土地の売却で意見が分かれたら「単独」か「共有」、「相続前」か「相続後」で対応が異なる
土地の取り扱いについて兄弟間で意見が分かれた場合、まず「単独名義」なのか「共有名義」なのか、また「相続前」か「相続後」かによっても、法的な扱いや対応が異なります。
実際のご相談でも、「親の土地を売りたい兄」と「思い出があるので残したい弟」のように、兄弟間で考え方が分かれるケースは珍しくありません。
特に、相続開始後に十分な話し合いをしないまま共有名義にしてしまい、その後に意見が対立するケースは実務上よく見られます。
まず単独名義と共有名義、それぞれの対応方法は以下のとおりです。
- 単独名義:遺産分割が終わって自分が単独で相続した場合、ほかの兄弟の意見は問わず売却が可能
- 共有名義:複数の兄弟で相続した場合、売却するためには全員の合意を得る必要がある
自分の単独名義であれば、ほかの兄弟に反対されたとしても売却活動を進められます。反対に自分がその土地を所有していなければ、土地の利用方法や処分方法などについて決める権利はありません。
一方、相続前や遺産分割協議前の段階だと、土地は相続人全員に関係する共有財産として扱われます。その場合は、特定の相続人が単独で売却することは原則できず、相続人全員の合意が必要です。
兄弟で意見が分かれたとき最も問題となりやすいのは、共有名義の土地です。
共有名義の土地は、土地全体を売却する際に共有者全員の同意が必要となるため、1人でも反対者がいると売却を進められないためです。
共有不動産の取引現場においては、以下のようなケースは少なくありません。
- 長男は「固定資産税や管理負担が重いため売却したい」次男は「将来的に自宅を建てるかもしれないので残したい」として意見が対立している
- 遠方に住む相続人と連絡が取りづらく売却の話し合いが進まない
- 相続から数年経過し、共有者同士の関係が悪化している
特に注意したいのは、「とりあえず平等に」という理由だけで共有名義にすると、将来的に売却・活用・管理の場面で意思決定が難しくなりやすい点です。共有者の一部が亡くなればさらに相続が発生し、権利関係が複雑化していくケースもあります。
実務でも、将来的なトラブル回避を目的として、代償金を支払って単独取得にまとめる方法などが選択されることがあります。
そのため、まだ相続をしていないのであれば、遺産分割の際にどのように土地を相続するのかを話し合い、可能であれば単独名義にすることを検討するとよいでしょう。
一方、すでに共有名義で土地を相続しており意見が分かれている場合は、共有持分を売却する方法がもっとも手軽でおすすめです。
共有持分の売却相談では、「仲介会社に相談したものの、共有者間の調整が難しいとして対応を断られた」という経緯を話される方も少なくありません。
実務上は、共有不動産特有の事情を踏まえて、仲介・持分売却・共有状態の維持などを比較しながら方針を検討することが大切です。
兄弟で土地の売却について意見が分かれた際、どのように対処すればよいのか、相続前と相続後に分けて次の項目から詳細に解説していきます。
【相続前】遺産分割で「単独名義」になるよう調整する
相続した土地の売却に関する兄弟トラブルは、おおむね「土地を共有名義にしない」ことで回避できるケースが多い傾向にあります。
共有名義の土地は、売却・賃貸・建替えなどの場面で共有者同士の合意形成が必要になるため、相続時点では問題がなくても、数年後に意見対立が生じるケースがあります。
また、共有者の1人が亡くなると、その持分がさらに相続され、甥・姪・配偶者などへ権利が分散していくため、時間が経つほど話し合いが難しくなる点にも注意が必要です。
そのため、相続開始時点で可能であれば、共有名義を避けて単独名義に整理できないか検討することが重要です。
単独名義で相続すれば、相続人は自由に土地を売却できるうえ、ほかの兄弟とトラブルになる心配もありません。
とはいえ、遺産が土地の場合、共有名義を避けながら分割するのが難しいケースも多くみられます。遺産分割の際に共有名義を避けて土地を相続する方法は、以下のとおりです。
- 遺産全体の分割方法を調整して土地を単独名義にする
- 土地を分筆してもらい単独名義の土地として相続する
- 「土地」と「土地以外の遺産」の差額を現金で清算する
- 土地を売却してもらい現金で遺産分割をする
それぞれの方法について詳しく解説します。
遺産全体の分割方法を調整して土地を単独名義にする
基本的なことですが、遺産分割をする際には土地などの特定の財産だけでなく、遺産全体で分割方法を考えましょう。
土地のほかに現金や証券など別の財産がある場合、すべてを公平に分割する必要があります。
