亡くなった親の家を売るには?まず最初にすることを状況別に確認
最初に確認したいのは、家を誰が相続することになっているかです。名義変更や売却を急ぐ前に、現在の状況を整理しましょう。
| 現在の状況 |
最初にすること |
| 誰が相続するか決まっていない |
遺言書の有無と相続人を確認する |
| 自分だけが相続することになった |
登記名義を確認し、名義変更と売却相談を進める |
| 複数人で相続することになった |
家全体を売ることと、代金の分け方について合意する |
それぞれの状況で、何から始めればよいか詳しく説明します。
誰が相続するか決まっていない|遺言書と相続人を確認する
まず遺言書を探し、戸籍で相続人を確認しましょう。遺言書があれば内容を確認し、遺言書がない場合などは、原則として相続人全員で遺産の分け方を話し合います。
「長男だから家を引き継ぐ」「親の世話をしたから自分が売れる」と、家族の認識だけで手続きを進めることはできません。もう一方の親が存命の場合など、兄弟姉妹以外にも相続人がいることがあります。
固定資産税の通知書や登記事項証明書も確認してください。家が祖父母の名義のままであれば、親の相続だけでは名義を整理できない可能性があります。その場合は、戸籍の収集段階から司法書士に相談すると、必要な手続きを把握しやすくなります。
自分だけが相続することになった|名義を確認し、売却の準備を進める
自分が単独で相続することが確認できている場合は、相続登記の準備と不動産会社への売却相談を並行して進められます。すでに自分の名義になっていれば、査定や売却条件の検討に進みましょう。
ただし、遺産分割協議が必要な状況で、自分が相続するつもりでいるだけでは手続きは進められません。遺言書や遺産分割協議書など、取得の根拠を確認することが先です。
また、母親や兄弟などが家に住んでいる場合は、所有者が自分でも、明け渡しについて別途調整が必要です。売却希望時期と現在の居住状況を、不動産会社に最初に伝えてください。
兄弟姉妹など複数人で相続することになった|家全体の売却と代金の分け方を話し合う
複数人が共有する家を通常の売買で丸ごと売るには、共有者全員の同意が必要です。誰か1人が不動産会社に相談することはできますが、相談の代表者が他の人の権利まで自由に処分できるわけではありません。
話し合いでは、「売ってよいか」だけでなく、次の点も決めておきましょう。
- 売却希望価格と、値下げを検討するときの判断方法
- いつまでの売却を目指すか
- 片付け・測量などの費用を誰が立て替え、どう精算するか
- 売却代金をどの割合で分けるか
- 不動産会社との連絡窓口を誰にするか
不動産取引では、買主が見つかってから価格や費用負担でもめると、契約に進めないことがあります。売却活動を始める前に、合意内容を記録しておくことが大切です。
亡くなった親の家を売る流れ|相続の確認から引き渡し・確定申告まで
亡くなった親の家の売却は、相続関係を確認し、名義を整え、売買と税金の手続きを進める流れになります。
- 遺言書・相続人・財産と借金を確認する
- 査定を受け、相続する人や売却代金の分け方を決める
- 相続登記で名義を変更する
- 仲介・買取を選び、売却条件を決める
- 売買契約を結ぶ
- 代金を受け取り、家を引き渡す
- 必要に応じて翌年に確定申告をする
相続人の調査や話し合い、買主探しにかかる時間は家庭や物件によって異なります。売却完了まで数か月単位で予定を組み、相続争いや境界の問題がある場合は、さらに長期化することを見込んでください。
査定など並行して進められる準備もあります。各ステップの要点を説明します。
①遺言書・相続人・財産と借金を確認する
最初に、家を売る権限を持つ人と、引き継ぐ財産・負債を確認します。遺言書、親の戸籍、預貯金の資料、固定資産税の通知書、住宅ローンの返済明細などを集めましょう。
自宅などで見つかった自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所の検認が必要です。封印がある遺言書を勝手に開封しないでください。公正証書遺言と、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言は検認不要です。なお、検認は遺言書の状態などを確認する手続きで、有効性を確定するものではありません。
借金が多い可能性がある場合は、家を売る前に相続放棄などを検討します。相続放棄の申述期限は、原則として自分のために相続が始まったことを知ったときから3か月以内です。調査が間に合わなければ、家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てる方法があります。
家の売却など相続財産を処分すると、相続を承認したと扱われ、放棄できなくなるおそれがあります。相続するか迷っている間は、価値のある遺品の売却も含め、処分前に弁護士へ確認してください。
