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空き家が行政代執行されると高額請求のおそれあり!リスクと対処法

空き家が行政代執行されると高額請求のおそれあり!リスクと対処法

長期間放置された空き家が劣化し、周囲に危険や悪影響を及ぼすと、「特定空き家」に指定される可能性があります。特定空き家とは、空き家等対策特別措置法に基づき、行政が周辺環境への悪影響を防ぐために対応を求める建物のことです。所有者が行政からの改善指導や命令に従わない場合、行政代執行が行われ、建物の解体や修繕が強制的に実施されるうえ、その費用が請求されることもあります。

ただし、特定空き家に指定されたとしても、行政代執行が即座に行われるわけではなく、改善措置を講じることで回避可能です。空き家を適切に維持管理できない場合や、修繕・解体費用の負担が難しい場合は、早めに売却を検討するのがおすすめです。特に、訳あり物件を専門とする買取業者に売却することで、手間をかけずに迅速な現金化が可能なうえ、行政代執行のリスクを完全に回避できます。

本記事では、空き家が行政代執行されるリスクやその手続きの流れ、行政代執行を回避する方法について詳しく解説します。また、空き家を早期に売却することのメリットと、訳あり物件専門の買取業者を活用する利点についてもご紹介します。

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空き家が行政代執行されるのはリスクしかない

空き家を放置して保安上・衛生上の問題がある場合には、行政から「特定空き家」に指定され、最終的には行政代執行により空き家が解体・除去されます。「行政が代わりに空き家を処分してくれるのならラッキーでは?」と思ってしまいそうですが、行政代執行は空き家の所有者にはリスクしかありません。

まずは空き家が行政代執行された場合の3つの大きなリスクについて確認します。

  • 高額な解体費用を請求される
  • 財産を差し押さえされる
  • 社会的な信用を失う

家は住む人がいなくなると劣化が早まり、屋根や外壁の剥落や建物の倒壊の恐れも高まります。誰も住む予定がない場合は、長く放置せず、早めに処分するのが得策です。

高額な解体費用を請求されるリスク

行政代執行での空き家解体の業者手配や契約はすべて自治体が行いますが、解体にかかった費用は全額が空き家の所有者に請求されることになります。

自分で空き家を処分する場合、処分方法や業者は自分で選ぶことができるので、安く処分できる業者を選ぶことも可能です。しかし、自治体はわざわざ安い業者を選んで依頼するわけではありません。そのため、解体や廃棄物の処分、樹木の伐採などにかかる費用は、自分で業者に依頼した場合よりも高額になります。

解体にかかる費用は、家の構造や大きさ、階数にもよりますが、なかには1,000万円を超えるケースもあります。

■千葉県柏市の事例
法人事業者が移転して管理が行き届いてない建物で外壁や屋根の一部が崩落。柏市は所有者に対して、建物の除去を十数回にわたり指導したが改善されず、敷地が通学・通勤に使われる道路や鉄道の線路に面していたため、緊急性が高いとして行政代執行が実施された。
建物構造:鉄骨造3階建て
費用:約1,040万円

財産を差し押さえされるリスク

空き家の所有者が、行政代執行による空き家の解体でかかった費用を支払えなかった場合、行政による財産の差し押さえ(=強制徴収)が実施されます。

差し押さえ対象となるのは、現金や預貯金はもちろん、不動産や自動車、株式、貴金属・宝石など、空き家の所有者が持つすべての資産です。資産は差し押さえられた後は公売にかけられ、滞納している支払いに充てられます。給与についても、生活ができる範囲で手取り額の4分の1まで差し押さえが可能です。

行政代執行の費用の請求は、税金の支払い請求と変わりません。費用を支払わなければ税金の滞納と同等の扱いになり、たとえ自己破産しても支払い義務は消えずに残ります。なお、先ほど紹介した千葉県柏市の事例では、所有者が費用を支払えず、所有者の差押えとその公売が行われています。

