親の家を売却する方法
家の売却は、原則として名義人しか売却できません。高齢者の場合、銀行の通帳など「日常の財産管理」を子供に任せているケースがありますが、不動産の売買契約は「本人の意思による決定」が必要です。
親がまだ元気で、家の売却に前向きであれば、本人が不動産会社や買主とやり取りして売却活動をおこないます。
しかし、体調の問題など、親が自分で売却活動をおこなうのはむずかしい場合があるでしょう。
また、認知症などで親の判断能力が低下し、売却の意思を確認できないケースも珍しくありません。
親の家を売却するときは、それぞれの事情にあわせた方法を取る必要があります。
名義人本人が家を売却する方法
名義人本人が家を売却するのであれば、通常の不動産売買ということになります。不動産会社に査定をしてもらい、条件のよいところへ売却を依頼しましょう。
ただし、不動産の売却活動は精神的にも体力的にも、意外と消耗するものです。親の体調によっては大変な作業といえるでしょう。
本人が納得できる売却となるよう、周囲のサポートは重要といえます。不動産会社選びにおいては、担当者の対応などもしっかりと見ておくことが大切です。
不動産会社もそれぞれに特徴があるため、相性のよい会社を探すには複数の不動産会社を比較する必要があります。
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名義人以外が家を売却する方法
名義人である親ではなく、子供が家を売る場合、状況によって3つの売却方法が考えられます。
- 親が売却に同意している場合は「委任契約」
- 親が認知症になっている場合は「法定後見制度」
- 親が元気で売却するのがまだ先なら「任意後見制度」か「家族信託」
急いで介護費用を捻出したい場合や、親が介護施設に入所することがすでに決定している場合は、委任契約か法定後見制度を利用しましょう。
いますぐ家を売却するのではなく、将来に備えて親の家を売却できるようにしておきたいという場合は、親子で話し合って任意後見制度や家族信託の準備を進めましょう。
親が売却に同意している場合は「委任契約」
委任契約とは、代理人を立てて、家の売却に必要な手続きを代行してもらう方法です。委任契約を結べば、本来は名義人がおこなうべき売却活動を、代理人が代わりにおこなえます。
「親も家の売却に同意しているが、本人が売却活動をするのはむずかしい」という場合は、委任契約を結んで代わりに手続きを進めましょう。
代理人になるための資格はないため、名義人にとって信頼できる人であればだれでも選任可能です。自分の子供はもちろん、弁護士や司法書士に依頼する場合もあります。
委任契約を結ぶには、委任状の作成が必要です。自分でも作成できるので、詳しくは下記の関連記事を参考にしてください。
ただし、委任契約はあくまで「本人に判断能力があること」が条件です。認知症などで判断能力が低下している場合、委任契約は結べません。
親が認知症になっている場合は「法定後見制度」
認知症などにより、親の判断能力がすでに低下している場合は「法定後見制度」を使います。
法定後見制度は、家庭裁判所によって選任された後見人が、被後見人の財産を管理・保護する制度です。
選任された後見人は、被後見人の利益を守る目的であれば財産を処分できます。介護施設への入居やその後の生活資金として必要であれば、家の売却も可能です。
注意点は、後見人は必ずしも被後見人の家族が選ばれるとは限らない点です。弁護士や司法書士といった第三者が選任されると、申立て費用とは別に月3万~12万円程度の報酬を支払う必要があります。
後見制度は被後見人が亡くなるまで継続されるため、家の売却後もコストがかかってします。法定後見制度は、親がもつ他の財産も考慮しつつ、弁護士と相談してから申し立てましょう。
参照:法務省「法定後見制度について」
参照:東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」
親が元気で売却するのがまだ先なら「任意後見制度」か「家族信託」
上記のとおり、親が認知症になってから家を売却しようとすると、一定のコストが発生してしまいます。親が認知症になった場合の備えは、早めにしておくべきといえるでしょう。
将来的に子供の判断で親の家を売れるようにしておく方法としては「任意後見制度」と「家族信託」の2つがあります。
任意後見制度は、被後見人となる本人が、判断能力があるうちに自分の後見人となる人を指定しておく制度です。家族を指定しておけば第三者への報酬も発生しないため、法定後見制度よりコストを抑えられます。
