田舎の家は基本的に売れにくく、買い手が見つからないことも珍しくありません。売り出したもののいつまで経っても売却できず、困っている人も多いでしょう。
田舎の家が売れない理由は、そもそも田舎の家に需要が少ないことと、家自体がなんらかの問題を抱えているケースが多いことにあります。
しかし、そのように売却が困難な「田舎の家」でも、対策次第で売却は可能です。この記事で紹介する対策を参考にすれば、スムーズに売却できる可能性が高まるでしょう。
とくに大切なのは、田舎の家の売買に慣れている不動産会社の選別です。不動産会社によって売却期間や売却価格は大きく変わるので、不動産会社を切り替えるだけでもすぐに売れる場合があります。
田舎で不動産会社の選択肢が少ないのであれば、一括査定で全国の業者を比較するとよいでしょう。大手業者から地元密着型の不動産会社まで、幅広い選択肢のなかから最良の業者を探すことができます。
田舎の家が売れない理由
田舎の家が売れない理由は、次の3つが考えられます。
- 田舎は住宅需要が低い
- 田舎の家を取り扱う不動産会社が少ない
- 築古物件が多く修繕などに費用がかかる
人口の少なさなどからもともと不動産需要が低いうえに、家そのものが劣化しているケースも多い点が問題です。
それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。
田舎は住宅需要が低い
田舎はそもそも、中古住宅の需要が多くありません。都市部と比べて人口が少ないのもありますが、大半の人はすでに持ち家があるからです。
新しく家が欲しくなった場合、新築で建てる人が多いことも影響しています。土地が安い分新築一戸建てを購入しやすいので、わざわざ中古の家を買う必要性が薄いのです。
また、持ち家が多ければ賃貸需要も必然的に減ってくるので、収益物件として購入する投資家や不動産業者も少なくなります。
「田舎にある」という立地の特性が、売却において不利に働いてしまいます。
田舎の家を取り扱う不動産会社が少ない
市場の需要が低ければ、その品物を取り扱う業者の数も少なくなります。この原則は不動産市場も例外ではありません。
都会なら至るところにある不動産会社が、田舎では数軒、下手をすると1~2軒しかない場合もあるでしょう。
不動産会社が少ないと、物件をアピールできる顧客層も限られます。思うように広告ができず、宣伝不足で売れないということもありえるのです。
築古物件が多く修繕などに費用がかかる
田舎の家を売却する事例で多いのが、「相続などで不要になった家を売却する」というケースです。
そのような物件はたいてい築古であり、さらには適切に管理されていない物件が多くなります。建物や設備の劣化で、修繕・リフォームが必要となりやすいのです。
また、古い家は耐震性が旧基準のままで、安全性を高めるために耐震工事を施さなければならない場合もあります。
購入後にコストが積み重なることから、「どうせお金をかけるなら新築を買おう」と思われやすくなってしまいます。
田舎の家が売れないときの対策6選
「田舎の家は売却が困難」と解説しましたが、まったく売却できないわけではありません。対策次第で、スムーズに売却できる可能性はあります。
具体的には、次のような対策を試してみるとよいでしょう。
- 一括査定でなるべく多くの不動産会社を比較してみる
- 価格を下げてみる
- リフォームして売り出してみる
- 近隣の人に売却してみる
- 更地にして用途を自由にしてみる
- 空き家バンクを利用してみる
それぞれ詳しく解説していきます。
1.一括査定でなるべく多くの不動産会社を比較してみる
田舎の家を売るときに苦労するのが、売却を依頼する不動産会社探しです。地域によっては対応してもらえる不動産会社が見つからない場合もあります。
また、業者によって査定額が数百万円単位で異なることも珍しくないため、なるべく多くの不動産会社を比較することは非常に大切です。
そこでおすすめなのが、複数社へまとめて査定を依頼できる「一括査定サービス」の利用です。簡単な入力で複数社へ査定を申し込めるので、手間なく優良な不動産会社を探せます。
大手の一括査定サービスなら、全国規模の大手企業から地域密着型の業者まで幅広く提携しているので、意外な業者が物件所在エリアに対応していることもあります。
2.価格を下げてみる
売り出してみたものの買い手が中々付かない場合は、価格を下げてみることも検討してみましょう。需要が少ない以上、価格面での妥協はある程度必要になります。
ただし、相場からあまりにもかけ離れた価格だと、買い手側から「なにか問題のある物件なのか」と警戒される恐れもあります。まずは相場価格を調べ、それを基準に値下げするのがポイントです。
一般的な相場価格の調べ方として、不動産ポータルサイトなどで近隣の物件を調べる方法があります。しかし、田舎だと取引事例が少なく、有意義なデータが取れない場合が多いでしょう。