社会的な信用を失うリスク

所有者が所有者としての責任を果たさず、近隣住民や周囲の建物への危険性・緊急性が高い場合は、テレビやネットニュース、SNSで公開されるリスクもあります。空き家問題は全国的な社会問題です。所有者が適切な管理を怠っており、周囲に迷惑をかけているにもかかわらず、放置しているとなれば社会的な信用を失うことになります。

テレビやインターネットで、実名や顔が大々的に公開されることは多くないでしょうが、場所と空き家の外観などが分かれば、近隣住民や職場の同僚、友人知人に気づく人も出てくるでしょう。

行政代執行される前に空き家専門の買取業者に売却するのがおすすめ

空き家を解体しようとするとかなりの費用がかかります。行政から指導を受けているものの、金銭的な問題から解体できず、行政代執行まで至ってしまったというケースも珍しくありません。

空き家を処分したいときは、解体以外にも空き家専門の不動産買取業者に買い取ってもらう方法もあります。売却するなら解体のように費用をかける必要はなく、売却益も得られます。

行政代執行になるまでは、いくつか段階があり、いきなり解体が始まって費用を請求されることはありません。行政が空き家を調査し、何度も改善に向けた働きかけが行われます。行政代執行が実際に実施される日時までに、所有者が改善の処置を始めた場合、執行が延期または中止されることもあるようです。しかし、行政代執行が決まるレベルで問題がある空き家で、特に緊急性が高い状態の場合、改善措置を始めても延期・中止が受け入れられないことも十分にあり得ます。

不動産買取業者への売却は最短で1週間、多くは1ヶ月程度を要します。できるだけ高く買い取ってくれる買取業者を探せるよう、できるだけ助言・指導の段階で、少なくとも勧告の段階で売却できるよう準備を進めるようにしましょう。

■行政代執行までの流れ
1.行政による調査・特定空き家の指定
2.行政による助言・指導
3.行政による勧告・命令
4.行政による戒告・代執行令書による通知
5.行政代執行
6.費用請求
※緊急性が高い場合は、代執行令書での通知は省略されることがある
詳細はこちら

物件の状態や築年数、立地にもよりますが、基本的に空き家は仲介で売れにくい傾向があります。これは、仲介では買い手となる人の大半が一般の個人であり、リフォームや修繕すれば居住可能な不動産を探しているためです。行政代執行の心配があるような、保安上・衛生上の問題を抱えた空き家だと、購入しても高額な解体費用がかかるリスクがあるため、買いたいという人はほとんどいません。

対して、不動産買取業者だと、買い手は不動産買取業者自身であり、将来的に建物や土地を活用するために解体費用を含めた金額で買い取りが可能です。

ここからは、不動産買取業者に売却するメリットをみていきましょう。

  • 行政代執行によるリスクを回避できる
  • 税金・管理費の負担がなくなる
  • 迅速に現金を得られる
  • 契約不適合責任を負わなくて済む

行政代執行によるリスクを回避できる

不動産を売却して所有者が変われば、空き家の管理義務が購入者に移るため、問題箇所の修繕や解体も購入者が行う必要があります。たとえ、最終的に行政代執行が実施されていまっても、自分が所有者でなければ費用を請求されることはありません。

ただし、行政代執行の実施日時が決まっている場合、不動産買取業者であっても買取を拒否される可能性も考えられます。確実にリスクを回避するには、売却するにもやはり早い段階で準備を進めることが重要です。

税金・管理費の負担がなくなる

不動産を手放すことで、これまで空き家にかかっていた固定資産税・都市計画税と維持管理費の支払いが不要になります。住んでいない家を所有しているだけでかかっていた負担がすべてなくなるため、金銭的にも余裕が出てくるでしょう。

なお、特定空き家に指定されると、住居用の建物が受けていた税金の軽減措置が受けられなくなります。固定資産税は最大6倍に、都市計画税は最大3倍になるため、特定空き家に指定された時点でかなりの負担増となります。そのため、空き家を所有することになったら、本来であれば特定空き家に指定されるまえに、解体する、または売却するのがおすすめです。

