任意売却で買い手がつかない理由
任意売却をおこなえば、住宅ローン返済中でも不動産を売却してローン返済に充てられますが、競売にかけられる前に物件を購入してくれる買主を見つける必要があります。
任意売却とは?
住宅ローンの借入金が返済できなくなった場合、売却後も住宅ローンが残ってしまう不動産を金融機関の合意を得て売却する方法です。
任意売却で買い手がつかない場合、以下の8種類の原因が考えられます。
ケース |
原因 |
物件自体の問題 |
外装・内装の汚れなどの手入れがされていない |
付帯設備等に不具合がある |
売主都合の契約条件が忌避される傾向にある |
販売活動の問題 |
売り出し価格の設定金額が相場よりも高め |
不動産売買の閑散期に売り出している |
内見の準備をしていない |
依頼先・相談先の問題 |
任意売却に疎い不動産会社に依頼している |
金融機関の交渉が難航している |
任意売却で買い手がつかない場合、物件の魅力を購入希望者に伝えられていないことが多く、期限までに買い手がつかないと不動産が競売にかけられてしまいます。
任意売却で買い手がつかない理由を、3種類のケースごとに解説します。
物件自体に問題があるケース
物件自体に問題があって任意売却で買い手がつかない場合、次のケースが考えられます。
物件自体に問題があるケース
- 外装・内装の汚れなどの手入れがされていない
- 付帯設備等に不具合がある
- 売主都合の契約条件が忌避される傾向にある
不動産売買において買主は物件の状態を重視するので、外装・内装の汚れや付帯設備などの不具合がある物件は、状態が悪い物件として購入を避けられてしまいます。
任意売却では売主が経済的に困窮している都合上、一般的な不動産売却よりも買主側の負担が大きい条件での契約になりやすく、そのせいで買い手がつかない場合もあります。
この項目では、物件自体に問題があるケースを解説します。
外装・内装の汚れなどの手入れがされていない
外装・内装の汚れなどの手入れがされていない物件は、わざわざ買主が大金を払って購入したいと思えないため、任意売却で買い手が見つかりにくいです。
なぜなら、不動産売却において買主は物件の状態を重視するため、同じ物件でも汚れている物件よりも、綺麗に片付いている物件のほうが購入希望者の印象が良いからです。
不動産売却において、内覧で購入希望者は次のような点を確認しています。
外装のチェックポイント
項目 |
チェックポイント |
外装 |
汚れはないか? |
ひび割れはないか? |
基礎 |
ひび割れはないか? |
屋根 |
雨漏りしないか? |
雨どい |
損傷はないか? |
給湯器
|
設置されているか? |
交換時期はいつか? |
内装のチェックポイント
項目 |
チェックポイント |
床 |
床板に歪みはないか? |
床鳴りはないか?
(歩くと軋むなど) |
壁 |
クロスが剥がれている部分はないか? |
黒ずみや汚れはないか? |
結露していないか? |
天井 |
天井板やクロスが剥がれている部分はないか? |
しみや黒ずみはないか? |
結露していないか? |
建具
(ドア・窓など) |
開閉しても不具合はないか? |
コンセント |
位置は問題ないか? |
数は十分か? |
浴室 |
汚れはないか?
(カビ・水あかなど) |
脱衣所の床面に水染み・ふやけはないか? |
ニオイは気にならないか? |
洗面所 |
汚れはないか? |
シンク下の排水管は水漏れしていないか? |
床面に水染み・ふやけはないか? |
ニオイは気にならないか? |
トイレ |
汚れはないか? |
床面に水染み・ふやけはないか? |
ニオイは気にならないか? |
キッチン |
汚れはないか?
