空き家の売却は買取と仲介でどちらを選ぶかの判断基準
空き家の売却方法は、「不動産業者に"仲介"してもらって売却する」方法と、「不動産業者に"買取"してもらって売却する」方法の2つのパターンが存在します。
仲介とは、不動産業者が売り手と買い手の間に立って、売買の相手探しや契約をサポートすることを指します。売り手は、業者を通じて買い手に空き家を売るのです。
買取とは、不動産業者が買主となって物件を買い取ることを指します。業務内容が大きく違うため、仲介を請け負う不動産業者は不動産仲介業者と、不動産を買い取る不動産業者は不動産買取業者と呼ばれます。なお、不動産仲介・不動産買取の両方の事業を幅広く展開している会社も多くあります。
その他にも、仲介と買取には下記のような違いがあります。
比較項目
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仲介
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買取
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売却価格
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高め(市場価格に基づく)
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低め(市場価格よりも低くなる傾向)
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売却のスピード
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長め(数ヶ月〜半年以上)
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短め(最短数週間で完了)
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手間
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内見や交渉などの対応が必要
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手間が少ない(即売却が可能)
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買取価格交渉
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価格交渉が可能
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価格交渉があまりできない
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リフォーム
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必要な場合あり(高額で売却を狙う場合)
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リフォーム不要(そのままで売却可)
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契約不適合責任
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売主が一定期間責任を負うことが多い
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売主が責任を負わないことが多い
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手続きの煩雑さ
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内覧の対応などが必要
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煩雑な手続きが不要
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手数料
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仲介手数料がかかる
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仲介手数料がかからない
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物件の状態
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状態が良い物件に向いている
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状態が悪くても買取可能
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仲介と買取では、売却時の買主や手続き、必要な対応、期間などに多くの違いがあり、空き家売却の手段としてどちらを選択すべきは、各々の状況によって変わってきます。
そこでここからは、仲介で売却すべきケースと買取で売却できるケースをみていきましょう。
仲介業者で売却すべきケース
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・空き家でも建物の状態が良い場合
・立地が良く需要の高いエリアにある場合
・できるだけ高く売りたい場合
・売却までの時間に余裕がある場合
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買取業者に売却すべきケース
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・仲介で売れなかった場合
・手軽に早く売りたい場合
・物件の状態が著しく劣化している場合
・リフォームや修繕費用の回収が難しそうな場合
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空き家を仲介で売却すべき4つのケース
まずは、空き家を不動産仲介業者を利用して売却するのに向いているケースです。
- 空き家でも建物の状態が良い場合
- 立地が良く需要の高いエリアにある場合
- できるだけ高く売りたい場合
- 売却までの時間に余裕がある場合
いずれかに自身の現状が当てはまる場合は、まずは仲介での売却を目指すとよいでしょう。
空き家でも建物の状態が良い場合
