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兄弟での共有名義はリスクが多い!実際に起こったトラブルと対処法

兄弟での共有名義はリスクが多い!実際に起こったトラブルと対処法

兄弟で不動産を共有名義にしていると、売却や活用に共有者全員の同意が必要になり、将来トラブルに発展しやすいといわれています。「今は兄弟仲が良いから大丈夫」と思っていても、時間の経過とともに問題が表面化しやすいのが共有名義です。

実際にどのようなトラブルが起きるのか、イエコン編集部が兄弟で不動産を共有した経験のある方314名に調査したところ、「売却の意見が合わず塩漬けになった」「固定資産税や修繕費の負担でもめた」といった声が数多く寄せられました。

不動産の現場でも、兄弟の共有名義をきっかけとしたトラブルの相談は少なくありません。とはいえ、兄弟の共有名義が「絶対にダメ」というわけではありません目的やお金の負担、兄弟の関係性などの条件次第で、大きな問題にならずに済むケースもあります

本記事では、兄弟の共有名義で実際に起きるトラブル、共有名義にするリスク、共有してよいかの判断基準、解消方法と費用、相続時に共有を避ける方法までを解説します。相続で実家が兄弟共有になった方も、これから遺産分割を控えている方も、ぜひ参考にしてください。

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兄弟の共有名義にして実際に起こったトラブル【314人に調査】

兄弟の共有名義は、具体的にどんなトラブルにつながるのでしょうか。イエコン編集部が、兄弟で不動産を共有名義にしている(していた)方314名にアンケートを実施したところ、以下のような結果になりました。

兄弟の共有名義で実際に困ったこと(複数回答可)
困りごと 回答割合
売却・活用の意見が合わず「塩漬け」になった 52.5%
固定資産税や維持費の負担を押し付けられた 47.1%
兄弟の1人が実家を独占し、不公平感が生じた 33.4%
配偶者や子(相続人)が口出しして泥沼化した 22.6%
話し合いに応じず、音信不通になった 17.8%

集計期間:2026年2月~2026年5月
集計方法:インターネット

さらに同じ調査では、「共有名義にしたことを後悔している」と答えた人が68.2%にのぼりました。兄弟のおよそ3人に2人が共有名義を後悔している計算で、「仲が良いから大丈夫」という油断が、いかにトラブルにつながりやすいかを示す結果となりました。

売却・活用の意見が合わず「塩漬け状態」になった

売却・活用の意見が合わず「塩漬け状態」になった

アンケートで最も多かったのが、この「塩漬け」状態です。共有不動産の売却や建て替えには共有者全員の同意が必要なため、兄弟の1人でも反対すると、売ることも活用することもできません。

イエコン編集部に寄せられた声
「兄と2人で実家を相続しましたが、『売りたい私』と『いずれ子に住ませたい兄』で意見が分かれたまま8年が過ぎました。その間も固定資産税は折半で払い続け、話は進まないまま建物は老朽化し、資産価値も下がってしまいました」(50代・男性)

「売って現金で分けたい兄」と「思い出のある実家を残したい弟」のように意見が割れると、結論が出ないまま何年も放置されることになります。放置している間も固定資産税や維持費は発生し続けるため、誰にとっても得のない状態が固定化してしまいます。さらに、放置している間に次の相続が起きれば共有者が増え、解消はいっそう難しくなります。早く動くほど、解決の選択肢は多く残ります。

固定資産税や維持費の負担を押し付けられた

固定資産税や維持費の負担を押し付けられた

共有名義の不動産では、固定資産税や修繕費・火災保険料などの維持費が継続的に発生します。これらは持分割合に応じて兄弟で負担するのが原則ですが、実際には「住んでいる兄弟が払うべき」「使っていないのだから払いたくない」と意見が割れ、負担が一方に偏りがちです。

特に、遠方に住んでいて実家を使っていない兄弟にとっては、使ってもいない不動産の固定資産税だけを払い続ける状態になりかねません。立て替えが続くと金額が積み重なり、兄弟間の関係そのものが悪化していきます。

