築70年のマンションでも売却は可能
結論から言うと、築70年のマンションでも売却は可能です。わずかではありますが、実際に取引された事例もあります。
マンションについて「築年数が経つと無価値になる」という人もいますが、これは極端な話です。
確かに、マンションの法定耐用年数(税制における固定資産の使用期間)は47年で終了しますし、経過年数に応じて売買価格も低下します。しかし、これらはあくまで「市場価値」や「税制上の資産価値」の話です。
どれだけ築年数が経過してもマンションの区分所有権はなくなりませんし、それに付随する敷地利用権(マンションの敷地を利用する権利)も残ります。
築年数の経過で価値が著しく下がるのは事実ですが、売却が一切不可能になるということはありません。築70年のマンションでも、買主さえ見つかれば売買は成立します。
築70年以上のマンション売却事例
過去の売買事例を見ると、実際に築70年のマンションが売買されたケースを見つけられます。なお、過去の売買事例は国土交通省の「不動産取引価格情報検索」や不動産流通機構の「REINS Market Information」で確認可能です。
例えば、不動産取引価格情報検索で2020年第3四半期~2022年第2四半期における中古マンション等取引事例を見ると、下記のような物件が見つかります。
都内の築古マンション取引事例
所在地 |
取引総額 |
間取り |
建築年 |
取引時期 |
立川市 砂川町 |
1,800万円 |
3LDK |
戦前 |
2021年7~9月 |
渋谷区 初台 |
4,700万円 |
2LDK |
戦前 |
2021年4~6月 |
稲城市 東長沼 |
2,400万円 |
2LDK |
戦前 |
2020年7~9月 |
小金井市 本町 |
5,800万円 |
3LDK |
戦前 |
2021年4~6月 |
台東区 池之端 |
7,600万円 |
2LDK |
1950年 |
2021年7~9月 |
杉並区 荻窪 |
6,200万円 |
2LDK |
1954年 |
2021年7~9月 |
※データ参照:国土交通省「不動産取引価格情報検索」
物件や取引内容の詳細まではわかりませんが、築70年超の物件でも成約例はあるとわかります。
2022年時点で「築70年のマンション」は物件数自体が少ないことに注意
築70年マンションの売買事例を紹介しましたが、そもそも築70年以上のマンション自体、2022年時点ではごく少数しかない点に注意が必要です。
現在でいうところの分譲マンションの始まりは、1953年の宮益坂アパートメント(最初の公的分譲マンション)や、1956年の四谷コーポラス(最初の民間分譲マンション)になります。
つまり、2022年現在で「築70年のマンション」といえば分譲マンションの最初期に建てられた物件を意味し、売買事例もごく少数ということです。
その後日本のマンションは、何度かのブームを経て現在も増え続けています。それらのマンションがこれから築70年になるまで残るのか、途中で解体や建て替えがおこなわれるのかは誰にもわかりません。
築古マンションが市場に飽和し、売却がいま以上にむずかしくなる可能性を考えると、早めの処分を検討することが重要といえるでしょう。
価格は立地に左右される
中古マンションに共通していることとして、価格は立地に左右されるという点があります。
不動産市場には、建物は法定耐用年数を超えると市場価値がゼロになるという慣習があります。先にも解説した通りマンションの法定耐用年数は47年なので、築70年だと建物に価値はないということです。
そのため、取引されるときは基本的に「土地の価値」を基準に価格が決まります。都心の一等地であれば高値で売れる可能性がありますし、需要のない郊外だと二束三文でも売れないかもしれません。
また、都心にあるマンションは建設当時からブランド価値を持つものが大半であり、古くても「ビンテージマンション」として一定の需要を得られます。
つまり、中古マンションの売買価格は、マンションが建つ土地の価値と、マンション自体のブランド価値で決まるのです。
管理状態が良い物件ほど売りやすい
立地以外で需要に影響する要因として、管理状態があげられます。管理が適切におこなわれているマンションであれば、古くても買い手を見つけやすいでしょう。
買主視点でチェックする場合、ゴミの出し方やエントランスの清掃具合、駐車場・駐輪場の利用状況などがまず目につくポイントです。
また、修繕が適切なタイミングでおこなわれているかや、管理費・修繕積立金が妥当な金額で設定されているかなども、管理状態を調べるときに見られます。
しっかりと管理されており、外観や利用状況が良好なマンションであれば、築古でもスムーズに売却できる可能性が高くなります。
なかなか売れないマンションの特徴
なかなか売れないマンションの特徴としては、次の4つが代表的です。
- 立地が悪い
- 耐震工事をしていない
- 管理組合が機能していない
- 修繕積立金が高い
