住宅ローンに連帯保証人がいる場合、主債務者と連帯保証人の両方に返済義務があるため、債権者と連帯保証人の同意がないと任意売却ができません。
任意売却をおこなうには住宅ローンを滞納する必要があり、債権者から連帯保証人に住宅ローンの請求や督促が届くなど、主債務者だけでなく連帯保証人にも影響が及びます。
いきなり督促がいくと連帯保証人に迷惑がかかる上、関係が悪化すると任意売却の同意が取りにくくなるので、住宅ローンを滞納したら即座に連帯保証人へ連絡しましょう。
この記事では、任意売却をおこなう際の連帯保証人への影響を解説します。
住宅ローンに連帯保証人がいる場合の任意売却の進め方もわかるので、住宅ローン返済で困っている人はぜひ参考にしてみてください。
任意売却で連帯保証人への影響は主に2つ
任意売却をおこなう場合、連帯保証人に与える影響は以下2点です。
- 債権者から住宅ローンの請求や督促がいく
- 信用情報機関に滞納情報が登録される
任意売却には債権者の許可が必要ですが、住宅ローンを4〜6ヶ月ほど滞納して金融機関から「期限の利益の喪失通知」が届いた後でないと、金融機関は任意売却を認めません。
なぜなら、金融機関は通常どおり住宅ローンを返済することを望んでおり、できるだけ任意売却は避けたいと考えているからです。
加えて、返済不能になった場合の担保として、住宅ローンを組む際に金融機関が不動産に抵当権を設定しているため、抵当権を外さないと買い手が見つかりません。
任意売却をおこなう場合、債務者が住宅ローンを一定期間滞納する必要があるため、債権者から連帯保証人に住宅ローンの請求や督促がおこなわれてしまいます。
加えて、任意売却をおこなうために住宅ローンを一定期間滞納することで、債務者・連帯保証人どちらの信用情報にも事故情報が登録されてしまいます。
任意売却には連帯保証人の同意が必要ですが、連帯保証人の意思に関係なく、債務者が住宅ローンを滞納した時点で連帯保証人への影響は避けられません。
連帯保証人の意思 | 影響 |
---|---|
任意売却に同意しない | 債務者の返済を肩代わりする必要がある |
任意売却に同意する | 連帯保証人の信用情報にも傷がつく |
任意売却をする・しないに関係なく、住宅ローンを払えない場合は連帯保証人への影響が避けられないので、住宅ローン滞納時はすぐ連帯保証人に連絡しましょう。
任意売却では連帯保証人の同意が必要
任意売却でも住宅ローンを完済できない場合、主債務者の返済が滞ると返済義務がある連帯保証人にも督促がいくため、任意売却では連帯保証人の同意も必要になります。
連帯保証人に黙って任意売却を進めようとしても、多くの場合は連帯保証人の同意がないと金融機関が承諾しませんし、金融機関から連帯保証人に確認をおこないます。
任意売却をおこなうには住宅ローンの支払いを滞納する必要があり、連帯保証人に請求や督促がいくので、連帯保証人に内緒で任意売却をおこなうことは不可能です。
同意なしで勝手に任意売却を進めると、連帯保証人に迷惑がかかる上に信用も失うことになるので、連帯保証人に連絡して同意を得てから任意売却をおこないましょう。
連帯保証人がいる場合の任意売却の進め方
住宅ローンに連帯保証人がいる場合、以下の流れで任意売却を進めます。
- 住宅ローンが払えないことを連帯保証人に相談する
- 連帯保証人の同意後は通常同様に任意売却をおこなう
通常の任意売却との違いは、金融機関だけでなく連帯保証人の同意も得る必要がある点で、連帯保証人とのトラブルをできるだけ抑えることが課題といえます。
連帯保証人の同意がないと任意売却に進めないので、不動産会社・弁護士などの専門家に協力を仰いで、連帯保証人を説得することも検討しましょう。
この項目では、連帯保証人がいる場合の任意売却の進め方を解説します。
①住宅ローンが払えないことを連帯保証人に相談
任意売却の手続きに着手する前に、住宅ローンが払えないことを連帯保証人に相談して、任意売却を検討している旨を伝えましょう。
