故人名義の土地を売却する場合は相続登記で名義変更をしておく
大前提、他人名義の土地を許可なく第三者が売却できません。そのため、相続人であっても故人名義の状態では、土地を売却することが原則できません。実務上も、不動産会社へ売却相談をした際に「まずは相続登記を完了してください」と案内されるケースがほとんどです。売却活動そのものに入る前の前提条件といえます。
民法でも、登記上の名義人になっていない限り、第三者に対して土地の所有者であることを主張できないと決められています。
民法第177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
出典:e-Govポータル「民法第177条」
故人名義の土地を売却するには事前に相続登記をして、土地の名義を故人から自分に移しておく必要があります。
相続登記とは、亡くなった人(被相続人)が所有していた建物や土地などの不動産を相続する場合、その名義を相続人へ変更するための手続きのことです。
相続登記をして名義が故人から自分に変更された後であれば、基本的には自由に土地を売却できるのです。
なお、2024年4月1日から相続登記は義務化されています。土地を相続したことを知った日から3年以内に相続登記を行わなければ、10万円以下の過料対象になります。そのため、「売却をしないから相続登記はしないでおこう」といった対応は認められません。
相続登記については「相続登記を行い故人名義を変更する」の見出しで解説しますが、土地を相続する場合は必ず相続登記をしましょう。
故人名義の土地は単独名義に変更するのが得策
家族や兄弟がいる場合、土地を相続する際には「共有名義にするか」「特定の相続人による単独名義にするか」を選ぶことになります。
遺言などによって共有名義が必須となるケースを除きますが、売却を見越して故人名義の土地を相続する場合、基本的には単独名義に変更するのが得策です。弊社へのご相談でも、共有名義の状態で売却が進まず、結果的に「単独名義に整理してから売却したい」というご相談に発展するケースは少なくありません。あくまで体感ですが、共有不動産に関する相談の半数以上が相続をきっかけとしたものです。
土地を単独名義で相続するのが望ましい理由は、以下のとおりです。
- 売却など土地を自由に活用できる
- ほかの相続人とのトラブルを予防できる
共有名義で土地を相続した場合、不動産全体を売却するなどの「処分」にあたる行為については、原則として共有者全員から同意を得る必要があります。そのため、意見が一致しない場合には、売却手続きが進められないケースも少なくありません。
弊社でも、以下のように土地を共有名義で相続したことで、相続人間のトラブルに発展してご相談いただくケースが多数あります。
親族から相続した土地について、相談者は親族と共有名義の状態になっていたケースです。その土地は共有者の一人が住居兼事業用として利用しており、物件全体の売却は現実的ではありませんでした。
相談者は自身の共有持分のみを売却したいと考えていましたが、共有者から提示された買取条件に納得できず、話し合いは難航していました。
そこで弊社が物件の利用状況や共有者との関係性を踏まえて調整を行い、最終的には相談者の共有持分を弊社が買い取る形で解決しました。
このように、共有状態のままでは利害関係が一致しないケースも多く、売却や活用の意思決定に時間がかかる傾向があります。売却を見据えている場合は、早い段階で名義の整理方針を検討しておくことが重要です。
一方、単独名義で相続すれば、その土地は自分1人のものになるので、他人の同意を得ずに使用できます。売却はもちろん、駐車場などの用途で貸し出すこともできるので、土地活用で収益を上げやすくなるメリットがあります。
また、共有名義の場合は権利関係が複雑になりやすいことから、土地売却の際にほかの共有者とトラブルが起きることも少なくありません。単独名義であればそのようなトラブルが起きることもないため、スムーズに土地売却を進められるのもメリットの1つです。
故人名義の土地を相続登記するまでの流れ
故人名義の土地を売却するには、前述の通り相続登記が必要です。相続登記の進め方は、遺言書の有無や分割方法によって異なります。
相続人が複数いる場合は、必要に応じて遺産分割協議などの手続きが必要になります。
故人名義の土地を相続登記するまでの主な流れは以下のとおりです。
