共有持分を買取業者に売却するとトラブルが起こる?
共有持分を買取業者に売却したからといって、必ずトラブルが起こるわけではありません。
むしろ、権利関係が複雑な共有持分でも、買取業者に依頼すればスピーディーに対応してもらえるという大きなメリットがあります。
しかし、場合によっては以下のいずれかの間でトラブルが生じる可能性がある点に注意が必要です。
買取業者と売主の間で起こるトラブル
|
・相場よりも安い価格で買い叩かれる
・契約後に想定外の費用を請求される
|
買取業者と共有者の間で起こるトラブル
|
・電話・訪問など強引な営業を繰り返される
・賃料・使用料の支払いを求められる
・明け渡しや立ち退きを請求される
・共有物分割請求訴訟を起こされる
|
売主と他の共有者の間で起こるトラブル
|
・関係性の悪化
|
共有状態では権利関係が複雑であるがゆえに、トラブルが起こりやすい不動産といえます。事前にどういった間柄でどのようなトラブルが起こる可能性があるかを知っておくことで、トラブルを回避しやすくなるでしょう。
買取業者と他の共有者の間で起こるトラブル
共有持分は、共有者の合意がなくても単独で売却が可能です。
しかし、この性質上、共有持分を取得した買取業者が他の共有者に対して何かしらの行動を起こすことで、トラブルに発展する可能性があります。ここでは、買取業者と他の共有者の間で起こりうるトラブルをみていきましょう。
電話・訪問など強引な営業を繰り返される
共有持分のみを所有している場合、その不動産を活用することは難しいため、基本的に買取業者は不動産全体を買い取ることで、単独所有しようとします。
そのため、他の共有者の持分も取得しようと、業者から直接売却の営業をかけるケースがみられます。
なかには、断られても強引に営業を繰り返す悪質な買取業者も存在するため、他の共有者との間でトラブルに発展してしまうかもしれません。
不動産取引をスムーズに進めるためには、信頼できる業者を選び、他の共有者との関係を円滑に保つことが非常に重要となります。
賃料・使用料の支払いを求められる
買取業者が共有持分を取得した後に、他の共有者がその不動産を単独で利用している場合、買取業者から賃料や使用料の支払いを求められるケースも存在します。
というのも、不動産を使用していない共有者にも、持分割合に応じた賃料を請求する権利があるためです。
これまで他の共有者が賃料を支払わずに不動産を利用していた場合でも、買取業者が共有者に加わることで、突然賃料の請求を行い、トラブルに発展する可能性がある点に注意しましょう。
明け渡しや立ち退きを請求される
他の共有者が対象の不動産に住んでいる場合、共有持分を取得した買取業者が明け渡しや立ち退きを請求することがあります。
原則として、共有者に対する明け渡し請求は認められていませんが、不動産の利用状況によっては明け渡しが認められるケースもあります。
以下のケースでは、共有者に明け渡し請求ができるため注意しましょう。
- 共有者名義の土地に家を建てようとしているケース
- 共有者全員で決めた使用方法と異なるケース
- 共有持分権の濫用と認められるケース
- 実力行使で共有不動産を占有しているケース
共有物分割請求訴訟を起こされる
共有持分を取得した買取業者が、裁判所に「共有物分割請求訴訟」を提起するケースがあります。
この訴訟は、共有状態を解消するために裁判所の判断を求めるものです。
訴訟となれば、裁判所からの呼び出しや書類の作成など、対応のために時間と手間がかかり、他の共有者にとって大きな負担となります。
また、裁判で強制的に分割することになるため、他の共有者の希望とは異なる結果になる可能性がある点でもトラブルになりやすいでしょう。
これまで挙げたようなトラブルが発生する可能性も考慮して、共有持分を売却する際には、その旨を他の共有者に伝えておくとよいでしょう。
ただし、共有者との関係性や連絡の取りやすさなど、個々の状況によって確実に伝えられるかどうかは異なります。
共有持分の売却は他の共有者の合意なく実行できるため、伝えることは義務ではありませんが、事前に伝えておくことで他の共有者がトラブルを回避しやすくなるでしょう。
買取業者と売主の間で起こるトラブル
共有持分は、専門の買取業者に売却すればスムーズに現金化できる反面、売主自身もトラブルに巻き込まれる可能性があります。
ここでは、買取業者と売主の間で起こりがちなトラブルをみていきましょう。
相場よりも安い価格で買い叩かれる
共有持分は、不動産全体の所有権ではないため、一般的な不動産と比べて需要が少なく、市場価格を把握しにくい側面があります。
この特性につけ込み、相場よりもはるかに安い価格で買い叩こうとする悪質な業者も存在します。相場をよく知らないまま売却を進めると、本来得られるはずの利益を大きく損なう可能性があります。
