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お寺の土地取得・活用時にかかる税金の基礎知識!宗教法人が支払うべき税金は?

近年、お寺の平均収入が減少傾向にあることから、お寺の土地を不動産として活用するケースが増えています。

そして、お寺は例外的に固定資産税が課せられません。

しかし「お寺の土地は無条件で税金が課税されない」という訳ではなく、非課税対象と認められずに税金が課税されるケースもあります。

お寺のある土地の税金を非課税にするには、自治体への申請が必要です。

お寺の土地を不動産として活用したいなら、まずは不動産業者や弁護士といった専門家に相談することをおすすめします。

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お寺の税金に関する基礎知識

「坊主丸儲け」といわれますが、実際には「お坊さん(宗教法人)だからすべてが非課税対象」というわけではありません。

例えば、法人職員に給料を支払うと源泉所得税を納める必要がありますし、住職・僧侶などの役員報酬・給料にも所得税がかかります。また、宗教法人のおこなう事業所得が課税対象となる場合も珍しくありません。

次の項目から宗教法人の税金における基本的なルールについてわかりやすく解説します。
ちなみに、宗教法人の税金に関する詳細は国税庁が毎年発刊している手引き書でも確認できます。

参照:国税庁「宗教法人の税務(令和6年度版)」

宗教活動は非課税

営利事業をおこなうために設立された一般法人は「法人税」「所得税」「消費税」「地方税(道府県民税・市町村民税・事業税)」「資産税(固定資産税・登録免許税)」などを納める義務があります。

しかし、宗教法人の場合「公益法人」という扱いになるため税金面で大きく優遇されています。税金の優遇措置は以下の通りです。

法人税:収益事業以外は非課税
所得税:宗教法人が受け取る利子・配当は非課税
地方税:収益事業以外は非課税
消費税:宗教活動による収入は非課税
資産税:境内建物および境内地は宗教活動に必要なものであれば非課税

このように「営利目的の事業・活動ではない(公益事業である)」とみなされた場合は原則として非課税です。次の項目からは課税対象となる収益事業について詳しく解説します。

課税対象になる収益事業

宗教法人、宗教活動・宗教行事以外にも関係・付随する事業をおこなっている場合もあるでしょう。ただし、これらの関連事業・付随事業は納税義務が生じる可能性もあることに注意しなければなりません。

宗教法人だとしても以下の34事業を継続的におこなうと「収益事業」といしてみなされ課税対象となることがあります。

・物品販売業 ・写真業 ・美容業 ・不動産販売業 ・席貸業 ・興行業
・金銭貸付業 ・旅館業 ・遊技所業 ・物品貸付業 ・料理店業その他の遊覧所業
・不動産貸付業 ・飲食店業 ・医療保健業 ・製造業 ・周旋業 ・技芸教授業
・通信業 ・放送業 ・代理業 ・駐車場業 ・運送業 ・運送取扱業 ・仲立業
・信用保証業 ・倉庫業 ・問屋業 ・無体財産権の提供業
・請負業(事務処理の委託 鉱業 労働者派遣業を受ける業を含む)
・土石採取業 ・印刷業 ・浴場業 ・出版業 ・理容業

しかし、宗教活動として上記の事業をおこなったのであれば非課税対象となるため、それぞれの個別事業ごとに「収益事業判定」が実施されるケースもあります。

宗教法人がおこなった事業に対する収益事業判定のを国税庁が示している例にしたがって解説します。

物品販売業

物品販売業は収益事業のひとつとされていますが「お守り」「お札」「おみくじ」などの販売事業は収益事業に該当しない場合があります。なぜなら、売価と仕入原価の差額を加味した上で営利目的ではなく喜捨金(お布施)の一種であると認められた場合、物品販売は収益事業には該当しないと考えられるからです。

また、線香やろうそく、供花などのような参詣に関する物品における販売は、価格によって収益事業に該当するか否かが判断されます。

ただし、通常の商店などでも販売されているような物品(キーホルダー、陶器、はがき、箸、鉛筆など)を一般市場価格で販売している場合、収益事業とみなされるケースが多いです。

お寺や神社でおこなわれる結婚式

「神前結婚式」や「仏前結婚式」は宗教活動の一部と認められるため、非課税対象の事業となります。

ただし、挙式後の披露宴における「席貸料」「飲食費」「衣装等の貸し付けや着付け」「記念写真の撮影」などは収益事業となるので課税対象となります。

保育園や幼稚園の経営

お寺や神社が保育園や幼稚園を経営していることも珍しくありません。宗教法人による保育園や幼稚園などの経営自体は非課税対象の事業となります。

例えば「保育料」「入園料」「入園検定料」「施設設備料」などの収入は課税対象になりません。

しかし「制服」「制帽」「ノート」「筆記用具」などの販売利益は収益事業に含まれるため、課税対象となることに注意しましょう。

お寺が土地を取得したときにかかる税金

お寺を営むためには「境内地」を確保する必要があるため土地の取得が必須です。また、参拝客・檀家の来訪に備えて新たに駐車場用地を確保したいと考えているケースもあるかもしれません。

