古い家を売る方法
古い家を売る方法には、次の2つがあります。
それぞれの注意点やメリット・デメリットを見ていきましょう。
解体して更地にしてから売る
解体して更地にすることで、売却しやすくなる可能性があります。「利用価値のない家」があるより、更地にしたほうが用途の幅が広がるためです。
更地なら新しい家を好きなように建てることもできますし、店舗や駐車場など他の用途でも利用も可能です。「土地だけが欲しい人」にアプローチできるので、買い手が付きやすくなります。
ただし、解体費用として100万~200万円かかってしまうので、まずは不動産会社と相談し、更地にしたほうが売りやすくなるか検討してみましょう。
家屋を残して売る
古い家屋を残して売る場合、基本的に建物価格をゼロにして売ることになります。
建物の管理状態が良好で、市場的な価値があるなら、価格を付けることは可能です。しかし、木造戸建ての場合、基本的に築25年程度で市場的な価値はなくなります。
「価値のない建物が付いた土地(古家付き土地)」を売るという考え方になり、売却価格も土地の分しか付きません。場合によっては、解体費用やその手間賃として、更地化するより安く買われる場合もあります。
ただし、自分で解体する手間がなく、すぐに売り出せる点はメリットです。また、古民家のように特別な魅力のある物件は、古い家屋でも市場的価値が付く可能性があります。
古い家が売れないときの対策7選
古い家には多数のデメリットがあるものの、まったく売れないわけでもありません。工夫次第で、スムーズに売却することも可能です。
古い家を売り出しているものの買い手がつかない人は、次の対策を検討してみましょう。
- 不動産会社の切り替えを検討してみる
- 価格設定を見直してみる
- ホームインスペクションを受けてみる
- 住宅瑕疵担保責任保険に加入してみる
- リフォームしてみる
- 解体して更地にしてみる
- 空き家バンクを利用してみる
- 隣地の所有者に交渉を持ちかけてみる
ちょっとした工夫で売れるケースもあるので、諦めずに売却活動を続けることが大切です。
それぞれ詳しく解説していきます。
1.不動産会社の切り替えを検討してみる
不動産会社に仲介を依頼している場合、他の不動産会社へ切り替えることを検討してみましょう。
不動産会社にはそれぞれ得意な地域や物件タイプがあり、査定額や売却期間が大きく変わります。1年以上売れなかった物件が、不動産会社の切り替えですぐに売れるケースもありえるのです。
企業理念や蓄積している知識、顧客ネットワークや営業システムは各社で違うため、物件と相性の良い不動産会社を見つけることが大切です。
なるべく複数の不動産会社を比較し、もっとも売却条件の良い不動産会社を選別しましょう。
一括査定で複数の不動産会社を比較するがおすすめ
複数の不動産会社を比較する場合、1社ずつ調査して連絡を取るのは手間がかかります。
ただでさえやることの多い家の売却ですから、「なるべく手間をかけずに不動産会社を探したい」と思う人は多いでしょう。
そこでおすすめなのが、複数の不動産会社へまとめて査定を依頼できる一括査定サービスです。厳選された優良業者のなかから、おおむね6社程度へまとめて問い合わせることができます。
仲介業者なら「媒介契約の種類」も切り替えてみる
家の売却を仲介してもらう場合、不動産会社とは媒介契約を結びます。
媒介契約には3つの種類があり、それぞれルールが異なります。家がいつまで経っても売れない場合、媒介契約を切り替えたほうがよいかもしれません。
媒介契約の種類
媒介契約 |
メリット |
デメリット |
一般媒介契約 |
・同時に複数の不動産会社へ依頼できる ・自分で買主を見つけても良い |
・不動産会社にレインズへの登録や状況報告の義務なし |
専任媒介契約 |
・不動産会社は7日以内にレインズへ登録する義務がある ・2週間に一度以上、必ず状況報告がある ・自分で買主を見つけても良い |
・1社にしか仲介を依頼できない |
専属専任媒介契約 |
・不動産会社は5日以内にレインズへ登録する義務がある ・1週間に一度以上、必ず状況報告がある
|
・1社にしか仲介を依頼できない ・自分で買主を見つけるのは不可 |
早く売るためには、一般的に「専属専任媒介契約」や「専任媒介契約」が良いとされています。不動産会社からすると、他社で買い手を見つけられてしまう恐れがないので安心して営業にリソースを注げるためです。
