築70年のマンションでも売却は可能
結論から言うと、築70年のマンションでも売却は可能です。わずかではありますが、実際に取引された事例もあります。
弊社へのご相談でも「築70年のマンションなんて売れますか?」というご質問をいただくことがありますが、立地や管理状態などの条件次第で売却の可能性は十分にあるのが実情です。
マンションについて「築年数が経つと無価値になる」という人もいますが、これは極端な話です。
確かに、一般的な鉄筋コンクリート造(RC造)マンションの法定耐用年数(税制における固定資産の使用期間)は47年とされており、経過年数に応じて売買価格も低下していくのが一般的です。
しかし、これらはあくまで「市場価値」や「税制上の資産価値」の話です。
どれだけ築年数が経過してもマンションの区分所有権はなくなりませんし、それに付随する敷地利用権(区分所有者が建物の敷地について持つ権利。多くは敷地の所有権の共有持分です)も残ります。
築年数の経過で価値が著しく下がるのは事実ですが、売却が一切不可能になるということはありません。築70年のマンションでも、買主さえ見つかれば売買は成立します。
価格は立地に左右される
中古マンションに共通していることとして、価格は立地に左右されるという点があります。
不動産市場では、建物の市場価値は経年により徐々に下落していくのが一般的です。マンションの場合、法定耐用年数(RC造で47年)を経過すると、税法上の資産価値はゼロとなり、市場価格に占める建物価値の比重も大幅に下がります。築70年クラスのマンションでは、取引価格に占める「土地の価値」の影響が特に大きくなるのが実情です。
そのため、都心の一等地であれば高値で売れる可能性がありますし、需要のない郊外だと二束三文でも売れないかもしれません。
また、都心にあるマンションは建設当時からブランド価値を持つものが大半であり、古くても「ビンテージマンション」として一定の需要を得られます。
つまり、中古マンションの売買価格は、マンションが建つ土地の価値と、マンション自体のブランド価値で決まるのです。
管理状態が良い物件ほど売りやすい
立地以外で需要に影響する要因として、管理状態があげられます。管理が適切におこなわれているマンションであれば、古くても買い手を見つけやすいでしょう。
買主視点でチェックする場合、ゴミの出し方やエントランスの清掃具合、駐車場・駐輪場の利用状況などがまず目につくポイントです。
また、修繕が適切なタイミングでおこなわれているかや、管理費・修繕積立金が妥当な金額で設定されているかなども、管理状態を調べるときに見られます。
しっかりと管理されており、外観や利用状況が良好なマンションであれば、築古でもスムーズに売却できる可能性が高くなります。
なかなか売れないマンションの特徴
なかなか売れないマンションの特徴としては、次の4つが代表的です。
- 立地が悪い
- 耐震工事をしていない
- 管理組合が機能していない
- 修繕積立金が高い
また、築70年のマンションはRC造の法定耐用年数(47年)を大幅に超えているため、買主は一般的な銀行の住宅ローンを組むことが極めて困難です。結果として、買い手は「現金一括で購入できる投資家」や「自己資金が潤沢な層」に限定されてしまうため、需要が大きく狭まる点に注意が必要です。
これらの要因は個人で解決するのが難しいため、売却が難航しているときは、まず不動産会社と売り出し価格や販売戦略の見直しを検討するのが基本です。
それでも買い手が見つからない場合は、不動産会社が直接買い取る「買取」を選択肢に加える方法もあります。買取は仲介に比べて売却価格が下がりやすい一方、買い手募集が不要なため、通常の仲介では成約が難しい物件でも現金化できる可能性があります。
立地が悪い
先にも解説しましたが、中古マンションの売却は立地の良し悪しが結果を大きく左右します。
土地の価値の他に重要なのが、「近くに買い物できる施設があるか」「子育てに適した環境か」など、周辺地域の利便性も重要です。
都市部でも日常生活に不便のあるエリアだと、需要が下がり中々売却できない恐れがあります。
耐震工事をしていない
建物の耐震基準は1981年6月の建築基準法改正で大幅に強化され、それ以前の「旧耐震基準」、それ以降の「新耐震基準」に区分されます。中古マンションだと旧耐震基準のまま現代まで残ってしまっている場合があり、買主側の融資審査で不利になるなど、売却に影響することがあります。
また、旧耐震基準のままだと、大きな災害に対応できず倒壊などの危険性が高くなります。ただでさえ老朽化している築古マンションで、耐震基準も不十分だと買い手がつかなくなるのも当然です。
耐震工事を施せば現行の基準に対応できるため、古いマンションは耐震工事をおこなっているかどうかが売りやすさに大きく影響します。