一般の個人・法人が土地を取得した際には「不動産取得税」「登録免許税」を納税する必要があります。

一方で、お寺や宗教法人が土地を取得したケースでは納める必要があるのでしょうか。納税義務の有無について次の項目から解説します。

不動産取得税

基本的に売買・贈与によって不動産を取得すると「不動産取得税」という地方税を納付する必要があります。不動産取得税は不動産の取得後にそれぞれの都道府県から送付される「納税通知書」を使用して金融機関で納付します。

しかし、宗教法人が不動産を取得した場合、その土地が「宗教法人法第3条」によって規定されている境内建物や境内地のために使用されるのであれば不動産取得税が非課税となります。(地方税法73条の4第2項)

宗教法人法第3条によって規定されている境内建物や境内地は以下の通りです。

一 本殿、拝殿、本堂、会堂、僧堂、僧院、信者修行所、社務所、庫裏、教職舎、宗務庁、教務院、教団事務所その他宗教法人の前条に規定する目的のために供される建物及び工作物(附属の建物及び工作物を含む。)
二 前号に掲げる建物又は工作物が存する一画の土地(立木竹その他建物及び工作物以外の定着物を含む。以下この条において同じ。)
三 参道として用いられる土地
四 宗教上の儀式行事を行うために用いられる土地(神せん田、仏供田、修道耕牧地等を含む。)
五 庭園、山林その他尊厳又は風致を保持するために用いられる土地
六 歴史、古記等によつて密接な縁故がある土地
七 前各号に掲げる建物、工作物又は土地の災害を防止するために用いられる土地出典:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=326AC0000000126#11、電子政府の総合窓口「宗教法人法第3条」

したがって、境内地や本堂・納骨堂・参拝者(檀家来訪)用の駐車場用地として不動産を取得した場合、不動産取得税は非課税となります。

また、宗教法人(学校法人)が保育園・幼稚園などの用地として不動産を取得した場合や、墓地のために土地を取得した(個人の場合も含む)場合も、不動産取得税は非課税となります。

参照:電子政府の総合窓口e-Gov「地方税法73条の4(用途による不動産取得税の非課税)」

登録免許税

不動産を取得した場合、不動産の登記名義を変更するための手続き(所有権移転登記手続き)をおこなう必要があります。この登記手続きの手数料として「登録免許税」を納付しなければなりません。

登録免許税の金額は取得した不動産の課税評価額に応じて算出されます。しかし、宗教法人が不動産を取得する際、以下の条件を満たせば登録免許税が非課税となります。

  • 宗教法人法第3条に規定する境内建物の所有権の取得登記または境内地の権利の取得登記である場合
  • 宗教法人が設置運営する学校・保育所・幼稚園の校舎等の所有権における取得登記である場合
  • 校舎敷地、学校などの運動場、実習用地などの教育に関わる土地の権利における取得登記である場合

また、墳墓地を取得した場合の登記手続きの登録免許税も非課税となります(個人の場合でも非課税)。

参照:電子政府の総合窓口e-Gov「登録免許税法4条別表3の12」

お寺の土地の固定資産税

不動産の所有者は固定資産税を毎年納付する義務があります。しかし、宗教法人であれば以下の要件を満たすことで固定資産税は非課税となります。(地方税法348条)

  • 宗教活動のための境内建物および境内地
  • 宗教法人が設置する幼稚園や学校などにおいて保育や教育に必要な固定資産
  • 宗教法人が設置する博物館において必要な固定資産
  • 墓地

ただし、上記の要件を満たす場合も、非課税が適用されるには必ず自治体に申告しなければなりません。

参照:電子政府の総合窓口e-Gov「地方税法348条」

固定資産税を非課税にするためには申告が必要

お寺が所有する土地・建物の固定資産税を非課税にしてもらうためには「自治体での手続き」が必要です。なぜなら、それぞれの不動産が非課税要件を満たしているか(宗教活動のために利用されているか)を確認する必要があるからです。

固定資産税を非課税にしてもらうための手続きは市区町村の自治体でおこないます。所定の申請書の他に以下の必要書類の提出を求められることもあります。

  • 宗教法人の法人規則
  • 役員会議事録
  • 売買契約書
  • 登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 公図
  • 住宅地図(現地の案内図)
  • 不動産の平面図
  • 境内地の建物配置図、間取り図
  • 現地の写真

