最低敷地面積の土地を分筆するということは、最低敷地面積を下回ることになり、原則として建物を建築できなくなることを意味します。
最低敷地面積は全国一律ではなく、各市区町村が用途地域や地区計画などの都市計画に基づいて個別に定めています。そのため、まずは自治体のホームページや窓口、電話などで、自身の土地にどのような規制がかかっているのかを確認します。
そして、分筆前に「今後その土地に建物を建てる予定があるか」「将来的に売却する可能性があるか」といった観点を事前に整理しておくことも重要です。
これらに該当する場合、安易に分筆してしまうと「建てられない・売れにくい」という状況に陥る可能性があります。
弊社でも、「相続した土地を分けて売却しようとしたものの、分筆後に建築不可となってしまった」というご相談をいただくことがあります。特に、土地の利用や建築の条件を定める都市計画上のルールまで十分に確認されていなかったケースは、実務上でも少なくありません。
まだ分筆していない場合は、「分筆後もそれぞれの土地が建築可能か」という観点で確認し、今後の土地の使い道から判断するのが、トラブルを未然に防ぐ方法です。
もしも、最低敷地面積の土地を分筆してしまうと、売却は困難になります。ただし、売却が不可能になるわけではありません。最低敷地面積の土地を分筆してしまった場合、以下のような対処方法があります。
本記事では、最低敷地面積の基本的な考え方から分筆時の注意点、分筆後に基準を下回ってしまった場合の現実的な売却方法まで、実務の視点も踏まえて解説していきます。
最低敷地面積の土地を分筆してしまうと売却は困難になる
最低敷地面積とは、建物の規模によらず建物を建てるときに必要な、最低限の敷地面積のことです。敷地面積の最低限度ともいわれます。
最低敷地面積は全国一律で決まっているわけではありません。基本的に市区町村単位で都市計画(用途地域や地区計画など)により決められています。
たとえば、福岡県福岡市の場合、市街化区域であれば165㎡、市街化調整区域であれば200㎡とされています。また、埼玉県さいたま市においては、敷地面積の最低限度を100㎡としており、地域によって異なることが伺えます。
参考:
さいたま市「建築物の敷地面積の最低限度」
福岡市「よくある質問」
もしも、最低敷地面積を下回る形で土地を分筆してしまうと、原則として建物を建築できないので買主が付きにくくなり、売却が難しくなる傾向があります。
建築物の敷地面積は、用途地域に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められたときは、当該最低限度以上でなければならない。
引用:建築基準法53条の2
最低敷地面積よりも小さい土地には建物を建築できない
結論から申し上げますと、最低敷地面積を満たしていない土地には、原則として建物を建築できません。
極端な話ですが、最低敷地面積から0.1㎡程度の差であっても、基準を下回れば建築不可と判断されるのが基本的な取り扱いです。建物が建てられない土地は、駐車場や資材置き場など用途が限定されます。
また、一般の住宅購入者は建物を建築して居住・利用することを目的としているため、需要が大きく下がります。その結果、仲介での売却は長期化しやすく、価格も伸びにくいのが実情です。
なお、既に建物が建っている土地を最低敷地面積未満となるように分筆した場合、行政から是正指導を受ける可能性があります。実務上も、このような分筆はトラブルの原因になりやすいため、安易に進めるべきではありません。
当社の現場感としても、「分筆すれば売りやすくなる」と考えて手続きを進めた結果、かえって売却の選択肢を狭めてしまうケースは一定数存在します。分筆の可否や影響については、事前にしっかりと確認したうえで判断することが重要です。
最低敷地面積の適用が除外される例外
最低敷地面積の制限が定められている区域では、基準に満たない土地には建物を建築できないのが原則です。
もっとも、すべてのケースで一律に建築不可となるわけではありません。法令制定前から最低敷地面積未満であった場合は、「既存不適格」として一定の条件下で建築が認められる場合があります。
最低敷地面積の制度は、2000年(平成12年)の建築基準法改正により導入され、その後は各自治体の条例によって具体的な基準や適用時期が定められています。そのため、上記の「一定条件下」においては、各自治体の対応を確認する必要があります。
たとえば、東京都江戸川区では以下の条件に該当する土地を「適用除外規定」とし、最低敷地面積の土地でも建築を認めています。
- 平成16年6月23日以前から、70㎡未満の敷地を建築物の敷地として継続して利用している場合
- 平成16年6月23日以前から、70㎡未満の敷地で建築可能な状態の土地を所有しており、その後に分筆等による変更がない場合
引用:江戸川区「建築基準法による敷地面積の最低限度の制限(最低敷地面積の制限)」
ただし、新しく土地を分筆する場合には、最低敷地面積が適用されるので注意してください。
なお、次の場合においても、条例施行後、最低敷地面積以下であっても建物を建築できるケースがあります。
- 公衆便所や巡査派出所などの公益上必要な建築物
- 敷地の周囲に広い公園や広場、道路などがあり、特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認めて許可した建築物
- 特定行政庁が用途上または構造上やむを得ないと認めて許可した建築物
参考:建築基準法「第五十三条の二(建築物の敷地面積)」
もっとも、2や3のように特定行政庁の許可が必要となるケースは、実務上はハードルが高く、一般的な住宅用途で認められることは多くありません。
最低敷地面積の調べ方
最低敷地面積は自治体がそれぞれ独自に定めており、情報は市区町村のホームページ上や都市計画図、市役所の窓口にて確認できます。
