中古住宅を売るにあたって、どれくらいの期間で売れるのか気になる人は多いでしょう。新居の購入や引っ越しの段取りなど、売却期間によって調整が必要となる事項は多々あります。
結論からいうと、中古住宅の売却にかかる平均期間は、おおむね3ヶ月程度です。ただし、これはあくまで平均値であることに注意が必要です。
住宅は1つとして同じものはなく、管理状態や立地、売り出す時期など、様々な要因で売却期間も変わります。「◯ヶ月以内に売れる」とは明言できないものなのです。
1つ言えるのは、売却期間も売却価格も、売却を依頼する不動産会社によって大きく変わるということです。スピーディーかつ高値で売却するためには、いかに優良な不動産会社を見つけるかが重要となります。
そこでおすすめなのが「一括査定サイト」という、厳選された優良業者にまとめて申し込めるサービスです。簡単な入力で各社を比較し、条件の良い業者を選別することができるので、ぜひ活用してみましょう。
中古住宅が売れるまでの平均期間は3ヶ月
中古住宅を売却するときの平均期間は、東日本不動産流通機構が公開しているレインズのデータから推測できます。
※レインズ:不動産業者が物件情報を共有するためのネットワークシステム。システムを運営する不動産流通機構の通称としても用いられる。
年度 | 平均日数 | 前年比(%) |
---|---|---|
2011 | 83.2 | -0.4 |
2012 | 87.5 | 5.2 |
2013 | 88.5 | 1.1 |
2014 | 88.4 | -0.1 |
2015 | 89.6 | 1.3 |
2016 | 89.6 | 3.2 |
2017 | 91.0 | -1.6 |
2018 | 96.2 | 5.8 |
2019 | 100.1 | 4.0 |
2020 | 114.1 | 14.0 |
2021 | 95.2 | -16.5 |
参照:REINS TOWER「首都圏不動産流通市場の動向 2021年(2021年04月〜2022年03月)」
年度によって多少の差はありますが、おおむね3ヶ月程度で成約していることがわかります。
ただし、上記はあくまで平均なので、実際の売却期間は物件によって大きく変わります。1ヶ月以内で売れることもあれば、1年以上売れ残ってしまう場合もあるでしょう。
平均が3ヶ月なのは「仲介業者との契約」が一般的に3ヶ月間であるため
平均値が3ヶ月になるのは偶然ではなく、不動産会社と結ぶ「媒介契約」の仕組みが関係しています。
媒介とは不動産の売却を仲介してもらう契約ですが、契約方式は次の3つにわけられます。
媒介契約 | メリット | デメリット |
---|---|---|
一般媒介契約 | ・同時に複数の不動産会社へ依頼できる ・自分で買主を見つけても良い |
・不動産会社にレインズへの登録や状況報告の義務なし |
専任媒介契約 | ・不動産会社は7日以内にレインズへ登録する義務がある ・2週間に一度以上、必ず状況報告がある ・自分で買主を見つけても良い |
・1社にしか仲介を依頼できない |
専属専任媒介契約 | ・不動産会社は5日以内にレインズへ登録する義務がある ・1週間に一度以上、必ず状況報告がある |
・1社にしか仲介を依頼できない ・自分で買主を見つけるのは不可 |
上記のうち、専任媒介・専属専任媒介の契約期間は法律で3か月以内と定められています。
依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。
依頼主が希望すれば契約を更新することもできますが、その場合も3ヶ月ごとに期限が設定されます。
不動産会社からすれば、依頼者が契約を更新するかどうかわからないため、なるべく最初の契約期間中に成約させようと考えるのです。
なお、一般媒介契約に契約期間の決まりはありませんが、業者によっては専任媒介などのルールに合わせて、3ヶ月の期限を設定するケースがあります。
査定でも「おおむね3ヶ月程度で売れる価格」を基準にすることが多く、売却期間を3ヶ月間以内とするのは不動産業界全体の目安となっています。
3ヶ月で売れないときの原因とは?