法人規則は運営が適切であるかを確認するために大切に保管しなければなりません。もし紛失してしまった場合、お寺の所轄庁に相談して、規則や認証書の謄本交付を受けましょう。

また土地購入の事実を証明するため、土地購入に関する議題が記載された役員会議議事録をコピーしておくことも大切です。

それ以外の必要書類における取得方法や紛失してしまった場合の対処法については、以下の記事でくわしく解説しているので参考にしてください。

参照:東京都主税局「固定資産税・都市計画税 申請様式」

お寺の土地を活用するときの税金について

近年のお寺は経営が大変というところも増えています。少子化・過疎化などを理由に檀家が減少し、宗教行事をおこなわない人も増えたことによりお布施が集まらない傾向にあるからです。

また、宗派・宗教不問の民間墓地や利便性を重視してビル型納骨堂のような新しいタイプのお墓を選択する人、お墓を持たずに散骨する人も増えています。

そのため、お寺が保有する余剰敷地を上手に活用して、収入が減ってしまった分を補填しようと考えているお寺も増加しているようです。

しかし、お寺の土地を宗教行為以外の目的で活用すると、収益事業とみなされ課税対象となるため注意しなければなりません。お寺の土地における主な活用方法は以下が考えられます。

  • 駐車場として利用する場合
  • 他人に貸し出す場合
  • お寺の土地に住宅を建築した場合

上記のようにお寺の土地を活用する際は課税の対象となるのかを把握しておく必要があります。

次の項目からそれぞれの活用法において課税対象となるのかについてわかりやすく解説していきます。

駐車場として利用する場合

お寺の駐車場は以下の条件を満たすものであれば非課税対象となります。

  • 参詣者用の駐車場である(参詣者用の駐車場であることが看板などで明示されている)
  • 参詣者の実数に適した駐車場である(広すぎる駐車場は課税対象となる可能性がある)
  • 駐車場を設置する必要性がある(境内地の外に駐車場を設置する場合)
  • 境内地から近いこと
  • 無料である

一方で、お寺の土地の利用していない部分をコインパーキングのような「有料駐車場」や「月極駐車場」として活用すると、収益事業による収入として所得税や法人税を課税される場合もあります。

また、宗教活動以外の駐車場として利用している土地については固定資産税も負担しなければならなくなります。

他人に貸し出す場合

古くからあるお寺の場合、境内地以外にも広大な土地を所有しているケースも珍しくありません。活用していない土地があるとしたら他人に貸し出そう考えることもあるかもしれません。

ただし、お寺が所有している土地だとしても、他人に貸し出すことで課税対象となる場合もあるので注意が必要です。

次の項目から土地の貸付において非課税になるケースとならないケースについて説明します。

墓地の貸付は非課税になる

宗教法人による墓地の貸付は前の項目で説明した課税対象となる「不動産貸付業」の規定から除外することが法人税法第5条で定められています。不動産貸付業という収益事業に該当しないため、課税対象にもなりません。

そのため、お寺や宗教法人が墓地を貸し付けた際、永代供養料などの収入は非課税とされます。

また、国や地方公共団体に対して土地を直接貸した場合にもその賃料などは非課税となります。不動産貸付業に該当しない貸付行為を詳しく知りたいという人は以下のリンクを参照するとよいでしょう。

参照:電子政府の総合窓口「法人税法第5条」

地代の金額によっては課税対象の場合がある

お寺が使っていない土地を檀家などの住居を建てるための底地として貸し付ける場合も、原則的には非課税となります。

ただし、土地の賃料(地代)が高額であるときには「事業性のある貸付け」とみなされる可能性があることに注意しなければなりません。

実務上、土地の貸付けを非課税にしてもらうためには、地代が「敷地面積にかかる固定資産税と都市計画税の合計額の3倍」以下でなければいけません。加えて、以下の建築条件を満たす建物が建てられていないと認められません。

  • 建物の床面積の2分の1以上が居住用であること(マンション・アパートでも可)
  • 建物の用途が別荘ではないこと
  • 敷地(お寺が貸す土地)の面積が建物の床面積の10倍以下であること

これらを満たした上で土地の貸付けよる収入を非課税にしてもらうためには、収益事業に該当しないことを認めてもらう必要があります。

そのため、「判定台帳」を作成し役所に提出して収益事業判定を実施してもらうことが大切です。

判定台帳の作成は一般の人には面倒・複雑と感じることが多いので、税理士などの専門家に相談・依頼するとよいでしょう。

土地に住宅を建築した場合

利用していないお寺の土地に住宅など宗教行為に関係のない建物を建てるときには注意が必要です。「お寺の土地は私の家の土地」と思い込んで建物を建てると、後に税務上のトラブルの原因となってしまいます。