個人では解決できない要因が多いので、どうしても売却できない場合は買取業者へ相談することも検討してみましょう。
買取なら業者が直接買い取ってくれるので、通常では売れない物件でも売却できる可能性があります。
立地が悪い
先にも解説しましたが、中古マンションの売却は立地の良し悪しが結果を大きく左右します。
土地の価値の他に重要なのが、「近くに買い物できる施設があるか」「子育てに適した環境か」など、周辺地域の利便性も重要です。
都市部でも日常生活に不便のあるエリアだと、需要が下がり中々売却できない恐れがあります。
耐震工事をしていない
建物の耐震基準は1981年を境に大幅な改正がおこなわれましたが、中古マンションだと旧耐震基準のまま現代まで残ってしまっている場合があります。
旧耐震基準のままだと、大きな災害に対応できず倒壊などの危険性が高くなります。ただでさえ老朽化している築古マンションで、耐震基準も不十分だと買い手がつかなくなるのも当然です。
耐震工事を施せば現行の基準に対応できるため、古いマンションは耐震工事をおこなっているかどうかが売りやすさに大きく影響します。
管理組合が機能していない
管理組合とは、区分所有者全員で構成するマンションの管理団体です。マンションの管理状態は、管理組合が正常に機能しているかどうかで決まります。
大規模修繕などマンション全体に係わる重要事項は、管理組合の集会で決定します。逆にいえば、集会で組合員(区分所有者)が集まらないと建物の維持に必要な修繕もできないということです。
築古マンションは相続などで権利関係が複雑になっていることも多く、集会をしたくても組合員と連絡が取れないということも珍しくありません。
規約の決定や清掃・点検業者の委託なども集会で決定する必要があるため、管理組合が機能していないとマンションの利用状況や外観も自然と悪化していきます。
買主側から見ても、管理組合が機能不全になっているマンションはすぐにわかってしまうでしょう。
修繕積立金が高い
マンションは定期的な大規模修繕が必要となるため、区分所有者は修繕積立金を毎月負担しなければいけません。
築浅であれば負担額はそれほど高くなりませんが、古くなるほど修繕費は高くなるため、修繕積立金も値上がりしてしまいます。
修繕積立金はマンション所有者にとって必ず発生する出費ですが、立地やブランドの価値に対して割高になっていると、売却はむずかしくなるでしょう。
築70年マンションを売れるようにするための方法
築70年マンションをよりスムーズに売却するための方法としては、次の6つがあげられます。
- 不動産会社を選別する
- 買取業者に相談する
- 売却価格を最低限に抑える
- リフォーム・リノベーションを施す
- ホームステージングを利用する
- 賃貸物件として収益がある状態で売却する
それぞれの詳しい内容や注意点を解説するので、ぜひ売却時の参考にしてください。
不動産会社を選別する
マンション売却でもっとも重要なのは、売却を依頼する不動産会社選びです。不動産会社の力量によって、売却価格や売却期間が大きく変わります。
不動産会社は1社ごとに得意な「物件タイプ」や「地域」があり、培ってきたノウハウや顧客ルートも異なります。築70年のマンションを売るなら、築古マンションの取引を得意とする不動産会社へ依頼すべきです。
具体的には選び方としては、一括査定を使った選別が確実かつ手軽なのでおすすめです。一括査定で複数の不動産会社を比較すれば、簡単に優良業者を見極められます。
例えば、大手一括査定サイトの「イエウール」では、全国2,000社の優良業者から最大6社まで査定を申し込むことが可能です。サイト側でも提携する業者を厳選しているので、安心して申し込めます。
査定結果を比較し、担当者の対応がしっかりしている業者を選べば、きっとスムーズかつ高額でマンションを売却できるでしょう。
買取業者に相談する
不動産を売却する際、依頼する不動産会社は「仲介業者」であることが一般的です。仲介業者は、手数料をもらって買主募集や手続きのサポートをするという事業内容です。
一方、仲介ではなく物件を自社で直接買い取る「買取業者」も存在します。買い取った物件を再生・再販することで利益を得る業者です。
買取だと企業が買主となるので、支払いが現金即払いであったり、通常では売れない「訳あり物件」にも対応してもらえるといったメリットがあります。
築70年という一般的には売りにくい物件でも、買取業者であれば短期間で現金化できる可能性があるでしょう。
ただし、買取業者は自社のコストや利益を買取価格に上乗せする分、仲介業者で売却するときより安値になりやすいデメリットもあるため、価格と期間のどちらを優先するかしっかり検討してから利用しましょう。
売却価格を最低限に抑える
需要が低く中々売れない場合、売却価格を最低限に抑えることも検討してみましょう。買主に「お買い得」と思ってもらえれば、成約率はアップします。
さらに一工夫加えるなら、最低売却希望価格よりほんの少し高値で売り出す方法もあります。少しだけ高く売り出すことで、買主からの価格交渉に対応できるのがポイントです。
