失業や病気などによって収入が減り、住宅ローンや借金の返済を延滞・滞納してしまう人も少なくありません。
金融機関などの債権者から督促状や電話連絡などによって返済を催促され、不安な日々を過ごしている人もいるでしょう。
この記事では、ローン返済に関する任意売却のメリット・デメリットや担保物件の売却方法を中心に解説していきます。
任意売却とは?
例えば、住宅ローンの残りが1,500万円に対して物件の売却価格が1,000万円だった場合、差額500万円の債務が残ってしまい自己資金でも賄えないというケースにおこなわれる売却方法です。
住宅ローンや借金などの返済を長期間にわたり延滞・滞納してしまうと、自宅が競売にかけられてしまう恐れがあります。
競売による強制退去、安価での売却などを任意売却という手段によって防ぐことができます。
任意売却のメリット
任意売却は競売よりも高く売れたり、売却後の残債を分割返済できるなどいくつかメリットがあります。それぞれのメリットを詳しく解説していきます。
競売よりも高く売却できる
「住宅ローンなどの返済を長期間怠ると家が競売にかけられる」というような話を耳にしたことがあるかと思います。
具体的にどのような仕組みなのか説明すると、ローンなどの借入先である金融機関が抵当権を設定した担保物件(住宅ローンで購入した家など)を回収し競売にて売却、その売却金を借り主の返済金に充てるというものです。
競売による売却価格は相場の7割程度といわれています。
一方、任意売却であれば通常の不動産売却と同じような方法で売却活動ができるため、相場に近い価格で売却できるメリットがあります。
競売にかけられる前に担保物件をできる限り高く売ってローンの一括完済を目指すのであれば、早めに任意売却の手続きをおこなうことが大切です。
売却後の残債は分割返済できる
自宅を売却して得た利益を使って借金の一部を返済できたとしても、残りの借金が免除されるわけではありません。
ただし、任意売却をおこなった場合の残債については、金融機関等と相談や交渉をすることで分割返済できる可能性があります。
月々の返済額については金融機関によって異なるため、いくらから返済可能なのか確認することが大切です。
分割返済によって無理のない返済を望むのであれば、誠意を持って金融機関などの債権者と協議しましょう。
参照:一般社団法人全国住宅ローン救済・任意売却支援協会 「任意売却後の残債(残ったローン)はどうなる?」
売却利益から引越し費用を受け取れる
任意売却などで物件を売却する場合、新しい住居に引越しをしなければなりません。同時に、引越し費用や家賃、敷金・礼金などさまざまな費用が必要になります。
しかし、債務者は住宅ローンや借金を延滞・滞納してしまうほど経済困難に陥ってしまっているため、まとまったお金を用意することは難しいでしょう。
その際に債権者と交渉することで、ローン返済に充てる売却利益から生活再建の資金として引越し費用が控除される(受け取れる)ケースがあります。
ただし、引越し費用は必ず受け取れるものではなく、あくまでも債権者の善意や裁量によるということに注意しなければなりません。
参照:一般社団法人全国住宅ローン救済・任意売却支援協会 「任意売却と引越し代」
リースバックで売却後も住み続けられる
自分が売りに出した担保物件が賃貸経営目的のオーナーや投資家に購入された場合、交渉によっては買主に家賃を支払うことで住み続けられるケースがあります。
この方法はリースバックと呼ばれており、売却しても自宅に住み続けることができ、引越しをする必要がなくなるメリットがあります。
また、経済状況が回復した際に、売却した自宅を再び購入して取り戻す(買い戻し)こともできる場合があります。
売却後も住み続けたい、いつか買い戻したいという人はリースバックを前提に投資家向けの任意売却活動をおこなうといいでしょう。
任意売却のデメリット
任意売却は競売よりもメリットの多い売却方法だといえます。
ただし、延滞・滞納の期間が発生したり、債権者の同意が必要などのデメリットもあるため、事前に把握しておきましょう。
延滞・滞納が信用情報機関に記録される
任意売却をおこなうためには、3~6カ月程度の延滞・滞納期間が必要です。
返済が困難になることが予想され、住宅ローンを延滞・滞納する前から任意売却を進めたいときは、金融機関等に事情を説明して返済を停止してもらわなければなりません。
一般的に返済日から61日以上または3カ月以上延滞・滞納してしまうと、信用情報機関に記録され(通称ブラックリスト)、5~10年間ほどはローンを組んだり、クレジットカードの新規発行ができなくなるなどの影響があります。
任意売却によって信用情報に傷が付いてしまいますが、まずは住宅ローンなどの返済にかかる負担を軽減できるように売却を進めていくとよいでしょう。
債権者の同意が必要
任意売却は競売に比べて高く売却できる場合があるため、債務者は残債を減らすことができ、債権者は借金をなるべく多く回収できるなど両者にメリットがあるといえます。
ただし、任意売却をおこなうためには、債権者の同意が必要です。
例えば、任意売却しても貸したお金を十分に回収できないと債権者に判断されてしまった場合、任意売却の同意が得られないことがあります。
債権者から任意売却の同意をもらうためには、自宅がいくらで売却できるのかどのくらい返済できるのかおおよその見通しを立てて、交渉するとよいかもしれません。
連帯保証人の協力が必要
ローンや借金などを借り入れる際に、名義は夫、妻は連帯保証人として設定するケースや共有名義でローンを組むケースがあります。
どのようなケースであれ、原則として連帯保証人や共有名義者の返済義務は免除されません。