次の項目では、お寺の土地に自宅を建てた場合と賃貸物件を建てた場合について、課税の有無を解説していきます。

お寺の土地に自宅を建てた場合

お寺の土地を持て余している場合「住職(宗教法人の役員)の自宅を建てる」ことを考える人もいるかもしれません。また「寺を継いでもらう人のために自宅を建ててあげたい」と考えることもあるかもしれません。

しかし、お寺(宗教法人)が所有している土地はあくまでも「宗教法人の財産」であって、その責任役員(会社でいえば代表取締役)である住職やその家族の私的な財産ではありません。

そのため、宗教法人の土地を「役員住宅名義」で利用すると、脱税行為とみなされてしまい税務署から警告を受けてしまうケースがあります。

どうしてもお寺の土地に「境内や社務所とは別に」住職自身や家族の自宅を建てたいという場合は「宗教法人から適切な賃料で借りる」「適切な価格で買い取る」といった措置が必要です。

また、本堂・社務所とは別に自宅用の建物を住職に無償供与すると、家賃相当額が住職の給与とみなされお寺に源泉徴収税の納税義務が発生することもあります。

お寺の土地に賃貸建物を建てた場合

お寺の土地にアパート・マンションなどを建てて賃貸に出した場合、収益事業として定められている「不動産貸付業」に該当するため課税対象となります。また、貸しビル業・テナント業についても同様です。

前の項目でも説明したようにお寺が課税対象の事業をおこなった場合、その収益に応じて法人税などの各種税金を納付しなければなりません。

お寺の土地活用や税金問題は専門家に相談しよう

専門家

お寺が所有する土地を宗教活動以外の用途で活用すると「収益事業」と判定される可能性が高いといえます。

収益事業をおこなっている宗教法人は法人税や地方税などの納税義務が生じるだけでなく、宗教事業(非課税対象事業)と収益事業(課税対象事業)との経理を区別しなければならないなど、事務負担も増大します。

したがって、お寺がおこなう事業の規模によっては、営利事業目的の別法人を設立した方がトータルのコストを節約できるという場合もあるでしょう。

お寺の税金問題は思い込みや誤解が原因でトラブルとなることも少なくありません。税務調査に入られたことが周辺に知れ渡るとお寺の評判も下がり、檀家離れなどの悪影響を招いてしまうかもしれません。

お寺の土地活用や税金問題について疑問や不安がある人は、事業の準備をする前に税理士・弁護士などの専門家に相談しましょう。

まとめ

お寺の土地は宗教行為のために用いられている限りは非課税です。しかし、お布施や檀家の減少を補填するなどの目的でお寺の土地を貸し付けると「収益事業」とみなされることがあります。

もし土地活用が収益事業とみなされてしまうと、税制面における優遇措置を受けられない可能性もあります。

もし使っていない土地を活用したいと考えているのであれば、事前にお寺の土地や税金に詳しい専門家に相談することが大切です。

お寺の土地の税金に関するよくある質問

宗教活動は非課税だけど、どんなときに課税されるの?

お寺の活動によって「収益事業」とみなされれば、課税対象になります。例えば、商店などでも販売されている物品(キーホルダー、陶器など)を市場価格で販売している場合、収益事業とみなされるケースが多いです。

お寺が土地を取得したときは、どんな税金がかかる?

「不動産取得税」「登録免許税」が課せられるのが原則です。ただし「宗教法人法第3条」に規定されている条例を満たせば、非課税にできます。

お寺の土地を駐車場として利用したい・・・

「参詣者用の駐車場である」「収益化していない(無料で運営している)」場合は、非課税です。ただし、お寺の利用していない土地を「有料駐車場」や「月極駐車場」として活用すると課税対象になります。

お寺の土地に住宅を建てたいんだけど・・・

宗教法人の土地を「役員住宅名義」で利用すると、脱税行為とみなされてしまい税務署から警告を受ける恐れがあります。お寺の土地に「境内や社務所とは別に」住職や家族の自宅を建てたい場合は「宗教法人から適切な賃料で借りる」「適切な価格で買い取る」といった措置が必要です。

お寺を土地活用するときは、どこに相談すればいい?

お寺の土地活用には法的な知識が必要です。もしも、お寺の土地活用や税金問題について疑問や不安がある人は、事業の準備をする前に税理士・弁護士などの専門家に相談しましょう。

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更新日 : 2024年05月23日
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