- 相続人を確定させる
- 相続の対象となる財産を確定させる
- 遺言書があるかを確認する
- 相続人全員で遺産分割協議を行う
- 相続登記を行い故人名義を変更する
ここからは、故人名義の土地を相続登記するまでの流れを解説していきます。
⚪︎相続登記をする場合は、専門家に相談することも検討するべき
遺産相続や相続登記の際には、さまざまな手続きが必要です。
専門的な知識が必要な場面もあるため、手続きの正確性や効率を考えると、司法書士などの専門家へ相談しながら進める方法が一般的です。実際の現場でも、「平日に何度も役所や法務局へ行く時間がとれない」「遠方から昔の戸籍を取り寄せる手順が分からず、何ヶ月も放置してしまっている」「思いがけない相続人が発覚し、誰にどう連絡をとればいいか分からなくなった」といったご相談が日々寄せられます。ご自身で進めようとして疲弊してしまい、最終的に駆け込みで弊社へご依頼いただくケースも決して珍しくありません。
たとえば、司法書士に依頼すれば遺産相続や相続登記の際に必要な書類の収集・作成を行ってもらえます。また、相続の際には税金がかかることもありますが、税理士に相談することでその金額計算なども行ってもらえます。
相続人を確定させる
故人名義の土地を相続する場合、まずは相続人を確定させる必要があります。基本的には「配偶者」「子ども」「親」「兄弟姉妹」が相続人に該当します。
ただし、これらの相続人には民法で定められた「優先順位」があり、全員が同時に相続人になるわけではありません。配偶者は常に相続人となり、それ以外の親族については次の順位に従って相続人が決まります。
- 第一順位:子・孫(直系卑属)(子が亡くなっている場合はその子が代襲相続)
- 第二順位:親など直系尊属
- 第三順位:兄弟姉妹(直系尊属・直系卑属がいない場合)
なお、相続人を確定させる際には、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて取得するのが一般的です。場合によっては手続きが複雑になることもあるため、その際には司法書士などの専門家に相談することも検討してみてください。
相続の対象となる財産を確定させる
相続人を確定させた後は、相続の対象になる財産の調査が必要です。
相続の対象になる財産は、亡くなった人の「積極財産(資産)」「消極財産(負債)」すべてが対象になります。具体的には下記のような財産が該当します。
- 土地や家などの不動産
- 自動車や貴金属などの動産
- 預貯金や株式といった有価証券
- ローンなどの負債
- 未払いの税金や家賃
遺産相続の際には、原則としてこれらの財産を法定相続分に則って分配します。借金のようなマイナスの財産も相続の対象になるため、遺産相続の際には慎重かつ正確な調査が必要です。もっとも、相続の対象には、不動産や預貯金といったプラスの財産だけでなく、借入金や未払いの費用などのマイナスの財産も含まれます。
そのため、遺産の内容を確認する際には、資産と負債の両方をしっかり把握することが大切です。特に、債務を見落としてしまうと、相続後に思わぬ負担が生じる可能性があるため、注意が必要です。
また、「財産の種類が多くて整理が難しい」「必要な資料が見つからない」といった場合には、司法書士や税理士などの専門家に相談するのも一つの方法です。専門家に依頼することで、調査や手続きをスムーズかつ正確に進めやすくなります。
遺言書があるかを確認する
財産が確定した後は、亡くなった人の遺言書があるかを確認します。遺言書が残っている場合、基本的には遺言書の内容に沿って遺産分割が行われるためです。
遺言書には主に以下の3種類があります。
- 自筆証書遺言:亡くなった人が自ら執筆した遺言書
- 公正証書遺言:公の場で証人が立ち会ったうえで作成された遺言書
- 秘密証書遺言:公証人と証人の2人が立ち会ったうえで、秘密にしたまま作成された遺言書
公正証書遺言であれば、家庭裁判所での手続きを経ずに内容を確認できます。一方、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、遺言内容の改ざんを防ぐため、家庭裁判所で手続きをしたうえで開封しなければなりません。
つまり、遺言書の種類によっては、見つけた場所ですぐに開封できないので注意が必要です。