業界全体で3ヶ月が目安となる売却期間ですが、実際はそれより長くかかる場合もあります。
3ヶ月以内で中古住宅が売れない場合、次のような原因が考えられるでしょう。
- 適切な価格設定ができていない
- 地域の不動産需要が少ない
- 近隣に競合物件が多い
- 売り出した時期が閑散期
- 築年数が古い・管理状態が悪い
それぞれ詳しい内容を解説していくので、適切な解決策を検討してみましょう。
原因1.適切な価格設定ができていない
価格設定が相場に合っていないと、なかなか買い手は付きません。現代はインターネットなどで簡単に価格を比較できるので、買主側も相場はしっかり把握しています。
市場の相場に見合った価格設定にしないと、購入規模者は集まらないでしょう。
具体的には、不動産ポータルサイトで近隣の物件を調べたり、国土交通省の「不動産取引価格情報検索」や不動産流通機構の「REINS Market Information」で過去の成約事例を調べるといった方法があります。
ただし、中古住宅の売買価格は細かい条件の違いで変動するため、自分で調べる方法では精度に限界があります。
より正確に価格相場を知りたいときは、複数の不動産会社に査定してもらいましょう。各社での査定額を平均すれば、専門家の判断をもとにした価格相場を把握できます。
原因2.地域の不動産需要が少ない
物件そのものに問題がなくても、不動産需要が少なければ売却できません。地域全体で需要が低い状態なら、売却に時間がかかるでしょう。
少子高齢化などにより、田舎はとくに売却がむずかしくなります。リフォームや宣伝方法の工夫など、対策が必要になります。
原因3.近隣に競合物件が多い
不動産取引が多い都市部でも、他の物件との競争によって売却できない場合があります。流通が多いほどする競合物件も多くなるので、目立った特徴のない物件は埋もれてしまう恐れがあります。
競合に負けないためには、物件のアピールポイントを強調することが大切です。「アピールポイントなんてない!」と思う人もいるかもしれませんが、意外なところが購入希望者の関心を引くかもしれません。
例えば、次のような要素はアピールポイントになりえます。
- 眺望や風通しが良い
- 自宅から駅までの道が平坦
- 図書館や公園など公共施設が近い
- ワインセラーや地下室がある
- 珍しい建具を使っている(貴重な木材やレトロなガラス戸など)
価値観は人それぞれなので、自分にとって大したことではなくても、他の人には大きな魅力になる可能性があります。住宅の特徴を探して、購入希望者にアピールしていきましょう。
原因4.売り出した時期が閑散期
不動産市場も「繁忙期」と「閑散期」があり、売り出した時期が悪いと売りにくくなってしまいます。
1年のうち一番の繁忙期は引っ越しが多くなる3月頃です。新生活に合わせて新居を探す人が多くなるので、成約までの平均期間を考慮して、12月頃から売り出すとよいでしょう。
一方、閑散期は一般的に7~8月頃といわれます。気温の高さから内見希望が減ることや、帰省や旅行で不動産を探す人が少ないことなどが理由です。
長期間売れ残っているような場合は、一度売却を取り下げるのも1つの方法です。何ヶ月も売れ残っている物件より、繁忙期に新規物件として売り出したほうが、買い手の目に留まりやすくなります。
原因5.築年数が古い・管理状態が悪い
築年数が古かったり、管理状態が悪かったりすると、住宅はあっという間に劣化していきます。素人目で見ても「ボロボロな住宅」であれば、売却はむずかしくなるでしょう。
費用はかかってしまいますが、可能な範囲でリフォームをしたり、反対に解体して更地にしてしまうといった対策が必要になります。
中古住宅を売るときの流れと各プロセスの必要期間
ここからは、実際の中古住宅を売るときの流れに沿って、各プロセスがどれくらいの期間を必要とするのか見ていきましょう。
おおまかな流れは、次のとおりです。
- 査定の依頼【1~2週間】
- 不動産会社との契約【1日~1週間】
- 売却活動・内見対応【1ヶ月~】
- 売買契約・住宅ローンの審査待ち【1~3週間】
- 物件引き渡し【1~2週間】
期間はあくまで一般的な目安なので、状況次第では変動する点には注意しましょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
ステップ1.査定の依頼【1~2週間】
最初に不動産会社へ連絡し、査定を申し込みます。査定は基本的に無料であり、査定結果を見た上で売却するか決められるので、気軽に問い合わせてみましょう。
査定には「机上査定」と「訪問査定」の2種類があり、それぞれ次のような違いがあります。
机上査定 | 所在地や面積、築年数など、数値上のデータでおこなう査定。結果はすぐわかるが、精度はやや低い。 |