空き家になってから間もない場合や、建物自体が新しく、築年数が浅い場合は、仲介での売却に向いています。
仲介の場合、買主は中古物件を住居として使いたい個人や、賃貸物件として活用したい個人・法人です。建物の状態が良いと、リフォーム費用が少なく済むため、買い手にとっては魅力的な物件として評価されます。特に、築浅の物件は、建物も設備も新しく、住宅ローンを利用する購入者にも好まれやすいため、早期の売却が見込めます。
仲介を利用する場合、買い手が見つからないことには売却できないので、市場での需要があるかが売却できるかの鍵となります。仲介で売却すると、買取業者に依頼するよりも高値で売却できることから、物件の状態が良い場合はまずは仲介業者を通じて買い手を探すのがおすすめです。
立地が良く需要の高いエリアにある場合
空き家の立地条件が良く、需要が高いエリアにある場合、建物の状態や築年数を問わず、仲介での売却に向いています。
立地条件が良い物件は、住みたい人が多く、土地自体に価値と需要があるため、たとえ建物自体が古くても比較的容易に買い手が見つかります。
立地条件が良い物件の具体的な特徴は下記の通りです。
【立地条件が良い物件の特徴】
- 日当たりが良い
- 駅近で交通の利便性が良い
- 治安が良くて安心して暮らせる環境がある
- 周辺に生活や子育てに必要な施設が揃っている
- 周辺に健康・安全・音・臭い・視界にマイナスになる施設がない
- 街に将来性がある
- 自然災害のリスクが少ない
特に、駅近や商業施設に近い物件、人気の高い住宅街にある土地は、住みたい個人以外にも、投資家や建築業者からも需要があります。
空き家の立地条件が良い場合は、建物の状態や築年数を問わず、不動産仲介業者に相談しましょう。
できるだけ高く売りたい場合
少しでも高く空き家を売却したいと考えている場合も、まずは仲介での売却を目指してみるのがおすすめです。
不動産業者を利用すると、業者に対して仲介手数料がかかります。その一方で、売却価格は売り手が自由に決めることができます。
不動産買取業者に売却すると、買取額(査定額)は業者側が提示するため、売り手の希望する金額では売れにくくなります。また、買取業者はリフォームや解体をすることを前提に空き家をを購入するため、仲介よりも売却価格が低くなりがちです。
仲介でも希望した金額で売れるとは限らず、希望売却価格が高すぎると買い手が見つかるまで時間がかかることにはなりますが、時間がかかっても良いからできるだけ高く売りたいという場合は不動産仲介業者に相談するとよいでしょう。
売却までの時間に余裕がある場合
空き家の売却を急がない場合や、じっくりと交渉して最高の条件で売却したい場合にも、仲介での売却が向いています。
仲介での売却は、買い手を見つけるまで平均で3~6ヶ月の時間がかかるものの、その分価格交渉に時間をかけられ、より良い条件で売却できる可能性があるのです。物件の状態や立地が特段良くなくても、時間をかけて売却活動をしていけば、市場価格に近い金額で売れることもあります。
売却を急がないのであれば、まずは仲介での売却を試してみると後悔しにくいでしょう。
空き家の売却を買取業者に依頼すべき4つのケース
続いては、空き家の売却に買取を依頼するのがおすすめのケースです。
- 仲介で売れなかった場合
- 手軽に早く売りたい場合
- 物件こ状態が著しく劣化している場合
- リフォームや修繕費用の回収が難しそう場合
仲介のほうが高値で売ることができるため、できれば仲介で売りたいという人も多いでしょう。しかし、仲介で買い手が見つかる可能性が非常に低いにもかかわらず、仲介での売却に固執してしまうと、結果的に損が大きくなる可能性もあるため、上記に当てはまる場合は早めに買取での売却にシフトするほうがよいでしょう。
仲介で売れなかった場合
仲介で買い手が見つからなかった場合は、不動産買取業者への売却を進めましょう。
仲介では売却まで通常で3~6ヶ月程度、場合によっては1年、2年とかかります。そもそも空き家は個人相手には売れにくい傾向があり、築年数が古い物件や立地条件が悪い物件だと、数年単位で買い手は見つからない可能性があります。売れない期間も税金や管理費といった維持費はかかり続けるため、売れない期間が長いほど出費もかさみます。不動産は築年数が古くなればなるほど、そして人が住まない期間が長いほど価値が下がるため、より一層売れにくくなります。
不動産買取業者に依頼すれば、数週間~1ヶ月程度で迅速に現金化できます。仲介で数ヶ月以上売れない場合は、見切りをつけて買取に移行したほうが無駄な出費を抑えて、手放すことができるでしょう。
同じ不動産買取業者でもそれぞれ得意分野があり、訳あり専門の買取業者であれば物件活用のノウハウを持っています。空き家買取が得意な業者を選ぶことで、仲介よりは安くなりますが、通常の買取業者よりは高く買い取ってもらうことが可能です。
手軽に早く売りたい場合
できるだけ手間をかけず、早々に手放したい場合は、初めから不動産買取業者に相談するのがおすすめです。
空き家を所有している限り、金銭的な負担も管理の負担もかかり続けることになります。仲介で売却する場合、売却までに買い手探しや価格交渉、購入希望者の内見の対応をする手間や時間も必要です。古い設備の交換やリフォーム・修繕を行わないと買い手が見つからないこともあるでしょう。遠方に住んでいる場合や物件の使い道がない場合は、管理や修繕にお金と手間をかけるよりも、買取業者にスピーディーに現金化してもらったほうが、総合的な負担を抑えられます。
売却価格にこだわらず、手っ取り早く空き家を手放したいという場合は、買取を選択しましょう。
物件の状態が著しく劣化している場合
空き家になってから長く放置され、大掛かりなリフォームや建て替えが必須の状態になっている場合や、害虫・害獣が住み着いている場合は、すぐにでも手放す必要があります。
害虫や害獣を放置していたり、建物が倒壊しそうだったりすると、近隣住民にも迷惑をかけていることになります。万が一、建物の損壊や倒壊で誰かにケガをさせたり、近隣の建物に被害が出たりすれば、空き家の所有者に損害賠償責任が求められます。
物件の状態が著しく悪い場合は、仲介ではまず売れないので、買取業者に売却してできるだけ早く手放すほうがよいでしょう。
リフォームや修繕費用の回収が難しそうな場合
リフォームや修繕にお金をかけても、かかった費用を売却価格に上乗せして買い手が付くか微妙な場合、リフォームも修繕もせずに不動産買取業者にそのまま売却するのがおすすめです。
仲介で売却する場合、買い手を付きやすくするためにリフォームや修繕をして、不動産の価値を高めることがあります。しかし、例えば300万円かけてリフォームしても、売却価格が300万円以上プラスにならなければ、経済的なメリットはありません。物件によっては、リフォームをせずにそのまま買取業者に売却するほうが、金銭的な損失なく空き家を手放せるでしょう。
■仲介・買取で迷ったときは?