なお、遺言書が作成されていない、または見つからない場合は、相続人同士の話し合いで遺産相続が行われます。
相続人全員で遺産分割協議を行う
遺言書の有無を確認した後、遺言書がない場合や遺言書の内容どおりに分けない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議とは、遺産をどのように分配するのかを決めるための話し合いのことです。具体的には、亡くなった人の財産を「誰に」「どのように」「どれくらい」分配するのかを決めるための話し合いといえます。
実務上は、協議内容を証明するために「遺産分割協議書」を作成し、下記の事項を記載するのが一般的です。
- 亡くなった人の名前と亡くなった日付
- 遺産分割協議に参加した人の名前や住所
- 相続人全員の実印による押印
- 相続の対象となる財産とその財産を取得する人
遺産分割協議が成立するには、原則として相続人全員の合意が必要です。相続人のうち一人でも欠けた状態で行った協議は無効となります。
同意があれば遺産分割協議書を作成し、各相続人の署名と実印をすることで遺産分割協議が終了する流れです。
相続登記を行い故人名義を変更する
遺産分割協議が終了して遺産相続が完了した後は、相続登記を行い土地の名義変更をします。相続登記は大まかに下記のような流れとなります。
- 相続登記に必要な書類を集める
- 登記申請書を作成する
- 登録免許税を算出して、収入印紙を用意しておく
- 土地の所在地を管轄する法務局に書類と収入印紙を提出する
- 相続登記が完了する
相続登記は、相続する土地があるエリアを管轄する法務局で行います。個人でも手続きできますが、書類の用意や手続きは複雑かつ専門的な知識が必要なため、司法書士に依頼するのも手段のひとつです。
故人名義の土地を相続登記する際にはさまざまな書類が必要
故人名義の土地を相続登記する際には、さまざまな書類が必要です。場合によっては追加書類が必要ですが、基本的には下記のような書類が求められます。
| 書類名 |
取得先 |
備考 |
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍 |
本籍地の市区町村役場(転籍がある場合は各役場) |
法定相続情報一覧図があれば省略できる |
| 被相続人の住民票の除票 |
最後の住所地の市区町村役場 |
戸籍の附票で代替できる場合あり |
| 相続人の印鑑証明書 |
住所地の市区町村役場 |
遺産分割協議による相続の場合に必要 |
| 土地の固定資産評価証明書 |
不動産所在地の市区町村役場(資産税課など) |
登録免許税の算定に使用 |
| 登記事項証明書(登記簿謄本) |
法務局 または オンライン(登記情報提供サービス) |
事前確認用(申請時に添付しない場合あり) |
| 相続登記申請書 |
法務局の様式を使用して自作、または司法書士が作成 |
法務局へ提出する申請書 |
| 遺産分割協議書 |
相続人間で作成、または司法書士が作成 |
遺産分割による相続の場合に必要 |
| 遺言書(残っている場合) |
自宅・法務局(自筆証書遺言保管制度)・公証役場 など |
遺言による相続の場合に必要 |
| 相続関係説明図 |
相続人が作成、または司法書士が作成 |
参考資料 |
なお、相続手続きが複数ある場合や相続関係がやや複雑な場合には、「法定相続情報一覧図」を取得しておくのがおすすめです。
法定相続情報一覧図とは、被相続人(亡くなった人)と相続人の関係を一覧にまとめた公的な証明書類です。相続手続きの際に、戸籍謄本一式の代わりとして利用できます。
不動産が複数ある場合や、銀行・証券会社の相続手続きを行う場合には、法定相続情報一覧図を取得することで、戸籍謄本一式を何度も提出せずに済みます。
一方で、相続登記だけで手続きが完結するケースや、相続人が少なく相続関係が単純なケースでは、揃えた戸籍書類をそのまま提出した方が早い場合もあります。
相続の内容や手続きの範囲に応じて、法定相続情報一覧図を利用するかどうかを判断するのが現実的です。
相続登記の際には、亡くなった人と相続人に関する書類が必要になります。特に、戸籍謄本については取得に時間がかかるため、司法書士に依頼するのも一つの手です。
相続した故人名義の土地を売却する方法