---|---|
訪問査定 | 担当者が物件を訪問し、管理状態などを見ておこなう査定。時間はかかるが机上査定より精度は高い。 |
机上査定なら数日、訪問査定なら1~2週間で結果がわかります。
あまり多くの業者に依頼するのも大変なので、まずは5~6社程度に机上査定を依頼し、その結果から2~3社に絞って訪問査定を申し込む、という流れがおすすめです。
一括査定を使えばまとめて査定を依頼できるので、不動産会社を比較するときはぜひ利用してみましょう。
ステップ2.不動産会社との契約【1日~1週間】
査定を見て不動産会社を決めたら、売却を依頼する契約を結びます。仲介の場合は書類の準備などで数日~1週間ほど時間がかかるでしょう。
売主が用意すべきものとしては、身分証明書と登記済証、認印の3点があげられます。実印や印鑑証明書などは売買契約のときに必要となるので、余裕があれば一緒に用意しておくのもよいでしょう。
なお、不動産会社には仲介だけでなく「買取」という契約方式もあります。買取の場合、不動産会社が物件を直接買い取るので、査定から数日で現金化することも可能です。
ただし、仲介と比べて売却価格が2~5割ほど安くなるのが一般的なので、少しでも早く売りたいときに利用するとよいでしょう。
ステップ3.売却活動・内見対応【1ヶ月~】
不動産会社に仲介を依頼したら、物件情報を公開して買主を募ります。この期間がもっとも長くなる可能性のある部分です。
早ければ数日で購入希望者が現れるかもしれませんし、半年以上にわたって売れ残る場合もあります。
ただし、先述した通りレインズ登録~成約までの平均期間は約3ヶ月間です。買い手が決まらなくても、3ヶ月程度は様子見してみましょう。
逆にいえば、3ヶ月を超えて購入希望者がほとんど現れないような状況であれば、不動産会社の切り替えも検討したほうがよいかもしれません。
購入申し込みがあったら、購入希望者から内見の申し込みがあります。対応は不動産会社に任せるのが基本ですが、居住中の家を売るときは自分で対応する場合もあります。
ステップ4.売買契約・住宅ローンの審査待ち【1~3週間】
内見を経て買主が物件を気に入れば、仮契約を結びます。仮契約は、買主が住宅ローンの審査に通るまでのつなぎの契約です。
住宅ローンの審査にかかる期間はおおむね1~2週間で、買主の収入や属性、申し込み先の金融機関によって変わります。
審査に通過すれば本契約を結びますが、原則として当事者が顔を合わせておこなうので、日程調整で1週間ほどかかるのが一般的です。
ただし、遠方に住んでいるなど顔を合わせるのが困難な場合、不動産会社の担当者が売主・買主双方のもとに行って署名をもらう「持ち回り契約」をおこなうこともあります。
ステップ5.物件引き渡し【1~2週間】
売買契約を結んだら、次は代金決済と物件の引き渡しです。売主・買主・不動産会社、そして金融機関の担当者や司法書士が集まっておこなうため、日程調整で1~2週間ほどかかります。
買主に対して融資が実行され、そのまま売主への入金がおこなわれたら、物件の権利証や鍵などを引き渡します。
同時に、司法書士が所有権移転登記をおこない、登記上の権利が買主へ移行したら売却は終了です。
売買代金の支払いは引き渡しと同時に支払われる
家を売るにあたって、売買代金がいつ支払われるかは気になるところです。
先述した通り、基本は物件引き渡しと同時に支払われます。ただし、仮契約を締結した時点で手付金が支払われることもあります。
手付金は、契約を締結した証として売買代金の一部を先払いしたものです。具体的な金額はケース・バイ・ケースですが、一般的な相場は売却価格の5~10%程度です。
物件引き渡しまでいけば、支払いと相殺して清算しますが、契約を解除するときはキャンセル料として扱われる場合もあります。
キャンセル料として扱う場合、契約解除が買主都合なら買主が手付金を放棄、売主都合なら売主は手付金の倍額を返還することになります。手付金が手に入ったからといって、すぐに使わないよう注意しましょう。
中古住宅をなるべく早く売るための方法
中古住宅を短期間で売るためのコツとして、次の方法があげられます。
- 築浅のうちに売り出す
- 物件と相性の良い不動産会社を選ぶ
- 買取業者を利用する
- 相場ギリギリまで値下げする
- 清掃や補修をおこなう
- ホームステージングで住宅の魅力を引き出す
- 広告の内容を充実させる
これらの方法を使えば、スピーディーに売却できる可能性を高くできます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
築浅のうちに売り出す
中古住宅は築古になるほど需要が下がるので、なるべく早めに売却することがスムーズな売却のコツとなります。
