いま現在は住んでいない家でも、適切な管理をしていないと自治体から「特定空き家」に指定されてしまいます。
特定空き家に指定されると、自治体から行政指導を受ける、固定資産税が最大6倍になるといったデメリットがあるため注意しましょう。
行政指導に従わない場合、最大50万円の過料が科されてしまう上、空き家が強制解体されて、費用だけを請求される恐れもあります。
こうしたリスクを避けるためには、しっかりと空き家の管理に努める必要がありますが、面倒な場合は売却してしまう方法がおすすめです。
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特定空き家とは?
人が住んでいない空き家のうち、法律において放置するべきでないと指定されている家です。
2015年5月26日、倒壊などの危険が高い空き家を減らして、適切な管理・活用を促すために「空家等対策の推進に関する特別措置法」が全面施行されました。
この法律において、国土交通省が示す認定基準を満たす建物が「特定空き家」と扱われます。
参照:「空家等対策の推進に関する特別措置法」(e-govポータル)
通常の空き家と特定空き家の違い
法律では通常の「空き家」と「特定空き家」を明確に区別しています。
法律上における、空き家と特定空き家の違いは以下のとおりです。
種類 | 法律上の責任内容 |
---|---|
空き家 | 周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう適切な管理に努める |
特定空き家 | 建物の解体や修繕、植物の伐採など周辺環境の保全を図るために必要な措置を講ずる (自治体から助言・指導・勧告・命令を受ける) |
市町村からの助言・指導・勧告・命令を無視した場合、行政代執行がおこなわれ、その費用を負担させられる |
「空家等対策の推進に関する特別措置法」の第3条で規定されているのが通常の空き家、第14条に記されているのが特定空き家になります。
通常の空き家では、家を放置しても罰則は課せられませんが、特定空き家に指定されると、過料や行政処分が下されるため注意しましょう。
参照:「空家等対策の推進に関する特別措置法 第3条」(e-govポータル)
参照:「空家等対策の推進に関する特別措置法 第14条」(e-govポータル)
法律における特定空き家の認定基準
「空家等対策の推進に関する特別措置法」における、特定空き家の認定基準は4つです。
- 倒壊などの危険がある状態
- 衛生上有害となる恐れのある状態
- 周辺地域の景観を損なっている状態
- 放置することが不適切である状態
要約すると、空き家の存在が周辺地域に危険を与えたり、近隣住民に迷惑を及ぼす場合、特定空き家に指定される仕組みです。
それぞれの認定基準を具体的に解説します。
1.倒壊などの危険がある状態
1つ目の認定基準は、建物が損壊・倒壊するなど、危険な状態にあることです。
以下のような状態にある空き家を指します。
- 建物自体が著しく傾いている
- 建物の基礎に亀裂・ひび割れがある
- 建物の土台が腐朽・破損している
建物が倒壊すると、通行人や近隣住民が怪我をしたり、周辺住宅を傷つける恐れもあるため、早急に空き家を修繕しなければなりません。
2.衛生上有害となる恐れのある状態
2つ目の認定基準は、悪臭・害虫が発生するなど、衛生上有害な状態にあることです。
以下のような状態が具体例に挙げられます。
- 外壁のアスベストが飛散している
- 浄化槽から汚物・悪臭が流出している
- 放置されたゴミから悪臭・害虫が発生している
この場合、排水管といった設備の清掃に加え、ハウスクリーニングによる消臭作業、害虫駆除なども施さなければなりません。
3.周辺地域の景観を損なっている状態
3つ目の認定基準は、雑草・ゴミなどによって、周辺地域の景観を損ねていることです。
具体的には、次のような状態を指します。
- 汚物や落書きで建物が汚れている
- 敷地内にゴミなどが散乱している
- 植物が建築を覆うほど繁茂している
近隣住民から苦情が寄せられるケースも多く、損害賠償請求などを受けるリスクも高いため、早急に対処するように心がけましょう。
4.放置することが不適切である状態
4つ目の認定基準は、空き巣・放火など、周辺地域に悪影響を及ぼす危険が高いことです。
この場合、以下のようなケースを指します。