たとえば遺産の内訳が「評価額1,000万円の土地、600万円の現金、400万円の証券」で、相続人が兄弟2人だとします。
この場合、1人が土地を相続し、もう1人が現金と証券を相続すれば、金額としては公平な遺産分割となります。
なお、上記のように財産をそのままの状態(現物)で分割する方法を「現物分割」といいます。
ほかの遺産も含めて公平な分割が可能なのであれば、現物分割で単独名義にすることを検討してみてください。
実務でも、「親と同居していた相続人が不動産を取得し、他の相続人が金融資産を取得する」という調整は比較的多く見られます。
一方で、現実には不動産評価と実際の市場価格に差があるケースも少なくありません。
たとえば、相続税評価額では1,000万円でも、実際に売却すると700万円程度になる土地もあれば、逆に再開発エリアなどでは市場価格のほうが大きく上回るケースもあります。
そのため、実務上は「税務上の評価額」だけでなく、「実際に売却した場合の価格感」まで踏まえて話し合うことが重要です。
土地を分筆してもらい単独名義の土地として相続する
分筆とは、1つの土地を2つ以上の土地に分け、それぞれ独立した土地として登記することです。
遺産である土地を切り分けて、兄弟それぞれの「単独名義の土地」として相続しすることで、共有状態を避ける方法です
共有名義のままだと、将来的な売却や建替え時に共有者全員の同意が必要になりますが、単独所有できれば、相続後の土地は売却するも維持・活用するも各自の自由です。
注意点としては、土地を切り分けるときは全体の面積だけでなく、接道面積(道路と接している部分)や日当たり、形状なども配慮する必要があります。
特に注意したいのが「接道義務」です。
たとえば、片方の土地だけ道路に十分接していない形で分筆してしまうと、建替えが難しくなったり、住宅ローン審査に影響したりする可能性があります。
実際に、「平等に分けたつもりだったが、片方だけ売却しづらい土地になってしまった」というケースは珍しくありません。
また、古い住宅地では隣地との境界が曖昧なままになっていることも多く、分筆前に測量や境界確認で時間がかかるケースもあります。
被相続人が長年その土地を所有していた場合、「隣地所有者が高齢で立会いが進まない」「昔の境界標が見つからない」といった事情で、数ヶ月以上かかることもあります。
そのため、土地の分筆については、土地家屋調査士などの専門家に相談しましょう。
もし、兄弟間でもめている場合には、不動産問題に詳しい弁護士などの専門家に相談することがおすすめです。
なお、上記のように分筆して分割する方法も「現物分割」といいます。土地を切り分けていますが、土地という財産の性質は変えていないため、現物分割の一種と考えられるのです。
「土地」と「土地以外の遺産」の差額を現金で清算する
先ほどは「遺産全体で分割方法を考える」と解説しましたが、遺産全体の分割を考慮しても、公平に分割できない場合があります。
このような場合に用いられるのが「代償分割」です。これは、土地を取得する相続人が、他の相続人へ現金を支払うことでバランスを取る方法です。
たとえば遺産の内訳が「1,000万円の土地、600万円の現金、100万円の証券」で、相続人が兄弟2人という場合です。
この場合、土地以外の遺産が合計で700万円なので、土地を単独名義にしようとすると不平等になってしまいます。
土地と土地以外の遺産に差額がある場合は、その差額分を現金で清算することで公平な分割になります。上記の例の場合、土地を相続する人が土地以外の遺産を相続する人に差額の半額である150万円を支払えば、不公平は生じません。
土地を相続する人:1,000万円-150万円=850万円
土地以外を相続する人:700万円+150万円=850万円
実務上、兄弟間で最も意見が対立しやすいのが「土地の評価額を何基準で計算するか」です。
土地を取得する側は代償金を少しでも抑えるために「路線価」や「固定資産税評価額」を基準にしたいと考える一方、現金を受け取る側はより高い「実勢価格(市場価格)」を基準にしたいと考えるため、協議が平行線になるケースは非常に多く見られます。
ただし、この方法は土地を相続する人に「現金を用意する」という負担がかかります。また、代償金の支払い方法や期限は、相続人全員の合意で決める必要があります。
支払い方法を分割にするなど、負担を軽減するような取り決めをしておきましょう。
なお、後々のトラブル防止のため、代償金の金額・支払期限・支払方法は遺産分割協議書へ明記しておくことが重要です。
土地を売却してもらい現金で遺産分割をする
相続人である兄弟全員が土地を不要というのであれば、相続時に売却して現金で分ける「換価分割」も選択肢のひとつです。