(カビ・水あかなど) |
シンク下の排水管は水漏れしていないか? |
床面に水染み・ふやけはないか? |
ニオイは気にならないか? |
換気扇 |
不具合はないか? |
汚れはないか? |
任意売却の内覧前には、掃除・片付けなどの準備は最低限おこない、場合によってはハウスクリーニングを依頼したり、不用品をトランクルームに預けておくとよいでしょう。
付帯設備等に不具合がある
付帯設備などに不具合がある物件も、購入後に買主が自費で修繕・補修する必要があるため、任意売却で買い手が見つかりにくいです。
具体的にいうと、下記のような不具合がある物件は買主が見つかりにくいです。
付帯設備等に不具合がある例
- 雨漏り・外壁などからの浸水
- シロアリによる浸食
- 主要設備の著しい不具合や劣化
- 柱などの重要な箇所の過度な劣化
上記のような不具合や瑕疵を買主に伝えずに不動産を売却すると、買主から「契約不適合責任」を追及されて、売買契約の解除や損害賠償を請求される恐れもあります。
契約不適合責任とは?
引き渡した不動産が契約内容と反する場合に追及される責任で、2020年4月の民法改正前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていました。
付帯設備などに不具合がある物件を任意売却する際は、不具合を考慮して価格設定を安くするか、問題箇所を修繕・補修してから売り出しましょう。
売主都合の契約条件が忌避される傾向にある
売買契約などの条件が売主都合で設定されている場合、買主側の負担が多いとして忌避されてしまうため、任意売却で買い手が見つかりにくいです。
通常物件と異なり、任意売却の契約では以下のような特約を設けることが一般的です。
種類 |
内容 |
契約不適合責任の免責特約 |
住宅に契約とは異なる瑕疵があっても売主は責任を負わない |
債権者の同意を必要とする特約 |
債権者の同意がないと契約が成立しない
(同意が得られない場合は無条件の白紙撤回) |
境界確定の免除 |
土地の境界確定を実施せずに売買をおこなう
(境界確定をおこなう場合は買主負担) |
残置物の撤去の免除 |
物件にある残置物は買主が撤去する |
土地の境界確定などは売主が本来おこなうものですが、任意売却では売主が経済的に困窮している都合上、買主側が負担する形で購入してもらうケースが多いです。
売主の経済的事情が優先される任意売却では、買主側の負担が大きい契約条件にせざるを得ないため、デメリットを考慮して価格を安くするといった対策を施しましょう。
販売活動に問題があるケース
売却活動のせいで任意売却で買い手がつかない場合、以下のケースが考えられます。
販売活動に問題があるケース
- 売り出し価格の設定金額が相場よりも高め
- 不動産売買の閑散期に売り出している
- 内見の準備をしていない
任意売却に関係なく、不動産売買には需要と供給があるため、相場より高い価格で売り出していたり、不動産売買の閑散期に売り出してしまうと、買い手がつきにくいです。
また、内覧の準備をしていないと、購入希望者が物件に良い印象を抱けず、購買意欲を刺激できないせいで買い手がつきにくいケースもあります。
この項目では、販売活動に問題があるケースを解説します。
売り出し価格の設定金額が相場よりも高め
売り出し価格が相場よりも高めに設定されている場合、買主からすると割高に感じるので、任意売却で買い手が見つかりにくいです。
なぜなら、売主側は住宅ローン返済のために高値で任意売却をしたいと考えますが、買主側にとっては普通の不動産売買なので、なるべく安く購入したいからです。
とくに、任意売却では「住宅ローンの返済資金をなるべく多く確保したい」という気持ちから、売り出し価格を高めに設定してしまう売主が多いため注意が必要です。
任意売却で買い手を見つけたい場合、不動産会社の無料査定で価格相場を確認した上で、高過ぎず安すぎない適正価格で不動産を売り出すようにしましょう。
不動産売買の閑散期に売り出している
不動産売買の閑散期である1月・8月などに売り出してしまうと、物件の購入希望者が少ないため、任意売却の買い手が見つかりにくいです。
種類 |
時期 |
閑散期 |
1月・8月 |
繁忙期 |
2月〜3月 |
9月〜11月 |