交渉を通して価格を下げることで買主はより「得をした」と感じられるため、気持ちよく購入できます。買主側が悩んでいるときに値下げを提案すれば、成約までの最後のひと押しとなるでしょう。
売り出し価格のままで売れれば売却益が増えることになるため、どちらに転んでもメリットのある方法です。
リフォーム・リノベーションを施す
内装や間取りが現代のニーズに合っていない場合、リフォームやリノベーションを検討してみましょう。室内の古臭い印象を一新すれば、買い手がつきやすくなるかもしれません。
ただし、近いうちに建て替えが計画されている場合、リフォーム・リノベーションをしてもあまり意味がないため、状況に応じた判断が必要です。
また、リフォーム・リノベーションで費用をかけすぎると赤字になってしまう恐れもあるので、事前に不動産会社と費用対効果について話し合っておきましょう。
ホームステージングを利用する
成約率を上げる方法として、ホームステージングという手法が近年普及しています。ホームステージングとは、売却物件をモデルルームのようにコーディネートするサービスです。
インテリアなどを演出することで物件の魅力を引き出すことができるので、売却期間を短縮したり、価格下落を抑えるといったメリットがあります。
一般的な売却日数とくらべて1/3の期間で成約できるというデータもあり、スピーディーにマンションを売却する方法として高い効果が期待できます。
参照:一般社団法人日本ホームステージング協会「ホームステージングとは」
賃貸物件として収益がある状態で売却する
マンションの主な購入者層は、賃貸経営で収入を得ようとする投資家です。そのため、すぐに収入が得られる状態で売り出せば、成約率も高くなります。
いわゆる「オーナーチェンジ物件」といわれるもので、売却価格も利回りを基準にするのが一般的なので、築年数が古くても高く売れる可能性があります。
築70年のマンションをそのまま保有するとどうなる?考えられる2つの未来
もしも築70年のマンションを売却せず、そのまま保有を続けるとどのような未来が待っているのでしょうか?
考えられる未来としては、次の2つがあげられます。
- 建て替えで「再取得」か「転出」か選ぶことになる
- 管理不全による廃墟化・スラム化文
いずれの未来もデメリットがあるため、特別な事情がない限り早めに処分することをおすすめします。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.建て替えで「再取得」か「転出」を選ぶことになる
マンションの建て替え事例は全国的にもわずかですが、仮に建て替えをおこなう場合、区分所有者は「再取得」か「転出」を選ぶことになります。
再取得する場合、建て替え後の部屋を取得することになります。新しいマンションを得られるのは大きなメリットですが、建て替えるための一時金で数千万円のコストが発生するかもしれません。
転出する場合は、自分の区分所有権を建て替え事業者へ売却することになります。確実に買い取ってもらえるというメリットがある一方、価格交渉で時間がかかる恐れもあるでしょう。
ただし、建て替えには集会で4/5の賛同が必要です。政府による要件緩和の議論も進んでいますが、最終的な決定権は管理組合にあり、現状は建て替え困難なマンションがほとんどです。
2.管理不全による廃墟化・スラム化
建て替えができない場合、築古のマンションは放置されて廃墟化・スラム化するかもしれません。
実際に、マンションが適切に管理されず社会問題となった事例もあります。
参考:東京新聞「<老いるマンション>進む建物・所有者の高齢化 管理不全、公金で後始末」
日本でマンションが廃墟化・スラム化すると言われてもイメージしにくいかもしれませんが、マンションの戸数は2021年時点で約685.9万戸にのぼり、現在も増え続けています。
参照:国土交通省「マンションに関する統計・データ等 分譲マンションストック戸数(2021年末現在)」
供給過多で飽和するマンションについて具体的な対策は未だなく、将来的に社会問題となる可能性は十分ありえます。
築70年のマンションを放置していると、子供や孫の世代に廃墟を引き継ぐことになってしまうかもしれません。迷惑をかけないためにも、早めに処分することを検討してみましょう。
築70年のマンションを売るときの注意点
築70年のマンションを売るにあたって、注意しておきたいポイントは以下の3点です。
- 瑕疵を調べて買主へ伝えておく
- 建て替え計画があるなら買主へ伝えておく
- 早く売却したくても焦らない
トラブルの売却を実現するためにも、上記のポイントをしっかり把握しておきましょう。
瑕疵を調べて買主へ伝えておく
瑕疵とは物件の欠点や欠陥のことで、雨漏りなどの物理的瑕疵や、自殺や事故死などの心理的瑕疵といった種類があります。
これらの瑕疵は、事前に買主へ伝えておかないと「契約不適合責任」に問われてしまいます。
契約不適合責任とは?
