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共有持分の相続登記を解説│登記申請の手順や申請書の書き方も解説

共有持分の相続登記が必要な2つのケース

共有持分を相続したら、相続を知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません。2024年4月から相続登記が義務化され、共有持分も例外ではなくなったためです。

とはいえ「共有持分の相続登記は、通常の相続登記と何が違うのか」「申請書はどう書くのか」と戸惑う方は少なくありません。

共有持分の相続登記は、大きく次の2つのパターンに分けられます。

  • ケース①:もともと共有状態だった不動産の持分を引き継ぐ(例:父が持っていた2分の1の共有持分を、子が相続)
  • ケース②:単独名義の不動産を、複数人の共有名義で相続する(例:父名義の実家を、子ども3人が3分の1ずつ共有で相続)

どちらも基本的な流れは通常の相続登記と同じですが、登記申請書の「登記の目的」の書き方や、登録免許税の計算方法が異なるのが共有持分ならではの特徴です。

また、共有持分の相続登記を放置すると10万円以下の過料の対象になるほか、共有者がねずみ算式に増えて収拾がつかなくなるおそれもあります。とはいえ、共有持分の相続登記も、自分のケースと手順、必要書類さえ押さえれば、決して難しいものではありません

この記事では、両方のパターンについて手続きの流れ・必要書類・費用をわかりやすく解説します。相続で共有持分を引き継いだ方も、これから手続きを控えている方も、ぜひ参考にしてください。

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あなたはどっち?共有持分の相続登記が必要な2つのケース

「共有持分の相続登記」と一口にいっても、状況は大きく2つに分かれます。どちらに当てはまるかで登記申請書の書き方や登録免許税の計算が変わるため、手続きを始める前に、まずは自分がどちらのケースかを確認しておきましょう。取り違えると、申請書の記載ミスや税額の計算違いにつながります。

  • ケース①:もともと共有状態だった不動産の持分を引き継ぐ
  • ケース②:単独名義の不動産を、複数人の共有名義で相続する

見分け方はシンプルで、亡くなった方(被相続人)が不動産を「共有持分」で持っていたか、「単独名義」で持っていたかで決まります。被相続人がもともと持っていた共有持分を引き継ぐならケース①、単独名義だった不動産を複数人で相続するならケース②です。判断に迷うときは、登記事項証明書で被相続人の名義を確認しましょう

ケース①:もともと「共有状態」だった不動産の持分を引き継ぐ

父が生前から他の人と共有していた2分の1の持分を、子がそのまま引き継ぐ、といったケースです。相続で新たに共有が生まれるのではなく、もともとあった共有関係を受け継ぐのが特徴です。

このケースには、さらに2つのパターンがあります。

  • 1人が単独で引き継ぐ:父の持分2分の1を、長男がそのまま2分の1として取得する
  • 複数人で分け合う:父の持分2分の1を、兄弟2人で半分ずつに分け、それぞれ4分の1ずつ取得する

実務では後者のように、被相続人の持分をさらに細かく分けるケースも少なくありません。この場合、もとの共有者に加えて兄弟2人が新たな共有者として加わるため、共有者の数は増えていきます。

いずれの場合も動くのは被相続人の持分だけなので、登録免許税は被相続人の持分に対応する評価額をもとに計算します。ただし複数人で分ける場合は、各自が取得する持分の割合を申請書に正しく記載しなければなりません。登記申請書の「登記の目的」も、ケース②とは書き方が変わります(詳しくは後述します)。

ケース②:単独名義の不動産を、複数人の共有名義で相続する

父名義(単独名義)の実家を、子ども3人が3分の1ずつ共有で相続する、といったケースです。もともと1人の名義だった不動産が、相続をきっかけに新たに複数人の共有名義になるのが特徴です。

遺産分割協議で「とりあえず法定相続分どおりに分けておこう」と決めたときや、誰が引き継ぐか結論が出ずに先送りしたときに、このかたちになりがちです。不動産全体が相続によって動くため、後述する登録免許税は不動産全体の評価額をもとに計算します。