また、相場よりも安い価格で買い取られてしまうと、他の共有者が共有持分を売却したいとなった場合も、安く買い取られて損をしてしまう恐れがあるため注意しましょう。
契約後に想定外の費用を請求される
契約を締結したあとに、「仲介手数料」や「測量費」「修繕費」などという名目で、事前の説明になかった費用を請求されるケースがあります。
この中でも、よくある手口が「仲介手数料」です。しかし、仲介手数料は一般の買い手に不動産売却が成立した場合に業者に払う成功報酬であるため、買取で発生することはありません。
このようなトラブルを避けるためには、契約を結ぶ前に、契約書の内容を隅々まで確認し、査定価格にどこまでの費用が含まれているかをしっかりと確認することが大切です。
少しでも不明な点があれば、納得のいくまで担当者に説明を求めましょう。
買取業者に共有持分を売却すると売主と他の共有者でトラブルになる可能性がある
買取業者に共有持分を売却する際は、売主と他の共有者との関係が悪化する可能性も考慮しておくべきです。
とくに、他の共有者に相談なく持分を売却した場合、「勝手に業者に売却された」と受け取られ、関係性が一気に悪化することがあります。
また、事前に相談していたとしても、あなたの持分を取得した業者と他の共有者の間でトラブルが発生した場合、「あの人が売却したせいでこんなことになった」と、他の共有者から非難され、関係性が悪化することも考えられるでしょう。
今回ご紹介したトラブルの可能性を考慮して、共有持分を売却する際は、他の共有者に事前に説明しておくことがおすすめです。
共有持分の売却トラブルを避けるための買取業者の選び方
共有持分の売却でトラブルに巻き込まれないためには、信頼できる買取業者を慎重に見極めることが重要です。
ここでは、安心して任せられる買取業者を選ぶためのポイントをご紹介します。
共有持分の買取実績が豊富
買取業者のホームページなどで、過去の共有持分に関する買取実績が豊富にあるかどうかを確認しましょう。
実績が豊富な業者は、これまでの経験から複雑な権利関係にもスムーズに対応できるノウハウを持っています。
対応事例が多いほど、共有持分の扱いにも慣れているため、安心して買取を任せられる可能性が高いといえるでしょう。
一方で、買取実績を掲載していない業者や、そもそもホームページがない業者は共有持分の扱いに不慣れな可能性が高いため、依頼しない選択が無難です。
相続物件についても実績が豊富
共有持分の売却は、相続にともなって発生するケースも少なくありません。
そのため、相続物件についても買取実績が豊富にあるかをあわせてチェックしておくとよいでしょう。
相続に関する専門知識やノウハウがあれば、手続きを円滑に進めてもらえます。
宅地建物取引業の免許を持っている
不動産の買取をおこなうためには、「宅地建物取引業」の免許が必要です。
免許を持っているからといって必ず信頼できるわけではありませんが、免許がない業者は法律に違反している可能性があり、悪質な取引をおこなっている恐れがあるため注意が必要です。
依頼を検討している業者が免許を保有しているかどうかは、国土交通省 の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」のサイトで調べることができます。
とはいえ、宅地建物取引業の免許を持っていることと、その買取業者が信頼できることは別問題です。
免許を持っていても、相場より安く買い取ったり、契約後に想定外の費用を請求してきたりと、悪質な行為がみられることもあります。
そのため、宅地建物取引業の免許を持っていることは大前提の条件として確認する程度にとどめ、そのほかのポイントも併せて優良業者であるかをチェックしましょう。
弁護士と連携している
共有持分の売買では、法律的な問題が発生することもあります。そのため、弁護士と連携している業者を選ぶと、万が一の法的トラブルに備えられ、売却後も安心です。
ホームページなどで、弁護士との連携体制が整っているかどうかを確認しましょう。
ただし、ホームページで弁護士との連携を謳っていたとしても、実際の取引には直接関与することがないケースも少なくありません。
そのため、連携している弁護士が具体的に何をしてくれるのかまで確認することがおすすめです。
買取業者の口コミ・評判が良い
実際にその業者を利用した人の口コミや評判は、信頼性を見極めるうえで重要な情報です。対応の丁寧さや、これまでのトラブルの有無などを知るのに役立ちます。
口コミは買取業者のホームページだけでなく、Web上で検索して確認することも必要です。
Webで「買取業者名 口コミ」「買取業者名 評判」などと検索すれば、多くの第三者的な口コミ・評判が確認できます。
ただし、口コミサイトによっては、サクラの書き込みや過度に悪意のある書き込みがされている場合もあるため、複数のサイトで総合的に判断するようにしましょう。
担当者の対応が丁寧
