不動産の売買をする際、不動産会社に仲介を依頼せず、売主と買主が直接取引をする「個人売買」という方法があります。
個人売買をすれば仲介手数料がかからないので、売却費用を抑えて売主の利益を上乗せできるメリットがあります。
しかし、個人売買は各種手続きをすべて自分でおこなう必要があるため、負担が大きくトラブルが起こりやすいといったデメリットに注意が必要です。
そのため、無理して個人売買をおこなうより、仲介手数料無料などの好条件を提示する不動産会社に仲介してもらうほうが、結果的に損をせずに済むのでおすすめです。
個人売買に少しでも不安がある人は、ぜひ下記の無料一括査定フォームを活用して、条件の良い不動産会社を探してみるとよいでしょう。
不動産会社を介さずに不動産の個人売買は可能
不動産の売買をおこなう際、不動産会社に仲介を依頼して、買主を探してもらうのが一般的です。
しかし、不動産の売買において「不動産会社を通さなければならない」というルールはありません。法律上は、売主と買主が個人間で不動産売買をしてもよいのです。
ただし、事前準備や契約手続きをすべて自分でおこなう必要があるため、ミスがないよう、緊張感をもって売却活動に当たる必要があります。
高額な金銭が動く不動産取引では、些細なミスが大きなトラブルに発展すると考えましょう。
不動産を個人売買するときの流れ
不動産を個人で売却するときの流れは、次の通りです。
- 物件の調査(相場価格や物件の状態など)
- 売り出し価格の設定
- 売却に必要な書類の準備
- 広告などで買主を募集
- 問い合わせや内覧希望の対応・価格交渉
- 重要事項説明書や売買契約書の作成・売買契約の締結
- 引き渡しと代金決済
- 所有権移転の登記
基本的な流れは、不動産会社に仲介を依頼したときと同じです。
ただし、買主の募集や各種書類の作成など、仲介なら不動産会社がやってくれる作業をすべて自分でおこなう必要があります。
「個人売買だから簡単に不動産を売れる」ということはなく、トラブルを起こさないため、細心の注意を払って売却活動を進めなければいけません。
不動産を個人売買する3つのメリット
不動産を個人売買する場合のメリットは次の3つです。
- 1.仲介手数料がかからない
- 2.消費税が発生しない
- 3.自分の思い通りに売却活動ができる
仲介手数料や消費税が発生しないことから、金銭面でのメリットが大きいといえるでしょう。
また、不動産会社という第三者を挟まないことで、売却活動の主導権を握れます。不動産会社の都合によって売却活動が進まないといった事態を避けられるでしょう。
次の項目から、各メリットを詳しく解説していきます。
1.仲介手数料がかからない
不動会社に売却の仲介を依頼した場合、仲介手数料がかかります。個人売買のメリットとして、手数料がかからない点はもっとも重要といえるでしょう。
不動産の仲介手数料は、売買価格によって次のように上限額が決められています。
売買価格 | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下 | 売買価格(税抜)×5%+消費税 |
200万円〜400万円 | 売買価格(税抜)×4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売買価格(税抜)×3%+6万円+消費税 |
200万円以下の不動産でも11万円、2,000万円の不動産なら72万6,000円もの仲介手数料がかかります。個人売買ならばこれらの仲介手数料がかからない分、売主の利益に上乗せされるのです。
売買価格が上がるほど仲介手数料も高くなるため、個人売買のメリットも大きくなるといえるでしょう。
参照:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
2.消費税が発生しない
個人売買では、消費税の負担もなくなります。消費税は「事業者」のみを対象とする税金なので、個人売買は課税されないのです。
消費税法第4条
国内において事業者が行った資産の譲渡等(中略)には、この法律により、消費税を課する。出典:e-Govポータル「消費税法第4条」
2021年現在の消費税率は10%なので、2,000万円の不動産を売買すれば200万円の消費税が発生します。
