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他の共有者の持分が競売にかけられたら?保有と処分それぞれの対処法を解説

他の共有者の持分が競売にかけられたら?保有と処分それぞれの対処法を解説

「他の共有者が借金を滞納して持分が競売にかけられてしまった」「競売で見知らぬ第三者が落札したらどうなるのか不安」共有不動産を持つ方の中には、このような悩みを抱える人も少なくありません。

共有者の持分が競売にかかると、思いもよらない第三者との共有関係が生じ、持分の売却を迫られたり、共有物分割請求訴訟を起こされたりするリスクがあります。さらに住宅ローンが設定されている場合には、不動産全体が競売対象となり、居住権そのものを失ってしまう可能性もあります。

こうしたリスクも、状況に応じて適切な対処を取れば回避することが可能です。代表的な選択肢を整理すると、次のようになります。

対処法 概要 向いている場合 注意点
競売前の持分買取 債務者から直接持分を購入 資金力があり不動産を維持したい場合 詐害行為とみなされるリスク
債務の肩代わり返済 共有者の債務を代わりに返済 確実に競売を阻止したい場合 回収できない可能性が高い
競売での落札 自分で入札して持分を取得 他の方法が困難な場合 落札を保証できない
任意売却 全員で協力して不動産全体を売却 高値での売却を望む場合 全員の合意と時間的制約
自己持分売却 自分の持分のみを専門業者に売却 迅速にトラブルから離脱したい場合 売却価格が低くなりがち

いずれの方法にもメリットとデメリットがあり、最適な選択肢は状況や目的によって異なります。

「不動産を守りたいのか」「早期に関係を整理したいのか」といった自分の優先事項を明確にし、必要に応じて専門家に相談することが、トラブルを最小限に抑える第一歩となるでしょう。

本記事では、共有持分の競売に関する基本的な仕組みから実際の競売手続きの流れ、競売後に想定される具体的なリスク、そして状況に応じた効果的な対処法について実務的な観点から詳しく解説していきます。早期の判断と迅速な行動により、トラブルを最小限に抑えましょう。

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共有持分の競売とは

共有持分の競売は、共有者の一人が債務を滞納した際に発生する法的手続きです。この手続きには「強制競売」と「担保不動産競売」の2種類があり、それぞれ異なる条件で実行されます。競売が開始されると、該当する共有者の持分のみが売却対象となりますが、場合によっては不動産全体に影響が及ぶ可能性もあります。

債権者により裁判所を通じて不動産を強制的に売却する手続き

共有持分の競売とは、共有不動産を所有している人が借金や住宅ローンなどの債務返済を滞納した際、または税金の未納状態が続いた際に、債権者が裁判所を通して強制的に売却する手続きです。

この手続きの特徴は、所有者の意思に関わらず進行することです。任意売却とは異なり、債務者が売却を拒否しても手続きは停止されません。また、競売の対象となるのは債務者の持分のみですが、住宅ローンなどで不動産全体に抵当権が設定されている場合は、他の共有者の持分も含めて競売にかけられる可能性があります。抵当権の設定に関しては、次章で詳しく解説しますので、そちらも参考にしてください。

競売物件は一般的に市場価格よりも安く売却される傾向があり、通常の不動産取引価格の6~7割程度で落札されることが多いです。これは、物件の内覧に制限があることや、契約不適合責任が免除されることなどが要因となっています。なお、契約不適合責任とは、売却後に発見された不具合や欠陥について売主が負う責任のことで、競売では買受人がこのリスクを負うことになります。

強制競売と担保不動産競売がある

共有持分の競売には、手続きの根拠となる法的基盤によって「強制競売」と「担保不動産競売」の2種類に分類されます。それぞれの特徴と手続きの違いを理解することで、自分が直面している状況がどちらに該当するかを把握し、適切な対処法を選択することが可能になります。