しかし、立地が良い物件などは、一般媒介契約で多数の不動産会社に依頼したほうが早く売れる場合もあります。
どの媒介契約も一長一短なので、物件の状況に合わせて検討してみると良いでしょう。
1日でも早く売りたいなら「買取業者」へ依頼がおすすめ
売買を取り扱う不動産会社には、仲介だけでなく「買取」をおこなう業者もいます。
買取業者は自社で物件を直接買い取るため、査定後すぐに買い取ってもらうことも可能です。現金一括払いが基本なので、早ければ数日程度で現金を手にすることができます。
ただし、買取業者は買い取った物件を再生・再販することで利益を得ます。再生にかかるコストや、再販時の利益分を買取額から差し引くので、相場より2~5割ほど安くなる点には注意が必要です。
価格よりスピードを重視する場合は便利なので、少しでも早く売りたい場合や、仲介では買い手がまったく付かないような場合は、ぜひ利用してみましょう。
2.価格設定を見直してみる
家が売れない場合、価格を見直すことで売れるようになる可能性があります。相場より価格を下げて、購入しやすくするとよいでしょう。
不動産の売却にかかる期間はおおむね3ヶ月程度なので、それまでに買い手がつかない場合は値下げの検討タイミングです。
ただし、値下げをなんども繰り返したり、相場からかけ離れた価格にしたりすると、買い手側から「なにか問題のある物件ではないか」と警戒される恐れもあります。
値下げを繰り返しても売れない場合、一度売却を取りやめ、しばらく期間を空けてから改めて売り出すのも1つの方法です。
「値崩れした家」というイメージをリセットできますし、時期を変えることでもとの価格でも売れるケースがあります。
適正価格を調べる方法
家の価格設定を見直すには、適正価格を把握しておくことが大切です。適正価格を調べる方法としては、次のようなものがあげられます。
- 一括査定で複数の査定額を比較する
- 近隣の売り出し中物件を調べてみる
- 過去の取引事例を調べてみる
一番手っ取り早いのは一括査定で、各社の査定額を比較することで平均的な価格を判断できます。
近隣の売り出し中物件は不動産ポータルサイト、過去の取引事例は国土交通省の「不動産取引価格情報検索」や不動産流通機構の「REINS Market Information」で調べられます。
ただし、家は条件がわずかにちがうだけでも価格が変動します。他の物件や取引事例から調べた相場は、あくまで簡易的なものであることは覚えておきましょう。
3.ホームインスペクションを受けてみる
ホームインスペクションとは、家の劣化具合や不具合を専門家がチェックするサービスです。「住宅診断」とも呼ばれます。
現状で問題がある部分や、将来的に修繕が必要となる箇所、その時期や費用など、家の状態を細かく調べてもらえます。
古い家が避けられるのは「どんな問題を抱えているかわからない」という不安によるところが大きいため、問題点を明確にしてその不安を軽減すれば、買い手を付きやすくすることが可能です。
費用は調査内容によるため一概にはいえませんが、おおむね5~6万円程度、高いと10万円を超える場合もあります。
4.住宅瑕疵担保責任保険に加入してみる
瑕疵担保保険とは、家の「主要構造部分」や「雨水の浸入を防止する部分」の欠陥に対して、最大5年間の保証をおこなう保険です。
この保険は通常の保険と違い、自分が加入するのではなく「検査事業者へ加入を依頼する」点がポイントです。
具体的な仕組みは、次のようになっています。
- 売主or買主が「保険法人の登録を受けた検査事業者」に保険加入を依頼
- 検査事業者と保険法人による住宅の検査
- 検査事業者が保険に加入する
- 欠陥が発生した場合、検査事業者が補修をおこなう
- 補修費用として、保険法人から検査事業者へ保険金が給付される※
※検査事業者が倒産した場合、保険法人から直接買主へ補修費用が給付される。
補修が必要になっても買い手にコストが発生しないため、古い家でも売却できる可能性が高くなります。
また、住宅の検査を受ける際、先に解説したホームインスペクションも合わせて受ければ、より幅広い検査項目で家のコンディションをチェックすることが可能です。
保険料を支払うのは検査事業者ですが、実際には依頼者に同額を請求される(実質的に依頼者が負担する)のが一般的です。