参考:裁判所「遺言書の検認」、裁判所「相続の放棄の申述」
②査定で価格の目安を調べ、相続する人や売却代金の分け方を決める
遺産の分け方を話し合う際は、不動産会社の査定で、家がいくらで売れそうかを確認しておくと判断しやすくなります。固定資産税の評価額と、実際の売却見込み額は同じではありません。
相続登記前の査定は、相続手続き中であることを伝えて依頼します。複数社の価格を比べる際は、査定額の高さだけでなく、周辺の成約事例、建物の状態、境界や接道条件など、価格の根拠を確認しましょう。
家を売ってお金で分ける方法を「換価分割」といいます。遺産分割協議書には、売却して分けること、分配割合、売却費用の負担などを整理して記載します。
手続きのため代表者1人の名義で登記する方法もありますが、名義だけでなく、協議内容と実際の代金分配を一致させることが重要です。単独相続した人が後から任意にお金を渡す場合とは税務上の扱いが異なるため、登記前に司法書士・税理士へ相談してください。
参考:国税庁「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」
③相続登記で親から相続人へ名義を変更する
買主へ所有権を移す登記をするには、原則として、その前提となる相続登記が必要です。不動産所在地を管轄する法務局に申請します。自分で申請することもできますが、書類の収集や名義の整理が複雑なら司法書士に依頼しましょう。
相続登記の申請期限は、原則として、相続による不動産の取得を知った日から3年以内です。遺産分割が成立した場合は、その内容に応じた登記を成立日から3年以内に申請する義務もあります。
2024年4月1日より前の相続も義務化の対象です。同日より前から取得を知っていた未登記の不動産は、原則として2027年3月31日までに対応する必要があります。正当な理由なく義務に違反すると、10万円以下の過料の対象となります。
遺産分割がまとまらないときは、申請義務に対応するための「相続人申告登記」を検討できます。ただし、相続人申告登記だけで買主への売却登記ができるわけではありません。売却に必要な登記と、期限への対応を分けて司法書士に確認してください。
参考:法務省「相続登記の申請義務化について」
④仲介・買取を選び、売却条件を決める
売却方法は、不動産会社に買主を探してもらう「仲介」と、不動産会社に直接売る「買取」が中心です。
| 方法 |
主な特徴 |
先に確認すること |
| 仲介 |
広く買主を探せる一方、売れる時期や価格は確約されない |
売出価格、広告・内覧対応、仲介手数料 |
| 買取 |
条件がまとまれば日程を決めやすい一方、再販売費用などが価格に反映される |
買取価格、家財の扱い、引き渡し条件 |
仲介では、不動産会社と媒介契約を結びます。複数社に依頼できる一般媒介と、1社に依頼する専任媒介・専属専任媒介などがあるため、窓口の数や販売報告の頻度を確認してください。
相続物件では、片付けや解体の費用負担によって手取りが変わります。条件をそろえて比較する方法は、希望や家の状態に合わせた売却方法で説明します。
⑤買主と売買契約を結ぶ
買主が見つかったら、価格・引き渡し日・家財の撤去・建物の不具合への対応などを確認して契約します。仲介の場合は広告や内覧を経て条件交渉を行い、買取の場合は買取会社と直接条件を詰めます。
特に、相続した家では、売主自身が住んでおらず建物の状態を把握できていないことがあります。雨漏りやシロアリ被害、増改築、近隣との取り決めなど、知っている事実は不動産会社へ伝え、不明な点は「不明」として整理しましょう。
「現状のまま売る」と書くだけで、契約内容に合わない不具合への責任がすべてなくなるとは限りません。契約不適合責任の範囲・期間や、買主のローン審査が通らなかった場合の扱いも確認してください。
相続登記前に契約を検討する場合は、売主の権限と登記の見通しを確認し、引き渡しまでに必要な手続きが間に合う条件を整える必要があります。
⑥代金を受け取り、家を引き渡す
引き渡し日には、残代金の支払い、所有権移転登記の申請、鍵の受け渡しを一体として進めます。通常は司法書士が登記に必要な書類を確認し、不動産会社・金融機関と連携して決済します。
売却代金で住宅ローンを返す場合は、金融機関と調整し、返済と抵当権抹消を同じ決済の中で進めることがあります。家財の撤去や境界確認など、契約で約束した対応も引き渡しまでに済ませましょう。
複数人で代金を分ける場合は、費用の精算表を作り、振込記録を残してください。確定申告に備え、売買契約書と領収書も各人が確認できる状態にしておきます。
⑦売却した翌年に確定申告が必要か確認し、申告する
課税対象となる売却益がある場合は原則として確定申告が必要です。また、3,000万円控除などの特例を使って税額がゼロになる場合も、特例適用のための申告が必要です。
