任意売却のデメリット
任意売却は売主と買主ともにデメリットがあります。それぞれのデメリットを把握した上で、売買をするようにしましょう。
売主のデメリット
任意売却は売主が被る以下7つのデメリットがあります。
- 個人信用情報に滞納情報が記録される
- 売却価格を自由に設定できない
- 販売期間を先延ばしにできない
- 確実に売却できると限らない
- 連帯保証人の同意・協力が必要
- 売れないまま競売になるリスクがある
- 任意売却後の残債は返済義務がある
売主として任意売却を考えている場合は、必ずデメリットをチェックしておきましょう。
個人信用情報に滞納情報が記録される
一般的に任意売却は、住宅ローンを一定の期間滞納している状況や、売却金額より住宅ローンの残高が多い時などに債権者の承諾を得ておこないます。
任意売却をする行為が、個人の信用情報に滞納の記録を残すわけではありません。任意売却を検討する状態になっている時点で、個人の信用情報に滞納の情報が記録されているケースが考えられます。
任意売却を検討するまでの流れは以下のようになります。
- 3ヶ月以上住宅ローンを滞納する
- 金融機関から「期限の利益の喪失」通知が送られてくる(住宅ローンの残債の一括返済を求められる)
- 一括返済ができない場合、保証会社による代位弁済が実行される(保証会社が住宅ローンの残債を立て替える)
- 保証会社が債務者に対して住宅ローンの返済を求める
- 債務者は保証会社に対して住宅ローンの一括返済か任意売却、競売の選択をする
住宅ローンは金融機関と毎月分割して返済していい契約を結んでいます。このことを「期限の利益」といい、契約に違反すると期限の利益を喪失します。たとえば、3ヶ月以上住宅ローンを滞納するなどです。
期限の利益の喪失とは
返済期日までにお金を返済するという債務者(借金をしている側)の権利を失うこと。返済期日に関わらず全てのローンの返済を求められる。
期限の利益を喪失して金融機関に一括返済ができないと、保証会社が代位弁済をしますが、この時点で個人の信用情報に滞納情報が記録されます。
代位弁済とは
お金を借りた人が返済できなくなった際に、保証会社などの第三者が借主に変わって返済する制度のこと
個人の信用情報に滞納情報が記録されると、私生活に影響を与えます。たとえば、クレジットカードの使用や新規作成、賃貸住宅の審査が通らないなどです。
また、借金を完済しても5年ほどは滞納情報が登録されます。その期間は新規の借入もできなくなるため、注意が必要です。
売却価格を自由に設定できない
債権者が住宅ローンの残債を回収するために、債務者に対して任意売却の許可を出します。よって、任意売却の価格を決める主導権は債権者が握っており、債務者の判断で自由に価格設定ができません。
基本的に任意売却の販売価格は、不動産会社や任意売却専門スタッフなどの意見も取り入れた上で決定されます。
たとえば、債務者の思い入れのある住宅で相場より高い価格で販売したい場合でも、許可が降りる可能性は低いです。
できるだけ高い価格で売りたいと思っていても、相場に沿った売却しやすい価格設定になります。
また、購入者に値下げ交渉をされ、販売価格を下げたいと考えた場合も、債務者の判断でかんたんに販売価格を変えることもできません。
販売価格の設定と変更は、明確な理由と根拠を債権者に示した上で、債権者の承諾を得る必要があります。
任意売却は一般的な不動産の売却の販売価格とは異なり、債務者の判断のみで販売価格の設定や変更ができないと思っておいてください。
販売期間を先延ばしにできない
任意売却は販売期間のリミットがあります。競売に移行し落札者が現れると、任意売却はできなくなります。
したがって、任意売却が可能な期間は、競売が開始される前日までとされる場合が多く、おおよそ期限の利益の喪失から6〜12ヶ月の期間になります。