共有名義で相続登記することが危険な理由

注意したいのが、「平等だから」と安易に共有名義で相続登記してしまうことです。共有名義の不動産は、売却・建て替え・大規模リフォームに共有者全員の同意が必要になり、1人でも反対すると活用できません。

さらに、共有者の1人が亡くなれば、その持分はその配偶者や子へと相続され、世代を重ねるごとに共有者がねずみ算式に増えていきます。たとえば子ども3人(各3分の1)の共有でも、それぞれに配偶者と子がいる状態で次の相続を迎えると共有者は10人前後にふくらみ、全員の所在確認や同意取得が一気に難しくなります。「とりあえず共有」で登記すると、将来かえって解消が難しくなります。可能であれば、遺産分割協議で1人の単独名義にまとめるか、売却して現金で分けることを検討しましょう。

どちらのケースでも、3年以内に相続登記をする義務がある点は同じです。

共有持分の相続登記手続きの流れ

共有持分の相続登記は、大きく次の4つのステップで進みます。登記簿で共有者と持分を確認したうえで、自分のケースに合った申請書を作成し、必要書類を添えて法務局に提出する、という流れです。

  • 登記事項証明書を取得して共有者と持分割合を把握する
  • 登記申請書を作成する
  • 必要書類を準備して管轄の法務局に申請する
  • 登記識別情報を受け取る

共有持分を相続する前に確認しておきたいリスクや対策、相続の全体的な流れは、以下の記事でも詳しく解説しています。

登記事項証明書を取得して共有者と持分割合を把握する

共有持分の相続登記では、最初に登記事項証明書(登記簿)を取得し、その不動産に誰がどれだけの持分を持っているかを正確に確認します。法務局の窓口やオンライン(登記情報提供サービス)で取得でき、1通あたり数百円程度です。所有者本人でなくても誰でも取得できるため、手元に権利証がなくても持分の状況を確認できます。

とくにケース①では、被相続人の持分割合が登録免許税の計算や申請書の記載に直結するため、思い込みで進めず、必ず登記簿の記載を確認しましょう。「2分の1だと思っていたら3分の1だった」というずれは珍しくありません。

【パターン別】登記申請書を作成する

共有持分の相続登記で最もつまずきやすいのが、登記申請書の書き方です。まず、相続の登記申請書に共通する主な記載欄を押さえておきましょう。

登記申請書の主な記載欄
・登記の目的:何の登記かを書く(例:所有権移転/○○持分全部移転)
・原因:相続が発生した日(例:令和○年○月○日相続)
・相続人:不動産を取得する人の住所・氏名と持分
・添付情報:登記原因証明情報(戸籍一式など)/住所証明情報(住民票など)
・課税価格:登録免許税の計算のもとになる評価額
・登録免許税:課税価格×0.4%
・不動産の表示:所在・地番・地目・地積などを登記簿どおりに記載

このうち、ケースによって書き方が変わるのが「登記の目的」「相続人(持分の表記)」「課税価格」の3つです。

①亡くなった方の共有持分を相続する場合

被相続人がもともと持っていた共有持分だけを相続するケースです。動くのは被相続人の持分のみなので、登記の目的は「○○(被相続人の氏名)持分全部移転」と記載します。

たとえば被相続人の持分が2分の1で、それを1人が相続するなら、目的を「○○持分全部移転」とし、取得する相続人の持分として「持分2分の1 △△(氏名)」と記載します。

登記申請書の記載例(ケース①:父の持分2分の1を長男がすべて相続)
・登記の目的:亡○○(父の氏名)持分全部移転
・原因:令和○年○月○日相続
・相続人:(被相続人 ○○)持分2分の1 △△(長男の住所・氏名)
・課税価格:移転した持分の価格 金1,000万円
・登録免許税:金4万円(課税価格×0.4%)

ケース①は被相続人の持分だけが動くため、登記の目的を「○○持分全部移転」と書くのが特徴です。

②単独名義の不動産を複数人で相続する場合

単独名義(被相続人1人の名義)の不動産を相続人が引き継ぐケースです。所有権そのものがまるごと移るため、登記の目的は「所有権移転」と記載します。ここが「持分全部移転」となるケース①との違いです。