種類 詳細
強制競売 債務名義(確定判決や公正証書など)に基づいて、債権者が裁判所に申立てることで実行される競売。主にカードローンや未払いの貸金など、抵当権が設定されていない債権が対象。担保がなくても強制的に不動産が差し押さえられ、売却される。
担保不動産競売 住宅ローンの滞納など、抵当権が設定された不動産に対して行われる競売。金融機関などの抵当権者が債権回収のために申立てを行い、裁判所の手続きによって物件が強制的に売却される。抵当権の効力により、より迅速に手続きが進行する特徴がある。

担保不動産競売の場合、抵当権が不動産全体に設定されていることが多いため、共有者の持分だけでなく不動産全体が競売の対象となる可能性があります。一方、強制競売では原則として債務者の持分のみが対象となりますが、手続きに時間がかかる傾向があります。

他の共有者の持分が競売にかけられたらどうなる?

他の共有者の持分が競売にかけられると、残された共有者には多くのリスクが生じます。競落されると見知らぬ第三者と不動産を共有することになり、持分の売買を打診されたり、共有物分割請求訴訟を提起されたりする可能性があります。

また、共有名義不動産に住んでいる場合は、競落後に家賃として不当利得請求を受けるリスクもあります。これらのリスクを理解しておけば、適切な対処法を選択しやすくなるでしょう。

想定されるリスク 発生タイミング
第三者との共有関係発生 競落直後
持分売買の打診 競落後数週間~数ヶ月
共有物分割請求訴訟 交渉決裂後
不当利得請求 居住継続中

【前提】競落されると第三者と不動産を共有することになる

共有持分が競売で競落されると、他の共有者は見知らぬ第三者との間で共有関係に入ることになります。これまで家族や親族など信頼関係のある相手との共有だった場合、突然見知らぬ人との共有状態になることで、生活環境や不動産の利用に大きな支障が生じる可能性があります。

たとえば、以下のようなケースの場合、合意形成が難しくなるでしょう。

  • 不動産の管理や処分の決定に新しい共有者の同意が必要となる
  • 修繕や改修工事の際に意見対立が生じやすくなる
  • 不動産の売却時に新しい共有者との合意形成が必要になる

特に不動産の修繕や改修、売却などの重要な決定を行う際は、新しい共有者との合意形成が困難になることが予想されます。

また、新しい共有者が利益を最優先とした要求をしてくる可能性があり、従来の共有者にとって不利な条件を押し付けられるリスクもあります。

持分の売買を打診される可能性がある

競売で共有持分を落札した第三者は、多くの場合、残された共有者に対して持分の売買を打診してきます。落札者としては、残された共有者の持分も買い取って不動産を単独で所有したいと考えるのが一般的だからです。

売買交渉では以下のようなパターンが考えられます。

交渉パターン 落札者の狙い 共有者への影響
安価での買い叩き 利益最大化 財産的損失
高値での購入を要求 早期解決 経済的負担増
適正価格での取引 円満解決 共有関係からの解放

特に落札者が悪質だった場合、市場価格を大幅に下回る価格での買い叩きや、心理的圧迫を加えた交渉を仕掛けてくることもあります。

一方で、現在の不動産に住み続けることにこだわりがない場合は、適正価格での売却により共有関係から解放されるメリットもあります。重要なのは、持分の適正な市場価格を事前に把握しておくことです。

落札者から共有物分割請求を受ける可能性がある

競売で共有持分を落札した第三者から、共有物分割請求訴訟を提起される可能性があります。共有物分割請求とは、共有している不動産の共有状態の解消を請求する法的手続きで、民法に基づく共有者の権利です。

共有物分割の方法には以下の3種類があります。

  • 現物分割:土地を物理的に分割する方法(実際には困難な場合が多い)
  • 代償分割:一方が他方に代償金を支払って単独所有とする方法
  • 換価分割:不動産全体を売却して代金を分配する方法

落札したのが不動産業者の場合、共有持分の買取を迫ってくることが多く、話し合いがまとまらなければ共有物分割請求訴訟に発展することになります。この訴訟では、多くの場合は競売による換価分割が命じられます。

判決が確定すれば、たとえ持分を手放したくなくても所有権がなくなってしまい、不動産全体が競売にかけられる可能性があります。この場合、市場価格よりも安い価格での売却を余儀なくされ、大きな財産的損失を被ることになります。