問い合わせをした際の担当者の対応も、信頼性を判断するうえで大切な要素です。
こちらの質問に対して誠実かつ丁寧に答えてくれるか、説明がわかりやすいかをチェックしましょう。
対応が雑だったり、質問に対してあいまいな返答を繰り返したりする場合、後々トラブルにつながるリスクもあるため、依頼しない方が賢明です。
国土交通省のネガティブ情報検索サイトをチェックする
過去に行政処分を受けたことがある業者は、要注意です。
国土交通省のネガティブ情報等検索サイトでは、業者の過去の行政処分歴を確認できます。
依頼を検討している業者については、必ずこのサイトで処分歴がないか、ある場合はどのような処分を受けたのかを確認しましょう。
国土交通省:ネガティブ情報検索サイト
現金での受け渡しに対応している
代金の支払い方法も、トラブルを避けるために確認しておくべきポイントです。
悪質な業者の中には「小切手で支払う」といって、換金できないような小切手を渡そうとする場合があります。
小切手は信用の高い有価証券の一つですが、当座預金口座に現金がないと決済できず、不渡りとなります。
この場合、現金が支払われることなく、物件だけが奪われてしまうことになるのです。
一般的に、不動産取引では銀行振込が一般的であるため、小切手での支払いを提案された場合は取引しないのが無難です。
銀行振込など現金での受け渡しに対応している業者を選ぶようにしましょう。
移転登記と代金の受け渡しを同時におこなえる
移転登記(名義変更)を行った後に代金を支払うという業者には注意が必要です。この場合、物件を騙し取られるリスクがあります。
安全に取引を進めるためには、移転登記と売却代金の受け渡しを同時に対応してくれる業者を選ぶことが重要です。
もし、取引の途中に「移転登記と現金の受け渡しは同時に行えない」とスケジュールの変更を申し出てきた場合には、「他の業者に依頼する」などして、強気に反対することも検討しましょう。
複数の買取業者で見積もりを取る
1社だけで即決せず、複数の買取業者に見積もりを依頼して比較検討することも大切なポイントです。
複数社から見積もりを取ることで、相場を把握しやすくなるだけでなく、より高額な買取価格を提示してくれる業者を見つけられる可能性が高まります。
基本的に見積もりや査定は無料のため、複数の買取業者をピックアップして見積もり・査定を依頼してみましょう。
共有持分を買取業者に売却するメリット
共有持分の売却は、買取業者に依頼することで多くのメリットを得られます。
ここでは、主なメリットを4つご紹介します。
- 短期間での現金化が可能
- 仲介手数料がかからずコストを抑えられる
- 契約不適合責任が免責される契約が結べる
- 他の共有者に知られるリスクが低い
短期間での現金化が可能
共有持分は活用が難しいため、不動産市場での需要が少なく、買い手が見つかりにくい不動産です。
そのため、不動産仲介で売却する場合は、買主が見つかるまでに長時間かかることも珍しくありません。
しかし、買取業者に依頼すれば、お互いが条件に納得した場合に短期間で売買契約を結べるため、スピーディーに現金化できます。
短期間で現金化が可能な点は、買取業者の大きなメリットでしょう。
仲介手数料がかからずコストを抑えられる
不動産仲介を利用する場合、売却が成立すると仲介手数料が発生します。
一方、買取業者に直接売却する場合は、仲介手数料がかからないため、コストを抑えられます。
なお、仲介手数料は、売却価格に応じて以下のように計算できます。
売却価格
|
仲介手数料
|
400万円超
|
(売却価格×3%+6万円)+消費税
|
200万円超〜400万円以下
|
(売却価格×4%+2万円)+消費税
|
200万円以下
|
(売却価格×5%)+消費税
|
共有持分の売却価格が大きいほど、発生する仲介手数料も高額になります。
買取業者であれば仲介手数料がかからないため、手元に残るお金も大きくなるのはメリットです。
契約不適合責任が免責される契約が結べる
売却した不動産に、契約書に記載されていない不具合があった場合、売主は買主に対して「契約不適合責任」を負う必要があります。
【契約不適合責任とは】
売買契約で引き渡された不動産が、契約内容と違っていた場合に売主が負う責任のこと。
契約不適合責任が適用されてしまうと、売主は損害賠償請求や契約解除などの責任を負うことになります。
しかし、買取業者に売却する場合は、契約不適合責任を問わないという契約を結ぶのが一般的です。
そのため、売主は売却後のリスクを心配する必要がなくなります。
他の共有者に知られるリスクが低い
不動産仲介会社に売却を依頼した場合、買主を見つけるために広告を掲載するため、他の共有者に売却したことを知られてしまうリスクが高まります。
しかし、買取業者なら直接の買取になるため、売却完了まで他の共有者に知られる可能性は低いといえるでしょう。