不動産は現物のままだと分けにくい一方、現金化することで公平性を保ちやすくなります。
もしも被相続人にあたる人がまだ元気なのであれば、土地の相続でトラブルが起きないよう、生前に売却してもらうという方法もあります。事前に現金化しておくことで、相続人間で公平に分けやすくなり、将来的なトラブルも防ぎやすくなります。
ただし、生前売却には譲渡所得税が発生する可能性や、売却後の資金の渡し方によっては贈与税が生じることもあります。まずは税務面の確認をしてから進めることが大切です。
被相続人がすでに亡くなっている場合、土地を売却するためには相続登記で被相続人から相続人に名義変更する必要があります。
まずは遺産分割協議で「売却して現金で分割する」という取り決めをし、売却代金の分配方法や割合、売却費用の負担方法まで含めて合意しておきましょう。その内容を遺産分割協議書に明記しておくことで、後のトラブル防止になります。
相続後に売却する予定の場合、相続登記による土地の取得は一時的なものになります。相続人全員の共有名義にするのもよいですし、代表者1名の名義にしてもかまいません。
ただし、代表者の単独名義にする場合は、遺産分割協議書に「換価分割の便宜のために代表者名義とする」旨を必ず明記しておくことが重要です。
この記載がないまま土地を売却し、代表者から他の兄弟へ売却代金を分配すると、税務署から「代表者から他の相続人への贈与」と判断され、贈与税の対象になる可能性があります。
なお、換価分割のための便宜的な単独名義であることを記載していても、登記実務上の判断はケースによって異なるため、実際に手続きを進める際は司法書士へ事前に相談するのが安心です。
【相続後】共有名義の土地で意見が分かれた際は「共有持分」を売却する
すでに遺産相続が終わっており、共有名義で土地を相続している場合、土地全体を売却するには全共有者の同意が必要です。
そのため、共有者のうち1人でも反対している場合、原則として土地全体の売却は進められません。
相続直後は問題なくても、数年経過してから意見が対立するケースは実務上よく見られます。
たとえば、「1人だけ固定資産税を立て替えている」「空き家管理を特定の相続人だけが行っている」などといった事情から、「共有状態を整理したい」という相談につながるケースがあります。
共有不動産で注意したいのは、時間が経つほど権利関係が複雑化しやすい点です。
弊社が知っている事例でも、当初は兄弟3人だけだった共有関係が、その後の相続によって甥・姪・配偶者まで権利者となり、最終的に10人以上の共有状態へ発展しているケースもあります。
こうした場合、実務上は「土地全体をどう売却するか」だけでなく、自分の共有持分をどう整理するかという視点で検討されることが少なくありません。
なお、共有持分のみであれば、他共有者の同意がなくても売却自体は可能です。
相続後に共有者間で意見がまとまらない場合、主な選択肢としては以下が挙げられます。
- 自分の共有持分を「専門買取業者」に買い取ってもらう
- 自分の持分を兄弟に売却する
- 兄弟の共有持分を買い取り単独名義の土地として売却する
- 「共有物分割請求訴訟」で土地を分割する
次の項目から、それぞれ詳しくみていきましょう。
自分の共有持分を「専門買取業者」に買い取ってもらう
共有持分は利用や処分に制限があることから、購入しても活用しづらく、一般的な不動産会社では取り扱いが少ないのが実情です。そのため、依頼しても安く買い叩かれたり、いつまでも売れないことがあります。
実際の不動産仲介の現場でも、「共有持分のみは買主が見つかりにくい」として、取り扱い自体を断られるケースがあります。
弊社に来られる方の中には、「半年以上売却活動したが問い合わせがほぼなかった」「通常仲介では難しいと言われた」「他共有者との関係悪化を理由に敬遠された」といった事情を話される方も少なくありません。
特に、他の共有者と連絡が取れなかったり、再建築不可物件であったりと特殊な事情がある場合には、通常仲介では対応が難しくなるケースが多いでしょう。
このような場合、共有持分の売却は専門の買取業者に依頼するのが有力な選択肢となります。
専門業者は、共有不動産特有の権利調整や実務経験を前提に査定を行うため、条件次第では比較的スムーズに売却できる可能性があります。
もっとも、共有持分は単独で自由利用できる不動産ではないため、市場価格より低い水準で評価されるケースがほとんどです。
実務感としても、共有持分単体は「土地全体価格×持分割合」どおりにならないケースが多く、他共有者との関係性や土地状況によって査定差が大きく出るのが特徴です。
自分の持分を兄弟に売却する
自分の共有持分を、共有者である兄弟に買い取ってもらうことも可能です。
