省ける分、売却手続きもスムーズに進みます。
買取の場合、査定から現金化までに要する期間は、数日~1ヶ月程度が目安です。仲介では売却が難しい共有持分も、買取であればスピーディーな現金化を実現できます。
仲介手数料がかからずコストを抑えられる
買取業者への売却では、仲介手数料が一切かかりません。仲介で売却する場合は、不動産の売買が成立した場合に、広告活動や内覧、売買契約などの仲介業務の対価として仲介手数料が発生します。
仲介手数料は、宅地建物取引業法によって上限が以下のように定められています。
| 売却価格(税抜) |
仲介手数料の上限 |
| 200万円以下 |
売却価格×5%+消費税 |
| 200万円超400万円以下 |
売却価格×4%+2万円+消費税 |
| 400万円超 |
売却価格×3%+6万円+消費税 |
たとえば、仲介で共有持分を1,000万円で売却した場合、仲介手数料の上限は以下のようになります。
1,000万円(売却価格)×3%+6万円+3.6万円(消費税)=39.6万円(仲介手数料)
このように、仲介では共有持分の売却価格に応じた仲介手数料がかかるため、売却できても手取りが減ってしまうのです。一方、買取の場合は仲介業務が発生しないため、それに伴う仲介手数料も発生しません。
仲介手数料分を丸々浮かせられるため、共有持分の売却にかかる初期コストを大幅に削減できます。
基本的に契約不適合責任が免責される
買取業者に売却する場合は、基本的に契約不適合責任が免責されます。契約不適合責任とは、契約に基づいて引き渡した目的物の種類や品質、数量などが契約内容と適合しない場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。
仲介での売却では、一般の個人が買主となる場合、原則として売主が契約不適合責任を負うことになります。共有持分を売却した後、買主に事前に伝えていなかったにもかかわらず、以下のような問題が発覚した場合は、買主から損害賠償や売買契約の解除などを請求される可能性があります。
- 登記簿上の持分比率が間違っていた
- 隣地との境界線が未確定だった
- 他の共有者や隣地の所有者との間にトラブルが生じていた
- 共有名義の不動産に欠陥があった(雨漏りやシロアリ被害、心理的瑕疵など)
一方、買取では不動産のプロである買取業者が、買取後の生じるリスクを考慮したうえで共有持分を買い取ります。そのため、売買契約書に契約不適合責任を免責とする特約を設けるのが基本です。
契約不適合責任が免責となれば、売却後に思わぬ欠陥や不具合などが発覚しても、買主である買取業者から責任を問われることはありません。「売却後に買主とトラブルになりたくない」「築年数が古すぎる物件を処分したい」という方でも、買取であれば安心して売却手続きを進められます。
他の共有者に知られるリスクが低い
仲介では市場で買い手を募るため、物件情報が不動産のポータルサイトやチラシなどに掲載されます。物件情報は一般に公開されるため、他の共有者や近隣住民の目に留まり、売却の事実が知られてしまう可能性も十分にあります。
一方、買取では買取業者と直接取引を行うため、仲介のような売却活動が必要ありません。市場に物件情報を一切出さずに売却活動を進められるため、共有持分の売却が完了するまで他の共有者に知られることはほぼありません。
これまでにも、他の共有者に売却を知られたくないというご相談をいただくことは多くありましたが、基本的に他の共有者に知られることなく売却完了しています。
ただし、これは売却完了までの話です。売却後、買取業者がその不動産を単独名義にするためには他の共有者との交渉が必要となるため、売却後は他の共有者に必ず知られることになります。
とはいえ、この交渉はすべて買取業者が行うため、売主が直接関わる必要はありません。ただし交渉の結果、前述したように元共有者との関係が悪化するリスクは非常に高いです。元共有者から不満が生じる可能性もあるため、トラブルを避けるためにもなるべく事前に売却について他の共有者に相談しておくのがおすすめです。
共有持分を買取業者に売却する際の相場