複数人で共有相続する場合は、申請書に各相続人の持分を明記します。たとえば子3人が均等に相続するなら、「持分3分の1 ○○(氏名)」を相続人の人数分並べて記載します。原因は「令和○年○月○日相続」と、被相続人の死亡日を書きます。

登記申請書の記載例(ケース②:父名義の土地を子3人が均等に相続)
・登記の目的:所有権移転
・原因:令和○年○月○日相続
・相続人:(被相続人 ○○)持分3分の1 A(住所・氏名)/持分3分の1 B/持分3分の1 C
・課税価格:金2,000万円(不動産全体の評価額)
・登録免許税:金8万円(課税価格×0.4%)

申請書はA4用紙で作成し、法務局のホームページに様式例が公開されています。記載に迷ったら、管轄法務局の「登記手続案内」(予約制・無料)も利用できます。

課税価格と登録免許税の計算方法の違い

申請書には、登録免許税の計算根拠となる課税価格も記載します。この評価額は、ケース①では被相続人の持分に対応する評価額、ケース②では不動産全体の評価額と、ケースによって変わります。具体的な計算方法と金額の例は、後述の「費用」の章で解説します

必要書類を準備して管轄の法務局に申請する

申請書ができたら、戸籍謄本などの必要書類(次章で詳述)を添えて法務局に申請します。提出先は「不動産の所在地」を管轄する法務局であり、申請する相続人の住所地や他の共有者の住所地ではない点に注意してください。

申請方法は窓口・郵送・オンラインの3つです。戸籍謄本などは原本を提出しますが、「原本還付」の手続きをすれば、コピーを添えることで原本を返してもらえます。他の相続手続きでも使う大切な書類なので、原本還付を活用しましょう。

オンライン申請は自宅から手続きできて便利ですが、マイナンバーカードと電子署名、専用ソフトの準備が必要です。初めてで不安な場合は、書類をその場で確認してもらえる窓口申請か、郵送申請のほうが無難でしょう。

登記識別情報を受け取る

申請から登記の完了までは、おおむね1〜2週間程度です。完了すると、いわゆる権利証にあたる登記識別情報通知が発行されます。

ここで注意したいのが、登記識別情報は申請した本人にしか発行されない点です。法定相続分で代表者が単独申請した場合、他の相続人には通知されないため、将来の売却時などに備えて、誰が申請したかを共有者間で共有しておきましょう。

以上が登記そのものの流れです。なお、遺産分割協議がまとまらない場合でも、法定相続分であれば1人で登記を申請できます。

法定相続分なら単独で相続登記を申請できる

遺産分割協議が長引いていると、「全員の合意がないと登記できないのでは」と不安になります。しかし、法定相続分どおりに登記するなら、相続人の1人が単独で申請できます。3年の期限が迫っているのに話がまとまらない、というときの有効な手段です。ここでは、なぜ1人で申請できるのか(その仕組み)と、単独申請するときの注意点を確認します。

保存行為として単独申請が認められる仕組み

法定相続分による相続登記は、民法252条5項「保存行為」にあたると考えられています。保存行為とは財産の現状を維持する行為で、他の共有者に不利益を与えないため、共有者(相続人)の1人が単独で行えるとされています。

そのため、遺産分割協議がまとまっていなくても、法定相続分での相続登記であれば他の相続人の同意なしに申請でき、3年以内の義務を果たせます。

単独申請で登記する際の注意点

ただし、法定相続分での単独申請には注意点もあります。

  • 相続人全員が共有者として登記され、将来の売却・活用に全員の合意が必要になる
  • 他の相続人が、自分の法定相続分の持分を第三者へ勝手に売却するリスクがある
  • 登記識別情報は申請した人にしか発行されず、他の相続人は権利証のない状態になる

つまり、単独申請はあくまで過料を避けるための応急処置と位置づけ、後日あらためて遺産分割協議を行い、単独名義への変更や売却で共有を解消するのが望ましいでしょう。

共有持分の相続登記に必要な書類

相続登記では、相続人が誰かを証明する戸籍関係の書類を中心に、いくつかの添付書類が必要です。ここでつまずくと申請が受理されず、集め直しで時間を取られます。書類はどのケースでも共通して必要な基本書類と、相続の決め方(協議・遺言・法定相続分)によって変わる書類の2つに分けて押さえると、もれなく準備できます。