8月は暑すぎるので内覧に訪れるには適しておらず、1月は年末年始で忙しく不動産売買に時間を充てられる人が少ないため、不動産売買の閑散期であると考えられます。
反対に、新生活のスタートである2〜3月は不動産売買がもっとも活発で、人事異動が多い9月〜11月も人の流れが比較的多いので、任意売却に適している時期といえます。
任意売却は競売にかけられる前に不動産を売る必要がありますが、価格が安くなる競売は債権者も避けたいので、売却活動に1年間程度の期間を与えているケースが多いです。
任意売却で買主を見つけたい場合、不動産売買の閑散期である1月・8月などは避けて、不動産売買が活発な2〜3月・9月〜11月に売却活動をおこなうとよいでしょう。
ただし、不動産はすぐに売却できる訳ではなく、売却まで3ヶ月程度はかかるといわれるので、余裕をもって1月・7月頃には売却活動をスタートしておくことをおすすめします。
内見の準備をしていない
内見の準備をせずに売却活動を始めてしまうと、物件の購入希望者に良いイメージを与えられないので、任意売却の買い手が見つかりにくいです。
なぜなら、内覧準備をしておかないと、住んでいる物件の生活感が伝わってしまい、内覧に訪れた購入希望者の購入意欲を減らす恐れがあるからです。
例えば、新居のように整理された綺麗な物件を内覧する場合と、洗濯物などが散乱している生活感のある物件を内覧する場合では、内覧者に与える印象が大きく変わります。
任意売却は現在の物件に住みながら売却活動をおこなうケースが多く、生活感のある状態で内覧をしてしまい、購入希望者に悪い印象を与えてしまう場合も多いです。
購入希望者は「こんな家に住みたい」というイメージを抱いているので、イメージを邪魔して購入意欲が下がらないように、内覧前には生活感を取り除いておきましょう。
内覧で購入希望者に好印象を与えるコツ
- 洗濯物や生活用品を片付ける
- キッチン・風呂などを清掃しておく
- 不用品は処分して、物件内に置かない
依頼先・相談先に問題があるケース
依頼先・相談先のせいで任意売却で買い手がつかない場合、次のケースが考えられます。
依頼先・相談先に問題があるケース
- 任意売却に疎い不動産会社に依頼している
- 金融機関の交渉が難航している
任意売却は通常の不動産売却とは異なり、スピード感・交渉力が求められるため、任意売却に疎い不動産会社に依頼してしまうと、なかなか買い手がつかないケースがあります。
また、任意売却の実施・売り出し価格の変更には借入先の許可が必要なので、金融機関との交渉が難航していると価格を変更できないので、なかなか買い手がつきにくいです。
依頼先・相談先に問題があるケースをそれぞれ解説します。
任意売却に疎い不動産会社に依頼している
任意売却に疎い不動産会社に依頼してしまうと、金融機関との交渉や買主を探す売却活動が上手くいかないので、任意売却の買い手が見つかりにくいです。
任意売却は一般的な不動産売却と異なるため、通常の不動産会社では金融機関からの許可が得られなかったり、売却活動が遅すぎて競売に間に合わない恐れがあります。
例えば、任意売却は競売と並行して進めるため、不動産会社は競売の進行具合・残りの猶予期間などを把握した上で、スピード感をもって売却活動をおこなう必要があります。
自己破産などの法的手続きもおこなう場合、法律で禁止されたことをしないように任意売却を進める必要があるため、不動産会社の担当者には法律知識も必要です。
任意売却の場合、物件の売却活動だけではなく金融機関との交渉も不動産会社がおこなうため、交渉力のある不動産会社でないと金融機関の許可が貰えません。
任意売却の専門業者である不動産会社は、過去にも任意売却の案件を数多く扱っているため、金融機関・債権回収会社と顔見知りであるなど一定の信用を得ています。
そのため、経験の浅い一般的な不動産会社に比べて、任意売却の専門業者は金融機関からの許可を得やすい上、スピード感をもって売却活動を実施してくれる可能性が高いです。
金融機関の交渉が難航している
借入先である金融機関の交渉が難航していると、不動産の抵当権を外す許可が降りないので、任意売却の買い手が見つかりにくいです。
なぜなら、住宅ローン返済中の不動産には抵当権が設定されており、任意売却の成立時に抵当権を外す許可を金融機関から貰わないと、誰も購入しようと考えないからです。
