相続が発生したときにおける法定相続分の基本ルール
法定相続分とは、「法律で定められた相続の持分」です。
文字を見るだけでも、なんとなく相続の際の「基準となる取り分」であることはわかると思います。
しかし、実際に相続が発生したとき、法定相続分をどのように取り扱うかについては曖昧な人も多いのではないでしょうか。
相続が発生したときにおける法定相続分の基本ルールは、売却する際にも必要な知識です。まずは、相続時における法定相続分の基礎知識を確認していきましょう。
法定相続分とは「民法で定められた相続の取り分」
法定相続分は、民法で定められた相続の取り分です。
遺言による相続方法の指定がなく、相続人全員に異議がなければ、法定相続分どおりに遺産を分割します。
法定相続分とは、民法で定められた相続の取り分について、各相続人がどれくらいの権利をもっているかを表しているのです。
参照:e-Govポータル「民法第900条」
「遺言」や「遺産分割協議」の方が優先される
相続において、財産の分割が必ず法定相続分どおりになるとは限りません。
被相続人の遺言によって、相続割合や分割方法が指定されていれば、そちらが優先されます。
また、遺産分割協議で相続人すべてが同意すれば、法定相続分を無視した相続が可能です。
法定相続分はあくまで原則であり、遺言や遺産分割協議で別の取り決めをすれば、法定相続分とは異なる分割も一般的におこなわれます。
法定相続分と遺留分の違い
法定相続分と似た用語で「遺留分」というものがあります。
遺留分とは、法律で兄弟姉妹を除く法定相続人に最低限保障される相続財産の割合です。遺言や生前贈与によって遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は「遺留分侵害額請求」を行使することで、侵害分について金銭での補填を求めることができます。
残された配偶者や子供が一方的な不利益を受けないために、ある程度の財産を確保できるようにした制度です。
なお、2019年7月施行の改正民法により、遺留分制度は「遺留分減殺請求権」から「遺留分侵害額請求権」に変更されています。改正前は遺留分を侵害された相続人が現物(不動産そのものなど)を取り戻す権利でしたが、現在は金銭での清算を求める権利となっており、不動産の共有関係が複雑化するリスクが軽減されています。
| 法定相続分 |
・民法で定められた相続の割合
・遺言や遺産分割協議が優先される |
| 遺留分 |
・民法で定められた相続人が最低限取得できる財産の割合
・遺言や遺産分割協議で遺留分を無視されたときは他の相続人に請求できる |
参照:e-Govポータル「民法第1042条」
法定相続分の計算方法
法定相続分は、亡くなった人との続柄や、法定相続人が何人いるかで決まります。
- 相続人が配偶者と子供のときは、各1/2
- 相続人が配偶者と直系尊属のときは、配偶者は2/3、直系尊属は1/3
- 相続人が配偶者と兄弟姉妹のときは、配偶者は3/4、兄弟姉妹は1/4
配偶者は常に相続人となります。それに加えて、亡くなった人に子供がいなければ直系尊属(被相続人の父母や祖父母)が、直系尊属もいなければ被相続人の兄弟姉妹が相続人として加わります。
また、子供や直系尊属が複数人いるときは、各法定相続分を該当の人数で割ります。
例えば、3,000万円の遺産を配偶者と子供2人で相続する場合、
・母親は「3,000万円×1/2=1,500万円」
・子供は「3,000万円×1/2÷2人=750万円」
となり、配偶者が1,500万円、子供がそれぞれ750万円を取得します。
遺産分割が終わってなくても「法定相続分どおりに共有する登記」は可能
不動産の相続登記は遺産分割協議が終わってから申請するのが通常ですが、法定相続分どおりの共有名義にするのであれば、遺産分割協議で合意する前に申請することも可能です。
法定相続分の登記であれば、各相続人が単独でおこなえます。
例えば、5,000万円の相続不動産があり、相続人が配偶者・子供A・子供Bだったとします。
「配偶者1/2、子供A1/4、子供B1/4」の割合で不動産を共有名義にするのであれば、各相続人がそれぞれ単独で、他の相続人から同意をもらわなくても登記可能です。