買主からすれば不動産の消費税は大きな負担といえますが、個人売買をすれば課税されないため、不動産を購入しやすくなるのです。
ただし、土地の譲渡に関しては、もとから消費税の課税対象外とされています。
そのため、土地だけを売買するケースでは、個人売買による消費税のメリットはないといえるでしょう。
3.自分の思い通りに売却活動ができる
不動産会社に仲介を依頼した場合、不動産会社が主体となって売却活動をおこないます。
自分と相性のよい不動産会社で、売主の利益を最大限に配慮してくれるならよいのですが、残念ながらすべての不動産会社がそうであるとは限りません。
不動産会社の都合によって売却活動が進まないケースや、売却に関して相談してもおざなりな対応を取られるケースがあるのです。
仮に優良な不動産会社であっても、媒介契約には一定の制限がつきものです。契約の種類によっては、ほかの不動産会社を利用できなかったり、自分で購入希望者を見つけることができない場合もあります。
売却活動に一切の制限を受けたくない人は、不動産会社に仲介を依頼するより、自由度の高い個人売買のほうが向いているかもしれません。
不動産を個人売買する3つのデメリット
不動産を個人売買する場合のデメリットは、次の3つがあげられます。
- 1.売主の負担が大きい
- 2.買主が見つかりにくい
- 3.売買後にトラブルが起こるかもしれない
個人売買では、仲介を依頼したときに不動産会社が代行してくれる手続きを、すべて自分でおこなう必要があります。
法律の知識が必要な手続きもあるため、ほとんどの人にとって個人売買は難易度が高いといえるでしょう。
次の項目から各デメリットを解説しますが、解決がむずかしいと感じた場合、無理せず不動産会社の仲介を利用しましょう。
1.売主の負担が大きい
不動産の売買には、買主を見つける以外にもさまざまな作業があります。
必要書類の取得や作成はもちろん、売却する物件の事前調査や買主との交渉など、すべて自分でおこなう必要があります。
不動産会社が業務としておこなう作業を、自分1人で、仕事や家事の合間におこなうのは非常に困難といえるでしょう。
弁護士や司法書士など各分野の専門家に相談する方法もありますが、どの問題をだれに相談すべきか、判断がむずかしい場合もあります。
各専門家へ個別に相談するより、不動産会社にまとめて相談したほうが時間も手間もかからないでしょう。
自分で価格設定をするのはむずかしい
不動産の売り出し価格を決めることからして、一般の人にはむずかしいでしょう。
不動産の価格設定は明確な基準があるわけではなく、立地や築年数といった物件固有の状況と、常に変動する不動産市場の需要を考慮しなければいけません。
条件がほんの少し違うだけで、市場価値は数百万円も変わります。
不動産の市場価値を調べたい場合、不動産会社に査定してもらうのが手軽かつ正確な方法です。無料査定を受けても仲介を依頼する義務はないので、価格相場の把握に利用してみるのもよいでしょう。
必要書類の作成は法律の専門知識が必要になる
不動産を売買するにはいくつもの必要書類があり、これらを自分1人でそろえるのは非常に手間がかかります。
とくに、売買契約書の作成は、細かな表現の違いや記載漏れがトラブルの原因になるので注意が必要です。
また、重要事項説明書※の作成が必要になる場合もあります。
じつは、個人売買において売主に重要事項説明書の作成義務はありません。
しかし、買主が住宅ローンを申し込むときは金融機関に重要事項説明書の提出を求められるので、義務はなくても重要事項説明書を作成しなければ売買契約が成立しないのです。
重要事項説明書を作成できるのは宅建士(宅地建物取引士)の資格者です。不動産の個人売買をサポートする会社や、重要事項説明書の作成サービスを提供する会社があるので、相談してみましょう。
個々のケースにあわせて特約を設定しなければいけない
インターネットで調べれば、不動産売買に必要な契約書のひな形を載せているウェブサイトがいくつもあります。
しかし、不動産の売買はすべて同じ条件とは限らず、個々のケースにあわせて特約を設定しなければいけない場合がほとんどです。
インターネット上のひな形をそのまま使用しても、必要な特約が記載されていないとトラブルになってしまいます。