このような事態を回避するためには、共有物分割請求を受けた時点で迅速な対応が必要です。具体的には、不動産に詳しい弁護士に相談して法的対応を検討したり、共有持分の買取に特化した専門業者に売却を相談したりする方法があります。また、相手方との任意の和解交渉により、より有利な条件での解決を図ることも可能です。

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共有名義不動産に住んでいる場合は競落後に家賃として不当利得請求されるおそれがある

共有持分が競売にかけられ競落された場合、その不動産に住んでいるなら競落した人や業者から家賃相当額の不当利得請求をされる可能性があります。これは、賃貸借契約が締結されていなくても、他人の財産を無償で使用していることが不当利得に該当するためです。

不当利得請求の根拠と計算方法は以下の通りです。

項目 内容
法的根拠 民法第703条(不当利得の返還義務)
請求可能者 新しい共有者(落札者)
請求可能額 周辺相場家賃 × 共有持分割合
請求可能期間 競落後の居住期間全体

民法第703条では、法律上の原因なく他人の財産により利益を受けた者は、その利益を返還する義務があると規定されています。共有不動産に住み続けることで得られる居住利益は、新しい共有者にとっては本来受け取るべき賃料収入の機会損失となります。

家賃の代わりとして不当利得請求をされる金額は、共有者が請求できる自分の共有持分に相当する割合となります。たとえば、新しい共有者の持分が2分の1の場合、周辺相場家賃の半分相当額を請求される可能性があります。

住宅ローンがある場合は競落後に強制的に追い出されるおそれがある

住宅ローンがある共有名義不動産では、さらに深刻なリスクが発生します。住宅ローンは共有名義であっても不動産全体に抵当権が設定されるため、一人が滞納すると債権者以外の持分も強制的に競売にかけられる可能性があります。特にペアローンの場合、夫婦それぞれが相手の債務の担保提供者となっているため、片方の滞納が不動産全体の競売につながるリスクが高くなります。競落されれば、強制的に第三者の単独名義となり、滞納していない共有者も住居を失う恐れがあります。

ペアローンでは片方の滞納により不動産全体が競売対象となる

ペアローンは夫婦がそれぞれ独立したローン契約を締結する仕組みですが、各抵当権が不動産全体(互いの持分)に及ぶ特徴があります。たとえば、夫婦で4,000万円の不動産を購入し、夫が2,000万円、妻が2,000万円のペアローンを組んだ場合、夫の金融機関と妻の金融機関の両方が不動産全体に対して抵当権を設定します。

この仕組みにより、夫がローン返済を滞納した場合、夫の債権者である金融機関は不動産全体を競売にかけることができます。妻が自分のローンを正常に返済していても、夫の滞納により妻の持分も含めて競売対象となってしまうのです。

ペアローンの契約においては、双方が相手の債務に対する「担保提供者」となることが一般的で、片方が差し押さえられただけでも、不動産全体が競売にかけられるリスクがあるため注意しておきましょう。

このリスクを軽減するためには、共有者間で定期的に返済状況を確認し合うことや、万が一の場合に備えて任意売却の準備を進めておくことが重要です。また、滞納の兆候が見られた場合は、早期に債権者との交渉を行い、返済計画の見直しや一時的な返済猶予を申し出ることで、競売を回避できる可能性があります。

競落により第三者の単独所有となれば居住権を失う

ペアローンで不動産全体が競売にかけられ、第三者が競落した場合、不動産は競落者の単独名義となり、元の共有者は居住権を完全に失うことになります。これは、共有持分のみの競落とは大きく異なる点です。

具体的な例として、夫婦でペアローンを組んで購入したマンションで、夫が失業により返済を滞納したケースを考えてみましょう。夫の債権者が不動産全体の競売を申し立て、不動産業者が競落したとします。この場合、マンションは競落した不動産業者の単独所有となり、夫婦は法的に居住する権利を失います。

妻が自分のローンを正常に返済していたとしても、夫の滞納により住居を失うことになり、さらに残債がある場合は住む場所を失ったうえで債務だけが残る最悪の事態となります。このようなリスクを避けるためには、早期の対策が不可欠です。