一方で、売却によって売却益(利益)が出た場合、譲渡所得税が発生します。固定資産税や都市計画税と違い、売却した次の年だけですが支払いが必要になるため注意しましょう。

迅速に現金を得られる

不動産買取業者に売却すると、まとまった現金をスピーディーに得ることができます。

不動産仲介で空き家を売った場合、買い手を探す時間が必要です。一方で、不動産買取業者に売却する場合、買い手は業者自身なので、査定・見積もりを受け、金額に納得できれば売買契約を結び、すぐに売却が完了します。

一般的には1週間~1ヶ月程度で売却できるので、売却することさえ決まれば、スムーズに現金化できるでしょう。

契約不適合責任を負わなくて済む

不動産買取業者に売却する場合、基本的に契約不適合責任を負わずに済みます。

契約不適合責任とは、引き渡された目的物が、種類・数量・品質について契約内容と相違がある場合に売主が負担する法的な責任です。不動産の場合、契約時には知らされていなかった、発覚していなかった瑕疵(不具合や問題)があると、売主が修繕や補修の費用や損害賠償金を負担しなければなりません。

対して、不動産買取業者に売却する場合、多くで売主の契約不適合責任の問わない内容で契約が交わされます。これは不動産買取業者が不動産の売買に精通していることが考慮されるためです。契約不適合責任を負うことになると、引き渡しから10年間は責任を問われる可能性があります。将来的リスクを減らすためにも、仲介ではなく不動産買取業者に売却するのがおすすめです。

ただし、法的に契約不適合責任を免責にする規定があるわけではないため、契約内容はよく確認してから契約をしましょう。

空き家が行政代執行されるのを避けるためのその他の対策

「将来的にその土地に住みたい」「家族に売却を反対されている」などの理由から、できるだけ空き家を売却したくないというケースもあるでしょう。

そこでここからは、行政代執行を避けつつ、空き家が立つ土地や建物を手元に残す方法を紹介します。

  • 空き家を解体して更地にする
  • 空き家を修繕・管理する

いずれも売却するよりも負担は大きいものの、行政代執行による多額の費用請求や財産の差し押さえといったリスクは回避できます。

空き家を解体して更地にする

空き家を解体してしまえば、周囲に及ぼす保安上・衛生上の問題がなくなるため、行政代執行を避けられます。

一般的に個人で業者に依頼した場合の解体費用の目安は、30坪の木造住宅で90~150万円です。安いとは言えない金額ですが、行政代執行になれば、個人で業者に依頼するより大きな金額を請求され、不動産以外の財産を差し押さえられるリスクもあります。どちらにしろ解体費用を負担するのであれば、自分でできるだけ安く対応してくれる業者を探し、依頼するほうがお得です。

建物の構造 解体費用(1坪あたり)
木造 3~5万円
鉄骨造 4~6万円
鉄筋コンクリート造 6~8万円

近年は、放置される空き家が増えていることから、各自治体が空き家を解体するための助成金を用意していることもあります。活用条件や金額については、自治体ごとに異なりますが、助成金を使えるかも確認して解体するかを決めましょう。

ただし更地にすると、住居が建っている土地の固定資産税を軽減する措置「住宅用地の特例」を受けられなくなるため、固定資産税が3~4倍高くなります。更地にする場合は、新しく建物を新築するか、更地にしたうえで土地を売却するとよいでしょう。

空き家を修繕・管理する

特定空き家に指定される場合、具体的にどこが問題なのかを指摘され、改善に向けた助言・指導・勧告・命令が行われます。よって、指摘された箇所を修繕し、問題がなくなれば、行政代執行はもちろん、特定空き家からも外されることになります。修繕さえすれば、自分は住まなくても賃貸として活用することも可能です。

そもそも特定空き家は、倒壊などの保安上の危険がある、または衛生上有害な恐れがあり、十分に管理が行き届いていない景観的にも問題がある空き家が指定されるものです。当たり前ではありますが、適切に管理されていれば空き家として建物が存在していても問題はありません。遠方に住んでいて定期的に維持管理できないという場合は、空き家管理代行サービスの利用も検討するとよいでしょう。