よって、いつまでも販売活動ができるわけではありません。
また、競売の申し立てのタイミングは債権者によって異なります。稀に代位弁済後すぐに、競売の申し立てがおこなわれることがあるため、注意が必要です。
債権者が競売の申し立てをした後は、裁判所の手続きを経て3〜6ヶ月ほどで開札日を迎える場合が多いです。
不動産の需要が少ない閑散期で売却が長引くことがあっても、競売の申し立てまでに猶予がなければ、競売に移行します。
しかし、任意売却の申し出をすることにより、債権者によっては競売までの猶予を設けてくれる可能性が高いでしょう。
任意売却をする際は債権者に対して、競売までの猶予を設けてもらうように、交渉をする必要があります。
確実に売却できると限らない
不動産の売却は、タイミングが重要といっても過言ではありません。日本や世界の経済状況や人気の地域などによって買主は増減します。
また、物件のアピールが上手くできていない場合や、不動産の需要が少ない時期などは、買主が見つかりにくくなります。
任意売却に限らず一般的な不動産の売却でも、確実に売却できるわけではありません。
不動産が売却できず、結果的に競売になってしまうこともあります。
連帯保証人の同意・協力が必要
連帯保証人の同意が得られないと任意売却はできません。離婚していても元配偶者が連帯保証人の場合は、任意売却の同意を得る必要があります。
連帯保証人と連絡が取れないと任意売却ができなくなるため、競売の選択肢しかなくなります。
また、任意売却をする予定の住宅に別の居住者がいる場合、その居住者の同意も必要です。
たとえば、離婚の慰謝料として元夫・元妻が住宅ローンを支払い続け、元配偶者がその家に住み続けているケースが該当します。
居住者に断られると、任意売却ができなくなる可能性が高いです。
任意売却を進めるには、連帯保証人と居住者の同意が必要です。協力してもらえるように、話し合いの場を設けるといいでしょう。
売れないまま競売になるリスクがある
任意売却で売れないと競売に移行します。競売になると以下のように条件が厳しくなります。
- 販売価格が低く設定される(裁判所が最低価格を決めるため)
- 住宅ローンの一括返済を求められる(分割での返済も可能になる場合がある)
- 強制退去を命じられる
競売は、「内見不可」や「物件の情報提供の時間が短く検討する時間が少ない」など買主側のリスクが多いです。したがって、相場の7割ほどに販売価格が設定されます。
また、強制退去になるため引越の交渉ができません。退去日までに出ていかなければならず、その日までに引越先を決めておく必要があります。
競売は任意売却よりも債務者に対するリスクも多いです。任意売却で売買契約が結べるように対策を打つ必要があります。
任意売却後の残債は返済義務がある
任意売却は、住宅ローンの返済を消滅させるものではありません。住宅ローンを完済するまで、残債を返済し続ける必要があります。
ただし、任意売却後に債権者が以前滞納していた、住宅ローンの残債の一括返済を求めてくる可能性は低いです。
したがって、債権者に対して分割で返済をしていく交渉が可能になります。
また、任意売却後の残債の金利は、住宅ローンと同じように決まっているわけではありません。無理のない返済ができるように金利の交渉もおこなう必要があります。
買主(購入者)のデメリット
任意売却の物件を購入するデメリットは以下5つが挙げられます。
- 価格交渉が困難
- 管理費・修繕積立金の負担が発生
- 売主に契約不適合責任が無い場合がある
- 売買契約が白紙解除になる可能性がある
- 公簿売買のため実際の土地面積が違う場合がある
任意売却の物件に潜んでいるデメリットを必ず考慮した上で、購入の検討をするようにしましょう。
価格交渉が困難