具体的な対策としては、共有者の債務を肩代わりして返済することで競売を阻止する方法や、共有者間で協力して任意売却を成立させることで競売よりも高値での売却を目指す方法があります。また、滞納の兆候が見られた時点で早急に債権者と交渉し、返済計画の見直しや一時的な返済猶予を申し出ることで、競売手続きの開始を阻止できる可能性もあります。

対処法については、こちらの章でも詳しく解説しています。

不動産が競売にかけられる際の流れ

不動産の競売手続きは、債権者の申立てから最終的な代金配当まで、法律に基づいて厳格に進行します。

具体的には、債権者が地方裁判所に申立てを行い、裁判所による不動産調査、鑑定評価、売却基準額の決定を経て、入札により落札者が決まります。その後、落札者の代金納付と配当手続きが行われ、競売手続きが完了します。この一連の流れは通常6ヶ月から1年程度の期間を要し、所有者の意思に関わらず強制的に進行するため、早期の対応が重要となります。

段階 手続き内容 期間の目安
申立て~開始決定 債権者による競売申立て、裁判所による審査・開始決定 1~2ヶ月
調査・評価 現況調査、不動産鑑定評価、売却基準額決定 2~3ヶ月
入札・売却 入札実施、開札、売却許可決定 1~2ヶ月
代金納付・配当 買受人の代金納付、債権者への配当 1~2ヶ月

債権者が地方裁判所に不動産競売の申し立てを行う

競売手続きは、債権者が目的不動産の所在地を管轄する地方裁判所に不動産競売の申立てを行うことから始まります。申立ては書面で行う必要があり、債権者は以下の書類を提出します。

  • 債務名義(確定判決、公正証書など)
  • 抵当権設定契約書(担保不動産競売の場合)
  • 不動産登記事項証明書
  • 固定資産評価証明書

裁判所が申立てを適法と認めた場合、不動産執行開始決定及び差押決定が出され、債務者(所有者)に競売開始決定通知が送達されます。この通知により、所有者は正式に競売手続きが開始されたことを知ります。

また、共有物分割請求訴訟が提起された場合でも、和解が成立せず裁判所から競売による換価分割の判決が出されると、同様に競売手続きが開始されます。開始決定が出されると、原則として所有者は不動産を自由に処分できなくなり、第三者への売却なども制限されます。

裁判所による不動産の調査の実施

競売開始決定後、裁判所は執行官に対して競売対象不動産の現況調査を命令します。執行官は不動産鑑定士とともに現地を訪問し、以下の項目を詳細に調査します。

  • 建物の構造、築年数、現況
  • 土地の地目、形状、面積
  • 占有者の有無とその権原
  • 設備の状況(上下水道、電気、ガスなど)
  • 周辺環境(交通アクセス、近隣施設など)

この調査は所有者の同意を必要とせず、所有者が調査を拒むことはできません。執行官は必要に応じて錠を破って建物内部に立ち入ることも可能で、法的強制力をもった調査となります。

この調査結果は後の入札者の判断材料となるため、不動産の価値に大きく影響する重要な手続きとなります。

不動産鑑定士による不動産の鑑定評価の実施

現況調査と並行して、裁判所から選任された不動産鑑定士による不動産の鑑定評価が実施されます。鑑定士は現地調査を行い、周辺の取引事例や収益性などを総合的に分析して不動産の価値を算定します。

調査結果は「現況調査報告書」としてまとめられ、鑑定士によって「評価書」が作成されます。これらの書類と物件明細書を合わせて「三点セット」と呼ばれ、入札者への重要な情報提供資料となります。

書類名 記載内容
現況調査報告書 不動産の現況、占有者情報、写真など
評価書 評価額、周辺環境、図面など
物件明細書 権利関係、引き継ぐべき権利など

評価書に記載される評価額は、一般的に市場価格よりもやや保守的な金額となることが多く、競売特有の制約要因(内覧の制限、瑕疵担保責任の免除など)も考慮されます。この評価額が後の売却基準額の基礎となるため、競売価格を左右する重要な要素となります。