不動産仲介会社に依頼をしつつ、不動産買取業者に査定を依頼することも可能。仲介を依頼しておき、市場での需要や売却価格を確認しておくことで、不動産買取業者に安く買い叩かれるリスクを避けることができる。
手間なく空き家を売却したいなら訳あり物件専門業者に買取依頼すべき理由
買取で空き家を処分する場合、訳あり物件専門の買取業者に依頼するのがおすすめです。
一口に不動産買取業者といっても、物件の種類や特徴によって得意不得意があります。空き家のように買い手のつきにくい物件は、空き家の活用や売買のノウハウ・経験がある、訳あり物件専門買取業者が得意とする分野です。
ここからは、訳あり物件専門買取業者に依頼すべき理由をまとめてお伝えします。
- 個人の買い手を見つける必要がなくスピーディーに売却できる
- 修繕などの必要なく現況のまま売却できる
- 仲介手数料を払う必要がない
- 契約不適合責任を免責できる
空き家は個人にも、一般的な不動産買取業者にも売れにくいため、相談するなら訳あり物件専門買取業者を探しましょう。
個人の買い手を見つける必要がなくスピーディーに売却できる
訳あり物件専門買取業者であれば、仲介のように買い手を見つけるプロセスはなく、買取業者が査定・提示した金額に納得すれば空き家を手放すことができます。
買取完了までの期間は業者によっても異なりますが、最短1週間で売買契約を締結し、1ヶ月程度で代金の決済が完了します。仲介だと、不動産仲介業者との仲介契約と買い手との売買契約と2回契約手続きが必要です。しかし、買取であれば、不動産買取業者との売買契約1回で、手続き自体も仲介より簡便で、スムーズに売却を完了できます。
修繕などの必要なく現況のまま売却できる
訳あり専門買取業者であれば、リフォームや修繕をする必要はなく、現状のまま買い取ってもらえます。
空き家を仲介業者を通じて個人に売却する場合、物件の価値を高めるために残置物(物件内に残っている荷物や不用品)の撤去、リフォーム、修繕、さらには清掃まで求められる可能性があります。訳あり物件専門買取業者の場合は、残置物の撤去・処分にかかる費用を含めて査定額を出してもらえます。自分で手配する手間や時間、出費がないので、早急に物件を手放したい場合には最適な選択肢といえるでしょう。
仲介手数料を払う必要がない
不動産買取業者では、買い手が業者自身なので、売却するための出費がありません。不動産仲介業者を介して空き家を売却する場合には、売却が成立した際に支払う成果報酬として仲介手数料を支払う必要があるため、売却価格から手数料分がマイナスされます。
なお、仲介手数料の上限は宅地建物取引業法で定められています。上限額より安い場合もあるが、上限通りの金額が請求されるのが一般的です。
売却価格(税別)
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仲介手数料の上限額
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200万円以下
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売却価格×5%(税別)
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200万円超~400万円以下
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売却価格×4%+2万(税別)
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400万円超
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売却価格×3%+6万(税別)
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800万円以下
※低廉な空家等の媒介の特例
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30万円(税別)
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例えば、500万円で空き家を売却した場合、約23万円の仲介手数料がかかります。また、売却価格が500万円の場合、「低廉な空家等の媒介の特例」という仲介手数料の上限を引き上げる特例の適用を受けるため、最大で33万円の仲介手数料がかかる可能性があります。売却価格にもよりますが、場合によっては仲介手数料が負担になることもあるでしょう。
■低廉な空家等の媒介の特例とは
物件価格が800万円以下の宅地建物に関して、不動産仲介業者が最大33万円(税込み)の仲介手数料を受領できることを定める特例。空き家や空き地の増加に伴い、空き家・空き地の不動産市場での流通を促進させるために2024年7月より適用されるようになった。
契約不適合責任を免責できる
不動産買取業者に売却する場合、契約不適合責任が免責される点も大きいでしょう。
契約不適合責任とは、売却後に隠れた欠陥があった場合、売主が責任を負う契約です。具体的には、損害賠償や契約解除、補修にかかる費用の負担を求められることになります。しかも、契約不適合責任の時効は物件の引き渡しから10年とかなり長く、長期責任を負う必要があります。
対して、訳あり物件専門買取業者であれば、大半は契約不適合責任を負わない契約で売買します。買い手から契約不適合責任を追及されるリスクがないため、安心して売却することができます。
空き家の売却を訳あり物件買取業者に依頼する場合の2つの注意点
売れにくい空き家を手軽に手放す方法として、訳あり物件買取業者の利用は有力な選択肢といえます。ただし、下記の2点については注意が必要です。
- 仲介よりも売却価格が下がりやすい
- 空き家の買取業者でも得意分野は異なる
それぞれ詳細を確認していきましょう。
仲介よりも売却価格が下がりやすい
訳あり物件専門買取業者に売却する場合、仲介の6~8割程度の売却価格になってしまいます。
これは、訳あり物件専門買取業者が空き家の残置物の撤去・処分や、その後の活用のための解体・リフォームなどにかかる費用が差し引いて買い取るためです。仲介で売れるのであれば、仲介手数料を支払ってでも仲介で売ったほうが手元に残るお金が多くなる可能性があります。仲介で売れなかった、仲介で売れる可能性がなかったら、買取業者を利用するという流れで検討するとよいでしょう。