共有持分を第三者へ売却する際、法律上は他共有者の同意は不要です。
兄弟が「土地を売りたくない」と考えているのであれば、市場で売却する場合より柔軟な条件で話し合える可能性があります。
兄弟としても第三者に共有持分を売却されるよりは、自分で共有持分を買い取り、単独名義にしたほうがよいと考えるでしょう。
実際の共有不動産の相談でも、「第三者が共有者になるのは避けたい」と考える方は少なくありません。
特に、「実家を将来的に利用したい」「最終的には単独名義へ整理したい」また、実務上は、第三者へ売却される前であれば、比較的冷静に話し合いが進むケースもあります。
無断で第三者に売却すると後からトラブルになる恐れもあるため、まずは、兄弟に買取の意思があるかどうか相談してみましょう。
その際「第三者への売却も検討している」と伝えることで、話し合いが進みやすくなる場合もあります。
一方で、共有者同士の感情的対立が強い場合には、価格交渉がまとまらないケースも少なくありません。
また、親族間では「感情」と「お金」の問題が混在しやすく、実際の現場でも過去の介護や今の実家管理の負担などが持分売買の話し合いへ影響するケースは珍しくないです。
なお、共有持分の買取には資金が必要です。たとえば評価額900万円の土地の共有持分を1/3所有している場合、単純計算での買取金額は300万円となります。
もっとも、共有持分は土地全体を売却するよりも相場が低くなるため、実際の買取金額は下がることも少なくありません。それでも、まとまった資金が必要であることに変わりはありません。
兄弟が資金を持っていなければ、買い取ってもらえる可能性が低い点に留意しておきましょう。
兄弟の共有持分を買い取り単独名義の土地として売却する
一方、兄弟に売却するのではなく、兄弟の共有持分を買い取って単独名義の土地にするも有効な手段の一つです。土地全体として売却できるので市場価格が上がります。
また、土地を自分の単独名義にできるため、売却だけでなく賃貸や建物の建築、土地活用なども自由に検討できます。
共有持分は取り扱いが難しいことから、土地全体を売却するよりも価格は低くなる傾向にあります。個々の条件にもよるため具体的な相場はありませんが、本来の価値の半額ほどになるケースもあります。
兄弟と話し合いもできないほど関係性が悪化している場合は、すぐに売却できる「共有持分のみの売却」が有効です。一方、交渉できる余地がある場合は、共有持分を買い取って単独名義にし、その後土地全体の売却を目指すのがおすすめです。
なお、先述したとおり共有持分を買い取る際にはまとまった資金が必要になります。兄弟が納得すれば買取価格を相場より下げてもらえる可能性もありますが、資金がなければ買取はできないため、注意しておきましょう。
「共有物分割請求訴訟」で土地を分割する
共有者同士の話し合いで解決できない場合には、裁判所へ「共有物分割請求」を行う方法もあります。
共有物分割請求訴訟とは「共有している土地の分割」を請求し、共有状態を解消する法的手続きです。
当事者による「土地の分割を求める協議」で話がまとまらない場合、裁判所に訴訟を提起できます。
裁判では、状況に応じて「代償分割」「換価分割」「現物分割」のどれかを使って土地を分割するよう判決が下されます。裁判でどの分割方法になるのかは、土地の性質や共有者の事情などを踏まえて裁判官が判断します。
そのため、自分の希望どおりに分割できるとは限りません。
判決が出ると当事者の意思で自由に内容を変えることはできません。なお、不服がある場合は上級審へ控訴することは可能です。
ただし、控訴する場合は「共有者全員を被控訴人にする必要がある」「一審より不利な判決が出る可能性がある」点に注意が必要です。
また、共有物分割訴訟を起こす際には高額な弁護士費用が発生するうえ、判決が下されるまでに時間がかかります。さらに訴訟を起こすと共有者全員を相手にすることになるため、人間関係に悪影響を及ぼす可能性も高いです。
実際に、「訴訟をきっかけに親族関係が断絶状態になった」というケースは少なくありません。
このように、共有物分割請求訴訟には多くのデメリットがあります。
そのため、実務上は、まず協議や持分整理を試み、それでも解決が難しい場合に法的手続きを検討する流れが一般的です。
特別な事情がない限り、兄弟と土地の売却で揉めているときは、自分の共有持分を業者に売却する方法がおすすめです。
土地の相続から売却までの手順
土地の相続から売却までの手順は、一般的に以下のとおりです。
- 相続人全員で土地の相続について話し合う(遺産分割協議)
- 遺産分割協議書を作成する
- 土地の相続登記をする
- 不動産業者に依頼して土地を売却する
- 売却益を分配する
