亡くなった親の家を売るにはまず相続の基本を理解!所有権はどう移動するのか
亡くなった親の家を売るには、まず相続の基本や仕組みを理解することが大切です。亡くなった親の家は相続財産に該当するため、売却の前後でも相続関係の手続きが絡んでくるからです。相続を正しく理解すれば、売却活動もスムーズに進めやすくなるでしょう。
以下では、亡くなった親の家を売るときに知っておきたい相続や、所有権の移転関係などについて解説します。
相続した親の家は「相続登記」で相続人の名義にする
亡くなった親の家を相続した場合、忘れてはならないのが相続登記です。相続登記とは、不動産の所有者が死亡したときに、不動産の所有権を相続人に名義を変更する手続きです。
亡くなった親の家を相続する際、相続登記が必要な理由は次の通りです。
- 2024年4月1日より相続登記が義務化され、所有権の所得を知ってから3年以内、または遺産分割が成立した日から3年以内にしなければ10万円以下の過料に対象になる可能性がある
- 売却時に売買契約を締結する人と不動産の名義人が異なると売却ができないから
- 名義人が被相続人のままだと権利関係がはっきりせず相続人同士で争いになる可能性がある
要するに、相続登記で相続人の名義にしなければ、売買契約や相続が正しく進められません。
参考:法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地 !」
参考:法務省「不動産を相続した方へ ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」
不動産の相続も法定相続人と相続順位が基本になる
不動産の相続は、現金やそのほか財産の相続と同じく、法定相続人や相続順位を基本とする法定相続で進められます。
法定相続人とは、民法にて定められた「被相続人の財産を相続できる権利を持つ人」です。遺言書がないときは、原則として法定相続人の数に応じて相続財産が平等に分割されます。法定相続人になる可能性がある、被相続人との関係性は次の通りです。
- 配偶者(内縁関係は除く)
- 直系卑属(養子縁組等で法的に養子になった子を含む子ども、子どもが亡くなっているときは孫)
- 直系尊属(法的な養親も含む父母、父母が亡くなっているときは祖父母)
- 兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっているときは甥姪)
ただし、上記に挙げた血縁関係の人なら全員が法定相続人になれるというわけではありません。法定相続人となれるのは、「配偶者」と「一番上の相続順位の血族」のみです。また、配偶者以外の法定相続人には法定相続分が決められており、その割合分のみが相続対象になります。
相続順位 |
血縁関係 |
法定相続分 |
第1順位 |
直系卑属 |
1/2 |
第2順位 |
直系尊属 |
1/3 |
第3順位 |
兄弟姉妹 |
1/4 |
たとえば「配偶者」「子ども2人(孫なし)」「親1人」「兄1人」だった場合、法定相続人は配偶者と子ども2人のみになります。相続財産が1,200万円なら、配偶者600万円、子どもが300万円ずつです。
配偶者も亡くなっている場合は、子ども2人のみが法定相続人で600万円ずつ分け合います。
子どもがいない、または亡くなっているケースなら、配偶者と親1人の2人が法定相続人となります。相続割合は、配偶者800万円、親400万円です。
参考:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」
相続人が複数のときは親の家が共有名義になる可能性がある
相続順位に応じて財産が分配されるのは、不動産の相続の場合も同じです。仮に配偶者と子ども2人が実家を相続したときは、実家の所有権割合(共有持分割合)が配偶者1/2、子どもが1/4ずつになります。
つまり亡くなった親の家を相続する場合、相続人が複数いるときは相続した家が共有名義になる可能性があります。仮に父親・母親・兄・あなたという4人家族構成だった場合に父親が亡くなると、実家の所有権割合は母親1/2、兄1/4、あなた1/4です。
共有名義になると全体を売るのに共有者全員の同意が必要だったり、利用についてほかの共有者と揉めたりなどのリスクがあります。可能であれば、次で解説する遺産分割協議などで単独名義の相続ができるよう進めるのがよいでしょう。