なお、2024年4月1日からは相続登記が義務化されており、相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請を行うことが法律上の義務となっています。正当な理由なく申請を怠った場合は、10万円以下の過料が科される可能性があるため、早めの対応が必要です。
遺産分割協議が長期化しそうな場合は、「相続人申告登記」を行うことも検討してください。相続人申告登記は、相続人であることを登記する手続きで、遺産分割が成立していない段階でも簡易的に相続登記の申請義務を履行できる手段です。
遺産分割が成立した後に改めて相続登記を行う必要はありますが、遺産分割が長期化しそうな場合の選択肢として覚えておくとよいでしょう。
ちなみに、相続自体は被相続人の死亡によって開始しますが、どの財産を誰が取得するかは遺産分割協議が終わるまで確定しません。遺産分割協議が終わるまで、相続財産は相続人の共有財産とみなされるのが原則です。
遺産分割協議で「法定相続分以外の分割」が決まれば登記の修正が必要になる
法定相続分より、遺産分割協議の結果の方が優先されるのは先に解説したとおりです。
遺産分割協議の完了前に「法定相続分どおりに共有する登記」をしても、その後に法定相続分とは違う分割が決まった場合、登記をし直す必要があります。
登記の手間や費用が二重にかかってしまうので、遺産分割協議前の登記申請は慎重に考えてからおこないましょう。
遺産分割協議で相続人が合意しなければ「調停・審判」で相続割合を決定する
遺産分割協議が長引き、当事者だけでは相続を終えられない場合、家庭裁判所に申し立てることで相続割合を決められます。
裁判所の手続きには順序があり、最初に遺産分割調停を申し立てるのが一般的です。調停は裁判所の調停委員が間に入りますが、あくまで話し合いの場であり、相続人同士の和解による解決を目指します。
調停で和解できなければ、次は遺産分割審判に移行します。審判では、裁判官が相続人の主張と提出された証拠を踏まえて遺産の分割方法を決定します。
調停から審判まで進むと、決着までに1〜3年かかるケースも珍しくなく、相続財産を取得するまでに大きな時間がかかります。実務上、遺産分割調停は1回の期日が1〜2時間程度で、月に1回程度のペースで進行するため、調停だけでも半年〜1年程度かかることが多い印象です。
ちなみに、遺産分割そのものは調停・審判で行われ、通常の民事訴訟とは異なります。ただし、遺産分割の前提条件(遺産の範囲や遺言書の有効性など)に争いがあるときは、訴訟によって解決する場合があります。
相続不動産の法定相続分を売却する3つの方法
相続不動産の法定相続分を売却する具体的な方法として、以下の3つがあげられます。
- 1.不動産を「法定相続人の共有名義で登記してから売却」する
- 2.相続を終わらせる前に法定相続分を「法定相続人の間で売買」する
- 3.遺産分割前に「相続分(法定相続分を基準)」を第三者へ譲渡する
重要なのは、売却するタイミングです。相続前に売却すれば、相続に関する労力を大きく減らせます。
また、だれに売却するのかも大切なポイントといえます。第三者に売却したいのであれば、相手によっては売却価格が低くなるかもしれません。
それぞれの方法について、詳しく解説していきます。
方法1.不動産を「法定相続人の共有名義で登記してから売却」する
相続不動産は、名義を亡くなった人から相続人へ変更することで売却が可能になります。
そのため、相続不動産を法定相続人の共有名義で登記してしまえば「売却するのは共有不動産全体か、自分がもっている共有持分か」という話になります。
※共有持分・・・不動産を複数人で共有しているとき、それぞれの共有者がどれくらいの所有権をもっているか表す言葉
それぞれの売却パターンについては、下記の関連記事に詳しく解説しているので参考にしてください。
方法2.相続を終わらせる前に法定相続分を「法定相続人の間で売買」する
遺産分割協議を経ずに、自分の法定相続分を売却することも可能です。
例えば、法定相続人が配偶者・子供A・子供Bだったとします。法定相続分はそれぞれ配偶者1/2、子供A・Bがそれぞれ1/4ずつです。
このとき、配偶者が子供Bに対して、自分の法定相続分1/2を売却することが可能です。