空き家の買取業者でも得意分野は異なる
空き家と言っても状況によって、ゴミ屋敷・事故物件・再建築不可物件・共有持分など買取業者のなかでも取り扱いが得意な分野が異なります。
訳あり物件専門買取業者を選ぶ際は、買取実績からどのエリアで、どのような物件を買い取っているのかを確認するようにしましょう。自身の所有する物件に似た物件の買取実績が多いほど、活用するノウハウや経験が豊富で、より適正な金額で買い取ってもらえる可能性があります。反対に、取り扱いに慣れていない物件の場合、利益を出すためにどれだけコストがかかるのか業者自身がわからないため、高額な買取価格を提示できません。
売却の際は、自身の所有する物件を得意とする買取業者を探すようにしましょう。
仲介で空き家を売却する方法
まずは仲介で空き家の売却を目指す場合でも、売却するまでのプロセスにはいくつか選択肢があります。
- 空き家でも綺麗な場合はそのまま売却する
- 空き家を解体して土地を売却する
- 空き家をリフォームして売却する
そのまま売却できれば問題ないのですが、解体やリフォームが求められた場合、注意しなければ出費が売却価格よりも大きくなりかねないため注意が必要です。
空き家でも綺麗な場合はそのまま売却する
「空き家でも建物の状態が良い場合」は仲介業者に依頼すべきケースとして紹介した通り、空き家になってから期間が短く、建物が綺麗な状態であれば、不動産仲介業者を介してそのまま売却できます。
建築後1年以内であれば「新築住宅」、築20年以内であれば「中古住宅」、築20年以上経過していれば「古家付き土地」として販売されます。新築住宅に需要があることはもちろん、中古住宅も新築住宅よりも安く購入できるため、購入費用を抑えたい人からの需要があります。
ただし、築年数にかかわらず、建物の状態が良くない場合は売れにくくなってしまいます。築年数が浅く、綺麗な状態である物件であれば、そのままの状態でも売却を進めましょう。
空き家を解体して土地を売却する【注意点あり】
不動産仲介業者を利用して売却する場合、空き家を解体し、更地にしてから土地を売却することもできます。
築20年以上経っている古民家付き土地は、建物自体にほとんど価値がないどころか、建物を大規模リフォームや修繕、解体する必要があるためマイナス評価となります。更地にすることで、買主がリフォーム費用や解体費用を負担する必要がなくなるため、買い手が付きやすくなるのです。
ただし、更地にすると、土地にかかる固定資産税や都市計画税が高くなります。土地に建物が立っている場合、土地の固定資産税や都市計画税は減税措置の対象になりますが、建物を解体してしまうと減税措置がなくなるため、固定資産税は3~6倍、都市計画税は3倍に上がります。
かかった費用を売却価格に上乗せできる場合がありますが、結果的にかかった費用を回収できないことも珍しくありません。更地にすべきかは判断が難しいため、更地にすべきケースや判断するタイミングについてはよく確認が必要です。
空き家を更地にすべきケース
更地にするべきかどうかは、物件の状態や周辺の市場動向に大きく影響されます。具体的には、下記のようなケースであれば売却のために更地にする選択が有効だといえます。
- 建物が老朽化し、リフォームや修繕が不可能な場合
- 土地の価値が高く、建物自体の評価が低い場合
- 管理の負担を軽減したい場合
- 建物の建て替え費用がリフォーム・修繕費用を下回る場合
解体するかどうかは査定してから判断する
更地にすべきケースに当てはまっていても、安易に解体してしまうのはNGです。築年数が経っていても使用できる建物もあるため、空き家を解体するかどうかは、不動産仲介業者に査定してもらってから判断しましょう。
建物に価値があったこと・解体しないほうが手元に多くお金が残ることが、解体してから判明してもどうすることもできません。建物の解体には多額の費用がかかるため、安易に解体してしまうと損をする可能性があります。
さらに、更地にすると固定資産税・都市計画税が高くなるため、買い手探しが長期化した場合、金銭的負担が大きくなります。更地にすべきか否かや、解体・建て替えにかかる費用については、査定後に不動産仲介業者と相談して検討するようにしましょう。
解体費用|建物を解体して売却する場合にかかる費用
建物を解体してから売却する場合には、多額の解体費用がかかります。解体費用は、建物の構造や大きさ、階数によって異なりますが、おおよその目安は下記の通りです。建物が固く、大きくなるほど重機や職人の人数が必要になるため、費用は上がる傾向があります。
建物の構造
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解体費用(1坪あたり)
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木造
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3~5万円
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鉄骨造
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4~6万円
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鉄筋コンクリート造
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6~8万円
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日本の戸建ては約6割が木造で、平均面積は30~40坪です。30坪・木造住宅という一般的な戸建てを例にすると、90万~150万円もの解体費用がかかることになります。
空き家をリフォームして売却する【注意点あり】
不動産仲介業者を利用して売却する場合、空き家をリフォームしてから売却する選択肢もあります。
売り手側でリフォームしておくことで、内見時の印象が良くなるだけでなく、買い手が購入後にリフォームする手間や費用をかけずに済むため、購入のハードルが下がります。例えば、クロス・床材の張替やトイレ・キッチンなど水回り設備の交換、外壁の塗装などです。建物の築年数にもよりますが、リフォームをすることで、かかったリフォーム費用分以上の金額で売れるケースもあるでしょう。