立て替えた分は、民法上、あとから他の兄弟に請求できる権利(求償権)が認められています。ただし、関係の悪化を恐れて言い出せず、泣き寝入りに近い状態になってしまう人も少なくありません。兄弟間では「お金の話を持ち出すと角が立つ」と感じて不公平を我慢しがちで、とくに親の介護や家業を担った兄弟ほど「自分は十分に貢献した」という思いが強く、費用分担の話し合いがこじれやすい傾向があります。

さらに注意したいのが、求償権には時効があり、原則として権利を行使できるときから5年で消滅する点です。「何年も前の立替分をまとめて請求しようとしたら、時効を主張されて回収できなかった」というケースも少なくないため、立て替えたら早めに請求し、支払いの記録(領収書・振込明細)を残しておきましょう。

兄弟の1人が実家を独占し、不公平感が生じた

相続した実家に兄弟の1人が住み続け、他の兄弟は使えない、というケースも少なくありません。共有者にはそれぞれ持分に応じて不動産を使用する権利があるため、「勝手に住んでいる」と一概には言えず、住んでいる兄弟を退去させるのは簡単ではありません。とくに日本では「長男が実家を継ぐ」「親と同居していた子がそのまま住み続ける」という慣習が根強く、住んでいる側に悪気がないまま既成事実化してしまうケースが目立ちます。

法的には、自分の持分を超えて不動産を使用している共有者は、他の共有者に対してその使用の対価(賃料相当額)を支払う義務があります(民法249条2項)。もっとも、兄弟間で実際に請求すると感情的な対立を深めやすく、踏み切れない方が多いのが実情です。

イエコン編集部に寄せられた声
「父の死後、実家を兄と2分の1ずつ相続しました。兄がそのまま住み続けていますが、固定資産税は折半。私は一度も使っていないのに毎年負担だけが続き、『家賃を払ってほしい』とも言い出せず、もう何年もモヤモヤしたままです」(40代・女性)

このように、住んでいる兄弟へ賃料を請求するのは心理的なハードルが高いのが実情です。不公平感が積み重なる前に、持分の売買や全体売却で共有を解消するほうが、結果的に関係を壊さずに済むこともあります。

兄弟の配偶者や子供(相続人)が口出ししてきて泥沼化した

兄弟の配偶者や子供(相続人)が口出ししてきて泥沼化した

兄弟だけなら話がついても、それぞれの配偶者や子どもが口を出してくると、一気に話がまとまらなくなります。とくに共有者である兄弟の1人が亡くなると、その持分は配偶者や子に相続され、面識のない親族同士で話し合わなければならなくなります

「自分たちの取り分を増やしたい」という思惑が絡むと、兄弟間では避けられた対立が表面化し、泥沼化しやすくなります。実際に、共有者だった兄が亡くなり、持分を相続した義理の姉や甥が「もっと高く売るべきだ」と主張して交渉が長期化する、といったケースも少なくありません。

話し合いに応じず、音信不通になった

兄弟の1人と連絡が取れなくなると、売却や活用に必要な全員の同意が得られず、何も進められなくなります。疎遠だった兄弟や、遠方・海外に住んでいる兄弟がいる場合に起こりやすいトラブルです。兄弟の場合、親が存命のうちは実家を介して自然に連絡が取れていても、親が亡くなった途端に行き来が途絶えることが珍しくありません。

連絡が取れない共有者がいる場合、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てるなど、手間とコストのかかる手続きが必要になります。売却の同意書一枚もらえないために不動産が事実上「塩漬け」になり、連絡先を探すだけでも時間と費用がかかってしまいます。

兄弟で共有名義にするリスク

アンケートで挙がったトラブルは、共有名義という仕組みそのものに原因があります。法律・制度の面から見ると、兄弟の共有名義には次の4つのリスクがあります。

  • 売却・建て替え・取り壊しに共有者全員の同意が必要
  • 二次相続が発生すると共有者が増え続ける
  • 共有者が音信不通・認知症になると手続きが進まない
  • 兄弟の誰かが自己破産や滞納をすると、持分が差し押さえの対象になる