家族信託は、財産の管理や処分を家族に委任する方法です。後見制度は被後見人の判断能力が低下しないと開始できませんが、家族信託はすぐに開始できます。
また、家族信託の場合は、財産の活用も委託された人(受託者)の権限でおこなえます。家の賃貸運用や節税目的の生前贈与など、売却以外の選択肢も検討したい場合は家族信託がおすすめです。
親の家を売るときに注意すべきこと
ただし、子供が親の家を売る場合、以下の3点には注意しましょう。
- 売却活動は早めにはじめる
- 信頼できる不動産会社を探す
- 売却の翌年に忘れず確定申告をおこなう
介護を理由に親の家を売る場合、売却活動を急いでいるケースも多いと思います。
そんなときでも、上記3点を注意しておけば、家の売却に失敗する可能性を減らせるでしょう。
売却活動は早めにはじめる
親の家を売ると決めた場合、できるだけ早めに売却活動をはじめましょう。
家の売却にかかる期間は数ヶ月~半年程度が一般的です。場合によっては、1年以上かかる場合もあります。
家の売却益から介護費用を捻出したい場合、なるべく早く売却して代金を手にしたほうがよいでしょう。
また、不動産は維持するだけで固定資産税がかかります。毎年1月1日の所有者に課税されるため、年末までに物件の引渡しと決済を済ませられるのがベストといえます。
空き家のまま放置はさまざまなリスクがある
親がすでに引越しており、家が空き家になっているのであれば、なおさら早く売却すべきといえます。
建物が老朽化しており、いまにも倒壊しそうな状態の場合、近隣の人が倒壊に巻き込まれてしまう恐れがあります。その結果、損害賠償を請求されるかもしれません。
また、空き家が犯罪に利用されたり、自治体から「特定空き家」に指定されて罰則を受ける可能性もあります。
家の売却における税金の優遇制度は「住まなくなってから3年」が期限
不動産を売却した場合、売却益(譲渡所得)に対して譲渡所得税が課されます。
しかし、マイホームとして使用していた家を売却したとき、3,000万円までの譲渡所得を控除し、非課税にできる特例があります。
この特例の要件に「住まなくなってから3年が経過した日が属する年の年末」というものがあるため、親が家を出てから3年以内に家を売却しなければ控除を受けられません。
その他の要件や手続きについては、国税庁のホームページで確認できます。
参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
信頼できる不動産会社を探す
家の売却でもっとも重要なのは「信頼できる不動産会社探し」です。どんな不動産会社を選ぶかで、売却価格や売れるまでの期間に違いが出ます。
不動産会社には2種類あり、仲介業者と買取業者にわけられます。仲介業者は家の買主を探すのに対し、買取業者は依頼された家を直接買い取ります。
家をすぐに売りたい場合や、事故物件などで売りにくい物件は買取業者への依頼がおすすめですが、なるべく高く売りたいなら仲介業者に依頼したほうがよいでしょう。
また、不動産会社ごとに独自の強みや特徴があるため、大手だからといって納得のいく売買ができるとは限りません。場合によっては、地元密着型の不動産会社のほうが高値で売れることもあります。
一括査定を利用すれば高額かつスムーズな売却ができる
信頼できる不動産会社を探すには、なるべく多くの不動産会社に査定を依頼し、価格や条件を比較する必要があります。
しかし、不動産会社を1つ1つ調べて、査定を依頼するのは手間がかかってしまいます。
そこで、複数の不動産会社に一括で査定依頼を出せる、オンラインの無料サービスを利用しましょう。
一括査定を使えば、大手から地元密着型までさまざまな不動産会社の査定額を調べられます。一括査定で数社をピックアップし、直接相談をして一番信頼できるところと契約しましょう。
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売却の翌年に忘れず確定申告をおこなう
親の代わりに家を売ったなら、確定申告も親の代わりにおこないましょう。
先に解説した「マイホームを売ったときの特例」も、確定申告をしなければ適用されません。
また、売却によって損失が出た場合、場合によっては他の税金から還付があるかもしれません。
下記の関連記事で、確定申告に必要な書類も解説しているため、ぜひ参考にしてください。
親の家を売却する際に住宅ローンが残っているときはどうする?