ただし、リフォーム内容によってはかなり費用がかかります。リフォームをしたからといって、売却価格が大きく上がらない可能性もあるため、リフォームをすることで結果的に損をしかねません。まとまった貯金が必要となると、売るときの心理的ハードルも上がってしまいます。
建物に価値が残っており、「更地にすべきケース」に該当しない場合は、どの程度建物の評価のプラスになるのかをよく確認しながらリフォームを検討しましょう。
リフォームもするかどうかはまず不動産会社に相談する
更地にするかの判断と同様に、リフォーム・修繕をするかの判断も、まずは不動産仲介業者に査定をしてもらってからにしましょう。
実は、リフォーム済みの中古物件を検討している人は少数派です。なかにはリフォームされていない中古住宅をできるだけ安く購入して、自分たちの思い通りにすべてをリノベーションしたいと考えている買い手も存在します。
また、リフォーム費用はかなり高く、売却のためのリフォームではかかった費用を回収するのは難しいといわれています。たとえ、売却価格がリフォーム費用を上回ったとしても、リフォームなしで売却したほうが手取り額が多かったということもあり得るのです。
無駄な出費を避けるためにも、リフォームする前にプロの意見を聞くことが重要といえるでしょう。不動産仲介業者に相談することで、物件の状態や築年数、市場動向を踏まえた適切なアドバイスが得られます。
リフォーム費用|リフォームして売却する場合にかかる費用
リフォーム費用は、どこをどうリフォームするのかで大きく変わってきます。同じ内容のリフォームでも、床面積・工期といった条件によって金額の幅は大きいものです。
一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会の「2022年度住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査 結果報告書」によると、マンションのリフォーム費用の平均は278.6万円、一戸建てのリフォーム費用の平均は471.6万円です。建物の築年数やリフォームの内容・範囲にもよりますが、マンションでも戸建てでも数百万円の出費が必要になることを覚悟しておきましょう。
なお、個別の相場は下記のとおりです。
壁紙の張替
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1,000円/㎡
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床材の張替
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1~7万円/畳
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造り付け収納の設置
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5万~20万円
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トイレの交換
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20万~60万円
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洗面所の交換
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20万~60万円
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ユニットバスの交換
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50万~150万円
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キッチンの交換
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50万~150万円
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和室を洋室にするリフォーム
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50万~100万円
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リビング全体のリフォーム
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100万~300万円
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外壁の塗装
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50万~350万円
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「空き家バンク」などのサイトを利用する
あまり一般的ではありませんが、不動産仲介業者を利用せずに、直接空き家を購入したい個人にインターネットを通じて売却する方法もあります。
インターネットが普及したことで、個人間で空き家を取引できるサイトが存在します。売り手がサイト上で物件の住所や状態、売却希望金額といった物件情報を掲載し、買い手が応募することでインターネット上で売り手と買い手がマッチングされるのです。例えば、自治体やが運営する「空き家バンク」であれば、サイトの管理者やサービス提供元に対する不安はないでしょう。
自治体が運営する空き家バンクへの登録は基本的に無料です。不動産仲介業者で取り扱ってもらえなかった場合やなかなか買い手がつかない場合に、空き家バンクに登録しておくことで、買い手が見つかるチャンスが増えるでしょう。掲載料金や仲介手数料もかからないので、売却にかかる費用を抑えることもできます。
ただし、仲介では不動産業者が代行してくれる内見や問い合わせ対応、価格交渉、契約書の作成などすべてを自分で行う必要があります。不動産の取引では動く金額が大きいため、契約内容や手順に不備があると後から大きなトラブルになったり、本来の価値よりも安い金額で売ってしまったりといったリスクもあります。