上記の例だと、売買によって子供Bの法定相続分が3/4となります。
自分の法定相続分を売却したときは、その証明ができるように「相続分譲渡証明書」を作成しましょう。決まった書式はないため、下記の画像を参考にしてみてください。
なお、決まった書式はありませんが、後日この証明書を使って不動産の相続登記を行うため、書類には譲渡人の実印と印鑑証明書が必須となります。認印では登記手続きができないため、書類作成時に必ず実印を使用し、印鑑証明書も併せて取得しておきましょう。
法務局や裁判所での手続きでは、本人の意思確認が厳格に求められるため、最初から実印・印鑑証明書を揃えておくことが重要です。
「法定相続人の間で売買」と「相続放棄」の違い
自分の法定相続分を他の法定相続人に譲りたいのであれば、相続放棄をするという方法もあります。
相続放棄の場合、放棄した相続人は最初からいなかったものとして扱われるのが「法定相続人の間で売買」と異なる点です。
例えば、被相続者の子供が相続放棄をした場合、他に子供がいなければ、直系尊属が相続人になります。相続の配分も「相続人が配偶者と直系尊属のとき」で計算し、配偶者は2/3、直系尊属は1/3となります。
また、相続放棄の性質上「だれに自分の持分を譲るか」を選べない点も、持分の売買とは異なる部分です。
方法3.遺産分割前に「相続分(法定相続分を基準)」を第三者へ譲渡する
相続開始後、遺産分割協議が成立する前であれば、相続人は自分の相続分、すなわち相続財産全体に対する持分を、他の相続人だけでなく第三者へ譲渡(売却)することも可能です。一般に「法定相続分の売却」と表現されることがありますが、法的には特定の不動産の持分を売却しているわけではなく、相続財産全体に対する相続分を譲渡している点に注意が必要です。
相続分の譲渡先としては、法定相続人以外の親族のほか、相続関連の取引を扱う不動産業者などが挙げられます。たとえば、被相続人の負債や固定費を早期に清算する必要がある場合や、遺産分割協議が長期化する見込みで、先に現金化したい事情がある場合に選択されることがあります。
もっとも実務上、相続分譲渡は一般的な選択肢とは言えず、相続分の譲受人となる第三者を見つけるのが難しいケースが多いのが実情です。
また、相続分を譲渡する際は、他の共有相続人に対して譲渡の通知を行うのが基本となります。これは、他の相続人には民法第905条に基づく「相続分の取戻権」が認められており、譲渡から1ヶ月以内であれば、他の相続人が譲渡の対価と費用を償還することで、譲渡された相続分を取り戻すことができる仕組みがあるためです。
実務上、この譲渡通知は、言った・言わないのトラブルを防ぎ、1ヶ月の期間計算の証拠を残すために、必ず「内容証明郵便(配達証明付き)」で行うのが基本です。
なお、相続分を第三者へ譲渡した場合、譲受人が代わりに遺産分割協議に参加することになります。ただし、相続分にはプラスの財産だけでなくマイナスの財産(借金など)も一緒に引き継がれる性質があるため、債権者の合意がない限り、譲渡人(元の相続人)が借金の返済義務を完全に免れるわけではない点には注意が必要です。
相続分の譲渡は、遺産分割を待たずに現金化できる点や、相続トラブルから距離を置ける点では有効な手段といえますが、その一方で、遺産分割の結果次第では予期せぬ金銭的負担を負うリスクも伴います。
そのため、安易に判断するのではなく、将来の分割結果を見据えたうえで、弁護士・税理士などの士業や、相続案件の取扱実績がある不動産会社に相談しながら慎重に検討することが重要です。とくに、相続分の譲渡契約は一度成立すると原則として解除できないため、契約前に専門家の意見を聞いておくことが望ましいでしょう。
相続前の売却は「特定の財産だけ選んで売却できない」点に注意
相続前に法定相続分を売却する際には、1つ注意点があります。売却できるのはあくまで持分であり、相続財産から特定の財産だけを選んで売ることはできないという点です。
例えば、相続財産が現金・不動産・証券と何種類かあったとします。
この場合、仮に法定相続分が1/2あったとしても、不動産の1/2だけ売却することはできません。
相続前の売却は、言い換えれば「相続で財産を受け取る権利」を売却しているともいえます。「どのような内訳で受け取れるのか」は、他の相続人と話し合わなければなりません。