引き渡した物件が契約内容に適合しないときに売主が負う責任の範囲を定めたもの。損害賠償のほか、追完(補修もしくは不足数量の補完をすること)や、代金の減額、契約解除などを請求される可能性がある。
とくに、物理的瑕疵は買主がその存在を知らなくても責任を問われる恐れがあるため、ホームインスペクション(専門家による住宅診断)で事前にチェックするのがおすすめです。
建て替え計画があるなら買主へ伝えておく
もしも建て替え計画の話が持ち上がっているなら、売却前に買主へ伝えておきましょう。
建て替えが決定すると高額な負担金が発生しますし、建て替え完了まで買主は部屋を利用できません。短期的にはデメリットとなるため、買主とトラブルになる恐れがあります。
場合によっては契約不適合責任に問われるかもしれないので、建て替え計画の話について知っていることは事前に伝えておいたほうが無難です。
早く売却したくても焦らない
マンションの売却では、余裕をもって売却にあたるのが原則です。一刻も早く手放したい状況でも、焦って売却活動をおこなうと失敗しやすくなるので注意しましょう。
焦っていると、本来の適正価格よりはるかに安値で売ってしまったり、悪質業者に騙されて不必要なリフォーム工事を契約してしまったりといったミスを起こしやすくなります。
築古マンションだからといって投げ売りするようなことはせず、優良な不動産会社とじっくり相談しながら売却を進めましょう。
まとめ
築70年マンションは物件数そのものが少なく、売買事例もわずかしかありません。しかし、マンションが供給過多となっているいまの社会情勢から、築70年を迎える物件は今後も増えていくでしょう。
将来的には売却がより困難となり、処分も活用もできないケースが増える恐れがあります。実際に、管理組合の希望不全から建て替えができないケースも発生しています。
トラブルを避けるためのもっとも確実な方法は、需要があるうちに処分してしまうことです。手放すかどうか悩んでいるのであれば、将来に問題を残さないよう、前向きに売却を検討してみましょう。
築70年のマンションの売却についてよくある質問
築70年のマンションだと、売却はできないでしょうか?
いいえ、築年数が70年を超えていても、売却は可能です。実際に、築70年以上のマンションが売買されている実例もあります。
築70年だと売却価格はどうなりますか?
基本的に建物部分の価値はなくなるため、立地の良さに左右されるでしょう。また、賃貸物件として収益化している場合、利回りを基準に価格が決まります。
築70年のマンションを放置していると、なにかデメリットはありますか?
築古のマンションは今後ますます増えていく恐れがあり、より売却しにくくなる恐れがあります。また、維持・管理がされず、スラム化してしまうケースもありえるでしょう。
築50年のマンションを売る際、リフォームなどは必要ですか?
リフォーム・リノベーションをしたほうが売れやすくなりますが、費用をかけすぎると赤い字になるケースもあります。ますは不動産会社と相談し、費用対効果についてしっかり検討してみましょう。
訳あり不動産の売却でお悩みなら
今すぐご連絡ください
- 北海道・東北
-
- 関東
-
- 東海
-
- 関西
-
- 北陸・甲信越
-
- 中国・四国
-
- 九州・沖縄
-