また、自治体は業者のように広告を打ったり買い手探しをしたりと売却活動をするわけではないため、空き家バンクに登録したからといって、買い手が見つかるとは限りません。空き家バンクの存在は少しずつ認知はされてきたはいますが、まだまだインターネットで不動産を探し、個人間取引をしようとする人は多くありません。そのため、売却までに時間がかかる可能性がある点にも注意が必要です。
空き家を売却する際の注意点
空き家を売却する際は、仲介・買取を問わず、下記の点に注意してください。
- 売主名義として名義変更済みの空き家なのか確認する
- 居住しなくなってから3年以内に売却する
- 共有名義の場合は売却するために全員の同意が必要
- 売買契約時には契約不適合責任免責の特約を定める
- 個人間で売買しない
不動産の売買は後々トラブルになることも多く、「売却前に知っていれば○○しなかったのに…」「もっと注意しておけば!」と後悔するケースも少なくありません。空き家を売却するときの注意点はしっかり押さえておきましょう。
売主名義として名義変更済みの空き家なのか確認する
空き家を売却する際には、まず不動産の名義を確認しておきましょう。自身で購入した不動産であれば名義の心配はありませんが、相続によって所有することになった場合は、相続登記が完了しておらず、名義変更がされていないケースもあります。
不動産の所有者は、登記簿に記載された名義人です。実際には自分が所有している不動産であっても、登記簿の権利欄に権利者としての記載がなければ、不動産を売却することができません。名義人が被相続人のままの場合、相続登記をしてから売却を進める必要があります。不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)は、法務局に行けば誰でも取得できます。
居住しなくなってから3年以内に売却する
空き家を相続した・今まで住んでいた家が空き家になるという場合は、できるだけ早く売却を進めるようにしましょう。
建物は人が住まなくなることで、換気や掃除が行き届かず、劣化するスピードが早くなります。さらに、相続してから、または居住しなくなってから3年までは、税の控除を受けられる公的制度を活用できます。税控除の適用は、基本的に相続開始・居住しなくなってから3年以内に売却することが条件です。
仲介を利用する場合は相談から売却まで1年以上かかることもあるので、事前の準備や買い手が決まったあとの手続きも考えると、それほど時間的な余裕はありません。不動産仲介業者・不動産買取業者に、利用できる制度と「いつまでに売れれば良いか」をしっかり相談しながら早めに売却に着手することが大切です。
なお、具体的にどのような制度が活用できるのかは、本記事「費用や税金を抑えるための公的制度」で詳しく解説しています。
共有名義の場合は売却するために全員の同意が必要
不動産が単独名義であれば、自分の判断で売却できますが、不動産が共有名義だった場合は共有者全員の同意が得なければ不動産全体を売却することができません。
共有者が多くなるほど全員の同意を取るのが難しくなりますが、管理にかかる諸費用は持分割合に応じて負担する必要があります。なお、共有物分割請求訴訟を起こすなど、共有者から同意を得ずに不動産全体を売る手段もありますが、手間と時間、費用がかかるため、金銭的にも精神的にも普段は大きなものとなります。
参考:共有者の同意なしに家を売却できるか?共有持分の売却についても解説
自身が所有する共有持分のみであれば単独の判断で売却が可能です。ただし、共有持分のみを売却しても不動産全体を売却して持分割合分の売却代金を受け取るよりも手元に来るお金は少なくなります。
売買契約時には契約不適合責任免責の特約を定める
空き家を売却する際には、売買契約時に「契約不適合責任免責」の特約を定めるようにしましょう。
契約不適合責任の免責を設定しておかないと、売却後10年間は契約時にわからなかった不動産の瑕疵の責任を負わなければなりません。特約を売買契約に盛り込むことで、売却後に物件の不具合が発見されても、買い手は責任を追及されることないので、安心して売却が完了させられます。
不動産買取業者に売却する場合は、多くは契約不適合責任は免責されますが、法的に必ず免責になるという規定があるわけではありません。売却する手段を問わず、契約時には必ず免責の特例が盛り込まれているかを確認してください。
個人間で売買しない
空き家を売却する際には、できるだけ個人間売買は回避したほうが無難です。
不動産売買の知識や関連する法的知識を持たない素人同士の個人間売買は、トラブルになるリスクが高く、積極的に推奨できる手段とはいえません。知識がなく、売買に不慣れなことから契約内容や手続きに不備があるまま進めてしまうこともあるでしょう。例えば、適正な価格査定が行われないまま売買が進んだことで、相場よりも安く売ってしまった・高く買ってしまったという事態になれば、どちらかが大きな損をしたり契約解除を求めたりと大きなトラブルになることが予想されます。
もし個人間取引を行う場合でも、不動産仲介業者や司法書士・行政書士、弁護士、不動産鑑定士といった不動産のプロを入れて取引を進めるようにしましょう。
空き家の売却にかかる税金
空き家の売却では、どのように売るかにかかわらず、下記3つの費用がかかります。
空き家の売却を進めるときは、税金の支払いについて押さえておきましょう。
譲渡所得税|売却して得た利益にかかる税金
譲渡所得は、不動産を売却して得た利益のことを指します。譲渡所得はその他の所得と合せて、譲渡所得税・住民税の算出に用いられます。
■譲渡所得の算出方法
売却額-(取得費+売却時にかかった譲渡費用)
取得費とは、不動産の購入代金・購入手数料・設備費・改良費を合計した金額を指します。建物の場合、減価償却費を差し引いて算出します。また、譲渡費用には、不動産を売却するためにかかった仲介手数料・測量費・印紙税・建物の解体費用などが含まれます。
なお、譲渡所得にかかる税率は、下記のように空き家の保有期間によって異なります。
空き家の所有期間
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所得税+復興特別所得税
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住民税
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合計
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5年以下