仲の良い今は問題がなくても、これらは時間の経過とともに顕在化します。順番に見ていきましょう。

売却・建て替え・取り壊しに共有者全員の同意が必要

共有不動産の売却・建て替え・取り壊しといった「処分・変更行為」には、共有者全員の同意が必要です。兄弟の1人でも反対すれば実行できません。

なぜ全員の同意が必要かというと、これらの行為は不動産の価値や形を大きく変え、各共有者の権利に重大な影響を与えるからです。一方、賃貸に出す・大規模修繕をするといった「管理行為」は持分の過半数で決められますが、売却などの重要な決定は全員一致が崩せません。たとえば兄弟3人のうち2人が売却に賛成でも、1人が反対すれば売却はできません。意見が割れると、前述の「塩漬け」状態に陥ります。

二次相続が発生すると共有者が増え続ける

二次相続が発生すると共有者が増え続ける

共有者である兄弟の1人が亡くなると、その持分はさらに配偶者や子へ相続されます。これが繰り返されると、世代を重ねるごとに共有者が雪だるま式に増えていきます。

たとえば兄弟3人の共有が、次の世代では甥・姪を含めて10人以上になることも珍しくありません。そうなると全員の所在を確認して同意を取ること自体が極めて困難になり、解消のハードルは一気に上がります。

「とりあえず共有」で先送りした結果、子や孫の世代に解決不能な問題を残してしまうのです。たとえば当初は兄弟3人(各3分の1)の共有でも、それぞれに配偶者と子がいれば、二次相続を経て持分はさらに細分化され、関係者が9人・12人と膨らんでいきます。

共有者の兄弟が認知症になると手続きが進まなくなる

共有者の兄弟が認知症などで判断能力を失うと、本人が売買契約などの意思表示をできなくなり、全員の同意が前提となる手続きが止まってしまいます。この場合は、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立て、後見人が本人に代わって手続きを行うことになります。

ただし、後見人の選任には申立てから数か月かかるのが一般的で、費用も発生します。さらに、いったん後見が始まると本人が亡くなるまで続き、後見人への報酬が毎年かかり続ける点にも注意が必要です。認知症になってからでは打てる手が限られるため、親も兄弟も元気なうちに解消方針や家族信託を検討しておくことが大切です。

共有者の兄弟が行方不明になると手続きが進まなくなる

共有者の兄弟と連絡が取れず所在も分からない場合も、その人の同意が得られないため売却などが進みません。従来は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる必要があり、時間も費用もかかりました。

もっとも、2023年4月施行の改正民法により、所在不明の共有者がいても、裁判所の決定でその持分を取得したり第三者に譲渡したりできる制度が新設されました。これにより、必ずしも不在者財産管理人を選任しなくても共有関係を解消できる道ができています。ただし、いずれの手続きも数か月単位の時間と費用がかかるため、連絡が取りにくい兄弟がいる場合は、早めに動いておくことが大切です。

兄弟の誰かが自己破産や滞納をすると、持分が差し押さえの対象になる

見落とされがちですが、兄弟の1人が借金の返済や税金の支払いを滞らせると、その共有持分が差し押さえ・競売の対象になります。

競売で兄弟の持分を見知らぬ第三者や不動産業者が落札すると、その人が新たな共有者として加わることになります。自分は何も悪くなくても、ある日突然、赤の他人と不動産を共有する事態になりかねないのです。

差し押さえのきっかけは、兄弟が営む事業の連帯保証や、本人も忘れているような昔の借金など、ほかの兄弟が把握していない負債であることも少なくありません。兄弟の経済状況に不安がある場合は、早めの解消を検討すべき理由のひとつです。