そのため、先に解説した一括査定で複数の査定を比べるのがおすすめです。各社の査定額を平均すれば、かなり正確に適正価格を把握できるでしょう。
3.リフォームして売り出してみる
田舎の家でも、家としての魅力が高ければ買い手が付きやすくなる可能性があります。
外観・内装ともにデザインを一新すれば物件の印象が変わりますし、水回りや空調などを最新のものにすれば住居としての快適性をあげられ、需要を呼び込むことが期待できるでしょう。
ただし、大掛かりな工事をしてしまうと数百万から1,000万円以上の費用もかかり、赤字になってしまう恐れもあります。
不動産会社と相談しながら、あくまで無理のない範囲でおこなうことが大切です。
4.近隣の人に売却してみる
中々売れない家でも、近隣に住んでいる人なら積極的に「欲しい」といってくれるかもしれません。
近隣の人なら、例えば子供夫婦の家にしたり、仕事で使う作業や資材置き場などの用途で買ってもらえる可能性があります。
また、隣の土地の所有者なら、2つの土地をつなげることでトータルの資産価値を大幅にあげられるケースもあるので、メリットも大きくなります。
近隣の人に購入意思と資金があれば、スムーズに取引を進めることができるでしょう。
5.更地にして用途を自由にしてみる
建物に価値がない場合、解体して更地にしたほうが売却しやすくなる場合があります。
更地であれば買い手が自由に建物を建てられますし、住居だけでなく店舗や駐車場といった使い方もしやすくなります。用途の幅が広がるため、買主候補者も増えるのです。
また、売主にとっても売却まで建物の管理をせずに済むというメリットがあります。
ただし、解体には100万円以上の費用がかかるうえ、土地の固定資産税が上がるといったデメリットが発生します。
6.空き家バンクを利用してみる
田舎の土地なら、自治体などが運営する空き家バンクを利用するという方法もあります。
空き家バンクとは空き家活用や地方移住を促進するための制度で、通常では空家の売主・貸主と買主・借主をマッチングさせるサービスです。
田舎にある家や築年数が古い家でも「欲しい」という人が見つかりやすいため、通常では売却がむずかしい物件でも売買できる可能性が高まります。
ただし、空き家バンクを導入しているかどうかは自治体によるので、まずは国土交通省のWebサイトで対応地域を調べてみましょう。
田舎の家をどうしても売却できないときの対処法
利益を得ることにこだわらなければ、売却以外にも田舎の家を処分する方法はあります。
具体的には、下記の方法があげられます。
- 賃貸物件などの収益化を図る
- 自治体やNPO法人に寄付する
- 無償譲渡で処分する
- 相続放棄をする【相続時のみ】
どうしても田舎の家が売れない場合、上記の方法で処分できることも頭に入れておきましょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
賃貸物件などの収益化を図る
売却ができないのであれば、発想を転換して収益化を図ることを検討してみましょう。売却はむずかしくても、賃貸物件としてなら借りてもらえる可能性はあります。
また、居住用の賃貸物件以外にも、不動産の活用方法には様々なものがあります。
- 駐車場やコインランドリー
- 事務所や店舗、作業場や資材置き場
- 民泊やシェアハウス
- 太陽光発電用地
収益化がうまくいけば、投資家などが購入を検討する可能性もあります。住居として売るより高額で売却できるかもしれません。
売却するにせよ、そのまま自分で運用するにせよ、放置しておくより多くの利益を得られるでしょう。
自治体や公益団体に寄付する
自治体やNPO法人などが、不動産の寄付を受け付けている場合があります。
自治体の場合、活用することで公益性があると認められれば寄付が可能です。申請方法は自治体によるので、まずは役所へ相談してみましょう。
公益団体については、例えば下記の団体が不動産寄付の受付を公表しています。
団体名 | 特徴 |
---|---|
NPO法人 住宅支援センター | 解体前の家や田舎の空き家など幅広く対応 |
認定NPO法人 カタリバ | 売却が可能なものであれば寄付可 |
一般財団法人 あしなが育英会 | 遺贈寄付(亡くなったときに所有権移転)が可能 |
上記以外の「不動産の寄付が可能」と明言していない団体でも、個別に相談すれば受け付けてくれる場合があります。
無償譲渡で処分する
通常の売却がむずかしい物件でも、無償譲渡なら欲しいと思ってもらえるかもしれません。
先に解説した空き家バンクでも無償譲渡は可能ですし、近年は下記のようなインターネット上で不動産を譲渡できるWebサイトが増えています。