- 植物が隣地などにはみ出している
- 多数の害虫・害獣が発生している
- 害獣の糞尿によって悪臭が発生している
- 不法侵入できる状態で放置されている
この場合、認定基準は自治体の判断によりますが、悪質な放置と捉えられやすく、行政指導に移行するスピードも早いため注意しましょう。
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特定空き家に指定された場合のリスク
特定空き家に指定された場合、どのようなリスクが生じるのでしょうか。
自治体から特定空き家に指定された後、次のような流れで事態が悪い方向に進んでいきます。
- 状況改善を促す行政指導を受ける
- 固定資産税が最大6倍まで増額される
- 最大50万円の過料が科される
- 行政代執行により家が強制解体される
それぞれのリスクについて、実際の順番どおりに見ていきましょう。
1.状況改善を促す行政指導を受ける
1つ目のリスクは、空き家の状況を改善するように自治体から行政指導を受けることです。
はじめは助言程度の注意で済みますが、以降も改善しない場合は勧告や命令が下されます。
- 助言または指導
- 勧告
- 命令
- 行政代執行
命令に従わない場合は過料が科される上、行政代執行で空き家を解体される恐れもあります。
行政指導を受けた場合、過料や解体費用を請求されないよう、必ず指示に従いましょう。
2.固定資産税が最大6倍まで増額される
2つ目のリスクは、固定資産税・都市計画税が最大6倍まで増額されてしまうことです。
居住用の家は「住宅用地特例」の対象なので、固定資産税・都市計画税が安くなっています。
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|
住宅用地特例の場合 (200㎡まで) |
課税標準額×1.4%×1/6 | 課税標準額×0.3%×1/6 |
住宅用地特例の場合 (200㎡以上) |
課税標準額×1.4%×1/3 | 課税標準額×0.3%×1/3 |
住宅用地特例の対象外 | 課税標準額×1.4% | 課税標準額×0.3% |
しかし、特定空き家に指定されると、住宅用地特例の対象外になるため、固定資産税・都市計画税の税額が最大6倍まで増えてしまいます。
わかりやすいように具体例で解説します。
例えば、以下の条件の家があったとします。
- 空き家の敷地面積が200㎡以下
- 建物の課税標準額=500万円
- 土地の課税標準額=2000万円
住宅用地の特例措置が適用される場合、この家の固定資産税は合計11.7万円で済みます。
- 建物:500万×1.4%=7万
- 土地:2000万×1.4%×1/6=4.7万
- 合計:11.7万円
しかし、特定空き家に指定されると、この家の固定資産税は合計35万円に増えてしまいます。
- 建物:500万×1.4%=7万
- 土地:2000万×1.4%=28万
- 合計:35万円
上記の場合、特定空き家に指定されると、固定資産税が23.3万円も高くなってしまうのです。
特定空き家でない場合 | 11.7万円 |
特定空き家に指定された場合 | 35万円 |
増額された固定資産税 | 23.3万円 |
特定空き家に指定されると、土地の固定資産税が最大6倍も増額されるため注意しましょう。
3.最大50万円の過料が科される
3つ目のリスクは、自治体の命令に応じない場合、最大50万円の過料が科されることです。
特定空き家に指定された場合、所有者が行政指導に従って管理することが義務化されており、それを怠ると最大50万円の過料が科されます。
自治体による行政指導が命令に変わった場合、過料を科される一歩手前なので、自治体の指示に応じて速やかに対処しましょう。
参照:「空家等対策の推進に関する特別措置法 第十六条」(e-govポータル)
4.行政代執行により家が強制解体される
4つ目のリスクは、自治体の行政代執行で空き家を強制的に解体されてしまうことです。
つまり、自治体からの命令に応じない場合は、強制的に指定空き家を解体されてしまいます。
加えて、指定空き家の解体にかけた解体費用は、自治体ではなく所有者の負担となります。
1,000万円近い解体費用を請求されるケースもあるため、行政代執行を受ける前の早い段階で自治体の指示には応じましょう。
相続放棄なら特定空き家を手放せる?