遺産分割協議で「誰が相続するか」「何を相続するか」を決める
相続順位に応じて法定相続人へ相続財産を分ける法定相続は、あくまで基本の方法です。
遺産分割協議なら、法定相続にかかわらず「誰が相続するか」「何を相続するか」を具体的に決められます。分割割合は、相続人同士の同意があれば自由に決めることが可能です。たとえば亡くなった親の家を相続する場合、遺産分割協議によって特定の相続人のみが全所有権を相続できます。
一般的には、「代償分割」「換価分割」「現物分割」のいずれかの方法で分けます。ただし、親が遺言書を残していたときは、遺言書の内容の通りに財産を分ける「指定分割」が最優先です。
遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所で話し合う「調停」や、裁判官が判断する「審判」「訴訟」などへ発展する可能性があります。
1人が不動産を取得する代わりに代償金を支払う「代償分割」
代償分割とは、相続人の1人が不動産のすべてを取得する代わりに、不動産を取得できなかったほかの相続人へ代わりに代償金を支払う方法です。
たとえば3,000万円の実家を子ども3人で相続するときに代償分割をおこなうと、1人が実家の単独名義人となり、単独名義人となった子どもが残り2人に代償金1,000万円ずつ支払うというイメージになります。代償分割は、不動産の相続を希望しているのが1人の場合などで選択されるのが一般的です。
不動産をすべて売却し売却代金を相続人で分ける「換価分割」
換価分割とは、相続する不動産のすべてを売却し、得られた売却代金を相続人で分ける方法です。現金というわかりやすい指標で分けるため、公平に相続しやすいメリットがあります。また、不動産の所有権や相続後の維持管理などにまつわるトラブルを回避できるのも特徴です。
売却せずに土地を平等に分けるなら「現物分割」
現物分割とは、不動産が土地の場合に分筆によって土地を分けて登記し、相続人がそれぞれの土地の所有権を得る方法です。金銭のやり取りが発生せずに平等に分けられるメリットがある一方、建物だと実質的に適用できないデメリットがあります。
遺言書があるときは法定相続順位や遺産分割協議よりも優先する
遺産分割時には、まず被相続人が遺言書を残していないかを確認します。遺言書は法定相続や遺産分割協議よりも効力が強く、相続時には遺言書の内容が何よりも優先されるからです。遺言書の指定による分割を、指定分割と呼びます。
遺言書であれば、本来は法定相続人にならない相手への相続も指定できます。
ただし、相続人が最低限相続できる範囲として民法に定められた「遺留分」を満たせない場合は、あらためて協議をしたり遺留分侵害額請求をしたりなどがおこなわれる可能性があります。
亡くなった親の家を売るための流れ!相続登記から確定申告まで解説
相続の基本をあらかた確認したところで、以下では実際に亡くなった親の家を売るための流れについて、相続登記から確定申告までを解説します。
- 相続人・相続財産の確定をおこなう
- 遺産分割協議や遺言書を基に相続割合を決定する
- 相続登記で親の家の新しい名義人を決定する
- 相続税申告や準確定申告などをおこなう
- 不動産会社を探し販売活動を始める
- 売買契約書の締結・売却代金受取・物件引き渡しをおこなう
- 売却益に応じて譲渡所得税等の確定申告をおこなう
相続人・相続財産の確定をおこなう
亡くなった親の家の相続で最初におこなうのが、相続人と相続財産の確定です。相続人の人数や相続財産の有無・財産価額などが曖昧だと、正しく相続をおこなえません。そのため、相続人調査や相続財産調査などを経てそれらを確定させます。
相続人や相続財産の数が少ない、すでにほとんど把握しているといった場合は、親族が主体の調査でも十分です。
とはいえ相続は権利が複雑に絡み合っており、相続人が把握していない預貯金、株式、借金、未納金などが存在する可能性があります。金融機関、信用情報機関、関係役所、法務局での調査に加えて、相続財産の価額も正確に査定しなければなりません。とくに亡くなった親の家といった不動産の価額は、一般の人が正確に評価するのは難しいでしょう。
さらに相続人調査の場合、「被相続人が離婚・再婚して前の配偶者との子どもがいる」「相続人となる人と連絡が取れない」といったトラブルも想定されます。戸籍謄本を確認する作業もあり、多くの労力や時間が必要になります。