すぐに修繕ができない場合でも、所有者が問題に対応する意思があること、いつまでに対応する予定であるかを伝えれば、少なくとも直近の行政代執行は回避できます。ただし、危険性・緊急性が高い状態の建物の場合、改善までに時間がかかり過ぎると行政代執行が行われる可能性もあるため、自治体に相談しながら、できるだけ早く対応を始めましょう。

空き家に対する行政代執行が実施された事例紹介

すでに全国で特定空き家の行政代執行による解体が実施されています。ここでは、北海道・東京都・埼玉県の事例をみていましょう。

北海道旭川市の行政代執行事例(約410万円)

外壁が剥落するなど必要な管理がなされていない空き家を近隣住民が行政に通報。旭川市は所有者に対して解体などの措置をするよう働きかけたが、長年放置が続き、積雪による倒壊の危険性が高まったとして行政代執行が実施された。

指導から代執行までの期間 約10年
建物構造 木造2階建て
費用 約410万円
費用回収方法 財産の差し押さえとその公売

東京都板橋区の行政代執行事例(約2,580万円)

以前より敷地外への廃棄物のはみ出しが問題になっており、近隣住民からの相談もあり関係各所が連携して所有者に指導を行っていた。所有者の死後、相続人が相続放棄した、または死亡したことにより空き家を管理する人がいなくなり、建物が倒壊する危険性が増加。すでに悪臭害虫が発生しており、放火や不法投棄の危険も危惧し、事件・事故を防止するために相続財産管理人を立てて、行政代執行による建物の解体と廃棄物の処分を実施された。

指導から代執行までの期間 約21年
建物構造 木造2階建て
費用 解体除却1980万円
廃棄物処理費300万円
相続財産管理人費用400万円
総額約2580万円
費用回収方法 相続財産管理人への請求

埼玉県坂戸市の行政代執行事例(約65万円)

近隣住民から草木の繁茂や、道路に面する物置の劣化による危険性が通報され、坂戸市は所有者に対して複数回指導を行っていた。物置は通学路に面しており、通行人や隣家に危害を及ぼす危険性が高いと判断され、物置の屋根の剥落・飛散防止措置と、敷地からはみ出している草木の剪定の行政代執行が実施された。

指導から代執行までの期間 約5年
建物構造 物置
費用 約65万円
費用回収方法 所有者に請求

空き家に対する行政代執行の流れ

空き家に対する行政代執行は、行政から改善に向けて何度も働きかけがあった後に行われます。

ここからは、行政代執行が実施されるまでの流れについて詳しく確認しましょう。

  1. 空き家を修繕・管理する調査・特定空き家に指定
  2. 助言・指導
  3. 勧告・命令
  4. 戒告・代執行令書による通知
  5. 行政代執行
  6. 費用請求

すでに特定空き家に指定され、行政から指導が入っているという場合は、一刻も早く修繕・解体・売却など対応を進める必要があります。

ステップ1.調査・特定空き家に指定

近隣住民からの相談・通報や自治体職員の巡回などで、自治体が問題が発生している空き家を把握したら、保安上危険性があるか、衛生上有害であるか、そして著しく景観を悪化させていないかを自治体職員が現地で外観目視または立入で調査を実施します。

所有者の特定と所有者からの聞き取りで事情の説明や状況の把握も行い、適切に維持管理がされておらず、法的にも条件に当てはまると判断されれば、特定空き家に指定されることになります。

特定空き家の定義については、空家等対策の推進に関する特別措置法(通称、空き家法)によって定義され、国土交通省によってわかりやすくまとめられています。

「定義」
1 この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(中略)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。

2この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
e-Gov法令検索空家等対策の推進に関する特別措置法 第2条

法に定義される「空家等」及び「特定空家等」
(イ) そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(ロ) そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(ハ) 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
(ニ) その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
国土交通省「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)