売却した人が全員、必ず申告するわけではありません。利益の有無や特例の利用、他の所得などによって判断します。一般に、所得税の申告期間は売却した翌年の2月16日から3月15日までですが、休日などにより変わるため、その年の日程を確認してください。
共有や換価分割では、売却益が帰属する人ごとに申告の要否を判断します。「代表者がまとめて売却代金を受け取ったから、代表者だけが申告する」とは限りません。
住民税は通常、所得税の確定申告内容をもとに自治体が計算し、翌年度に課税します。売却代金を分ける際は、後から納める税金も手元に残しておきましょう。
亡くなった親の家を売るタイミングは?売却時期を決める3つのポイント
売却時期は、家の利用予定、税金の特例、相続税の納税資金の3点から考えると整理しやすくなります。
- 使う予定がないなら、維持費と管理負担を確認する
- 税金の特例を使うなら、適用期限から逆算する
- 相続税を売却代金で払うなら、納期限と決済日を確認する
一律に「すぐ売るのが得」とは限りません。それぞれの判断ポイントを説明します。
使う予定がない場合は、維持費や管理の負担を踏まえて早めに検討する
住む予定も貸す予定もなければ、所有を続ける年間負担を計算し、売却の検討を始めましょう。固定資産税、保険料、庭木の手入れ、換気や点検の交通費などは、空き家でも発生します。
例えば、年間の維持費を仮に30万円とすると、2年間で60万円です。値上がりを待つ間にも費用がかかり、雨漏りなどが起きれば修繕費も増えます。
ただし、思い出の整理を急ぐ必要はありません。残したい家財を選びながら査定を受け、金額と負担が分かった段階で家族と売却時期を決める方法もあります。
税金の特例を使いたい場合は、適用期限に間に合うように進める
税負担を抑えたい場合は、「相続から何年か」だけでなく、使う特例ごとの売却期限を確認します。
| 特例 |
売却期限の考え方 |
| 相続した空き家の特例 |
相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。現行制度の適用期限は2027年12月31日で、両方を満たす必要がある |
| 取得費加算の特例 |
相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの売却が対象 |
相続登記の「3年以内」とも異なります。契約と引き渡しが年をまたぐ場合などは、税務上の譲渡日の扱いも確認してください。適用条件は税金の特例で説明します。
相続税の納税資金にしたい場合は、納期限までに現金化できるか確認する
相続税を家の売却代金で支払う予定なら、売買契約を結ぶ日ではなく、代金を受け取る日から逆算する必要があります。相続税の申告・納税は、原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内です。
買主が見つかっても、住宅ローンの手続きや測量などで引き渡しが先になることがあります。査定の段階で納期限を伝え、間に合わない場合の資金手当ても税理士と検討しましょう。
また、相続税の小規模宅地等の特例には、取得者によって申告期限までの保有・居住などが条件になる場合があります。納税のために急いで売る前に、売却時期が特例に影響しないか確認してください。
参考:国税庁「相続税の申告と納税」、国税庁「小規模宅地等の特例」
亡くなった親の家を売るために必要な書類と取得先
書類は、相続登記に使うもの、売買に使うもの、税金の申告に使うものに分けて集めると整理しやすくなります。遺言の内容や登記の状態により必要書類は変わるため、以下は主な例です。
それぞれの書類と取得先を確認しましょう。
相続登記の書類|戸籍・遺言書・遺産分割協議書などを確認する
相続登記では、相続人と不動産の取得者を証明する書類をそろえます。遺産分割協議による登記では、主に次の書類を使います。
| 主な書類 |
取得先・準備方法 |
| 親の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍 |
市区町村の戸籍窓口。広域交付を利用できる場合もある |
| 親の住民票の除票または戸籍の附票 |
住所地・本籍地の市区町村 |
| 相続人の戸籍、取得者の住民票 |
市区町村 |
| 遺産分割協議書・相続人全員の印鑑証明書 |
協議書を作成し、印鑑証明書は各人が市区町村で取得 |
| 不動産の評価額が分かる資料 |
固定資産評価証明書などを不動産所在地の自治体で取得 |
| 登記申請書・委任状 |
自分で作成するか、依頼する司法書士が準備 |
遺言書による登記では、遺言書や検認に関する書類などを使い、必要な戸籍の範囲も異なります。法定相続分による登記では、遺産分割協議書は不要です。
相続登記では通常、親の権利証が見つからなくても申請できます。紛失した書類を探すことだけに時間をかけず、司法書士に必要書類を確認してください。