連帯保証人が住宅ローンを払える場合は任意売却をおこなわずに返済を続けられますが、連帯保証人も払えない場合は競売を避けるために任意売却を進める必要があります。
連帯保証人から任意売却の同意を得たい場合、連帯保証人に督促が送られて関係が悪化する前に、住宅ローンが払えなくなったら即座に相談することをおすすめします。
なぜなら、主債務者が住宅ローンを滞納すると、連帯保証人に迷惑がかかるので、任意売却の承諾が取れなかったり、話し合いに応じてもらえない恐れがあるからです。
連帯保証人と話し合いができない場合・任意売却の同意が取れない場合は、第三者を介して交渉したほうが和解しやすいので、不動産会社・弁護士などに相談しましょう。
競売になるより任意売却する方が良い事も伝える
連帯保証人と交渉する際は「競売になるよりも、任意売却のほうが高値で売却できる」という点を伝えると、任意売却に同意してもらいやすいです。
項目 | 任意売却 | 競売 |
---|---|---|
売却価格 | 市場価格の80〜90%程度 | 市場価格の50%〜70%程度 |
売却後のローン残債 | 少ない | 多い |
ローン残債の支払方法 | 分割払いの交渉可能 | 一括払い or 分割払い |
プライバシー | 公開されない | 公開される |
退去日 | 融通が効く | 指定できない |
引越し費用 | 交渉次第 | 出ない |
不動産が競売にかけられる場合、売却価格が市場価格の50%〜70%程度まで安くなるため、任意売却をおこなう場合よりも住宅ローン残債が多く残ってしまいます。
任意売却の売却価格は市場価格の80〜90%程度になることが多く、競売よりも住宅ローン残債を減らせる上、住宅ローンを完済した上で余剰金を受け取れる可能性もあります。
裁判所から「競売開始決定通知」が届いて6ヶ月ほど経過すると、不動産が競売にかけられてしまうので、急いで任意売却したほうがよいことを連帯保証人に伝えましょう。
任意売却の専門業者にやりとりを任せることも可能
連帯保証人と疎遠であったり連絡が取りづらい場合、任意売却の専門業者が仲介役となって、任意売却の同意を得るための交渉を任せることも可能です。
任意売却を専門的に取り扱う不動産会社で、任意売却に関する専門知識・ノウハウを有しており、金融機関をはじめとする債権者との交渉も得意としています。
任意売却の専門業者を介して交渉すれば、連帯保証人との仲が良好でない場合でも第三者視点で公平に話し合いが実施できるので、任意売却の合意を得やすいです。
加えて、任意売却の専門業者は弁護士と連携している業者も多く、連帯保証人が納得するように法的根拠を提示した上で、任意売却の必要性を説明してくれます。
以下の記事では、任意売却の相談先一覧を解説しているので、自力で連帯保証人を説得できるか不安な人はあわせてご覧ください。
②連帯保証人の同意後は通常の任意売却と同じ流れ
連帯保証人の同意を得た後、以下のような流れで任意売却をおこないます。
- 住宅ローン残債と名義を確認・把握
- 任意売却に強い不動産会社に相談・査定を依頼
- 金融機関(債権者)から任意売却の承諾を得る
- 任意売却の承諾を得た後に販売活動を開始
- 購入希望者への内覧対応や価格交渉をおこなう
- 買主と売買契約を締結する
- 決済・物件の引き渡し
- 連帯保証人と返済方法を取り決める ※住宅ローン残債がある場合のみ
任意売却の難しい部分は、債権者の金融機関からの承諾が必要となる点で、債務者自身では説得が困難なので、不動産会社・弁護士に交渉を依頼するケースが一般的です。
ただし、一般的な不動産会社は任意売却の取扱実績が少ないため、金融機関からの承諾が取れなかったり、競売になる前に買い手を見つけられないケースも少なくありません。
任意売却の専門業者の場合、金融機関・債権回収会社から一定の信用を得ているので承諾がおりやすく、競売を避けるためにスピード感をもって売却活動を実施してくれます。