一般的な物件は、購入する前に値下げ交渉がおこなわれる場合があります。しかし、任意売却の物件は住宅ローンの完済が目的となっており、値下げ交渉が難しいです。
任意売却の販売価格の決定権は債権者にあるため、たとえ少ない値下げ交渉でも、応じてもらえない可能性が高いでしょう。
基本的に任意売却の物件は、掲載されている売り出し価格に従って購入することになります。
ただし、競売までの期間が短い物件は、値下げをしても競売より高値になると判断した場合、債権者が値下げ交渉に応じてくれる可能性があります。
管理費・修繕積立金の負担が発生
分譲マンションの場合は、住宅ローンの返済に加えて管理費や修繕積立金を毎月支払う必要があります。
任意売却の分譲マンションは、所有者が管理費や修繕積立金も滞納しているケースが多いです。
基本的には、売主が所有している期間の管理費や修繕積立金を支払います。しかし、任意売却の物件の場合は、買主による費用の負担を交渉される可能性が高いです。
任意売却の分譲マンションを購入する際は、管理費や修繕積立金の支払い状況を事前に確認しておく必要があります。
売主に契約不適合責任が無い場合がある
一般的な売却の場合、売却後に発生した瑕疵の責任を一定の期間、売主が負わなければなりません。この法律を契約不適合責任といいます。
しかし、任意売却の物件は、売り手が契約不適合責任を負える経済状況ではない場合が多いです。よって、契約不適合責任を逃れる特約を結ばれる可能性が高いです。
特約を結ぶと万が一物件に欠陥があったとしても、修繕にかかる費用は全て買主が負担しなければなりません。
売買契約が白紙解除になる可能性がある
一般的な売買契約は、どちらかが一方的に契約を解除した場合、手付金の倍額を返金するなどのペナルティが課されています。
しかし、任意売却の売買契約書には、白紙解除できる特約が盛り込まれる可能性が高いです。決済前に契約解除になるケースが考えられるためです。
たとえば、物件の所有者に住宅ローン以外の借金があり、他の債権者から差し押さえをされることや、保証人の同意を得られないなどが挙げられます。
複数の債権者が存在する場合は、話し合いが成立しないとすべての抵当権を外すことができません。
したがって、決済前に複数の債権者の存在が明らかになった場合や、保証人の同意を得られないといった理由により、契約が白紙解除になるケースがあります。
公簿売買のため実際の土地面積が違う場合がある
任意売却は公簿売買が原則です。公簿売買の場合、購入後に実際の土地の面積が狭いというケースがあります。
公簿売買とは
土地登記簿に記されている面積によって売買代金を確定し、その後の変更はしない契約方式
登記簿謄本に記されている面積は、実測の面積と異なる場合があります。
一般的な不動産の売買契約は、実測面積と異なる可能性が高い場合、実測売買の契約方式を採用するケースが多いです。
実測売買とは
売買契約と引き渡しまでに実測をし、差があった場合は引き渡し時に精算する契約方式
しかし、任意売却で実測売買をすると、契約時点と引渡し時点で売買金額が異なり、住宅ローンの返済額に狂いが生じてしまいます。
よって、任意売却は公簿売買を採用し、売却額を後から変更することはありません。任意売却の物件の土地は、登記簿謄本の面積を前提に判断するしかないと思っておくといいでしょう。
任意売却のメリット
任意売却はデメリットばかりではありません。売主にとっては競売を避けられる最適な手段です。一方、買主にとっては相場より安く購入できるなどのメリットがあります。
売主のメリット
任意売却で得られる売主のメリットは以下5つです。
- 住宅ローン残債がある状態で売却できる
- 競売よりも高い価格で売却できる
- リースバックなら自宅に住み続けられる
- 持ち出し資金がいらない
- 滞納した税金や諸費用を売却代金から控除可能