裁判所による不動産の売却基準額の決定

不動産の評価が完了すると、裁判所は評価書をもとに不動産の売却基準額を決定します。売却基準額は、評価人による評価額を参考に裁判所が最終的に決定する価格で、競売における基準価格となります。

売却基準額は一般的に市場価格の7割程度に設定されることが多く、入札は売却基準額から2割を差し引いた買受可能価額以上の金額で行う必要があります。つまり、市場価格の約5~6割程度が最低入札価格となる計算です。

この売却基準額は競売物件の最終的な売却価格に大きく影響するため、債務者にとっては残債務の額を左右する重要な決定となります。売却基準額に不服がある場合は、評価額に対する異議申立てを行うことも可能です。

入札開始

売却準備が整うと、裁判所書記官が売却の日時、場所、方法を定めて入札が開始されます。第1回目の売却方法としては、一定期間内に入札を受け付ける「期間入札」が一般的に採用されています。

期間入札通知の到着から数週間から1ヶ月程度で入札が開始され、通常1週間程度の入札期間が設けられます。入札希望者は以下の手続きを行います。

  • 保証金(売却基準額の2割程度)の事前納付
  • 買受可能価額以上での入札
  • 暴力団員でないことの書面陳述
  • 入札書類の提出

競売物件の情報は裁判所の掲示場やインターネット上の不動産競売物件情報サイト(BIT)で公開され、入札希望者は三点セットを閲覧して物件の詳細を確認できます。入札は取消しができないため、入札者は慎重な検討が必要となります。

最高価格での落札者への売却決定

入札期間が終了すると、開札(結果発表)が行われ、最も高い金額で入札していた人が買受人(落札者)となります。同額の最高価格入札者が複数いる場合は、くじ引きによって買受人が決定されます。

買受人が決まると、裁判所による審査が行われます。この審査では、以下の項目が確認されます。

  • 買受人が暴力団関係者でないか
  • 入札手続きが適正に行われたか
  • 必要書類の不備がないか
  • 保証金の納付が正しく行われているか

審査に問題がなければ、売却許可決定が出されます。売却許可決定に対して利害関係人から異議申立てがなされる場合もありますが、異議が認められなければ売却許可決定が確定し、正式に買受人への売却が決定されます。この時点で、従来の所有者は法的に所有権を失うことが確定します。

落札者が代金を支払う

売却許可決定が確定すると、買受人は裁判所が通知する期限までに、入札額から保証金額を差し引いた残代金を納付する必要があります。通常、代金納付期限は売却許可決定確定から約1ヶ月以内に設定されます。

期限までに代金の納付がない場合、買受人は競売不動産を取得することができなくなり、原則として保証金も返還されません。また、次順位の入札者への売却手続きが進められることになります。

代金納付と同時に、所有権移転登記などの手続きは裁判所が職権で行います。ただし、以下の費用は買受人の負担となります。

  • 登録免許税
  • 司法書士報酬
  • その他登記手続きに要する実費

代金納付により、買受人は正式に不動産の新しい所有者となり、従来の所有者は完全に所有権を失います。

配当手続き

買受人からの代金納付が完了すると、裁判所が売却代金を債権者に配当する手続きが行われます。配当は法律上優先する債権の順番に従って実施され、以下の優先順位で行われます。

優先順位 債権の種類 具体例
1位 先取特権・質権 税金、共益費用など
2位 抵当権 住宅ローン、事業資金など
3位 一般債権 カードローン、個人間借入など

抵当権を有する債権の間では設定日の順に優先し、同順位の債権については債権額に応じて按分配当されます。配当期日において、各債権者への具体的な配当額が決定され、配当表が作成されます。

共有不動産の場合、売却代金は共有者の持分割合に応じて分配されますが、各共有者の債務や抵当権の設定状況によって実際の受取額は異なります。配当手続きの完了により、競売手続きは終了し、残債務がある場合は一般債権として債権者による回収が続くことになります。