ステップ2.助言・指導

空き家法に基づき、自治体から改善に向けた「助言・指導」が入ります。具体的には、現状と問題の箇所、周辺への影響の説明を受け、修繕・解体・樹木の伐採・危険物の撤去など必要な対処を対応を求められることになります。助言や指導は口頭や電話、改善指導書で行われます。

この段階で問題を改善したら、自治体に連絡をして、現地の確認を受けます。場合によっては改善措置についての報告書の作成・提出を求められることもあります。

ステップ3.勧告・命令

■勧告
助言・指導を受けても改善されなかった場合、講ずべき対応について内容とその理由、改善の期限の提示を受ける「勧告」が行われます。助言・指導よりも、さらに具体的に何をどうすればいいのか明確に示されることになります。勧告は、言った言わないの水掛け論とならないよう、配達証明・内容証明の郵便で送られてくるのが一般的です。

勧告を受ける際には、居住用建物への税の軽減措置が適用されなくなるため固定資産税・都市計画税が高くなること、そして適切な改善措置を行わないと「命令」に至ることが通知されます。

通知を受けた後には、命令に向けて自治体に対する意見書または意見聴取で、自分に有利な証拠を提出できる機会が与えられます。勧告に従って改善できない場合は、改善する意思の有無や、改善できない正当な理由とその証拠を自治体に伝える必要があるのです。このとき、金銭がないことは正当な理由には該当しないため注意しましょう。

■命令
意見書を期日までに提出しなかった場合・意見聴取に出頭しなかった場合・意見書の提出や意見聴取を経ても改善が見られなかった場合は、改善措置を行うよう「命令」が下されることになります。

命令も配達証明・内容証明の郵便で送られ、自治体広報への掲載やインターネットなどで命令した旨が公示されます。さらに、第三者に被害を与えないよう、空き家周辺の通行人の目に付く場所に命令が出ている旨がわかる標識が設置されることになるため、近隣住民には行政からの連絡を無視し続けていることが知られることになります。

命令まで至ると、その内容には法的効力が発生し、空き家の所有者は必ず改善措置を講じる義務を負います。命令に従わない場合は、50万円以下の過料(行政上の罰則)が科せられることになります。過料は、建物の解体費用とは別物なので、金銭的な負担がさらに大きなものとなってしまいます。

ステップ4.戒告・代執行令書による通知

命令にも従わなかった場合、「戒告(かいこく)」が行われます。戒告とは、期限までに改善措置の義務が履行されなかったときに代執行が行われることを通知する行為を指します。戒告は戒告書によって通知されます。自治体によっては再戒告を行ってくれることろもあります。

戒告書による通知の後は、代執行令書によって代執行が行われる時期・代執行のために派遣される責任者の氏名・代執行にかかる費用の見積額が通知されています。

なお、代執行が当日までに改善の意思表示または改善に向けた対応ができれば、代執行の実施を避けられる可能性は残っています。通知が来てしまった場合、実際に実行する前に何とか延期や中止ができないか、直ちに自治体への相談と、改善または売却の対応を進めるようにしましょう。

ステップ5.行政代執行

自治体からの全ての働きかけをすべて無視し、改善を行わなかった場合、行政代執行が実施されます。

行政代執行の約2週間前には、行政が町内会や近隣に代執行の実施やスケジュールの連絡・説明を行います。また、事前に警察や消防、電気・ガス・水道の各事業者にも情報共有や協力要請がなされます。

実施当日は、自治体の職員と解体業者が集まり、多くは朝に開始宣言を行ったのち作業が開始されます。周辺の安全確保・交通誘導などもすべて行政が手配・実施します。解体作業自体は業者が行いますが、作業期間中は自治体の職員が常駐させる自治体もあります。

ステップ6.費用請求

行政代執行の作業が完了したら、所有者に対して費用を請求されることになります。

金額は作業の内容によって数十万円から1,000万円を超えることもあります。納入通知書が送付されてくるので、期日までに納付しなければなりません。納付されない場合は、督促を経て、不動産や自動車、預貯金などの財産が差し押さえられることになります。差し押さえられた財産は公売にかけられて支払いに充てられます。