故人名義の土地を売却する方法として「仲介」「買取」の2種類があります。しかし、土地のなかには形状や権利関係などが特殊な土地もあります。そのような土地の場合は一般的な土地よりも買い手が見つかりにくいため、売却方法を工夫しておくことが大切です。
ここからは、一般的な土地と特殊な土地の売却方法をそれぞれ詳しく解説していきます。
一般的な土地の売却方法は仲介や買取がおすすめ
一般的な土地であれば、仲介や買取で売却することを検討してみてください。
仲介とは、不動産会社などの業者に間に入ってもらい不動産を売却する方法のことです。一方、買取とは、業者に物件を直接購入してもらう方法のことです。
それぞれに特徴があり、どちらが適しているかは状況によって異なります。一般的には、価格を重視する場合は仲介、スピードや確実性を重視する場合は買取が検討される傾向です。弊社へのご相談でも「まずは仲介で様子を見たが売れず、最終的に買取を検討する」といった流れになるケースは一定数見られます。
仲介なら買取よりも高値で相続した土地を売却できる
買取の場合、仲介よりも売却価格が下がるのが一般的です。不動産会社は再販売を前提に土地を買い取るため、将来の費用やリスクを見込んだ価格になります。一方、買取は再販を前提に査定されることが多く、仲介より売却価格が低くなる傾向にあります。
そのため「なるべく高値で相続した土地を売りたい」という場合は、仲介で売却するのがおすすめです。
仲介で土地を売却する場合、一般的には下記のような流れとなります。
- 不動産会社に土地の価格を査定してもらう
- 査定結果をもとに販売価格を決める
- 不動産会社と媒介契約を締結する
- 不動産会社に土地の売却活動をしてもらう
- 買主が現れれば売買契約を締結する
- 買主へ土地を引き渡す
まずは不動産会社と相談して土地の販売価格を決めて、購入してくれる買主を探します。そして、買主が見つかったら、売買契約を結んで土地を引き渡すといった流れです。
仲介の場合、買主が見つかるまで一定の期間を要する点には注意が必要です。エリアや物件条件によって差はありますが、売却までに数か月以上かかるケースも珍しくありません。特に地方や需要の限られる土地では、さらに時間を要することもあります。
また、仲介では不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。仲介手数料は上限が定められているため、媒介契約の締結時に金額(上限の範囲内)を確認しておきましょう。
買取は一般的に仲介よりも早期の現金化が期待できる
仲介の場合、売却できるまでに数か月程度の期間がかかるのが一般的です。一方、買取であれば買主探しの期間が不要なので、実際には、早ければ数週間程度で契約から引き渡しまで進むケースもあり「相続手続き後すぐに現金化したい」といったニーズで選ばれることがあります。
また、買取業者は、取得した不動産を再販売や賃貸運用などによって収益化することを目的としており、自己居住を前提としているわけではありません。そのため、一般の個人買主とは異なる基準で物件を評価できる点や、活用ノウハウを有している点から、一定の条件下でも取引が成立しやすい傾向があります。
さらに、買取の場合は不動産会社自体が買主となるため、仲介のように市場で購入希望者を探す必要がありません。この点から、売却の確実性やスピードを重視する場合には、有効な選択肢といえます。
そのため「早期かつ確実に土地を売却したい場合」には、買取による売却を検討することが実務上合理的です。
買取で土地を売却する場合、一般的には下記のような流れとなります。
- 依頼する買取業者を探す
- 売却に必要な書類を用意する
- 買取業者と土地の売買契約を締結する
- 決済を行い、買取業者へ土地を引き渡す
売却が完了するまでの流れは、仲介よりも買取の方が簡潔になります。
ただし、買取の場合は仲介よりも売却価格が安くなるケースが多いです。あくまで目安ですが、仲介の7割~8割程度が相場といわれているため注意が必要です。
特殊な土地は売却方法を工夫してみる
故人名義の土地といっても、通常の土地ではなく特殊な土地を相続するケースもあります。相続で取得しうる特殊な土地としては、下記が挙げられます。
- 共有持分:土地に対する部分的な所有権
- 借地:地主から借りている土地
- 底地:借地人へ貸している土地
- 再建築不可物件:建物を新たに建築できない土地