なお、最も手軽に調べられるのは検索エンジンで「(市区町村名) 最低敷地面積」「(市区町村名) 敷地面積の最低限度」というキーワードで検索する方法です。
例えば「練馬区 最低敷地面積」と検索すると「用途地域(建ぺい率、容積率、高さの制限、敷地の最低限度等)」という練馬区のホームページが見つかります。
参照:練馬区ホームページ
なお、最低敷地面積の記載方法は、各自治体のホームページによって異なるため、中には表示内容が難しいケースも少なくありません。また、インターネットで検索してもわからないときには、「ホームページ上で公開していないだけ」という可能性もあります。
このような場合には、自治体の都市計画課などへ電話したり、窓口で確認したりするのが確実です。
最低敷地面積の緩和が実施されている市区町村もある
市区町村の中には、独自に最低敷地面積の規定を緩和しているところもあります。
そのため、最低敷地面積を調べるときには、「原則の基準」だけでなく「緩和規定も定められていないか」についても調べることをおすすめします。
ただし、緩和規定はあくまで個別条件に基づく判断となるため、必ずしも自由に分筆できるわけではありません。とはいえ、緩和規定がわかれば、分筆できないと思っていた土地も分筆できる可能性があるので、調べる価値はあります。
分筆してしまった最低敷地面積以下の土地の売却方法
これまで説明した通り、最低敷地面積の土地を分筆してしまうと、需要が限定されるので売却が難しくなる傾向があります。建物が建てられないことから買主が見つかりにくいだけでなく、売却価格も相場価格より低くなりやすいのが実情です。
しかし「既に最低敷地面積よりも小さく分筆してしまった」というケースでも、売却自体が不可能になるわけではありません。
以下3つの方法であれば、最低敷地面積を分筆してしまった場合でも、売却できる可能性があります。
隣地の所有者に売却する
最低敷地面積未満の土地は、単独だと建築利用が難しい一方で、隣地の所有者にとっては利用価値が生まれるケースがあります。
隣地所有者が自身の土地と一体の敷地として利用することで、1つの土地として最低敷地面積を満たせる可能性があるためです。
例えば、敷地を拡張することで建ぺい率や容積率の範囲内で建物を建てたり、離れや物置、車庫などに利用できたりと用途の幅が広がります。
実務上も、こうした土地は第三者よりも隣地所有者の方がニーズが明確であるため、交渉がまとまりやすい傾向があります。
弊社にも「最低敷地面積未満の土地がなかなか売れない」というご相談をいただきますが、その回答として「まずは隣地へ打診してみる」方法を提案するケースが多く、結果として比較的スムーズに売却に至るケースもあります。
隣地を買い取り最低敷地面積の制限を満たしたあとで売却する
隣地の所有者から敷地を全部または一部買取することで、最低敷地面積の指定面積を満たす方法です。この方法であれば、通常の住宅用地として市場に流通させやすくなるため、仲介での売却も現実的な選択肢になります。
ただし、隣地の買取を検討するときは最低敷地面積だけでなく、建築基準法で定められた容積率や建ぺい率、接道義務などすべての建物に関する規定を満たすことを確認することが大切です。
実務においても「面積は満たしたものの接道条件を満たしておらず建築不可だった」といったケースは珍しくありません。こうした判断には法律・条例に関する専門知識が必要になるので、建築士や不動産会社などの専門家に依頼するのが最適です。
訳あり物件専門の買取業者に売却する
早期売却を優先する場合は、訳あり不動産を専門とする買取業者へ売却する方法も選択肢のひとつです。
仲介での売却は「建築できない」という制約から買主が限定され、長期化しやすい傾向があります。一方で、買取業者であれば不動産の制約を前提に、「建築以外の用途で活用できるか」などの観点でも取得を検討するため、比較的早く売却できる可能性があります。
「家が建てられない小さな土地を買い取ってどうするのか?」と疑問に思われるかもしれませんが、訳あり物件の専門業者は、そうした土地を「バイク専用駐車場」「自動販売機やコインロッカーの設置スペース」「トランクルーム」「近隣工事の資材置き場」など、建物を必要としないニッチな用途で収益化するノウハウを豊富に持っています。
だからこそ、一般市場では売れない土地でも、一定の価値を見出して取得を検討できるのが特徴です。
もっとも、買取は再販リスクや利用制限を前提とした価格設定になるため、一般的には仲介での売却よりも価格は低くなるのが実情です。
弊社にも「まず仲介で一定期間売り出したが反響が乏しく、買取の見積もりを取りたい」というご相談をいただきます。その際は、売却活動の経緯や周辺の取引事例を踏まえつつ、条件整理を行ったうえでそのまま買い取らせていただくケースもありました。
実務上は、最初から買取一択で進めるというよりも「仲介での可能性を探りつつ、状況に応じて買取も検討する」という形で進める方が、結果として納得感のある売却につながるケースが多い印象です。
売却価格とスピードのバランスを見ながら、自身の状況に合った方法を選択することが重要です。
まとめ
結論から申し上げると、最低敷地面積を下回る形で分筆してしまうと、原則として建物を建築できません。そのため、売却する際には建築を前提とする方の選択肢から外れてしまい、売却が難しくなる傾向があります。
そのため、分筆を検討する段階で「分けた後も建築可能か」という視点を持つことが重要です。面積だけでなく、接道条件や用途地域、地区計画なども含めて事前に確認しておくことで、将来的な売却リスクを避けやすくなります。
すでに最低敷地面積を下回る形で分筆してしまった場合は、隣地所有者への売却や、条件を踏まえた買取といった選択肢があります。