売主にとって任意売却で得られるメリットは大きいです。住宅ローンの支払いを滞納した際は、任意売却を検討してみてもいいでしょう。
住宅ローン残債がある状態で売却できる
一定以上の住宅ローンを滞納した場合や物件を競売にかけられた場合は、残債を一括返済する義務が生じます。
しかし、任意売却をおこなうと、売却金額でローン残債の返済ができます。残ったローンは滞納前と同じ分割での返済が可能です。
また、金融機関の承諾が必要となりますが、無理のない返済計画を改めて作成できます。
競売よりも高い価格で売却できる
任意売却は、基本的に通常の売却と同じ手順になります。相場に近い価格で競売よりも高く売却ができる可能性が高いでしょう。
競売となった物件は、購入前に内見ができないなど購入者にとってリスクがあります。売却価格は相場の7割ほどになり、任意売却より低くなることが多いです。
一方、任意売却は内見や引き渡し時期の交渉などが可能であり、一般的な不動産売却と変わらない方法での販売ができます。
よって、任意売却は競売より購入者にとってのリスクが少ないため、高い値段で売却できる可能性が高いです。
任意売却は、競売よりも毎月の支払額を減らせる可能性が高いでしょう。
リースバックなら自宅に住み続けられる
任意売却は競売と違い購入者を選べるのが特徴です。リースバックをおこなうことで、そのまま自宅に住み続けられる可能性があります。
リースバックとは
投資家や不動産会社などに不動産を買い取ってもらい、新たに賃貸契約を結んで売却後も住み続ける方法
リースバックなら引越しをする必要がなくなるため、手間や費用がかかりません。また、慣れ親しんだ住宅に住み続けることができ、経済事情を近隣に知られる可能性も低いでしょう。
ただし、リースバックは新たな所有者との賃貸契約になるため、月々の家賃が発生します。近隣の家賃相場を考慮し、家賃の交渉をおこなう必要があります。
リースバックは、家族が病気で引越が困難な場合などに有効な手段です。家賃を継続的に支払える際は、検討してみるといいでしょう。
持ち出し資金がいらない
任意売却は基本的に持ち出し資金の必要がありません。資金がなくても不動産売却を進めることができます。
不動産を売却する際、譲渡所得税などの税金がかかります。住宅ローンを滞納している所有者は、税金を支払えない可能性が高いでしょう。
しかし、任意売却の場合、債権者の意向によって売却金額から税金などの費用を支払うことができます。手持ち資金がなくても、売却を進められるのが特徴です。
滞納した税金や諸費用を売却代金から控除可能
任意売却の場合、滞納した固定資産税などの税金や管理費・修繕積立金などを売却代金の中から控除ができます。
ただし、税金などの滞納で不動産の差し押さえをされている場合は、注意が必要です。
差し押さえをしている市町村の役所と税務署に交渉し、差し押さえ登記を抹消しないと任意売却ができません。
仮に差し押さえされている状態で任意売却しても、無効になってしまいます。
買主(購入者)のメリット
任意売却の物件は買主に以下3つのメリットをもたらします。
- 一般売却物件よりも価格が安め
- 売主にリースバックを提案できる
- 引き渡し時期などが明確になっている
購入者のメリットを把握することで、任意売却を上手く利用できるでしょう。
一般売却物件よりも価格が安め
任意売却の物件は、市場価格よりやや低い価格で購入できる可能性が高いです。以下の理由があることから、割安な価格設定になっています。
- 競売を回避したいため早期売却を望んでいる
- 通常の物件よりもマイナスなイメージを抱きやすい
- リースバックなどで売主が住み続けたいと思っている
物件によっては市場価格より大幅に値下げしている場合もあり、掘り出し物に出会える可能性があるでしょう。
売主にリースバックを提案できる