相続財産のうち特定の財産だけ売却できるのは、相続登記の後となります。
相続不動産の法定相続分を売却するメリット
相続不動産の法定相続分を売却すべきかどうか、悩んでいる人も多いでしょう。
相続は法制度や権利関係が複雑なため、法定相続分を売却するとどうなるか具体的にイメージしづらいと思います。
売却した場合のメリットを紹介しますので、それらを比較して、自分の状況に合った選択をしましょう。
【メリット1】遺産分割をスムーズに終えられる
1つ目のメリットは、遺産分割をスムーズに終えられる点です。
遺産分割協議や相続登記など、相続にはとにかく手間と時間がかかります。
弁護士や司法書士に手続きを依頼することで、相続人本人の負担を軽減することはできますが、それでも遺産分割協議の調整や相続登記が完了するまでには相応の時間がかかります。
「とにかく早く相続から距離を置きたい」という場合には、法定相続分の売却は有効な選択肢の一つです。ただし、後述するように相続人間のトラブルや金銭的負担のリスクもあるため、状況を踏まえて慎重に判断することが重要です。
【メリット2】不動産が共有名義になってしまうのを避けられる
不動産は物理的に分けにくい財産であるため、相続の際に共有化するケースは少なくありません。法定相続分に合わせて共有持分を設定すれば、一見公平な分割ができるように見えます。
しかし、共有名義の不動産は管理や処分に共有者間の同意が必要であり、将来的なトラブルになりやすい状態です。
実務上、最も注意したいのは「数次相続」のリスクです。共有者の一人が亡くなると、その持分はさらに次世代の相続人へ分割されていくため、世代を重ねるごとに共有者の数が増えて権利関係が複雑化していきます。弊社へのご相談でも、「祖父名義の不動産を整理しようとしたら、現在の共有者が10人以上になっていた」という事例は珍しくありません。
そのため、不動産を共有名義にするのは基本的に避けるべきといえるでしょう。
相続不動産の法定相続分を売却するデメリット
法定相続分の売却は、遺産分割を待たずに現金化できる点で有効な選択肢となる一方、相続人同士の関係や売却条件によっては、思わぬ不利益が生じることもあります。とくに、他の相続人とのトラブルや、買主が見つかりにくいことによる価格低下は、事前に理解しておきたい代表的なデメリットです。
以下では、法定相続分を売却する際に注意すべき主なデメリットについて、具体的に解説します。
【デメリット1】勝手に売却すると相続人の間でトラブルになる恐れがある
他の相続人に相談せず法定相続分を売却すれば、トラブルになるかもしれません。
とくに、第三者に売却した場合、遺産分割に本来関係なかった人が介入してくるので、他の相続人としては心情的に納得しづらいでしょう。
今後の関係性も考慮するなら、他の相続人には一言相談すべきかもしれません。場合によっては、相談を聞いた他相続人が買い取ってくれる可能性もあります。
逆に、他の相続人との仲がすでに悪化している状態なら、いち早く関係を断つために法定相続分を売却するという考え方もあるでしょう。
【デメリット2】買主が見つかりにくく価格相場も低くなりがち
すでに解説しましたが、法定相続分だけを売り出しても、一般的な不動産業者や投資家はまず購入しません。
需要が少なければ、市場価格も低くなる傾向があります。実務的な感覚として、法定相続分や共有持分のみの売却価格は、不動産全体を売却した場合の持分相当額と比べて30〜70%程度に下がるケースが少なくありません。
これは、買主側が「他の相続人や共有者との調整コスト」「将来的な共有物分割請求の手間」「再販までの期間リスク」などを織り込んで価格を算出するためです。
少しでも有利な条件で売却したい場合は、共有持分の取扱実績がある不動産会社に相談するのが現実的です。
共有持分や相続分などの特殊な物件を取り扱う不動産会社には、こうした物件の買い手となる投資家や同業者のネットワークが集まりやすいため、一般的な仲介市場では成立しにくい取引にも対応してもらえる可能性があります。仲介と買取の両方の選択肢を比較したうえで、自分の優先順位に合わせて売却方法を選びましょう。
相続不動産の法定相続分を売却すべき状況とは?