以下にあげるものは「特約を設けるべき事項」の代表的な例ですが、これら以外にも物件固有の条件はありえるので、あくまで目安として参考にしてください。
- 手付金・補償金の金額、決済方法
- 物件の引き渡し条件
- 危険負担(契約締結から決済までに震災などが生じた場合)の取り決め
- 売買後の所有権移転登記手続きにかかる費用負担
- 契約書に添付する印紙代の負担
- 公租公課(固定資産税)の積算基準
- 契約解除の条件(契約違反となる事項)
不動産売却に必要な事前調査を手配しなければいけない
不動産の適切な価格設定やトラブルのない売買契約のために、実施すべき事前調査はいくつもあります。
- 隣地との境界の確認
- 売買対象となる土地の面積調査(登記簿上の面積とずれがないか)
- 接道条件の確認
- 法令上の制限(建築制限など)の有無についての調査
- 土壌汚染の有無の調査
すべての不動産でこれらの調査を実施するわけではありませんが、一般の人だと調査が必要かどうかの判断すらむずかしいでしょう。
また、調査によっては土地家屋調査士など専門家への依頼が必要です。
不動産会社に仲介を依頼すれば必要な調査の判断や手配もサポートしてくれますが、個人売買ではすべて自分でおこなう必要があります。
2.買主が見つかりにくい
個人売買では、不動産会社に仲介を依頼するより買主が見つかりにくいといえます。
買主を見つけるためには「ネットなどに広告を出稿する」「買主になりそうな人へ自分で営業をかける」といった方法を取りますが、いずれも費用・手間がかかります。
家族や親戚など、すでに買主が決まっている場合は別ですが、基本的に買主を探すだけでも膨大な時間が必要になるでしょう。
レインズに登録できない
買主を自分で見つけなければならないという意味では、レインズ※に登録できないことは、個人売買の致命的なデメリットといえます。
レインズを簡単にいうと「不動産業者専用の情報サイト」です。レインズに物件を登録すれば、不動産の購入希望者を抱える不動産会社から、内覧の問い合わせや購入希望が入ってきます。
レインズに物件登録をできるのは不動産業者のみであり、不動産会社に仲介を依頼しなければ利用できません。レインズに物件を登録できないのは、個人売買の大きなデメリットといえるでしょう。
買主の住宅ローン審査が通りにくい
個人売買では、買主の住宅ローン審査が通りにくいという問題があります。
先にも解説しましたが、金融機関の住宅ローン審査には重要事項説明書が必要です。そのような書類の問題だけでなく、不動産会社を挟まないこと自体が金融機関の信用度を下げる原因になるのです。
審査が通るケースもありますが、不動産会社に仲介を頼んだときより確率が低くなるか、貸付条件を厳しくされる恐れがあります。
買主が住宅ローンの利用を検討している場合、個人売買は避けられやすいといえるでしょう。
3.売買後にトラブルが起こるかもしれない
個人間売買では、どれだけ適切に手続きを進めても、売買後にトラブルとなる可能性があります。
取引をするのが不動産の専門家ではないため、売主と買主で認識のずれが起こりやすいといえるでしょう。
不動産会社に仲介を依頼すればお互いの主張を調整してくれますが、個人売買では直接やり取りをする必要があるので、感情的になって話がこじれる恐れもあります。
売主が契約不適合責任を問われるリスクがある
不動産売買において知っておくべきなのが、売主の契約不適合責任です。
契約不適合責任とは、引き渡した不動産が契約の内容に適合しない場合、売主が負うことになる責任です。
シロアリ被害や水漏れなど、売主が気づいていなかった問題点に関しても責任を負う必要があります。
補修や売買代金の減額だけでなく、損害賠償や契約解除を買主から請求されるかもしれません。専門知識のない売主が個人売買をおこなうと、売買後に負うリスクが高くなるといえるでしょう。
民法第562条
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。出典:e-Govポータル「民法第562条」
不動産の個人売買を避けるべき3つのケース
個人売買のメリットとデメリットを解説しました。仲介手数料がかからないといった金銭的なメリットはありますが、売主の手間やトラブルの可能性が大きなデメリットといえます。
では、具体的にどのような状況だと、個人売買を避けるべきなのでしょうか?