元の所有者に物件を貸し出して家賃収入を得る「リースバック」の提案が可能です。
売主は資金難などのやむを得ない事情により、任意売却を決断する場合が多くあります。本当はずっと住み続けたいと考えている売主も少なくないでしょう。
したがって、リースバックの提案をすることで、売主と買主の両方にメリットがある不動産投資を始められます。
不動産投資を始めたい方は、リースバック契約が前提の任意売却の物件を購入するのも、ひとつの選択肢でしょう。最初の入居付けをする必要なく家賃収入を得られます。
引き渡し時期などが明確になっている
任意売却は、金融機関と不動産会社、所有者がいつ売りに出すのか、引渡の時期などのスケジュールが明確になっています。
よって、購入者は引越しやリフォームなどのスケジュールが立てやすいです。
また、一般的な物件の売買の手続きと変わらない任意売却は、スムーズな取引ができるでしょう。
任意売却の種類とメリット・デメリット
任意売却には主に以下6種類の売却方法があります。
どの方法が最適かは債権者の意向や所有者の状況によって異なります。最適な売却方法を見つけるには、任意売却に強い不動産会社に相談するといいでしょう。
①単純売却
単純売却は基本的に通常の不動産売却と変わりません。一般の買主を探して売買契約を結びます。
住宅ローンをできるだけ多く減らしたい方が選択する、もっともスタンダードな方法です。
単純売却を選択する場合は、状態のいい物件だと売れる可能性が高まります。一方、物件の状態が悪いと売れづらくなります。
メリット |
デメリット |
・6種類の中では一番高く売れる
・債権者(金融機関)の承諾を得やすい
・売却後に残る債務をもっとも少なくできる可能性が高い |
・一般市場で買主を探すため、販売価格によって売れるか売れないかが左右される
・いつ売れるか分からない
・引き続き居住することができない
・物件の状態が悪いと売り辛い |
②親子間売買
親子間売買は、文字通り親子間で不動産を売買する方法です。兄弟や親戚との間で売買契約をする場合は親族間売買になります。
任意売却の種類の中でもっとも精神的苦痛が少ない売却方法です。リースバックよりも家賃負担が少なく住める可能性が高いでしょう。
親子間売買は、売買価格によってかかる税金が異なります。以下3つのパターンに分けられます。
相場より高い価格で販売して利益が出た場合
不動産の売却で利益が発生した場合は、売主に譲渡所得税が発生します。ただし、自己の居住用不動産の場合は、居住用財産の3,000万円特別控除を利用できます。
買主は高い価格で購入しているため、贈与税はかかりません。
相場と同等の価格で販売した場合
不動産の売却で利益が出ない場合、譲渡所得税はかかりません。また、利益が出たとしても自己の居住用不動産の場合は、居住用財産の3,000万円特別控除の利用が可能です。
買主は相場と同等の価格で購入しているため、贈与税の対象になりません。
相場より著しく低い価格で販売した場合
売却によって利益がでていない場合、売主に譲渡所得税は発生しません。
相場より安い価格で購入すると、売買ではなく贈与とみなされてしまい、贈与税が課される可能性があります。
親子間売買は、相場より著しく低い価格で販売すると贈与とみなされてしまう可能性があるため、注意が必要です。
メリット |
デメリット |
・多くの場合、そのまま住める
・賃貸などでも親族間であれば家賃が安くなる可能性がある
・無理な返済がなくなる |
・親族への負担がある(購入時の住宅ローン負担など)
・債権者の承諾を得にくい
・ローンの審査が厳しい・厳しくなる |
③リースバック
リースバックは買主と賃貸借契約を結んで家を借りる方法です。不動産は売却しなければならないが、引っ越しをしたくない場合にピッタリでしょう。