参考:東京法務局「相続登記ガイドブック」
売却の書類|登記識別情報・印鑑証明書・境界の資料などを準備する
売却では、売主の本人確認書類と、所有権・物件の状態を確認できる資料を準備します。
| 主な書類 |
確認する場所・取得先 |
| 相続登記後の登記識別情報通知 |
登記完了後に交付された書類 |
| 本人確認書類・印鑑証明書など |
手元の書類・市区町村。必要な発行時期を司法書士に確認 |
| 固定資産税の納税通知書・課税明細書 |
自宅の保管書類、自治体 |
| 測量図・境界確認書 |
親の保管書類、過去の土地家屋調査士など。地積測量図は法務局でも確認 |
| 建築確認・検査済証、図面など |
親の保管書類、建築会社など |
| ローン残高や抵当権抹消に関する書類 |
借入先の金融機関 |
古い家では資料が残っていない場合もあります。不足があるだけで直ちに売れなくなるわけではないため、何がないかを先に伝え、代替資料や追加調査の必要性を確認しましょう。
税金の申告に備える書類|親の購入時の契約書と売却費用の領収書を残す
親が家を買った金額が分かる資料は、遺品整理で捨てずに保管してください。購入時の売買契約書、建築工事の請負契約書、購入費用の領収書などは、売却益の計算に使います。
取得費が分からない場合は、売却収入の5%を概算取得費とする方法があります。ただし、実際の取得費より小さくなり、税金が増える場合があります。
契約書が見つからなければ、当時の購入先への照会や住宅ローン資料など、金額の裏付けに使える資料がないか調べ、税理士に相談しましょう。資料があるだけで、その金額が必ず認められるわけではありません。
売却時の仲介手数料・測量費などの領収書も保管します。特例を利用する場合は追加書類が必要になるため、売却前に確認してください。
参考:国税庁「取得費が分からないとき」
亡くなった親の家を相続・売却するときにかかる費用・税金
負担するお金は、相続手続き・売却準備・売却取引の費用と、相続や登記、売却に伴う税金に分かれます。すべての項目が必ず発生するわけではありません。
| 項目 |
主な内容・発生する場面 |
| 相続手続きの費用 |
戸籍などの取得費、依頼した場合の司法書士報酬 |
| 売却準備の費用 |
必要に応じた家財処分、測量、解体 |
| 売却取引の費用 |
仲介手数料、抵当権抹消などの司法書士報酬 |
| 相続税 |
相続財産全体について課税される場合 |
| 登録免許税 |
相続登記・抵当権抹消登記 |
| 印紙税 |
紙の売買契約書の作成 |
| 所得税・住民税など |
課税対象となる売却益がある場合 |
費用と税金では計算方法が異なります。それぞれ詳しく説明します。
相続手続きの費用|戸籍などの取得費・司法書士報酬
相続手続きでは、書類の取得実費と、専門家に依頼する場合の報酬を分けて確認します。戸籍などの取得費は必要な通数によって変わり、相続人が多いほど収集する書類も増えやすくなります。
司法書士報酬は一律ではありません。戸籍収集や遺産分割協議書の作成まで含むか、不動産が複数あるか、過去の相続から整理する必要があるかなどで変わります。
見積書では「報酬」「登録免許税」「証明書などの実費」を分けて確認してください。費用総額だけを比較すると、依頼できる作業範囲の違いを見落とすことがあります。
売却準備の費用|家財の処分費・測量費・解体費
片付け・測量・解体は、物件の状態と売却条件によって必要性が変わる費用です。先にすべて実施するのではなく、査定を受けてから判断しましょう。
| 費用 |
見積もりで確認すること |
| 家財の処分費 |
荷物の量、搬出条件、家電の処分費、追加料金の有無 |
| 測量費 |
測量の範囲、隣地との境界確認、道路との境界確認の要否 |
| 解体費 |
構造・広さ、重機の搬入、アスベスト対応、地中埋設物の扱い |
例えば、買主が解体する条件なら、売主が解体費を先払いせずに売れる場合があります。一方、解体費相当額が売却価格に反映されることもあるため、「費用負担なし」という表示だけでは判断できません。
売却取引の費用|仲介手数料・抵当権抹消の司法書士報酬
仲介で売る場合は、成約時に仲介手数料が発生します。売買価格が400万円を超える場合の通常の上限は、課税事業者に支払う場合、次の速算式で求められます。
仲介手数料の上限(税込)=(売買価格[消費税を除く]×3%+6万円)×1.1
例えば、売買価格2,000万円なら上限は72万6,000円です。これは法定の上限であり、支払額は契約で確認します。
なお、売買価格800万円以下の物件には特例があり、事前の説明・合意のもとで、通常の計算額を超えて売主側から税込33万円まで受領できる場合があります。
不動産会社が買主となる直接買取で、別の仲介会社が入らなければ、仲介手数料はかかりません。抵当権抹消などを司法書士に依頼する場合は、その報酬を別途確認します。