以上のことから相続人・相続財産の確定は、相続に強い弁護士といった専門家にサポート依頼するのがおすすめです。
相続関係が確定しているか否かは、相続放棄の判断や相続税の確定申告など期限が決まっているものに対応するうえでも、早めに進めることが大切です。
遺産分割協議や遺言書を基に相続割合を決定する
相続人・相続財産が確定したら、法定相続、遺産分割協議、遺言書などを基に相続割合を決めていきましょう。まずは相続においてもっとも効力が高い遺言書の有無を確認し、遺言書が見つかったら遺言書の内容にしたがって財産を分割します。
「遺言者がなかった」「遺言書にしたがって分配した」という場合は、次に法定相続通りに相続するか、遺産分割協議で相続割合を決めるかを決定します。
遺産分割協議には、相続人全員の参加が必要です。遺産分割協議で合意した内容は、「遺産分割協議書」として残します。遺産分割協議で相続割合などが決まらなかったら、調停や訴訟に進みましょう。
相続登記で親の家の新しい名義人を決定する
遺産分割協議などで正式に亡くなった親の家の相続先が決まったら、相続登記などで法務局にて登記をおこないます。登記する際には、司法書士に対応を依頼するのが一般的です。相続登記にて親の家の新しい名義人になった人のみが、原則として親の家の売買について対応できます。
<相続登記の主な流れ>
- 相続登記を依頼する司法書士事務所を選定する
- 必要書類の準備や作成をおこなう
- 法務局の窓口での手続き、法務局への必要書類郵送、オンライン申請のいずれかで登記申請する
もし亡くなった親の家に抵当権が設けられているときは、抵当権抹消登記が必要になる可能性があります。抵当権付きの不動産はいわゆる「金融機関から差し押さえられる可能性がある不動産」であるため、一般的な不動産市場での需要がほぼ皆無だからです。抵当権は、主に住宅ローンで不動産を購入したときに付与されます。
抵当権を抹消するには、住宅ローンを完済したうえで法務局で抵当権抹消登記をおこなう必要があります。
法定相続分に応じた相続登記での必要書類
法定相続分に応じた相続をした際の登記の必要書類は次の通りです。
法定相続分の相続
必要書類 |
入手先 |
死亡した親の出生から死亡までの戸籍謄本 |
市区町村役場 |
死亡した親の住民票の除票 |
実家の相続人全員の戸籍謄本 |
実家の新しい取得者の住民票 |
実家の固定資産評価証明書 |
不動産所在地の市区町村役場 |
登記申請書 |
法務局窓口、オンライン申請などで入手し自分で作成 |
委任状 |
登記を司法書士などの専門家に任せる場合 |
収入印紙 |
法務局、郵便局、コンビニなどで必要な登録免許税の金額分 |
返信用封筒 |
郵便局やコンビニなど |
遺産分割協議の結果に応じた相続登記での必要書類
遺産分割協議の結果に応じた相続をした際の登記の必要書類は次の通りです。
必要書類 |
入手先 |
死亡した親の出生から死亡までの戸籍謄本 |
市区町村役場 |
死亡した親の住民票の除票 |
実家の相続人全員の戸籍謄本 |
実家の新しい取得者の住民票 |
相続人の印鑑証明書 |
実家の固定資産評価証明書 |
不動産所在地の市区町村役場 |
登記申請書 |
法務局窓口、オンライン申請などで入手し自分で作成 |
委任状 |
登記を司法書士などの専門家に任せる場合 |
収入印紙 |
法務局、郵便局、コンビニなどで必要な登録免許税の金額分 |
返信用封筒 |
郵便局やコンビニなど |
遺産分割協議書 |
自分で作成する |
ここで注意したいのは、換価分割であっても一度は相続登記が必要になる点です。換価分割は相続時に売却するため「親名義のままでも売却できるのでは」と思われがちですが、被相続人は死亡しているため売買契約を締結できないという前提があります。そのため、換価分割ですぐに売却する場合でも相続登記をおこないましょう。
遺言書に従って相続登記する際の必要書類
遺言書にしたがって相続をした際の登記の必要書類は次の通りです。
遺言書があったときの相続
必要書類 |
入手先 |
死亡した親の出生から死亡までの戸籍謄本 |
市区町村役場 |
死亡した親の住民票の除票 |
実家の相続人全員の戸籍謄本 |
実家の新しい取得者の住民票 |
実家の固定資産評価証明書 |
不動産所在地の市区町村役場 |
登記申請書 |
法務局窓口、オンライン申請などで入手し自分で作成 |
委任状 |