任意売却の流れは以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
任意売却後の住宅ローン残債は連帯保証人も返済義務がある
「任意売却をすれば、住宅ローンの返済義務がなくなる」と誤解している人もいますが、任意売却後も住宅ローン残債が残る場合、連帯保証人にも返済義務があります。
連帯保証人の返済義務は住宅ローンの完済以外で消えることはなく、催告の抗弁権がないので債権者から返済を求められたら、有無をいわさず返済しなければなりません。
任意売却後の住宅ローン残債を処理する流れは、以下のとおりです。
- 債権者と住宅ローン残債の返済方法を取り決める ※任意売却で住宅ローンを完済できない場合
- 連帯保証人に返済の催促・督促がいく ※主債務者が払えない場合
- 主債務者と共に債務整理をおこなう ※連帯保証人も払えない場合
多くの場合、任意売却後の残債返済は無理なく返済できる金額となりますが、支払いが難しい場合は分割返済の交渉・債務整理をおこなう必要があります。
合法的に借金を減額できる手続きの総称で、任意整理・個人再生・自己破産の3種類があります。
債務整理は3種類の方法があり、それぞれ減額できる金額などが異なります。
方法 | 解説 |
---|---|
任意整理 | 借入の利息のみをカットする |
減額できる金額が少ない | |
個人再生 | 借入を最大1/10程度まで減額する |
安定収入がないと認められない | |
自己破産 | すべての債務をゼロにする |
家などの財産を失う恐れがある |
債務整理を用いれば住宅ローン残債を減らせますが、信用情報に事故情報が記録されるので、5〜10年間は各種ローンやクレジットカードが利用できないデメリットもあります。
任意売却をしても住宅ローン残債が残る場合、債務者が自己破産をおこなうと、住宅ローン残債の一括請求や差押えが連帯保証人にいく可能性が高いです。
債務整理は債権者が分割返済を認めない場合・分割返済でも支払いが難しい場合の最終手段なので、弁護士に相談した上で必要と判断された場合のみ利用しましょう。
ちなみに住宅ローンの連帯保証人を外すには、以下の方法があります。
- 他のローンに借り換えて元のローンを完済する
- 債権者の同意を得て連帯保証人を別の人に変更する
ただし、上記の方法は債務者が経済的に困窮していると難しいでしょう。
任意売却後の住宅ローン残債は分割返済が可能
任意売却でも住宅ローンを完済できなくても、基本的に任意売却後の住宅ローン残債は分割返済が認められるケースが多いです。
なぜなら、債務整理をおこなうと分割返済よりも回収できる金額が少なくなるため、金融機関はなるべく債務整理を避けたいと考えているからです。
任意売却後に住宅ローン残債の分割返済が認められる場合、毎月の支払い額・返済方法などは債権者と交渉した上で決定されます。
「主債務者と連帯保証人で支払うのか?主債務者だけが返済するのか?」については、当事者間で話し合う必要があるため、話がまとまらない場合は弁護士に相談しましょう。
まとめ
住宅ローンに連帯保証人がいる場合、金融機関と連帯保証人の両方から同意を得なければ任意売却がおこなえないため、連帯保証人の協力が必要不可欠です。
任意売却をおこなうには住宅ローンを滞納する必要があり、その過程で連帯保証人に請求や督促が届くので、連帯保証人への影響は避けられません。
任意売却をおこなっても住宅ローンを完済できない場合、主債務者だけでなく連帯保証人にも返済義務が残るため、早い段階で連帯保証人に相談して任意売却を進めましょう。
連帯保証人の説得が難しい場合でも、不動産会社・弁護士に交渉を依頼すれば和解できる可能性があるので、1人で悩まずに無料相談を受けてみることをおすすめします。
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