家の広さや構造、保証期間や特約の有無などで保険料は変わり、検査料も含めるとおおむね5万~15万円程度が目安になるでしょう。
参照:一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会「既存住宅売買のかし保険(個人間売買タイプ)」
5.リフォームしてみる
リフォームをすることで家の魅力を向上させ、売却しやすくする方法もあります。
外壁・壁紙などを変えるだけでも印象が変わりますし、風呂場やキッチンなどの水回りを一新すれば売却しやすくなります。築年数が古くても「きれい」「住みやすそう」と思ってもらうことが大切です。
ただし、リフォームは手を加える部分が多いほど高額になり、数百万円かかるケースもあります。また、かけた費用をそのまま売却価格に上乗せできるとも限りません。
リフォーム代で赤字になってしまわないよう、事前に不動産会社と相談し、必要最低限の範囲に収めるようにしましょう。
6.空き家バンクを利用してみる
空き家バンクとは、空き家の利用や地方移住を促進するため、自治体や民間企業が運営するサービスです。
売却したい空き家を登録することで、「古家・古民家に住みたい」と考えている人に訴求が可能です。通常では売りにくい築古物件でも、売却できる可能性が高くなります。
ただし、空き家バンクを導入しているかどうかは自治体によるため、まずは国土交通省のWebサイトから調べてみましょう。
参照:国土交通省「空き家・空き地バンク総合情報ページ」
7.隣地の所有者に交渉を持ちかけてみる
なかなか売れない物件でも、隣地所有者に売却を打診することで買い取ってもらえる可能性があります。隣地の購入は、普通に不動産を買うより多くのメリットがあるためです。
具体的には、
- 面積が広がることで土地の資産価値が高くなる
- スペースに余裕ができるので増築ができるようになる
- 土地の形や接道状況、日当たりや風通しなどが良くなる
といったメリットがあります。
ただし、当然ですが隣地所有者に購入意思と資金がなければ買い取ってはもらえません。
無理な交渉はせず、あくまで売却する手段の1つと考えて相談してみましょう。
古い家はなぜ売れない?買い手に避けられる理由5つ
一般的にも「古い家は売れない」とよくいわれますが、具体的に「なぜ売れないのか」をしっかり考える人は案外多くありません。
古い家が売れない理由としては、次の5つがあげられます。
- 耐震基準など安全性に不安があるから
- 使い勝手が悪く現代の需要とマッチしていないから
- 維持やリフォームにお金がかかるから
- 法定耐用年数を超えているから
- 資産として流動性がないから
売れない理由を理解すれば、対策もしやすくなります。「古いから売れない」と諦めず、まずは売れない理由を詳しく把握していきましょう。
1.耐久性や安全性などに不安があるから
家は生活のほとんどを過ごす場所ですから、耐久性や安全性はもっとも重要です。しかし、古い家はこれらの面で不安を感じやすくなります。
とくに、震災時の耐久性を示す「耐震性能」は、古い家だと低い場合があります。耐震基準は1981年に改正されており、旧耐震基準で建てられた家は倒壊の危険性が高いとされるのです。
また、耐震基準以外にも、古い家はなにかとトラブルが起こりがちです。
例えば、基礎部分や柱・梁といった建物全体の劣化はよくあるケースですし、地中埋設物・軟弱地盤といった土地の問題を抱えている可能性もあります。
こうしたリスクをもっているイメージが強いため、古い家の需要は低くなってしまいます。
2.使い勝手が悪く現代の需要とマッチしていないから
古い家は、面積や間取り、設備などが現代の需要とマッチしていないケースが多々あります。
昔は世帯人数が多かったため、広さや部屋数が重視されていました。一方、現代は少子化や単身者の増加でコンパクトな家の需要が高くなっており、広くて部屋数の多い家だと持て余すケースが多くなります。
設備については、例えばトイレが和式であったり、風呂が昔ながらのタイル貼りだったりすると、需要は低くなります。現代の生活様式と合わないことから、需要が低くなってしまうのです。
3.リフォームや維持費にお金がかかるから
耐久性や間取り、設備の古さについては、リフォームで改善することが可能です。古い家でも、工夫次第で最新の住宅に負けない快適性をもたせることはできるでしょう。