登記を司法書士などの専門家に任せる場合 |
収入印紙 |
法務局、郵便局、コンビニなどで必要な登録免許税の金額分 |
返信用封筒 |
郵便局やコンビニなど |
遺言書 |
事前に親が作成 |
遺言書がありなおかつ相続人以外への相続(遺贈)
必要書類 |
入手先 |
死亡した親の出生から死亡までの戸籍謄本 |
市区町村役場 |
死亡した親の住民票の除票 |
実家の相続人全員の戸籍謄本 |
実家の新しい取得者の住民票 |
実家の固定資産評価証明書 |
不動産所在地の市区町村役場 |
登記申請書 |
法務局窓口、オンライン申請などで入手し自分で作成 |
委任状 |
登記を司法書士などの専門家に任せる場合 |
収入印紙 |
法務局、郵便局、コンビニなどで必要な登録免許税の金額分 |
返信用封筒 |
郵便局やコンビニなど |
遺言書 |
事前に親が作成 |
遺言執行者の印鑑証明書(選任がある場合) |
市区町村役場 |
相続人の印鑑証明書(遺言執行者の選任がない場合) |
遺言執行者選任審判謄本(家庭裁判所の審判で選任している場合) |
家庭裁判所 |
参考:法務局:「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」
相続税申告や準確定申告などをおこなう
亡くなった親の家を売る際に直接関係ないものの、相続時には必ず「相続税申告」や「準確定申告」が必要です。
申告内容 |
概要 |
期限 |
相続税申告 |
相続した財産にかかる相続税を計算し納付する手続き |
被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内 |
準確定申告 |
被相続人が死亡した年の1月1日から死亡した日までの被相続人の所得金額の計算の納税をおこなう手続き |
相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内 |
上記の手続きを期限内に終わらせるためにも、相続関係の調査や遺産分割協議は可能な限り早めに終わらせるようにしましょう。
参考:国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
参考:国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
不動産会社を探し販売活動を始める
亡くなった親の家を相続した後に売却するときは、不動産会社に対応を依頼するのが一般的です。依頼先となる不動産会社は、不動産仲介業者または不動産買取業者のいずれかになります。
不動産仲介業者 |
不動産会社が売主と買主を仲介し売買契約のサポートをするサービス |
不動産買取業者 |
不動産会社が直接不動産を買い取りするサービス |
それぞれのメリット・デメリットを以下で紹介します。
不動産仲介なら情報公開から買主側との交渉などが必要になる
不動産仲介による売却をするには、不動産会社と媒介契約を結びます。その後、媒介契約の内容に応じた販売活動をおこない、買主と交渉して合意を得てから不動産を売却します。不動産仲介で亡くなった親の家を売るメリットは次の通りです。
- 買取よりも高額で売れる傾向にある
- 価格査定、内覧対応、売買契約、登記などをワンストップでサポートしてくれる
- 広告掲載や販売活動サポートなどで買主を探しやすい
一方、仲介のデメリットは次の通りです。
- 買主が見つからない、買主との交渉が難航する、売却まで半年以上かかるなどのリスクがある
- 売却価格に応じた仲介手数料が発生する
- 物件の需要や不動産の都合などによっては対応を後回しにされる可能性がある
媒介契約の違いについては、以下の記事にて詳細を解説しています。
不動産買取なら不動産会社が直接買い取ってくれる
不動産買取による売却をするには、仲介のように媒介契約を結ぶ必要がなく、不動産会社と合意すればすぐに売却できます。不動産買取で亡くなった親の家を売るメリットは次の通りです。
- 一般の不動産市場では需要が低い不動産でも売却しやすい
- 買主を探す必要がなく遅くとも1か月程度で売却できる
- 仲介手数料が一切発生しない
一方、買取のデメリットは次の通りです。
- 仲介よりも売却価格が低い傾向がある
- 仲介に比べて買取に対応している不動産会社が少ない
- 買取業者によっては相場より安い金額を提示して買い取ろうとするリスクがある