相続不動産の法定相続分を売却するメリットとデメリットを紹介しましたが、次はより具体的に、どのような状況であれば売却すべきかを紹介していきます。
あくまで代表的なケースなので、紹介するもの以外でも売却すべき状況はあると思います。
自分の状況を検討するための、標準的な事例として参考にしてください。
遺産分割で他の相続人と揉めている場合
メリット&デメリットでも少し触れましたが、遺産分割でトラブルとなっており、解決に時間がかかるときは法定相続分の売却を検討してみましょう。
遺産分割がまとまらなければ、裁判所による調停や審判に発展します。解決は長ければ数年かかり、その間相続財産は自由に処分・活用できません。
長期間、相続財産に手を付けられないのは損失です。資産運用で収益を増やす可能性や、売却して生活費や教育費に充てる選択肢を潰してしまうことになります。
また、他の相続人と揉め続けるのも精神的に辛いものです。場合によっては仲が悪くなるだけでなく、嫌がらせなどに発展する恐れもあるでしょう。
相続トラブルは単純な利害だけでなく、感情的な理由で対立する場合もあります。遺産分割が長期化して無駄な時間を過ごすより、法定相続分を売却して早めに自分の取り分を確保するのも一つの選択肢といえるでしょう。
相続不動産の価値が低い場合
相続不動産の価値そのものが低ければ、遺産分割前に売却した方がコストパフォーマンスがよいといえます。
遺産分割協議や相続登記に時間とコストをかけても、取得した不動産の市場価値が極端に低い場合、コスト負担に見合わないケースもあります。実務上、相続登記の登録免許税は不動産の固定資産税評価額の0.4%、司法書士に依頼する場合の報酬は1件あたり5〜10万円程度が目安です。
また、不動産は保有しているだけで固定資産税や都市計画税、修繕費といった費用が継続的に発生します。地方の築古物件などでは、年間の固定資産税が数万円程度でも、長期保有を考えると累計で大きな負担になります。
自分で住む予定もなく、収益化や活用の見込みもないのであれば、相続前後のいずれかで売却を検討するのが現実的です。
相続手続きや相続後の不動産管理が面倒な場合
繰り返しになりますが、相続には遺産分割協議や相続登記といった手続きが必要です。他の相続人とトラブルになれば、調停や審判で1〜3年の時間がかかるケースも珍しくありません。
また、不動産は取得後の管理にも手間と費用がかかるものです。日々の清掃や修繕は必須で、放置していると自治体から「助言・指導」「勧告」などが入る可能性があります。
2023年12月13日に改正空家対策特別措置法が施行され、「管理不全空家」というカテゴリーが新たに設けられました。勧告を受けると住宅用地特例の対象から外れ、固定資産税が最大6倍になるリスクもあります。
共有名義で相続してしまうと、不動産の売却や大規模リフォームなどの変更行為には共有者全員の同意が必要となり、日常的な管理行為についても持分の過半数の同意が必要なため、判断や手続きが煩雑になります。
早めに売却することで相続手続きや不動産管理の負担を抑えられるうえ、売却益を生活費や別の資金として有効活用できる可能性も広がります。
まとめ
相続不動産における法定相続分の売却は、遺産分割を待たずに現金化できるという点で有効な選択肢ですが、売却のタイミングや方法を誤ると、相続人間のトラブルや想定外の金銭的負担を招くおそれがあります。
比較的トラブルを回避しやすいのは、いったん法定相続分どおりに共有名義で相続登記をおこなったうえで、不動産全体または自分の共有持分を売却する方法です。
遺産分割の前に相続分を譲渡することも法律上は可能ですが、一般の不動産市場では譲渡先を見つけるのが難しい点や、他の相続人から取戻権(譲渡された持分を取り戻す権利)を行使される可能性もあるため、慎重な判断が求められます。
また、法定相続分や共有持分は、一般的な不動産市場では買い手が限られ、価格が下がりやすいのが実情です。第三者への売却を検討する場合は、共有持分や相続分の取扱実績がある不動産会社に相談し、仲介・買取それぞれの選択肢を比較したうえで判断するのが現実的です。
相続人との関係性、相続財産の内容、早期現金化の必要性などを総合的に踏まえたうえで、自分にとって無理のない方法を選ぶことが重要です。
判断に迷う場合は、弁護士や司法書士などの士業と連携している不動産会社に相談すれば、法的な論点も含めて専門家のサポートを受けながら進めることができます。