駅近マンションなのに売れない原因
駅近マンションは利便性が高く、本来なら売却しやすい物件です。それが売れないということは、なにかしらの原因があります。
具体的には、次にあげるものが売れない原因として考えられます。
- 築年数が古い
- 物件に瑕疵がある
- 地域の利便性が悪い
- 悪質業者にひっかかっている
- 物件が不動産需要とずれている
- 近隣に競合物件がある
それぞれどのように問題となるのか、詳しく解説していきます。
築年数が古い
マンションの需要にもっとも大きく影響するのが、築年数の古さです。築年数が経過することで「法定耐用年数」が少なくなり、資産価値も低下していきます。
法定耐用年数とは?
税制における建物の使用可能期間。マンションの構造として一般的な鉄骨鉄筋コンクリート造の場合、47年で建物の資産価値はゼロとみなされる。
参照:e-Govポータル「減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」
法定耐用年数の残り期間が減ると、ローンが組みにくくなるといったデメリットがあります。市場の需要も大幅に減るのが一般的です。
ただし、法定耐用年数はあくまで税制上の都合で定められたものであり、マンションの寿命とは異なります。法定耐用年数を超えても住居として使える物件はありますし、売却も不可能ではありません。
当サイトで築古マンションの売却について解説した記事もあるので、こちらを参考にして売却計画を立ててみましょう。
物件に瑕疵がある
なんらかの問題を抱えた不動産を「瑕疵物件」といいます。瑕疵とは「欠陥」や「欠点」という意味です。
瑕疵はその内容によって、次の4つにわけられます。
瑕疵物件は買主にとってリスクやデメリットが多く、需要は大幅に下がります。また、瑕疵があることを契約条件に盛り込んでおかないと、売却後に買主から「契約不適合責任」を問われるかもしれません。
ここでは、マンションにはどのような瑕疵が多いのか、種類ごとに代表例を見ていきましょう。
物理的瑕疵:水漏れやひび割れなど
物理的瑕疵とは、文字通り物理的な欠陥を指します。マンションの場合、次のような瑕疵が代表的です。
- 上階からの水漏れ
- 壁のひび割れ
- 配管の詰まり
- 扉などの建付け不良
- 床面のかたむき
上記のほか、耐震性や断熱性など、建物全体の品質に問題がある場合も、物理的瑕疵に該当します。
心理的瑕疵:事件・事故や「いわく付き」など
心理的瑕疵とは、人の死に関わる事件・事故があったり、心霊現象が噂されるなど、いわゆる「事故物件」と呼ばれるような瑕疵です。
マンションの機能としては問題がなくても、住む人にとって嫌悪感・抵抗感がある場合、心理的瑕疵とみなされます。
ただし、事件・事故の受け止め方は人それぞれなので、「なにをもって心理的瑕疵とするのか」の基準はあいまいです。
国土交通省が作成した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」という基準はありますが、これはあくまで「告知義務の目安」であり、需要への影響については個々のケースで異なることを覚えておきましょう。
参照:国土交通省「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会 宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
法的瑕疵:建築基準法違反や消防法違反など
法的瑕疵は法律に違反している状態を指し、具体的には次にあげる3つの法律に違反している状態をいいます。
- 建築基準法:建物の安全基準や接道義務などに関する法律
- 消防法:防火設備の設置や品質に関する法律
- 都市計画法:地域の開発許可に関する法律
建築基準法や消防法は、建物の耐久度や安全性について定めた基準であり、違反していると人命に関わります。
また、都市計画法は都市の健全な発展を促すための法律で、無秩序な都市開発を防ぐためのものです。
いずれも社会全体のためにあるルールであり、これらに違反している建物は再建築ができなかったり、改善するために大きな出費を強いられる恐れがあります。
参考:消防設備の設置に関する相談は専門家に問い合わせるようにしましょう。
環境的瑕疵:道路の騒音や暴力団施設など
環境的瑕疵は、マンションそのものではなく、近隣環境が原因となっている瑕疵を指します。
例えば、高速道路が近くて騒音・振動がひどかったり、日当たり・風通しが想定以上に悪いといったトラブルは、典型的な環境的瑕疵です。
また、暴力団施設やゴミ処理場など、いわゆる「嫌悪施設」が近くにある場合も、環境的瑕疵にあてはまります。
これらの環境的瑕疵があると、入居者は不快な思いをしながら生活することになるため、需要が下がってしまいます。
地域の利便性が悪い
マンション自体に問題がなくても、所在する地域の利便性が悪いと売れにくくなります。
例えば、周辺にスーパーやコンビニなどの買い物施設がなかったり、病院や学校といった公共施設がなかったりすると、需要は大きく下がるでしょう。
また、最寄りの駅から都市部の駅まで1時間以上かかるようだと、駅近のメリットは薄くなってしまいます。
駅近であれば無条件で売りやすくなるわけではなく、生活するうえで便利な環境が揃っているかどうかが重要となります。
悪質業者にひっかかっている
物件ではなく、依頼する不動産会社が原因で売れないケースもあります。とくに、「囲い込み」をするような悪質業者には注意が必要です。
囲い込みとは?