売買契約書の締結・売却代金受取・物件引き渡しをおこなう
不動産会社にて売却について合意ができたら、合意内容について売買契約書を作成し締結します。これで売買契約の完了です。売買契約を締結する前には、売却価格の最終確認、引き渡しの時期、重要説明事項の共有など、契約内容をしっかりと見直しておきましょう。
次に、売却代金の支払いがおこなわれます。原則として、不動産の引き渡しや登記は売却代金が相手側から振り込まれた後にしましょう。先に不動産を渡してしまうと、その後に代金が支払われないなどのトラブルに発展する可能性があります。
売却代金が支払われたら、物件や鍵を引き渡して完了です。なお、相続から3年10か月以内なら、取得費加算の特例を使える可能性があります。
売却益に応じて譲渡所得税等の確定申告をおこなう
亡くなった親の家の売却益に応じて発生する譲渡所得税、復興特別所得税、住民税は、売却年の翌年2月16日~3月15日の間に確定申告が必要です。
会社員なら、譲渡所得が20万円超(給与所得と譲渡所得以外に所得がないとき)でないかぎり確定申告は必要ありません。しかし、不動産を売却して20万円以下の譲渡所得に収まるケースはそこまで多くないため、原則として譲渡所得等の確定申告が必要であると思っておいてください。
確定申告は売却益を得た人ごとにおこないます。たとえば換価分割で3人が1,000万円ずつ得た場合、3人がそれぞれで確定申告と納税が必要です。
後述する居住用不動産の3,000万円の特例といった特例措置を適用したいときは、譲渡所得金額にかかわらず必ず確定申告をおこないましょう。
亡くなった親の家を売る前に確認しておきたい注意点
亡くなった親の家を売る前には、親の遺品や不動産の状態などについて、事前に確認しておくべき事項がいくつかあります。以下に示した注意点を知っておくことで、亡くなった親の家の売却がスムーズに進められるでしょう。
- 遺品や不用品などの整理をし家を片付けておく
- 親の家に関する売買契約書など取得費がわかるものを集めておく
- 隣地との境界が確定しているのかを見る
- 複数の不動産会社に査定を依頼し比較検討する
- 親の家の老朽化がひどいときは取り壊して更地にすることも検討する
- 共有名義なら共有者となっている相続人との話し合いが必要になる
それぞれの詳細を解説します。
遺品や不用品などの整理をし家を片付けておく
亡くなった親の家を売る前には、残っている遺品・不用品を整理しておきましょう。家を片付けておくべき理由は次の通りです。
- 家にモノが残っていると買主側に物件の魅力が伝わりづらい
- 引き渡し時には中の物をどのみち移動させる必要がある
- 整理を通じて売却や相続時に必要な書類や物件情報が見つかる可能性がある
遺品や不用品を整理する際には、ほかの相続人や親族の人と相談しながら進めるのがよいでしょう。相続人同士のトラブルを回避しやすくなったり、遺品の整理時の感情面での心理的負担を軽減できたりなどのメリットがあります。
遺品整理の負担が大きいときは、遺品整理に対応している専門業者を利用するのも1つの手です。
親の家に関する売買契約書など取得費がわかるものを集めておく
亡くなった親の家を売る際には、親の家の取得費がわかるものを集めておきましょう。親の家の取得費は売却益を計算する際に必要となるうえに、取得費が多いほど譲渡所得税等を抑えやすいからです。
親の家を売って譲渡所得が発生したら「譲渡所得税」「復興特別所得税」「住民税」でも後述もしますが、取得費がわからないときは、概算取得費として売却価額の5%を適用します。本当の取得費が10%や20%ほどあっても5%が適用されるので、実際よりも多くの税金を支払う可能性があるのです。
親の家の取得費は、親の家に関する「購入時の売買契約書」「建物部分の請負契約書」「仲介手数料の領収書」などで確認できます。
加えて、親の家を売却するときにかかる譲渡費用がわかる書類も集めておくのがよいでしょう。算入した取得費と譲渡費用の金額が大きいほど、譲渡所得税等を安くできます。
隣地との境界が確定しているのかを見る
亡くなった親の家が建っている土地において、境界が確定しているのかは売却前に確認しておきましょう。隣地との境界が未確定なまま売却すると、隣地の所有者とトラブルになったり、買主側からの需要が下がったりなどの問題が発生しやすくなります。