しかし、リフォームには高額の費用がかかり、家全体を作り直すなら1,000万円以上する場合もあります。中古の家に対して、そこまでお金をかけようとする人はそれほど多くありません。
また、購入したあとの維持費もかさみます。築年数が古ければ修繕の頻度も多くなるため、支出が積み重なってトータルコストが増えていきます。
中古の家は安価で購入できる点が魅力ですが、リフォームや維持費でそのメリットが消える可能性を考えると、古い家をあえて買う意味がなくなってしまうのです。
4.法定耐用年数を超えているから
法定耐用年数とは、法律で定められた「建物の使用可能期間」のことです。一般的な木造住宅の場合、法定耐用年数は22年と定められています。
参照:e-Govポータル「減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」
物理的な寿命ではなく、あくまで税金の計算などで用いられるものですが、法定耐用年数を超えると次のようなデメリットがあります。
- 購入時に住宅ローンを借りにくくなる
- 市場での需要が下がり、建物の価値がほぼ0になる
- 売却時に取得費計上が少なくなる(譲渡所得税が高くなる)
法定耐用年数が過ぎたからといって住めなくなるわけではありませんが、これらのデメリットを負うより、新築・築浅で探したほうが資産形成の面では有利になります。
5.資産として流動性がないから
法定耐用年数の項目でも解説した通り、築年数が古ければ資産としての価値が低くなります。そして、資産価値が低いと流動性も比例して下がります。
流動性が低いということは、売りたいときに売れないということです。家の利用価値がなくなったとき、処分できずに維持負担だけが残ってしまう恐れがあります。
例えば、住み替えや転勤などで引っ越すことがあっても、売却できず持ち続けなければいけません。「終の棲家」と考えていても、老後は高齢者施設に入るなどで家が不要になる場合もあるでしょう。
また、自分が住む分にはよくても、相続のことまで考えると、家族が家を処分できずに苦労する可能性があります。
将来的な処分や相続のことを考えたとき、古い家を購入するのは一定のデメリットがあるといえるのです。
古い家を売るときの注意点
古い家を売るときの注意点として、次の3つがあげられます。
- 家財は処分しておく
- 隣地との境界を確認しておく
- 欠陥や欠点を明確にしておく
これらの注意点は、売却時にトラブルを起こさないためにも重要です。スムーズに売却できるよう、しっかり押さえておきましょう。
家財は処分しておく
古い家の売却でよくあるケースとして、何年も空き家状態で放置されていた物件があります。相続したものの手つかずで、前の住人が住んでいたままというケースが代表的です。
家財が残ったままだと、一般的な購入希望者にはほぼ間違いなく避けられます。処分には費用がかかりますし、感覚的にも気分の良いものではありません。
自分で処分するのがむずかしければ、遺品整理やゴミ屋敷処分を受け付けている業者に相談しましょう。不用品を整理し、最低限の清掃をおこなってくれます。
また、訳あり物件を専門にしている買取業者なら、不用品もそのままの状態で買い取ってもらえます。現状のまま売却できるので、面倒な手続きをすべて省きたいならおすすめです。
隣地との境界を確認しておく
古い家は、隣地との境界が不明になっている場合があります。境界が不明瞭のままだと、売買前後で隣地所有者とトラブルになってしまうので注意が必要です。
境界が不明になる原因としては、下記の原因があげられます。
- 年月の経過で当事者の認識がずれてしまった
- 地震や洪水などで境界標(境界の目印)がずれてしまった
- 測量が不正確で「登記上の境界」と「実際の境界」がずれてしまった
古い家は大昔の測量で境界が登記されていることも多く、最新技術で測量したら大きくずれていたというケースが多々あります。
境界トラブルや解決方法については関連記事で解説しているので、古い家を売るときはぜひ参考にしてください。
欠陥や欠点を明確にしておく
古い家は欠陥や欠点を抱えているケースが多々ありますが、契約前にそれらを明確にしておかないと、売却後に「契約不適合責任」を追及される恐れがあります。
契約不適合責任とは?