なかでも、債権者が複数いるケースや連帯保証人がいるケースは、すべての金融機関・連帯保証人の許可がないと任意売却がおこなえないため、交渉が難航しやすいです。
任意売却の場合、売り出し価格を変更する際も金融機関の許可が必要なので、交渉に時間がかかると買主が見つからずに不動産が競売にかけられてしまう恐れがあります。
自分で金融機関と交渉しても、知識不足で交渉が難航する可能性が高いので、不動産会社の担当者に交渉を依頼して、必要であれば弁護士にも相談するようにしましょう。
任意売却で買い手がつかない時にやるべき対策
任意売却で買い手がつかない場合、次の対策を実践するとよいでしょう。
任意売却で買い手がつかない時にやるべき対策
- 物件はなるべく綺麗にして不具合や瑕疵を解消する
- 忙しくても内覧準備を怠らない
- 売り出し価格の設定は不動産会社の意見を大事に
- 「任意売却取扱主任者」の資格持ちの専門家に相談する
物件を綺麗にして不具合や瑕疵を解消したり、忙しくても内覧準備を怠らないなど、購入希望者にとって魅力的な物件と感じてもらえるための対策は必要不可欠です。
また、任意売却は一般的な不動産売却とは異なる知識・ノウハウが必要なので「任意売却取扱主任者」の資格をもつ専門家のいる不動産会社に相談する方法がおすすめです。
この項目では、任意売却で買い手がつかない時の対策を解説します。
物件はなるべく綺麗にして不具合や瑕疵を解消する
任意売却の買い手を見つけるには、物件をなるべく綺麗にしておき、不具合や瑕疵を解消してから売り出すようにしましょう。
例えば、雨漏りが生じている物件は購入後に買主側で修繕する必要があるので、事前に売主が修繕しておいたほうが、購入してもらえる可能性は高いです。
とはいえ、任意売却をおこなう人は金銭的に余裕がない場合も多く、修繕費用に見合う効果が得られるとも限らないので、物件を修繕せずに売却する方法もあります。
物件を修繕せずに任意売却する場合、不具合や瑕疵の分だけ値引きするのはもちろん、契約不適合責任を追及されないように売主へ不具合や瑕疵を伝えましょう。
忙しくても内覧準備を怠らない
任意売却の買い手をつけるには、忙しくても内覧準備を怠らず、内覧当日も丁寧に対応するようにしましょう。
物件の綺麗さは内覧の印象を大きく左右しますが、なかでも玄関・水回り・バルコニーは重点的に掃除しておくことをおすすめします。
また、内覧時は物件の匂いもチェックされており、他人の生活臭が残っている物件は購入を避けられてしまいやすいので、無臭タイプの消臭剤を設置しておきましょう。
しつこい汚れが落ちない場合・自分で掃除する時間がない場合など、金銭的に余裕があればハウスクリーニングの依頼も検討してみるとよいでしょう。
売り出し価格の設定は不動産会社の意見を大事に
任意売却の売り出し価格を設定する場合、不動産会社の意見を参考にして、高過ぎず安過ぎない適正価格で物件を売り出すようにしましょう。
なぜなら、売主都合の希望価格で売り出すと、買主が見つからずに物件が売れ残ってしまい、任意売却が成立せずに競売にかけられてしまうリスクが高いからです。
通常の不動産売却は売主が自由に売り出し価格を変更できますが、任意売却は金融機関の同意がないと売り出し価格を変更できないため、慎重に価格を決める必要があります。
つまり、任意売却では売り出し価格を何度も変更するのが面倒なので、不動産会社の意見を参考にしながら、確実に買主が見つかる適正金額に設定するようにしましょう。
「一括査定でとりあえず高い会社に!」は危険なことも
通常の不動産売却では、一括査定で査定額の高い不動産会社に売却を依頼するのがセオリーですが、任意売却の場合は査定額だけで不動産会社を選ぶのは避けましょう。
なぜなら、任意売却では競売にかけられる前に不動産の買主を見つける必要があるため、売り出し価格を高値に設定してしまうと、買主が見つからないリスクが高いからです。
加えて、任意売却は借入先の金融機関から許可を得る必要があるため、高額売却が得意な不動産会社ではなく、金融機関との交渉が得意な不動産会社のほうが適しています。
価格相場を把握するためにも一括査定を受けること自体はよいですが、査定額で不動産会社を選ぶのではなく、任意売却に精通している不動産会社を選ぶようにしましょう。
→任意売却におすすめな不動産会社の選び方はこちら!