土地の境界が確定してるかどうかは、「確定測量図の有無の確認」や「法務局にて登記簿謄本や地積測量図の確認」などで判断できます。境界が未確定だったときは、土地家屋調査士や測量会社などに境界確定について依頼してください。
複数の不動産会社に査定を依頼し比較検討する
亡くなった親の家を売る際に利用する不動産会社は複数選び、それぞれに査定を依頼して比較検討するのがよいでしょう。査定額やサービスの質は不動産会社ごとで異なるため、1社だけの確認だと「適正に査定しているのか」「対応は誠実なのか」が判断できないからです。
仲介・買取のいずれの方法を選ぶとしても、不動産会社を選ぶときは以下のポイントを意識しておくことが大切です。
- 査定額、担当者の能力、サービス内容、比較検討する
- 取り扱い物件、実績、評判、口コミなどを公式サイトやSNSなどで確認する
- 対応している都道府県や市区町村を確認する
比較検討した後、最終的に依頼する不動産会社を絞り込みます。
親の家の老朽化がひどいときは取り壊して更地にすることも検討する
売ろうとしている亡くなった親の家の老朽化がひどいと、利用価値の低さが原因で買主が見つからないリスクが高まります。「リフォーム・修繕レベルだとカバーできない」といったレベルで老朽化しているときは、いっそのこと取り壊して更地にすることも検討してみてください。
更地なら新築、事業用土地、駐車場・レンタルルームなどの運営など活用幅が一気に広がるため、買主側からの需要が増える可能性があります。
ただし、親の家を更地にすると「数百万円レベルの解体費用がかかる可能性がある」「住宅用地の特例が外れて固定資産税が6倍になる」といったリスクも存在します。亡くなった親の家を更地にするか否かは、「事前に不動産会社に相談する」「解体費用に関する補助金の利用を検討する」などの対策を講じるのがおすすめです。
共有名義なら共有者となっている相続人との話し合いが必要になる
亡くなった親の家を複数人で相続したときは、その家は共有名義になります。共有名義の不動産のすべてを売却するには、ほかの共有者全員の同意が必要だと民法で定められています。そのため、共有名義となった親の家を売却するときは、共有者となっている相続人と話し合って同意を得なければなりません。
1人でも売却に反対していると、不動産全体の売却ができなくなります。交渉次第で同意を得ることは可能ですが、乗り気でない相手に強引な交渉を持ちかけると関係が悪化するリスクがあります。親の家を相続したときの共有者は家族・親族であるケースがほとんどであり、関係悪化の影響が大きい点に注意が必要です。
また、共有者のうち1人でも連絡が取れない状態だとしても、不明者の同意が得られていないとして全体の売却ができなくなります。不明者がいるときは、その旨を裁判所に申し立てて不明者以外の同意で売却できる判断をもらう、不在者財産管理人や相続財産清算人を選任するといった手続きが必要です。
対策としては、「相続時点で単独名義になるように相続する」「換価分割を活用する」といった方法が考えられます。
なお自分の共有持分だけの売却なら、ほかの共有者の同意なしで売却できます。
亡くなった親の家を売るときに発生する税金
亡くなった親の家を相続して売るときには、主に以下の税金が発生します。
それぞれの詳細を見ていきましょう。
親の家を相続したときには「相続税」
亡くなった親の家を相続したときには、相続した不動産の相続税評価額分の相続税が発生する可能性があります。具体的には、「亡くなった親の家を含めて親から相続した財産の価額合計」を基に計算した税額について、相続税申告や納税が必要です。
<相続税の計算方法>
相続税額=(正味の遺産総額-相続税の基礎控除)✕相続税率10~55%-特例控除
<相続税の基礎控除の計算方法>
相続税の基礎控除=3,000万円+600万円✕法定相続人の数
出典:国税庁「No.4155 相続税の税率」
法改正によって基礎控除額が下がったとはいえ、実際に相続税が発生するケースは少ないと言われています。たとえば国税庁「令和5年分 相続税の申告事績の概要」によると、1年間の被相続人(死亡者)の数に対して相続税の申告書数は9.9%(前年度は9.6%)と、10人に1人のみが相続税申告をしているとの結果が出ています。
参考:国税庁「No.4152 相続税の計算」
親の家を売って譲渡所得が発生したら「譲渡所得税」「復興特別所得税」「住民税」