すでに他の共有者との関係性が悪く、知られずに共有持分を売却したいという場合には買取業者がおすすめです。
買取業者を利用せずに共有状態を解消する方法
買取業者に売却する方法以外にも、共有状態を解消する方法はいくつかあります。
ここでは、買取業者を利用せずに共有状態を解消する方法をご紹介します。
- 共有者全員で不動産を売却する
- 共有者間で持分を売買する
- 共有者間で持分を無償で贈与する
- 土地を分筆して単独所有にする
- 共有物分割請求訴訟を起こす
- 自分の共有持分を放棄する
- 共有者が持っている不動産と自己持分を交換する
共有者全員で不動産を売却する
もっともシンプルでわかりやすい方法が、共有者全員で不動産を売却し、現金化する方法です。
共有者全員が不動産全体を売ることに同意すれば、売却益を共有持分割合に応じて分け合うことができます。
全員の合意が不可欠ですが、全員が不動産を手放したいと考えている場合に有効です。
共有者間で持分を売買する
共有持分を不要と考えている場合、他の共有者に買い取ってもらう方法があります。
逆に、自分が他の共有者の持分を買い取ることで、不動産を単独名義にすることも可能です。
この方法であれば、不動産全体を売却することなく、特定の共有者が不動産を所有し続けることができます。
共有者間で持分を無償で贈与する
共有者が家族関係にある場合、無償で共有持分を贈与するという選択肢もあります。
この方法を使えば、贈与された人が単独名義で不動産を所有できます。
ただし、贈与された側には贈与税が発生する可能性があるため、事前に税務署や税理士に相談すると安心です。
土地を分筆して単独所有にする
共有不動産が土地の場合、物理的に土地を分割(分筆)し、それぞれの単独所有にする方法です。
これにより、共有者それぞれが自身の所有する土地を自由に活用できるようになります。
ただし、土地の面積や形状によっては分筆できない場合もあるため注意が必要です。
共有物分割請求訴訟を起こす
話し合いで共有状態の解消が難しい場合、共有物分割請求訴訟を起こすことで、裁判所の判断によって強制的に共有状態を解消することができます。
裁判所が分割方法を決定するため、必ずしも希望通りの結果になるとは限らない点に注意が必要です。
共有物分割請求訴訟は対応の手間と時間がかかる方法であるため、最終手段として検討しましょう
自分の共有持分を放棄する
自分の共有持分を放棄することで、共有状態を解消する方法です。
放棄された持分は、他の共有者に帰属することになります。
ただし、放棄には所有権移転登記が必要であり、この手続きには他の共有者の協力が必要です。一方的な放棄は難しいため、事前に他の共有者との話し合いが求められます。
共有者が持っている不動産と自己持分を交換する
共有者が他に不動産を所有している場合、自己の共有持分と相手が所有する別の不動産を交換するのも一つの方法です。
これにより、両者がそれぞれ単独で不動産を所有できます。
交換する不動産の評価額に差がある場合、譲渡所得税の対象となる可能性があるため、税金面も考慮して慎重に進める必要があります。
共有持分を買取業者に売却する際の相場
共有持分のみを売却する場合、不動産全体を売却するよりも市場価格が安くなるケースがほとんどです。
買取業者に売却する場合の相場は、「市場価格×持分割合×1/2~1/3」といわれますが、これはあくまで目安です。
実際の売却価格は、不動産の立地や物件の状態、共有者の人数などによっても大きく変動します。
正確な金額を知るには、複数の買取業者に見積もりを依頼して比較することが有効です。
まとめ
共有持分の売却では、買取業者・売主・他の共有者が関係するため、それぞれの間でトラブルが発生する可能性もあります。
たとえば、買取業者と売主の間では、「相場より安く買い取られてしまう」「契約後に想定外の費用を請求される」といったトラブルが起こりやすいでしょう。
また、買取業者と他の共有者の間では、「強引な営業が繰り返される」「明け渡しや立ち退きを請求される」などのトラブルも考えられます。
共有持分を売却する上で起こりうるトラブルを極力回避するには、優良な買取業者に依頼することが大切です。買取業者が適切な対応をしてくれれば、売主や他の共有者との間でトラブルに発展しにくくなるでしょう。
優良な買取業者を選ぶには、共有持分と相続物件の買取実績の豊富さや宅地建物取引業の免許の有無、口コミ・評判や現金受け渡しに対応しているかといったポイントを確認することが大切です。
今回ご紹介した買取業者選びのポイントを参考に、複数の業者に見積もりを依頼して比較検討し、安心して任せられる業者を見つけましょう。
訳あり不動産の売却でお悩みなら
今すぐご連絡ください
- 北海道・東北
-
- 関東
-
- 東海
-
- 関西
-
- 北陸・甲信越
-
- 中国・四国
-
- 九州・沖縄
-