親族間で不動産売却する場合の注意点
法律上、不動産売却において売主・買主の制限はないので、親族同士で不動産を売買することも可能です。
こうした親族間での不動産売却は「親族間売買」とも呼ばれます。
親族間売買とは?
親子・兄弟をはじめとする親族同士で、不動産を売買することです。
親族間で不動産を売却する場合、以下の4点に注意しましょう。
- 税金の控除・特例が使いにくい
- 住宅ローン審査の融資を受けにくい
- 個人間売買だとトラブルが起きやすい
- 売却価格が安いと「みなし贈与」と扱われる
それぞれの注意点を1つずつ見ていきましょう。
税金の控除・特例が使いにくい
1つ目の注意点は、不動産売却における税金の控除・特例が利用しづらい点です。
売主・買主が対象となる特例には、以下のようなものがあります。
- 居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除
- 居住用財産を売ったときの軽減税率の特例(10年超所有軽減税率の特例)
- 特定の居住用財産の買換えの特例(買い換え特例)
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
- 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例
こうした不動産売買に適用できる控除や特例が、親族間売買では使えない場合があります。
例えば、自宅を売る場合、通常は譲渡所得税に対して、3,000万円の特別控除が受けられます。
しかし、親子や夫婦、生計を共にする親族などの関係であると、特別控除が適用されません。
住宅ローン審査の融資を受けにくい
2つ目の注意点は、住宅ローンの審査に通りにくく、融資が受けづらい点です。
なぜなら、融資した住宅ローンが犯罪や不正に用いられると誤解されやすいからです。
また、生前贈与を目的としている場合、他の相続人から親族間売買を反対されると、住宅ローンの返済が滞ってしまう恐れもあります。
通常の不動産売買よりも融資後のトラブルが多いため、金融機関の審査が厳しくなりやすいのです。
例えば、住信SBIネット銀行の場合、親族間売買でも住宅ローンを利用できますが、同居人同士での不動産売買には融資を認めていません。
参照:「〔住宅ローン〈フラット35〉〕 親族間売買ですが利用できますか?」(住信SBIネット銀行)
個人間売買だとトラブルが起きやすい
3つ目の注意点は、不動産会社を通さない個人間売買は、トラブルが起きやすい点です。
親族間の不動産売買であれば、すでに買主も決まっているので、価格も直接決めやすく、不動産会社の協力は必要ないように思えます。
しかし、不動産会社を通さずに不動産売買を進めると、契約内容に誤解が生じたり、後で物件に問題が見つかるといったトラブルが起こりやすいです。
また、必要書類の書式はインターネットで探せますが、記入方法がわからなかったり、誤って記入してしまうトラブルもあります。
売却トラブルを防ぐためにも、親族間売買でも基本的には不動産会社に相談して、協力を仰ぐことをおすすめします。
売却価格が安いと「みなし贈与」と扱われる
4つ目の注意点は、売却価格が安いと「みなし贈与」と扱われてしまう点です。
親族間売買では、売主・買主同士が身内なので、安い価格で売却しやすいです。
その結果、適正価格よりも不動産を安く売却すると、贈与があったと見なされて「みなし贈与」と扱われてしまいます。
みなし贈与とは?
適正価格より著しく低い価格で不動産を売買した場合、その差額が売主から買主への贈与として扱われることです。
みなし贈与と扱われた場合、通常の不動産売却と異なり「譲渡所得税」ではなく「贈与税」が課されてしまいます。
親族間売買でも税金は課税される
親族へ不動産を引渡す場合、贈与と売却のどちらに該当するかによって、かかる税金の種類・金額が異なります。
親族間売買において課税される税金は、以下の2種類です。
種類 |
税率 |
贈与税 |
10〜55% |
譲渡所得税 |
20〜39% |
適正価格より安い価格で不動産売却をおこなう場合は「贈与税」が、適正価格で不動産売却をおこなう場合は「譲渡所得税」が、それぞれ課税されます。
基本的に贈与税は税率が高いので、親族に不動産を譲渡する場合は、贈与ではなく売却を用いることをおすすめします。
例えば、所有期間が10年で、時価5,000万円の不動産を贈与・売却する場合、贈与税と譲渡所得税は以下のとおりです。
種類 |
税額 |
贈与税 |
約2289万5,000円 |
譲渡所得税 |
約965万円 |
各ケースにおける税率について、順番に見ていきましょう。
贈与時の「贈与税」は税率が高い
親族間で不動産を贈与した際に課税される贈与税は以下のとおりです。
基礎控除後の課税価格 |
税率 |
控除額 |
200万円以下 |
10% |
- |
300万円以下 |
15% |
10万円 |
400万円以下 |
20% |
25万円 |
600万円以下 |
30% |
65万円 |
1,000万円以下 |
40% |
125万円 |
1500万円以下 |
45% |
175万円 |
3,000万円以下 |
50% |
250万円 |
3,000万円超 |
55% |
400万円 |
贈与税に関しては、課税価格から年間110万円まで基礎控除が受けられます。
例えば、不動産の時価が5,000万円であれば、基礎控除を引いた4890万円が課税価格です。
この場合、課税価格が3,000万円超のケースにあたるため、2,289万5,000円の贈与税が課されます。
参照:「贈与税の計算と税率(暦年課税)」(国税庁)
売却時の「譲渡所得税」は税率が低い
親族間で不動産を売却した際に課税される譲渡所得税は以下のとおりです。
種類 |
所有期間 |
税率 |
短期譲渡所得 |
5年以下 |
39%(所得税30%+住民税9%) |
長期譲渡所得 |
5年超 |
20%(所得税15% + 住民税5%) |
「譲渡所得」とは、不動産売却によって得た、以下の利益のことです。
譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 売却価格 – 取得費用 – 譲渡費用
ちなみに不動産の取得費がわからない場合、売却価格の5%相当額が取得費です。
例えば、売却価格が5,000万円の場合、5%である250万円が取得費となります。
この場合、取得期間が5年超であれば、税率20%なので、譲渡所得税は約965万円です。
参照:「取得費が分からないとき」(国税庁)
親族間の不動産売却における適正価格
親族間売買における不動産の適正価格はどの程度なのでしょうか。
適正価格より安過ぎる価格で売却すると、高額な贈与税が課されてしまいますし、高過ぎる価格で売却しても、買主が損をする結果になってしまいます。
この項目では、親族間売買における不動産の適正価格と調べ方を解説します。
相続税評価額の80%以上が目安
過去の判例によると、相続税評価額の80%以上の価格で不動産を売却すれば、贈与税はかからないとされています。
なぜなら、土地を相続税評価額の80%で親族間売買した場合、相続税法第7条の規定する「著しく低い価額」にはあたらないとする、2007年8月23日の東京地裁の判決があるからです。
【東京地裁の判決の要点】
・相続税評価額は時価とおおむね一致する地価公示価格の約80%
・80%という割合は、基準となるべき数値と比べて一般に著しく低いとはいえない
・相続税評価額を基準として土地の譲渡することに経済合理性がないとはいえない
この判例によって「相続税評価額の80%以下で親族間売買しなければ、贈与ではない」と周知されています。
参照:「相続税法第7条及び第9条の適用範囲に関する一考察」(国税庁)
適正価格は一括査定で確認するのがベスト
相続税評価額における80%以上の価格で売却すれば、贈与税は課税されにくいですが、自ら相続税評価額を調べるのでは、時間も手間もかかってしまいますね。
そうした場合におすすめしたいのが、不動産会社の一括査定を利用して、売りたい不動産の市場価格を簡単に調べる方法です。
インターネット上の一括査定を利用すれば、簡単な物件情報を入力するだけで、複数の不動産会社によってあなたの物件の売却価格を予想してもらえます。
以下のリンクから、無料で一括査定を利用できるので、売りたい不動産の売却価格を気軽に確認してみるとよいでしょう。
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親族間で不動産売却をおこなう流れ
親族間売買で不動産を売る場合、通常の不動産売却と方法は異なるのでしょうか?
親族間で不動産売却をおこなう流れは、以下のとおりです。
- 不動産の適正価格を確認する
- 適正価格で売買契約を締結する
- 売却価格を受け取って不動産を引渡す
基本的には、売却価格に注意する以外、通常の不動産売却と異なる点はありません。
それぞれの流れを順番に見ていきます。
1.不動産の適正価格を確認する
まずは、不動産会社の無料査定で適正価格を確認しましょう。
査定を受ければ、不動産の適正価格が把握できるので、みなし贈与を回避できます。
ただし、1社しか不動産会社の査定を受けない場合、提示された価格が適正価格なのか、把握することができません。
ですので、不動産の適正価格を調べたい場合は、一括査定を利用して複数の不動産会社の査定額を比較するようにしましょう。
2.適正価格で売買契約を締結する
つづいて、適正価格で不動産の売買契約を買主と締結しましょう。
売買契約においては、以下の内容を定めておくことをおすすめします。
- 引渡しの時期
- 税金など清算する金銭
- 契約解除となる事項
親族間売買の場合、契約書を作成しない人もいますが、後でトラブルになる恐れもあるので、必ず「売買契約書」を作成して契約内容を残しておきましょう。
3.売却価格を受け取って不動産を引渡す
最後に、売却価格を受け取った後、不動産を買主に引渡しましょう。
具体的には、所有権移転登記をおこない、不動産の名義を買主に変更します。
ただし、所有権移転登記には、さまざまな書類が必要になるため、自分で手続きするのは非常に手間がかかります。
そのため、所有権移転登記を司法書士に依頼するか、不動産会社に売却を任せたほうが、手間もかからずに安心できるのでおすすめです。
まとめ
親族間で不動産売却をおこなう場合、適正価格でないと「みなし贈与」と扱われて、高額な贈与税が課せられるため注意しましょう。
具体的には、相続税評価額の80%以下の価格で売却すると、差額が買主への贈与と見なされて、高額な贈与税が課せられてしまいます。
売却する不動産の適正価格を確認する場合は、無料査定で不動産会社が示した査定額を目安にする方法がおすすめです。
このとき一括査定を利用すれば、複数の査定額を一気に把握して、売りたい不動産の適正価格をすぐに確認できます。
相手が親族であっても、個人で不動産売買をおこなうことは難しいので、わからない点があれば、遠慮なく不動産会社に相談するとよいでしょう。
不動産の親族間売買に関するよくある質問
親族同士で不動産を売買することはできますか?
法律上の制限はないので、買主が親族であっても不動産を売却可能です。このように親族同士で不動産を売買することを「親族間売買」といいます。
どの範囲までの親族が親族間売買に該当しますか?
一般的には、民法と同じく「配偶者・6親等以内の血族・3親等以内の姻族」までといわれています。
親族間売買と通常の不動産売買の違いは何ですか?
売却価格が安いと贈与税が課せられる・税金の控除や特例が使えない場合がある・住宅ローン審査が厳しく融資を受けづらい・不動産会社を通さないとトラブルが起きやすいといった違いがあります。
親族に不動産を譲る場合、贈与と売却どちらがよいですか?
贈与税のほうが遥かに税率が高いため、親族に不動産を譲渡する場合、贈与より売却を用いることをおすすめします。
親族間売買における不動産の適正価格は、どの程度ですか?
一般的には相続税評価額の80%以上とされていますが、不動産会社の査定を受けて、相続税評価額を調べてみるのが正確です。
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