「親の家を売却したいけど、住宅ローンが残っている場合はどうなるの?」と不安に思う人も多いでしょう。
売却益や親(家の名義人)の預貯金で住宅ローンをすべて返せるなら、問題なく売却できます。
しかし、住宅ローンの残債を返しきれない場合は、抵当権をもっている金融機関に売却の承諾をもらう必要があります。
承諾をもらわずに売却してしまうと、規約違反として残債の一括返済を請求されるため気をつけましょう。
住宅ローンの残る家は「任意売却」で売却できる
金融機関から売却の承諾をもらうには「任意売却」という方法を取る必要があります。
任意売却とは、金融機関と交渉し、売却益で返しきれなかった残債を分割返済していくという方法です。
分割返済は親の収入(年金など)から支出するのが一般的ですが、親が亡くなれば残債は相続人に引き継がれるので注意しましょう。
任意売却は専門的な知識が必要なため、まずは不動産会社や弁護士などに相談することをおすすめします。
「親の住む家」を確保しつつ家を活用して介護費用を捻出する方法
介護施設や子供の家への転居をきっかけに、親の家を売却する人は少なくありません。
一方、親が家を離れたくないなどの理由で、親の家を維持したまま在宅介護をするという家庭もあります。
とはいえ、家を維持することで介護費用が足りなくなっては本末転倒です。
そこで、親の住む家を確保しつつ、親の家を活用して介護費用を捻出する2つの方法を紹介します。
【方法1】リバースモーゲージで家を担保にお金を借りる
リバースモーゲージとは、家の資産価値に応じて貸付上限額が設定され、分割もしくは一括で資金を借り入れる方法です。
月々の返済は利息分のみで、元本は名義人の死亡時に家を売却するなどして返済します。
各都道府県の社会福祉協議会が提供する「不動産担保型生活資金」と、銀行など民間企業が提供するものがあります。
借入先によって用途など条件が異なるので、それぞれを比較して検討してみましょう。
リバースモーゲージのメリットとデメリット
親が住む家を維持しつつ、老後資金や介護費用を手元に用意できるのがリバースモーゲージのメリットです。
しかし、貸付上限額はあくまで「家の資産価値」までという点には注意が必要です。
本人が長生きして貸付上限額を超えてしまえば、それ以降の借り入れができなくなる恐れがあります。
また、契約中に不動産の価値が下落するリスクもあります。定期的に担保の評価を見直されるため、資産価値が下落すると同時に貸付上限額も低くなってしまうかもしれません。
【方法2】リースバックで売却した家を借りて住み続ける
リースバックとは、家を売却するのと同時に賃貸借契約を結び、売却後も家に住み続ける方法です。家自体は手放しますが、賃貸物件として引き続き住めるので、引越しが不要です。
また、家の名義人ではなくなるので、固定資産税や管理費・修繕積立金の負担がなくなります。
ただし、賃貸借契約によって住み続けるため、当然ながら家賃支払いが発生します。他にも、家の売却価格が相場より安くなりやすいというなどのデメリットに注意しましょう。
まとめ
親の家を売却する方法や注意点を解説しました。
親の家をすぐに売りたい場合、親が認知症などにかかっていないなら委託契約を結び、子供が代理人として売却できます。
認知症などによって、すでに判断能力が低下している場合は、法定後見制度の利用を検討しましょう。
また、介護が必要になったとき、スムーズかつコストをかけずに家を売却するには、任意後見制度の利用や家族信託など「事前の準備」が重要です。
いますぐ家を売るつもりではなくでも、将来的に家をどうするか、家族で話し合っておくとよいでしょう。
親の家を売却する際よくある質問
親の家を売却したいのですが、どうすればよいですか?
親が認知症などにかかっておらず、判断能力が低下していないなら、委託契約や家族信託といった方法で子供が変わりに売却できます。認知症などにかかって、判断能力が失われてしまっている場合は、後見制度の利用が必要です。
委託契約とはなんですか?
代理人を指定して、家の売却活動を代行してもらう方法です。代理人の判断は、委任者(家の所有者)の判断と同じ効力をもつので、委任状で代理人の権限を指定しておくことが重要といえます。
家族信託とはなんですか?
財産の管理を家族に委託する方法です。受託者(委託された人)の判断で、財産の処分が可能になります。財産の運用・売却で得られた利益は受益者(一般的には財産を委託した所有者)のものとなります。
後見制度とはなんですか?
判断能力が低下した人の財産を保護するための制度です。被後見人の利益のためであれば、家の売却も可能です。すでに認知症になっている人に対して、家庭裁判所が後見人を選任するものは「法定後見制度」と呼ばれ、被後見人になる人が事前に後見人を指定しておくものは「任意後見制度」と呼ばれます。
親の家を売却するとき、どんな注意点がありますか?
なるべく早めに売却活動を開始しましょう。また、介護が必要になったとき、スムーズかつコストをかけずに家を売却するためにも、将来的に家をどうするか家族で事前に話し合っておくことをおすすめします。
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