共有持分を手放さずに守りたい場合の対処法

他の共有者の持分が競売にかけられた際、自分の共有持分や不動産そのものを手放したくない場合には、いくつかの対処法があります。

たとえば、競売前の持分買取、債務の肩代わり返済、競売中の落札、競売後の買戻し交渉など、状況に応じて選択できる方法があります。

ただし、これらの方法にはそれぞれ一定の資金力や法的リスクが伴うため、慎重な判断が必要です。特に詐害行為や求償権の問題など、法的な注意点を十分理解したうえで実行することが重要となります。

共有者(債務者)の持分を競売前に買い取る

競売手続きが開始される前に、債務を負っている共有者から直接その持分を買い取ることで、競売自体を防げます。この方法は、ペアローンなどで不動産全体に抵当権が設定されている場合や、共有者の債務が原因で持分が担保とされている場合は特に有効です。

持分を買い取る際の価格設定は、市場価格や債務額を考慮して決定します。債務者にとっては債務の解決につながり、買取者にとっては不動産の単独所有が実現できるため、双方にメリットがある解決策となります。

ただし、債権者を害する目的で安価での持分譲渡が行われた場合、詐害行為として取り消される可能性があります。詐害行為に該当するかどうかの判断は複雑な法的問題であり、個人では適切に判断することが困難なため、取引前に弁護士に相談することが重要です。また、適正な価格での取引であることを証明できるよう、不動産鑑定書の取得や契約書の作成を慎重に行う必要があります。

共有者(債務者)の債務を肩代わりして返済する

他の共有者の債務を肩代わりして返済することで、競売手続きを停止させられます。法律上、不動産の共有者は「法律上の利害関係がある第三者」として、債務者本人の意思に反しない限り第三者弁済を行うことができます。

返済方法 メリット 注意点
一括返済 ・競売手続きの即座停止
・債権者との交渉が不要
・多額の資金が必要
・回収リスクが高い
分割返済 ・資金負担の軽減
・段階的な解決が可能
・債権者の合意が必要
・交渉に時間を要する

債務を肩代わりする場合は、必ず書面で合意を交わし、将来のトラブルを防ぐことが重要です。また、債権者との交渉により一括返済ではなく分割返済に応じてもらえる可能性もあります。競売よりも確実に債権回収ができるため、債権者が交渉に応じる余地は十分にあるでしょう。

競売中に落札して第三者の介入を防ぐ

競売手続きが進行している場合でも、自分が入札に参加して落札することで、第三者による所有を防げます。この方法により、不動産の所有権を維持し、見知らぬ第三者との共有関係を回避することが可能です。

ただし、競売での入札には以下の条件があります。

  • 売却基準額の2割相当の保証金の事前納付
  • 買受可能価額(売却基準額の8割)以上での入札
  • 暴力団員でないことの書面陳述
  • 入札後の取消し不可

落札に成功した場合、代金納付期限までに入札額から保証金を差し引いた残代金を納付する必要があり、期限を過ぎると落札権を失い保証金も返還されません。そのため、事前の資金準備と確実な納付計画が不可欠です。

競売後に落札者と交渉して持分を買い戻す

競売が完了し、第三者が落札した場合でも、落札者と売買交渉を行って持分を買い戻すことが可能です。第三者との共有状態を解消したい場合の最終的な選択肢となります。

ただし、実際の交渉は困難な場合が多いのが現実です。落札者の多くは不動産業者であり、利益を目的として参入しているため、高額での売却を要求してくる可能性があります。また、落札者から共有物分割請求訴訟を提起されることもあり、買取交渉自体が成立しにくい状況となります。

共有物分割請求訴訟では、全面的価格賠償(他の共有者が裁判所の決定した金額を支払って単独所有とする方法)を請求することで、他の共有者が反対していても裁判所が適正と認めた金額であれば買い取ることが可能です。ただし、この場合も相当な資金力が必要となります。

共有持分を手放しても良い場合の対処法

共有関係の維持を望まない場合や、自分の持分を早期に現金化したい場合には、積極的に共有状態から離脱する方法を検討するとよいです。

また、共有者間で協力した任意売却や、自己持分の売却により、競売後に発生するトラブルを未然に回避できます。特に自己持分の売却は、他の共有者の同意を得ることなく単独で実行できるため、迅速な問題解決を図りたい場合に有効な選択肢となります。