築年数から見た売り時は、一般的に築10~20年とされています。築20年を超えると家の資産価値が下がり切るので、その前に売却したほうがよいという考え方です。
売却期間だけでなく、価格の面でも築浅のうちに売ることは大切なので、売却を検討しているなら1年でも早く売り出すことをおすすめします。
物件と相性の良い不動産会社を選ぶ
中古住宅の売却において、もっとも重要なのは不動産会社選びです。各社で売買ノウハウや顧客ネットワークに違いがあるので、売却期間や売却価格は大きく変わります。
「1年以上売れ残っていた物件が、不動産会社を変えただけですぐに売れた」という話も珍しくありません。
しかし、一から不動産会社を調査して優良業者を探すのは、それなりの労力がかかります。手間なく不動産会社を選ぶためには、一括査定サイトを利用するとよいでしょう。
一括査定では、サイト運営者が厳選した優良業者のみを対象に比較できるので、自分で1社ずつ調べるより効率的かつ確実です。
買取業者を利用する
先にも解説しましたが、仲介ではなく買取を使って売却すれば、最短数日での現金化が可能です。買取業者はローンではなく現金一括で支払うため、すぐにまとまったお金を得られます。
また、買取業者は購入した物件を再生・再販して利益を得るビジネススタイルなので、仲介では売却できないような「訳あり物件」でも積極的に買い取ってもらえます。
「多少安くなってもすぐに売りたい」「どの仲介業者に頼んでも売れなかった」という場合は、買取業者の利用がおすすめです。
相場ギリギリまで値下げする
早く売りたい場合、なるべく価格を下げるのは商売の基本的な手段ですが、「相場価格のギリギリまで」という点が大切です。
投げ売りのような価格で売り出してしまうと、買主側からすると「なにか問題を抱えた物件なのではないか」と疑われてしまう可能性があります。結果として、より避けられやすくなるかもしれないのです。
また、不動産取引では価格交渉が少なくありません。最初から限界まで値下げしてしまうと、買主から値下げを要求されても対応できなくなってしまいます。
買主に余計な不安を与えず、価格交渉にも対応できるようにするには、最低希望価格から少しだけ上乗せした金額で売り出すのがおすすめです。
価格交渉で値下げすれば買主は気持ちよく購入できますし、仮に値下げが不要であれば自分の利益が増えることになるため、どちらにしてもお得になります。
清掃や補修をおこなう
買主の意思決定に大きく影響する内見ですが、このときに家の状態が悪いと購入意欲も下がってしまいます。
そのため、いつ内見に来られても良いよう、家のなかや周りをきれいに清掃しておきましょう。玄関回りや水回りはとくに見られやすいので、重点的に掃除するのがおすすめです。
また、可能な範囲で傷んでいるところの補修をおこなうのも効果的です。外壁や塀の塗り替え、壁紙の張替えなど、見た目だけでもきれいにしておくと成約率が大きくアップします。
売却する住宅は「商品」であると考え、丁寧に管理することが早期売却につながります。
ホームステージングで住宅の魅力を引き出す
ホームステージングとは、室内をモデルルームのように演出するという販売手法です。アメリカで発祥したサービスで、日本でも近年普及しつつあります。
調度品や照明を整えることで買主の購買意欲を刺激し、成約率や売却価格アップ、売却期間の短縮化が可能です。ホームステージングをおこなった家の80%が、3ヶ月以内に成約したというデータもあります。
画像引用:一般社団法人日本ホームステージング協会「ホームステージングとは」
インテリア類はレンタルも可能で、空き家だけでなく居住中の家を依頼できる業者もあります。物件に問題がないのに中々売れないときは、ぜひ利用を検討してみましょう。
広告の内容を充実させる
購入希望者が少ない場合、物件の広告に問題がある可能性も検討してみましょう。しっかりチェックしてみると、内容が不十分なこともあります。
とくに重要なのは画像で、枚数が他の物件と比べて少なくないかや、狭い・暗い印象になっていないか、買主側の視点に立って見ることが大切です。
基本情報や紹介文も読んでみて、不満点があれば遠慮せず不動産会社へ修正を依頼しましょう。
まとめ
中古住宅の平均的な売却期間は3ヶ月ですが、物件によって大きく変動する可能性があります。3ヶ月はあくまで目安として、売り出すときは長期間かかることも視野に入れておきましょう。
焦りながら売却活動をおこなうと、買主に安く買い叩かれたり、悪徳業者にだまされてしまったりといったミスに陥るかもしれません。心の余裕を保つことが、不動産売却を成功させる最大のコツとなります。
また、なるべく早く、そして高値で売るためには、不動産会社の選別も必須です。複数の業者に査定を依頼し、もっとも条件のよい不動産会社を見つければ、きっと満足のいく売却を実現できるでしょう。