兄弟で共有名義にするかの基準

「兄弟だから共有でも大丈夫だろう」と考えがちですが、それが後悔のもとになります。共有名義にしてよいかは、次の4つの基準で判断してみてください。1つでも「単独名義にすべきケース」に当てはまるなら、共有名義によって後悔するリスクが高いと考えましょう。

兄弟で共有名義にしてよいかの判断基準
判断基準 問題になりにくいケース 単独名義(または売却等)にすべきケース
①目的の一致 「1年後に全体を売却する」など目的が同じ 1人は住みたい、1人は売りたいなど意見が違う
②お金の負担 固定資産税・修繕費の支払いルールが明確 誰が払うか曖昧/兄弟間で経済格差がある
③関係性の深さ 配偶者や子が口出ししても揉めない 兄弟同士は良くても、配偶者とは疎遠
④経済的な信用 兄弟全員に借金や税金滞納のリスクがない 兄弟の誰かに金銭的な不安要素がある

大切なのは、共有名義がうまくいくのは「近い将来に売却・解消する」など、ゴールが共有できている場合に限られるということです。「①目的」が一致せず、住みたい人と売りたい人がいる時点で、共有名義は塩漬けの火種になります。また「②お金」「③配偶者との関係」「④経済的信用」のどれかに不安があるなら、トラブルが起きる前に単独名義化や売却を検討するのが賢明です。

兄弟の共有名義を解消する方法

すでに共有名義になっている場合は、トラブルが深刻化する前に早めに解消することが何より大切です。主な方法は次の6つで、状況によって最適な選択は異なります。まずは全体像を把握しましょう。

なお、兄弟間の共有解消で本当に難しいのは、手続きそのものよりも「どう切り出すか」という関係面です。お金や実家の話は感情を伴うため、いきなり「売ろう」と持ちかけると角が立ちます。①「売りたい・買いたい」ではなく「固定資産税や老朽化でお互い損をしている」という事実から話を始める、②最初から1つの方法に決め打ちせず複数の選択肢を一緒に並べて検討する、③こじれそうなら早めに弁護士や不動産会社など第三者を間に入れる、この3点を意識すると、関係を壊さずに話を進めやすくなります。

兄弟の共有名義を解消する主な方法
方法 特徴 費用の目安
①兄弟間で持分を売買 1人が他の兄弟の持分を買い取り単独名義に。住み続けたい人向け 買取資金+登記費用・税金
②全体を売却して分ける 全員合意で売却し代金を分配。最も公平で手取りが大きい 仲介手数料・譲渡所得税
③自分の持分だけ売却 他の兄弟の同意不要。早く抜けられるが価格は低め 譲渡所得税(手数料は原則不要)
④持分の贈与・放棄 無償で他の兄弟へ。受け取る側に贈与税 贈与税・登記費用
⑤土地を分筆 土地を物理的に分け各自単独名義に。広い土地向け 分筆費用30〜80万円程度
⑥共有物分割請求 裁判所が分割方法を決定。話し合い決裂時の最終手段 弁護士・鑑定費用で数十万〜
解消方法を選ぶためのチェックフロー
①実家に住み続けたい兄弟がいる? → いるなら「兄弟間で持分を売買」して単独名義にする
②兄弟全員が売却に合意できる? → できるなら「全体を売却して現金で分ける」(最も公平)
③とにかく早く共有から抜けたい? → その場合は「自分の持分だけを専門業者に売却」
④話し合いが決裂した → 最終手段として「共有物分割請求」を検討する

迷ったときは、まずこの順で検討すると整理しやすくなります。共有状態の解消方法の詳細は、以下の記事でも解説しています。

兄弟間で持分を売買する

兄弟の1人が他の兄弟の持分を買い取り、単独名義にする方法です。「実家に住み続けたい兄弟が、住んでいない兄弟の持分を買い取る」のが典型パターンで、不動産を手放さずに共有を解消できるのがメリットです。