亡くなった親の家を売って譲渡所得(売却益)が発生したら、その譲渡所得に対して「譲渡所得税」「復興特別所得税」「住民税」の3つの税金の申告・納税義務が課せられます。譲渡所得税等の計算方法は次の通りです。
<譲渡所得の計算方法>
売却価額(売却価格+清算金など)-取得費※(親の家の購入代金や建築代金など)-譲渡費用(仲介手数料や登記費用など)-特別控除(居住用不動産の3,000万円の特別控除など)
※取得費がわからないときは概算取得費として売却価額の5%相当額を適用
譲渡所得は、売却年の1月1日時点で「親の家を所有してからの期間が5年以下なら短期譲渡所得」、「親の家を所有してからの期間が5年超なら長期譲渡所得」として扱います。長期譲渡所得のほうが、税金が安くなります。
<短期譲渡所得における譲渡所得税の計算方法>
短期譲渡所得✕税率39.63%(譲渡所得税率30%・住民税率9%・復興特別所得税率0.63%)
<長期譲渡所得における譲渡所得税の計算方法>
長期譲渡所得✕税率20.315%(譲渡所得税率15%・住民税率5%・復興特別所得税率0.315%)
実際には減価償却分などを考慮して、譲渡所得や税額を算出します。
参考:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
参考:国税庁「土地や建物を売ったとき」
相続登記や抵当権抹消登記などにかかる「登録免許税」
相続登記や抵当権抹消登記などに必要な税金を、登録免許税と呼びます。亡くなった親の家の登記関係でかかる登録免許税は次の通りです。
- 相続登記:亡くなった親の家の固定資産税評価額✕0.4%
- 抵当権抹消登記:不動産1つのつき1,000円
不動産売却後に買主側へ所有権を移転させる所有権移転登記の費用は、原則として買主側が負担します。とはいえ法的な決まりはないため、売主側にも所有権移転登記の負担を求められる可能性があります。
また、登記手続きは司法書士に依頼するのが一般的であるため、登録免許税に加えて司法書士報酬も発生すると思っておきましょう。司法書士報酬の相場は、抵当権抹消登記1件1万~2万円、相続登記1件6万~10万円です。
売却価格に応じて発生する「印紙税」
亡くなった親の家の売却代金の大きさに応じて、印紙税を支払う必要があります。当該取引の売買契約書に収入印紙を貼り付けることで、納税したことになります。収入印紙は、法務局や郵便局で購入が可能です。
売却価格 |
印紙税額 |
1万円未満 |
非課税 |
1万円以上10万円以下 |
200円 |
10万円超50万円以下 |
400円 |
50万円超100万円以下 |
1,000円 |
100万円超500万円以下 |
2,000円 |
500万円超1,000万円以下 |
1万円 |
1,000万円超5,000万円以下 |
2万円 |
5,000万円超1億円以下 |
6万円 |
1億円超5億円以下 |
10万円 |
5億円超10億円以下 |
20万円 |
10億円超50億円以下 |
40万円 |
50億円超 |
60万円 |
契約金額の記載がない |
200円 |
参考:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
なお不動産売買における印紙税の負担は、売主・買主で折半するのが一般的です。
亡くなった親の家を売るときの節税に使える特例
亡くなった親の家を売るときに、適用できる特例があれば譲渡所得税等を節税できる可能性があります。亡くなった親の家を売るときに適用しやすい、主な特例は次の通りです。
- 最大3,000万円の控除ができる「居住用不動産の3,000万円の特別控除」
- 親の家が空き家になるなら「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
- 親の家の取得にかかった金額が高いほど節税できる「取得費加算の特例」
それぞれの詳細を解説します。
最大3,000万円の控除ができる「居住用不動産の3,000万円の特別控除」
相続した親の家にあなた自身が住んでいる、または住まなくなってから3年を経過する日に属する年の12月31日までの場合だと、売却時に「居住用不動産の3,000万円の特別控除」を適用できる可能性があります。本特例を適用できれば譲渡所得が最大3,000万円控除されるため、売却益が3,000万円までなら非課税にできます。