不動産会社を変える場合は即行動
任意売却に疎い不動産会社に依頼しているなど、依頼先の不動産会社に問題があって任意売却の買い手がつかない場合、すぐに不動産会社を変えるようにしましょう。
なぜなら、任意売却は期限までに不動産を売る必要があるため、問題のある不動産会社で売却活動を続けていても、買い手がつかずに物件が競売にかけられてしまうからです。
ただし、任意売却の場合は複数の不動産会社とやり取りをすることを債権者が嫌うため、1つの不動産会社にしか売却を依頼できない「専任媒介契約」が原則となります。
3種類の媒介契約の比較表
種類 |
解説 |
一般媒介契約 |
複数の不動産会社に依頼できる |
専任媒介契約 |
不動産会社1社だけに依頼する |
自分で探した買主にも売却可能 |
専属専任媒介契約 |
不動産会社1社だけに依頼する |
不動産会社の見つけた買主にしか売却できない |
専任媒介契約の契約期間は最長3ヶ月で、基本的に契約期間内は他の不動産会社と媒介契約を結べないので、任意売却を依頼する不動産会社は慎重に選ぶ必要があります。
ただし、違約金を支払えば専任媒介契約を解除できるので、買い手がつかない場合はすぐに専任媒介契約を解除して、任意売却の得意な不動産会社に変更しましょう。
任意売却専門業者も存在する
任意売却の不動産会社を選ぶ場合、一般的な不動産売買と並行して任意売却も相談可能としている不動産会社ではなく「任意売却専門業者」に依頼するとよいでしょう。
任意売却専門業者とは?
任意売却を専門的に取り扱う不動産会社で、任意売却に関する専門知識・ノウハウを有しており、金融機関をはじめとする債権者との交渉も得意としています。
任意売却専門業者と一般的な不動産会社の大きな違いは、金融機関などの債権者との交渉を得意としており、弁護士などと連携してスムーズに任意売却を進められる点です。
任意売却専門業者に依頼できる内容
任意売却専門業者は過去にも任意売却を数多く扱っているため、金融機関と顔見知りである場合も多く、一定の信用を得ているので任意売却の許可が降りやすいです。
任意売却専門業者がわからない場合、以下のような専門業者がおすすめです。
任意売却専門業者の代表例
- 一般社団法人全日本任意売却支援協会
- 任意売却119番
- 全国住宅ローン返済相談センター
- みどり住宅ローン相談所
- 任意売却相談室
「任意売却取扱主任者」の資格持ちの専門家に相談する
任意売却専門業者の選び方で迷う人は、任意売却の専門家であることを証明する民間資格をもつ「任意売却取扱主任者」が在籍している専門業者に相談しましょう。
任意売却取扱主任者とは?