ローンの支払いより近隣の家賃相場が低い場合にも、有効的な任意売却の手段として挙げられます。
近隣に知られずに売却ができるのもメリットです。
ただし、投資家目線で利益重視の売買取引になるため、単純売却よりも売却価格が安くなってしまいます。
メリット |
デメリット |
・そのまま住み続けられる
・親族などに負担が行かない
・近隣に知られる可能性が低い
・短期間の賃貸が可能 |
・単純売却よりも売却価格が安くなってしまう
・債権者の承諾を得にくい
・今までのローン支払額と賃貸額が同じだと意味がない |
④買い戻し(再売買)
将来的な買い戻し前提で契約する任意売却です。退職金などほぼ間違いなく将来まとまったお金が入ってくる状況で稀に選択されます。
買い戻しの方法は、「買い戻し特約+賃貸契約」または「買い戻し特約のみ」の2種類です。「買い戻し特約のみ」の契約の場合は、一時的に引っ越さなければなりません。
基本的には、親族または親族以外のある程度親しい人に売る方法です。しかし、買主の利益として買い戻しの際にプラスの料金や経費をすべて支払う必要があります。
親族に売る場合は、プラス料金なしで買い戻しができる場合もあるでしょう。また、何年後に買い戻すかを売買契約時に明確に取り決める必要があります。
ただし、将来的な見込み要素が強いため、金融機関の承諾を得にくい方法です。現実味のある返済計画と将来のまとまった入金の証明が必要になります。
メリット |
デメリット |
・自分の家を将来的に取り戻せる
・買い戻しまでの期間は賃貸で住むことができる場合がある
・贈与税の心配がいらない
・短期間の賃貸が可能 |
・将来的な見込み要素が強いため、契約締結が難しい
・買取側の経費や利益の分だけ買い戻しの額が高くなる
・買い戻せなくなった場合は引越ししなければならない |
③買取
不動産業者に買い取ってもらう方法です。任意売却の中で、もっとも早く不動産を売却できます。
競売にかけられる期限が迫っている場合に、有効な任意売却の手段でしょう。
不動産の状態が悪くても買い取ってもらえる可能性があり、売却後の不動産の保証もする必要はありません。
ただし、買取上限が低く価格が安くなりやすいため、金融機関の承諾を得にくいです。また、買い取ってくれる不動産会社を見つけるのに苦労する可能性があります。
メリット |
デメリット |
・任意売却の中でもっとも早く売却できる
・状態が悪くても買い取ってもらえる可能性がある
・室内の不用品を処分しなくても売却できる
・売却後の保証をしなくていい |
・価格が安くなる(買取上限が低い)
・債権者の承諾を得にくい
・買い取ってくれる不動産会社を見つけるのが大変
・引越ししなければならない |
⑥抵当権消滅請求
権利関係が複雑かつ債権者同士などの折り合いが付かず、どうしようもないときの最終手段(複数の抵当権が設定されているなど)で用いられます。
抵当権消滅請求はもともと民法第379条に基づく買主を守る制度です。抵当権を消滅請求できる制度を利用し、債権者に抵当権を抹消する要求ができます。
任意売却に言い換えると、買主が不動産の債権者に対して、競売で回収できそうな見込み額以上の金額を提示し、抵当権の抹消請求をする方法です。
任意売却の方法としてはありますが、買主の負担が大きくほぼ成立しないでしょう。また、抵当権消滅請求をする必要があるため、任意売却の中でもっとも売却価格が低くなります。
メリット |
デメリット |
・債権者が条件に応じれば確実に抵当権を抹消できる |
・任意売却の中でもっとも価格が低くなる
・買主側の負担が大きすぎるので、この方法での成立自体が困難
・ほぼ確実に債権者からの競売申立で請求が拒否される
・制度が知られていなく買主が決まりにくい
・税金の差押えがあると実現が難しい |
任意売却したくない・できない時の競売回避策はある?