参考:国土交通省「宅地建物取引業者が受けることができる報酬の額」
相続税|相続財産全体の金額などによってかかる
相続税は、家を売ったことに対する税金ではなく、財産を相続したことに対する税金です。家だけでなく預貯金なども含め、債務などを差し引いた正味の遺産額を基礎控除と比較します。
相続税の基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数
法定相続人が2人なら基礎控除は4,200万円です。原則として正味の遺産額が基礎控除以下であれば相続税はかかりません。
ただし、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って納税額がゼロになる場合は、申告が必要です。また、不動産の相続税評価額は売却価格と同じではありません。
税額は、課税対象額に単純に1つの税率を掛けるだけでは計算できないため、遺産全体を整理して判断しましょう。
参考:国税庁「相続税の計算」
登録免許税|相続登記や抵当権抹消登記の際にかかる
相続登記の登録免許税は、原則として固定資産税評価額をもとにした課税価格の0.4%です。課税価格が2,000万円なら、税額は8万円となります。
抵当権抹消登記は不動産1個につき1,000円です。土地1筆と建物1棟なら通常は2,000円になります。
一定の土地の相続登記には免税措置もあります。例えば、課税標準となる価額が100万円以下の土地については、現行制度では2027年3月31日までの対象登記が免税となります。建物も同じ条件で免税になるわけではありません。
参考:国税庁「登録免許税の税額表」、国税庁「相続登記の登録免許税の免税措置」
印紙税|紙の売買契約書を作成する際にかかる
紙の不動産売買契約書には、記載金額に応じた印紙税がかかります。2027年3月31日までに作成する対象契約書には、軽減措置があります。
| 契約書に記載された金額 |
軽減後の印紙税 |
| 100万円超500万円以下 |
1,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 |
5,000円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 |
1万円 |
| 5,000万円超1億円以下 |
3万円 |
上記は契約書1通当たりの税額です。売主・買主が原本を1通ずつ作成する場合は、それぞれの原本に課税されます。電子契約のみで課税文書に当たる紙の契約書を作成しない場合は、印紙税はかかりません。
参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」、国税庁「電磁的記録に関する印紙税の取扱い」
所得税・住民税など|家を売った利益に対してかかる
家を売ったときの所得税・復興特別所得税・住民税は、売却代金全体ではなく、費用などを差し引いた課税対象の利益にかかります。
課税譲渡所得=売却収入-取得費-譲渡費用-適用できる特別控除
取得費は原則として親の購入代金などを引き継ぎます。ただし、建物は築年数などに応じた減価償却費相当額を差し引くため、購入価格をそのまま全額使えるわけではありません。譲渡費用には、売却のための仲介手数料などが該当します。
| 売却した年の1月1日時点の所有期間 |
通常の税率合計 |
| 5年超:長期譲渡所得 |
20.315% |
| 5年以下:短期譲渡所得 |
39.63% |
通常の相続では、所有期間も親から引き継ぎます。親が長年所有していた家なら、相続してすぐ売っても長期譲渡所得に当たる場合があります。「相続してから5年待つ必要がある」とは限りません。限定承認による取得などは扱いが異なります。
参考:国税庁「譲渡所得の計算のしかた」、「相続した土地・建物の取得費と取得の時期」、「建物の取得費の計算」、「長期譲渡所得の税額」、「短期譲渡所得の税額」
亡くなった親の家を売るときに使える税金の特例
税金の特例は、親の居住状況、売主への相続税の課税、自分が住んでいたかによって検討する制度が変わります。
| 検討する特例 |
確認の入口 |
| 相続した空き家の特例 |
親が1人で暮らしていた古い戸建てなどを相続したか |
| 取得費加算の特例 |
売った人に、その相続に関する相続税が課されているか |
| マイホームの特例 |
売る家が自分自身の居住用だったか |
該当しそうでも、ほかの条件を満たす必要があります。同じ不動産について空き家の特例と取得費加算の特例は併用できないため、適用可否と税額を比較します。それぞれの要点を説明します。
相続した空き家の特例|条件を満たすと売却益から最大3,000万円を控除できる