(短期譲渡所得)
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30.63%
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9%
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39.63%
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5年超
(長期譲渡所得)
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15.315%
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5%
|
20.315%
|
参考:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
参考:国税庁「No.3252 取得費となるもの」
参考:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」
相続登記費用|相続登記していない空き家を売却する前に必要
相続登記費用とは、不動産の相続時の名義変更の手続きである相続登記にかかる費用です。相続した空き家を売却するには、必ず相続登記を行い、不動産の名義を自分にしておかなければなりません。現在、相続登記は不動産を相続で取得した人の義務となっており、相続を知った日から3年以内に手続きをしないと、10万円以下の過料(行政上の罰則)が課されます。
相続登記の手続きでは、申請書類の取得費や登録免許税がかかります。手続きを司法書士に依頼する場合は、申請書類の取得費と登録免許税にプラスして、司法書士への報酬もかかります。
登録免許税
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固定資産税評価額×0.4%
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書類の取得費
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200~700円程度/通(計5,000~1万円)
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司法書士の報酬
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10万円程度
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印紙税|印紙を購入した場合にかかる税金
印紙税とは、課税文書を作成する際に課せられる国税です。不動産の売買では、不動産売買契約書の作成時に必要となります。
不動産を売却する際の印紙税額は、下記の通り売却価格に応じて決まります。2027年3月31日までに作成された契約書に関しては、印紙税の税額が軽減されています。
売却価格
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本則税率
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軽減税率
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500万円超~1,000万円以下
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1万円
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5,000円
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1,000万円超~5,000万円以下
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2万円
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1万円
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5,000万円超~1億円以下
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6万円
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3万円
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1億円超~5億円以下
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10万円
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6万円
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※軽減税率=2027年3月31日まで
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費用や税金を抑えるための公的制度
空き家を売却する場合、売却費用や税金を抑えるための公的制度を活用できます。売却や申請の期限が設けられているため、利用したい場合は期限内に売却を完了させる必要があります。
- 3,000万円特別控除
- 相続空き家3,000万円特別控除
- 相続税額の取得費加算
- 10年超所有軽減税率の特例
- 空き家解体の補助金
現在、全国で放置されている空き家が急増しており、近隣の環境や地域の治安悪化の原因となっています。国や自治体も空き家の活用や市場への流通を積極的に進めており、空き家の売却に関しては上記のように税の控除や補助金が用意されています。
居住用財産の3,000万円特別控除|譲渡所得から控除できる制度
居住用財産の3,000万円特別控除(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例)とは、個人が居住していた不動産を売却する際、売却によって生じた譲渡所得から最大3,000万円まで所得税の控除を受けられる制度です。