対処法 実行の容易さ 期待できる効果 注意点
任意売却 中(全員の合意が必要) 高値での売却が期待できる 時間的制約がある
自己持分売却 高(単独で実行可能) 迅速な問題解決 売却価格が低くなりがち

共有者間で協力して任意売却を成立させる

競売手続きが開始される前に、債権者の合意を得て共有不動産全体を任意売却することで、競売よりも有利な条件での売却が可能になります。任意売却は一般的な不動産取引と同様の売却活動ができるため、市場価格に近い金額での売却が期待できます。

ただし、任意売却は競売の開札日までという厳しい時間的制約があるため、迅速な対応が不可欠です。成功させるためには、任意売却物件を専門に取り扱う不動産業者に早期に相談し、債権者との交渉から買主の確保まで一貫したサポートを受けるのがおすすめです。

任意売却のメリットは以下の通りです。

  • 競売価格(市場価格の6~7割)よりも高値での売却が可能
  • 売却時期や条件をある程度調整できる
  • 購入希望者に対する内覧が可能で、物件の魅力を伝えやすい
  • 近隣に競売であることを知られずに済む

ただし、任意売却には以下の条件と制約があります。

  • 原則として共有者全員の同意が必要
  • 債権者(金融機関等)の承諾が必要
  • 競売の開札日までという時間的制約がある
  • 売却代金で債務を完済できない場合の残債処理について合意が必要

債務を滞納している共有者との円滑なコミュニケーションが取れるかどうかが成功のカギとなるため、早期の話し合いと合意形成が重要です。

自己持分を売却する

競売にかけられた持分を買い取るほどの資金がない場合は、自身の持分を売却することで競売後に発生するトラブルを回避できます。共有持分のみの売却であれば、他の共有者の同意を得る必要がなく、単独で実行可能な対処法です。

自己持分売却のメリットは次のような点にあります。

  • 他の共有者の同意が不要
  • 迅速な現金化が可能
  • 将来のトラブルリスクからの完全な離脱
  • 管理や維持費用の負担からの解放

一方で、以下のデメリットもあります。

デメリット 対策
売却価格の低下 複数の専門買取業者への査定依頼
買い手の限定 専門の買取業者への相談
売却期間の長期化 専門の買取業者の活用

共有持分は一般的な不動産取引と比較して扱いが難しく、買い手が限定されるため、共有持分の買取に特化した専門業者への相談が効果的です。

たとえばイエコンの場合、訳あり不動産(空き家、ゴミ屋敷、事故物件、再建築不可、底地・借地、共有持分)の買取に専門特化した不動産会社が見つかります。スピーディに少しでも高く売却したいなら専門業者への売却がおすすめです。

専門業者を利用するメリットも押さえておきましょう。

  • 適正な査定:共有持分の特殊性を理解した適正価格の提示
  • スピード対応:相談から決済まで最短1日での対応も可能
  • 売却後リスクの回避:契約不適合責任の免除により売却後のトラブルを回避

複雑な共有持分の案件は、大手仲介業者や地場の不動産屋では扱っていないことも多いため、諦める前に専門業者への相談を検討してみてください。

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まとめ

他の共有者の持分が競売にかけられた場合、残された共有者にはさまざまなリスクとトラブルが生じる可能性があります。見知らぬ第三者との共有関係の発生、共有物分割請求訴訟、不当利得請求など、深刻な問題に発展する恐れがあります。

このようなリスクを回避するためには、状況に応じた適切な対処法の選択が重要です。共有持分を維持したい場合は、競売前の持分買取や債務の肩代わり、競売での落札などの方法があります。一方で、共有関係からの離脱を望む場合は、任意売却や自己持分の売却により、将来のトラブルを未然に防ぐことが可能です。

いずれの方法を選択するにしても、早期の判断と迅速な行動が問題解決のカギとなります。複雑な法的問題や高額な取引が関わる場合は、弁護士や不動産の専門業者に相談し、専門的なアドバイスを受けながら最適な解決策を見つけることをおすすめします。

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更新日 : 2025年08月04日
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