全員共通で必要となる基本の必要書類

どのケースでも共通して必要になるのは、主に次の書類です。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍・改製原戸籍を含む)
  • 被相続人の住民票の除票(本籍の記載があるもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本(被相続人の死亡後に取得したもの)
  • 不動産を取得する相続人の住民票
  • 対象不動産の固定資産評価証明書(最新年度のもの)
  • 登記申請書

被相続人の戸籍は、出生までさかのぼってすべて集める必要があります。2024年3月に始まった「広域交付制度」を使えば、本籍地以外の市区町村でもまとめて戸籍を請求できるようになりました。ただし、兄弟姉妹が相続人になるケースの戸籍など、一部は対象外です。

戸籍は、まず現在の本籍地で最新のものを取り、そこに書かれた一つ前の本籍地をたどって順に古い戸籍を請求していくのが基本です。転籍や結婚で本籍を移していると複数の役所への請求が必要になり、収集だけで1〜2か月かかることもあります。

遺産分割の有無や相続パターンによって変わる書類

上記に加えて、相続の決め方によって次の書類が必要になります。

相続の決め方によって変わる書類
相続の決め方 追加で必要な書類
遺産分割協議で決めた 遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書
遺言書がある 遺言書(自筆証書遺言は検認済みのもの、または法務局保管制度の証明書)
法定相続分で登記する 追加書類は原則不要(戸籍で法定相続分を証明できるため)

決め方によって、登記までの流れも少し変わります。

■ 遺産分割協議で決める場合
相続人全員で誰がどの財産を取得するかを話し合い、遺産分割協議書を作成して相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添付します。そのうえで、不動産を取得する人が登記を申請します。

■ 遺言書がある場合
遺言書があれば、遺産分割協議をせずに、遺言で指定された人がそのまま相続登記を申請できます。まず遺言書の種類を確認し、自筆証書遺言は家庭裁判所の「検認」が必要です(法務局の保管制度を利用していた場合や、公正証書遺言なら検認は不要)。検認後、遺言書・被相続人の死亡の記載がある戸籍・取得する人の戸籍と住民票・固定資産評価証明書をそろえて申請します。注意したいのは、遺言の文言が「相続させる」か「遺贈する」かで扱いが変わる点です。

相続人へ「相続させる」場合は単独申請・登録免許税0.4%ですが、相続人以外への「遺贈」では遺言執行者などとの共同申請が必要で、登録免許税が2%になります。

さらに見落とされやすいのが不動産取得税です。相続で不動産を取得しても不動産取得税はかかりませんが、これは地方税法で非課税とされる範囲が次のように定められているためです。

(形式的な所有権の移転等に対する不動産取得税の非課税)
第七十三条の七 道府県は、次に掲げる不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない。
一 相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)による不動産の取得
引用元 e-Gov法令検索 地方税法73条の7

注目したいのは括弧書きです。非課税になる遺贈は「包括遺贈」と「被相続人から相続人に対してなされた遺贈」だけに限定されています。つまり、孫や内縁の配偶者など相続人以外の人が特定遺贈で不動産を取得した場合は、不動産取得税が課税されます(税率は原則4%、土地・住宅は軽減措置により3%)。

登録免許税だけを見て資金計画を立てると、あとから想定外の負担が生じます。相続人以外へ遺贈する内容の遺言がある場合は、受け取る側の税負担まで含めて確認しておきましょう。

■ 法定相続分で登記する場合
協議も遺言もない場合は、法定相続分どおりに登記できます。戸籍で相続分を証明できるため遺産分割協議書は不要で、相続人の1人から単独で申請できます(詳しくは前章のとおり)。

書類の不備は補正や再申請の原因になります。取得した戸籍に抜けがないか、評価証明書が最新年度のものかを、申請前にもう一度確認しておきましょう。

よくある補正・却下の理由
・被相続人の戸籍が出生までさかのぼれておらず、一部が欠けている
・固定資産評価証明書が最新年度のものでない
・申請書の住所・氏名が、住民票や戸籍の表記と一致していない
・課税価格や登録免許税の計算・記載を間違えている
・複数人で相続する場合に、各相続人の持分の合計が1にならない
・「登記の目的」を書き間違えている(「所有権移転」とすべきところを「持分全部移転」と書く、またはその逆)