共有持分のみを売却する場合、不動産全体を売却するよりも市場価格が安くなるケースがほとんどです。
前述のとおり、買取業者に売却する場合の相場は、「市場価格×持分割合×1/2~1/3」といわれますが、これはあくまで目安です。
実際の売却価格は、不動産の立地や物件の状態、共有者の人数などによっても大きく変動します。例えば、都心部の人気エリアにある物件では需要が高いため、相場よりも高く買い取った事例も多くあります。
その一方で、地方の郊外にある物件の場合、共有持分の買取価格は低めになることが多いです。また、共有者の人数も重要な要素です。例えば、共有者が5人以上いる物件の場合、価格交渉が非常に難航することが予測されるため、買取業者はリスクを見越して価格を低めに設定するのが基本です。
とはいえ、前述したように査定額は業者のノウハウや経験によって差が出やすいのも事実です。そのため、正確な金額を把握するには、複数の買取業者に見積もりを依頼して比較することをおすすめします。
買取業者を利用せずに共有状態を解消する方法
買取業者を利用せずに共有状態を解消する方法として、以下の7つが挙げられます。
- 共有者全員で不動産を売却する
- 共有者間で持分を売買する
- 共有者間で持分を無償で贈与する
- 土地を分筆して単独所有にする
- 共有物分割請求訴訟を起こす
- 自分の共有持分を放棄する
- 共有者が持っている不動産と自己持分を交換する
ここからは、それぞれの方法について1つずつ詳しく解説していきます。
共有者全員で不動産を売却する
共有者全員が共有状態の解消を望んでいる場合は、共有者全員が協力して不動産全体を売却してしまうのが最善策です。不動産全体を売却して現金化し、それを持分割合に応じて各共有者に分配することで共有状態を解消できます。
不動産全体で市場に出せば、単独名義の不動産と同様に扱われるため、一般の買い手がつきやすく、市場価格に近い価格での売却が期待できます。
共有者全員の同意が不可欠ではあるものの、売却によって共有物そのものが消滅するため、共有持分に関する将来的なトラブルの種も完全に断絶できるのがメリットです。
利益も現金として1円単位で細かく分割できるため、公平で円満な分割を実現できます。共有状態を解消したい場合は、まず共有者全員と話し合う機会を設け、不動産全体を売却する意思があるか確認してみましょう。
共有者間で持分を売買する
不動産全体の売却が難しい場合は、自分の共有持分を他の共有者に売却することも検討しましょう。不動産を残しておきたい共有者に自分の共有持分を売却すれば、不動産を残しつつ自分は共有名義から離脱できるうえ、まとまったお金を手に入れられます。
共有持分を買い取った側も、持分割合の増加によって不動産の活用幅が広がったり、単独での所有が可能になったりするため、双方にとってメリットが大きい方法といえます。ただし、この方法は不動産を残したい共有者に持分を買い取る意思やまとまった資金がなければ成立しません。
また、共有持分の売買については当事者間で話し合う必要があるため、その際に交渉相手と意見が対立し、売買交渉の難航や関係性の悪化につながる恐れもあります。さらに、共有者間の売買では売主と買主の双方に税負担が生じるため、そのための資金も準備しておく必要があります。
| 税金 |
課税対象者 |
内容 |
税率 |
| 売主が負担する税金 |
譲渡所得税 |
共有持分の売却で課税所得(売却益)生じた場合に、その売却益に対して課される国税 |
所有期間5年超:20.315% 所有期間5年未満:39.63% |
| 買主が負担する税金 |
不動産取得税 |
共有持分を取得した際、その共有持分の固定資産税評価額に対して課される地方税 |
4% ※2027年3月31までは軽減税率の3%が適用 |
| 登録免許税 |
共有持分を所有権移転登記する際、その共有持分の固定資産税評価額に対して課される国税 |
2.0% ※2026年3月31日までは軽減税率の1.5%が適用 |
売買を実現できれば双方にとって大きなメリットをもたらす方法ではありますが、実現までのハードルが非常に高いため、資金力や交渉相手との関係性によっては実現が難しい場合もあります。
共有者間で持分を無償で贈与する