親が住んでいた家と敷地等を相続し、所定の条件で売却すると、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。税金そのものから3,000万円を引く制度ではありません。
主な確認事項は次のとおりです。
- 家が1981年5月31日以前に建築され、区分所有建物ではないこと
- 原則として相続直前に親だけが住んでいたこと。一定の老人ホーム入所などには例外がある
- 相続後、売却までの間に賃貸・事業・居住に使っていないことなど
- 家と敷地等を取得した相続人が、耐震基準や解体に関する条件を満たして売ること
- 売却代金が1億円以下であること。共有や分割売却では合算による判定に注意する
- 所定の期限内に売り、親子・夫婦など特別な関係のある相手への売却ではないこと
2024年以降の譲渡では、対象の家と敷地等を取得した相続人が3人以上の場合、控除上限は1人当たり2,000万円です。相続人全体の人数だけで判定するわけではありません。
参考:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
売却前に耐震改修や解体をする方法に加え、売却後、翌年2月15日までに買主側で必要な工事を完了する方法も対象になり得ます。買主に工事を任せる場合は、実施期限や証明書類への協力を契約で確認しておくことが重要です。
適用には確定申告が必要で、市区町村が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」などを準備します。確認書の交付だけで、税務上の適用が確定するわけではありません。
参考:国土交通省「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」
取得費加算の特例|売った人に課された相続税の一部を取得費に加えられる
相続税が課された人が相続財産を所定の期間内に売ると、相続税のうち一定額を取得費に加算できます。取得費が増えることで、課税対象の売却益を減らす制度です。
対象期間は、相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。一般に「相続から約3年10か月以内」と説明されますが、実際の期限は個別に確認してください。申告期限より前の売却も対象になり得ます。
相続税の全額を加算できるわけではなく、売却財産に対応する金額などから計算します。本人に相続税が課されていない場合は、申告書を出すだけでは利用できません。
空き家の特例と両方の条件に当てはまりそうな場合は、売却前に税理士へ試算を依頼しましょう。
参考:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
マイホームの特例|自分も住んでいた家なら3,000万円控除を使える可能性がある
親から相続した家でも、売主自身のマイホームとしての居住実態があれば、通常の居住用財産の3,000万円控除を検討できます。相続した空き家の特例とは別の制度です。
自分が現在住んでいる家のほか、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る以前の自宅なども対象になり得ます。ただし、過去の特例利用や売却相手などの条件があります。
親だけが住んでいた家や、控除を受ける目的だけで一時的に入居した家は対象になりません。自分と親の居住歴、相続した時期を整理して確認してください。
参考:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
亡くなった親の家を売ると手取りはいくら?計算例で確認
売却後の手取りは、売却収入から売却に伴う支出、返済するローン、売却益への税金を引いて考えます。税金の計算に使う「取得費」は、売却時に改めて支払うお金ではない点に注意してください。
次の仮定で、手取りを計算します。数値は仕組みを説明するための例で、費用相場ではありません。
| 項目 |
仮定する金額・条件 |
| 売却収入 |
2,000万円。精算金などの追加収入はないものとする |
| 取得費 |
500万円。建物の減価償却などを反映した後の金額 |
| 売却時の支出 |
100万円。全額が税務上の譲渡費用に該当すると仮定 |
| 返済する住宅ローン |
なし |
| 所有期間・特例 |
長期譲渡所得、特別控除・取得費加算は利用しない |
- 課税譲渡所得:2,000万円-500万円-100万円=1,400万円
- 売却益への税金の概算:1,400万円×20.315%=284万4,100円
- 税金まで差し引いた手取りの概算:2,000万円-100万円-284万4,100円=1,615万5,900円
この例では、支払済みの相続登記費用や相続税、売却までの管理費は手取りから差し引いていません。相続から売却までの総負担を知りたい場合は、それらも別に集計します。実際の納税額には端数処理などがあるため、上記は概算です。