ただし、マンションの耐震工事は共用部分の変更にあたるため、区分所有者個人の判断ではできず、管理組合の決議(議決権の4分の3以上の賛成)が必要となる点には注意が必要です。
管理組合が機能していない
管理組合とは、区分所有者全員で構成するマンションの管理団体です。マンションの管理状態は、管理組合が正常に機能しているかどうかで決まります。
大規模修繕などマンション全体に係わる重要事項は、管理組合の集会で決定します。逆にいえば、集会で組合員(区分所有者)が集まらないと建物の維持に必要な修繕もできないということです。
築古マンションは相続などで権利関係が複雑になっていることも多く、集会をしたくても組合員と連絡が取れないということも珍しくありません。
規約の決定や清掃・点検業者の委託なども集会で決定する必要があるため、管理組合が機能していないとマンションの利用状況や外観も自然と悪化していきます。
買主側から見ても、管理組合が機能不全になっているマンションはすぐにわかってしまうでしょう。
修繕積立金が高い
マンションは定期的な大規模修繕が必要となるため、区分所有者は修繕積立金を毎月負担しなければいけません。
築浅であれば負担額はそれほど高くなりませんが、築年数が経つほど修繕費は高額化しやすく、修繕積立金も値上がりする傾向があります。また、修繕積立金が長期間滞納されているマンションでは、買主が購入後に滞納分を引き継ぐリスクもあるため、売却の大きな障壁になります。
修繕積立金はマンション所有者にとって必ず発生する出費ですが、立地やブランドの価値に対して割高になっていると、売却はむずかしくなるでしょう。
築70年マンションを売れるようにするための方法
築70年マンションをよりスムーズに売却するための方法としては、次の6つがあげられます。
- 不動産会社を選別する
- 買取業者に相談する
- 売却価格を最低限に抑える
- リフォーム・リノベーションを施す
- ホームステージングを利用する
- 賃貸物件として収益がある状態で売却する
それぞれの詳しい内容や注意点を解説するので、ぜひ売却時の参考にしてください。
不動産会社を選別する
マンション売却で重要なのが、売却を依頼する不動産会社選びです。不動産会社の力量によって、売却価格や売却期間が大きく変わることがあります。
不動産会社は1社ごとに得意な「物件タイプ」や「地域」があり、培ってきたノウハウや顧客ルートも異なります。築70年のマンションを売るなら、築古マンションの取引実績が豊富な不動産会社へ依頼するのが現実的です。
実務上、築古マンションの売却は新築・築浅マンションとは戦略がまったく異なります。築古を扱い慣れていない会社の場合、適正価格より大幅に低い査定が出るケースや、そもそも査定を断られるケースも少なくありません。
査定を依頼する際は、必ず複数の不動産会社に依頼したうえで、査定額そのものよりも「どのような根拠で価格を算出しているか」を確認するのが重要なポイントです。
仲介と買取を比較検討する
不動産売却の方法は、大きく「仲介」と「買取」の2種類に分けられます。
仲介は、不動産会社が買主を探して売主と買主のマッチングをおこなう方法です。市場価格に近い金額で売却できる可能性がある一方、買い手が見つかるまで売却活動を続ける必要があり、築70年クラスの物件では成約までに時間がかかるケースもあります。
買取は、不動産会社が物件を直接買い取る方法です。買い手探しが不要なため売却までのスピードが早く、通常では成約が難しい訳あり物件でも対応してもらえるケースがあるのがメリットです。
ただし、買取の場合は買取業者のコストや再販時の利益が価格に織り込まれるため、仲介での売却価格と比べると安くなりやすいデメリットがあります。
一般的な相場感としては、買取価格は仲介での売却価格の6〜8割程度が目安と言われています。価格を優先するなら仲介、スピードや手間のなさを優先するなら買取、というように、自分が何を重視するかを基準に判断するのが基本です。
売却価格を最低限に抑える
需要が低く中々売れない場合、売却価格を最低限に抑えることも検討してみましょう。買主に「お買い得」と思ってもらえれば、成約率はアップします。
さらに一工夫加えるなら、最低売却希望価格よりほんの少し高値で売り出す方法もあります。少しだけ高く売り出すことで、買主からの価格交渉に対応できるのがポイントです。
交渉を通して価格を下げることで買主はより「得をした」と感じられるため、気持ちよく購入できます。買主側が悩んでいるときに値下げを提案すれば、成約までの最後のひと押しとなるでしょう。
売り出し価格のままで売れれば売却益が増えることになるため、どちらに転んでもメリットのある方法です。
リフォーム・リノベーションを施す
内装や間取りが現代のニーズに合っていない場合、リフォームやリノベーションを検討する選択肢もあります。室内の古臭い印象を一新できれば、買い手がつきやすくなる可能性があります。