価格の目安は「不動産全体の市場価格×売る側の持分割合」です。注意点として、時価より著しく低い価格で売買すると「みなし贈与」とされ、買い取った側に贈与税が課されるおそれがあります。また、買取資金を用意する必要があり、親族間売買では住宅ローンの審査が通りにくい点にも注意が必要です。

売買で利益が出れば売る側に譲渡所得税、買う側に不動産取得税(宅地は課税標準が2分の1に軽減)と登録免許税がかかります。たとえば市場価格3,000万円の実家で持分2分の1を買い取るなら、必要な資金の目安は約1,500万円です。手続きにかかる期間は、資金の準備が整っていれば数週間〜数か月程度です。

全員で合意して不動産全体を売却し、現金を分ける

共有者全員の合意のもとで不動産を第三者に売却し、代金を持分割合に応じて分ける方法です(遺産分割の場面では「換価分割」と呼ばれます)。市場価格に近い金額で売れて手取りが最も大きく、現金で分けるため公平性も高いのが特徴で、兄弟全員が売却に納得できるなら最初に検討したい方法です。

ただし、共有者が1人でも反対すると実行できません。仲介手数料や譲渡所得税は、各共有者が持分割合に応じて負担します。なお、相続した実家を売る場合は、一定の要件を満たせば各共有者が「被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除」を使える可能性があり、譲渡所得税を大きく抑えられることがあります。ただし、相続人(共有者)が3人以上の場合は、1人あたりの控除額の上限が2,000万円に引き下げられます。売却にかかる期間は、買い手が見つかるまで含めておおむね3〜6か月が目安です。

全体売却の進め方(STEP)
STEP1:兄弟全員で「売る」方針と最低売却価格を合意する
STEP2:複数の不動産会社に査定を依頼し、媒介契約を結ぶ(共有者全員の署名・捺印が必要)
STEP3:売却活動を行い、買主と売買契約を結ぶ
STEP4:引渡し・決済後、売却代金を持分割合に応じて分配する
STEP5:譲渡益が出た共有者は、それぞれ翌年に確定申告する

売主が複数いるぶん意思統一に時間がかかりやすいため、最低売却価格と分配ルールを最初に決めておくと、あとで「やっぱり売りたくない」ともめずに進められます。

自分の持分だけを専門業者に売却する

兄弟と意見が合わない、関わりたくないという場合は、自分の持分だけを売却する方法があります。自分の持分の売却に他の兄弟の同意は不要で、共有関係から離脱できます。

共有持分は一般の買い手がつきにくいため、売却先は共有持分を専門に扱う買取業者が中心になります。交渉や裁判が不要で短期間に現金化できる一方、売却価格は全体売却より低くなる傾向があります。複数の業者に査定を依頼し、価格と対応を比較して選ぶとよいでしょう。現金化までの期間は、買取業者との交渉がまとまれば数日〜数週間と短いのも特徴です。

持分を贈与・放棄する

「不動産はいらない」という兄弟が、自分の持分を他の兄弟に無償で譲る方法です。贈与は特定の相手に渡す方法、放棄は他の共有者に持分割合に応じて帰属させる方法です。

共有関係をシンプルに整理できる一方、受け取った側に贈与税がかかります。兄弟間の贈与は税率の高い「一般税率」が適用され、持分の評価額が基礎控除(年110万円)を大きく超えると高額になりがちです。また放棄の場合、相手が登記に協力しないと持分移転登記ができず、最終的に登記引取請求訴訟が必要になることもあります。登記自体は書類がそろえばすぐに完了しますが、相手が協力しない場合は訴訟で半年以上かかることもあります。

土地であれば分筆してそれぞれ単独名義にする

共有しているのが土地で、ある程度の面積がある場合は、土地を物理的に分割(分筆)して各兄弟の単独名義にする方法があります。ただし、分筆しただけでは各区画はまだ共有のままで、自動的に単独名義になるわけではありません。分筆した各区画について、兄弟どうしで持分を交換する登記(持分移転登記)を行って、はじめてそれぞれの単独名義になります。手続きは「分筆登記→持分の交換登記」の2段階になりますが、完了すれば各自が自由に利用・売却できるようになるのがメリットです。