自分の共有持分は売却だけでなく、無償での贈与という形で処分することも可能です。持分を贈与したい共有者から合意を得る必要がありますが、成立すれば不動産の共有名義から離脱できます。
売買とは違って売却益は得られませんが、贈与を受ける側は持分を買い取るためのまとまった資金を用意する必要がありません。そのため、売買よりも合意形成が図りやすく、迅速に手続きを進めやすいメリットがあります。
ただし、共有持分の贈与を受けた共有者は、贈与税が課される可能性があります。贈与税は毎年110万円の非課税枠があるため、贈与された持分の評価額が110万円以下であれば贈与税はかかりません。
しかし、110万円を超える場合は非課税枠を差し引いた超過分に贈与税が課されます。また、持分の無償贈与であっても、売買と同様に新たな所有者には不動産取得税と登録免許税が課税されます。無償贈与を検討する際には、贈与を受ける側の税負担も考慮したうえで話し合いを進めていくことが大切です。
土地を分筆して単独所有にする
建物が建っていない土地の共有状態を解消したい場合は、土地を分筆してそれぞれの土地を単独で所有するという選択肢もあります。分筆とは、登記簿上で1筆の土地を複数の土地に分けて登記する手続きのことです。
共有名義の土地を共有者の人数に応じて複数の土地に分筆した後、所有権移転登記を申請して分筆後の土地をそれぞれ各共有者が単独名義で取得することで、共有状態を解消できます。
これにより、各共有者は自身が取得した土地を自由に活用・売却できるようになります。たとえば、兄(持分割合60%)と弟(持分割合40%)の2人で共有している土地を分筆して共有状態を解消する場合は、6:4の比率で2つの土地に分筆します。
その後、所有権移転登記で60%分の土地を兄の単独名義に変更、40%分の土地を弟の単独名義に変更することで共有状態が解消されます。
ただし、土地の面積や形状によっては、分筆後の土地の価値が大幅に下がったり、公平に土地を分割するのが困難だったりする場合もあります。
実際に、分筆後に土地の面積が小さくなりすぎたことで接道義務を満たせなくなり、再建築不可の土地となってしまった事例もあります。分筆後に売却を考えていましたが、建物が建てられない土地の需要は極めて低いため、買主が見つからず弊社にご相談いただいた次第です。
そのため、土地の分筆を検討している場合は、土地家屋調査士や不動産鑑定士、弁護士などの専門家に相談し、法的な問題や土地の価値への影響を考慮したうえで判断するようにしましょう。
共有物分割請求訴訟を起こす
共有者同士の話し合いで共有状態の解消が難しい場合は、裁判所に共有物分割請求訴訟を起こすことで共有状態を解消できる可能性があります。共有物分割請求訴訟では、裁判所が共有者の主張や経済力、不動産の状況などを考慮し、最も適切な方法によって共有物の分割が命じられます。
裁判所が下す判決には法的な拘束力があるため、共有者全員は判決で命じられた分割方法に従って共有状態を解消しなければなりません。判決で命じられる分割方法としては、「現物分割」「代償分割」「換価分割」の3種類あります。
| 分割方法 |
内容 |
| 現物分割 |
共有不動産を持分割合に応じて物理的に分割する方法 |
| 代償分割 |
共有者の1人が共有不動産を単独名義で取得し、他の共有者に対して持分に相当する金銭を支払う方法 |
| 換価分割 |
共有不動産を競売にかけ、売却代金を持分割合に応じて分配する方法 |
他の共有者と意見が対立している状況でも、裁判所の判決によって強制的に共有状態を解消できます。ただし、共有物分割請求訴訟の判決では、共有者の希望が必ず反映されるとは限りません。
たとえば、訴訟を起こした共有者が現物分割を望んでいたとしても、現物分割が困難だと裁判所が判断した場合は、代償分割または換価分割が命じられます。
さらに、共有物分割請求訴訟まで発展すると結果が出るまでに長い期間を要するうえ、裁判費用や弁護士費用もかかります。
当事者全員にとって精神的・経済的に大きな負担がかかる方法であるため、当事者間ではどうしても共有状態を解消できない場合の最終手段として検討すべきです。
自分の共有持分を放棄する