任意売却の専門家であることを証明する民間資格で、一般社団法人「全国住宅ローン救済・任意売却支援協会」が資格を発行しています。
任意売却取扱主任者は一般的な不動産会社の担当者よりも任意売却に関する専門知識・ノウハウが豊富なので、スムーズに任意売却を進められる可能性が高いです。
任意売却取扱主任者の業務内容
- 金融機関との交渉
- 債務者に対する任意売却の流れ・注意点の説明
- 連帯債務者や連帯保証人との合意形成のサポート
- 引越し費用や当面の生活費に関する資金計画の相談
- 住宅ローン返済プランの変更の相談
- 自己破産手続きの支援
任意売却取扱主任者は所定の試験に合格した専門家であり、金融機関からの信頼もあるので、任意売却取扱主任者に交渉を任せることで任意売却の許可が降りやすいです。
売主のメンタル面や忙しさなどを考えても、金融機関との交渉は専門家に任せるのが最善で、債務問題に詳しい任意売却取扱主任者のサポートを受けるメリットは大きいです。
全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の公式サイトから、協会の認定加盟店を確認できるので、任意売却取扱主任者のいる専門業者を探してみるとよいでしょう。
参照:一般社団法人 全国住宅ローン救済・任意売却支援協会「認定加盟店一覧」
任意売却に強い不動産会社の選び方
任意売却に強い不動産会社を選ぶ場合、以下の点を確認しましょう。
任意売却に強い不動産会社の選び方
- 任意売却の販売実績が明示されている
- 任意売却取扱主任者が在籍している
- 任意売却以外の解決方法も提示してくれる
- 任意売却の相談後のレスポンスが早い
まずはホームページを確認して「任意売却の販売実績が明示されているか?」と「任意売却取扱主任者が在籍しているか?」の2点を確認しましょう。
その後、実際に無料相談で不動産会社の担当者と話す際は「任意売却以外の解決方法も提示してくれるか?」と「相談後のレスポンスが早いか?」を確認しましょう。
任意売却の販売実績が明示されている
任意売却の販売実績が明示されている不動産会社であれば、経験・ノウハウが豊富なので任意売却を成功に導いてくれる可能性が高いです。
なぜなら「任意売却が得意」と謳う不動産会社でも、実績が1,000件以上の不動産会社もあれば、実績が100件もないのに任意売却専門業者を名乗る不動産会社もあるからです。
一口に任意売却といっても、それぞれの事情によって適切な手続きは異なるため、さまざまな事例を経験している実績豊富な不動産会社のほうが成功確率が高いです。
例えば、夫婦の共有名義で家を購入したケース・親が連帯保証人となり家を購入したケースでは、任意売却における対応方法も異なります。
連帯保証人を用意して購入した不動産を任意売却する場合、連帯保証人の同意も得る必要があるため、一般的な任意売却以上に不動産会社の交渉力が重要となります。
具体的な数字でいうと「任意売却が得意」と謳う任意売却専門業者の中でも、任意売却の取扱実績が100件以上ある不動産会社を選ぶことをおすすめします。
不動産会社のホームページには販売実績が掲載されているので、事前にホームページを確認して、なるべく任意売却の取扱実績が多い不動産会社を選ぶとよいでしょう。
任意売却取扱主任者が在籍している
任意売却の専門家である「任意売却取扱主任者」が在籍している不動産会社であれば、任意売却を成功に導いてくれる可能性が高いです。
「任意売却が得意」と謳う不動産会社でも、実績数が1,000件以上の不動産会社もあれば、実績数が100件もないのに任意売却の専門業者を名乗る不動産会社もあります。
任意売却取扱主任者は所定の試験に合格しており、専門知識が豊富な専門家なので、任意売却取扱主任者が在籍している不動産会社は間違いなく任意売却の専門業者といえます。
全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の公式サイトから、任意売却取扱主任者が在籍している不動産会社を確認できるので、任意売却専門業者を探してみるとよいでしょう。
参照:一般社団法人 全国住宅ローン救済・任意売却支援協会「認定加盟店一覧」
任意売却以外の解決方法も提示してくれる
任意売却を相談した際、任意売却以外の解決方法も提示してくれる不動産会社であれば、親身になって相談に乗ってくれる可能性が高いです。