ただし、近いうちに建て替えが計画されている場合、リフォーム・リノベーションをしてもあまり意味がないため、状況に応じた判断が必要です。
実務的によくある失敗パターンとして、「先にリフォーム費用をかけ、その分を価格に上乗せした結果かえって売れにくくなった」というケースが挙げられます。築古マンションの買い手は投資家や自分でリノベーションをしたいDIY層も多く、売主が手を加えた内装が買主の好みに合わないケースも少なくありません。
リフォーム・リノベーションを検討する際は、複数の業者から見積もりを取ったうえで、不動産会社にも費用対効果について意見を聞き、慎重に判断するのが重要です。
ホームステージングを利用する
成約率を上げる方法として、ホームステージングという手法が近年普及しています。ホームステージングとは、売却物件をモデルルームのようにコーディネートするサービスです。
インテリアなどを演出することで物件の魅力を引き出すことができるので、売却期間を短縮したり、価格下落を抑えるといったメリットがあります。
一般的な売却日数とくらべて1/3の期間で成約できるというデータもあり、スピーディーにマンションを売却する方法として高い効果が期待できます。
参照:一般社団法人日本ホームステージング協会「ホームステージングとは」
賃貸物件として収益がある状態で売却する
築70年クラスのマンションの主な購入者層は、自己居住向けの個人よりも、賃貸経営で収入を得ようとする投資家や、自分でリノベーションを楽しむDIY層に偏る傾向があります。
いわゆる「オーナーチェンジ物件」といわれるもので、売却価格も利回りを基準にするのが一般的なので、築年数が古くても高く売れる可能性があります。
築70年のマンションをそのまま保有するとどうなる?考えられる2つの未来
もしも築70年のマンションを売却せず、そのまま保有を続けるとどのような未来が待っているのでしょうか?
考えられる未来としては、次の2つがあげられます。
- 建て替えで「再取得」か「転出」か選ぶことになる
- 管理不全による廃墟化・スラム化文
いずれの未来もデメリットがあるため、特別な事情がない限り早めに処分することをおすすめします。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.建て替えで「再取得」か「転出」を選ぶことになる
マンションの建て替え事例は全国的にもわずかですが、仮に建て替えをおこなう場合、区分所有者は「再取得」か「転出」を選ぶことになります。
再取得する場合、建て替え後の部屋を取得することになります。新しいマンションを得られるのは大きなメリットですが、建て替えるための一時金で数千万円のコストが発生するかもしれません。
転出する場合は、自分の区分所有権を建て替え事業者へ売却することになります。確実に買い取ってもらえるというメリットがある一方、価格交渉で時間がかかる恐れもあるでしょう。
ただし、建て替えには集会で議決権の4分の3以上の賛同が必要です(2024年改正の区分所有法により、従来の5分の4以上から要件が緩和されました)。それでも管理組合内での合意形成は容易ではなく、現状は建て替え困難なマンションがほとんどです。
2.管理不全による廃墟化・スラム化
建て替えができない場合、築古のマンションは放置されて廃墟化・スラム化するかもしれません。
実際に、マンションが適切に管理されず社会問題となった事例もあります。
参考:東京新聞「<老いるマンション>進む建物・所有者の高齢化 管理不全、公金で後始末」
日本でマンションが廃墟化・スラム化すると言われてもイメージしにくいかもしれませんが、国土交通省の統計によると、マンションの戸数は2024年時点で約713.1万戸にのぼり、現在も増え続けています。
参照:国土交通省「分譲マンションストック数の推移(2024年末現在)」
供給過多で飽和するマンションについて具体的な対策は未だなく、将来的に社会問題となる可能性は十分ありえます。
築70年のマンションを放置していると、子供や孫の世代に廃墟を引き継ぐことになってしまうかもしれません。迷惑をかけないためにも、早めに処分することを検討してみましょう。
築70年のマンションを売るときの注意点
築70年のマンションを売るにあたって、注意しておきたいポイントは以下の3点です。
- 瑕疵を調べて買主へ伝えておく
- 建て替え計画があるなら買主へ伝えておく
- 早く売却したくても焦らない
トラブルの売却を実現するためにも、上記のポイントをしっかり把握しておきましょう。
瑕疵を調べて買主へ伝えておく
瑕疵とは物件の欠点や欠陥のことで、雨漏りなどの物理的瑕疵や、自殺や事故死などの心理的瑕疵といった種類があります。
これらの瑕疵は、事前に買主へ伝えておかないと「契約不適合責任」に問われてしまいます。
契約不適合責任とは?