「特殊な土地」に該当する場合、通常の土地よりも買い手が現れにくいと予想され、仲介では売却するのが難しいです。そのため、売りたい土地にあわせて売却方法を工夫する必要があります。
ここからは、それぞれの土地の種類と適切な売却方法を解説します。
共有持分の売却方法
共有持分とは、複数人で1つの不動産を共同で所有するとき、各々がその不動産について持っている所有権割合のことです。
相続人が複数いる場合、遺産分割協議などの状況によっては、1つの土地を物理的に分けるのではなく、所有権だけを複数人で分けて共有持分として相続することもあります。
共有名義の不動産そのものは、共有者全員の同意がないと売却できませんが、自分の共有持分のみであれば、共有者の同意がなくても自由に売却可能です。
共有持分の売却方法としては、次の4パターンがあります。
| 売却方法 |
特徴 |
向いているケース |
| 他共有者へ持分のみを売却する |
話がまとまりやすい選択肢。共有状態の解消に直結しやすい。 |
ほかの共有者が取得に前向きで、できるだけトラブルを増やさずに整理したい場合。 |
| 全共有者の持分を買い取って単独名義にし、土地全体を売る |
単独名義にできれば、通常の土地と同様に仲介で売りやすい。 |
資金的余裕があり、最終的に市場で高値売却を狙いたい場合。 |
| 第三者へ持分のみを売却する |
法律上は可能だが、買主は限定されやすく価格も下がりやすい。 |
ほかの共有者が購入に応じず、早めに持分を手放したい場合。 |
| 共有持分を専門とする買取業者に買い取ってもらう |
買主探しが不要でスピード重視。交渉が難しいケースでも進めやすい。 |
「連絡・調整が難しい共有者がいる」「交渉が長期化している」など、共有者との交渉がうまくいかない場合。 |
なお、買取業者のなかには、共有持分の買取を専門とする業者もあります。こうした専門業者は、共有不動産に関する権利関係の調整や活用手法に関する知見を有しているため、一般的な不動産会社では評価が難しい共有持分であっても、相対的に適正な価格での買取が期待できる場合があります。
共有持分の法的な仕組みや具体的な売却手法については、別記事にて詳説しておりますので、あわせてご参照ください。
借地の売却方法
借地とは、地主から借りている土地のことで、借地人が建物を所有するために土地を利用できる権利を「借地権」といいます。借地権は財産として扱われるため、個人や法人などの第三者に売却することも可能です。
ただし、借地権の譲渡(売却)は、原則として地主の承諾が必要です。
地主の承諾を得ないまま勝手に借地権を売却すると、借地契約を解除される恐れがあります。また、地主が借地権を買い戻したい場合もあるので、必ず地主へ相談して承諾を得てから売却しましょう。
借地権の売却方法としては、以下の4パターンがあります。
- 地主に借地権を売却する
- 地主の承諾を得たうえで第三者に借地権を売却する
- 地主と協力して借地ごと同時売却する
- 借地権を専門とする買取業者に買い取ってもらう
第三者に売却する場合は、買主にとって借地条件(地代や契約期間、譲渡承諾条件など)が重要な判断材料になります。条件次第では買い手が限られることもあるため、売却活動と並行して地主との調整を進めるのが現実的です。
また、借地権と底地を同時に売却できると、買主にとって権利関係が整理された状態になり、取引が進めやすくなります。ただし、この方法は地主側との合意が前提となるため、早い段階から専門家に相談しておきましょう。
手続きや交渉が難しい場合は、借地権に詳しい不動産会社や専門家に相談しながら進めることも検討しましょう。
それぞれの売却方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
底地の売却方法
底地とは、地主が貸している土地のことです。借地人に対して借地権を与える代わりに、借地人から地代や契約更新料を受け取れる権利「底地権」を地主が持ちます。
簡単にいえば、借地と底地はどちらも物理的には同じ土地ですが、土地を貸している地主から見ると「底地」になり、土地を借りている借地人から見れば「借地」になります。
そのため「借地権」と「底地権」の違いについても、以下のように説明できます。
・借地権=地主から借りた土地に建物を建てる権利
・底地権=地主が借地人から地代や更新料を受け取る権利
底地を貸している賃貸借契約の期間中、地主は底地を自由に活用できません。底地は通常の土地と比べて買主が見つかりにくく、売却が難しくなる傾向があります。