当事者同士で契約を進めるのが基本ですが、サイトによっては有料で取引をサポートしてもらうことも可能です。
何年も売れないまま残っている状態の家なら、処分方法の選択肢として一考の価値はあるでしょう。
相続放棄をする【相続時のみ】
相続によってこれから家を取得するのであれば、相続放棄をするという方法もあります。相続放棄をすれば「最初から相続人ではなかった」とみなされ、家の管理責任もなくなります。
ただし、家だけを放棄することはできず、相続財産をすべて放棄しなければならないので注意が必要です。家以外で相続したい財産があっても、一緒に放棄することになります。
そのため、家以外に相続財産がない場合や、財産より債務のほうが多い場合に使うとよいでしょう。
相続放棄の手続きは、相続開始を知った日から3か月以内に、被相続人の最後の居住地を管轄する裁判所へ申し出ます。
また、自分が放棄することで他に相続する人がいなくなった場合、相続財産管理人の専任が必要です。
土地だけなら国への帰属が可能になる【2023年から】
増加する空き家問題に対して国も対策を打ち出しており、2023年から相続した土地を国庫へ帰属させる「相続土地国庫帰属制度」が始まります。
この制度を使えば、相続で取得した「利用していない土地」を国に譲り渡すことが可能です。制度の施行前に相続した土地についても対象となります。
ただし、制度を利用するには「10年分の土地管理費相当額」を納める必要があるほか、下記のように厳しい要件を満たす必要があります。
- 建物がないこと(解体が必要)
- 担保権や使用収益権が設定されていない
- 他人の利用が予定されていない
- 土壌汚染がない
- 境界や所有権などについて争っていない
- 管理に通常より多くの負担や費用がない
すべてを満たすのはむずかしいかもしれませんが、相続で取得した土地なら国に引き取ってもらえるチャンスとなるので、ぜひ利用を検討してみましょう。
田舎の家を放置しておくリスク
田舎の家が売れず、なかば諦めて放置しているような人も少なくありません。しかし、処分も利用もせず放置していると、次のようなリスクが発生してしまいます。
- 固定資産税や維持費がかかり続ける
- 不法投棄など犯罪行為の温床になる
- 倒壊や衛生上の問題で近隣住民とトラブルになる
それぞれのリスクを詳しく解説していきます。
固定資産税や維持費がかかり続ける
家は、ただもっているだけでも毎年固定資産税がかかります。田舎ならそれほど高額ではないかもしれませんが、5年、10年と続けば大きな負担となるでしょう。
また、水道や電気などのライフラインがそのままだと、基本料金が積み重なっていきます。こちらも積み重ねれば大きな金額となりますし、滞納状態だとある日突然まとめて請求されるかもしれません。
家を放置していると、所有者にとって損失しか生まない存在になってしまうのです。
不法投棄など犯罪行為の温床になる
田舎の家だと人目に付きにくいので、犯罪に利用されることもあります。
とくに多いのが不法投棄で、粗大ごみから壊れた車、産業廃棄物まで、処理の困難なものが勝手に捨てられるかもしれません。
ほかにも、大麻の栽培や詐欺グループの隠れ家、脱走囚の隠れ家など、様々な不法行為に悪用される恐れがあります。
このようにトラブルがあると、家の売却はより一層むずかしくなります。万が一にも巻き込まれないよう、早めに処分したほうがよいでしょう。
倒壊や衛生上の問題で近隣住民とトラブルになる
田舎の空き家を放置していると、倒壊や衛生上の問題も発生してきます。このような問題が起きると、近隣ともトラブルになりかねません。
家は放置していると劣化速度が早くなります。ボロボロでいまにも崩れそうになり、草木の繁殖や汚水つまりの発生、害虫・害獣の住処になる場合もありえるでしょう。
このように周囲への悪影響が発生すると、責任を問われるのは所有者です。家の所有者には管理義務があるので、近隣の人やモノになんらかの危害があれば、損害賠償などを請求される恐れもあります。
また、上記のように管理状態が悪い空き家は、自治体から「特定空き家」に指定されてしまいます。この指定を受けると、50万円の過料や土地固定資産税の軽減解除といった罰則が与えられるかもしれません。
まとめ
田舎の家が売れないからといって、売却を諦めることはありません。不動産会社の切り替えや価格設定の見直しなど、工夫すれば買い手を見つけることは可能です。
また、どうしても見つけられない場合は、自治体への寄付や無償譲渡という処分方法もあります。放置していてもデメリットしかないため、手放すために考えられる対策をしっかりとおこなっていきましょう。
現在も売り出し中で、長く売れ残り続けているのであれば、まずは不動産会社の切り替えがおすすめです。別の不動産会社に相談することで、田舎の家を処分できる思いがけない解決策が見つかるかもしれません。