引き渡した物件が契約内容に適合しないときに売主が負う責任の範囲を定めたもの。損害賠償のほか、追完(補修もしくは不足数量の補完をすること)や、代金の減額、契約解除などを請求される可能性がある。
とくに、物理的瑕疵は買主がその存在を知らなくても責任を問われる恐れがあるため、ホームインスペクション(専門家による住宅診断)で事前にチェックしておくのが安心です。
なお、契約不適合責任の期間については、築浅物件であれば「引き渡しから3ヶ月間」とする特約も一般的ですが、築70年のマンションでは、設備の老朽化リスクが極めて高いため、個人間売買・業者買取を問わず、売主の責任を一切免除する「契約不適合責任の完全免責」とするのが基本です。
契約締結時には特約の有無や責任期間の取り決めを必ず確認しておきましょう。
建て替え計画があるなら買主へ伝えておく
もし建て替え計画の話が持ち上がっているなら、売却前に買主へ伝えておきましょう。
建て替えが決定すると高額な負担金が発生しますし、建て替え完了まで買主は部屋を利用できません。短期的にはデメリットとなるため、買主とトラブルになる恐れがあります。
建て替え計画について買主に告げないまま売却した場合、信義則上の告知義務違反として、損害賠償請求や売買契約の解除を求められる可能性があります。知っていることは事前に伝えておいたほうが無難です。
早く売却したくても焦らない
マンションの売却では、余裕をもって売却にあたるのが原則です。一刻も早く手放したい状況でも、焦って売却活動をおこなうと失敗しやすくなるので注意しましょう。
焦っていると、本来の適正価格よりはるかに安値で売ってしまったり、悪質業者に騙されて不必要なリフォーム工事を契約してしまったりといったミスを起こしやすくなります。
築古マンションだからといって投げ売りするようなことはせず、優良な不動産会社とじっくり相談しながら売却を進めましょう。
まとめ
築70年マンションは物件数そのものが少なく、売買事例もわずかしかありません。しかし、マンションが供給過多となっているいまの社会情勢から、築70年を迎える物件は今後も増えていくでしょう。
将来的には売却がより困難となり、処分も活用もできないケースが増える恐れがあります。実際に、管理組合の機能不全から建て替えができないケースも発生しています。
トラブルを避けるためには、需要があるうちに売却を検討するのが現実的な選択肢です。仲介と買取それぞれの特徴を理解したうえで、自分の状況や優先順位に合った売却方法を選びましょう。
判断に迷う場合は、築古マンションの取扱実績が豊富な不動産会社に相談し、仲介・買取両方の査定を取って比較検討するのがおすすめです。
築70年のマンションの売却についてよくある質問
築70年のマンションだと、売却はできないでしょうか?
いいえ、築年数が70年を超えていても、売却は可能です。実際に、築70年以上のマンションが売買されている実例もあります。
築70年だと売却価格はどうなりますか?
基本的に建物部分の価値はなくなるため、立地の良さに左右されるでしょう。また、賃貸物件として収益化している場合、利回りを基準に価格が決まります。
築70年のマンションを放置していると、なにかデメリットはありますか?
築古のマンションは今後ますます増えていく恐れがあり、より売却しにくくなる恐れがあります。また、維持・管理がされず、スラム化してしまうケースもありえるでしょう。
築50年のマンションを売る際、リフォームなどは必要ですか?
リフォーム・リノベーションをしたほうが売れやすくなりますが、費用をかけすぎると赤い字になるケースもあります。ますは不動産会社と相談し、費用対効果についてしっかり検討してみましょう。