一方、分筆後の形状や接道条件によっては土地の価値に差が出るため、不公平にならないよう不動産鑑定士の評価を踏まえて分割ラインを決めるのが望ましいでしょう。分筆には土地家屋調査士への依頼が必要で、費用は30〜80万円程度が目安です。建物がある場合は実質的に分筆が難しい点にも注意が必要です。測量や隣地との境界確定が必要なため、分筆の完了までには数か月かかるのが一般的です。

共有物分割請求で裁判所に申し立てる

兄弟が売却に反対しているケースでは、①まずは当事者で話し合い→②まとまらなければ共有物分割請求訴訟を起こす、という流れが基本です。共有物分割請求訴訟には調停前置主義(訴訟の前に必ず調停を経る決まり)がないため、話し合いがまとまらなければ調停を挟まずにそのまま訴訟を起こすこともできます。もちろん、いきなり訴訟にせず、まず家庭裁判所の調停で歩み寄りを図る方法もあります。

裁判所が決める分割方法は、現物分割・代償分割・換価分割(競売)の3種類です。競売になると落札価格は市場価格の6〜7割程度にとどまることが多く、全員の手取りが目減りします。費用は弁護士費用50〜100万円程度に加え、鑑定費用20〜50万円程度、期間は半年〜2年程度が目安です。負担が大きいため、まずは話し合いや他の方法を先に検討するのが現実的です。

なお、どの解消方法を選んでも、名義を移す際には登記費用と税金がかかります。主なものを整理しておきましょう。

持分の移転にかかる登録免許税の税率
移転の原因 登録免許税の税率
売買(土地) 固定資産税評価額×1.5%(軽減税率/令和11年3月31日まで)
売買(建物)・贈与 固定資産税評価額×2%
相続 固定資産税評価額×0.4%

このほか、登記を司法書士に依頼する場合は報酬として5〜10万円程度がかかります。税金は移転の方法によって変わるため、売買・贈与それぞれで押さえておきたい点を確認しましょう。

なお、計算のもとになる持分の評価額は、土地は路線価(路線価×地積×持分割合)、建物は固定資産税評価額×持分割合で概算でき、自分の持分割合は登記事項証明書(登記簿)で確認できます。

■ 売買で持分を移す場合(譲渡所得税・不動産取得税)
持分を売った側は、利益(譲渡所得)が出れば譲渡所得税がかかります。譲渡所得は「売却価格−(取得費+譲渡費用)」で計算し、相続で取得した不動産は被相続人の取得時期と取得費を引き継ぎます。

一方、買い取った側には不動産取得税がかかりますが、宅地は課税標準が2分の1に軽減される特例があります。

■ 贈与で持分を移す場合(贈与税)
持分を無償でもらった側には贈与税がかかります。計算式は「(贈与財産の評価額−基礎控除110万円)×税率−控除額」で、兄弟間の贈与は税率の高い「一般税率」が適用されます(親子間などに使える特例税率は対象外です)。

たとえば持分の評価額が1,000万円なら、贈与税は約231万円にのぼります(基礎控除後890万円×一般税率40%−控除額125万円=231万円)。累進課税のため評価額が高いほど負担は重く、ケースによっては贈与より売買の形を取るほうが税務上有利なこともあります。

■ 兄弟間の売買は「みなし贈与」に注意
「身内だから」と時価より著しく低い価格で売買すると、その差額が贈与とみなされ、買い取った側に「みなし贈与」として贈与税が課されることがあります。

「著しく低い価格」に明確な法令上の基準はなく、「時価の何割以上なら安全」といった数値上の目安もありません。税務署が個別に判断するため、親族間で売買するときは自己判断で価格を決めず、不動産鑑定士の評価書で時価を裏付けたうえで、税理士に相談して価格を決めるのが安全です。