そのため、仮に住宅を購入後に夫婦が離婚してしまい別居中であっても、任意売却を行うためには協力し合う必要があります。
連帯保証人や共有名義者などに任意売却の同意や協力を得られるように、早めに連絡を取って事情を詳しく説明することが大切です。
競売までに売れない可能性がある
債権者から任意売却の同意を得たとしても、競売の手続きを取り下げることはできません。
そのため、任意売却で買主が現れず、競売にかけられてしまうケースもあります。
裁判所から「競売開始決定通知書」が送付されて、約6カ月で競売によって強制売却されるといわれています。
任意売却の活動期間を十分に確保できなかった場合、競売までに売れない可能性があるため、早めに債権者や不動産会社などに任意売却の相談をすることが大切です。
任意売却の手順
任意売却の手順は以下のような流れになります。
- 不動産会社に相談する
- 物件の査定を依頼する
- 債権者に任意売却の許可をもらう
- 売却活動の開始
- 債権者に売却の同意を得る
- 売買契約を結ぶ
- 決済と物件の引き渡し
不動産会社に相談する
任意売却には申請期限があり、競売の入札開始2日前までに申請をしなければいけません。
そのため、すでに住宅ローンを滞納していたり、来月から返済ができなくなりそうなどの場合、まずは不動産会社に相談しましょう。
滞納前のタイミングであれば、債権者との交渉や売却活動にかかる時間を十分に確保できるため、納得した上で自宅を売却することが可能かもしれません。
物件の査定を依頼する
住宅ローンなどの返済計画において、任意売却で売却する物件がどのくらいの価格になるのか把握することはとても大切なことです。
売却物件を不動産会社などの査定に出すことにより、具体的な価格がわかります。また、一社だけではなく複数の会社や業者に査定をしてもらうことも重要です。
ある程度の売却価格がわかったら、ローン返済の見通しを立てて任意売却に進みましょう。
金融機関との話し合いでは、不動産会社等に査定してもらった金額を伝えると具体性のある返済計画を考えていることがアピールできます。
当社でも不動産査定をおこなっております
当社、クランピーリアルエステートでは、任意売却のように法律が複雑に絡んでくるような物件も積極的に査定・買取をおこなっております。
もし、査定価格が住宅ローンなどの残債よりも高く、抵当権を確実に抹消できることが判断できれば、査定後すぐに担保物件の買取が可能です。
担保物件の売却についてご相談がある方は、ぜひ以下のリンクからお気軽にお問い合わせください。
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債権者に任意売却の許可をもらう
任意売却の許可をもらうためには、市場価格や査定価格などを元に債権者と売却価格の折り合いをつける必要があります。
適正価格に設定して自宅の売却活動をおこなえば、任意売却を成功させやすいため、競売を避けることができるかもしれません。
しかし、債権者はできるだけ多くのお金を回収したいため、残債の金額によっては市場価格より高い価格での売却を要求してくることも考えられます。
任意売却における実績が豊富であったり、法律に詳しい専門家が在籍しているなどの不動産会社に依頼することで、債権者との交渉を有利に進めてもらえるかもしれません。
売却活動の開始
自宅の売却価格が決まったら、実際に売却活動が始まります。任意売却の広告活動は通常の売却と同様に、チラシやインターネットなどを使って物件情報を公開します。
広告活動をおこなっていると、内覧を希望する人も現れるでしょう。
自宅を内覧してもらう際には、掃除や整理整頓など部屋をキレイにしておくことで、内覧者に良い印象を与えることができ、購入につながる場合もあります。
依頼した不動産会社に任せっきりにせず、自分でできる範囲の努力をおこなうことで、より任意売却の成功率を上げることができるかもしれません。
債権者に売却の同意を得る
買主との交渉次第では、債権者と協議して決めた売却価格よりも低い価格で担保物件を売却せざるを得ないケースも考えられます。
例えば、1,500万円以上であれば任意売却に応じるという取り決めだったとしても、実際には1,400万円での売却になる可能性もありえます。
このような場合、担保物件を1,400万円で売却してもよいという債権者の同意がなければ、売却できません。
売却の同意を得るための交渉をおこなう際は「買付申込書」を債権者に提出する必要があるため、買主に記入してもらいましょう。
売買契約を結ぶ
債権者から売却の同意を得て、売主と買主の両者が納得できる契約内容であれば、売買契約を結びます。
買主と売主の間で契約内容の認識に違いがあり、契約後にトラブルが起きるケースもあるため、不動産会社に確認を取りながら、売買契約書の内容をしっかりと理解しておくことが大切です。
決済と物件の引き渡し
任意売却の契約が成立したら売買代金の決済を完了させ、抵当権の抹消や所有権の移転手続きなどをおこない物件を買主に引き渡します。
引き渡し日までには引越しのために引き継ぐ予定のないものや不用品などは撤去して、物件には何もない状態にしておきましょう。
まとめ
任意売却は市場価格に近い値段で売却できる場合があるため、競売での売却よりも残債を減らすことができるのがメリットです。
ただし、任意売却をおこなうためには金融機関等の債権者の同意や共有名義者・連帯保証人などの協力が必要不可欠です。
また、状況によっては債権者からの同意が得られない場合もあります。返済困難となる事情は誠意を持って早めに相談することが大切です。
相談や交渉が苦手な人は不動産会社への物件売却依頼時に、債権者や連帯保証人等との交渉もお願いできるか相談してみるのもよいかもしれません。