例えば、リースバックという方法を利用すれば、不動産を任意売却した後に新たな所有者と賃貸借契約を結ぶことで、賃借人として家に住み続けられます。
納得できる理由で任意売却を勧めてくれる不動産会社であれば、相談者の悩みを親身になって考えてくれるので、あなたに最適な解決方法を提示してくれます。
不動産会社の担当者と無料相談で話す際は、任意整理以外の選択肢を聞いてみて「他の解決方法を教えることを渋らず、合理的な提案をしてくれるか?」を確認しましょう。
任意売却の相談後のレスポンスが早い
相談後のレスポンスが早い不動産会社であれば、スピード感をもって売却活動を実施してくれるため、競売にかけられる前に任意売却をおこなえる可能性が高いです。
通常の不動産売却と異なり、任意売却は期限がある中で売却活動をおこなう必要があり、期限内に買主が見つからないと、競売によって不動産が安値で買い叩かれてしまいます。
任意売却におけるスピード感の重要性を理解している不動産会社であれば、相談後のレスポンスも早く、なるべく早く買主が見つかるように売却活動を実施してくれます。
媒介契約を結ぶ前に不動産会社のレスポンス速度を確認しておき「話がスムーズに進まない」や「返答が遅い」と感じた場合、別の不動産会社に任意売却を依頼しましょう。
任意売却で買い手が付かず売れない場合は競売になる
任意売却でも買い手がつかずに売れない場合、以下の流れで競売に進みます。
- 競売に進むと調査員が家を視察後に強制的に売却する
- 競売後も住宅ローン残債が解消不能な場合は返済を続ける
- 競売後の住宅ローン残債を払えない場合は債務整理も検討する
競売にかけられると、裁判所命令で不動産が強制的に売却されますが、売主自身が買主を選べないので、一般的な相場の50%〜70%程度の安値で買い叩かれてしまいます。
競売とは?
担保の不動産を裁判所が差押え・強制的に売却して、売却代金を債権回収に充てる手続きです。
目安としては、売却活動の開始から1年以上超過しても任意売却が成立しない場合、裁判所命令で不動産が競売にかけられてしまうケースが多いです。
ただし、任意売却の販売期間を決める権利は債権者にあるので、金融期間によっては任意売却の開始から1年も経たずに競売にかけられてしまうケースもあります。
この項目では、任意売却で買い手がつかず競売に進んだ場合の流れを解説します。
「競売」に進むと調査員が家を視察後に強制的に売却
債権者が競売を申し立てると、裁判所から「競売開始決定の通知」が届いた後、調査員が家を視察して現況調査をおこなった上で、不動産が強制的に売却されます。
- 競売開始決定の通知が届く
- 現況調査が実施される
- 期間入札の通知が送付される
- 競売物件の入札がおこなわれる
- 開札期日に開札がおこなわれる
- 売却許可が決定される
住宅ローンの滞納が4~6ヶ月程度続くと競売に移行することが多く、裁判所から「競売開始決定通知」が届いてから6ヶ月程度で不動産が強制的に売却されてしまいます。
競売で落札者が決定すると、物件の明け渡しを要求してきますが、債務者は家の所有権を失っているので、不動産引渡命令に従わなければ強制執行で家を追い出されます。
競売の開札日の前日までに不動産を任意売却できれば、債権者に競売を取り下げてもらえる可能性があるので、競売開始決定の通知が届いたらすぐ不動産会社に相談しましょう。
競売後も住宅ローン残債が解消不能な場合は返済継続
不動産が競売にかけられた結果、競売による利益でも住宅ローンを完済できない場合、競売が終わった後も債務者は住宅ローンの返済を続けなければなりません。
不動産が競売にかけられると、売却価格が市場価格の50%〜70%程度まで安くなってしまうことが多く、住宅ローン返済に充てても完済できないケースは少なくありません。
しかし、競売後も住宅ローンの返済義務は免除されないので、債務者は住宅ローン残債の返済を続ける必要がありますが、場合によっては一括返済を請求される恐れもあります。
住宅ローンの一括返済が困難な場合、裁判所命令で給与を差し押さえられるケースもあるため、住宅ローン残債を払えない場合は弁護士に相談して債務整理を検討しましょう。
競売後の住宅ローン残債を払えない場合は「債務整理」も検討
競売後もローン残債が残る場合、引き続きローン返済を続けますが、自力での返済が難し場合は弁護士に「債務整理」を依頼して、合法的に借入を減らしてもらいましょう。
債務整理とは?