これらは、申請前のチェックで十分に防げます。不安があれば、管轄法務局の「登記手続案内」(予約制・無料)で事前に確認してもらうと安心です。

共有持分の相続登記にかかる費用

共有持分の相続登記にかかる費用は、大きく登録免許税司法書士報酬(依頼する場合)に分けられます。登録免許税は法務局に必ず納める税金で、共有持分ではケースによって計算に使う評価額が変わるため、金額を正しく把握しておくことが大切です。

司法書士報酬は手続きを専門家に任せる場合の費用で、自分で申請すれば報酬はかかりません。

登録免許税の正しい計算方法

相続による登記の登録免許税は、課税価格×0.4%で計算します。課税価格は固定資産税評価額をもとにしますが、共有持分ではケースによって使う評価額が変わるため注意が必要です。

ケース①:被相続人の共有持分を相続する場合

動くのは被相続人の持分だけなので、その持分に対応する評価額をもとに計算します。

計算式(ケース①)
登録免許税 = 不動産全体の評価額 × 被相続人の持分割合 × 0.4%

たとえば、固定資産税評価額2,000万円の土地を、父が2分の1の持分で所有していたケースで考えてみましょう。相続で動くのは父の持分(2分の1)だけなので、課税価格は「2,000万円 × 2分の1 = 1,000万円」になります。これに税率0.4%をかけた4万円が登録免許税です。不動産全体の2,000万円ではなく、被相続人の持分に対応する1,000万円で計算する点に注意しましょう。

ケース②:単独名義を複数人で相続する場合

不動産全体が相続で動くため、不動産全体の評価額をもとに計算します。

計算式(ケース②)
登録免許税 = 不動産全体の固定資産税評価額 × 0.4%

たとえば、固定資産税評価額2,000万円の土地を、兄弟2人が2分の1ずつ共有で相続するケースです。この場合、動くのは不動産全体なので、課税価格は評価額そのままの2,000万円です。これに0.4%をかけた8万円が登録免許税になります。共有名義にしても「自分の持分ぶんだけ」にはならず、全体の評価額に課税される点に注意しましょう。

なお、評価額100万円以下の土地は、登録免許税が免税になる措置があります(2027年3月31日まで)。私道など評価額の低い土地が対象になることもあるため、確認しておくとよいでしょう。

司法書士へ依頼する際の報酬相場

自分で申請することもできますが、戸籍集めや申請書の作成に手間がかかるため、司法書士へ依頼する方も多くいます。報酬の相場は6万〜10万円程度です。

報酬は、相続人の数・不動産の筆数・戸籍収集の難易度によって変わります。数次相続が絡んだり、転籍が多くて戸籍が大量になったりするケースでは、報酬が高くなる傾向があります。自分で申請すれば報酬はかかりませんが、平日に法務局や役所へ出向く時間と、書類を正確にそろえる手間が必要です。

共有持分は記載方法も特殊なため、平日に動きにくい方や戸籍が複雑な方は、依頼したほうが結果的にスムーズなことも多いでしょう。

【費用シミュレーション】評価額3,000万円のマンションの持分を相続するケース
前提:被相続人の持分2分の1、相続人は子ども2人、遺産分割協議で長男が単独取得(=ケース①)
・登録免許税:3,000万円 × 2分の1 × 0.4% = 6万円
・司法書士報酬:8万円程度
・戸籍謄本・住民票・評価証明書などの取得費:5,000〜1万円程度
→ 総額の目安は約14万〜15万円

このケースでは、動くのが被相続人の持分(2分の1)だけなので、登録免許税は不動産全体の3,000万円ではなく、持分に対応する1,500万円をもとに計算して6万円になります。ここに、司法書士へ依頼する場合の報酬8万円程度と、戸籍などの取得費(数千円〜1万円ほど)が加わり、合計で14万〜15万円程度が目安です。金額は評価額や相続関係によって変わるため、正確な税額・報酬は、登記の専門家に見積もりを依頼すると安心です。