もっとも、実際の相続不動産の売却は、単純にこの順番どおり進むとは限りません。
相続人同士で意見がまとまらない、遺言書の内容に不明点があるなど、状況によっては想定以上に時間を要するケースも少なくありません。
実際の売却相談でも、「相続したらすぐ売れると思っていたが、権利整理だけで半年以上かかった」というケースは珍しくありません。
そのため、相続不動産を売却する際は、単に売却価格だけを見るのではなく、「どの手続きで時間がかかりそうか」を早い段階で整理しておくことが重要です。
ここからは 、1つずつ順番に解説していきます。
1.土地の相続について話し合う
まずは、土地を誰が相続するのか、売却するのか、共有名義にするのかなどを、兄弟間で話し合いをしましょう。
このとき、最初に確認したいのが遺言書の有無です。遺言書がある場合は原則として遺言書のとおりに遺産分割をおこないます。
遺言書が遺産のすべてについて指定している場合は、基本的に遺産分割協議は不要です。
ただし、遺言書が一部の財産しか指定していない場合は、指定されていない財産について遺産分割協議が必要になります。
特に自筆証書遺言では、「実家を長男へ相続させる」とだけ記載され、預貯金や他不動産について何も触れられていないケースも珍しくありません。
なお、相続人全員が合意すれば遺言書に従わず、遺産分割協議によって遺産分割の方法を決めることも可能です。
このとき注意すべきは、共有名義での相続です。
実務上は「平等だから」という理由だけで共有名義を選択し、その後にトラブル化するケースもよく見られます。
たとえば、当初は兄弟関係が良好であり、とりあえず法定相続割合で共有するといったケースもあります。
しかし、実際のご相談でも、相続後に「固定資産税だけ払い続けている」「空き家管理を1人だけが負担している」といった不満が積み重なり、共有状態の解消相談につながるケースは少なくありません
そのため、この段階では単に「誰が何を相続するか」だけでなく、将来的に管理・売却しやすい形になっているかまで含めて検討することが重要です。
遺産分割協議では土地の相続を含め、すべての遺産をどのように分割するのかを細かく決定します。遺産の分割方法が決まったら次のステップに進みましょう。
2.遺産分割協議書を作成する
相続人全員が相続の内容に合意したら、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書とは、遺産分割協議で決定した遺産の分割方法や割合などを記載した書面のことです。
相続登記や相続税申告を行う際に、遺産分割協議書の提出を求められるため、遺産分割協議を行った場合は基本的に作成しておくことになります。
なかには、簡単なメモ程度で済ませてしまい、後から問題になるケースも少なくありません。
たとえば、相続した土地を売却し、その代金を分配する「換価分割」で合意を得たとします。このとき、遺産分割協議書で「解体費を誰が負担するのか」「測量費をどう分けるのか」まで決めておかないと、売却直前で話が止まるケースも考えられます。
実際の売却の現場でも、「売却には合意していたが、解体費200万円の負担割合で揉めた」というケースは珍しくありません。
また、代償分割では「いつまでに支払うのか」「分割払いを認めるのか」まで決めておかないと、後々未払いトラブルにつながるケースもあります。
そのため、内容によっては司法書士・弁護士・税理士などの専門家へ相談しながら進めると安心です。
遺産分割協議書の書き方について、詳細は以下の記事を参考にしてみてください。
3.土地の相続登記をする
遺産分割協議書を作成したら、土地の相続登記をします。相続登記は、被相続人名義の不動産を相続人の名義に変更することです。
相続登記の申請は2024年4月1日から義務化されており、遺産分割が成立した日から3年以内に申請をしなければなりません。また、遺産分割によって取得した場合は、遺産分割が成立した日から3年以内の申請が必要です。
正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料を課せられる可能性があります。
相続登記は最寄りの法務局で申請できます。申請方法は窓口、郵送、オンラインの3つが用意されています。
もっとも、実務上は、相続登記で想定以上に時間がかかるケースも少なくありません。特に多いのが戸籍収集です。
実際に、被相続人が転籍を繰り返していたり、婚姻・離婚歴が複数あったりといった事情から、全国の役所へ何十通も戸籍請求を行い、数ヶ月以上かかったという方もいらっしゃいました。
また、相続登記が長年放置されている「数次相続」では、現在の相続だけでなく、過去の相続関係まで整理する必要があります。