底地の売却方法としては、以下の5パターンがあります。
- 借地人に底地を売却する
- 第三者に底地を売却する
- 借地人と協力して底地を同時売却する
- 借地と借地権を等価交換する
- 不動産買取業者に買い取ってもらう
借地人に売却する方法は権利関係を一本化できるため、話がまとまりやすいケースが多いです。一方、第三者への売却は可能ではあるものの、借地権が付いたままの土地を購入したい買主は限られるため、価格が下がりやすくなる傾向があります。
また、借地人と協力して底地と借地権を同時に売却できれば、完全な所有権として買主に引き渡せるため、取引が進めやすくなります。ただし、この方法は借地人側の合意が前提となるため、借地人と早めの調整が必要です。
底地の売却方法は、こちらの記事を参考にしてみてください。
再建築不可物件の売却方法
再建築不可物件とは、法改正などによって、現在の法律では建物を建て替えたり新しく建設できない物件のことです。
再建築不可物件に該当する条件は、以下の内容が一般的です。
- 道路に接する敷地の間口が2m未満
- 土地が道路に面していない
- 接する道路が4m未満で建築基準法の規定外
- 道路に接する路地部分が短い
再建築不可となる原因は複数ありますが、実務上は接道義務違反によるものが多くなります。
たとえば、敷地が幅員4m以上の道路に2m以上接していない場合、原則として建物の新築や建て替えは認められません。既存建物が存在していても、解体後は再建築できない点に留意が必要です。
再建築不可物件の売却方法としては、以下の3パターンがあります。
- 隣家の所有者に土地を売却する
- 建築基準法を満たすように工夫してから売却する
- 不動産買取業者に買い取ってもらう
隣地所有者への売却は、敷地の一体利用が可能となるため、資産価値の向上が見込まれ、交渉が成立しやすい手法です。
また、隣地との一体化や通路部分の確保、セットバック対応などにより接道義務を満たせば、再建築可能な土地として市場での流通性が高まるケースがあります。
一方、再建築不可の状態のまま売却する場合は、利用制限の影響から買主が限定されるため、市場価格よりも低い水準での取引となる傾向があるのです。一般的には、通常物件の50〜70%程度の価格帯となるケースが多いとされています。
ただし、既存建物のリフォームや賃貸運用を前提とした収益物件として評価される場合や、権利関係の整理によって再建築可能となる見込みがある場合には、評価額が改善する余地もあります。そのため、売却にあたっては物件の個別条件を精査し、最適な処分方法を検討することが重要です。
「再建築不可物件」の売却方法については、こちらの記事でも詳しく説明しています。
故人名義の土地を相続登記した場合に発生する費用
故人名義の土地を相続登記した場合には、下記のような費用が発生します。
- 登録免許税
- 司法書士などの専門家への報酬
- 必要書類を取得するための費用
ここからは、故人名義の土地を相続登記した場合に発生する費用をそれぞれ解説していきます。
登録免許税
故人名義の土地を相続登記するには、登録免許税がかかります。
登録免許税とは、登記手続きをする際に納めなければならない税金のことです。登録免許税は下記の計算式で算出が可能です。
登録免許税=固定資産税評価額(※)×0.4%
参照:国税庁「登録免許税の税額表」
固定資産税評価額とは、固定資産税を決定する基準となる評価額のことです。たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の土地であれば、4万円の登録免許税がかかります。
固定資産税評価額は各市区町村が定めており、納税通知書や固定資産税評価証明書から確認できます。登録免許税を算出する際は、これらの書類を確認してみてください。
なお、一定の条件(評価額が100万円以下の場合など)では登録免許税が免税になるケースや、相続人以外が取得する場合に税率が変わるケースもあります。
詳細は個別の事情によって異なるため、事前に専門家へ確認しておくと安心です。
司法書士などの専門家への報酬
遺産相続や相続登記をする場合、司法書士などの専門家に依頼するケースも考えられます。