仲介業者が、他社からの購入申し込みを遮断するために適切な買主募集をしない行為。
自社で買主を見つければ売主・買主の双方から手数料を取れるので、囲い込みによって利益を増やそうとする悪質業者が存在する。
囲い込みは不必要に売却期間が伸びることになるので、売主にとってはデメリットしかありません。
他社からの内見希望がまったくなかったり、なんの進展もないのにレインズ※の物件情報が「購入申し込みあり」「一時紹介停止中」になっていたりする場合、囲い込みを疑ったほうがよいでしょう。
※レインズ:不動産業者が物件情報を共有するためのネットワークシステムおよびその運営機構。売主は、自分の物件であればレインズの情報を閲覧・確認することができる。
物件が不動産需要とずれている
駅近であっても、買主の需要に合っていない物件だと需要は下がってしまいます。
不動産需要は地域や時代によって変わります。例えば、大学の近くなら学生向けの1Rや1Kが売りやすくなりますし、子育て世帯が多い地域なら広めの部屋に人気が集まるでしょう。
また、近年は少子高齢化の影響もあり、部屋数の多い部屋より、壁を極力減らして開放感をもたせた部屋のほうが需要を得られる傾向にあります。
その時々で「売れるマンション」は変わるので、部屋の間取りや設備次第では買い手が中々見つからないということもあり得るのです。
近隣に競合物件がある
競合する物件の多さから、自分のマンションが売れないというケースもあります。近隣に類似物件やよりグレードの高い物件があると、買い手がつきにくくなるでしょう。
また、同じマンション内で別の部屋が売り出されている場合、階層や配置(角部屋、エレベーターの近くなど)などで優劣がつきます。
わずかな違いで他物件に買主を取られてしまい、気づいたら自分の物件だけ売れ残っていたということも考えられるのです。
駅近マンションが売れないときの対応策
駅近マンションでも売れないことは十分にありえますが、適切な対応を取れば「いつまでも売れない」という事態は避けられます。
具体的な対応策として、次の方法を押さえておきましょう。
- 一括査定で不動産会社を比較する
- 適正価格で売り出す
- 内見の準備・対応を丁寧におこなう
- ホームステージングを利用する
- 可能な範囲で修繕・リフォームをおこなう
- 時期を変えて売り出してみる
すべて実行する必要はなく、できることから始めて状況を改善していきましょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
一括査定で不動産会社を比較する
マンション売却において一番重要なのが、不動産会社選びです。不動産会社によって培った売買ノウハウや顧客ルートが異なるので、最終的な売却価格が数百万円違うということもあり得ます。
囲い込みをするような悪質業者や、営業能力が低い業者を避けるためにも、不動産会社の比較は必須です。
そして、不動産会社の比較にあたって便利なのが、オンラインで申し込める一括査定です。一括査定なら、簡単な入力で複数の不動産会社にまとめて査定を依頼できます。
各社の査定額など売却条件や、担当者の対応などを比較すれば、信頼できる不動産会社を見つけることができるでしょう。
仲介で売れない場合は「買取業者」も検討しよう
マンションを売る際、一般的には「仲介業者」に依頼します。仲介業者は不動産会社の一種で、買主募集や手続きのサポートをする代わりに手数料を取る業者です。
一方、不動産会社には「買取業者」も存在します。文字通り物件を自社で直接買い取る業者で、買い取った物件を再生・再販することで利益を得ます。
買取業者は「業者が現金一括で買い取る」というスタイルなので、売却のスピーディーさに特徴があります。早ければ1週間以内に現金化することも可能です。
また、再生してから再び売り出すことが前提となっているので、瑕疵物件のように仲介では売却がむずかしいマンションでも積極的に買い取ってもらえます。