たとえば、土地が祖父名義のまま父が亡くなった、父の相続手続きもしないまま現在に至ったというケースでは、祖父→父→現在相続人、という複数段階の相続整理が必要です。
実務上も、共有者が10人以上に増えていたり、一部相続人の所在が不明になっていたりするケースがあります。
そのため、権利関係が複雑な場合には、司法書士へ相談しながら進めるケースが一般的です。
土地の相続登記をする方法について、詳細は以下の記事を参考にしてみてください。
4.不動産業者に依頼して土地を売却する
土地の名義変更の完了後は、不動産業者に依頼して土地の売却活動を進めます。
このとき、土地を単独名義で相続している場合は、相続した人が売却手続きを進めれば問題ありません。
一方、共有名義で相続している場合は、土地全体を売却するために共有者全員の合意が必要です。ほかにも、売買契約を結ぶ際には全員分の身分証明書や印鑑証明書、立会いなどが求められます。
実際の売却現場でも、「売却には賛成だった共有者と急に連絡が取れなくなった」「1人だけ価格に納得せず契約直前で止まった」「遠方共有者の日程調整ができない」といった事情で売却が長期化するケースは珍しくありません。
そのため、最終的に相続人同士で売却益を分配するとしても、代表者の単独名義で売却活動に取り組んだ方がスムーズです。
なお、単独名義でも共有名義でも、土地の売却活動は基本的に不動産業者と協力しながら進めます。買い手が見つかったら売買条件などを話し合い、納得できた段階で売買契約を結びましょう。
また、買取を利用したり、解体後に更地にして売るなど売却方法には複数の選択肢があります。
「時間より価格重視」「早く手放したい」「管理負担をなくしたい」「近隣トラブルを避けたい」など、土地売却において重視するポイントは人によって異なるでしょう。
そのため、売却方法は価格だけでなく、土地状況・共有関係・売却期限なども踏まえて比較検討することが重要です。
5.売却益を分配する
買い手から売買代金を受領し、土地を引き渡せば売却活動は終了です。
最後に土地の売却益を相続人に分配します。分配の割合や方法については、遺産分割協議で取り決めた内容に従いましょう。
実務上は「売却価格=手元に残る金額」ではない点に注意が必要です。
土地売却時には、仲介手数料や登記費用、譲渡所得税などの費用が発生します。場合によっては建物の解体費用や測量費がかかるケースもあるでしょう。
特に古家付き土地では、解体費用だけで数百万円かかるケースも珍しくありません。
また、空き家期間が長かった場合には、残置物処分や樹木伐採、越境物対応などで追加費用が発生することもあります。
実際の売却現場でも、「想定していたより手残りがかなり少なかった」というケースは珍しくありません。
そのため、実務上は「いくらで売れるか」だけでなく、最終的にいくら残るのかまで試算しながら分配方法を検討することが重要です。
相続した土地を売却する際の注意点
相続した土地を売却する場合は、通常の不動産売却とは異なり、相続特有の税務・登記・権利関係の確認が必要になります。
実際の相続不動産の売却では、「名義変更が終わっていなかった」「共有者同士で意見がまとまらなかった」「想定より税金負担が大きかった」「古い土地で境界問題が見つかった」といった事情から、売却まで想定以上に時間がかかるケースも少なくありません。
特に相続不動産は、「売却価格」だけでなく、税負担や権利関係、相続人間の合意形成将来的な管理負担まで含めて整理する必要があります。
実際のご相談でも、「とりあえず売却活動を始めたが、途中で手続きが止まった」というケースは珍しくありません。
そのため、売却前には以下のポイントを事前に確認しておくことが重要です。
- 土地の売却には、譲渡所得税がかかる
- 譲渡所得税の軽減を受けるには「相続から3年以内の譲渡」が条件
- 「被相続人の名義」のままでは売却できない
それぞれの注意点について、詳しくみていきましょう。
土地の売却には譲渡所得税がかかる
相続した土地を売却して利益が出た場合には、譲渡所得として所得税・住民税の課税対象になります。
不動産を売却した場合は、会社員の給与収入や自営業者の事業収入などとは別に「譲渡所得」として計算します。
譲渡所得税は、売却代金から不動産の購入代金や諸費用などを差し引いた譲渡所得に、その不動産の所有期間に応じた一定の税率をかけて税金を計算します。
譲渡所得の税率は、次のとおりです。
| 所有期間 |
国税 |
地方税 |
合計 |
| 5年以内(短期譲渡所得) |
所得税30%、復興特別所得税0.63% |
住民税9% |
合計39.63% |
| 5年超(長期譲渡所得) |
所得税15%、復興特別所得税0.315% |
住民税5% |
合計20.315% |