この居住用財産の3,000万円特別控除を利用できれば、譲渡所得にかかる所得税を節税できます。
相続空き家3,000万円特別控除|空き家を相続した場合に利用できる制度
相続空き家3,000万円特別控除(被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例)は、相続または遺贈で取得した空き家を売却した際に、譲渡所得から3,000万円まで所得税の控除を受けられる制度です。
同特例の期限は2027年12月31日までなので、活用したい場合は早めの売却・申請が必要です。
相続税額の取得費加算の特例|相続税を支払った場合に利用できる制度
相続税額の取得費加算の特例(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)とは、不動産の取得費をすでに納めている相続税の一部に加算できる制度です。取得費に相続税額を加算することで、譲渡所得を減らし、結果的に、所得税・住民税の軽減を受けられます。
同特例は譲渡所得のみに適用されるので、事業所得や雑所得には適用できません。また、相続空き家3,000万円特別控除との併用はできないので、どちらのほうが得になるのか計算してから利用する制度を決めましょう。
10年超所有軽減税率の特例|10年以上所有していた場合に利用できる特例
10年超所有軽減税率の特例は、長期間住んでいた住宅を売却する場合に譲渡所得にかかる税率が低くなる制度です。所得税の税率が下がるため、税負担が軽減されます。
通常の長期譲渡所得の税率は、所有期間5年超で20.315%ですが、10年超所有軽減税率の特例が適用できれば、譲渡所得6,000万円以下の部分に対してかかる税率は14.21%に軽減されます。
なお、居住用財産の3,000万円特別控除と10年超所有軽減税率は併用可能なので、両方活用できれば大きく税負担を軽くすることができます。
空き家解体の補助金|自治体によって利用できる
自治体によっては、空き家解体の補助金制度があるところもあります。給付額は自治体によって異なりますが、解体費用の5分の1~2分の1程度の金額(上限額あり)を支援してもらえます。
空き家が放置されていると、不法投棄や不法侵入、放火といった犯罪の温床になったり、街の景観や他の住民の住環境を阻害したりする可能性があります。現在、全国の空き家は増加しているため、多くの自治体で空き家を発生させない取り組みが進められています。
解体の補助金がある自治体例
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北海道苫小牧市
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空家等解体補助金
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東京都墨田区
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老朽危険家屋除却費等助成制度
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愛知県豊田市
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豊田市空家解体促進費補助金
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大阪府大阪市
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密集住宅市街地のための補助制度
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放置された空き家のうち、衛生上有害な場合や倒壊の危険がある場合は、近隣の住宅や住民に被害を及ぼすため、自治体に「特定空き家」と認定される可能性があります。特定空き家に指定されると、補助金の支給対象となりやすい反面、解体を所有者が進めないと行政による解体が行われることもあります。行政による解体では、自分で手配するよりも高額な解体費用を請求されるため、特定空き家に指定された場合は早急に解体など対応する必要があります。
まとめ
今回は、空き家を売却するときに知っておきたい、売却方法の選び方から売却時の注意点、売却にかかる費用と費用を抑える公的制度まで詳しく解説しました。
空き家は放置すればするほど価値が下がるため、売れにくく、売却金額も低くなる傾向があります。放置することで、近隣への迷惑にもなります。さらに、居住しなくなった・空き家を相続した後、3年以上経つと税の控除も受けられなくなるため、将来的に住む予定がないのであれば早々に売却の準備を始めるようにしましょう。
建物の築年数が浅く、状態が良い場合や利便性が良いエリアの物件の場合は、高く売れやすい仲介での売却がおすすめです。一方で、すでに長期間放置していまっていて、物件が劣化している場合や、利便性が悪いエリアの物件の場合は仲介では売れない可能性が高いので、不動産買取業者に売却することで、手間と時間をかけず、すぐに不要な空き家を現金ができます。
空き家を売却する場合によくある質問
空き家を売却したら確定申告は必要?
空き家を売却して、譲渡益(利益)があった場合は確定申告が必要です。不動産売却で活用できる税金の特例を受ける場合も確定申告しなければなりません。また、損失が出た場合は確定申告をする義務はありませんが、確定申告をすることで税金が安くなることがあります。
確定申告は毎年2月16日~3月15日と期間が決まっているので、遅れないよう早めに手続きすることをおすすめします。
空き家の売却で自分でできることは何かある?
仲介で空き家を売却する場合は、自分でできることをしておくと、買い手が見つかりやすくなったり売却価格が上がったりする可能性があります。
例えば、家の中の不用品を自分で処分すれば、処分費用を節約しつつ、市場相場に近い金額で売却しやすくなります。布団・衣類・家具・食品などは家庭ごみとして自分で、最小限の費用で処分が可能です。専門業者に依頼すると「産業廃棄物」として処分されてしまうので、処理費用が余分にかかってしまいます。家庭ごみを一度に排出できる量は、一般的に上限があるため、自分でごみを処理する場合は早めに仕分け・排出を始めるほうがよいでしょう。
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