引き渡した品物が契約内容と適合しないとき、売主が負うべき責任の範囲。損害賠償や代金減額、契約解除などを請求される恐れがある。
契約時点で明らかになっていない欠陥・欠点が発覚した場合、売主が知っていたかどうかに関係なく契約不適合責任を問われてしまいます。
先に解説したホームインスペクションなども活用して、家の抱える問題点を明確にしておきましょう。
古い家を売れないまま放置しておくリスク
古い家は、活用も処分もされずに放置されるケースが多々あります。しかし、利用価値のない家でも、なにかトラブルに巻き込まれると責任を負うのは所有者です。
売れないからといって家を放置していると、金銭面で負担を強いられたり、訴訟に発展する場合もあります。
思わぬ損失を受けないよう、古い家を放置するリスクについて詳しく見ていきましょう。
倒壊などで被害が出たら賠償責任が問われる
適切に管理されていない家は、劣化の進み具合も早くなります。放っておくと屋根が落ちたり、壁が崩れてきたりするかもしれません。
倒壊に人やモノが巻き込まれてしまうと、損害賠償を請求されることになります。
台風で屋根が飛ばされたり、地震で建物全体が倒壊するといった大規模な被害が発生すると、損害賠償の金額も膨大になってしまうでしょう。
また、空き家は電気設備のショートなどで火事が発生する場合もあり、隣家に延焼すると責任を問われる可能性があります。
本来、火事の賠償責任は多少の過失があっても不問とされますが、所有者として最低限の管理をしていない場合「重大な過失あり」として責任を負うことになるかもしれないのです。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用:e-Govポータル「民法第709条」
民法第709条の規定は失火の場合には之を適用せず 但し失火者に重大なる過失ありたるときは此の限りに在らず
引用:e-Govポータル「失火ノ責任ニ関スル法律」
「特定空き家の指定」で税金の値上げや強制解体の恐れがある
特定空き家とは、適切に管理されていない空き家の状況を改善もしくは処理するための制度です。近隣の安全や衛生、景観などに悪影響があると認められた場合、自治体から指定されます。
特定空き家に指定されると、まず改善の助言や指導がおこなわれ、それらに従わないときは勧告や命令が出されます。
具体的には次のようなペナルティがあり、所有者にとってはデメリットしかないので指定されないよう注意すべきです。
- 住宅用地特例の対象から除外(土地の固定資産税が高くなる)
- 50万円以下の過料
- 行政代執行による強制解体(費用は所有者に請求)
遺産分割で名義人が増えてトラブルになる
家の放置を続けることで、相続時に所有者が増えて権利関係が複雑になる恐れがあります。
家の名義人が亡くなった場合、遺産分割でだれが取得するか決めないと、相続人全員の共有名義とみなされます。
相続を繰り返すことで名義人がねずみ算式に増えていき、だれがそれくらいの権利をもっているのかも把握が困難になるかもしれません。
共有名義の家を売却するときは、共有者全員の同意が必要です。共有者が増えることで話し合いがむずかしくなり、売却したくてもできないという状況に追い込まれてしまいます。
ただし、共有名義でも各自の共有持分(共有者それぞれの権利割合)だけなら自由に売却できます。詳しくは関連記事で解説しているので、共有名義で悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
古い家を売るときに使える節税制度
家の売却では、譲渡所得(売却益)に対して譲渡所得税が課せられます。給与所得などとは別に課税される「分離課税」となっており、基本的な計算式は次の通りです。
譲渡所得税=(売却価格-取得費-譲渡費用-特別控除)×税率※
※保有期間が5年以下は30%、5年超のときは15%
取得費は家を取得したときの費用(購入費など※)、譲渡費用は売却にかかった費用(仲介手数料など)を指します。
※取得費がわからない場合、売却価格の5%相当額を取得費とすることが可能
古い家を売る場合、節税に使える制度がいくつかあるので、次の項目から解説していきます。
ただし、税金の計算は複雑なので、正確な申告をおこなうためには税理士に相談するようにしましょう。
参照:国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
参照:国税庁「取得費が分からないとき」
相続財産の取得費の特例
相続で家を取得した場合、そのときにかかった相続税を譲渡所得の取得費に加算することができます。
実際に加算できる金額は、次のように計算します。
取得費に加算できる相続税額
家を売却した人の相続税額×売却した家の相続税の課税価格÷債務控除前のその人の相続税の課税価格
また、特例を受けるためには次の要件を満たすことが必要です。
- 相続や遺贈で家を取得した人が売却すること
- 取得したときに相続税が課税されていること
- 「相続開始の翌日」から「相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日」までに売却すること
とくに重要なのは売却の期限です。相続税の申告期限が相続開始翌日から10ヶ月なので、取得費の特例を受けるためには「相続してから3年10ヶ月以内に売却する」ことが必要となります。
古い家は売却に時間がかかる場合もあるので、特例を受けるためにはなるべく早く売却に動きだしたほうがよいでしょう。