任意売却や競売を回避するには、まず住宅ローンの金融機関へ早めに相談することが大切です。
任意売却ではない住宅ローン返済の方法を、提案してくれる可能性があるでしょう。
住宅ローンの返済方法を見直す
任意売却をしたくない場合は、返済方法の見直しをするといいでしょう。たとえば、返済期間を伸ばす方法や、ボーナス返済で一定の期間は減額してもらう方法などが挙げられます。
教育費などで家計が厳しい場合は「返済額軽減型」の利用、利息を減らしたい場合は返済期間を縮める「期間短縮型」を利用すると、毎月の負担を減らせるでしょう。
ただし、返済期間の延長は金融機関によってできない場合もあるため、注意が必要です。
また、金利プランの変更も有効な手段のひとつでしょう。金利の状況に応じて、変動金利から固定金利や固定金利から変動金利へ変更すると返済額を減らせます。
一般的に、変動金利から固定金利への変更ができる金融機関は多いです。しかし、固定金利から変動金利への変更は、固定金利の期間の終了時にしかできない場合が多いでしょう。
いずれにしても、早めに金融機関に相談すると早期の解決が望める可能性が高いです。
住宅ローンを借り換える
借り換えを適切なタイミングでおこなうと毎月の返済額が減り、経済的な負担を軽くできる可能性があります。以下のような場合が、借り換えをするタイミングでしょう。
- 固定金利の優遇策の終了時点
- 金利が上昇または下降した場合
- 収入が低下した場合
住宅ローンを滞納していると借り換えはできなくなるため、注意が必要です。
また、借り換え時は事務手数料や保証料などのチェックを忘れないようにしてください。
借り換えで返済額が減ったからといって諸経費が高いと、総合的に変わらない可能性があります。
金融機関ごとに手数料は自由に設定ができます。一般的には、借入金額の3%ほどが必要になる場合が多いでしょう。
債務整理をおこなう
債務整理をおこなうと他の借金を圧縮でき、住宅ローンの返済に充てられる可能性があります。債務整理の方法は4つが挙げられます。
任意整理
借金の減額や金利の引き直しの交渉をし、毎月の返済金額を減額する方法。任意整理をおこなうと過払い金の発生に気づくこともあります。
過払い金請求
貸金業者に支払い過ぎていたお金を計算し、返還請求する手続き。過払い金が戻ってくる可能性があります。
民事再生(個人再生)
借金の返済が困難であることを裁判所に認めてもらい、減額された借金を3〜5年かけて返済していく手続き。
借金は、最低返済額が最大で10分の1まで減額される可能性があります。住宅などの財産を維持したまま、借金の整理ができます。
自己破産
法律上、借金の支払い義務を全て免除してもらう手続き。所有している財産の全てを手放す必要があります。
債務整理それぞれ特徴が異なるため、自分自身に最適な方法を選ぶといいでしょう。
ただし、自己破産は最終手段です。自己破産を選択するなら、任意売却を検討した方がいいでしょう。
個人再生の住宅ローン特則も検討
住宅を個人再生の対象から外し、手元に残したい場合は、個人再生の住宅ローン特則を検討してみるといいでしょう。
個人再生の住宅ローン特則が認められるには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 個人再生の申立人が所有している住宅→個人再生の申立てをする人が所有かつ自己の居住用に使用する住宅である必要があります。投資用不動産や別荘などは該当しません。
- 住宅ローンの借入れであること→借入金が住宅の購入やリフォームのためである必要があります。会社設立の借入金などは該当しません。
- 住宅を他の借入れの担保にしていないこと→住宅を担保として事業用資金を借入れた場合などは、住宅ローン特則を利用できません。
- 滞納による代位弁済後、6ヶ月以内に再生手続きの申し立てをしている→民事再生法198条2項により、滞納による代位弁済後、6ヶ月以内に再生手続きの申し立てをすることで、例外で住宅ローン特則が認められます。代位弁済後、6ヶ月以内に再生手続きをしないと、住宅ローン特則を受けられません。
個人再生手続きをすると、住宅ローンも減額の対象となります。しかし、住宅ローンの返済が困難と見なされ、所有している住宅を手放さなければなりません。
住宅ローン特則を利用すると、住宅を個人再生の対象から外し手元に残すことが可能です。
住宅ローン返済のリスケジュールが可能な上、支払い期限の延長や手続き終了まで家や土地の差押え・競売の停止もできます。
まとめ
任意売却は住宅ローン滞納時に競売を避けるための最終手段ですが、メリットだけでなくデメリットも存在するため、それを理解した上でおこなう必要があります。
とはいえ、住宅ローン滞納を放置して不動産が競売にかけられるよりは、任意売却をおこなうほうがデメリットを抑えられます。
なぜなら、競売は任意売却よりも売却価格が安いため、任意売却をおこなうほうが住宅ローン残債を多く減らせるので、その後の返済の負担が楽になるからです。
任意売却のデメリットを最小限に抑えるには、任意売却専門の不動産会社に相談して、アドバイスを受けながら適切な方法を選択するようにしましょう。
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