まとめ

今回は、特定空き家に指定されても空き家の放置を続けた末、行政代執行に至った場合のリスクや流れについて詳しく解説しました。特定空き家に指定されれば、最終的には行政代執行が行われ、高額な代執行費用の請求や、財産の差し押さえ、社会的信用失墜のリスクが高まります。

特定空き家に指定されたら、少なくとも行政上の罰則が科される命令に至るまでの助言・指導・勧告段階で、行政から指摘された箇所の改善、または解体や売却の対応を行うことをおすすめします。

もちろん、できるだけ早く対応することに越したことはありません。不動産買取業者であれば、解体や修繕することなく不動産を処分できるため、将来住む予定がない空き家を所有することになった時点で売却を進めるほうが、税金や維持費を最小限に抑えて手放すことができるでしょう。

空き家と行政執行に関するよくある質問

行政代執行とは何ですか?

行政代執行とは、近隣住民や近隣の建物に危害を与えかねない空き家に対して、行政が強制的に改善措置を講じる制度です。

行政代執行では、空き家の解体や修繕など業者の手配は自治体が行いますが、かかった費用は空き家の所有者に負担する義務があります。行政代執行に至る可能性のあるのは、特定空き家に指定された空き家です。特定空き家は、「保安上危険がある状態」「衛生上有害である状態」「地域の景観を著しく損なう状態」「放置することが不適切である状態」に当てはまり、行政が調査を行った後に指定されます。

行政代執行が行われる要件は何ですか?

特定空き家であっても、行政代執行法第2条に定められた要件をすべて満たさなければ行政代執行は行われません。

法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。
e-Gov法令検索 行政代執行法 第2条

たとえば、空き家の所有者として義務が履行されていない・義務の不履行が著しく公益に反するという場合には、行政代執行される可能性が高くなります。

空き家の所有者が特定できない場合はどうなりますか?

所有者が特定できない場合は、「略式代執行」が実施されることもあります。略式代執行とは、空き家の所有者がわからない場合に行政の判断で改善措置を行うことです。

行政代執行では所有者に対して改善措置を求める指導や勧告、命令を経てから代執行が行われて、費用は所有者に請求されます。略式代執行では所有者がいないため、代執行にかかった費用は一度自治体が負担し、所有者が確定した段階で請求することになります。略式代執行では、行政代執行よりも迅速に問題解決に向けた措置を講じられるため、危険性・緊急性が高い空き家に対して行われます。

空き家に抵当権がついていても行政代執行の対象になりますか?

現在空き家になっている建物が住宅ローンや不動産担保ローンなどの担保となっており、抵当権が付いている場合でも行政代執行の対象となります。行政代執行によって空き家が解体され、金融機関が損をしても自治体が法的責任を負ったり、損害賠償を支払うことはありません。

ただし、行政代執行になるような大きな問題がある空き家の多くは、築年数が古く、老朽化が進んだ建物です。実際には抵当権が付いている空き家が行政代執行されるというケースは稀といえます。

相続放棄したのですが空き家が行政代執行されたら自分にも請求が来ますか?

自分が所有者であれば、代執行にかかった費用が請求されます。共有不動産の場合、全所有者に費用を負担する義務があります。

なお、相続放棄をした場合でも、場合によっては「管理者」としての責任を完全には放棄できない可能性もあります。空き家法第5条では、管理者による適切に管理する責任を定めていますが、自治体によってはこの管理者に相続放棄をした人も含むという見解をしているためです。

「空家等の所有者等の責務」
空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない。
e-Gov法令検索空家等対策の推進に関する特別措置法 第5条

行政代執行で空き家を取り壊された後でも売却できますか?

空き家を取り壊された後でも、更地になった土地を売却することは可能です。

ただし、代執行の費用を払えない場合は所有者の財産が差し押さえられます。差し押さえられた財産に対象の空き家が含まれる場合、所有者の判断では売却できない可能性があります。差し押さえにあっている不動産の売却や支払いに関しては、行政に相談しましょう。

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更新日 : 2024年12月24日
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