※相続した不動産を売却した場合の所有期間は、相続した日ではなく、被相続人(亡くなった人)が取得した日から売却までの期間で判定します。
参照:国税庁「土地や建物を売ったとき」
たとえば、親が30年以上前に取得した土地を、子どもが相続後すぐ売却した場合でも、「長期譲渡所得」として扱われるケースがあります。
この点は実務上も誤解されやすく、「相続したばかりだから短期譲渡になると思っていた」という声も聞かれます。
また、相続不動産の売却で実務上よく問題になるのが、「取得費資料が不足しているケース」です。
実際のご相談でも、「売買契約書が残っていない」「建築費関係書類が見当たらない」「被相続人しか詳細を把握していなかった」といった事情から、取得費を客観的に立証しづらいケースは少なくありません。
取得費を合理的に説明できない場合、税務上は「概算取得費」として、売却価格の5%を取得費として計算する扱いになることがあります。
もっとも、実際の購入価格より大幅に低い金額になるケースもあり、その結果、譲渡所得税の負担が想定以上に大きくなることがあります。
たとえば、実際には2,000万円で購入した土地でも、取得費資料が十分に残っていなければ、4,000万円で売却した際の取得費が概算取得費200万円(売却価格の5%)として扱われる可能性があります。
実務上も、「思っていた以上に税負担が大きかった」というご相談は少なくありません。
そのため、相続にあたって土地を売却する方針が固まれば、以下のような資料は早めに確認しておくことが重要です。
- 売買契約書
- 領収書
- ローン契約書
- 建築関係資料
- 登記情報
- 固定資産税関係資料
譲渡所得税の軽減を受けるには「相続から3年以内の譲渡」が条件
相続税がかかる場合は、原則として遺産を相続したら、10か月以内に相続税の申告と納付をおこなわなければなりません。
その後、相続した土地を売却すると、先述したとおり譲渡所得税の課税対象になる可能性があります。
ただし、相続で取得した土地を売却するとき、売却日が「相続税の申告期限の翌日から3年以内」であれば、納めた相続税を土地売却の経費(取得費)として加算できる特例があります。
これを「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」といい、譲渡所得を低くして計算できるので、課税額の軽減につながります。
この特例を受けるための条件として、以下の3つが設定されています。
- 相続や遺贈により財産を取得した者であること
- その財産を取得した人に相続税が課税されていること
- その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
実務上、この「3年以内」は非常に重要なポイントです。
実際の売却現場でも、遺産分割協議が長引いたり、共有者間調整に時間がかかったりしたなどの事情から、特例期限を過ぎてしまうケースもみられます。
特に共有不動産では、共有者の人数が多いほど意思決定に時間がかかる傾向があるため、この点に注意が必要です。
また、古い土地では、越境問題や境界未確定、古家解体や残置物撤去などで売却準備に半年〜1年以上かかるケースもあります。
実際のご相談でも、「売却価格の話以前に、境界確定だけでかなり時間を要した」というケースは珍しくありません。
そのため、売却を検討している場合は、「まだ先だから」と考えず、まずは期限だけでも早めに確認しておくことが重要です。
なお、特例を受けるためには、譲渡所得の確定申告書に次の書類を添付する必要があります。
- 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書【土地・建物用】)
相続で取得した土地を売却したときは、この特例を忘れずに申告しましょう。
税務判断は個別事情によって異なるため、税理士へ相談しながら進めるのもおすすめです。
参照:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
「被相続人の名義」のままでは売却できない
換価分割の解説でも触れましたが、遺産である土地は相続登記によって名義変更をしなければ売却できません。
被相続人名義のままでは、原則として売買契約や所有権移転登記を進めることはできません。
相続登記は2024年4月1日から義務化されており、「相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内」に申請する必要があります。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性もあるので注意しましょう。