買取価格は仲介で売ったときより2~5割安くなりますが、価格より売却スピードを重視したい人、もしくは仲介で売却ができないような物件は、ぜひ買取業者を検討してみましょう。
適正価格で売り出す
売り出し価格が高すぎると買い手がつきにくくなるので、しっかりと適正価格を把握してから売り出すことが重要となります。
適正価格を調べる方法としては、先にも解説した一括査定の利用がもっとも簡単かつ確実です。各社の査定額を平均すれば、安すぎず高すぎない「適切な売却価格」がわかります。
また、国土交通省の「不動産取引価格情報検索」や不動産流通機構の「REINS Market Information」で、過去の取引事例を調べる方法もあります。これらは実際に成約した価格がわかるため、類似物件さえ見つけられれば参考にしやすいでしょう。
内見の準備・対応を丁寧におこなう
マンションの売却活動において重要なステップとなるのが内見です。購入希望者が実際に物件を見学するもので、このときの印象が良ければ成約につながります。
内見の準備としては、まず清掃を徹底することが大切です。不用品は処分し、玄関や水回りなど目立つ部分は重点的にきれいにしましょう。
また、まだ居住中で自分が内見対応をする場合、丁寧に接することを意識するのも大切です。好印象をもってもらえれば、取引もスムーズに進みます。
ホームステージングを利用する
より物件の印象を上げる方法として、ホームステージングを検討するのもよいでしょう。ホームステージングとは、室内をモデルルームのように演出するサービスです。
コーディネートした室内の写真を広告に掲載すれば注目を集められますし、内見時の印象をアップさせることも可能です。
費用は部屋の間取りや依頼する業者にもよりますが、5万~20万円が相場です。プランによっては売主が居住中でも利用できます。
ホームステージングをおこなうことで売却期間が1/3になったというデータもあるため、スムーズな売却を希望しているのであればぜひ利用してみましょう。
参照:一般社団法人 日本ホームステージング協会「ホームステージングとは」
可能な範囲で修繕・リフォームをおこなう
築古物件の場合、修繕やリフォームをおこなうことで需要を高めることが可能です。劣化した箇所を直し、間取りや内装を現代のニーズに合わせれば、成約しやすくなるでしょう。
ただし、修繕やリフォームは数十万~数百万円の費用がかかることもあり、お金をかけすぎると赤字になってしまうかもしれません。
そのため、無理して工事しようとせず、あくまで予算の範囲内でおこなうことが重要です。
不動産会社と相談して、修繕・リフォームがどのくらい需要に貢献できるかや、売却価格に上乗せできる金額を検討しましょう。
時期を変えて売り出してみる
周辺に競合物件が多いときは、売り出し時期を改めるという方法もあります。
例えば、競合物件が減ったタイミングで新規物件として売り出せば、購入希望者の目に留まりやすくなります。
また、不動産市場は引っ越しの多い3月ごろが繁忙期、気温の高さから内見希望者が減る8月ごろは閑散期と考えるのが一般的です。
夏頃に売り出しているのであれば一度売却を取り下げ、繁忙期の少し前(12月~1月ごろ)に売り出したほうが成約しやすくなるでしょう。
マンションの売却は「思い立ったらすぐ行動」がおすすめ
売れないケースもあるとはいえ、駅近マンションは基本的に需要が高い物件です。しかし、どれだけ条件の良いマンションでも、時が経てば売却が困難になるかもしれません。
原則として、築年数が古くなればなるほどマンションの資産価値は下がります。一部の高級マンションなどを除いて、長く持ち続けることはリスクを抱えることになるのです。
2022年現在、マンションの価格相場は高騰を続けていますが、今後の景気次第では暴落に転じる可能性もあります。売却を検討しているなら、需要がある今のうちに行動を起こしたほうがよいでしょう。