【費用シミュレーション】評価額3,000万円の実家を子3人で共有相続するケース(=ケース②)
前提:単独名義の実家(評価額3,000万円)を、子ども3人が3分の1ずつ共有で相続
・登録免許税:3,000万円 × 0.4% = 12万円(不動産全体が動く)
・司法書士報酬:8万円程度
・戸籍謄本・住民票・評価証明書などの取得費:5,000〜1万円程度
→ 総額の目安は約20万〜21万円

同じ評価額3,000万円でも、ケース①(被相続人の持分だけが動く)は登録免許税6万円、ケース②(不動産全体が動く)は12万円と、登記の対象によって費用が変わる点に注意しましょう。

共有持分の相続登記は義務化されている

相続登記は長らく「やってもやらなくてもよい」手続きでしたが、2024年4月からは法律で義務づけられた手続きに変わりました。共有持分の相続も当然その対象で、「自分のぶんはわずかだから」「いつかやればいい」と後回しにすることはできません。

期限を過ぎると10万円以下の過料が科される可能性があるうえ、放置している間に次の相続が発生すれば共有者が増え、手続きはいっそう複雑になります。

ここでは、義務化の具体的な内容(期限・罰則)と、それでも相続登記が後回しにされがちな理由を、イエコン編集部の調査データとあわせて紹介します。

2024年4月施行の相続登記義務化のおさらい

改正不動産登記法により、相続の開始および所有権の取得を知った日から3年以内の相続登記が義務づけられました。正当な理由なく期限を過ぎると、10万円以下の過料の対象になります。逆にいえば、相続人が極めて多数で戸籍の収集に時間がかかる場合や、相続人自身が重病の場合などの「正当な理由」があれば、過料は科されません。

見落としやすいのが、この義務は施行前に発生した相続にも遡って適用される点です。施行日(2024年4月1日)より前に相続を知っていた場合は、2027年3月31日が登記の期限になります。
とはいえ、遺産分割協議がまとまらず期限に間に合わないこともあります。その場合は、2024年4月に新設された「相続人申告登記」を使えば過料を回避できます。これは「自分が相続人である」と法務局に申し出る簡易な手続きで、正式な持分の登記ではありませんが、義務を果たしたとみなされる暫定的な措置です。

相続人が複数いても1人で申し出ることができ、添付書類も自分が相続人だと分かる戸籍だけで足りるため、通常の相続登記より手軽です。ただし持分を正式に登記したことにはならないため、遺産分割がまとまったら、その日から3年以内にあらためて相続登記をする必要があります。

相続人申告登記の進め方
・申出先:不動産の所在地を管轄する法務局
・出すもの:申出書と、自分が相続人だとわかる戸籍(被相続人の死亡と、自分との関係がわかるもの)
・費用:登録免許税は非課税(戸籍などの取得実費のみ)
・注意:持分は登記されない/相続人が複数いる場合は、申し出た人だけが義務を果たしたことになるため、各自が申し出る必要がある

手続き自体は簡単ですが、あくまで「期限に間に合わせるための暫定策」です。遺産分割がまとまったら、正式な相続登記を忘れずに行いましょう。

「私道」や「ゴミ置き場」の共有持分に注意

相続登記で見落とされやすいのが、私道やゴミ置き場の共有持分です。自宅の敷地は登記したのに、前面の私道の持分を忘れていた、というケースが実務上とても多くあります。

私道は非課税のため固定資産税の納税通知書に載らず、存在に気づきにくいのが原因です。被相続人名義の不動産を漏れなく把握するには、まず市区町村の固定資産税課で「名寄帳(なよせちょう)」を取得すると、その人名義の不動産を一覧で確認できます。

ただし、名寄帳は固定資産課税台帳をもとに作成されるため、非課税である私道は名寄帳にも載っていないことがあります。名寄帳だけで安心せず、法務局で自宅周辺の「公図」を取得し、前面道路の地番を確認したうえで登記事項証明書を取り寄せるところまで行うと確実です。