また、家財処分費や維持費など、支出したお金がすべて税務上の譲渡費用になるわけではありません。手取りの計算と、税金を計算するための経費の判定は分けて考えましょう。
参考:国税庁「譲渡費用となるもの」
亡くなった親の家を売る方法は?希望や家の状態に合わせた選び方
売り方は、価格・早さ・建物の状態・現地へ行けるかを踏まえて選びます。
| 希望・状況 |
検討する方法 |
| できるだけ高く売りたい |
仲介で広く買主を探す |
| 早く売りたい・片付けが難しい |
現状のままの買取も比較する |
| 建物が古い |
古家付きと更地の売却条件を比較する |
| 遠方で現地に行きにくい |
現地対応や代理手続きの支援を確認する |
これらは組み合わせて選べます。例えば、遠方の古い実家を、解体せずに買取会社へ売る方法もあります。それぞれの判断ポイントを説明します。
できるだけ高く売りたい|仲介で買主を探す方法を検討する
売却までの時間に余裕があり、価格を重視するなら、まず仲介での売却見込みを確認しましょう。自宅として住みたい人などに広く募集でき、買取より高い価格で売れる可能性があります。
ただし、高い査定額が成約を保証するわけではありません。不動産会社には「どのような買主を想定しているか」「売れない場合、いつ価格を見直すか」まで聞いてください。
売却活動では、問い合わせや内覧の状況を踏まえて判断します。反響が少ない理由が価格なのか、写真・広告なのか、建物や立地なのかを整理すると、値下げだけに頼らず対応を考えられます。
早く売りたい・片付けの負担を減らしたい|不動産会社による買取を検討する
管理を早く終えたい、家財の処分を自分で手配しにくい場合は、現状のまま買い取る会社の条件も比較しましょう。一般の買主を探す工程を省けるため、合意後の予定を組みやすい方法です。
一方、買取会社は修繕や解体、再販売の費用・リスクを見込むため、仲介での成約見込みより低い価格を提示する傾向があります。必ず買い取ってもらえるわけでもありません。
比較するときは、次の条件をそろえてください。
- 家財や不用品を残してよいか
- 測量や解体を売主が負担する必要があるか
- 引き渡し後の不具合に関する責任をどう定めるか
- 代金を受け取る日をいつにできるか
「買取価格が高い会社」でも、追加費用を差し引くと手取りが少なくなることがあります。金額と条件をセットで判断することが重要です。
建物が古く売り方に迷っている|古家付きで売る場合と更地で売る場合を比較する
古い家でも、査定前に解体する必要はありません。建物を残した状態と、解体して更地にした状態の両方で、売却見込みと費用を比較します。
| 売り方 |
利点 |
注意点 |
| 古家付きで売る |
解体費を先払いせず、建物を使いたい買主も探せる |
劣化の状況や買主の解体負担が価格に影響する |
| 更地にして売る |
土地の形や広さを確認しやすく、新築用地として検討されやすい場合がある |
解体費がかかり、土地の住宅用地特例が外れることで固定資産税などの負担が増える場合がある |
不動産の実務では、築年数だけでなく、再建築できるか、重機が入るか、買主が建物を利用したいかも判断材料になります。再建築できない土地の建物を先に壊すと、利用の選択肢を狭めるおそれがあります。
また、空き家の特例を利用するなら、解体時期や解体後の使い方も確認が必要です。解体を発注する前に、不動産会社と税理士へ相談しましょう。
遠方に住んでいて現地へ行きにくい|現地対応を任せられる不動産会社に相談する
遠方の実家でも、鍵の預かり、現地調査、内覧対応などを不動産会社に任せて売却を進められる場合があります。帰省できる回数や日程を最初に伝え、どこまで依頼できるか確認してください。
契約や決済への出席が難しい場合は、代理人への委任などを検討します。ただし、委任状があれば本人の意思確認が一切不要になるわけではありません。司法書士による確認方法や書類の受け渡しも事前に調整します。
現地で行う作業を一覧にし、写真・動画で確認できるものと、立ち会いが必要なものを分けると、移動の負担を減らしやすくなります。
亡くなった親の家を売れない・売却が進まないときの対処法
売却が進まない場合は、家族の合意、相続人の手続き、住宅ローン、物件の条件のどこで止まっているかを整理します。
- 売却への反対があるなら、理由と代金の分け方を整理する
- 相続人の所在や判断能力に問題があるなら、法的手続きを検討する
- ローンや抵当権が残るなら、金融機関へ確認する
- 境界や再建築に問題があるなら、調査と売却条件を見直す
原因により相談先と対処法が変わります。それぞれ詳しく説明します。
兄弟姉妹が売却に反対している|反対の理由と分け方を整理する
反対する人がいる場合は、価格への不満なのか、住み続けたいのか、思い出を残したいのかを確認します。理由が分かれば、査定の取り直し、売却時期の調整、家を残す人が他の人の取り分を金銭で補う方法などを検討できます。