弊社がみてきた中でも、相続を「あとでまとめてやろう」と考え、長期間放置されているケースは少なくありません。
しかし、相続登記を放置していると「土地の売却活動が進まない」「相続人が増えて権利関係が複雑化する」などのおそれがあります。いざ登記をしようとした際に、戸籍などの登記に必要な書類を入手しにくくなるかもしれません。
また、売却直前になって相続登記未了が発覚し、買主とのスケジュール調整が難航するケースもあります。
特に近年は、買主側や金融機関側も権利関係確認を厳格に行う傾向があり、名義未整理の状態では売却手続きが止まりやすくなっています。
そのため、売却を検討している場合は、遺産分割協議や相続税申告と並行しながら、早めに相続登記の準備を進めることが重要です。
相続税の申告期限は10ヶ月以内と定められているため、売却を検討している場合は、相続登記による名義変更も並行して進めると良いでしょう。
特に、数次相続や共有名義、相続人が多い、古い不動産であるといったケースは手続きが複雑化しやすいため、必要に応じて司法書士などの専門家へ相談しながら進めると安心です。
弊社は1500以上の士業事務所と連携しているため、共有名義や相続が複雑になっている土地についても、必要に応じて専門家のご紹介が可能です。
まとめ
相続した土地の売却手続きで意見が分かれたときは、単独名義なのか共有名義なのかによって対処法が異なります。
単独名義であれば、兄弟間で意見が分かれていたとしても、原則として所有者自身の判断で売却を進めることが可能です。
そのため、相続前の段階であれば、遺産分割協議の中で「将来的に管理・売却しやすい形になっているか」という視点も踏まえ、可能な範囲で単独名義に整理できないか検討することが重要です。
実際に、「平等だから」という理由で共有名義にした結果、数年後に売却・管理方針で意見が対立し、共有状態の解消に苦慮するケースは少なくありません。
一方、すでに共有名義で相続している場合、土地全体を売却するために共有者全員の同意が必要となるため、兄弟で意見が分かれていると売却が困難になります。
話がまとまらなければ、状況に応じて以下のような対応が検討できます。
- 他共有者へ持分を売却する
- 他共有者の持分を取得して単独名義にする
- 自分の共有持分のみを売却する
- 必要に応じて法的手続きを検討する
共有持分は利用や処分に制約があるため、一般の買い手が見つかりにくい傾向があります。
実際の共有持分売却の相談でも、「一般の不動産会社では取り扱いが難しいと言われた」というケースは少なくありません。
そのため、共有不動産を扱った実績のある不動産会社へ相談し、土地の状況や共有関係を踏まえながら、仲介・買取・共有整理など複数の選択肢を比較検討することが重要です。
また、共有者間で意見対立がある場合や、遺産分割・相続登記・税務面などで不安がある場合には、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士などの専門家へ相談しながら進めることも検討してみてください。
相続した土地の売却でよくある質問
被相続人として、相続トラブルの防止や節税についてできることはありますか?
生前贈与であらかじめ土地を公平に贈与しておけば、相続人のトラブルを防ぐ効果があります。相続時精算課税制度などの特例で節税することも可能なので、弁護士や税理士に相談してみましょう。
相続と生前贈与とでは、どちらの方が税金の負担が少ないですか?
相続税と贈与税のどちらが節税になるかというと、基本的には「場合による」としかいえません。
税率の観点からいえば「相続税のほうが低くなる」といえますが、贈与税は年間110万円の基礎控除があります。基礎控除の枠内で少しずつ贈与すれば、理論上は課税されることなく財産を贈与できるのです。
上記の基礎控除だけでなく、税金の計算や制度は非常に複雑なため、節税については税理士に相談してみましょう。税理士なら個々のケースにあわせた最適な節税方法を提案できます。
相続税はどのように計算するのですか?
相続税は基本的に「(相続財産の合計額-基礎控除額)×税率-基礎控除額」で計算をします。遺産に土地が含まれる場合は、土地の相続税評価額を算出するところからはじめなくてはなりません。
土地の評価は、原則として「路線価(その道路に面している土地1㎡あたりの価額)」を用いて求めるのですが、地域によっては路線価が設定されていないケースもあります。その場合、固定資産税評価額を用いて土地を評価する「倍率方式」という方法で計算をします。
なお、実際の土地の評価は現状によって各種補正がかかるケースもあり、計算方法が非常に複雑です。そのため、基本的には不動産鑑定士に依頼するようにしましょう。