【イエコン編集部調査】相続登記を放置していた理由

なぜ相続登記は後回しにされやすいのでしょうか。イエコン編集部が、相続登記を放置した経験がある方208名にアンケートを実施したところ、次のような結果になりました。

相続登記を放置していた理由(複数回答可)
順位 放置していた理由 回答割合
1位 手続きが面倒・難しそうだった 38.0%
2位 費用がかかると思った 24.5%
3位 義務化されたことを知らなかった 21.6%
4位 他の相続人と話がまとまらない・連絡が取れない 19.7%
5位 不動産の価値が低く、放置でも困らないと思った 15.4%

集計期間:2026年4月〜2026年5月
集計方法:インターネット

イエコン編集部に寄せられた声
「祖父名義のままだった土地を、父も手続きしないまま亡くなり、気づけば相続人が私を含めて8人になっていました。顔も知らない親族に連絡して書類に署名をもらうまで半年以上かかり、費用も当初の見込みの何倍にもなりました」(50代・男性)

最も多かったのは「手続きが面倒・難しそう」という理由でした。たしかに戸籍集めや申請書の作成は手間がかかりますが、放置している間に次の相続が起きると、手続きはさらに複雑になります。面倒に感じるなら、早い段階で司法書士に依頼してしまうのも一つの方法です。

相続登記後に共有状態を解消する方法

相続登記を終えても、共有状態そのものが解消されるわけではありません。名義がはっきりしただけで、売却や活用に共有者全員の同意が必要な状況は続きます。共有のまま放置すれば、次の相続で共有者が増え、解消はいっそう難しくなります。早めに動くために、主な解消方法を3つ確認しておきましょう。

  • 他の共有者に持分を売却する
  • 共有者全員で不動産全体を売却する
  • 共有物分割請求で裁判所に分割を求める

このほか、持分を放棄する方法もあります。ただし放棄した持分を受け取る他の共有者に、贈与税が課される可能性がある点に注意が必要です。

共有持分の放棄は、民法上は贈与に該当しません。しかし国税庁の通達では、共有者が持分を放棄した場合、その持分を取得した他の共有者は「贈与により取得したもの」として取り扱うこととされています。

(共有持分の放棄)
9-12 共有に属する財産の共有者の1人が、その持分を放棄(相続の放棄を除く。)したとき、又は死亡した場合においてその者の相続人がないときは、その者に係る持分は、他の共有者がその持分に応じ贈与又は遺贈により取得したものとして取り扱うものとする。
引用元 国税庁 第9条《その他の利益の享受》関係

つまり「みなし贈与」として扱われるため、取得した持分の価額によっては贈与税が課税されます。良かれと思って放棄したつもりが、他の共有者に高額な納税義務を負わせてしまうこともあるため、事前に伝えておきましょう。

なお、ここでいう「持分の放棄」は、相続後に自分の共有持分を手放すことで、家庭裁判所で行う「相続放棄」とは別物です。相続放棄は相続開始を知ってから3か月以内に申し立て、プラスの財産もマイナスの借金もすべて引き継がない手続きで、いったん受理されると撤回できません。

他の共有者に持分を売却する

自分の持分を、ほかの共有者に買い取ってもらう方法です。共有者にとっては持分割合が増えるメリットがあるため、第三者へ売るより合意を得やすいのが特徴です。

価格の目安は「不動産全体の市場価格×持分割合」ですが、当事者間の交渉で決まります。ただし親族間の売買では、著しく低い価格にすると時価との差額が「みなし贈与」とされ、買主に贈与税がかかるおそれがあるため、適正価格での取引を心がけましょう。

共有者全員で不動産全体を売却する

共有者全員の合意のもとで不動産全体を売却し、代金を持分割合に応じて分ける方法です。持分だけを売るより高く売れるため、金銭的には最も有利です。

ただし、共有者が1人でも反対すると実行できません。全員が「売る」方針で一致できる場合に向いています。相続した実家を売る場合は、一定の要件を満たせば各共有者が「被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除」を使え、譲渡所得税を抑えられることがあります。売却にかかる期間は、買い手が見つかるまで含めておおむね3〜6か月が目安です。