参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
親の家が空き家になるなら「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
亡くなった親の家を相続した後、住まずに空き家になっているなら「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が適用できる可能性があります。
本制度なら、2016年4月1日~2027年12月31日の間に「被相続人居住用家屋」または「被相続人居住用家屋の敷地等」を売却した場合に、最大3,000万円を譲渡所得から控除可能です。
ただし適用するためにはさまざまな要件を満たしている必要があるため、国税庁の公式サイトにて詳細をご確認ください。
参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
親の家の取得にかかった金額が高いほど節税できる「取得費加算の特例」
取得費加算の特例とは、相続や遺贈で土地・建物などを3年10か月以内に売却したときに、相続時に支払った相続税のうち一定の金額を取得費として加算できる特例です。
イメージとしては、「本来は購入費といった取得費が発生しない相続というやり取りにおいて、相続税の一部を取得費扱いする」です。ただし、小規模宅地等の特例とは併用できないので注意してください。
出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
親の家は相続前に売るのもあり!親が生きているうちに売却するメリット
亡くなった親の家を売るのは相続後になります。しかし、親が存命のうちに話し合い、相続前に親の家を売却するのもおすすめです。親の家を相続前に売却するメリットは次の通りです。
- 時間が経つほど家の老朽化が進んで価値や需要が下がるから
- 相続後の相続人同士のトラブルを避けやすいから
- 相続ではなく贈与で受け取った後に売却したほうが手続きがスムーズだから
- 相続時精算課税を適用できれば節税できる可能性があるから
相続前・相続後のどちらのタイミングで売却すればよいかは、事前に親や専門家などと相談しておくのがよいでしょう。
亡くなった親の家を売るときは弁護士や不動産会社などの専門家に相談!
亡くなった親の家を売るときは、弁護士や不動産会社などの専門家に相続・売却について相談するのがおすすめです。専門家に相談するメリットは次の通りです。
- 特例が適用できるかを正しく判断して節税できる可能性が上がるから
- 正確な査定額を算出してくれる可能性が高いから
- 弁護士や弁護士と提携している不動産会社なら相続や共有持分に関する相談も受け付けてくれるから
- 税理士や税理士と提携している不動産会社なら相続税や譲渡所得税などの税金関係に対応できるから
- そのほか売却や相続に関するさまざまな相談ができるから
たとえば全国1,500以上の士業と提携する弊社「株式会社クランピーリアルエステート」なら、相続や共有名義などの複雑な権利関係にある親の家でも適切に買取いたします。「そもそも売却すべきなのか」「売却についてよくわかっていなくて不安」といった場合なら、無料相談から受け付けています。
まとめ
亡くなった親の家を相続して売却するには、相続関係の確定、遺産分割協議、相続登記などが必要です。これらの準備をしなければ、たとえ親の家でも売却できないので注意しましょう。
相続関係の手続きが終わった後は、不動産会社に査定を依頼して実際に売却関係について依頼します。不動産仲介・不動産買取のいずれもメリット・デメリットがあるため、あなたの状況に応じた方法を選択してください。たとえば「相続関係が複雑になっている」といったトラブルが想定される場合は、訳あり物件でも買い取ってくれる買取業者の利用が考えられます。
亡くなった親の家を売るときは、「取得費がわかるものを集めておく」「土地の境界を確定させておく」といった部分に対応しておけば、売却もスムーズに進むでしょう。売却に関する特例措置を適用できれば、売却時に発生する譲渡所得税等を節税できます。
亡くなった親の家の売却、相続関係の対応、特例の適用などは専門知識なども必要になってくるため、あらかじめ専門家への相談をおすすめします。
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