次にあげる3つのケースでは、個人間売買より不動産会社に仲介を依頼したほうがよいでしょう。
- 1.更地を売却するケース
- 2.物件に欠陥があるかもしれないケース
- 3.継続的に不動産売買をおこなうケース
次の項目から、それぞれのケースについて詳しく解説していきます。
1.更地を売却するケース
更地の個人売買をおすすできない理由は、先にも解説したとおり、土地の譲渡にはもとから消費税がかからないためです。
個人売買で受けられるメリットが少ないため、あえて個人売買を選ぶ意味は少ないでしょう。
また、土地上に築年数の古い住宅がある場合、解体して更地の状態で売却するケースもありますが、これにも注意が必要です。
更地の状態にすると、住宅のある土地に適用される固定資産税や都市計画税の軽減措置を受けられなくなります。
個人売買で買主を見つけるのに時間がかかると、高額の税金を課税されてしまう恐れがあるのです。
参照:e-Govポータル「地方税法第349条の3の2、第702条の3」
2.物件に欠陥があるかもしれないケース
不動産の売買後に欠陥が見つかると、契約不適合責任に問われると解説しました。
表面上は問題がなさそうな不動産でも、専門家でないと気づけない欠陥が隠れているケースは少なくありません。
例えば、次にあげるような物件は、個人売買をするにはリスクが高いといえるでしょう。
- 長期間使用せずに放置している建物
- 農地として利用していた土地
- 工場やガソリンスタンドの跡地
- 遠方にあるなどの理由で物件の状況を正確に把握できていない土地・建物
- 台風被害や水害などを受けており想定外の損傷があるかもしれない物件
3.継続的に不動産売買をおこなうケース
継続的に何度も不動産の個人売買をおこなうケースは、違法性を問われる恐れがあるため注意が必要です。
不動産売買を繰り返しおこなうことを「反復継続」といい、反復継続をおこなうと、宅地建物取引業(事業として不動産売買をおこなっている)とみなされる可能性があります。
宅地建物取引業は免許がない限り禁止されているため、違法性を認められてしまうと、懲役や罰金を科せられるかもしれないのです。
実際に違法性を認められるかどうかは、反復継続だけでなく「取引の対象者」や「取引の目的」など複数の要因で判断されますが、それでも個人売買にリスクがあることは変わりありません。
不動産を区分して売却する場合や、投資用物件をなんども売買する場合、不動産会社に仲介を依頼したほうがよいでしょう。
不動産の個人売買は「買主が決まっている場合」以外はおすすめできない
「不動産の個人売買を避けるべきケース」を紹介しましたが、結論をいうと、個人売買は「すでに買主が決まっている場合」を除いておすすめできません。
とくに、取引相手が家族や親戚、親しい知人など、気心の知れた相手でなければトラブルのリスクが高いといえるでしょう。
ただし、例え肉親であっても、不動産売買は法律に則った「契約」です。身内だからといって適当な契約を結ばないよう注意しましょう。
一括査定で「自分にあった不動産会社」を探すのがおすすめ
ほとんどの不動産売買は、個人売買をするより、不動産会社を利用したほうが満足のいく結果になります。
不動産会社に仲介を依頼すれば、不動産売買に関するさまざまなトラブルを防げます。売却活動の手間も大幅に軽減できて、スムーズな取引ができるでしょう。
しかし、不動産会社を利用するとしても、どうやって自分と相性のよい不動産会社を探すのかが問題になります。
自分と相性のよい不動産会社を探す一番の方法は、複数の不動産会社に査定をしてもらい、売買条件を比較することです。複数の不動産会社を比較すれば、自分の希望にかなう条件を出せるところもきっと見つかるはずです。
オンラインの一括査定を利用すれば、複数の不動産会社にまとめて査定してもらえます。下記の無料一括査定フォームから、自分にとってベストな不動産会社を探してみましょう。
まとめ
不動産の個人売買は仲介手数料や消費税がかからず、金銭面でのメリットがあります。
しかし、売却活動における「売主の負担」と「トラブルに発展するリスク」は、無視できないデメリットです。
家族や親戚など「すでに買主が決まっている場合」を除き、個人売買はあまりおすすめできません。
一括査定を利用して、自分の希望をしっかりと聞いてくれる不動産会社を探してみましょう。
仲介手数料など多少のコストを払っても、スムーズな取引ができるメリットを取ることをおすすめします。