共有物分割請求で裁判所に分割を求める

話し合いでは解決できない場合の最終手段が、共有物分割請求です。まず調停を申し立て、まとまらなければ訴訟に移行するのが一般的な流れです。

裁判所が命じる分割方法は、現物分割・代償分割・換価分割(競売)の3種類です。共有持分は現物分割が難しいことが多く、代償分割か換価分割になりやすい傾向があります。費用は弁護士費用で数十万円〜、不動産鑑定が必要なら追加で数十万円かかり、解決まで半年〜2年程度を要するのが一般的です。負担が大きいため、まずは話し合いや持分の売買を先に検討するのが現実的です。

いずれの方法も、共有者が増える前の早い段階で動くほど選択肢が多く、費用も抑えられます。登記が終わったら、続けて解消の方針も話し合っておきましょう。

まとめ

共有持分の相続登記は、通常の相続登記と基本的な流れは同じですが、登記申請書の「登記の目的」の書き方と、登録免許税の計算方法に違いがあります。被相続人の共有持分を相続するケース①では「○○持分全部移転」「全体の評価額×持分割合×0.4%」、単独名義を複数人で相続するケース②では「所有権移転」「不動産全体の評価額×0.4%」と、まずは自分のケースを見極めることが第一歩です。

そして、2024年4月から相続登記は3年以内の義務となり、放置すれば過料の対象になるだけでなく、共有者が増えて収拾がつかなくなります。協議がまとまらなければ法定相続分での単独申請や相続人申告登記で期限に間に合わせ、登記後はできるだけ早く共有解消の方針を話し合いましょう。

最後に、ケース別の登記の違いを表で整理します。

ケース別・共有持分の相続登記の違い
項目 ケース①(被相続人の共有持分を相続) ケース②(単独名義を複数人で相続)
登記の目的 ○○(被相続人)持分全部移転 所有権移転
課税価格 全体の評価額×被相続人の持分割合 不動産全体の評価額
登録免許税の例 2,000万円・持分1/2→4万円 評価額2,000万円→8万円

共有持分の相続登記は、自分のケースさえ押さえれば自分でも申請できますが、戸籍が複雑なときや判断に迷うときは、早めに司法書士へ相談しましょう。早めの対応が、スムーズな相続登記につながります。

共有持分の相続登記に関するよくある質問

共有持分を相続登記せずに放置し続けるとどうなりますか?

10万円以下の過料の対象になるほか、次の相続が重なって共有者がねずみ算式に増え、全員の所在確認や同意取得が困難になります。共有者の認知症や行方不明が重なると、不動産の売却・活用が事実上できなくなることもあります。さらに、登記が被相続人名義のままでは、その不動産を売却したり、担保に入れて融資を受けたりすることもできません。いざ現金化したいときに動けなくなる点も大きなリスクです。早めの登記が安全です。

相続した共有持分が少額でも、相続登記は必要ですか?

持分の大小にかかわらず、相続登記は義務です。価値が低いからと放置すると過料の対象になり得ます。私道など評価額の低い持分も対象になるため、名寄帳と公図をあわせて確認し、被相続人名義の不動産を漏れなく把握しましょう。

自分で相続登記をすることはできますか?

可能です。登記申請書と必要書類を整えれば、本人による申請もできます。ただし戸籍集めや申請書の作成に手間がかかり、共有持分は記載方法も特殊なため、戸籍が複雑なケースや時間が取れない場合は司法書士への依頼が安心です。

遺産分割協議がまとまらないうちに3年が過ぎそうです。どうすればいいですか?

相続人申告登記を利用すれば、協議がまとまっていなくても過料を回避できます。法定相続分での相続登記(単独申請が可能)で期限に間に合わせる方法もあります。いずれも暫定的な対応なので、後日あらためて遺産分割と共有解消を進めましょう。

相続登記をしないうちに次の相続が発生しました(数次相続)。まとめて登記できますか?

原則として、亡くなった順に段階的に登記する必要があり、途中を飛ばす「中間省略」は認められません。ただし、中間の相続人が1人だけだった場合など一定の要件を満たせば、中間を省略して登記できる例外もあります。数次相続は権利関係が複雑になりやすいため、早めに司法書士へ相談するのが安心です。

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    更新日 : 2026年07月17日
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