今後はマンション増加や少子高齢化で売却がより困難になる
マンション市場の将来性を考えると、「物件数の増加」と「少子高齢化」の2点が大きな懸念事項としてあげられます。
まず、マンションのストック数(現存するマンションの戸数)は年々増えており、2021年時点で685万戸を超えています。
画像引用:国土交通省「マンションに関する統計・データ等 分譲マンションストック戸数(2021年末現在)」
年月の経過でこれらがどんどん「中古マンション」となるため、必然的に競合物件が増えていくのです。
また、少子高齢化による人口減少で、マンションを買う人や住む人が少なくなります。「家余り」の状態になり、特別な魅力のないマンションは売れ残るかもしれません。
あくまで可能性の話ですが、マンション市場は長期的な問題を抱えていることは事実であり、根本的な解決方法は見つかっていないのが現状なのです。
売れずに放置していると維持費や税金で損失となる
売れないからといってマンションを放置していると、維持費や税金で様々な出費が発生します。1年単位で見ればわずかな金額でも、10年、20年と続けば多大な損失となるでしょう。
とくに、定期的におこなわれる大規模修繕は築年数が古いほど高額になるため、各マンションオーナーの負担も重くなります。月々の積立金が値上がりしたり、工事する際に100万円以上の一時金を徴収されるかもしれません。
居住用や賃貸用として活用しないのであれば、持っているだけで損失を発生させることになってしまうのです。
売却しないなら賃貸物件として収益化も考えよう
空き室として持ち続けていてもコストがかかるだけなので、すぐに売却しない(もしくはできない)のであれば、賃貸物件として収益化することも検討しましょう。
入居者さえ見つけられれば年単位で副収入を得られますし、安定した収益があれば投資用物件として投資家に高く売れるかもしれません。
大切なのは有効活用することなので、売れないからと放置せず、なにかしら有益な利用方法を考えてみましょう。
まとめ
「駅近」は売却において有利な要素ではありますが、それだけですぐに売れるほど不動産取引は単純ではありません。
様々な要因で売れなくなることがあるため、物件の状況を冷静に見極め、適切に対応することが大切です。
ただし、専門知識のない個人では取れる対応策に限界がありますし、適切な判断がむずかしいのも事実です。
まずは優良で相性の良い不動産会社を探し、なんでも相談できる関係性を作りましょう。不動産会社と協力して工夫すれば、マンションを高く・スピーディーに売ることも可能です。
マンションの売却についてよくある質問
駅近マンションなのに売れない原因はなんですか?
築年数の古さや、瑕疵(欠点や欠陥)を抱えているなど、物件自体になんらかの問題がある場合は売れにくくなります。ほかには、不動産市場全体の問題や、売却を依頼する不動産会社に問題がある場合も考えられるでしょう。
マンションを高値でスムーズに売るためのコツはありますか?
不動産会社の選別や、内見対策で物件の印象を良くすることが大切です。
内見対策として効果的な方法はありますか?
まずは基本として、室内の整理整頓や清掃を徹底しましょう。また、内見の際に丁寧な対応を心掛け、売主自ら物件のメリットを説明できるにしておくことも効果的です。他には、ホームステージングというサービスで室内をモデルルームのように演出する手法もあります。
不動産会社選ぶで優良業者を見分けるコツはありますか?
査定額について納得できる根拠を提示できるかや、質問に対して丁寧かつ迅速な回答ができるかを見ると良いでしょう。なお、査定額を比べる際、どれだけ高値でも相場(他社の査定額の平均)から大きく外れていないかチェックすることも大切です。
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