話し合いが難しければ、弁護士に相談してください。遺産分割が未了なのか、分割後の共有なのかによって、遺産分割調停や共有物分割など、検討する手続きが異なります。
自分の共有持分だけを売れる場合もありますが、家全体の売却とは条件が異なり、買い手や価格に制約があります。買取会社に相談しても、他の共有者の同意を不要にして家全体を自由に売れるわけではありません。
相続人と連絡が取れない・意思確認が難しい|事情に応じた法的手続きを相談する
必要な相続人を除いて、遺産分割協議を成立させることはできません。連絡に応じない場合と、所在そのものが分からない場合を分けて考えます。
所在不明の場合は、不在者財産管理人の選任などを検討します。管理人が遺産分割や不動産処分を行うには、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。
認知症などで判断能力が不十分な相続人がいる場合は、成年後見制度などの利用を検討します。家族が勝手に署名・押印したり、本人の意思確認ができないまま委任状を作ったりしてはいけません。
どの制度が使えるか、裁判所の許可が必要かは事情により異なります。売買契約の日程を決める前に弁護士や司法書士へ相談しましょう。
参考:裁判所「不在者財産管理人の権限外行為許可」
親の住宅ローンや抵当権が残っている|団体信用生命保険と完済・抹消の方法を確認する
住宅ローンが残っていたら、まず借入先へ死亡の連絡をし、団体信用生命保険の対象か確認します。保障対象であれば、保険金などにより残債が弁済される場合があります。ただし、加入状況や契約条件によるため、自動的にゼロになるとは限りません。
ローンを完済しても、抵当権の登記は自動では消えません。金融機関から書類を受け取り、抹消登記を行います。
残債がある場合は、売却代金や自己資金で返済できるか確認してください。返済額に足りなければ、通常の売却をそのまま進められない可能性があるため、金融機関との調整が必要です。
参考:住宅金融支援機構「ご本人がなくなられたとき」
境界不明・再建築不可などで買主が見つからない|問題の内容と売却条件を見直す
物件に問題があっても、売却そのものができないとは限りません。ただし、買主が負担する調査や工事、利用制限を整理し、価格と契約条件に反映させる必要があります。
境界が不明なら、手元の測量図や法務局の資料を確認し、土地家屋調査士へ相談します。隣地との境界確認には相手の協力が必要なため、測量を発注すれば必ず短期間で確定するわけではありません。
再建築できるか分からない場合は、道路の種類や接道状況を自治体の建築担当窓口などで確認します。そのうえで、隣地所有者への売却や、再建築不可物件を扱う不動産会社への相談も検討できます。
買主が見つからない理由を説明してもらい、価格だけでなく、想定する買主や引き渡し条件も見直しましょう。
亡くなった親の家の売却は誰に相談する?相談先と役割
売却価格や売り方は不動産会社、登記は司法書士、税金は税理士、相続争いは弁護士が主な相談先です。相談したい内容に合わせて選びましょう。
| 困っていること |
主な相談先 |
相談時に用意するとよい情報 |
| いくらで売れるか、仲介・買取のどちらがよいか |
不動産会社 |
所在地、固定資産税の通知書、建物の状態、希望時期 |
| 親名義のまま、相続登記の書類が分からない |
司法書士 |
登記情報、遺言書、相続人の関係 |
| 税金の計算、特例、確定申告 |
税理士・税務署 |
購入・売却の金額、費用、居住歴、相続税の資料 |
| 遺産の分け方や売却で争いがある |
弁護士 |
相続関係、これまでの協議内容、各人の希望 |
| 土地の境界や面積が分からない |
土地家屋調査士 |
測量図、境界確認書、登記情報 |
不動産会社が士業を紹介する場合もありますが、依頼先と費用、対応範囲はそれぞれ確認してください。書類が全部そろっていなくても、分かっている情報と不足している資料を伝えれば、次に必要な準備を相談できます。
まとめ|相続の状況と期限を確認し、自分に合う方法で売却を進めよう
亡くなった親の家を売るときは、相続する人の確認、名義変更、売却条件の整理から始めましょう。査定は相続登記前でも相談できるため、売却価格を調べながら相続手続きを進められます。
- 誰が相続するか未定なら、遺言書と相続人を確認する
- 複数人で相続するなら、売却と代金の分け方について合意する
- 価格を重視するなら仲介、早さや負担軽減を重視するなら買取も比較する
- 解体や売買契約の前に、税金の特例と適用期限を確認する
売却価格だけで判断せず、費用・税金を差し引いた手取りと、管理や手続きの負担まで比べることが大切です。まずは手元の資料をそろえ、自分の状況に合う相談先へ、売却までに必要な対応を確認しましょう。