家を相続する場合、特定空き家へ指定されないように相続放棄する人も少なくありません。
しかし、空き家を相続放棄しても、特定空き家に指定されるリスクはなくなりません。
なぜなら、相続放棄を手続きしても、空き家の管理責任は相続人に残り続けるからです。
空き家の管理責任は相続人に残り続ける
法律上では、相続放棄した空き家の管理責任も相続人に残り続けるため注意しましょう。
民法第940条
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
引用:「民法第940条」(e-govポータル)
空き家を相続放棄しても、次の相続人が相続するまで、前の相続人に管理責任が残ります。
そのため、他相続人が相続放棄すると、あなたに管理責任が残り続けて、過料や解体費用を請求される恐れがあるため注意しましょう。
相続財産管理人に管理責任を移そう
空き家を相続する場合、特定空き家のリスクを避けるには、相続放棄後に「相続財産管理人」を選任して管理責任を移しましょう。
相続財産管理人を選任すれば、空き家の管理責任を免れるだけでなく、相続放棄した空き家を国庫に寄贈する形で処分してもらえます。
特定空き家に指定された場合の対処方法
特定空き家に指定された場合も、以下の方法で固定資産税の増額や行政処分を回避できます。
- 代行サービスを用いて空き家を管理する
- 空き家を賃貸物件にして人を住ませる
- 空き家を売却して第三者へ譲渡する
代行サービスまたは賃貸物件の借主という第三者に管理を代行してもらうか、空き家の買主に管理責任を譲渡してしまう方法になります。
それぞれの方法を順番に解説していきます。
代行サービスを用いて空き家を管理する
1つ目の対処法は「代行サービス」を用いて、空き家を代わりに管理してもらう方法です。
空き家の清掃・状況確認といった定期的な管理を、所有者の代わりに代行してくれるサービスを提供している会社もあります。
空き家を手放したくない・将来的に利用する予定がある場合、代行サービスに管理を任せるのも選択肢の1つでしょう。
ただし、代行サービスを依頼するには、月額5,000〜1万円程度の管理費用が必要です。
サービスによって費用が異なるため、依頼する際は費用対効果を検討しておきましょう。
空き家を賃貸物件にして人を住ませる
2つ目の対処法は、空き家を賃貸物件として貸し出して、借主に管理してもらう方法です。
建物が老朽化しておらず、立地の良い空き家であれば、賃貸物件として募集をかけても、借主は比較的集まりやすいです。
賃貸物件として貸し出せば、借主が管理してくれるので、特定空き家の指定を解除できます。
ただし、空き家を賃貸物件にする場合、費用をかけて清掃・リフォームなどを施す必要があるため、費用対効果がよいとは限りません。
空き家を売却して第三者へ譲渡する
3つ目の対処法は、空き家を売却することで、管理責任ごと買主に譲渡する方法です。
空き家を第三者に売却してしまえば、管理責任もその買主に移るので、あなたへ過料や解体費用が請求されることはありません。
「古家つき土地」として売り出せば、賃貸物件と異なり、リフォーム費用なども負担せずに済むので、基本はこの方法をおすすめします。
ちなみに売れにくい地方や郊外の古い空き家を売却したい場合は「一括査定サイト」の利用も検討してみましょう。
複数の価格・条件を比較して、媒介契約を結ぶ不動産会社を選べるため、1社だけに依頼するより良い条件で売却できる可能性が高いです。
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まとめ
誰も住んでいない家を放置していると、自治体から「特定空き家」に指定されて、さまざまなリスクが生じるため注意しましょう。
まず、特定空き家に指定された時点で自治体からの行政指導がおこなわれる上、固定資産税・都市計画税が最大6倍まで増えてしまいます。
さらに、自治体からの行政指導に応じないと、最大50万円の過料が科せるだけでなく、空き家を解体して費用を請求される恐れもあります。
そのため、特定空き家に指定された場合、代行サービスに依頼したり、貸し出して賃貸物件にすることで、第三者に管理を任せましょう。
あるいは、既に空き家が必要なければ、第三者に売却することで管理責任ごと手放してしまうことをおすすめします。
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