自分の共有持分は、放棄という形で処分することも可能です。共有持分の放棄は、他の共有者に放棄の意思を伝えた後、持分放棄の登記を申請することで成立します。放棄した共有持分は、民法第255条に基づき、持分割合に応じて他の共有者全員に帰属することになります。
第二百五十五条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
引用元 民法 | e-Gov 法令検索
贈与とは違い、特定の共有者に放棄した共有持分を帰属させることはできません。持分放棄の意思表示は他の共有者の同意なく単独で行えますが、それに伴う登記申請には他の共有者全員の協力が必要になります。
また、共有持分の放棄は他の共有者に共有持分を贈与としたものとみなされるため、放棄した共有持分を取得する共有者に贈与税が課せられる可能性もあるのです。
このように、共有持分の放棄は現金化ができないうえ、他の共有者全員の協力がなければ実現が難しいため、他の対処法ではどうしても共有状態を解消できない場合の最終手段として検討すべきです。
共有者が持っている不動産と自己持分を交換する
他の共有者が共有名義の不動産とは別の不動産を単独で所有している場合は、自分の共有持分とその不動産を交換するという方法もあります。
自分の共有持分をすべて譲渡する代わりに不動産の譲渡を受けることで、共有名義から離脱できるうえ、新たに取得した不動産を単独で所有できます。
たとえば、4,000万円の不動産を兄と弟で2分の1ずつ共有しており、兄がそれとは別に2,000万円の不動産を単独で所有しているとします。この場合、兄が所有する2,000万円の不動産と弟が所有する2,000万円の共有持分を交換することで、兄と弟はそれぞれの不動産を単独で所有できます。
不動産の交換はお互いに不動産を時価で売却し合ったものとみなされるため、売却益が生じる場合は原則として譲渡所得税の申告・納税義務が生じます。しかし、個人同士で同じ種類の建物や土地を交換する場合は、「土地建物の交換をしたときの特例」に基づき、不動産の譲渡はなかったものとみなされるため、譲渡所得税の対象外となるのが基本です。
ただし、「土地建物の交換をしたときの特例」の適用を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 交換によって譲渡する不動産は、1年以上所有していたものであること
- 交換によって取得する不動産は、相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものではないこと
- 交換する不動産はいずれも同じ種類であること(土地なら土地、建物なら建物)
- 交換によって取得する不動産は、譲渡する不動産の交換直前の用途と同じ用途で使用すること
- 交換する不動産の時価の差額が20%以内であること
これらの要件をすべて満たせない場合は、個人間の交換であっても譲渡所得税の対象になります。
まとめ
共有持分の売却では、買取業者・売主・他の共有者が関係するため、それぞれの間でトラブルが発生する可能性もあります。
たとえば、買取業者と売主の間では、「相場より安く買い取られてしまう」「契約後に想定外の費用を請求される」といったトラブルが起こりやすいでしょう。
また、買取業者と他の共有者の間では、「強引な営業が繰り返される」「明け渡しや立ち退きを請求される」などのトラブルも考えられます。
共有持分を売却する上で起こりうるトラブルを極力回避するには、優良な買取業者に依頼することが大切です。買取業者が適切な対応をしてくれれば、売主や他の共有者との間でトラブルに発展しにくくなるでしょう。
優良な買取業者を選ぶには、共有持分と相続物件の買取実績の豊富さや宅地建物取引業の免許の有無、口コミ・評判や現金受け渡しに対応しているかといったポイントを確認することが大切です。
今回ご紹介した買取業者選びのポイントを参考に、複数の業者に見積もりを依頼して比較検討し、安心して任せられる業者を見つけましょう。
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