参照:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
相続財産の3,000万円特別控除
相続した家を売る場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。譲渡所得が3,000万円以下なら、譲渡所得税がゼロになる特例です。
この特例の対象となるには、次の条件を満たしている必要があります。
- 昭和56年5月31日以前に建築されたものであること
- 区分所有建物登記がされている建物ではない(マンションなどではない)こと
- 被相続人が相続の直前まで住んでおり、それ以外に居住していた人がいなかったこと
他にもいくつかの要件があり、とくに重要なのは期限が「相続の開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること」という要件です。
例えば、2022年1月1日に相続が開始された場合、3年を経過するのは2025年1月1日なので、特別控除を受ける期限は「2025年12月31日」ということになります。
参照:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
居住用財産の3,000万円特別控除
相続財産ではなく、自分がマイホーム用として購入した家でも、3,000万円の特別控除を受けることが可能です。
主な要件としては、次のものがあげられます。
- すでに引っ越している場合は「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売ること
- 親子や夫婦など特別な関係での売買ではないこと
- 売った年の前年および前々年にこの特例を受けていないこと
また、あくまでマイホームのための特例なので、別荘であったり、一時的な仮住まいとして住んでいたようなケースは適用されませんので注意しましょう。
参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
家の買い替えで損失が出たときの特例
古い家の場合、売却価格が安くて損失となるケースもあります。家の買い替えにともなう売却でこのような損失が出た場合、譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例を利用しましょう。
通常、不動産の譲渡所得は他の所得と分離して課税されますが、この特例を使えば家を売却したときの損失を給与所得などから控除することができます。
また、控除しきれなかった損失については、売却の翌年から3年間まで繰越控除することも可能です。
ただし、古いマイホームから新しいマイホームへ買い替えたときに適用される特例なので、引越し先が賃貸などの場合だと適用されない点は注意しましょう。
参照:国税庁「マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき」
低未利用地等の100万円特別控除
都市計画区域内にある一定の低未利用土地等を500万円以下で売ったとき、その譲渡所得から100万円を控除する特例があります。
低未利用には空き家の土地も含まれるため、適用できれば土地分の譲渡所得税を減らすことが可能です。
ただし、所有期間が5年を超えていることや、売却した低未利用地が放置されず利用されることなどの条件があります。
また、都市計画区域外の場合も対象外となるので、まずは売却する家が都市計画区域に入っているかどうか、役所などで調べてみましょう。
参照:国税庁「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」
まとめ
古い家が売れない理由は、「新築のほうがいい」という新築信仰だけでなく、安全性への不安や、維持費といった金銭的なデメリットもあげられます。
しかし、価格の見直しや、ホームインスペクションの利用などで、それらの問題もある程度解決することが可能です。
「古い家だから」と諦めず、工夫して売却活動にあたってみましょう。そうすれば、思わぬ好条件で売却できる場合もあるでしょう。
古い家を売る時によくある質問
古い家が売れない理由はなんですか?
耐震基準など安全性に不安があったり、使い勝手が悪く現代の需要とマッチしていないなどの理由があげられます。また、維持費やリフォーム代などで金銭的なデメリットが大きい点も理由として考えられるでしょう。
古い家を売りやすくする方法はありますか?
まずは価格とスピードのどちらを優先するか考えましょう。価格を優先するなら複数の仲介業者を比較したり、リフォームするなどの工夫ができます。スピード重視であれば、買取業者に買い取ってもらうことで数日での現金化も可能です。
古い家を売るときの注意点はありますか?
売却価格への悪影響があるので、不用品はなるべく処分しておきましょう。また、契約不適合責任にならないよう事前に瑕疵を調べたり、特定空家に指定されないよう利用者がいなくてもしっかり管理しておくことが大切です。
古い家を売るときに使える節税方法はありますか?
譲渡所得(課税対象となる売却益)から控除できる制度が多数あります。どの制度を使うかは状況によるので、詳しくは税理士に相談しましょう。
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