司法書士に相続登記を依頼した場合、報酬金の相場は7万円〜10万円程度が一般的です。また、税理士に相続にかかる税金の計算や申告の代行を依頼する場合には、遺産総額の0.5%〜3.0%程度の費用がかかるのが一般的です。
専門家への報酬は、事務所やその専門家によって異なります。初回相談であれば無料の場合があるため、活用してどの程度の費用がかかるのかを尋ねておくのもおすすめです。
必要書類を取得するための費用
相続登記の際には、戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書など、複数の書類を取得する必要があります。取得のために費用がかかる書類の例と、その費用相場は下記のとおりです。
- 戸籍謄本:1通につき450円
- 除籍謄本:1通につき750円
- 住民票の写し:1通につき200円~300円程度
- 印鑑証明書:1通につき200円~300円程度
- 固定資産評価証明書:1通につき200円~400円程度
特に戸籍関係書類については、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を取得する必要があるため、本籍地の移転回数や相続関係の複雑さによって取得通数が増加します。そのため、必要書類の取得費用は一律ではなく、相続関係の内容や取得する戸籍の種類・通数によって大きく変動します。
一般的な費用の目安としては1万円〜3万円程度に収まるケースが多いものの、相続人が多い場合や転籍が多い場合には、これを上回ることもあるのです。
なお、各証明書の手数料は市区町村ごとに異なる場合があるため、事前に確認しておくのがおすすめです。
まとめ
故人名義の土地は、相続登記を行い自分名義に変更することで売却できます。相続登記から土地を売却するまでには、主に以下の手順で手続きを進めます。
- 相続人を確定させる
- 相続の対象となる財産を確定させる
- 遺言書があるかを確認する
- 相続人全員で遺産分割協議を行う
- 相続登記を行い故人名義を変更する
- 相続した土地を売却する
相続登記では、戸籍の収集や遺産分割協議書の作成、登録免許税の計算など、専門的な手続きが多く発生します。
そのため、手続きに不安がある場合は、司法書士や税理士などの専門家に相談しながら進めるのが現実的です。実際に弊社の実務においても「戸籍の収集が途中で滞ってしまった」「遺産分割協議書の作成方法が分からない」といったご相談が多くなります。弊社と連携している専門家がサポートすることでスムーズに手続きが進むケースも少なくありません。
相続登記によって故人から自分に名義を変更すれば、土地は自由に売却できるようになります。
一般的には、不動産会社を通じて仲介で売却する方法や、買取業者に直接買い取ってもらう方法があります。
ただし、共有持分や再建築不可物件などの特殊な土地は、通常の土地に比べて買い手が限られ、売却が難しくなる傾向があります。
特殊条件に該当する土地を相続した場合は、隣地所有者への売却や専門の買取業者の活用など、土地の状況に応じた売却方法を検討する必要があります。
故人名義の土地を売却する際によくある質問
故人名義の土地に買い手がつくかが怪しいのですが、どのように売却するのがよいでしょうか?
まずは不動産会社に相談し、物件の特性や市場性を踏まえたうえで、仲介による売却可能性を検討することが基本となります。
そのうえで、立地条件や権利関係などの要因により一般市場での流通性が低いと判断される場合には、専門の買取業者への売却も選択肢の一つです。
買取業者は、不動産の再活用や権利関係の整理を前提として物件を評価するため、仲介では成約に至りにくい不動産であっても、条件次第で売却が成立する可能性があります。
故人名義の土地はどこに売ればいいの?
まずは不動産会社へ相談し、物件の状況や権利関係に応じた売却方法を検討することが重要です。
なかでも、相続関係が複雑な場合や共有者との調整が必要なケースでは、弁護士や司法書士などの専門家と連携している不動産買取業者に相談することで、手続き面を含めた包括的なサポートを受けられる場合があります。
ただし、故人名義のままでは原則として売却はできないため、事前に相続登記を完了させる必要があります。共有名義の不動産については、原則として共有者全員の同意が必要となるため、状況によっては調整や手続きが必要となります。
そのため、物件の状態や相続関係に応じて、専門家と連携しながら適切な売却手段を選択することが現実的です。