【費用シミュレーション】兄弟2人で相続した3,000万円の実家を、住み続ける兄が買い取る場合
前提:兄弟2人が各2分の1ずつ相続/市場価格3,000万円・固定資産税評価額2,400万円/兄が弟の持分(1,500万円相当)を適正価格で買い取る
・買取資金(兄→弟):1,500万円
・登録免許税(兄):土地の持分1/2の評価額1,200万円×1.5%=約18万円(土地の売買は軽減税率。建物分は2%)
・不動産取得税(兄):1,200万円×1/2×3%=約18万円(軽減措置でさらに下がる場合あり)
・司法書士報酬(兄):5〜10万円程度
・譲渡所得税(弟):取得費が不明だと概算取得費(売却額の5%=75万円)で計算され、譲渡益約1,425万円に長期譲渡の税率約20%で約290万円
→ 兄は「買取資金1,500万円+諸費用約50万円」、弟は「受け取る1,500万円から約290万円の税負担」というイメージです。

このように、兄弟間の売買では買い取る側の諸費用だけでなく、売る側の譲渡所得税まで含めて手取りを試算することが欠かせません。とくに譲渡所得税は、購入当時の売買契約書など取得費がわかる書類が残っていれば大きく抑えられるため、早めに探しておきましょう。

費用は選ぶ方法によって大きく変わります。登記費用や税金まで含めた最終的な手取り額で各方法を比較し、判断に迷う場合は事前に税理士へ試算を依頼しましょう。

相続時に兄弟の共有名義を避けるには

ここまで見てきたとおり、共有名義は解消に手間と費用がかかります。そのため、そもそも共有名義にしないことが最善の予防策です。相続の発生前や遺産分割協議の段階で、次の4つの方法を検討しましょう。

  • 遺言書で不動産の取得者を1人に指定しておく
  • 代償分割で1人が不動産を取得する
  • 換価分割で売却してから現金を分ける
  • 家族信託を利用する

いずれも、共有という火種を最初から作らないための事前対策です。兄弟の誰かに「実家に住み続けたい」「現金がほしい」という希望がはっきりしているなら、相続の段階で単独名義に寄せておくほうが、後の争いを確実に防げます。それぞれの方法を見ていきましょう。

遺言書で不動産の取得者を1人に指定しておく

被相続人が生前に遺言書で「実家は長男に相続させる」と取得者を指定しておけば、遺産分割協議をせずに単独名義で相続させることができます。これは、共有名義を最も確実に防げる方法です。

形式の不備で無効にならないよう、公正証書遺言で作成するのが望ましいでしょう(作成費用は公証人手数料として数万円程度が目安)。ただし、他の兄弟の遺留分(最低限の取り分)を侵害すると、かえって争いのもとになるため配慮が必要です。

代償分割で1人が不動産を取得する

兄弟の1人が不動産を単独で相続し、他の兄弟には持分相当額の現金(代償金)を支払う方法です。不動産を残したまま公平に分けられるのがメリットですが、代償金を用意する資金力が必要で、金額の決め方で揉めることもあります。

たとえば3,000万円の実家を兄が取得するなら、弟には持分2分の1相当の1,500万円を代償金として支払う、というイメージです。一括で用意できないと成立しにくい点がネックになります。

換価分割で売却してから現金を分ける

換価分割で売却してから現金を分ける

不動産を売却し、その代金を兄弟で分ける方法です。現金で分けるため最も公平で、不動産の管理負担もなくなります。代償分割と違って代償金を用意する必要がなく、相続人が何人いても分けやすいのが利点です。

登記の流れとしては、いったん相続人全員の共有名義で相続登記をしてから売却し、買主へ所有権移転登記をするのが原則です(代表者1人の単独名義にまとめてから売る方法もありますが、その場合は換価分割である旨を遺産分割協議書に明記しておく必要があります)。最終的に共有は残りませんが、手続き上は一時的に共有名義を挟む形になる点は知っておきましょう。