合法的に借金を減額できる手続きの総称で、任意整理・個人再生・自己破産の3種類があります。
債務整理は以下の3種類があり、それぞれ減額できる金額などが異なります。
方法 |
解説 |
任意整理 |
借入の利息のみをカットする |
減額できる金額が少ない |
個人再生 |
借入を最大1/10程度まで減額する |
安定収入がないと認められない |
自己破産 |
すべての債務をゼロにする |
家などの財産を失う恐れがある |
債権者が住宅金融支援機構や日本政策金融公庫であれば、少額返済が認められる可能性もありますが、保証会社の場合は一括返済を求めてくることが多いです。
債権者と交渉をしても返済できる見込みがない場合は、任意整理・個人再生を手続きして債務を減らすか、自己破産による債務免除をおこなうしかありません。
自己破産の場合、現金は99万円までしか手元に残せず、時価20万円を超える財産は処分されるといったデメリットもあるため、弁護士と相談して最適な方法を選びましょう。
まとめ
任意売却で買い手がつかない場合、期限までに任意売却を成功させないと不動産が競売にかけられてしまうので、そのまま放置せずに急いで対策を施しましょう。
原因としては、物件自体・販売活動・相談先に問題がありますが、いずれのケースでも専門家のアドバイスを受けたほうがよいので、まずは別の不動産会社に相談しましょう。
任意売却を相談する不動産会社の選び方がわからない場合、任意売却専門業者のなかでも「任意売却取扱主任者」という資格をもつ担当者のいる不動産会社がおすすめです。
多くの不動産会社では無料相談を実施しているので、任意売却取扱主任者と話をしてみて「どうすれば任意売却の買い手が見つかるか?」のアドバイスを貰いましょう。
任意売却に関するよくある質問
任意売却と競売の違いは何ですか?
任意売却は債務者自身の意思で売却先を選べますが、競売は債務者の意思に関わらず強制的に売却が進められる点が異なります。売却価格も異なり、競売は市場価格の50%〜70%程度まで価格が安くなるケースが多いです。
任意売却で物件を親族に売却することはできますか?
値段設定が債権者や税務署から見て適切であり、金融機関の合意があれば、売却先が親族でも任意売却は可能です。
任意売却以外で競売を防ぐ方法はありますか?
リースバックという方法を利用すれば、不動産を売却した後に新たな所有者と賃貸借契約を結ぶことで、賃借人として家に住み続けられます。
任意売却で売れなかったらどうなりますか?
競売の開札日の前日までに不動産を任意売却できない場合、裁判所命令で不動産が強制的に売却されてしまいます。競売にかけられる場合、1年間程度の猶予が与えられるケースが多いです。
競売で買い手がつかない場合はどうなりますか?
競売で買い手がつかない場合、期間入札から早い者勝ちの特別売却へ移行します。それでも買い手がつかない場合、価格を下げて同様の手順を3回繰り返します。競売を3回繰り返しても買い手がつかない場合、競売は取消しされますが、住宅ローンは残ったままです。
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