一方、思い出のある実家であっても手放すことになる点や、買い手が決まるまで遺産分割が確定せず時間がかかる点には注意が必要です。なお、売却で利益が出た場合は、各相続人が持分割合に応じて譲渡所得税を負担します。

家族信託を利用する

家族信託を利用する

親が元気なうちに、財産の管理・処分を信頼できる子に任せておく方法です。たとえば「親を委託者、長男を受託者として実家を信託し、親の判断能力が低下しても長男が単独で管理・売却できるようにする」といった設計ができます。

認知症による"凍結"を防げるのが大きなメリットで、将来の共有・管理トラブルの予防に有効です。契約内容が複雑になるため、信託に詳しい専門家への相談がおすすめです。初期費用として、コンサルティング報酬や公正証書の作成費用などで50〜100万円程度かかるのが一般的です。

まとめ

兄弟が不動産を共有名義にする最大の原因は相続です。遺産分割がまとまらないままの「とりあえず共有」は、問題の先送りにすぎません。共有名義は売却も活用も共有者全員の同意がなければ進められない仕組みのため、兄弟仲が良いうちは表面化しなくても、時間の経過とともに塩漬け・費用負担の偏り・二次相続による共有者の増加・持分の差し押さえといったトラブルが起こりやすくなります。

共有名義にしてよいのは、「目的・お金・関係性・信用」の4つの基準をすべて満たす限られたケースだけです。すでに共有になっている場合は、トラブルが深刻化する前に早めに解消するのが基本で、状況に応じて6つの方法から選びます。これから相続を控えているなら、そもそも共有にしないことが最善で、遺言書・代償分割・換価分割・家族信託で備えられます。

兄弟の共有名義・状況別の向いている解消方法
こんな状況 向いている方法
兄弟の1人が実家に住み続けたい 兄弟間で持分を売買し、単独名義にする
全員が手放してよい 全体を売却して代金を分ける(最も公平)
早く共有から抜けたい 自分の持分だけを専門の買取業者に売却する
話し合いが決裂した 共有物分割請求で裁判所に判断を求める
まだ相続が発生していない 遺言書・代償分割・家族信託で共有を予防する

まず取り組みたいのは、兄弟で「実家をどうしたいか(住む・売る・貸す)」という方針をすり合わせ、合意した内容を書面に残しておくことです。意見が割れて動けない、連絡が取れない兄弟がいるといった場合は、当事者だけで抱え込まず第三者を入れて進めるのが現実的です。

兄弟の共有名義は、早く動くほど選択肢が多く、コストも抑えられます。解消方法の選択や税額の試算で迷う場合は、不動産の問題に詳しい専門家(弁護士・税理士など)に早めに相談しましょう。

兄弟の共有名義でよくある質問

兄弟の共有名義でも、自分の持分だけ売却できる?

法律上は可能です。各共有者は自分の持分を自由に処分でき、他の兄弟の同意は不要です(民法206条)。ただし、共有持分のみは一般の買い手の需要が低いため、売却先は共有持分の専門買取業者などに限られます。売却を検討する際は、後のトラブルを防ぐためにも他の兄弟へ事前に伝えておくと安心です。

兄弟間の共有持分の売買に住宅ローンは使える?

親族間売買は住宅ローンの審査が通りにくい傾向があります。多くの金融機関が親族間売買を融資の対象外としており、対応可能な場合でも金利が高めになるケースが多いため、自己資金での購入が基本になると考えておきましょう。

共有名義の実家に兄弟の1人だけが住んでいる場合、家賃は請求できる?

できます。自分の持分を超えて実家に住んでいる共有者は、他の共有者に対して使用の対価(賃料相当額)を支払う義務があります(民法249条2項)。したがって、住んでいない兄弟は持分に応じた金額を請求できます。ただし、兄弟間で実際に請求すると感情的な対立を深めやすいため、家賃請求よりも共有状態そのものの解消を先に検討するほうが現実的なケースも多いです。

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    更新日 : 2026年07月31日
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